通信制御装置
【課題】通信データを中継する装置において効率的な障害対応を実現する。
【解決手段】実施の1形態の通信制御装置100は、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号を受信する主信号受信部24と、複数の主信号のそれぞれに対して外部への転送処理を実行する主信号転送部26と、複数の主信号のいずれの伝送でも使用される経路を介して伝送されたOAM信号を、複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号として受信するOAM信号受信部28と、束OAM信号の異常を検出した場合、複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定する異常判定部18とを備える。
【解決手段】実施の1形態の通信制御装置100は、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号を受信する主信号受信部24と、複数の主信号のそれぞれに対して外部への転送処理を実行する主信号転送部26と、複数の主信号のいずれの伝送でも使用される経路を介して伝送されたOAM信号を、複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号として受信するOAM信号受信部28と、束OAM信号の異常を検出した場合、複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定する異常判定部18とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、データ通信技術に関し、特に、通信データを中継するための通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年通信業界では、SDH(Synchronous Digital Hierarchy)/SONET(Synchronous Optical NETwork)技術に基づく比較的高価な通信システムから、イーサネット(登録商標)技術に基づく比較的安価な通信システムへの切替が進みつつある。これは、通信事業者間を結ぶ大容量の基幹通信回線いわゆるバックボーン回線についてもいえる。
【0003】
しかし、バックボーン回線という性格上、通信品質を低下させることは許されないため、イーサネット網を構成する装置間でOAM(Operation Administration and Maintenance)信号を送受することがある。そして、このOAM信号の状態に基づき障害を検出して、その障害に対処することにより通信品質の維持を図ることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−033573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の通信システムでは、1つの物理回線を使用して複数の仮想回線を設定し、複数の仮想回線のそれぞれにてユーザデータを格納する主信号が伝送されることがある。また、通信システムの通信品質をさらに高めるために、物理回線の冗長化とOAM信号とが併用されることもある。具体的には、個々の仮想回線においてOAM信号を送受し、そのOAM信号の状態に応じて、個々の仮想回線の主信号を伝送する物理回線を切り替えることにより、通信の信頼性を向上させることもある。
【0006】
このような、個々の仮想回線を監視するためのOAM信号(以下、「個別OAM信号」とも呼ぶ。)を用いる方式では、個々の仮想回線の信頼性を向上することはできる。しかし、仮想回線の故障を検出するためには、複数の個別OAM信号それぞれの状態を個々に判定する必要があるため、仮想回線の故障の検出において長時間を要し、結果として障害復旧までに長時間を要してしまうと本発明者は考えた。
【0007】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、通信データを中継する装置において効率的な障害対応を実現する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の通信制御装置は、ユーザデータを格納する主信号について、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号を受信する主信号受信部と、複数の主信号のそれぞれに対して外部への転送処理を実行する主信号転送部と、複数の主信号のいずれの伝送でも使用される経路を介して伝送されたOAM(Operation Administration and Maintenance)信号を、複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号として受信するOAM信号受信部と、束OAM信号の異常を検出した場合、複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定する異常判定部と、を備える。
【0009】
「ユーザデータ」は、バックボーン回線を通じて伝送すべき通信データであり、エンド・ツー・エンドの終端装置(ユーザ端末等)間で送受されるデータであってもよい。「主信号」は、様々な通信レイヤで規定された様々なデータ形式であってもよい。例えば、レイヤ2のイーサネットフレームであってもよく、レイヤ3のIPパケットであってもよい。主信号の転送先となる「外部」は、主信号転送部の外部に存在する主信号処理主体を意味する。例えば、通信制御装置の外部に設置された交換機・伝送装置・スイッチ・ルータ等、様々な電気通信装置(以下、「NE」とも呼ぶ。)であってもよい。また、通信制御装置内部に設けられたスイッチファブリックやネットワークカード等、他の機能ブロックであってもよい。「OAM信号」は、IEEE802.1agで規定されたイーサネットOAMであってもよい。「複数の主信号のいずれの伝送でも使用される経路」は、いずれの主信号の伝送においても少なくともその一部において使用される通信経路であってもよい。例えば、特定の物理回線や1以上のNEであってもよく、NE内部のネットワークカード等、特定の機能ブロックであってもよい。
【0010】
この態様によると、束OAM信号が異常である場合は、複数の仮想回線にて伝送される複数の主信号のいずれもが異常となる。したがって、1つの束OAM信号が異常になったことをもって、複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定できる。すなわち、複数の仮想回線それぞれの状態を個々に判定することなく、複数の仮想回線の異常を一括して検出でき、各仮想回線に対する障害復旧処理を迅速に実行できる。
【0011】
主信号受信部は、現用系の経路および予備系の経路のそれぞれから複数の主信号を受信し、主信号転送部は、現用系の経路を介して伝送された束OAM信号に基づき現用系の経路を介する複数の仮想回線のいずれもが異常であると異常判定部により判定された場合、予備系の経路を介して受信された複数の主信号を外部へ転送してもよい。
【0012】
「現用系の経路」は現用系として定められた物理回線であってもよく、「予備系の経路」は予備系として定められた物理回線であってもよい。この態様によると、主信号の受信経路が冗長化されており、束OAM信号の異常が検出されると、予備系の経路から受信された主信号の転送に一括して切り替えられる。これにより、各仮想回線に対する障害復旧処理を迅速に実行できる。
【0013】
OAM信号受信部は、複数の仮想回線を個々に監視するためのOAM信号を個別OAM信号として、複数の仮想回線に対応づけられた複数の個別OAM信号をさらに受信し、異常判定部は、束OAM信号の状態が正常であることを条件として、複数の個別OAM信号それぞれの状態を判定してもよい。
【0014】
個別OAM信号は、監視対象の仮想回線にて伝送される主信号と同じ経路で伝送されるOAM信号であってもよい。この態様によると、束OAM信号による監視だけでなく、個別OAM信号による監視もあわせて実施されるため、通信システムの信頼性をより向上させることができる。例えば、ある仮想回線の通信経路の一部が束OAM信号の通信経路ではカバーされない場合でも、その仮想回線の異常を個別OAM信号の異常として検出し、その仮想回線に対する障害復旧処理を実施できる。また、複数の個別OAM信号の状態判定は、束OAM信号が正常であることが条件となる。これにより、束OAM信号が異常であれば、複数の個別OAM信号の状態判定がなされることなく、複数の仮想回線のいずれもが異常であると一括して判定されるため、複数の仮想回線の異常を迅速に検出できる。
【0015】
OAM信号受信部は、複数の仮想回線を個々に監視するためのOAM信号を個別OAM信号として、複数の仮想回線に対応づけられた複数の個別OAM信号をさらに受信し、異常判定部は、OAM信号受信部から束OAM信号と個別OAM信号の種別を特定しない異常を通知する割り込みを受け付けた際、複数の個別OAM信号それぞれの状態を判定するより前に、束OAM信号の状態を判定してもよい。
【0016】
OAM信号受信部はハードウェアにより実装されてよく、異常判定部はソフトウェアにより実装されてCPUにより機能発揮がなされてもよい。この態様によると、異常判定部への割り込みでは比較的単純な情報しか通知できないという制約がある場合でも、束OAM信号の状態判定が個別OAM信号に優先してなされる。これにより、束OAM信号が異常であれば、複数の個別OAM信号の状態判定がなされることなく、複数の仮想回線のいずれもが異常であると一括して判定されるため、複数の仮想回線の異常を迅速に検出できる。
【0017】
束OAM信号の状態および個別OAM信号の状態に応じて主信号の転送態様を変更させる転送態様変更部をさらに備えてもよい。主信号転送部は、ある仮想回線において主信号が受信された際、その仮想回線に対応づけられた個別OAM信号に基づく転送態様と、束OAM信号に基づく転送態様とのうち、より新しく設定された転送態様にしたがって当該主信号の転送処理を実行してもよい。
【0018】
「転送態様」は、主信号を転送するかもしくは廃棄するかであってもよい。「個別OAM信号に基づく転送態様」と「束OAM信号に基づく転送態様」は、それぞれのOAM信号に基づいて転送態様変更部により変更された結果の転送態様であってもよい。「より新しく設定された転送態様」は、最近実施された変更の結果としての転送態様であってもよい。この態様によると、束OAM信号に基づいて主信号の転送態様が変更された場合、より新しく設定された転送態様は束OAM信号に基づく転送態様となり、個別OAM信号に基づく転送態様に関わらず主信号の転送が可能になる。言い換えれば、束OAM信号に基づいて主信号の転送態様が変更された場合、その変更後の転送態様と合致させるよう個別OAM信号に基づく転送態様を個々に変更することなく、また、その変更が完了するまで待つことなく、迅速に主信号の転送処理を実行できる。
【0019】
複数の仮想回線のそれぞれについて、個別OAM信号に基づく転送態様の設定時を示す個別タイムスタンプと、主信号の転送態様とを対応づけて保持する個別回線情報保持部と、束OAM信号に基づく転送態様の設定時を示す束タイムスタンプと、主信号の転送態様とを対応づけて保持する束情報保持部と、をさらに備えてもよい。転送態様変更部は、個別タイムスタンプと束タイムスタンプとの少なくとも一方がオーバーフローした場合、双方のタイムスタンプを初期化するとともに、それぞれに対応づけられた主信号の転送態様を、より新しく設定された転送態様へ統一させてもよい。
【0020】
転送態様の設定時を示すタイムスタンプは、個別OAM信号と束OAM信号とのそれぞれに基づく転送態様の変更の前後関係を示すものである。例えば、変更の回数を示すものであってもよく、変更日時を示すものであってもよい。この態様によると、個別タイムスタンプまたは束タイムスタンプがオーバーフローした場合でも、個別回線情報保持部の情報と束情報保持部の情報とを整合させることにより、主信号の転送を適切に継続できる。
【0021】
転送態様変更部は、束OAM信号に基づいて主信号の転送態様を設定した場合は束タイムスタンプを順次増加させ、個別OAM信号に基づいて主信号の転送態様を設定した場合は個別タイムスタンプを束タイムスタンプと合致させ、主信号転送部は、束タイムスタンプと個別タイムスタンプとが合致する場合、個別タイムスタンプに対応づけられた転送態様にしたがって主信号の転送処理を実行し、転送態様変更部は、束タイムスタンプがオーバーフローした場合、束情報保持部の情報を更新後、個別回線情報保持部の情報を更新し、個別タイムスタンプおよび束タイムスタンプには、オーバーフローが発生したことを示すためのキャリービットが設けられており、主信号転送部は、個別回線情報保持部の情報が更新中であっても主信号の転送処理を実行し、束タイムスタンプのキャリービット値と個別タイムスタンプのキャリービット値とが不一致の場合は、束タイムスタンプに対応づけられた転送態様にしたがって主信号の転送処理を実行してもよい。
【0022】
この態様によると、束タイムスタンプの値は、個別タイムスタンプの値以上、すなわち同じもしくはより新しい変更時を示す値となる。したがって、束タイムスタンプのタイムスタンプ値が先にオーバーフローすることになる。束タイムスタンプがオーバーフローした場合は束情報保持部の情報が更新され、続いて個別回線情報保持部の情報が更新される。そして個別回線情報保持部の情報更新中は、束タイムスタンプのキャリービット値と個別タイムスタンプのキャリービット値とが不一致となるため、情報更新済の束情報保持部の情報にしたがって主信号の転送処理が実行される。すなわち、個別回線情報保持部の情報がバックグラウンドで更新中であっても、主信号の転送処理を実行することができる。
