説明

通信端末および通信方法

【課題】 第1の通信手段または第2の通信手段による通信状態を確保しつつ、消費電力を削減することができる通信端末および通信方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 移動通信網と通信接続する無線通信部101およびWLANと通信接続するWLAN通信部103を移動機100は備えている。この移動機100において、通信状態監視部105は、予め定めた基準値に基づいて、無線通信部101による無線通信が可能か否かを判断する。通信状態監視部105により無線通信部101による通信が可能ではあると判断された場合には、制御部108はWLAN通信部103をスリープ状態に移行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信網に対して通信接続する通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IMT(International Mobile Telecommunications)−2000など国際規格で定められた移動通信機能と、アクセスポイントに対して無線通信を行うことができるワイヤレスLAN通信機能を有する移動機は、例えば特開平2004−235976号公報(特許文献1)に記載されているように知られている。この特許文献1には、移動機の位置に応じて移動通信機能とワイヤレスLAN通信機能とを使い分けることが記載されている。
【特許文献1】特開2004−235976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、移動機は内蔵するバッテリーで動作しているため、移動通信機能とワイヤレスLAN通信機能とを起動状態とさせた場合、その起動状態で通信することなく待機していたとしてもバッテリーが消耗してしまう。特にワイヤレスLAN通信機能は消費電力が大きく、パワーセーブモードという省電力機能を使っても、バッテリーは激しく消耗してしまう場合がある。
【0004】
そこで、上述の課題を解決するために、本発明では、第1の通信手段または第2の通信手段によるいずれかの通信状態を確保しつつ、消費電力を削減することができる通信端末および通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するために、本発明の通信端末は、第1の通信方式により通信を行う第1の通信手段と、第2の通信方式により通信を行う第2の通信手段と、予め定めた設定値に基づいて、上記第1の通信手段による通信が可能か否かを判断する判断手段と、上記判断手段により上記第1の通信手段による通信が可能ではあると判断された場合には、上記第2の通信手段の起動状態を停止し、上記判断手段により上記第1の通信手段による通信が可能ではないと判断された場合には、上記第2の通信手段の起動状態を継続するよう、上記第2の通信手段を制御する制御手段と、を備えている。
【0006】
また、本発明の通信方法は、第1の通信方式により通信を行う第1の通信手段と、第2の通信方式により通信を行う第2の通信手段と、を備える通信端末の通信方法において、予め定めた設定値に基づいて、上記第1の通信手段による通信が可能か否かを判断する判断ステップと、上記判断ステップにより上記第1の通信手段による通信が可能ではあると判断された場合には、上記第2の通信手段の起動状態を停止し、上記判断ステップにより上記第2の通信手段による通信が可能ではないと判断された場合には、上記第2の通信手段の起動状態を継続するよう、上記第2の通信手段を制御する制御ステップと、を備えている。
【0007】
この発明によれば、通信端末は第1の通信方式により通信を行う第1の通信手段と第2の通信方式により通信を行う第2の通信手段とを備えており、予め定めた設定値に基づいて、第1の通信手段による通信が可能か否かを判断し、第1の通信手段による通信が可能ではあると判断された場合には、第2の通信手段の起動状態を停止し、第1の通信手段による通信が可能ではないと判断された場合には、第2の通信手段の起動状態を継続するよう、第2の通信手段を制御することができる。これにより、第1の通信手段が通信可能であるときには、第2の通信手段の起動状態を停止することができ、通信状態を確保しつつ、第2の通信手段の起動状態による電力消費を低減することができる。
【0008】
