説明

通信制御システム及び通信制御方法

【課題】複数の端末を利用するユーザ単位に通信制御を実行して通信サービス利用時の利便性を高めること。
【解決手段】通信制御システム1は、複数の交換機と制御装置とを備えるシステムであって、交換機3a,3bのそれぞれは、移動通信端末2a,2bの通信実績データを計測する通信状況計測部32と、通信実績データをユーザ識別情報と共に送信する通信実績送信部34とを有し、HLR5は、ユーザ識別情報と通信残量データとを関連付けて予め格納する通信残量情報格納部52と、通信実績データを受信する通信実績受信部53と、通信残量情報格納部52で相互に関連付けられたユーザ識別情報のそれぞれに対応する通信実績データを合算する通信実績合算部54と、通信残量データと合算結果とを比較する通信量比較部55と、比較結果に基づいて通信を規制する制御信号を送出する規制信号送信部56とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークを介して端末に提供される通信サービスを制御する通信制御システム及び通信制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、通信ネットワークを介した通信サービスを利用するユーザのサービス契約形態に応じて、端末と通信ネットワークとの間で送受信されたデータの量や、端末と通信ネットワークとが接続された通信時間等に応じて、通信規制を制御することが行われている。例えば、ユーザが料金を先払い(チャージ)して通信サービスを受けることが可能なプリペイドサービスを実現する技術として、携帯端末機器の利用可能料金の残額がなくなった場合に、携帯端末管理システムによって携帯端末機器による通信サービスの利用を不可とするように制御する技術が開示されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−313743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の通信制御方法では、1人の個人ユーザや企業ユーザが複数の電話番号やIPアドレス等のユーザ識別情報を利用して通信ネットワークに接続する場合に、ユーザ毎にデータ量や通信時間を把握して通信規制を制御することは困難である。特に、近年では、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォン、携帯型PC等の様々な形態の端末によって通信サービスを利用することが一般的になっており、複数の端末を含むグループ単位に通信サービスの規制を制御する仕組みの必要性が高まっている。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決するために為されたものであり、複数の端末を利用するユーザ単位に通信制御を実行して通信サービス利用時の利便性を高めることが可能な通信制御システム及び通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の通信制御システムは、複数の端末と通信先との間で送受信される通信データを中継する複数の交換機と、複数の交換機と接続されて、端末と通信先との間での通信を制御する制御装置とを備える通信制御システムであって、複数の交換機のそれぞれは、端末と通信先との間での通信実績を示す通信実績データを計測する通信状況計測手段と、通信状況計測手段によって計測された端末に関する通信実績データを、該端末のユーザを識別するユーザ識別情報と共に制御装置に送信する通信実績送信手段とを有し、制御装置は、複数のユーザ識別情報と、通信可能な残量を示す通信残量データとを、関連付けて予め格納する通信残量情報格納手段と、複数の交換機からユーザ識別情報が付加された通信実績データを受信する通信実績受信手段と、通信実績受信手段によって受信された複数のユーザ識別情報に基づいて通信残量情報格納手段を参照し、複数のユーザ識別情報が相互に関連付けて格納されている場合には、当該複数のユーザ識別情報のそれぞれに対応して受信された複数の通信実績データを合算する通信実績合算手段と、複数のユーザ識別情報に対応する通信残量データを通信残量情報格納手段から読み出し、該通信残量データと、通信実績合算手段による合算結果とを比較する通信量比較手段と、通信量比較手段によって取得された比較結果に基づいて、複数のユーザ識別情報によって特定される端末による通信を規制する制御信号を送出する規制信号送信手段と、を有する。
