説明

通信システム

【課題】通信装置を搭載した車両が自車両周辺に多く存在する状況であっても、適切なタイミングで衝突防止の支援をすることが可能な通信システムを提供する。
【解決手段】通信システム20は、車車間通信システムにより一定周期で送信されてくる他車両11の位置情報を含む他車両情報を取得する通信部21と、他車両情報と自車両10の位置を含む自車両情報とに基づいて、自車両10に他車両11が衝突する可能性を判定する衝突判定部22と、衝突の可能性があると判定された他車両情報に対して、次回の周期で送信されてきても衝突の可能性を判定しないように衝突判定部22を制御する衝突判定制御部23とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他車両との衝突の防止を支援するための通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一定周期で自車両の情報を送信し、また、他車両から一定周期で送信される情報を取得して周囲の状況を把握することが可能な通信システムが開示されている。また、このような他車両情報を利用して、他車両との衝突の防止を支援するための通信システムが実現されている。
【0003】
通常、周囲の通信装置から送信されてくる他車両情報は、その情報取得周期が短いほど周囲の他車両情報に対する変化を検出しやすくなる。ところが、例えば、市街地の渋滞路等、多くの車両が存在する状況においては、パケットの衝突が発生し通信品質が劣化するという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、周囲の状況に応じて送信周期を調整し、パケットの衝突が発生する頻度低く保ちつつ、可能な限り短い周期で他車両情報を送信する通信装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−278045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の通信装置から他車両情報を取得して、その他車両に対して衝突防止支援を実行する通信システムにおいては、取得した全ての他車両情報に対して衝突可能性の判定を実行すると、多大な演算負荷がかかってしまう。このため、衝突可能性を判定するにあたり、処理遅延、場合によっては、ハングアップすることも考えられ、適切なタイミングで衝突回避を支援できないおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、衝突対象となる車両が自車両周辺に多く存在する状況であっても、衝突可能性を判定する際の処理負荷を低減することが可能な通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の通信システムは、一定周期で送信されてくる他車両の位置情報を含む他車両情報を取得する通信部と、他車両情報と、自車両の位置を含む自車両情報とに基づいて、自車両に他車両が衝突する衝突可能性を判定する衝突判定部と、衝突可能性があると判定された他車両情報を取得しても、衝突可能性を判定しないように衝突判定部を制御する衝突判定制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の通信システムでは、一定周期で取得される他車両情報の全てに対して衝突の可能性の判定を行う従来の通信システムとは異なり、一度、衝突の可能性があると判定された他車両に対しては、例えば、衝突の可能性があると判定された瞬間に衝突回避条件を設定し、次の周期でその他車両情報を取得しても衝突可能性の判定をしないように制御している。この結果、一定周期で送信されてくる全ての他車両情報に対して衝突可能性を判定する必要がなくなるので、他車両情報が多く取得される状況であっても、衝突判定部における演算負荷を低減することが可能となる。
【0010】
また、通信部は、他車両との通信により他車両情報を取得してもよい。これにより、通信部を介した車車間通信により、衝突可能性を判定するための他車両情報を取得することが可能となる。
【0011】