【0023】
束タイムスタンプおよび個別タイムスタンプのデータ長は、束OAM信号に基づく転送態様の変更が発生しうる間隔と当該データ長との両方に正相関する期間であって、個別回線情報保持部の情報の更新に許容される期間が、個別回線情報保持部の情報の更新に要する所定期間以上となるよう定められたものであってもよい。この態様によると、タイムスタンプのデータ長を適切な長さに定めることができる。また束タイムスタンプおよび個別タイムスタンプのデータ長は、上記更新に許容される期間が上記更新に要する所定期間以上となり、かつ、可及的に小さなデータ長となるよう定められてもよい。この態様によると、タイムスタンプのデータ長が可及的に小さくなり、タイムスタンプの更新効率を向上できる。
【0024】
本発明の別の態様もまた、通信制御装置である。この装置は、上流の外部装置から所定の経路で伝送された通信用のデータを受信する第1の入力側ネットワークカードと、上流の外部装置から所定の経路とは別の経路で伝送された通信用のデータを受信する第2の入力側ネットワークカードと、第1の入力側ネットワークカードと第2の入力側ネットワークカードとのいずれかから通信用のデータを取得して下流の外部装置へ送出する出力側ネットワークカードと、を備える。第1および第2の入力側ネットワークカードのそれぞれは、ユーザデータを格納する主信号について、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号を受信する主信号受信部と、複数の主信号のそれぞれに対して出力側ネットワークカードへの転送処理を実行する主信号転送部と、複数の主信号のいずれの伝送でも使用された経路を介して伝送されたOAM信号を、複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号として受信するOAM信号受信部と、を含むものであり、束OAM信号の異常を検出した場合、複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定する異常判定部と、をさらに備える。主信号転送部は、異常であると判定された仮想回線にて伝送された主信号については、出力側ネットワークカードへの転送を停止する。
【0025】
この態様によっても、上記同様に、複数の仮想回線それぞれの状態を個々に判定することなく、複数の仮想回線の異常を一括して検出でき、各仮想回線に対する障害復旧処理を迅速に実行できる。
【0026】
本発明のさらに別の態様もまた、通信制御装置である。この装置は、リング網を構成する複数の通信制御装置のうちの1つであって、ユーザデータを格納する主信号について、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号を受信する主信号受信部と、複数の主信号のそれぞれに対して外部への転送処理を実行する主信号転送部と、複数の主信号のいずれの伝送でも使用される経路であって、リング網における2以上の通信制御装置により形成される伝送区間の通信状態を示すOAM信号を、複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号として受信する束OAM受信部と、束OAM信号の異常を検出した場合、複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定する異常判定部と、を備える。
【0027】
この態様によると、リング網を構成する通信制御装置においても上記同様に、複数の仮想回線それぞれの状態を個々に判定することなく、複数の仮想回線の異常を一括して検出でき、各仮想回線に対する障害復旧処理を迅速に実行できる。
【0028】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、通信データを中継する装置において効率的な障害対応を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態の通信制御装置における切替制御の概略を示すフローチャートである。
【図2】実施の形態の通信システムの構成を示す図である。
【図3】図2の通信制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】転送情報保持部に格納されるデータの構成を示す図である。
【図5】個別タイムスタンプおよび束タイムスタンプの構成を示す図である。
【図6】通信制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】通信制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】図7のS46を詳細に示すフローチャートである。
【図9】図7のS48を詳細に示すフローチャートである。
【図10】個別回線情報および束情報の推移例を示す図である。
【図11】変形例の通信システムの構成を示す図である。
【図12】図11の第1の通信制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態について、その構成を説明する前に概要を説明する。
近年、通信システムの大容量化や多様化を背景として、仮想回線の切替制御をソフトウェアが担うようになってきている。その場合の動作の概略は、OAM信号の異常を検出したハードウェアからソフトウェアへ異常通知の割り込みを行い、ソフトウェアではどの仮想回線が異常であるかを検索する。そして、その検索の結果、異常であることが判明した仮想回線に対して切替制御を実施する。この場合、異常通知の割り込みがなされてから、切替制御が実施されるまでの期間が切替に要する期間となる。
【0032】
複数の仮想回線が監視対象である場合、従来は、複数の仮想回線のそれぞれを個々に監視するための個別OAM信号が通信制御装置間で送受され、個別OAM信号の状態に基づいて個々の仮想回線ごとに異常が検出されていた。しかし、この方法では監視対象となる仮想回線の数が増えるほど個々の仮想回線の異常検出に時間を要し、その結果、異常が発生した仮想回線の切替までに要する時間も増加してしまう。
【0033】
また通信制御装置においては、複数の仮想回線それぞれに対応づけられた情報記憶領域に、各仮想回線にて伝送された主信号の転送態様を格納することが一般的である。この場合に複数の仮想回線が異常になると、主信号の転送処理を再開する前に、複数の情報記憶領域のデータを書き換える必要がある。したがって、多くの仮想回線が一括して故障した場合には、多数のデータ書き換えが発生し、主信号の転送処理の再開までに長時間を要することがあった。特に、通信制御装置が汎用のCPUやRAM(Random Access Memory)で構成される場合には、さらに長時間を要することになる。
【0034】
そこで本実施の形態では、従来の個別OAM信号に加えて、複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号を送受する通信制御装置を提案する。この束OAM信号は、複数の仮想回線に対応づけられたOAM信号であり、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号について、いずれの主信号の伝送においても少なくともその一部で使用される通信経路を介して伝送される。言い換えれば、いずれの個別OAM信号の伝送においても使用される通信経路を介して伝送される。したがって、束OAM信号が異常であれば、全ての個別OAM信号も異常であることになり、すなわち全ての仮想回線も異常であることになる。
【0035】
図1は、実施の形態の通信制御装置における切替制御の概略を示すフローチャートである。通信制御装置は、束OAM信号もしくは個別OAM信号の異常を検出する(S10)。束OAM信号が異常であった場合(S12のY)、その束OAM信号と対応づけられた全仮想回線に対して異常時処理、例えば予備系の物理回線への切替処理を実行する(S14)。なお後述するように、本実施の形態における切替処理は、仮想回線を介して受信する主信号の転送態様の変更、すなわち主信号を外部へ転送するかもしくは廃棄するかの切替として実行される。
【0036】
束OAM信号が正常であった場合(S12のN)、個々の仮想回線数だけ繰り返される個別回線ループが実行される。このループ内では、複数の個別OAM信号の状態が個々に判定される。そして特定の個別OAM信号が異常であった場合(S16のY)、その個別OAM信号に対応する(その個別OAM信号が監視対象とする)特定の仮想回線に対して異常時処理を実行する(S18)。特定の個別OAM信号が正常であれば(S16のN)、S18はスキップされる。
【0037】
図1に示す切替制御により、束OAM信号が異常であれば、複数の個別OAM信号それぞれの状態によらず、その束OAM信号に対応づけられた全ての仮想回線が異常であると判定される。したがって、複数の個別OAM信号それぞれの状態判定を経ることなく仮想回線の切替処理が実行可能になる。その結果、複数の仮想回線が一括して故障した場合でも迅速な障害復旧を実現できる。
【0038】
また実施の形態の通信制御装置は、個別OAM信号に基づく切替処理の結果である転送態様(以下、「個別回線転送態様」とも呼ぶ。)と、束OAM信号に基づく切替処理の結果である転送態様(以下、「束転送態様」とも呼ぶ。)とを別個に管理する。そして、それぞれの転送態様には、個別OAM信号に基づく切替処理と束OAM信号に基づく切替処理との前後関係を示すためのタイムスタンプが対応づけて保持される。通信制御装置は、そのタイムスタンプを参照して、より新しく実行された切替処理の結果である転送態様にしたがって、主信号の転送処理を実行する。これにより、束OAM信号の異常が検出された場合は、束転送態様とそのタイムスタンプを書き換えればよく、複数の仮想回線それぞれについての個別回線転送態様の書き換えは不要になる。その結果、仮想回線の切替処理を迅速に実行できる。
【0039】
図2は、実施の形態の通信システムの構成を示す。通信システム1000は、通信制御装置100と、上流側装置102と、下流側装置104と、NE−A106aと、NE−B106bと、NE−C106cと、NE−D106dとを備える。なお、通信制御装置100・上流側装置102・下流側装置104は便宜的な名称であり、これらはいずれも各種NEである。以下では、上流側装置102〜NE−A106a〜NE−B106b〜通信制御装置100の通信経路を第1通信経路108と呼び、上流側装置102〜NE−C106c〜NE−D106d〜通信制御装置100の通信経路を第2通信経路110と称する。
【0040】
本実施の形態の各装置はレイヤ2の通信網を構成し、IEEE802.1Qで規定されたタグ付きのイーサネットフレームを主信号およびOAM信号として送受することとする。タグフィールドにはVLAN(Virtual Local Area Network)−IDが設定される。本実施の形態では、VLAN−ID「100」〜「199」のVLANのそれぞれが仮想回線として設定される。具体的には100個のVLANにて、言い換えれば100種類のVLAN−IDが設定された主信号および個別OAM信号が伝送される。またVLAN−ID「200」のVLANは、束OAM信号が伝送される仮想回線として設定される。
【0041】
通信制御装置100は、上流側装置102から送信された主信号を下流側装置104に転送する。具体的には、上流側装置102は、第1通信経路108と第2通信経路110の両方に対して、主信号・個別OAM信号・束OAM信号を送信する。通信制御装置100は、第1通信経路108と第2通信経路110の両方から、主信号・個別OAM信号・束OAM信号を受信する。そして、第1通信経路108か第2通信経路110のいずれかから受信した主信号を下流側装置104へ送信する。
【0042】
図3は、図2の通信制御装置100の機能構成を示すブロック図である。通信制御装置100は、第1の入力側カード10と、第2の入力側カード12と、SW部14と、出力側カード16と、異常判定部18と、カウント保持部19と、転送態様変更部20とを有する。
【0043】
本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0044】
ただし、本実施の形態の通信制御装置100においては、異常判定部18および転送態様変更部20はソフトウェアにより実装されたものであり、CPUにより実行されることとする。また他の機能ブロックは各種電子回路等のハードウェアにより実装されることとする。なお各種情報保持部は、RAMにより実装されることとする。
【0045】
出力側カード16は、EG(EGress Block)とも呼ばれるネットワークカードであり、SW部14から受け付けた主信号を下流側装置104へ送信する。SW部14は、スイッチファブリックであり、第1の入力側カード10および第2の入力側カード12から送出された主信号を出力側カード16へ転送する。SW部14における単位時間当たりの処理データ量には上限があるため、第1の入力側カード10および第2の入力側カード12の両方から主信号を受け付けることはできない。したがって、第1の入力側カード10か第2の入力側カード12のいずれか一方が、SW部14に対して主信号を送出する。この切替制御は後述する転送態様変更部20により実行される。
【0046】
第1の入力側カード10と第2の入力側カード12のそれぞれは、IG(InGress Block)とも呼ばれるネットワークカードであり、上流側装置102から送信された通信データを受け付ける。第1の入力側カード10と第2の入力側カード12とのそれぞれは、転送情報保持部22と、主信号受信部24と、主信号転送部26と、OAM信号受信部28とを含む。