【0007】
或いは、本発明の通信制御方法は、複数の端末と通信先との間で送受信される通信データを中継する複数の交換機と、複数の交換機と接続されて、端末と通信先との間での通信を制御する制御装置とを用いた通信制御方法であって、複数の交換機のそれぞれが、端末と通信先との間での通信実績を示す通信実績データを計測する通信状況計測ステップと、複数の交換機のそれぞれが、通信状況計測ステップによって計測された端末に関する通信実績データを、該端末のユーザを識別するユーザ識別情報と共に制御装置に送信する通信実績送信ステップと、制御装置の通信残量情報格納手段が、複数のユーザ識別情報と、通信可能な残量を示す通信残量データとを、関連付けて予め格納する通信残量情報格納ステップと、制御装置の通信実績受信手段が、複数の交換機からユーザ識別情報が付加された通信実績データを受信する通信実績受信ステップと、制御装置の通信実績合算手段が、通信実績受信手段によって受信された複数のユーザ識別情報に基づいて通信残量情報格納手段を参照し、複数のユーザ識別情報が相互に関連付けて格納されている場合には、当該複数のユーザ識別情報のそれぞれに対応して受信された複数の通信実績データを合算する通信実績合算ステップと、制御装置の通信量比較手段が、複数のユーザ識別情報に対応する通信残量データを通信残量情報格納手段から読み出し、該通信残量データと、通信実績合算手段による合算結果とを比較する通信量比較ステップと、制御装置の規制信号送信手段が、通信量比較手段によって取得された比較結果に基づいて、複数のユーザ識別情報によって特定される端末による通信を規制する制御信号を送出する規制信号送信ステップと、を備える。
【0008】
本発明の通信制御システム或いは通信制御方法によれば、複数の端末による通信を中継する交換機において、複数の端末の通信実績を示す通信実績データが計測されてその通信実績データがユーザ識別情報と共に制御装置に送信され、制御装置において、複数のユーザ識別情報に対応する通信実績データが合算され、その複数のユーザ識別情報に対応して予め格納された通信残量データと合算結果とが比較され、その比較結果に応じて、複数のユーザ識別情報によって特定される通信が規制される。これにより、複数の端末を利用するユーザ毎に通信実績に応じた通信規制を行うような通信サービスが提供可能にされる。その結果、例えば、通信時間、通信データ量、通信頻度等によって決まるユーザ毎のサービス提供条件に従って、複数の端末を用いて通信サービスの提供を受けることができるので、ユーザの利便性が向上する。
【0009】
規制信号送信手段は、比較結果に基づいて、端末による通信接続を切断するための切断信号を交換機に向けて送出する、ことが好ましい。こうすれば、複数のユーザ識別情報毎に合算された通信時間や通信データ量の通信実績に応じて通信接続を切断するので、複数の端末を利用するユーザに対して、所定の通信データ量や通信時間に達するまで通信接続を可能にするような通信サービスが提供可能にされる。
【0010】
また、規制信号送信手段は、比較結果に基づいて、端末による通信における通信速度を制御するための制御信号を送出する、ことも好ましい。この場合、複数のユーザ識別情報毎に合算された通信時間や通信データ量の通信実績に応じて通信速度を制御するので、所定の通信データ量や通信時間に達するのを契機に通信速度を切り替えるような通信サービスが提供可能にされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の端末を利用するユーザ単位に通信制御を実行して通信サービス利用時の利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る通信制御システム1の概略構成図である。