また、衝突可能性がある他車両に対して、衝突回避のための所定動作を開始するまでの時間Tを設定する衝突回避条件設定部をさらに備えており、衝突回避条件設定部における時間Tを、第1所定時間T1以上に設定することが好ましい。ここで、時間Tは、衝突判定部が衝突の可能性を判定した瞬間から衝突回避支援部が所定動作を開始するまでの時間である。また、所定時間T1は、例えば、衝突判定部が衝突の可能性を判定した瞬間から実際に衝突するまでの推定時間に対して、衝突回避のための所定動作に対して運転者が実際に衝突回避行動を実行する時間を差し引いた時間とすることができる。これにより、衝突の可能性が判定されたその時点で適切な衝突回避条件を設定することが可能となるので、一定周期で取得する最新の情報に基づいて衝突回避支援を実行する必要がなくなる。この結果、一度、衝突の可能性があると判定された他車両に対しては、次の周期で、衝突の可能性の判定を回避できるので、衝突判定部における演算負荷を低減することが可能となる。
【0012】
また、他車両情報あるいは自車両情報に基づいて、自車両および他車両の少なくとも一方が減速状態であることを認識した場合、時間Tを、第1所定時間T1よりも長い第2所定時間T2に設定することが好ましい。これにより、自車両および他車両の少なくとも一方が減速状態にある場合、衝突推定時間は当初予測した衝突推定時間よりも遅くなることを考慮して時間Tを設定できるようになる。この結果、衝突回避のための所定動作を開始するまでの時間Tをより正確に設定することができる。
【0013】
また、他車両情報あるいは自車両情報に基づいて、自車両および他車両の少なくとも一方が加速状態であることを認識した場合、時間Tを、第1所定時間T1よりも短い第3所定時間T3に設定することが好ましい。これにより、自車両および他車両の少なくとも一方が加速状態にある場合、衝突推定時間は当初予測した衝突推定時間よりも早くなることを考慮して時間Tを設定できるようになる。この結果、衝突回避のための所定動作を開始するまでの時間Tをより正確に設定することができる。
【0014】
また、通信システムは、他車両情報を送信してくる他車両の台数を取得する車両台数取得部をさらに備えていてもよい。この場合、衝突判定制御部は、車両台数取得部により取得された他車両が所定台数以上の場合には、一定周期で送信されてくる他車両情報のうち、衝突判定部において判定された他車両情報に対して、衝突可能性を判定しないように衝突判定部を制御し、車両台数取得部により取得された他車両が所定台数未満の場合には、一定周期で送信されてくる全ての他車両情報に対して、衝突可能性を判定するように衝突判定部を制御する。これにより、衝突判定部にかかる負荷状態に応じて最適な衝突回避支援を実行することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、衝突対象となる車両が自車両周辺に多く存在する状況であっても、衝突可能性を判定する際の処理負荷を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信システムを含む衝突予防安全システムを概念的示した説明図である。
【図2】図1の衝突予防安全システムの全体構成を示した構成図である。
【図3】図2の通信システム、衝突防止支援ECUにおける動作を示したフローチャートである。
【図4】図2のHMIにおける動作を示したフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施形態に係る通信システムを含む衝突予防安全システムにおける全体構成を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る通信システム20を含む衝突予防安全システム1について、図1〜図4を用いて説明する。
【0018】
本実施例の衝突予防安全システム1は、相互に無線通信を行なうことができる車車間通信により取得する他車両情報に基づいて、衝突防止支援を実現することができる。図1は、衝突予防安全システム1を概念的に示した図である。
【0019】
図2は、衝突予防安全システム1の全体構成の一例を示す図である。衝突予防安全システム1は、GPS(Global Positioning System)受信機41と、ナビゲーションECU(Electronic Control Unit)42と、通信システム20と、衝突防止支援ECU30と、HMI(HumanMachine Interface)61と、を主に備えている。なお、図中の矢印は、CAN(Controller Area Network)やBEAN、AVC−LAN、FlexRay等の適切な通信プロトコルを用いて行なわれる車両内の主要な情報通信の流れを示す。
【0020】
GPS受信機41は、GPS衛星から衛星の軌道と時刻のデータを含む電波信号を受信して、ナビゲーションECU42に送信する。
【0021】