【0047】
転送情報保持部22は、主信号の転送態様を示す情報を保持する記憶領域である。図4は、転送情報保持部22に格納されるデータの構成を示す。図4の(a)は、仮想回線のそれぞれについて、個別回線転送態様へアクセスするための回線情報ポインタと、束転送態様へアクセスするための束情報ポインタとを対応づけて格納するポインタテーブルを示す。同図では、束OAM信号Aに対して、仮想回線a・仮想回線b・仮想回線cが監視対象の仮想回線として対応づけられている。
【0048】
図4の(b)は、仮想回線のそれぞれについて、転送または廃棄を示す個別回線転送態様と、個別回線転送態様の設定時を示すタイムスタンプ(以下、「個別タイムスタンプ」とも呼ぶ。)とが対応づけられた個別回線情報を保持するテーブルである。この個別回線情報には、ポインタテーブルの回線情報ポインタを介してアクセスされる。
【0049】
図4の(c)は、束OAM信号のそれぞれについて、転送または廃棄を示す束転送態様と、束転送態様の設定時を示すタイムスタンプ(以下、「束タイムスタンプ」とも呼ぶ。)とが対応づけられた束情報を保持するテーブルである。この束転送情報には、ポインタテーブルの束情報ポインタを介してアクセスされる。
【0050】
図5は、個別タイムスタンプおよび束タイムスタンプの構成を示す。両タイムスタンプとも、2ビット目以降のnビットには転送態様の切替回数を示す値が設定される。先頭の1ビットは、切替回数の桁あふれを示すためのキャリービットである。このキャリービットの値は、切替回数がオーバーフローした際に0から1もしくは1から0へ変更される。
【0051】
主信号受信部24は、上流側装置102から送信された主信号を受信する。具体的には、第1の入力側カード10の主信号受信部24は、第1通信経路108で伝送された主信号を受信し、第2の入力側カード12の主信号受信部24は、第2通信経路110で伝送された主信号を受信する。
【0052】
主信号転送部26は、主信号受信部24において主信号が受信された際、転送情報保持部22に保持された個別回線転送態様か束転送態様のいずれか一方にしたがって、その主信号をSW部14へ転送し、もしくは転送することなく廃棄する。原則として、個別回線転送態様と束転送態様のうちより新しく更新された方の転送態様にしたがって主信号の転送処理を実行するが、その具体的な転送ロジックについては後述する。
【0053】
OAM信号受信部28は、上流側装置102から送信されたOAM信号を受信する。具体的には、第1の入力側カード10の主信号受信部24は、第1通信経路108で伝送された束OAM信号および個別OAM信号を受信し、第2の入力側カード12の主信号受信部24は、第2通信経路110で伝送された束OAM信号および個別OAM信号を受信する。なお、主信号受信部24とOAM信号受信部28とは、物理的には同一の受信手段として構成されてよいことはもちろんである。
【0054】
OAM信号受信部28は、束OAM信号および複数の個別OAM信号のそれぞれを受信すると、それぞれのOAM信号の受信時刻を図示しない記憶領域(以下、「OAM受信履歴テーブル」とも呼ぶ。)へ逐次記録する。またOAM信号受信部28は、束OAM信号および複数の個別OAM信号のそれぞれについて、先のOAM信号を受信してから、予め定められた所定期間内に次のOAM信号を受信するか否かをタイマ監視する。所定期間内に次のOAM信号を受信しない場合、異常判定部18(具体的には異常判定部18の機能を実行するCPU)に対して、OAM信号に異常が発生した旨を通知するための所定のハードウェア割り込みを行う。なお、この割り込みでは、異常が発生したOAM信号が束OAM信号か個別OAM信号か、また、どの仮想回線に対応する個別OAM信号かについては通知されない。
【0055】
異常判定部18は、OAM信号に異常が発生した旨の割り込みを検出すると、図示しないOAM受信履歴テーブルを参照して、所定期間内に未受信のOAM信号を検索し、異常が発生したOAM信号の種別を特定する。具体的には、束OAM信号の状態を判定後、束OAM信号が正常であった場合に限り、複数の個別OAM信号それぞれの状態を判定する。異常判定部18は、束OAM信号もしくは1以上の特定の個別OAM信号について、異常が発生した旨を転送態様変更部20へ通知する。
【0056】
カウント保持部19は、個別タイムスタンプおよび束タイムスタンプとして設定されるタイムスタンプ値の設定基準となるカウンタ値を保持する記憶領域である。このカウンタ値の形式は、図5で示したタイムスタンプ値の形式と同じである。
【0057】
転送態様変更部20は、個別OAM信号の異常が通知された際、その個別OAM信号に対応づけられた仮想回線(以下、「異常仮想回線」とも呼ぶ。)について、転送情報保持部22の異常仮想回線に関する個別回線情報を更新する。具体的には、カウント保持部19のカウンタ値を個別タイムスタンプへ設定する。それとともに、異常仮想回線を監視する束OAM信号の束転送態様を、転送から廃棄、もしくは廃棄から転送へ切り替えた転送態様を個別転送態様へ設定する。
【0058】
また転送態様変更部20は、束OAM信号の異常が通知された場合、その束OAM信号に対応づけられた転送情報保持部22の束情報を更新する。具体的には、カウント保持部19に保持されたカウント値を1つ増加させた新たなカウント値を束タイムスタンプへ設定する。それとともに、その新たなカウント値をカウント保持部19へ記録する。また、束転送態様を転送から廃棄、もしくは廃棄から転送へ切り替える。
【0059】
束タイムスタンプがオーバーフローした場合、すなわちキャリービット値が0から1、もしくは1から0へ変化した場合、転送態様変更部20は束情報を更新する。このとき、束タイムスタンプには、変化後のキャリービットおよび0に初期化した切替回数値を設定する。その後、更新後の束情報を複数の個別回線情報のそれぞれに順次反映させる。具体的には、個別タイムスタンプを更新後の束タイムスタンプと合致させるよう更新するとともに、個別転送態様を更新後の束転送態様と合致させるよう更新する。
【0060】
転送態様変更部20は、束情報を更新するとその旨を主信号転送部26へ通知し、その通知を受け付けた主信号転送部26は個別回線情報が更新中であっても主信号の転送処理(転送もしくは廃棄)を再開する。転送態様変更部20は、主信号転送部26による主信号の転送処理と並行して個別回線情報を更新する。言い換えれば、束タイムスタンプのオーバーフローに伴う個別回線情報の更新処理は、主信号の転送処理のバックグラウンド処理として実行される。
【0061】
ところで、束タイムスタンプおよび個別タイムスタンプを高速に更新するためには、それらの切替回数フィールドのビット長(すなわち図5のnビット)ができるだけ小さい値であることが望ましい。その一方で、束タイムスタンプがオーバーフローした場合、主信号の転送処理と並行して個別回線情報が更新されるため、切替回数フィールドのビット長にはある程度の長さが要求される。なぜなら、個別回線情報の更新処理が未完了のうちに束タイムスタンプが再度オーバーフローすると、束タイムスタンプのキャリービットと個別タイムスタンプのキャリービットとが一致するため、それらの前後関係が不明になってしまうからである。
【0062】
ここで、切替回数フィールドのビット長をnビットとし、束OAM信号の異常による束情報の更新がA(ミリ秒)を最低単位として発生しうるとすると、
個別回線情報の更新処理に許容される時間(「許容時間」)=束タイムスタンプが次にオーバーフローする最短時間
許容時間=A×2n
となる。また、個別回線情報の更新処理に要する時間(「必要時間」)は予め測定される所与値であり、必要時間≦許容時間の関係を満足すればよいため、nの値は、
必要時間≦A×2n
を満たす必要がある。さらに言えば、nの値は可及的に小さいことが望ましいため、上記関係を満たす最少のnが最も望ましい切替回数フィールドのビット長である。
【0063】
なお転送態様変更部20は、第1の入力側カード10における主信号の転送態様と、第2の入力側カード12における主信号の転送態様とが互いに補完関係となるよう設定する。例えば初期状態において、第1通信経路108が現用系の通信経路、第2通信経路110が予備系の通信経路と定められ、第1の入力側カード10における転送態様が「転送」、第2の入力側カード12における転送態様が「廃棄」と定められているとする。この場合に第1の入力側カード10における束OAM信号の異常が検出されると、第1の入力側カード10における転送態様を「廃棄」へ切り替えるとともに、第2の入力側カード12における転送態様を「転送」へ切り替える。個別OAM信号の異常が検出された場合も同様である。これにより、主信号伝送の信頼性を向上させるとともに、第1の入力側カード10および第2の入力側カード12から重複する主信号が送出されることを抑止できる。
【0064】
以上の構成による動作を以下説明する。
図6は、通信制御装置100の動作を示すフローチャートである。同図は、主信号の転送態様の切替制御に関する動作を示している。OAM信号受信部28は、上流側装置102から送信されたOAM信号を受信して、その受信状況によりOAM信号の異常を検出した場合は異常判定部18に対する割り込み処理を実行する(S20)。異常判定部18は、異常が発生したOAM信号を特定する。具体的には、束OAM信号の状態を判定した後、束OAM信号が正常である場合は複数の個別OAM信号の状態を個々に判定する(S22)。
【0065】
束OAM信号は正常で個別OAM信号が異常である場合(S24のN)、転送態様変更部20は、第1の入力側カード10および第2の入力側カード12それぞれの転送情報保持部22に保持された個別回線情報を更新する(S26)。束OAM信号が異常である場合(S24のY)、転送態様変更部20は第1の入力側カード10および第2の入力側カード12それぞれの転送情報保持部22に保持された束情報を更新する(S28)。束情報の更新により束タイムスタンプのキャリービット値が変化した場合(S30のY)、転送態様変更部20は、第1の入力側カード10および第2の入力側カード12それぞれの転送情報保持部22に保持された個別回線情報を束情報と合致させる(S32)。束タイムスタンプのキャリービット値に変化がなければ(S30のN)、S32はスキップされる。
【0066】
図7は、通信制御装置100の動作を示すフローチャートである。同図は、主信号の転送処理に関する動作を示しており、第1の入力側カード10および第2の入力側カード12で共通である。主信号受信部24は、上流側装置102から送信された主信号を受信する(S40)。主信号転送部26は、転送情報保持部22に保持された束タイムスタンプと個別タイムスタンプとを参照し(S42)、束タイムスタンプのキャリービットが1である場合(S44のY)、後述する第1の転送態様決定処理を実行する(S46)。また束タイムスタンプのキャリービットが0である場合(S44のN)、後述する第2の転送態様決定処理を実行する(S48)。主信号転送部26は、第1の転送態様決定処理もしくは第2の転送態様決定処理において採用された転送態様にしたがって、主信号の転送処理(SW部14への送出、もしくは廃棄)を実行する(S50)。
【0067】
図8は、図7のS46を詳細に示すフローチャートである。個別タイムスタンプのキャリービットが1であり(S60のY)、束タイムスタンプの切替回数と個別タイムスタンプの切替回数とが同じであれば(S62のN)、主信号転送部26は個別回線転送態様を選択する(S64)。束タイムスタンプの切替回数が個別タイムスタンプの切替回数より大きい(S62のY)、もしくは、個別タイムスタンプのキャリービットが0であれば(S60のN)、主信号転送部26は束転送態様を選択する(S66)。S60のNは、キャリービット値が異なる場合、すなわち束タイムスタンプのオーバーフローに伴う個別回線情報の更新中を示すからである。
【0068】
図9は、図7のS48を詳細に示すフローチャートである。個別タイムスタンプのキャリービットが0であり(S70のN)、束タイムスタンプの切替回数と個別タイムスタンプの切替回数とが同じであれば(S72のN)、主信号転送部26は個別回線転送態様を選択する(S74)。束タイムスタンプの切替回数が個別タイムスタンプの切替回数より大きい(S72のY)、もしくは、個別タイムスタンプのキャリービットが1であれば(S70のY)、主信号転送部26は束転送態様を選択する(S76)。S70のYも、束タイムスタンプのオーバーフローに伴う個別回線情報の更新中であることを示すからである。
【0069】
図10は、個別回線情報および束情報の推移例を示す。同図は、第1の入力側カード10に保持された1つの仮想回線に対応する個別回線情報と束情報とを示している。同図において丸を付した転送態様は、第1の入力側カード10の主信号転送部26において選択される転送態様を示している。状態30では、個別タイムスタンプ=束タイムスタンプであるため個別回線転送態様が選択される。状態32では、個別タイムスタンプ<束タイムスタンプであるため束転送態様が選択される。状態34では、個別タイムスタンプ=束タイムスタンプであるため再び個別回線転送態様が選択される。なお状態34では、第2の入力側カード12において個別OAM信号の異常が検出されたため、第1の入力側カード10では「転送」へ切り替えられている。
【0070】
続いて、状態36および状態42では、個別タイムスタンプ<束タイムスタンプであるため束転送態様が選択される。状態38および状態44では、キャリービット値が異なるため束転送態様が選択される。状態40および46では、個別タイムスタンプ=束タイムスタンプであるため個別回線転送態様が選択される。なお、第2の入力側カード12に保持される個別回線情報と束情報には、タイムスタンプ値は同じものが設定される一方で、転送態様には逆の値が設定されることになる。