また、本発明の通信端末の上記判断手段は、上記第1の通信手段により検出される電波強度が予め定めた設定値以上、またはパケットロス値が設定値以下であるか否かにより、上記第1の通信手段による通信が可能であるか否かを判断するように構成することが好ましい。
【0009】
この発明によれば、第1の通信手段により検出される電波強度が予め定めた設定値以上、またはパケットロス値が設定値以下であるか否かにより、第1の通信手段による通信が可能であるか否かを判断することができる。これにより、第1の通信手段が通信可能か否かを高精度で判断することができ、第2の通信手段の起動状態による電力消費を低減することができる。
【0010】
また、本発明の通信端末の上記判断手段は、上記第1の通信手段による通信が可能であると判断した場合、さらに上記第1の通信手段による今後の通信状態を予測して、上記第1の通信手段による通信が可能であるか否かを判断することが好ましい。
【0011】
この発明によれば、第1の通信手段による通信が可能であると判断した場合、さらに第1の通信手段による今後の通信状態を予測して、第1の通信手段による通信が可能であるか否かを判断することができる。これにより、現時点で通信可能であっても、今後の通信状態を予測した結果に基づいて通信可能であるか否かを判断することができ、通信状態を確保しつつ、電力消費を低減することができる。
【0012】
また、本発明の通信端末の上記判断手段は、上記第1の通信手段により検出される電波強度、またはパケットロス値の履歴に基づいて、今後の通信状態を予測することが好ましい。
【0013】
この発明によれば、第1の通信手段により検出される電波強度、またはパケットロス値の履歴に基づいて、今後の通信状態を予測することができる。これにより、高精度で今後の通信状態を予測することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、第1の通信手段が通信可能であるときには、第2の通信手段の起動状態を停止することができ、通信状態を確保しつつ、第2の通信手段の起動状態による電力消費を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、一実施形態のために示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解することができる。引き続いて、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る移動機100のブロック図である。この移動機100は、通信モジュール、CPU、メモリなどのハードウエアから構成されており、無線通信部101(第1の通信手段または第2の通信手段)、無線通信状態測定部102、WLAN通信部103(第1の通信手段または第2の通信手段)、WLAN通信状態測定部104、通信状態監視部105(判断手段)、増減平均値算出部106、通信状態プロファイル部107(判断手段)、および制御部108(制御手段)を含んで構成されている。以下、各構成要素について説明する。
【0017】
無線通信部101は、移動通信網と通信接続する部分であり、例えば国際規格IMT−2000で定められた通信方式に従って通信相手と通信することができる。この無線通信部101により得られた音声信号またはパケットデータは、通話またはデータ処理のために、信号処理部(図示せず)などで処理される。なお、この無線通信部101は、音声信号またはパケットデータを受信する際に、受信した電波を無線通信状態測定部102に出力する。
【0018】
無線通信状態測定部102は、無線通信部101による無線通信状態を観測し、無線通信を良好に行うことができるか否かを示す通信状態を測定する部分である。具体的には、無線通信状態測定部102は無線通信部101により受信した電波の強度、すなわち電波の受信レベル(単位はdBm)を測定する。無線通信状態測定部102は、測定した通信状態を示す状態情報を通信状態監視部105に出力する。なお、無線通信状態測定部102は、移動通信網を経由して受信したパケットデータのパケットロス値を測定することにより、無線通信を良好に行うことができるか否かを示す通信状態を測定するようにしても良い。なお、パケットロス値とは、受信すべき全パケットデータから受信することに失敗したパケット数を示す数値データである。
【0019】