【図2】図1のSGSN3a,3b及びHLR5の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図2の通信残量情報格納部52に格納された通信残量データの構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る通信制御システム1の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の変形例に係る通信制御システム1の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の変形例に係る通信制御システム1の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る通信制御システムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の本実施形態に係る通信制御システム1の概略構成図である。この通信制御システム1は、GPRS(General Packet Radio Service)方式を採用したデータ伝送を可能にする通信システムであり、異なる通信ネットワークNW間を接続する関門交換機である複数のGGSN(Gateway GPRS Support Node)4と、GGSN4に接続されてアクセス制御機能やパケット交換機能等を有する交換機である複数のSGSN(Serving GPRS Support Node)3a,3bと、SGSN3a,3b及びGGSN4に接続されて通信制御のための各種演算処理を行う制御装置であるHLR(Home Location Register)5と、ユーザの契約情報を管理する契約情報管理装置6とを含んで構成される。
【0015】
このような通信制御システム1においては、複数の移動通信端末2a,2bが、その位置に応じていずれかのSGSN3a,3bに接続することにより、パケット交換サービス等のデータ通信サービスの提供を受けることが可能にされている。なお、複数の移動通信端末2a,2bが、音声通信サービスを利用する場合には、SGSNに代えてVLR(Visitor Location Register)に接続することにより、通信サービスの提供を受けることが可能にされている。これらの移動通信端末2a,2bは、通信制御システム1を利用した通信サービスの提供を受けようとするユーザの使用する携帯用クライアント端末であり、例えば、携帯電話、スマートフォン、可搬型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)等の端末装置である。
【0016】
以下、図2を参照しながら、SGSN3a,3b及びHLR5の構成について詳細に説明する。
【0017】
SGSN3a,3bは、それぞれ、共通した機能的な構成要素として、データ中継部31、通信状況計測部(通信状況計測手段)32、通信実績データ格納部33、通信実績送信部(通信実績送信手段)34、及び通信規制部35を含んで構成されている。
【0018】
データ中継部31は、移動通信端末2a,2bと通信先との間で送受信されるパケット通信データを中継する。すなわち、データ中継部31は、移動通信端末2a,2bから送信されたパケット通信データを、GGSN4及びそれに接続された通信ネットワークNWを経由して通信先に向けて送信し、通信ネットワークNW及びGGSN4を経由して通信先から送信された移動通信端末2a,2b向けのパケット通信データを、移動通信端末2a,2bに向けて送信する。
【0019】
通信状況計測部32は、移動通信端末2a,2bと通信先との間で送受信されたパケット通信データのデータ量、移動通信端末2a,2bと通信先との間で実施されたパケット通信の通信時間、或いは移動通信端末2a,2bと通信先との間で実施されたパケット通信の通信頻度(回数)を計測する。そして、通信状況計測部32は、計測したデータ量、通信時間、或いは通信頻度を含む通信実績データを、パケット通信データから特定される移動通信端末2a,2bのユーザに関するユーザ識別情報とともに通信実績データ格納部33に一時的に格納する。このようなユーザ識別情報としては、電話番号やIPアドレス等の識別番号が用いられる。
【0020】
通信実績送信部34は、予め設定されたタイミングで、通信実績データ格納部33に格納された移動通信端末2a,2bに関する通信実績データを、その通信実績データに付加されたユーザ識別情報とともに、HLR5に送信する。例えば、通信実績送信部34は、定期的なタイミング、移動通信端末2a,2bによる通信が切断されたタイミング、又はHLR5から要求されたタイミングで、通信実績データを送信する。
【0021】