【0071】
本実施の形態の通信制御装置100によれば、束OAM信号の状態に基づいて、複数の仮想回線の異常を一括して検出する。これにより、複数の仮想回線それぞれの状態を個々に判定することなく、各仮想回線に対する障害復旧処理を迅速に実行できる。また、束転送態様と個別転送態様とを別個に管理し、主信号の転送においてはより新しく設定された転送態様を選択する。これにより、複数の仮想回線が一括して異常になった場合でも、個々の個別転送態様を変更することなく、新たな転送態様を迅速に適用できる。また、束転送態様と個別転送態様の前後関係を判別するためのタイムスタンプのオーバーフロー時にも、束転送態様と個別転送態様の整合性を維持できる。また、その整合性を維持するための個別転送態様の書き換え処理は、主信号転送処理のバックグラウンドにて実行されるため、主信号転送処理の遅延を回避できる。
【0072】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0073】
変形例として、本発明の技術思想は、通信網の物理的なトポロジがリング状態に構成されたリング網に対しても適用可能である。図11は、変形例の通信システムの構成を示す。通信システム2000では、第1の通信制御装置200a、第2の通信制御装置200b、第3の通信制御装置200c、第4の通信制御装置200d、第5の通信制御装置200eがリング網202を介して接続される。
【0074】
ここで、第1の通信制御装置200a、第3の通信制御装置200c、第4の通信制御装置200dのそれぞれは、通信網204を介してNE(NE−A206a、NE−B206b、NE−C206c)と接続されている。通信システム2000では、NE−A206a〜NE−B206b間の仮想回線と、NE−A206a〜NE−C206c間の仮想回線とが形成される。初期状態においては、それらの仮想回線にて伝送される主信号は、第1の通信制御装置200a〜第2の通信制御装置200b〜第3の通信制御装置200c〜第4の通信制御装置200dの経路を介して伝送されることとする。
【0075】
また通信システム2000では、第2の通信制御装置200b〜第3の通信制御装置200c間を伝送経路に含む仮想回線を一括して管理するための束OAM信号が定義されている。この束OAM信号は、第2の通信制御装置200b〜第3の通信制御装置200c間の通信状態を各通信制御装置に通知するためのものである。したがって、NE−A206a〜NE−B206b間の仮想回線およびNE−A206a〜NE−C206c間の仮想回線は、その束OAM信号で監視される。なお実施の形態と同様に、通信システム2000においては、束OAM信号に加えて個々の仮想回線それぞれを監視するための個別OAM信号も伝送される。
【0076】
図12は、図11の第1の通信制御装置200aの機能構成を示すブロック図である。第1の通信制御装置200aは、主信号受信部24と、OAM信号受信部28と、異常判定部18と、カウント保持部19と、転送態様変更部20と、転送処理部50とを有する。なお、図3に示した機能ブロックと同様の機能ブロックについては同じ符号を付しており、以下重複する説明は省略する。
【0077】
主信号受信部24は、NE−A106aから送信された主信号を受信する。OAM信号受信部28は、各種の通信制御装置およびNEから送信された束OAM信号および個別OAM信号を受信する。転送態様変更部20は、束OAM信号の状態および個別OAM信号の状態に応じて、後述する第1方向転送情報保持部22aおよび第2方向転送情報保持部22bに保持される束情報・個別回線情報を更新する。
【0078】
転送処理部50は、第1方向転送情報保持部22aと、第2方向転送情報保持部22bと、第1方向主信号転送部26aと、第2方向主信号転送部26bとを含む。第1方向転送情報保持部22aおよび第2方向転送情報保持部22bは、実施の形態の転送情報保持部22に対応する。また、第1方向主信号転送部26aおよび第2方向主信号転送部26bは、実施の形態の主信号転送部26に対応する。
【0079】
第1方向転送情報保持部22aは、リング網202の第1方向(ここでは第2の通信制御装置200b側)への主信号の転送態様を保持する。第2方向転送情報保持部22bは、リング網202の第2方向(ここでは第5の通信制御装置200e側)への主信号の転送態様を保持する。また、第1方向主信号転送部26aは、第1方向転送情報保持部22aに保持された転送態様にしたがって、リング網202の第1方向への主信号の転送処理(転送もしくは廃棄)を実行する。第2方向主信号転送部26bは、第2方向転送情報保持部22bに保持された転送態様にしたがって、リング網202の第2方向への主信号の転送処理を実行する。
【0080】
具体的な動作として、初期状態において、第2の通信制御装置200b〜第3の通信制御装置200c間の故障を示す束OAM信号がOAM信号受信部28において受信されると、異常判定部18はその故障を特定して転送態様変更部20へ通知する。転送態様変更部20は、第1方向転送情報保持部22aに保持される束転送態様を「廃棄」へ切り替えるとともに、第2方向転送情報保持部22bに保持される束転送態様を「転送」へ切り替える。これにより、リング網202における特定の伝送区間の故障に伴って複数の仮想回線が一括して故障した場合でも、各仮想回線の切替処理、すなわち主信号の送出方向の切替を迅速に実行できる。
【0081】
実施の形態の通信制御装置100は、OAM信号の状態に応じて、上流側装置102から受け付けられた主信号を、第1の入力側カード10か第2の入力側カード12のいずれかによりSW部14へ送出した。これに対し、変形例の第1の通信制御装置200aは、OAM信号の状態に応じて、NE−A206aから受け付けられた主信号を、第1の方向か第2の方向のいずれかによりリング網202へ送出するものである。したがって、本変形例においても実施の形態と同様の効果を奏することは当業者には理解されるところである。
【0082】
請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0083】
18 異常判定部、 19 カウント保持部、 20 転送態様変更部、 22 転送情報保持部、 24 主信号受信部、 26 主信号転送部、 28 OAM信号受信部、 100 通信制御装置、 202 リング網、 1000,2000 通信システム。
【技術分野】
【0001】
この発明は、データ通信技術に関し、特に、通信データを中継するための通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年通信業界では、SDH(Synchronous Digital Hierarchy)/SONET(Synchronous Optical NETwork)技術に基づく比較的高価な通信システムから、イーサネット(登録商標)技術に基づく比較的安価な通信システムへの切替が進みつつある。これは、通信事業者間を結ぶ大容量の基幹通信回線いわゆるバックボーン回線についてもいえる。
【0003】
しかし、バックボーン回線という性格上、通信品質を低下させることは許されないため、イーサネット網を構成する装置間でOAM(Operation Administration and Maintenance)信号を送受することがある。そして、このOAM信号の状態に基づき障害を検出して、その障害に対処することにより通信品質の維持を図ることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−033573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の通信システムでは、1つの物理回線を使用して複数の仮想回線を設定し、複数の仮想回線のそれぞれにてユーザデータを格納する主信号が伝送されることがある。また、通信システムの通信品質をさらに高めるために、物理回線の冗長化とOAM信号とが併用されることもある。具体的には、個々の仮想回線においてOAM信号を送受し、そのOAM信号の状態に応じて、個々の仮想回線の主信号を伝送する物理回線を切り替えることにより、通信の信頼性を向上させることもある。
【0006】
このような、個々の仮想回線を監視するためのOAM信号(以下、「個別OAM信号」とも呼ぶ。)を用いる方式では、個々の仮想回線の信頼性を向上することはできる。しかし、仮想回線の故障を検出するためには、複数の個別OAM信号それぞれの状態を個々に判定する必要があるため、仮想回線の故障の検出において長時間を要し、結果として障害復旧までに長時間を要してしまうと本発明者は考えた。
【0007】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、通信データを中継する装置において効率的な障害対応を実現する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の通信制御装置は、ユーザデータを格納する主信号について、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号を受信する主信号受信部と、複数の主信号のそれぞれに対して外部への転送処理を実行する主信号転送部と、複数の主信号のいずれの伝送でも使用される経路を介して伝送されたOAM(Operation Administration and Maintenance)信号を、複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号として受信するOAM信号受信部と、束OAM信号の異常を検出した場合、複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定する異常判定部と、を備える。
【0009】
「ユーザデータ」は、バックボーン回線を通じて伝送すべき通信データであり、エンド・ツー・エンドの終端装置(ユーザ端末等)間で送受されるデータであってもよい。「主信号」は、様々な通信レイヤで規定された様々なデータ形式であってもよい。例えば、レイヤ2のイーサネットフレームであってもよく、レイヤ3のIPパケットであってもよい。主信号の転送先となる「外部」は、主信号転送部の外部に存在する主信号処理主体を意味する。例えば、通信制御装置の外部に設置された交換機・伝送装置・スイッチ・ルータ等、様々な電気通信装置(以下、「NE」とも呼ぶ。)であってもよい。また、通信制御装置内部に設けられたスイッチファブリックやネットワークカード等、他の機能ブロックであってもよい。「OAM信号」は、IEEE802.1agで規定されたイーサネットOAMであってもよい。「複数の主信号のいずれの伝送でも使用される経路」は、いずれの主信号の伝送においても少なくともその一部において使用される通信経路であってもよい。例えば、特定の物理回線や1以上のNEであってもよく、NE内部のネットワークカード等、特定の機能ブロックであってもよい。
【0010】
この態様によると、束OAM信号が異常である場合は、複数の仮想回線にて伝送される複数の主信号のいずれもが異常となる。したがって、1つの束OAM信号が異常になったことをもって、複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定できる。すなわち、複数の仮想回線それぞれの状態を個々に判定することなく、複数の仮想回線の異常を一括して検出でき、各仮想回線に対する障害復旧処理を迅速に実行できる。
【0011】
主信号受信部は、現用系の経路および予備系の経路のそれぞれから複数の主信号を受信し、主信号転送部は、現用系の経路を介して伝送された束OAM信号に基づき現用系の経路を介する複数の仮想回線のいずれもが異常であると異常判定部により判定された場合、予備系の経路を介して受信された複数の主信号を外部へ転送してもよい。
【0012】
「現用系の経路」は現用系として定められた物理回線であってもよく、「予備系の経路」は予備系として定められた物理回線であってもよい。この態様によると、主信号の受信経路が冗長化されており、束OAM信号の異常が検出されると、予備系の経路から受信された主信号の転送に一括して切り替えられる。これにより、各仮想回線に対する障害復旧処理を迅速に実行できる。
【0013】
OAM信号受信部は、複数の仮想回線を個々に監視するためのOAM信号を個別OAM信号として、複数の仮想回線に対応づけられた複数の個別OAM信号をさらに受信し、異常判定部は、束OAM信号の状態が正常であることを条件として、複数の個別OAM信号それぞれの状態を判定してもよい。
【0014】
個別OAM信号は、監視対象の仮想回線にて伝送される主信号と同じ経路で伝送されるOAM信号であってもよい。この態様によると、束OAM信号による監視だけでなく、個別OAM信号による監視もあわせて実施されるため、通信システムの信頼性をより向上させることができる。例えば、ある仮想回線の通信経路の一部が束OAM信号の通信経路ではカバーされない場合でも、その仮想回線の異常を個別OAM信号の異常として検出し、その仮想回線に対する障害復旧処理を実施できる。また、複数の個別OAM信号の状態判定は、束OAM信号が正常であることが条件となる。これにより、束OAM信号が異常であれば、複数の個別OAM信号の状態判定がなされることなく、複数の仮想回線のいずれもが異常であると一括して判定されるため、複数の仮想回線の異常を迅速に検出できる。
【0015】