ナビゲーションECU42は、GPS受信機41が受信した電波信号の時間差に基づく演算により、自車両10の現在位置(緯度、経度、高度)を定期的に特定する。そして、ナビゲーションECU42は、地図ノードリンク情報を格納した記憶媒体43を備え、現在位置、そのときの速度、車両IDといった自車両情報を衝突防止支援ECU30に送信する。
【0022】
通信システム20は、例えば、一定周期でブロードキャスト送信して、車車間通信を行なう通信制御装置である。当該車車間通信における周波数帯域等について特段の制限は無いが、数百[m]程度の通信可能領域が確保できることが望ましい。そして、通信システム20は、図示しないが、例えば、CPUを中心としてROMやRAM等がバスを介して相互に接続されたコンピューターユニットであり、その他、HDD(Hard Disc Drive)やDVD(Digital Versatile Disk)等のメモリやI/Oポート、タイマー、カウンター等を備えている。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。また、通信システム20は、例えば、ROMに記憶されたプログラムをCPUがRAM上に展開(ロード)して実行することにより機能する主要な機能ブロックとして、通信部21と、衝突判定部22と、衝突判定制御部23と、を備えている。
【0023】
衝突防止支援ECU30は、図示しないが、通信システム20と同様に、コンピューターユニットである。そして、衝突防止支援ECU30は、例えば、ROMに記憶されたプログラムをCPUがRAM上に展開(ロード)して実行することにより機能する主要な機能ブロックとして、衝突回避条件設定部31と、衝突回避支援部32と、を備えている。
【0024】
HMI61は、例えば、運転者に音声による警告を与えるためのスピーカーやブザーである。その際、断続的な警報音を出力するだけでなく、警報音に強弱をつけたり、周波数を変更させたりすることで、より効果的に運転者に対して警告を与えることが可能となる。なお、以下の説明では、運転者に音声による警告を与えるものとして説明する。
【0025】
次に、通信システム20における各機能ブロックについて説明する。
【0026】
通信部21は、車車間通信により一定周期(例えば、100[ms]毎に)で送信されてくる他車両情報を受信する。そして、他車両情報には、例えば、車両ID、車両位置(緯度,経度,高度)、速度、加速度、アクセル状態、操舵状態等の情報が含まれている。
【0027】
衝突判定部22は、通信部21において受信した他車両情報に基づいて、他車両11のうち、自車両10の進行方向に存在する交差点に自車両10の進行方向と交差する方向で接近する所定接近車両を選択する。
【0028】
ここで、「交差する」とは、自車両10と同方向に進行している車両と、対向車両を除く意味である。より具体的には、その進行方向が自車両10の進行方向に対してなす角度が90°を中心とする所定角度以内に収まる車両と定義することができる。他車両11の進行方向は、受信した他車両11の現在位置を車両毎にメモリ等(図示せず)に記憶し、その履歴を参照することにより特定することができる。また、交差点の存在は、必要に応じてナビゲーションECU42からも取得することができる。
【0029】
次に、衝突判定部22は、上記自車両情報と各所定接近車両における上記他車両情報とに基づいて、自車両10との衝突可能性に関する所定の判定を行う。当該判定の具体的態様には種々のものが考えられ、本発明の適用上、特段の限定は存在しないが、例えば、各所定接近車両の位置情報の変化から当該車両の速度を導出し、これと車速センサー(図示せず)から受信した自車両10の速度を用いて、自車両10の進行方向に存在する交差点に到達するタイミングが合致するか否かを判定する。そして、衝突可能性が高いと判定された他車両11の車両IDをメモリ等に記録する。
【0030】
衝突判定制御部23は、一定周期で送信されてくる他車両情報のうち、衝突判定部22において衝突の可能性が高いと判定された他車両11の他車両情報に対して、衝突可能性に関する所定の判定を実行しないように衝突判定部22を制御する。すなわち、衝突判定制御部23は、衝突の可能性が高いと判断された車両ID(メモリ等に記録されている)を情報に持つ他車両情報が送信されてきても衝突可能性の判定を行わないように衝突判定部22を制御する。
【0031】
次に、衝突防止支援ECU30における各機能ブロックについて説明する。
【0032】