通信規制部35は、HLR5から送信される規制制御信号に応じて、移動通信端末2a,2bに対して通信規制を実行するように制御する。例えば、通信規制部35は、移動通信端末2a,2bが通信制御システム1に接続中である場合にその接続を強制的に切断するように制御する。また、通信規制部35は、移動通信端末2a,2bが通信制御システム1に接続中でない場合に移動通信端末2a,2bによる発信、及び移動通信端末2a,2bに対する着信を規制する。さらに、通信規制部35は、移動通信端末2a,2bによるパケットデータ通信の通信速度を予め設定された速度以下に規制するように制御することもできる。
【0022】
HLR5は、通信残量情報受信部51、通信残量情報格納部(通信残量情報格納手段)52、通信実績受信部(通信実績受信手段)53、通信実績合算部(通信実績合算手段)54、通信量比較部(通信量比較手段)55、及び規制信号送信部(規制信号送信手段)56とを含んで構成されている。
【0023】
通信残量情報受信部51は、移動通信端末2a,2bのユーザに関する契約情報を管理する契約情報管理装置6から、その契約情報を受信する。例えば、通信残量情報受信部51は、移動通信端末2a,2bのユーザが、料金を先払い(チャージ)して通信サービスを受けることが可能な通信サービス(以下、「プリペイドサービス」と言う。)に加入している場合には、現時点で通信可能な残通信量に関する情報、すなわち、送受信可能な残りの通信データ量、通信可能な残りの通信時間、通信可能な残りの通信回数等を含む契約情報を受信する。また、通信残量情報受信部51は、移動通信端末2a,2bのユーザが、所定の通信データ量や通信時間を越えると通信速度規制や発信規制を受けるような通信サービス(以下、「通信規制サービス」と言う。)に加入している場合には、速度規制や発信規制を行うための閾値となる残通信量に関する情報、すなわち、残通信データ量や残通信時間等を含む契約情報を受信する。このような契約情報の受信は、契約情報管理装置6における契約情報が更新されたタイミングで実行されてもよいし、定期的なタイミングで実行されてもよい。さらに、通信残量情報受信部51は、受信した契約情報を、移動通信端末2a,2bのユーザを識別する複数のユーザ識別情報に関連付けて通信残量情報格納部52に格納する。
【0024】
図3には、このようにして通信残量情報格納部52に格納されたデータの構成例を示している。同図に示すように、通信残量情報格納部52には、移動通信端末2a,2bのユーザが契約している通信サービスを特定する“契約通信サービス情報:プリペイドサービス”、“残通信データ量:VA”、“残通信時間:TA”、及び“残通信回数:CA”が、移動通信端末2a,2bのユーザ識別情報である“ユーザ識別番号1:MSN#1”及び“ユーザ識別番号2:MSN#2”に関連付けて格納される。また、これらのユーザ識別番号の組み合わせに対して、その組み合わせを一意に識別するための“グループ識別番号:GID#1”も併せて関連付けて格納される。なお、ユーザが1つの契約で3以上のユーザ識別番号を有している場合には、1つの契約通信サービス情報に対して、3以上のユーザ識別情報が関連付けられていてもよいことは言うまでもない。また、1つの契約通信サービス情報に対しては、残通信データ量及び残通信時間のいずれか一方が関連付けられていればよい。
【0025】
通信実績受信部53は、複数のSGSN3a,3bの通信実績送信部34から、ユーザ識別情報が付加された通信実績データを受信する。すなわち、通信実績受信部53は、定期的なタイミング、移動通信端末2a,2bによる通信が切断されたタイミングで通信実績データを受信する。例えば、このような通信実績データには、移動通信端末2a,2bと通信先との間で送受信されたパケット通信データのデータ量、移動通信端末2a,2bと通信先との間で実施されたパケット通信の通信時間や、移動通信端末2a,2bと通信先との間で実施されたパケット通信の通信回数等が含まれる。通信実績受信部53は、受信した通信実績データを、その都度、通信実績合算部54に出力する。
【0026】