OAM信号受信部は、複数の仮想回線を個々に監視するためのOAM信号を個別OAM信号として、複数の仮想回線に対応づけられた複数の個別OAM信号をさらに受信し、異常判定部は、OAM信号受信部から束OAM信号と個別OAM信号の種別を特定しない異常を通知する割り込みを受け付けた際、複数の個別OAM信号それぞれの状態を判定するより前に、束OAM信号の状態を判定してもよい。
【0016】
OAM信号受信部はハードウェアにより実装されてよく、異常判定部はソフトウェアにより実装されてCPUにより機能発揮がなされてもよい。この態様によると、異常判定部への割り込みでは比較的単純な情報しか通知できないという制約がある場合でも、束OAM信号の状態判定が個別OAM信号に優先してなされる。これにより、束OAM信号が異常であれば、複数の個別OAM信号の状態判定がなされることなく、複数の仮想回線のいずれもが異常であると一括して判定されるため、複数の仮想回線の異常を迅速に検出できる。
【0017】
束OAM信号の状態および個別OAM信号の状態に応じて主信号の転送態様を変更させる転送態様変更部をさらに備えてもよい。主信号転送部は、ある仮想回線において主信号が受信された際、その仮想回線に対応づけられた個別OAM信号に基づく転送態様と、束OAM信号に基づく転送態様とのうち、より新しく設定された転送態様にしたがって当該主信号の転送処理を実行してもよい。
【0018】
「転送態様」は、主信号を転送するかもしくは廃棄するかであってもよい。「個別OAM信号に基づく転送態様」と「束OAM信号に基づく転送態様」は、それぞれのOAM信号に基づいて転送態様変更部により変更された結果の転送態様であってもよい。「より新しく設定された転送態様」は、最近実施された変更の結果としての転送態様であってもよい。この態様によると、束OAM信号に基づいて主信号の転送態様が変更された場合、より新しく設定された転送態様は束OAM信号に基づく転送態様となり、個別OAM信号に基づく転送態様に関わらず主信号の転送が可能になる。言い換えれば、束OAM信号に基づいて主信号の転送態様が変更された場合、その変更後の転送態様と合致させるよう個別OAM信号に基づく転送態様を個々に変更することなく、また、その変更が完了するまで待つことなく、迅速に主信号の転送処理を実行できる。
【0019】
複数の仮想回線のそれぞれについて、個別OAM信号に基づく転送態様の設定時を示す個別タイムスタンプと、主信号の転送態様とを対応づけて保持する個別回線情報保持部と、束OAM信号に基づく転送態様の設定時を示す束タイムスタンプと、主信号の転送態様とを対応づけて保持する束情報保持部と、をさらに備えてもよい。転送態様変更部は、個別タイムスタンプと束タイムスタンプとの少なくとも一方がオーバーフローした場合、双方のタイムスタンプを初期化するとともに、それぞれに対応づけられた主信号の転送態様を、より新しく設定された転送態様へ統一させてもよい。
【0020】
転送態様の設定時を示すタイムスタンプは、個別OAM信号と束OAM信号とのそれぞれに基づく転送態様の変更の前後関係を示すものである。例えば、変更の回数を示すものであってもよく、変更日時を示すものであってもよい。この態様によると、個別タイムスタンプまたは束タイムスタンプがオーバーフローした場合でも、個別回線情報保持部の情報と束情報保持部の情報とを整合させることにより、主信号の転送を適切に継続できる。
【0021】
転送態様変更部は、束OAM信号に基づいて主信号の転送態様を設定した場合は束タイムスタンプを順次増加させ、個別OAM信号に基づいて主信号の転送態様を設定した場合は個別タイムスタンプを束タイムスタンプと合致させ、主信号転送部は、束タイムスタンプと個別タイムスタンプとが合致する場合、個別タイムスタンプに対応づけられた転送態様にしたがって主信号の転送処理を実行し、転送態様変更部は、束タイムスタンプがオーバーフローした場合、束情報保持部の情報を更新後、個別回線情報保持部の情報を更新し、個別タイムスタンプおよび束タイムスタンプには、オーバーフローが発生したことを示すためのキャリービットが設けられており、主信号転送部は、個別回線情報保持部の情報が更新中であっても主信号の転送処理を実行し、束タイムスタンプのキャリービット値と個別タイムスタンプのキャリービット値とが不一致の場合は、束タイムスタンプに対応づけられた転送態様にしたがって主信号の転送処理を実行してもよい。
【0022】
この態様によると、束タイムスタンプの値は、個別タイムスタンプの値以上、すなわち同じもしくはより新しい変更時を示す値となる。したがって、束タイムスタンプのタイムスタンプ値が先にオーバーフローすることになる。束タイムスタンプがオーバーフローした場合は束情報保持部の情報が更新され、続いて個別回線情報保持部の情報が更新される。そして個別回線情報保持部の情報更新中は、束タイムスタンプのキャリービット値と個別タイムスタンプのキャリービット値とが不一致となるため、情報更新済の束情報保持部の情報にしたがって主信号の転送処理が実行される。すなわち、個別回線情報保持部の情報がバックグラウンドで更新中であっても、主信号の転送処理を実行することができる。
【0023】
束タイムスタンプおよび個別タイムスタンプのデータ長は、束OAM信号に基づく転送態様の変更が発生しうる間隔と当該データ長との両方に正相関する期間であって、個別回線情報保持部の情報の更新に許容される期間が、個別回線情報保持部の情報の更新に要する所定期間以上となるよう定められたものであってもよい。この態様によると、タイムスタンプのデータ長を適切な長さに定めることができる。また束タイムスタンプおよび個別タイムスタンプのデータ長は、上記更新に許容される期間が上記更新に要する所定期間以上となり、かつ、可及的に小さなデータ長となるよう定められてもよい。この態様によると、タイムスタンプのデータ長が可及的に小さくなり、タイムスタンプの更新効率を向上できる。
【0024】
本発明の別の態様もまた、通信制御装置である。この装置は、上流の外部装置から所定の経路で伝送された通信用のデータを受信する第1の入力側ネットワークカードと、上流の外部装置から所定の経路とは別の経路で伝送された通信用のデータを受信する第2の入力側ネットワークカードと、第1の入力側ネットワークカードと第2の入力側ネットワークカードとのいずれかから通信用のデータを取得して下流の外部装置へ送出する出力側ネットワークカードと、を備える。第1および第2の入力側ネットワークカードのそれぞれは、ユーザデータを格納する主信号について、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号を受信する主信号受信部と、複数の主信号のそれぞれに対して出力側ネットワークカードへの転送処理を実行する主信号転送部と、複数の主信号のいずれの伝送でも使用された経路を介して伝送されたOAM信号を、複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号として受信するOAM信号受信部と、を含むものであり、束OAM信号の異常を検出した場合、複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定する異常判定部と、をさらに備える。主信号転送部は、異常であると判定された仮想回線にて伝送された主信号については、出力側ネットワークカードへの転送を停止する。
【0025】
この態様によっても、上記同様に、複数の仮想回線それぞれの状態を個々に判定することなく、複数の仮想回線の異常を一括して検出でき、各仮想回線に対する障害復旧処理を迅速に実行できる。
【0026】
本発明のさらに別の態様もまた、通信制御装置である。この装置は、リング網を構成する複数の通信制御装置のうちの1つであって、ユーザデータを格納する主信号について、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号を受信する主信号受信部と、複数の主信号のそれぞれに対して外部への転送処理を実行する主信号転送部と、複数の主信号のいずれの伝送でも使用される経路であって、リング網における2以上の通信制御装置により形成される伝送区間の通信状態を示すOAM信号を、複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号として受信する束OAM受信部と、束OAM信号の異常を検出した場合、複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定する異常判定部と、を備える。
【0027】
この態様によると、リング網を構成する通信制御装置においても上記同様に、複数の仮想回線それぞれの状態を個々に判定することなく、複数の仮想回線の異常を一括して検出でき、各仮想回線に対する障害復旧処理を迅速に実行できる。
【0028】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、通信データを中継する装置において効率的な障害対応を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態の通信制御装置における切替制御の概略を示すフローチャートである。
【図2】実施の形態の通信システムの構成を示す図である。
【図3】図2の通信制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】転送情報保持部に格納されるデータの構成を示す図である。
【図5】個別タイムスタンプおよび束タイムスタンプの構成を示す図である。
【図6】通信制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】通信制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】図7のS46を詳細に示すフローチャートである。
【図9】図7のS48を詳細に示すフローチャートである。
【図10】個別回線情報および束情報の推移例を示す図である。
【図11】変形例の通信システムの構成を示す図である。
【図12】図11の第1の通信制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態について、その構成を説明する前に概要を説明する。
近年、通信システムの大容量化や多様化を背景として、仮想回線の切替制御をソフトウェアが担うようになってきている。その場合の動作の概略は、OAM信号の異常を検出したハードウェアからソフトウェアへ異常通知の割り込みを行い、ソフトウェアではどの仮想回線が異常であるかを検索する。そして、その検索の結果、異常であることが判明した仮想回線に対して切替制御を実施する。この場合、異常通知の割り込みがなされてから、切替制御が実施されるまでの期間が切替に要する期間となる。
【0032】
複数の仮想回線が監視対象である場合、従来は、複数の仮想回線のそれぞれを個々に監視するための個別OAM信号が通信制御装置間で送受され、個別OAM信号の状態に基づいて個々の仮想回線ごとに異常が検出されていた。しかし、この方法では監視対象となる仮想回線の数が増えるほど個々の仮想回線の異常検出に時間を要し、その結果、異常が発生した仮想回線の切替までに要する時間も増加してしまう。
【0033】
また通信制御装置においては、複数の仮想回線それぞれに対応づけられた情報記憶領域に、各仮想回線にて伝送された主信号の転送態様を格納することが一般的である。この場合に複数の仮想回線が異常になると、主信号の転送処理を再開する前に、複数の情報記憶領域のデータを書き換える必要がある。したがって、多くの仮想回線が一括して故障した場合には、多数のデータ書き換えが発生し、主信号の転送処理の再開までに長時間を要することがあった。特に、通信制御装置が汎用のCPUやRAM(Random Access Memory)で構成される場合には、さらに長時間を要することになる。
【0034】
そこで本実施の形態では、従来の個別OAM信号に加えて、複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号を送受する通信制御装置を提案する。この束OAM信号は、複数の仮想回線に対応づけられたOAM信号であり、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号について、いずれの主信号の伝送においても少なくともその一部で使用される通信経路を介して伝送される。言い換えれば、いずれの個別OAM信号の伝送においても使用される通信経路を介して伝送される。したがって、束OAM信号が異常であれば、全ての個別OAM信号も異常であることになり、すなわち全ての仮想回線も異常であることになる。
【0035】
図1は、実施の形態の通信制御装置における切替制御の概略を示すフローチャートである。通信制御装置は、束OAM信号もしくは個別OAM信号の異常を検出する(S10)。束OAM信号が異常であった場合(S12のY)、その束OAM信号と対応づけられた全仮想回線に対して異常時処理、例えば予備系の物理回線への切替処理を実行する(S14)。なお後述するように、本実施の形態における切替処理は、仮想回線を介して受信する主信号の転送態様の変更、すなわち主信号を外部へ転送するかもしくは廃棄するかの切替として実行される。
【0036】
束OAM信号が正常であった場合(S12のN)、個々の仮想回線数だけ繰り返される個別回線ループが実行される。このループ内では、複数の個別OAM信号の状態が個々に判定される。そして特定の個別OAM信号が異常であった場合(S16のY)、その個別OAM信号に対応する(その個別OAM信号が監視対象とする)特定の仮想回線に対して異常時処理を実行する(S18)。特定の個別OAM信号が正常であれば(S16のN)、S18はスキップされる。
【0037】
