説明

通信モジュール

【課題】通信信号を安定して出力することができる通信モジュールを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の通信モジュールは、集積回路素子搭載パッドと圧電デバイス搭載パッドとが一方の主面に設けられているモジュール搭載部材と、集積回路素子搭載パッドに搭載されている集積回路素子と、圧電デバイス搭載パッドに搭載される圧電デバイスであって、モジュール搭載部材用接続端子が一方の主面に設けられている素子搭載部材と素子搭載部材の他方の主面に搭載されている圧電振動素子と圧電振動素子を気密封止するための蓋部材とを備えている圧電デバイスと、圧電デバイスと集積回路素子とを被覆するように設けられている樹脂層と、を備え、蓋部材の表面から樹脂層の外表面までの樹脂層の厚みが50〜250μmであることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる通信モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の通信モジュールは、その例としてモジュール搭載部材、圧電デバイス、集積回路素子とから主に構成されている。
モジュール搭載部材の一方の主面には、圧電デバイスや集積回路素子を搭載するための圧電デバイス搭載パッド、集積回路素子搭載パッドが設けられている。
また、モジュール搭載部材は、積層構造となっており、モジュール搭載部材の内層に、配線パターン(図示せず)等が設けられている。この配線パターンにより集積回路素子搭載パッドは、モジュール搭載部材の他方の主面に設けられている外部接続用電極端子や圧電デバイス搭載パッドと接続している。
これら圧電デバイス搭載パッド、集積回路素子搭載パッドの上には、圧電デバイス、集積回路素子が導電性接合材を介して電気的に接続される。
この搭載された圧電デバイス、集積回路素子に被覆するようにモジュール搭載部材の主面に樹脂層が形成されている構造が知られている(特許文献1)。
また、この圧電デバイスは、素子搭載部材と圧電振動素子と蓋部材とで主に構成されている。前記圧電デバイスは、前記素子搭載部材に形成されている凹部空間内に圧電振動素子が搭載され、その凹部空間が蓋部材により気密封止された構造となっている。
また、圧電振動素子は、水晶素板に励振用電極を被着形成したものであり、外部からの交番電圧が励振用電極を介して水晶素板に印加されると、所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−252782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の通信モジュールにおいては、圧電デバイスを被覆するようにモジュール搭載部材の主面に樹脂層が形成されているが、その樹脂の応力変形により、圧電デバイスの蓋部材が凹部空間側にへこむようにして変形して、蓋部材と搭載されている圧電振動素子の間隔が変わってしまい、蓋部材と圧電振動素子の励振用電極との間で発生する浮遊容量が変動するので、圧電デバイスの発振周波数が変動してしまうことがある。従って。従来の通信モジュールでは、この圧電デバイスの発振周波数が変動して通信信号が出力できないといった課題があった。
【0005】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、通信信号を安定して出力することができる通信モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の通信モジュールは、集積回路素子搭載パッドと圧電デバイス搭載パッドとが一方の主面に設けられているモジュール搭載部材と、集積回路素子搭載パッドに搭載されている集積回路素子と、圧電デバイス搭載パッドに搭載される圧電デバイスであって、モジュール搭載部材用接続端子が一方の主面に設けられている素子搭載部材と素子搭載部材の他方の主面に搭載されている圧電振動素子と圧電振動素子を気密封止するための蓋部材とを備えている圧電デバイスと、圧電デバイスと集積回路素子とを被覆するように設けられている樹脂層と、を備え、蓋部材の表面から樹脂層の外表面までの樹脂層の厚みが50〜250μmであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の通信モジュールは、蓋部材の表面から樹脂層の外表面までの樹脂層の厚みが50〜250μmであることによって、圧電デバイスを被覆するようにモジュール搭載部材の主面に形成されている樹脂層の応力によって、圧電デバイスの蓋部材が凹部空間側にへこむようにして変形することがなくなる。これにより蓋部材と搭載されている圧電振動素子との間隔が変わることがなくなり、蓋部材と圧電振動素子の励振用電極との間で発生する浮遊容量が変動しないので、圧電デバイスの発振周波数が変動することを低減することができる。よって、通信モジュールは、安定した通信信号を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る通信モジュールの一例を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る通信モジュールを構成する樹脂層がない状態の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る通信モジュールを構成する圧電デバイスの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。尚、圧電振動素子に水晶を用いた場合について説明する。また、図示した寸法も一部誇張して示している。