WLAN(WirelessLocal Area Network)通信部103は、WLANのアクセスポイントと通信接続する部分であり、例えばIEEE802.11で定められた通信方式に基づいて通信することができる。WLAN通信部103により得られた音声信号またはパケットデータは、通話またはデータ処理のために、信号処理部(図示せず)などで処理される。なお、WLAN通信部103は、音声信号またはパケットデータを受信する際に、受信した電波をWLAN通信状態測定部104に出力する。
【0020】
WLAN通信状態測定部104は、WLAN通信部103によるWLAN通信状態を観測し、WLAN通信を良好に行うことができるか否かを示す通信状態を測定する部分である。具体的には、WLAN通信状態測定部104は、WLAN通信部103により受信された電波の強度、すなわち電波の受信レベル(単位はdBm)を測定する。なお、WLAN通信状態測定部104は、WLANを経由して受信したパケットデータのパケットロス値を測定するようにしてもよい。このWLAN通信状態測定部104は、測定した通信状態を示す状態情報(例えば、測定した電波強度またはパケットロス値)を通信状態監視部105に出力する。
【0021】
通信状態監視部105は、無線通信状態測定部102またはWLAN通信状態測定部104から出力された通信状態を示す状態情報(例えば、電波強度またはパケットロス値)を監視する部分であり、具体的には、出力された電波強度(またはパケットロス値)を、出力されるごとに記憶し、記憶した電波強度(またはパケットロス値)を増減平均値算出部106に出力する。また、通信状態監視部105は、電波強度が予め定めた設定値以上(またはパケットロス値が予め定めた設定値以下)である場合、増減平均値算出部106および通信状態プロファイル部107に対して次回の確認時の通信状態が良好であるか否かを予測させる制御を行う。
【0022】
また、通信状態監視部105は、無線通信部101またはWLAN通信部103が通信開始したときに、無線通信状態測定部102またはWLAN通信状態測定部104により測定された電波強度が予め定めた設定値以上(またはパケットロス値が予め定めた設定値以下)である場合、その旨を制御部108に出力するようにしてもよい。この場合、制御部108は、通信をしていない一方の通信部(無線通信部101またはWLAN通信部103のいずれか)をスリープ状態に移行する制御を行う。
【0023】
増減平均値算出部106は、通信状態監視部105から出力された電波強度(またはパケットロス値)の履歴に基づいて、電波強度(またはパケットロス値)の増減傾向を示す増減平均値を算出する部分である。増減平均値算出部106は、算出した増減平均値を通信状態プロファイル部107に出力する。
【0024】
通信状態プロファイル部107は、増減平均値算出部106から出力された増減平均値に基づいて、今後の通信状態が良好になる傾向であるか、不良となる傾向であるかをプロファイル(予測)する部分であり、具体的には、電波強度(またはパケットロス値)が増加傾向であるか、減少傾向であるか、または不変状態であるかをプロファイル(予測)する部分である。なお、電波強度が微小に減少する減少傾向は不変状態として扱われても良く、またパケットロス値が微小に増加する増加傾向は不変状態として扱われても良い。そして、通信状態プロファイル部107は、電波強度が増加傾向、またはパケットロス値が減少傾向にあると判断する場合は、その旨を示す指示信号を制御部108に対して出力する。
【0025】
例えば、通信状態プロファイル部107は、電波強度が減少傾向にある場合、またはパケットロス値が増加傾向にある場合は、無線通信状態測定部102により測定された電波強度またはパケットロス値に基づいて、通信状態の傾向について予測し、今後送受信される電波の電波強度が予め定めた設定値以下であると判断した場合(または、パケットロス値が予め定めた設定値以上であると判断した場合)、WLAN通信部103による通信を行うための準備を行うよう制御部108に指示信号を出力する。なお、通信状態プロファイル部107は、WLAN通信部103の通信状態を予測して、無線通信部101による通信準備を行うようにしても良い。
【0026】
制御部108は、通信状態プロファイル部107から出力された電波強度(またはパケットロス値)の傾向を示す指示信号を入力し、その指示情報で示す傾向に基づいて無線通信部101またはWLAN通信部103を制御する部分である。具体的には、制御部108は、無線通信部101が通信中(または待受け中)に電波強度が増加傾向または不変状態であることを示す指示情報を入力すると、WLAN通信部103をスリープ状態にするよう制御する。また、制御部108は、WLAN通信部103が通信中(または待受け中)に電波強度が増加傾向または不変状態であることを示す指示情報を入力すると、無線通信部101をスリープ状態に移行するよう制御する。なお、スリープ状態とは、起動状態が停止している状態をいい、さらに具体的には、無線通信部101またはWLAN通信部103が通電されず、電力が供給されていない状態をいう。