通信実績合算部54は、通信実績受信部53によって受信された複数の通信実績データを、定期的なタイミングや、所定のデータ量が受信されたタイミングで合算する。すなわち、通信実績合算部54は、複数の通信実績データに付加されたそれぞれのユーザ識別情報に基づいて通信残量情報格納部52を参照し、そのユーザ識別情報に一致或いは対応するユーザ識別番号を含む“契約通信サービス情報”に関するデータレコードを通信残量情報格納部52から参照する。そして、通信実績合算部54は、複数のユーザ識別情報のそれぞれに対応するユーザ識別番号が、1つの“契約通信サービス情報”を含むデータレコード中で相互に関連付けられているか否かを判断する。より詳細には、通信実績合算部54は、複数のユーザ識別番号に対して、1つのデータレコード中で共通のグループ識別番号が割り当てられているか否かを判断する。さらに、通信実績合算部54は、1つの“契約通信サービス情報”を含むデータレコード中で相互に関連付けられているユーザ識別番号に対応する複数の通信実績データを合算する。例えば、通信実績データにパケット通信のデータ量が含まれている場合には、そのデータ量を合算し、通信実績データにパケット通信の通信時間が含まれている場合には、その通信時間を合算する。また、通信実績合算部54は、合算した通信実績データの値を、合算対象の複数のユーザ識別番号とともに通信量比較部55に出力する。
【0027】
通信量比較部55は、通信実績合算部54から受け取った合算対象の複数のユーザ識別番号を基にして通信残量情報格納部52を参照し、それらのユーザ識別番号に対応する残通信データ量、残通信時間、或いは残通信回数を読み出す。そして、通信量比較部55は、読み出した残通信データ量、残通信時間、或いは残通信回数と、合算された通信実績データの値とを比較して比較結果を生成する。例えば、通信量比較部55は、2つのユーザ識別番号“MSN#1”、“MSN#2”に関する通信データ量の合算値“SVA”を受け取った場合には、図3に示したようなデータから残通信データ量“VA”を読み出して、通信データ量の合算値“SVA”と残通信データ量“VA”とを比較する。さらに、通信量比較部55は、合算された通信実績データの値が通信残量情報格納部52から読み出した残通信データ量、残通信時間、或いは残通信回数を超えた場合には、その比較結果を、合算対象の契約通信サービス情報に含まれる全てのユーザ識別番号とともに、規制信号送信部56に出力する。
【0028】
規制信号送信部56は、通信量比較部55によって合算された通信実績データの値が残通信データ量、残通信時間、或いは残通信回数を超えたと通知された際に、比較結果に含まれる全てのユーザ識別番号によって特定される端末による通信を規制するための規制制御信号を生成する。そして、規制信号送信部56は、生成した規制制御信号をSGSN3a,3b或いはGGSN4に向けて送出する。
【0029】
例えば、規制信号送信部56は、2つのユーザ識別番号“MSN#1”、“MSN#2”を含む“契約通信サービス情報:プリペイドサービス”を対象にして計算された合算値が、残通信データ量を超えたと判断された場合であって、2つのユーザ識別番号“MSN#1”、“MSN#2”に対応する移動通信端末2a,2bがデータ通信中である場合には、移動通信端末2a,2bによる通信接続を切断するための切断信号をSGSN3a,3bに向けて送出する。一方で、上記同様に判断された場合であって、移動通信端末2a,2bがデータ通信中でない場合には、移動通信端末2a,2bによる発信、及び移動通信端末2a,2bに対する着信を規制するための規制制御信号を、SGSN3a,3b或いはGGSN4に向けて送出する。また、2つのユーザ識別番号“MSN#1”、“MSN#2”を含む“契約通信サービス情報:通信規制サービス”を対象にして計算された合算値が、予め設定されたデータ量を超えたと判断された場合には、移動通信端末2a,2bによるデータ通信の通信速度を所定速度に制限するための規制制御信号を、SGSN3a,3b或いはGGSN4に向けて送出する。
【0030】
次に、図4を参照して、通信制御システム1の動作について説明するとともに、本実施形態にかかる通信制御方法について詳述する。図4は、通信制御システム1が移動通信端末2a,2bを対象に通信制御を行う際の動作を示すシーケンス図である。
【0031】
まず、移動通信端末2aによってパケットデータ通信が実行され、SGSN3aに通信接続された(ステップS01)ことを想定する。この際には、SGSN3aの通信状況計測部32によって移動通信端末2aによるパケット通信のデータ量或いは通信時間が計測されて一時記憶される(ステップS02)。その後、SGSN3aの通信実績送信部34により、移動通信端末2aによる通信が切断されたタイミング又はHLR5から要求されたタイミングで、計測結果を含む通信実績データが送信される(ステップS03)。これに対して、HLR5の通信実績受信部53によって、SGSN3aから通信実績データが受信されて一時記憶される(ステップS04)。
【0032】