衝突回避条件設定部31は、衝突判定部22により衝突可能性が高いと判定された場合、その時の他車両情報に基づいて、後述する衝突回避支援部32において警告音を出力するための条件を設定する。例えば、衝突判定部22が所定の他車両11に対して衝突の可能性があると判定した場合には、「衝突可能性ありと判定した瞬間の時間からT1秒後に警報音を出力する」等の条件を設定する。なお、この際の具体的な条件は、通信部21が受信する、例えば、他車両11の速度や自車両10の速度等に基づいて決定することができる。
【0033】
また、衝突回避条件設定部31における条件の設定にあたっては、他車両情報における情報を適切に利用し、適切なタイミングを算出することができる。例えば、他車両情報の中に、加速度降下、ブレーキペダルを踏み込む情報等が含まれている場合には、そのときの速度情報に基づいて算出された支援開始時間T1よりも長い時間T2(T1<T2)を設定する。これは、他車両11が減速している場合には、衝突予測時間が遅くなることに合わせた処理である。また、例えば、他車両情報の中に、加速度上昇、アクセルペダルを踏み込む情報等が含まれている場合には、そのときの速度情報に基づいて算出された支援開始時間T1よりも短い時間T3(T1>T3)に設定する。これは、他車両11が加速している場合には、衝突予測時間が早くなることに合わせた処理である。
【0034】
上述したように、衝突回避条件設定部31は、衝突判定部22において衝突の可能性があると判定された瞬間に、その時の他車両情報に基づいて衝突予測時間を演算し、衝突回避条件を設定している。このため、衝突回避条件が一度設定された他車両11に対して、他車両情報が送信されてくるたびに衝突の可能性を判定しなくても、適切なタイミングで衝突回避の支援を実行することが可能となっている。この結果、衝突の可能性があると判断された車両に対しては、次の周期で他車両情報が送信されてきても衝突判定を実行しなくてもよくなるので、その間の衝突判定部22における負荷を低減することが可能となる。
【0035】
衝突回避支援部32は、衝突回避条件設定部31において設定された条件に従って、HMI61を制御する。衝突回避支援部32は、例えば、「衝突の可能性があると判定したときからT秒後にブザーを鳴らす」といった条件に従って、ブザーを鳴らすといった制御を実行する。
【0036】
次に、衝突予防安全システム1の動作について、図3、図4を用いて説明する。
【0037】
図3は、通信システム20、衝突防止支援ECU30が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。本動作は、例えば、所定周期(例えば、100[ms])をもって実行される。
【0038】
まず、衝突予防安全システム1は、所定領域内の車両と通信が可能な車車間通信システムにより一定周期で送信されてくる他車両情報を受信し、各他車両情報をメモリ等に格納する。他車両情報には、車両ID、車両位置(緯度,経度,高度)、速度、加速度、アクセル状態、操舵状態等の情報が含まれる(ステップS10)。
【0039】
次に、衝突予防安全システム1は、車車間通信で通信する全ての他車両について、衝突防止支援を実行中であるかどうかを判定する。(ステップS20)。すなわち、通信部21で受信する他車両情報が、衝突回避条件設定部31によって衝突回避条件が設定された他車両11かどうかを判定する。ここで、衝突防止支援を実行中であると判断された他車両11についてはステップS30で処理が行われ、衝突防止支援を実行中でないと判断された他車両11についてはステップS60で処理される。
【0040】
次に、衝突予防安全システム1は、ステップS20において衝突防止支援を実行中であると判断された他車両11について、衝突防止支援が終了されるかどうかを判定する(ステップS30)。すなわち、衝突回避条件設定部31によって設定された衝突回避条件に基づいて衝突回避支援を実行するかどうかを判定する。ここで、衝突回避条件に従って衝突防止支援が実行されたと判定された他車両11についてはステップS40で処理され、衝突回避条件に従って衝突防止支援が実行されていないと判定された他車両11については、ステップS50で処理される。
【0041】
次に、衝突予防安全システム1は、ステップS30において衝突防止支援が実行されたと判定された他車両11の他車両情報を衝突防止支援終了ステータスに変更する(ステップS40)。すなわち、衝突回避支援部32が、衝突回避条件設定部31によって設定された条件に従ってHMI61を制御した場合には、その衝突防止支援の対象となる他車両情報を衝突防止支援終了ステータスに変更する。これにより、次の周期で当該他車両情報を受信した際には、ステップS20において、衝突防止支援を実行中であると判断されなくなる。