【0027】
また、制御部108は、通信状態プロファイル部107から出力された電波強度(またはパケットロス値)の傾向に基づいて、現在通信している通信部の通信状態が不良であると判断できる場合は、他方の通信部による通信を実行できるよう準備処理を行う。特に、WLAN通信部103を通信させるためには、予め帰属先等を検索する処理が必要である。
【0028】
また、制御部108は、無線通信部101またはWLAN通信部103が通信開始したときに、無線通信状態測定部102またはWLAN通信状態測定部104により測定された電波強度が予め定めた設定値以上である旨(または、パケットロス値が予め定めた設定値以下である旨)を通信状態監視部105から入力した場合、制御部108は、無線通信部101またはWLAN通信部103に対してスリープ状態に移行するよう制御する。すなわち、例えば、制御部108は、無線通信部101による通信が開始されたとき(または待受け中)に、測定された電波強度が予め定めた設定値以上である場合には、WLAN通信部103をスリープ状態に移行するように制御し、WLAN通信部103による通信が開始されたときに(または待受け中)、測定された電波強度が予め定めた設定値以上である場合には、無線通信部101をスリープ状態に移行するように制御する。
【0029】
このように構成された移動機100は、電波強度またはパケットロス値に基づいて、通信開始をしていない、または通信中ではない無線通信部101またはWLAN通信部103をスリープ状態に移行させることができる。
【0030】
つぎに、この移動機100の通話開始時の動作について説明する。図2は、通信開始時におけるWLAN通信部103をスリープ状態に移行するときの動作を示すフローチャートである。なお、通信状態を測定するパラメータとして電波強度を用いて説明するが、パケットロス値を用いた場合でも同様の処理を行うことができる。
【0031】
無線通信部101により通信が開始され、通話状態が確立される(S101)。そして、無線通信部101による通信の電波強度が無線通信状態測定部102により測定され、通信状態監視部105により予め定めた設定値以上であるか否かが監視される。通信状態監視部105において、電波強度が予め定めた設定値以上であると判断された場合(S102)、その旨が制御部108に出力され、制御部108において、WLAN通信部103の機能を停止させ、電源を非供給状態、すなわちスリープ状態に移行するよう制御信号が出力される。WLAN通信部103は、この制御信号を受けると、スリープ状態に移行する(S103)。
【0032】
なお、パケットロス値を用いた場合には、パケットロス値が予め定めた設定値以下である場合には、S103に進み、パケットロス値が予め定めた設定値より大きい場合には、S104に進む処理を行っても良い。
【0033】
また、通信状態監視部105において、電波強度が予め定めた設定値以上ではないと判断された場合(S102)、その旨が制御部108に出力され、制御部108において、WLAN通信部103を、現状態(またはパワーセーブモード)を維持するよう制御信号が出力される(S104)。なお、維持のための制御信号を出力しないようにしてもよい。
【0034】
このように、本実施形態の移動機100は、無線通信部101において通話が確立されたときは、電波強度に基づいて、WLAN通信部103をスリープ状態に移行するようにすることができる。なお、WLAN通信部103において通信が確立されたときに、電波強度に基づいて、無線通信部101をスリープ状態に移行するようにするようにしてもよい。また、通話中、または通話状態が確立されたときの処理として説明したが、着信の待ち受け中であっても同様の処理を行うことができる。
【0035】
つぎに、現状の通信状態(電波強度)から将来の通信状態(電波強度)を予測してWLAN通信部103をスリープ状態に移行させるときの動作について説明する。図3は、移動機100の通話中(または着信の待ち受け中)におけるWLAN通信部103をスリープ状態に移行するときの動作を示すフローチャートである。