【0010】
図1〜図2に示すように、本発明の実施形態に係る通信モジュール100は、モジュール搭載部材110と圧電デバイス200と集積回路素子120と樹脂層140で主に構成されている。
この通信モジュール100は、圧電デバイス搭載パッド111と集積回路素子搭載パッド112が一方の主面に設けられているモジュール搭載部材110の、前記圧電デバイス搭載パッド111に圧電デバイス200が搭載され、前記集積回路素子搭載パッド112に集積回路素子120が搭載されている。この圧電デバイス200と集積回路素子120とを被覆するように樹脂層140が設けられている。
【0011】
図1〜図3に示す集積回路素子120は、図示しないが、RF部分と、ベースバンド部分と、書き換え可能なフラッシュメモリ等の記憶媒体とにより構成され、フラッシュメモリにアドレス及び送信パワー、周波数等のRF性能情報を書き込んでおき、この書き込まれているレジストリーの情報によりRF内のRF性能の調整を行うように構成されている。このようにして、集積回路素子120は、後述する圧電デバイス200からの発振周波数が入力されることにより、通信信号を出力するものである。
集積回路素子120は、前記モジュール搭載部材110の集積回路素子搭載パッド112に例えば半田等の導電性接合材HDを介して搭載されている。
【0012】
図4に示すように、圧電デバイス200は、素子搭載部材210と圧電振動素子220と蓋部材230とで主に構成されている。この圧電デバイス200は、前記素子搭載部材210に形成されている凹部空間K1内に圧電振動素子220が搭載されている。その凹部空間K1が蓋部材230により気密封止された構造となっている。
【0013】
圧電振動素子220は、図4に示すように、水晶素板221に励振用電極222を被着形成したものであり、外部からの交番電圧が励振用電極222を介して水晶素板221に印加されると、所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
水晶素板221は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し外形加工を施された概略平板状で平面形状が例えば四角形となっている。
励振用電極222は、前記水晶素板221の表裏両主面に金属を所定のパターンで被着・形成したものである。
このような圧電振動素子220は、その両主面に被着されている励振用電極222から延出する引き出し電極224と凹部空間K1内底面に形成されている圧電振動素子搭載パッド211とを、導電性接着剤DSを介して電気的且つ機械的に接続することによって凹部空間K1に搭載される。このときの引き出し電極224が設けられた一辺とは反対側の自由端となる端辺を圧電振動素子220の先端部223とする。
【0014】
図4に示すように、前記圧電デバイス200の素子搭載部材210は、基板部210aと、枠部210bとで主に構成されている。
素子搭載部材210の基板部210aの一方の主面の4隅には、モジュール搭載部材用接続端子Gが設けられている。
この素子搭載部材210は、基板部210aの他方の主面に枠部210bが設けられて、凹部空間K1が形成されている。
凹部空間K1内で露出した基板部210aの他方の主面には、圧電振動素子220を搭載するための2個一対の圧電振動素子搭載パッド211が設けられている。
尚、この素子搭載部材210を構成する基板部210aは、例えばアルミナセラミックス、ガラスセラミックス等のセラミック材料を複数積層することよって形成されている。また、基板部210aは、セラミック材が積層した構造となっている。
枠部210bは、例えば、シールリングを用いている。この場合、枠部210bは、42アロイやコバール等の金属から成り、中心が打ち抜かれた枠状になっている。
また、枠部210bは、基板部210aの他方の主面の外周を囲繞するように設けられた封止用導体膜212上にロウ付けなどにより接続される。
【0015】
蓋部材230は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)などからなる。このような蓋部材230は、凹部空間K1を、窒素ガスや真空などで気密的に封止される。具体的には、蓋部材230は、窒素雰囲気中や真空雰囲気中で、素子搭載部材210の枠部210b上に載置され、枠部210bの表面の金属と蓋部材210bの金属の一部とが溶接されるように所定電流を印加してシーム溶接を行うことにより、枠部210bに接合される。