【0042】
次に、衝突予防安全システム1は、ステップS30において衝突回避条件に従って衝突防止支援が実行されていないと判定された他車両11と、ステップS40において衝突防止支援終了ステータスに変更された車両とについて、その車両位置を当初速度分進めて、対象車両情報として格納する(ステップS50)。これにより、衝突可能性の判定を回避していた他車両の現在位置を算出することができるので、次回周期における衝突可能性の判定を適切に行うことが可能となる。
【0043】
次に、ステップS20において、実行終了条件が成立しない判断された他車両情報に対する処理方法を説明する。
【0044】
まず、衝突予防安全システム1は、衝突防止支援を実行中でないと判断された他車両11に対して、地図上リンクへマッチングして、対象車両情報としてメモリ等に記憶する(ステップS60)。
【0045】
次に、衝突予防安全システム1は、ステップS60により抽出された対象車両情報のうち、衝突防止の支援対象となる他車両11を抽出する(ステップS70)。すなわち、衝突判定部22は、自車両10との衝突可能性に関する所定の判定を行う。なお、衝突可能性に関する所定の判定については、上述のとおりである。
【0046】
次に、衝突予防安全システム1は、ステップS70により抽出された他車両情報に基づいて、衝突防止支援の実行開始条件を設定できるかどうか判定する(ステップS80)。なお、衝突防止支援の実行開始条件が設定できるか否かは、次ステップにおいて、適切なタイミングで衝突回避支援できる条件を設定できるか否かによって判定され、例えば、自車両10と他車両11との距離に基づいて設定の可否を判定する。ここで、衝突防止支援実行の開始条件が設定できる場合にはステップS90で処理され、衝突防止支援実行の開始条件が設定できない場合にはここで処理を終了する。
【0047】
次に、衝突予防安全システム1は、ステップS70により抽出された他車両情報に基づいて、衝突防止支援の実行開始条件を設定できると判定された他車両11に対して衝突回避条件を設定する(ステップS90)。そして、衝突回避条件が設定された他車両11の他車両情報に対して、支援実行ステータスが設定され、一連の処理は終了となる。これにより、次の周期で当該他車両情報を受信した際には、ステップS20において、衝突防止支援を実行中であると判断されるようになる。
【0048】
図4は、衝突防止支援ECU30によって制御されるHMI61の処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
最初に、衝突防止支援を実行している他車両11があるか判定する(ステップS110)。なお、ステップS110における判定は、上記ステップS20に基づいて判定することが可能である。
【0050】
次に、ステップS110において、衝突防止支援を実行している他車両11があると判定したとき、衝突回避条件に従ってHMI61を起動させる(ステップS120)。具体的には、衝突回避支援部32は、「衝突の可能性があると判定したときからT秒後にブザーを鳴らす」といった条件に従って、ブザーを鳴らす。
【0051】
一方、ステップS110において、衝突防止支援を実行している他車両11がないと判定したとき、HMI61の動作を停止させる(ステップS130)。
【0052】
以上に説明したように、本実施例の衝突予防安全システム1によれば、衝突判定部22によって一度、衝突の可能性があると判定された他車両11に対しては、次の周期で、その他車両情報が送信されてきても衝突の可能性の判定をしないように制御している。また、衝突の可能性があると判定された他車両11に対しては、衝突回避条件設定部31において、衝突回避のための所定動作を開始するまでの時間Tを設定している。これにより、一定周期で送信されてくる全ての他車両情報に対して衝突可能性を判定する必要がなくなるので、他車両情報が多く送信されてくる状況であっても、衝突判定部22における演算負荷を低減することが可能となる。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0054】
例えば、図5に示すように、上記実施形態の通信システム20に、他車両情報を送信してくる他車両11の台数を取得する車両台数取得部24を追加してもよい。この場合、他車両情報を受信した車両が所定台数以上であるか否かを判定し、所定台数以上ある場合にのみ、上述したような通信システム20および衝突防止支援ECU30の各機能ブロックに基づいた処理を実行し、所定台数未満の場合には、送信されて全ての他車両情報に対して衝突可能性の判定を実施し、最新の衝突可能性の判定に基づいて衝突回避支援を実行するようにしてもよい。これにより、衝突判定部22にかかる負荷状態に応じて最適な衝突回避支援を実行することが可能となる。