その後、移動通信端末2bによってパケットデータ通信が実行され、SGSN3bに通信接続された(ステップS05)ことを想定する。この際には、SGSN3bの通信状況計測部32によって移動通信端末2bによるパケット通信のデータ量、通信時間、或いは通信回数が計測されて一時記憶される(ステップS06)。その後、SGSN3bの通信実績送信部34により、移動通信端末2bによる通信が切断されたタイミング又はHLR5から要求されたタイミングで、計測結果を含む通信実績データが送信される(ステップS07)。これに対して、HLR5の通信実績受信部53によって、SGSN3bから通信実績データが受信されて一時記憶される(ステップS08)。
【0033】
その後、HLR5の通信実績合算部54によって、定期的なタイミングで受信された複数の通信実績データが合算される(ステップS09)。このとき、移動通信端末2aに割り当てられているユーザ識別番号が“MSN#1”であり、移動通信端末2bに割り当てられているユーザ識別番号が“MSN#2”であると想定すると、これらのユーザ識別番号は、通信残量情報格納部52において、1つの“契約通信サービス情報”を含むデータレコード中で相互に関連付けられている(図3)。従って、通信実績合算部54によって、SGSN3aから受信された移動通信端末2aに関する通信実績データと、SGSN3bから受信された移動通信端末2bに関する通信実績データとが合算される。ここでの合算値は、所定期間の間(例えば、1ヶ月間)で移動通信端末2a,2bで実行されたパケット通信に関する通信実績データの累積値として計算される。次に、HLR5の通信量比較部55によって、移動通信端末2a,2bに対応する残通信データ量、残通信時間、或いは残通信回数が、通信残量情報格納部52から読み出され、その残通信データ量、残通信時間、或いは残通信回数と、通信実績データの合算値とが比較される(ステップS10)。比較の結果、合算値が残通信データ量、残通信時間、或いは残通信回数を超えたと判断された場合には、HLR5の規制信号送信部56によって、移動通信端末2a,2bによる通信を規制するための規制制御信号が生成されてSGSN3a,3b或いはGGSN4に向けて送出される(ステップS11)。
【0034】
以上説明した通信制御システム1及び通信制御方法によれば、移動通信端末2a,2bによる通信を中継するSGSN3a,3bにおいて、移動通信端末2a,2bの通信実績を示す通信実績データが計測されてその通信実績データがユーザ識別情報と共にHLR5に送信され、HLR5において、移動通信端末2a,2bに付与されたユーザ識別情報に対応する通信実績データが合算され、それらのユーザ識別情報に対応して予め格納された通信残量データと合算結果とが比較され、その比較結果に応じて、それらのユーザ識別情報によって特定されるパケット通信が規制される。これにより、複数の端末を利用するユーザ毎に通信実績に応じた通信規制を行うようなパケット通信サービスが提供可能にされる。その結果、通信時間、通信データ量、或いは通信回数等によって決まるユーザ毎のサービス提供条件に従って、複数の端末を用いて通信サービスの提供を受けることができるので、ユーザの利便性が向上する。
【0035】
ここで、HLR5は、複数のユーザ識別情報毎に合算された通信時間、通信データ量や通信回数等の通信実績に応じて通信接続を切断するので、複数の端末を利用するユーザに対して、所定の通信データ量、通信時間や通信頻度に達するまで通信接続を可能にするような通信サービスが提供可能にされる。
【0036】
また、HLR5は、複数のユーザ識別情報毎に合算された通信時間、通信データ量や通信回数等の通信実績に応じて通信速度を制御するので、所定の通信データ量、通信時間や通信頻度に達するのを契機に通信速度を切り替えるような通信サービスも提供可能にされる。
【0037】
なお、上述した実施形態は本発明に係る通信制御システムの最良な実施形態を説明したものであり、本発明に係る通信制御システムは本実施形態に記載したものに限定されるものではない。本発明に係る通信制御システムは、各請求項に記載した要旨を変更しないように実施形態に係る通信制御システムを変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0038】
すなわち、上述したSGSN3a,3bに備えられた全ての構成要素は、関門交換機であるGGSN4に具備されていてもよい。図5及び図6には、このような本発明の変形例にかかる通信制御システムの動作を示している。