図1に示す切替制御により、束OAM信号が異常であれば、複数の個別OAM信号それぞれの状態によらず、その束OAM信号に対応づけられた全ての仮想回線が異常であると判定される。したがって、複数の個別OAM信号それぞれの状態判定を経ることなく仮想回線の切替処理が実行可能になる。その結果、複数の仮想回線が一括して故障した場合でも迅速な障害復旧を実現できる。
【0038】
また実施の形態の通信制御装置は、個別OAM信号に基づく切替処理の結果である転送態様(以下、「個別回線転送態様」とも呼ぶ。)と、束OAM信号に基づく切替処理の結果である転送態様(以下、「束転送態様」とも呼ぶ。)とを別個に管理する。そして、それぞれの転送態様には、個別OAM信号に基づく切替処理と束OAM信号に基づく切替処理との前後関係を示すためのタイムスタンプが対応づけて保持される。通信制御装置は、そのタイムスタンプを参照して、より新しく実行された切替処理の結果である転送態様にしたがって、主信号の転送処理を実行する。これにより、束OAM信号の異常が検出された場合は、束転送態様とそのタイムスタンプを書き換えればよく、複数の仮想回線それぞれについての個別回線転送態様の書き換えは不要になる。その結果、仮想回線の切替処理を迅速に実行できる。
【0039】
図2は、実施の形態の通信システムの構成を示す。通信システム1000は、通信制御装置100と、上流側装置102と、下流側装置104と、NE−A106aと、NE−B106bと、NE−C106cと、NE−D106dとを備える。なお、通信制御装置100・上流側装置102・下流側装置104は便宜的な名称であり、これらはいずれも各種NEである。以下では、上流側装置102〜NE−A106a〜NE−B106b〜通信制御装置100の通信経路を第1通信経路108と呼び、上流側装置102〜NE−C106c〜NE−D106d〜通信制御装置100の通信経路を第2通信経路110と称する。
【0040】
本実施の形態の各装置はレイヤ2の通信網を構成し、IEEE802.1Qで規定されたタグ付きのイーサネットフレームを主信号およびOAM信号として送受することとする。タグフィールドにはVLAN(Virtual Local Area Network)−IDが設定される。本実施の形態では、VLAN−ID「100」〜「199」のVLANのそれぞれが仮想回線として設定される。具体的には100個のVLANにて、言い換えれば100種類のVLAN−IDが設定された主信号および個別OAM信号が伝送される。またVLAN−ID「200」のVLANは、束OAM信号が伝送される仮想回線として設定される。
【0041】
通信制御装置100は、上流側装置102から送信された主信号を下流側装置104に転送する。具体的には、上流側装置102は、第1通信経路108と第2通信経路110の両方に対して、主信号・個別OAM信号・束OAM信号を送信する。通信制御装置100は、第1通信経路108と第2通信経路110の両方から、主信号・個別OAM信号・束OAM信号を受信する。そして、第1通信経路108か第2通信経路110のいずれかから受信した主信号を下流側装置104へ送信する。
【0042】
図3は、図2の通信制御装置100の機能構成を示すブロック図である。通信制御装置100は、第1の入力側カード10と、第2の入力側カード12と、SW部14と、出力側カード16と、異常判定部18と、カウント保持部19と、転送態様変更部20とを有する。
【0043】
本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0044】
ただし、本実施の形態の通信制御装置100においては、異常判定部18および転送態様変更部20はソフトウェアにより実装されたものであり、CPUにより実行されることとする。また他の機能ブロックは各種電子回路等のハードウェアにより実装されることとする。なお各種情報保持部は、RAMにより実装されることとする。
【0045】
出力側カード16は、EG(EGress Block)とも呼ばれるネットワークカードであり、SW部14から受け付けた主信号を下流側装置104へ送信する。SW部14は、スイッチファブリックであり、第1の入力側カード10および第2の入力側カード12から送出された主信号を出力側カード16へ転送する。SW部14における単位時間当たりの処理データ量には上限があるため、第1の入力側カード10および第2の入力側カード12の両方から主信号を受け付けることはできない。したがって、第1の入力側カード10か第2の入力側カード12のいずれか一方が、SW部14に対して主信号を送出する。この切替制御は後述する転送態様変更部20により実行される。
【0046】
第1の入力側カード10と第2の入力側カード12のそれぞれは、IG(InGress Block)とも呼ばれるネットワークカードであり、上流側装置102から送信された通信データを受け付ける。第1の入力側カード10と第2の入力側カード12とのそれぞれは、転送情報保持部22と、主信号受信部24と、主信号転送部26と、OAM信号受信部28とを含む。
【0047】
転送情報保持部22は、主信号の転送態様を示す情報を保持する記憶領域である。図4は、転送情報保持部22に格納されるデータの構成を示す。図4の(a)は、仮想回線のそれぞれについて、個別回線転送態様へアクセスするための回線情報ポインタと、束転送態様へアクセスするための束情報ポインタとを対応づけて格納するポインタテーブルを示す。同図では、束OAM信号Aに対して、仮想回線a・仮想回線b・仮想回線cが監視対象の仮想回線として対応づけられている。
【0048】
図4の(b)は、仮想回線のそれぞれについて、転送または廃棄を示す個別回線転送態様と、個別回線転送態様の設定時を示すタイムスタンプ(以下、「個別タイムスタンプ」とも呼ぶ。)とが対応づけられた個別回線情報を保持するテーブルである。この個別回線情報には、ポインタテーブルの回線情報ポインタを介してアクセスされる。
【0049】
図4の(c)は、束OAM信号のそれぞれについて、転送または廃棄を示す束転送態様と、束転送態様の設定時を示すタイムスタンプ(以下、「束タイムスタンプ」とも呼ぶ。)とが対応づけられた束情報を保持するテーブルである。この束転送情報には、ポインタテーブルの束情報ポインタを介してアクセスされる。
【0050】
図5は、個別タイムスタンプおよび束タイムスタンプの構成を示す。両タイムスタンプとも、2ビット目以降のnビットには転送態様の切替回数を示す値が設定される。先頭の1ビットは、切替回数の桁あふれを示すためのキャリービットである。このキャリービットの値は、切替回数がオーバーフローした際に0から1もしくは1から0へ変更される。
【0051】
主信号受信部24は、上流側装置102から送信された主信号を受信する。具体的には、第1の入力側カード10の主信号受信部24は、第1通信経路108で伝送された主信号を受信し、第2の入力側カード12の主信号受信部24は、第2通信経路110で伝送された主信号を受信する。
【0052】
主信号転送部26は、主信号受信部24において主信号が受信された際、転送情報保持部22に保持された個別回線転送態様か束転送態様のいずれか一方にしたがって、その主信号をSW部14へ転送し、もしくは転送することなく廃棄する。原則として、個別回線転送態様と束転送態様のうちより新しく更新された方の転送態様にしたがって主信号の転送処理を実行するが、その具体的な転送ロジックについては後述する。
【0053】
OAM信号受信部28は、上流側装置102から送信されたOAM信号を受信する。具体的には、第1の入力側カード10の主信号受信部24は、第1通信経路108で伝送された束OAM信号および個別OAM信号を受信し、第2の入力側カード12の主信号受信部24は、第2通信経路110で伝送された束OAM信号および個別OAM信号を受信する。なお、主信号受信部24とOAM信号受信部28とは、物理的には同一の受信手段として構成されてよいことはもちろんである。
【0054】
OAM信号受信部28は、束OAM信号および複数の個別OAM信号のそれぞれを受信すると、それぞれのOAM信号の受信時刻を図示しない記憶領域(以下、「OAM受信履歴テーブル」とも呼ぶ。)へ逐次記録する。またOAM信号受信部28は、束OAM信号および複数の個別OAM信号のそれぞれについて、先のOAM信号を受信してから、予め定められた所定期間内に次のOAM信号を受信するか否かをタイマ監視する。所定期間内に次のOAM信号を受信しない場合、異常判定部18(具体的には異常判定部18の機能を実行するCPU)に対して、OAM信号に異常が発生した旨を通知するための所定のハードウェア割り込みを行う。なお、この割り込みでは、異常が発生したOAM信号が束OAM信号か個別OAM信号か、また、どの仮想回線に対応する個別OAM信号かについては通知されない。
【0055】
異常判定部18は、OAM信号に異常が発生した旨の割り込みを検出すると、図示しないOAM受信履歴テーブルを参照して、所定期間内に未受信のOAM信号を検索し、異常が発生したOAM信号の種別を特定する。具体的には、束OAM信号の状態を判定後、束OAM信号が正常であった場合に限り、複数の個別OAM信号それぞれの状態を判定する。異常判定部18は、束OAM信号もしくは1以上の特定の個別OAM信号について、異常が発生した旨を転送態様変更部20へ通知する。
【0056】
カウント保持部19は、個別タイムスタンプおよび束タイムスタンプとして設定されるタイムスタンプ値の設定基準となるカウンタ値を保持する記憶領域である。このカウンタ値の形式は、図5で示したタイムスタンプ値の形式と同じである。
【0057】
転送態様変更部20は、個別OAM信号の異常が通知された際、その個別OAM信号に対応づけられた仮想回線(以下、「異常仮想回線」とも呼ぶ。)について、転送情報保持部22の異常仮想回線に関する個別回線情報を更新する。具体的には、カウント保持部19のカウンタ値を個別タイムスタンプへ設定する。それとともに、異常仮想回線を監視する束OAM信号の束転送態様を、転送から廃棄、もしくは廃棄から転送へ切り替えた転送態様を個別転送態様へ設定する。
【0058】
また転送態様変更部20は、束OAM信号の異常が通知された場合、その束OAM信号に対応づけられた転送情報保持部22の束情報を更新する。具体的には、カウント保持部19に保持されたカウント値を1つ増加させた新たなカウント値を束タイムスタンプへ設定する。それとともに、その新たなカウント値をカウント保持部19へ記録する。また、束転送態様を転送から廃棄、もしくは廃棄から転送へ切り替える。
【0059】
束タイムスタンプがオーバーフローした場合、すなわちキャリービット値が0から1、もしくは1から0へ変化した場合、転送態様変更部20は束情報を更新する。このとき、束タイムスタンプには、変化後のキャリービットおよび0に初期化した切替回数値を設定する。その後、更新後の束情報を複数の個別回線情報のそれぞれに順次反映させる。具体的には、個別タイムスタンプを更新後の束タイムスタンプと合致させるよう更新するとともに、個別転送態様を更新後の束転送態様と合致させるよう更新する。
【0060】
転送態様変更部20は、束情報を更新するとその旨を主信号転送部26へ通知し、その通知を受け付けた主信号転送部26は個別回線情報が更新中であっても主信号の転送処理(転送もしくは廃棄)を再開する。転送態様変更部20は、主信号転送部26による主信号の転送処理と並行して個別回線情報を更新する。言い換えれば、束タイムスタンプのオーバーフローに伴う個別回線情報の更新処理は、主信号の転送処理のバックグラウンド処理として実行される。
【0061】
ところで、束タイムスタンプおよび個別タイムスタンプを高速に更新するためには、それらの切替回数フィールドのビット長(すなわち図5のnビット)ができるだけ小さい値であることが望ましい。その一方で、束タイムスタンプがオーバーフローした場合、主信号の転送処理と並行して個別回線情報が更新されるため、切替回数フィールドのビット長にはある程度の長さが要求される。なぜなら、個別回線情報の更新処理が未完了のうちに束タイムスタンプが再度オーバーフローすると、束タイムスタンプのキャリービットと個別タイムスタンプのキャリービットとが一致するため、それらの前後関係が不明になってしまうからである。
【0062】
ここで、切替回数フィールドのビット長をnビットとし、束OAM信号の異常による束情報の更新がA(ミリ秒)を最低単位として発生しうるとすると、
個別回線情報の更新処理に許容される時間(「許容時間」)=束タイムスタンプが次にオーバーフローする最短時間
許容時間=A×2n
となる。また、個別回線情報の更新処理に要する時間(「必要時間」)は予め測定される所与値であり、必要時間≦許容時間の関係を満足すればよいため、nの値は、
必要時間≦A×2n
を満たす必要がある。さらに言えば、nの値は可及的に小さいことが望ましいため、上記関係を満たす最少のnが最も望ましい切替回数フィールドのビット長である。
【0063】
なお転送態様変更部20は、第1の入力側カード10における主信号の転送態様と、第2の入力側カード12における主信号の転送態様とが互いに補完関係となるよう設定する。例えば初期状態において、第1通信経路108が現用系の通信経路、第2通信経路110が予備系の通信経路と定められ、第1の入力側カード10における転送態様が「転送」、第2の入力側カード12における転送態様が「廃棄」と定められているとする。この場合に第1の入力側カード10における束OAM信号の異常が検出されると、第1の入力側カード10における転送態様を「廃棄」へ切り替えるとともに、第2の入力側カード12における転送態様を「転送」へ切り替える。個別OAM信号の異常が検出された場合も同様である。これにより、主信号伝送の信頼性を向上させるとともに、第1の入力側カード10および第2の入力側カード12から重複する主信号が送出されることを抑止できる。