【0055】
また、通信部21で受信する他車両情報は、例えば、無線基地局等を介して送信されてきてもよい。
【0056】
また、上記実施形態のHMI61では、運転者に対して警報音を出力する例を挙げて説明したが、例えば、発光や振動、微弱電流による警告を与えるものであってもよいし、自動制動制御を行なうことが可能なブレーキ装置や、自動操舵制御を行なうことが可能なステアリング装置であってもよい。また、表示モニターやヘッドアップディスプレイに警告表示を行ってもよい。
【0057】
また、衝突判定部22は、他車両11のうち、自車両10の進行方向に存在する交差点に自車両10の進行方向と交差する方向で接近する所定接近車両を選択する例を挙げて説明したが、自車両10の進行方向に接近する他車両を対象に含めてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…衝突予防安全システム、10…自車両、11…他車両、20…通信システム、21…通信部、22…衝突判定部、23…衝突判定制御部、24…車両台数取得部、25…衝突回避支援部、30…衝突防止支援ECU、31…衝突回避条件設定部、32…衝突回避支援部、41…GPS受信機、42…ナビゲーションECU、43…記憶媒体、61…HMI。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定周期で送信されてくる他車両の位置情報を含む他車両情報を取得する通信部と、
前記他車両情報と、自車両の位置を含む自車両情報とに基づいて、前記自車両に前記他車両が衝突する衝突可能性を判定する衝突判定部と、
前記衝突可能性があると判定された前記他車両情報を取得しても、前記衝突可能性を判定しないように前記衝突判定部を制御する衝突判定制御部と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記通信部は、前記他車両との通信により前記他車両情報を取得する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記衝突可能性がある前記他車両に対して、衝突回避のための所定動作を開始するまでの時間Tを設定する衝突回避条件設定部をさらに備えており、
前記衝突回避条件設定部における前記時間Tを、第1所定時間T1以上に設定する、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記衝突回避条件設定部は、前記自車両および前記他車両の少なくとも一方が減速状態であることを認識した場合、前記時間Tを、前記第1所定時間T1よりも長い第2所定時間T2に設定する、
ことを特徴とする、請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記衝突回避条件設定部は、前記自車両および前記他車両の少なくとも一方が加速状態であることを認識した場合、前記時間Tを、前記第1所定時間T1よりも短い第3所定時間T3に設定する、
ことを特徴とする、請求項3に記載の通信システム。
【請求項6】
前記他車両情報を送信してくる前記他車両の台数を取得する車両台数取得部をさらに備えており、
前記衝突判定制御部は、前記車両台数取得部により取得された前記他車両が所定台数以上の場合には、一定周期で送信されてくる前記他車両情報のうち、前記衝突判定部において判定された前記他車両情報に対して、前記衝突可能性を判定しないように前記衝突判定部を制御し、前記車両台数取得部により取得された前記他車両が前記所定台数未満の場合には、一定周期で送信されてくる全ての前記他車両情報に対して、前記衝突可能性を判定するように前記衝突判定部を制御する、
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の通信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−244350(P2010−244350A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93210(P2009−93210)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】