【0016】
前記導電性接着剤DSは、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、例えばアルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニッケル鉄(NiFe)、のうちのいずれかまたはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。
【0017】
図1及び図3に示すように、電子部品素子130は、例えば、コンデンサ、抵抗、インダクタ等のチップ部品、SAWフィルタ等である。
前記電子部品素子130は、後述するモジュール搭載部材110の電子部品素子搭載パッド113に半田等の導電性接合材(図示せず)を介して搭載されている。
【0018】
モジュール搭載部材110は、例えばガラスセラミックス、アルミナセラミックス、ムライトセラミックス等のセラミック材料から形成され、平板状に形成されている。
図2に示すように、モジュール搭載部材110の一方の主面に圧電デバイス搭載パッド111が設けられている。
図2及び図3に示すように、モジュール搭載部材110の一方の主面に集積回路素子搭載パッド112と電子部品素子搭載パッド113が設けられている。
図1〜図3に示すように、モジュール搭載部材110の他方の主面には、外部接続用電極端子114が設けられている。また、この外部接続用電極端子114の内の1つから、通信モジュール100としての通信信号が出力される。
モジュール搭載部材110の内層には、配線パターン(図示せず)等が設けられている。
この配線パターン(図示せず)により、圧電デバイス搭載パッド111は、モジュール搭載部材110の一方の主面に設けられている集積回路素子搭載パッド112と接続している。
また、この配線パターン(図示せず)により、集積回路素子搭載パッド112は、モジュール搭載部材110の一方の主面に設けられている圧電デバイス搭載パッド111やモジュール搭載部材110の他方の主面に設けられている外部接続用電極端子114と接続している。
【0019】
また、前記圧電デバイス搭載パッド111は、圧電デバイス200のモジュール搭載部材用接続端子Gと半田等の導電性接合材HDを介して電気的に接続されている。
【0020】
尚、前記モジュール搭載部材110は、ガラスセラミックスから成る場合、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得たセラミックグリーンシートの表面に、圧電デバイス搭載パッド111と集積回路素子搭載パッド112と外部接続用電極端子114等となる例えばAgやCu等からなる導体ペーストを、また、セラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔内にビア導体となる導体ペーストを従来周知のスクリーン印刷によって塗布するとともに、これを複数枚積層してプレス成形した後、高温で焼成することにより製作される。
【0021】
樹脂層140は、前記モジュール搭載部材110に搭載されている前記集積回路素子120、前記電子部品素子130、前記圧電デバイス200に対して全面被覆するように形成されている。
前記樹脂層140は、例えば、エポキシ樹脂と硬化剤等を混合したものを真空印刷することによって形成される。
【0022】
図2に示すように、前記蓋部材230の表面から前記樹脂層140の外表面までの前記樹脂層140の厚みdは50〜250μmとなっている。つまり、前記樹脂層140の表主面と前記蓋部材の主面との間隔dが50〜250μmである。
前記蓋部材230の主面に設けられている前記樹脂層140の厚みdは、50μmより小さい場合、圧電デバイス200の蓋部材230に落下等の衝撃により傷等を生じてしまい、圧電デバイス200の気密封止性を維持することができないおそれがある。
前記蓋部材230の主面に設けられている前記樹脂層140の厚みdは、250μmより大きい場合、圧電デバイス200の蓋部材230にひずみが生じ、凹部空間K1側にへこむようにして変形するため、圧電振動素子220と蓋部材230との間隔が小さくなり、蓋部材230と圧電振動素子220の励振用電極222との間で発生する浮遊容量が変動してしまうので、圧電デバイス200の発振周波数が変動してしまう。
【0023】
本発明の実施形態に係る通信モジュール100によれば、蓋部材230の表面から樹脂層140の外表面までの樹脂層140の厚みdが50〜250μmであることによって、圧電デバイス200を被覆するようにモジュール搭載部材110の主面に形成されている樹脂層140の応力によって、圧電デバイス200の蓋部材230が凹部空間K1側にへこむようにして変形することがなくなる。これにより蓋部材230と搭載されている圧電振動素子220との間隔が変わることがなくなり、蓋部材230と圧電振動素子220の励振用電極222との間で発生する浮遊容量が変動しないので、圧電デバイス200の発振周波数が変動することを低減することができる。よって、通信モジュール100は、安定した通信信号を出力することができる。