【0064】
以上の構成による動作を以下説明する。
図6は、通信制御装置100の動作を示すフローチャートである。同図は、主信号の転送態様の切替制御に関する動作を示している。OAM信号受信部28は、上流側装置102から送信されたOAM信号を受信して、その受信状況によりOAM信号の異常を検出した場合は異常判定部18に対する割り込み処理を実行する(S20)。異常判定部18は、異常が発生したOAM信号を特定する。具体的には、束OAM信号の状態を判定した後、束OAM信号が正常である場合は複数の個別OAM信号の状態を個々に判定する(S22)。
【0065】
束OAM信号は正常で個別OAM信号が異常である場合(S24のN)、転送態様変更部20は、第1の入力側カード10および第2の入力側カード12それぞれの転送情報保持部22に保持された個別回線情報を更新する(S26)。束OAM信号が異常である場合(S24のY)、転送態様変更部20は第1の入力側カード10および第2の入力側カード12それぞれの転送情報保持部22に保持された束情報を更新する(S28)。束情報の更新により束タイムスタンプのキャリービット値が変化した場合(S30のY)、転送態様変更部20は、第1の入力側カード10および第2の入力側カード12それぞれの転送情報保持部22に保持された個別回線情報を束情報と合致させる(S32)。束タイムスタンプのキャリービット値に変化がなければ(S30のN)、S32はスキップされる。
【0066】
図7は、通信制御装置100の動作を示すフローチャートである。同図は、主信号の転送処理に関する動作を示しており、第1の入力側カード10および第2の入力側カード12で共通である。主信号受信部24は、上流側装置102から送信された主信号を受信する(S40)。主信号転送部26は、転送情報保持部22に保持された束タイムスタンプと個別タイムスタンプとを参照し(S42)、束タイムスタンプのキャリービットが1である場合(S44のY)、後述する第1の転送態様決定処理を実行する(S46)。また束タイムスタンプのキャリービットが0である場合(S44のN)、後述する第2の転送態様決定処理を実行する(S48)。主信号転送部26は、第1の転送態様決定処理もしくは第2の転送態様決定処理において採用された転送態様にしたがって、主信号の転送処理(SW部14への送出、もしくは廃棄)を実行する(S50)。
【0067】
図8は、図7のS46を詳細に示すフローチャートである。個別タイムスタンプのキャリービットが1であり(S60のY)、束タイムスタンプの切替回数と個別タイムスタンプの切替回数とが同じであれば(S62のN)、主信号転送部26は個別回線転送態様を選択する(S64)。束タイムスタンプの切替回数が個別タイムスタンプの切替回数より大きい(S62のY)、もしくは、個別タイムスタンプのキャリービットが0であれば(S60のN)、主信号転送部26は束転送態様を選択する(S66)。S60のNは、キャリービット値が異なる場合、すなわち束タイムスタンプのオーバーフローに伴う個別回線情報の更新中を示すからである。
【0068】
図9は、図7のS48を詳細に示すフローチャートである。個別タイムスタンプのキャリービットが0であり(S70のN)、束タイムスタンプの切替回数と個別タイムスタンプの切替回数とが同じであれば(S72のN)、主信号転送部26は個別回線転送態様を選択する(S74)。束タイムスタンプの切替回数が個別タイムスタンプの切替回数より大きい(S72のY)、もしくは、個別タイムスタンプのキャリービットが1であれば(S70のY)、主信号転送部26は束転送態様を選択する(S76)。S70のYも、束タイムスタンプのオーバーフローに伴う個別回線情報の更新中であることを示すからである。
【0069】
図10は、個別回線情報および束情報の推移例を示す。同図は、第1の入力側カード10に保持された1つの仮想回線に対応する個別回線情報と束情報とを示している。同図において丸を付した転送態様は、第1の入力側カード10の主信号転送部26において選択される転送態様を示している。状態30では、個別タイムスタンプ=束タイムスタンプであるため個別回線転送態様が選択される。状態32では、個別タイムスタンプ<束タイムスタンプであるため束転送態様が選択される。状態34では、個別タイムスタンプ=束タイムスタンプであるため再び個別回線転送態様が選択される。なお状態34では、第2の入力側カード12において個別OAM信号の異常が検出されたため、第1の入力側カード10では「転送」へ切り替えられている。
【0070】
続いて、状態36および状態42では、個別タイムスタンプ<束タイムスタンプであるため束転送態様が選択される。状態38および状態44では、キャリービット値が異なるため束転送態様が選択される。状態40および46では、個別タイムスタンプ=束タイムスタンプであるため個別回線転送態様が選択される。なお、第2の入力側カード12に保持される個別回線情報と束情報には、タイムスタンプ値は同じものが設定される一方で、転送態様には逆の値が設定されることになる。
【0071】
本実施の形態の通信制御装置100によれば、束OAM信号の状態に基づいて、複数の仮想回線の異常を一括して検出する。これにより、複数の仮想回線それぞれの状態を個々に判定することなく、各仮想回線に対する障害復旧処理を迅速に実行できる。また、束転送態様と個別転送態様とを別個に管理し、主信号の転送においてはより新しく設定された転送態様を選択する。これにより、複数の仮想回線が一括して異常になった場合でも、個々の個別転送態様を変更することなく、新たな転送態様を迅速に適用できる。また、束転送態様と個別転送態様の前後関係を判別するためのタイムスタンプのオーバーフロー時にも、束転送態様と個別転送態様の整合性を維持できる。また、その整合性を維持するための個別転送態様の書き換え処理は、主信号転送処理のバックグラウンドにて実行されるため、主信号転送処理の遅延を回避できる。
【0072】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0073】
変形例として、本発明の技術思想は、通信網の物理的なトポロジがリング状態に構成されたリング網に対しても適用可能である。図11は、変形例の通信システムの構成を示す。通信システム2000では、第1の通信制御装置200a、第2の通信制御装置200b、第3の通信制御装置200c、第4の通信制御装置200d、第5の通信制御装置200eがリング網202を介して接続される。
【0074】
ここで、第1の通信制御装置200a、第3の通信制御装置200c、第4の通信制御装置200dのそれぞれは、通信網204を介してNE(NE−A206a、NE−B206b、NE−C206c)と接続されている。通信システム2000では、NE−A206a〜NE−B206b間の仮想回線と、NE−A206a〜NE−C206c間の仮想回線とが形成される。初期状態においては、それらの仮想回線にて伝送される主信号は、第1の通信制御装置200a〜第2の通信制御装置200b〜第3の通信制御装置200c〜第4の通信制御装置200dの経路を介して伝送されることとする。
【0075】
また通信システム2000では、第2の通信制御装置200b〜第3の通信制御装置200c間を伝送経路に含む仮想回線を一括して管理するための束OAM信号が定義されている。この束OAM信号は、第2の通信制御装置200b〜第3の通信制御装置200c間の通信状態を各通信制御装置に通知するためのものである。したがって、NE−A206a〜NE−B206b間の仮想回線およびNE−A206a〜NE−C206c間の仮想回線は、その束OAM信号で監視される。なお実施の形態と同様に、通信システム2000においては、束OAM信号に加えて個々の仮想回線それぞれを監視するための個別OAM信号も伝送される。
【0076】
図12は、図11の第1の通信制御装置200aの機能構成を示すブロック図である。第1の通信制御装置200aは、主信号受信部24と、OAM信号受信部28と、異常判定部18と、カウント保持部19と、転送態様変更部20と、転送処理部50とを有する。なお、図3に示した機能ブロックと同様の機能ブロックについては同じ符号を付しており、以下重複する説明は省略する。
【0077】
主信号受信部24は、NE−A106aから送信された主信号を受信する。OAM信号受信部28は、各種の通信制御装置およびNEから送信された束OAM信号および個別OAM信号を受信する。転送態様変更部20は、束OAM信号の状態および個別OAM信号の状態に応じて、後述する第1方向転送情報保持部22aおよび第2方向転送情報保持部22bに保持される束情報・個別回線情報を更新する。
【0078】
転送処理部50は、第1方向転送情報保持部22aと、第2方向転送情報保持部22bと、第1方向主信号転送部26aと、第2方向主信号転送部26bとを含む。第1方向転送情報保持部22aおよび第2方向転送情報保持部22bは、実施の形態の転送情報保持部22に対応する。また、第1方向主信号転送部26aおよび第2方向主信号転送部26bは、実施の形態の主信号転送部26に対応する。
【0079】
第1方向転送情報保持部22aは、リング網202の第1方向(ここでは第2の通信制御装置200b側)への主信号の転送態様を保持する。第2方向転送情報保持部22bは、リング網202の第2方向(ここでは第5の通信制御装置200e側)への主信号の転送態様を保持する。また、第1方向主信号転送部26aは、第1方向転送情報保持部22aに保持された転送態様にしたがって、リング網202の第1方向への主信号の転送処理(転送もしくは廃棄)を実行する。第2方向主信号転送部26bは、第2方向転送情報保持部22bに保持された転送態様にしたがって、リング網202の第2方向への主信号の転送処理を実行する。
【0080】
具体的な動作として、初期状態において、第2の通信制御装置200b〜第3の通信制御装置200c間の故障を示す束OAM信号がOAM信号受信部28において受信されると、異常判定部18はその故障を特定して転送態様変更部20へ通知する。転送態様変更部20は、第1方向転送情報保持部22aに保持される束転送態様を「廃棄」へ切り替えるとともに、第2方向転送情報保持部22bに保持される束転送態様を「転送」へ切り替える。これにより、リング網202における特定の伝送区間の故障に伴って複数の仮想回線が一括して故障した場合でも、各仮想回線の切替処理、すなわち主信号の送出方向の切替を迅速に実行できる。
【0081】
実施の形態の通信制御装置100は、OAM信号の状態に応じて、上流側装置102から受け付けられた主信号を、第1の入力側カード10か第2の入力側カード12のいずれかによりSW部14へ送出した。これに対し、変形例の第1の通信制御装置200aは、OAM信号の状態に応じて、NE−A206aから受け付けられた主信号を、第1の方向か第2の方向のいずれかによりリング網202へ送出するものである。したがって、本変形例においても実施の形態と同様の効果を奏することは当業者には理解されるところである。
【0082】
請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0083】
18 異常判定部、 19 カウント保持部、 20 転送態様変更部、 22 転送情報保持部、 24 主信号受信部、 26 主信号転送部、 28 OAM信号受信部、 100 通信制御装置、 202 リング網、 1000,2000 通信システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザデータを格納する主信号について、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号を受信する主信号受信部と、
前記複数の主信号のそれぞれに対して外部への転送処理を実行する主信号転送部と、
前記複数の主信号のいずれの伝送でも使用される経路を介して伝送されたOAM(Operation Administration and Maintenance)信号を、前記複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号として受信するOAM信号受信部と、
前記束OAM信号の異常を検出した場合、前記複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定する異常判定部と、
を備えることを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記主信号受信部は、現用系の経路および予備系の経路のそれぞれから前記複数の主信号を受信し、
前記主信号転送部は、現用系の経路を介して伝送された束OAM信号に基づき現用系の経路を介する複数の仮想回線のいずれもが異常であると前記異常判定部により判定された場合、予備系の経路を介して受信された前記複数の主信号を外部へ転送することを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記OAM信号受信部は、前記複数の仮想回線を個々に監視するためのOAM信号を個別OAM信号として、前記複数の仮想回線に対応づけられた複数の個別OAM信号をさらに受信し、
前記異常判定部は、前記束OAM信号の状態が正常であることを条件として、前記複数の個別OAM信号それぞれの状態を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記OAM信号受信部は、前記複数の仮想回線を個々に監視するためのOAM信号を個別OAM信号として、前記複数の仮想回線に対応づけられた複数の個別OAM信号をさらに受信し、