【0039】
図5に示す変形例においては、ステップS22〜S23,S31の動作のみが図4に示した動作とは異なっており、他のステップS21,S24〜S30の動作は、図4に示したステップS01,S04〜S10の動作と同様である。具体的には、移動通信端末2aによってパケット通信が行われた際には、そのパケット通信データを中継するGGSN4により、パケット通信のデータ量、通信時間、或いは通信回数が計測されて一時記憶される(ステップS22)。その後、GGSN4により、移動通信端末2aによる通信が切断されたタイミング又はHLR5から要求されたタイミングで、計測結果を含む通信実績データがHLR5に向けて送信される(ステップS23)。最後に、HLR5からSGSN3b及びGGSN4に向けて規制制御信号が送出される(ステップS31)。この変形例では、複数のSGSNが異なるオペレータ(通信事業者)によって設置及び運用されている場合を想定しており、このような場合も通信実績の合算結果を確実に取得して、それに基づいた通信規制の制御も可能にされる。
【0040】
図6に示す別の変形例においては、ステップS42〜S43,S46〜47,S51の動作のみが図4に示した動作とは異なっており、他のステップS41,S44〜S45,S48〜S50の動作は、図4に示したステップS01,S04〜S05,S08〜S10の動作と同様である。具体的には、移動通信端末2aによってパケット通信が行われた際には、そのパケット通信データを中継する一つのGGSN4により、パケット通信のデータ量、通信時間、或いは通信回数が計測されて一時記憶される(ステップS42)。その後、そのGGSN4により、移動通信端末2aによる通信が切断されたタイミング又はHLR5から要求されたタイミングで、計測結果を含む通信実績データがHLR5に向けて送信される(ステップS43)。一方で、移動通信端末2bによってパケット通信が行われた際には、そのパケット通信データを中継する他のGGSN4により、パケット通信のデータ量、通信時間、或いは通信回数が計測されて一時記憶される(ステップS46)。その後、そのGGSN4により、移動通信端末2bによる通信が切断されたタイミング又はHLR5から要求されたタイミングで、計測結果を含む通信実績データがHLR5に向けて送信される(ステップS47)。最後に、HLR5から2つのGGSN4に向けて規制制御信号が送出される(ステップS51)。この変形例では、複数の関門交換機であるGGSN4によって通信実績の合算、及び通信規制の制御が可能にされる。
【0041】
上述した実施形態及びその変形例は、主にGPRSによる通信システムを用いたものである。しかしながら、このような通信システムに限定するものではなく、パケットデータを通信することができる通信システムにおいては適宜適用可能であり、例えば、LTE(Long Term Evolution)などの新規な通信システムにおいても適用可能である。その際、関門交換機GGSN4に相当するものは、P−GW(Packet Data Network Gateway)であり、交換機SGSN3a,3bに相当するものは、MME(Mobility Management Entity)若しくはS−GW(Serving Gateway)である。また、HLR5及び契約情報管理装置6に相当するものは、HSS(加入者情報管理サーバ:Home Subscriber System)である。なお、HLR5及び契約情報管理装置6としてPCRF(ポリシー制御装置:Policy and Charging Rule Function)を用いてもよいし、その他の課金管理サーバのような装置を制御装置として用いてもよい。さらには、HLR5及び契約情報管理装置6に相当する機能をHLRのような1つの制御装置に集約してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…通信制御システム、2a,2b…移動通信端末、3a,3b…SGSN(交換機)、4…GGSN(交換機)、5…HLR(制御装置)、32…通信状況計測部(通信状況計測手段)、34…通信実績送信部(通信実績送信手段)、52…通信残量情報格納部(通信残量情報格納手段)、53…通信実績受信部(通信実績受信手段)、54…通信実績合算部(通信実績合算手段)、55…通信量比較部(通信量比較手段)、56…規制信号送信部(規制信号送信手段)NW…通信ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末と通信先との間で送受信される通信データを中継する複数の交換機と、前記複数の交換機と接続されて、前記端末と前記通信先との間での通信を制御する制御装置とを備える通信制御システムであって、