【0024】
(実施例)
本発明の通信モジュールについて実施例を以下に示す。
図1及び図2に示す本発明の通信モジュール100の構造に従って、前記蓋部材230の表面から前記樹脂層140の外表面までの前記樹脂層140の厚みdが10μm間隔で、0〜300μmになるように作製した。
【0025】
この実験結果として、前記蓋部材230の表面から前記樹脂層140の外表面までの前記樹脂層140の厚みdが、260μm、270μm、280μm、290μm、300μmの場合、圧電デバイス200の蓋部材230が凹部空間K1側にへこむようにして変形されることが確認された。特に、前記蓋部材230の表面から前記樹脂層140の外表面までの前記樹脂層140の厚みdが300μmの場合、蓋部材230が凹部空間K1側に大きくへこむことが確認された。圧電デバイスの圧電振動素子220と蓋部材230との間隔が小さくなり、蓋部材230と圧電振動素子220の励振用電極222との間で発生する浮遊容量が大きく変動しているため、圧電デバイス200の発振周波数が変動していることが判る。
前記蓋部材230の表面から前記樹脂層140の外表面までの前記樹脂層140の厚みdが、250μmより小さい場合、圧電デバイス200の蓋部材230が凹部空間K1側にへこむようにして変形することがなくなっており、圧電デバイス200の発振周波数が変動していないことが判る。
【0026】
前記蓋部材230の表面から前記樹脂層140の外表面までの前記樹脂層140の厚みdが0μm、10μm、20μm、30μm、40μmの場合、圧電デバイス200の蓋部材230に落下等の衝撃により傷等を生じていることが確認された。これにより、圧電デバイス200の気密封止性を維持することができないおそれがあることが判る。
このことから、前記樹脂層140の表主面と前記蓋部材の主面との間隔dが50〜250μmであることによって、発振周波数が変動することを低減することが確認された。
【0027】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、前記した本実施形態では、圧電振動素子を構成する圧電素材として水晶を用いた場合を説明したが、他の圧電素材として、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたは、圧電セラミックスを圧電素材として用いた圧電振動素子でも構わない。
【0028】
また、前記した本実施形態では、枠部にシールリングを用いた場合を説明したが、基板部と同様にセラミック材で形成しても構わない。
この場合、枠部の開口側頂面の全周には、環状の封止用導体パターンが形成され、蓋部材は、この封止用導体パターン上に配置接合される。
この際の蓋部材は、前記素子搭載部材の凹部空間を囲繞するように設けられた封止用導体パターンに相対する箇所に封止部材が設けられている。
【0029】
また、前記した本実施形態では、樹脂層を真空印刷により形成する場合について説明したが、樹脂層をモールド成形により形成してもよい。
【符号の説明】
【0030】
110・・・モジュール搭載部材
111・・・圧電デバイス搭載パッド
112・・・集積回路素子搭載パッド
113・・・電子部品素子搭載パッド
114・・・外部接続用電極端子
120・・・集積回路素子
130・・・電子部品素子
140・・・樹脂層
100・・・通信モジュール
200・・・圧電デバイス
210・・・素子搭載部材
210a・・・基板部
210b・・・枠部
211・・・圧電振動素子搭載パッド
220・・・圧電振動素子
221・・・水晶素板
222・・・励振用電極
230・・・蓋部材
K1・・・凹部空間
HM・・・封止用導体膜
DS・・・導電性接着剤
HD・・・導電性接合材
G・・・モジュール搭載部材用接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路素子搭載パッドと圧電デバイス搭載パッドとが一方の主面に設けられているモジュール搭載部材と、
前記集積回路素子搭載パッドに搭載されている集積回路素子と、
前記圧電デバイス搭載パッドに搭載される圧電デバイスであって、モジュール搭載部材用接続端子が一方の主面に設けられている素子搭載部材と前記素子搭載部材の他方の主面に搭載されている圧電振動素子と前記圧電振動素子を気密封止するための蓋部材とを備えている圧電デバイスと、
前記圧電デバイスと前記集積回路素子とを被覆するように設けられている樹脂層と、を備え、
前記蓋部材の表面から前記樹脂層の外表面までの前記樹脂層の厚みが50〜250μmであることを特徴とする通信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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