前記異常判定部は、前記OAM信号受信部から前記束OAM信号と前記個別OAM信号の種別を特定しない異常を通知する割り込みを受け付けた際、前記複数の個別OAM信号それぞれの状態を判定するより前に、前記束OAM信号の状態を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記束OAM信号の状態および前記個別OAM信号の状態に応じて主信号の転送態様を変更させる転送態様変更部をさらに備え、
前記主信号転送部は、ある仮想回線において主信号が受信された際、その仮想回線に対応づけられた個別OAM信号に基づく転送態様と、前記束OAM信号に基づく転送態様とのうち、より新しく設定された転送態様にしたがって当該主信号の転送処理を実行することを特徴とする請求項3または4に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記複数の仮想回線のそれぞれについて、個別OAM信号に基づく転送態様の設定時を示す個別タイムスタンプと、主信号の転送態様とを対応づけて保持する個別回線情報保持部と、
前記束OAM信号に基づく転送態様の設定時を示す束タイムスタンプと、主信号の転送態様とを対応づけて保持する束情報保持部と、をさらに備え、
前記転送態様変更部は、前記個別タイムスタンプと前記束タイムスタンプとの少なくとも一方がオーバーフローした場合、双方のタイムスタンプを初期化するとともに、それぞれに対応づけられた主信号の転送態様を、より新しく設定された転送態様へ統一させることを特徴とする請求項5に記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記転送態様変更部は、前記束OAM信号に基づいて主信号の転送態様を設定した場合は前記束タイムスタンプを順次増加させ、前記個別OAM信号に基づいて主信号の転送態様を設定した場合は前記個別タイムスタンプを前記束タイムスタンプと合致させ、
前記主信号転送部は、前記束タイムスタンプと前記個別タイムスタンプとが合致する場合、前記個別タイムスタンプに対応づけられた転送態様にしたがって主信号の転送処理を実行し、
前記転送態様変更部は、前記束タイムスタンプがオーバーフローした場合、前記束情報保持部の情報を更新後、前記個別回線情報保持部の情報を更新し、
前記個別タイムスタンプおよび前記束タイムスタンプには、オーバーフローが発生したことを示すためのキャリービットが設けられており、
前記主信号転送部は、前記個別回線情報保持部の情報が更新中であっても主信号の転送処理を実行し、前記束タイムスタンプのキャリービット値と前記個別タイムスタンプのキャリービット値とが不一致の場合は、前記束タイムスタンプに対応づけられた転送態様にしたがって主信号の転送処理を実行することを特徴とする請求項6に記載の通信制御装置。
【請求項8】
前記束タイムスタンプおよび個別タイムスタンプのデータ長は、前記束OAM信号に基づく転送態様の変更が発生しうる間隔と当該データ長との両方に正相関する期間であって、前記個別回線情報保持部の情報の更新に許容される期間が、前記個別回線情報保持部の情報の更新に要する所定期間以上となるよう定められたものであることを特徴とする請求項7に記載の通信制御装置。
【請求項9】
上流の外部装置から所定の経路で伝送された通信用のデータを受信する第1の入力側ネットワークカードと、
前記上流の外部装置から前記所定の経路とは別の経路で伝送された前記通信用のデータを受信する第2の入力側ネットワークカードと、
前記第1の入力側ネットワークカードと前記第2の入力側ネットワークカードとのいずれかから前記通信用のデータを取得して下流の外部装置へ送出する出力側ネットワークカードと、を備え、
前記第1および第2の入力側ネットワークカードのそれぞれは、
ユーザデータを格納する主信号について、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号を受信する主信号受信部と、
前記複数の主信号のそれぞれに対して前記出力側ネットワークカードへの転送処理を実行する主信号転送部と、
前記複数の主信号のいずれの伝送でも使用された経路を介して伝送されたOAM信号を、前記複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号として受信するOAM信号受信部と、を含むものであり、
前記束OAM信号の異常を検出した場合、前記複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定する異常判定部と、をさらに備え、
前記主信号転送部は、異常であると判定された仮想回線にて伝送された主信号については、前記出力側ネットワークカードへの転送を停止することを特徴とする通信制御装置。
【請求項10】
リング網を構成する複数の通信制御装置のうちの1つであって、
ユーザデータを格納する主信号について、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号を受信する主信号受信部と、
前記複数の主信号のそれぞれに対して外部への転送処理を実行する主信号転送部と、
前記複数の主信号のいずれの伝送でも使用される経路であって、前記リング網における2以上の通信制御装置により形成される伝送区間の通信状態を示すOAM信号を、前記複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号として受信する束OAM受信部と、
前記束OAM信号の異常を検出した場合、前記複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定する異常判定部と、
を備えることを特徴とする通信制御装置。
【請求項1】
ユーザデータを格納する主信号について、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号を受信する主信号受信部と、
前記複数の主信号のそれぞれに対して外部への転送処理を実行する主信号転送部と、
前記複数の主信号のいずれの伝送でも使用される経路を介して伝送されたOAM(Operation Administration and Maintenance)信号を、前記複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号として受信するOAM信号受信部と、
前記束OAM信号の異常を検出した場合、前記複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定する異常判定部と、
を備えることを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記主信号受信部は、現用系の経路および予備系の経路のそれぞれから前記複数の主信号を受信し、
前記主信号転送部は、現用系の経路を介して伝送された束OAM信号に基づき現用系の経路を介する複数の仮想回線のいずれもが異常であると前記異常判定部により判定された場合、予備系の経路を介して受信された前記複数の主信号を外部へ転送することを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記OAM信号受信部は、前記複数の仮想回線を個々に監視するためのOAM信号を個別OAM信号として、前記複数の仮想回線に対応づけられた複数の個別OAM信号をさらに受信し、
前記異常判定部は、前記束OAM信号の状態が正常であることを条件として、前記複数の個別OAM信号それぞれの状態を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記OAM信号受信部は、前記複数の仮想回線を個々に監視するためのOAM信号を個別OAM信号として、前記複数の仮想回線に対応づけられた複数の個別OAM信号をさらに受信し、
前記異常判定部は、前記OAM信号受信部から前記束OAM信号と前記個別OAM信号の種別を特定しない異常を通知する割り込みを受け付けた際、前記複数の個別OAM信号それぞれの状態を判定するより前に、前記束OAM信号の状態を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記束OAM信号の状態および前記個別OAM信号の状態に応じて主信号の転送態様を変更させる転送態様変更部をさらに備え、
前記主信号転送部は、ある仮想回線において主信号が受信された際、その仮想回線に対応づけられた個別OAM信号に基づく転送態様と、前記束OAM信号に基づく転送態様とのうち、より新しく設定された転送態様にしたがって当該主信号の転送処理を実行することを特徴とする請求項3または4に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記複数の仮想回線のそれぞれについて、個別OAM信号に基づく転送態様の設定時を示す個別タイムスタンプと、主信号の転送態様とを対応づけて保持する個別回線情報保持部と、
前記束OAM信号に基づく転送態様の設定時を示す束タイムスタンプと、主信号の転送態様とを対応づけて保持する束情報保持部と、をさらに備え、
前記転送態様変更部は、前記個別タイムスタンプと前記束タイムスタンプとの少なくとも一方がオーバーフローした場合、双方のタイムスタンプを初期化するとともに、それぞれに対応づけられた主信号の転送態様を、より新しく設定された転送態様へ統一させることを特徴とする請求項5に記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記転送態様変更部は、前記束OAM信号に基づいて主信号の転送態様を設定した場合は前記束タイムスタンプを順次増加させ、前記個別OAM信号に基づいて主信号の転送態様を設定した場合は前記個別タイムスタンプを前記束タイムスタンプと合致させ、
前記主信号転送部は、前記束タイムスタンプと前記個別タイムスタンプとが合致する場合、前記個別タイムスタンプに対応づけられた転送態様にしたがって主信号の転送処理を実行し、
前記転送態様変更部は、前記束タイムスタンプがオーバーフローした場合、前記束情報保持部の情報を更新後、前記個別回線情報保持部の情報を更新し、
前記個別タイムスタンプおよび前記束タイムスタンプには、オーバーフローが発生したことを示すためのキャリービットが設けられており、
前記主信号転送部は、前記個別回線情報保持部の情報が更新中であっても主信号の転送処理を実行し、前記束タイムスタンプのキャリービット値と前記個別タイムスタンプのキャリービット値とが不一致の場合は、前記束タイムスタンプに対応づけられた転送態様にしたがって主信号の転送処理を実行することを特徴とする請求項6に記載の通信制御装置。
【請求項8】
前記束タイムスタンプおよび個別タイムスタンプのデータ長は、前記束OAM信号に基づく転送態様の変更が発生しうる間隔と当該データ長との両方に正相関する期間であって、前記個別回線情報保持部の情報の更新に許容される期間が、前記個別回線情報保持部の情報の更新に要する所定期間以上となるよう定められたものであることを特徴とする請求項7に記載の通信制御装置。
【請求項9】
上流の外部装置から所定の経路で伝送された通信用のデータを受信する第1の入力側ネットワークカードと、
前記上流の外部装置から前記所定の経路とは別の経路で伝送された前記通信用のデータを受信する第2の入力側ネットワークカードと、
前記第1の入力側ネットワークカードと前記第2の入力側ネットワークカードとのいずれかから前記通信用のデータを取得して下流の外部装置へ送出する出力側ネットワークカードと、を備え、
前記第1および第2の入力側ネットワークカードのそれぞれは、
ユーザデータを格納する主信号について、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号を受信する主信号受信部と、
前記複数の主信号のそれぞれに対して前記出力側ネットワークカードへの転送処理を実行する主信号転送部と、
前記複数の主信号のいずれの伝送でも使用された経路を介して伝送されたOAM信号を、前記複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号として受信するOAM信号受信部と、を含むものであり、
前記束OAM信号の異常を検出した場合、前記複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定する異常判定部と、をさらに備え、
前記主信号転送部は、異常であると判定された仮想回線にて伝送された主信号については、前記出力側ネットワークカードへの転送を停止することを特徴とする通信制御装置。
【請求項10】
リング網を構成する複数の通信制御装置のうちの1つであって、
ユーザデータを格納する主信号について、複数の仮想回線にて伝送された複数の主信号を受信する主信号受信部と、
前記複数の主信号のそれぞれに対して外部への転送処理を実行する主信号転送部と、
前記複数の主信号のいずれの伝送でも使用される経路であって、前記リング網における2以上の通信制御装置により形成される伝送区間の通信状態を示すOAM信号を、前記複数の仮想回線を一括して監視するための束OAM信号として受信する束OAM受信部と、
前記束OAM信号の異常を検出した場合、前記複数の仮想回線のいずれもが異常であると判定する異常判定部と、
を備えることを特徴とする通信制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−160371(P2011−160371A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22732(P2010−22732)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】
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