前記複数の交換機のそれぞれは、
前記端末と前記通信先との間での通信実績を示す通信実績データを計測する通信状況計測手段と、
前記通信状況計測手段によって計測された前記端末に関する前記通信実績データを、該端末のユーザを識別するユーザ識別情報と共に前記制御装置に送信する通信実績送信手段とを有し、
前記制御装置は、
複数のユーザ識別情報と、通信可能な残量を示す通信残量データとを、関連付けて予め格納する通信残量情報格納手段と、
前記複数の交換機から前記ユーザ識別情報が付加された前記通信実績データを受信する通信実績受信手段と、
前記通信実績受信手段によって受信された複数の前記ユーザ識別情報に基づいて前記通信残量情報格納手段を参照し、前記複数のユーザ識別情報が相互に関連付けて格納されている場合には、当該複数のユーザ識別情報のそれぞれに対応して受信された複数の前記通信実績データを合算する通信実績合算手段と、
前記複数のユーザ識別情報に対応する前記通信残量データを前記通信残量情報格納手段から読み出し、該通信残量データと、前記通信実績合算手段による合算結果とを比較する通信量比較手段と、
前記通信量比較手段によって取得された比較結果に基づいて、前記複数のユーザ識別情報によって特定される端末による通信を規制する制御信号を送出する規制信号送信手段と、
を有することを特徴とする通信制御システム。
【請求項2】
前記規制信号送信手段は、前記比較結果に基づいて、前記端末による通信接続を切断するための切断信号を前記交換機に向けて送出する、
ことを特徴とする請求項1記載の通信制御システム。
【請求項3】
前記規制信号送信手段は、前記比較結果に基づいて、前記端末による通信における通信速度を制御するための制御信号を送出する、
ことを特徴とする請求項1記載の通信制御システム。
【請求項4】
複数の端末と通信先との間で送受信される通信データを中継する複数の交換機と、前記複数の交換機と接続されて、前記端末と前記通信先との間での通信を制御する制御装置とを用いた通信制御方法であって、
前記複数の交換機のそれぞれが、前記端末と前記通信先との間での通信実績を示す通信実績データを計測する通信状況計測ステップと、
前記複数の交換機のそれぞれが、前記通信状況計測ステップによって計測された前記端末に関する前記通信実績データを、該端末のユーザを識別するユーザ識別情報と共に前記制御装置に送信する通信実績送信ステップと、
前記制御装置の通信残量情報格納手段が、複数のユーザ識別情報と、通信可能な残量を示す通信残量データとを、関連付けて予め格納する通信残量情報格納ステップと、
前記制御装置の通信実績受信手段が、前記複数の交換機から前記ユーザ識別情報が付加された前記通信実績データを受信する通信実績受信ステップと、
前記制御装置の通信実績合算手段が、前記通信実績受信手段によって受信された複数の前記ユーザ識別情報に基づいて前記通信残量情報格納手段を参照し、前記複数のユーザ識別情報が相互に関連付けて格納されている場合には、当該複数のユーザ識別情報のそれぞれに対応して受信された複数の前記通信実績データを合算する通信実績合算ステップと、
前記制御装置の通信量比較手段が、前記複数のユーザ識別情報に対応する前記通信残量データを前記通信残量情報格納手段から読み出し、該通信残量データと、前記通信実績合算手段による合算結果とを比較する通信量比較ステップと、
前記制御装置の規制信号送信手段が、前記通信量比較手段によって取得された比較結果に基づいて、前記複数のユーザ識別情報によって特定される端末による通信を規制する制御信号を送出する規制信号送信ステップと、
を備えることを特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−138705(P2012−138705A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288786(P2010−288786)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】