【0036】
無線通信部101による通話(または通信)がなされている最中に(S201)、周期的に無線通信部101による通信の電波強度の確認が通信状態監視部105により行われる(S202)。なお、着信の待ち受け中に電波強度の確認処理が行われても良い。そして、通信状態監視部105により監視された電波強度が予め定められた設定値A以上であるか否かが、通信状態監視部105により判断される(S203)。
【0037】
ここで、通信状態監視部105により、電波強度が設定値A以上ではないと判断された場合(S203)、S301に進む。このS301以降の処理について後述する。また、通信状態監視部105により、電波強度が設定値A以上であると判断された場合(S203)、増減平均値算出部106により、電波強度の履歴に基づいた電波強度の増減の傾向を示す増減平均値が算出され、通信状態プロファイル部107により電波強度の増減のプロファイルが確認される(S204)。S204において、電波強度が増加傾向または不変状態であると、通信状態プロファイル部107により判断された場合、制御部108の制御によりWLAN通信部103への電源供給が遮断され、その機能が停止し、起動状態からスリープ状態に移行される(S205)。なお、スリープ状態にすでにある場合には、そのスリープ状態を継続させる。そして、S201に戻り、再度所定周期ごとに電波強度の確認が行われる。
【0038】
また、S204において、電波強度が減少傾向であると、通信状態プロファイル部107により判断された場合、減少平均値に基づいて次回の電波強度確認時に測定される電波強度が設定値A以下になるか否かが、通信状態プロファイル部107により判断される(S206)。ここで、次回に測定される電波強度が設定値A以下ではないと判断された場合、何も処理することなく、S201に戻る。電波強度が設定値A以下であると通信状態プロファイル部107により判断された場合、さらに、電波強度が設定値Aより小さい値に設定されている設定値B以下になるか否かが通信状態プロファイル部107により判断される(S207)。
【0039】
S207において、電波強度が設定値Aより小さい値に設定されている設定値B以下であると、通信状態プロファイル部107により判断された場合、WLAN通信部103に対して、帰属先の検索処理、すなわちアクセスポイントに対する通信接続処理が行われるよう制御される(S208)。電波強度が設定値Aより小さい値に設定されている設定値B以下ではないと、通信状態プロファイル部107により判断された場合、S301に進み、WLAN通信部103の機能がオン(起動状態)され、またはオン状態が継続されるように制御される。
【0040】
つぎに、S203において電波強度が設定値A以上ではないと判断された場合、またはS207において、設定値B以下ではないと判断された場合の移動機100の動作について説明する。図4は、S203において電波強度が設定値A以上ではないと判断された場合、またはS207において、設定値B以下ではないと判断された場合における、WLAN通信部103をスリープ状態に移行するための再確認処理を行うときの移動機100の動作を示すフローチャートである。
【0041】
S203において電波強度が設定値A以上ではないと判断された場合、またはS207において、設定値B以下ではないと判断された場合、WLAN通信部103がオン(起動状態)にされ、またはオン状態が継続される(S301)。なお、WLAN通信部103はパワーセーブモードであることが望ましい。なお、パワーセーブモードとは、起動状態とスリープ状態とが交互に入れ替わるモードのことをいう。そして、無線通信部101による通信の電波強度確認の周期になると(S302)、無線通信部101による通信の電波強度が設定値B以下であるか否かが、通信状態監視部105により判断される(S303)。通信状態監視部105により、電波強度が設定値B以下になると判断された場合、WLAN通信部103による通信を可能にするために、帰属先の検索処理、すなわちアクセスポイントに対する通信接続処理が行われる(S304)。
【0042】
S303において、電波強度が設定値B以下ではないと、通信状態監視部105により判断された場合、増減平均値算出部106により電波強度の履歴に基づいて電波強度の増減傾向を示す増減平均値が算出され、この増減平均値に基づいて通信状態プロファイル部107によりプロファイリング確認が行われる(S305)。通信状態プロファイル部107によるプロファイリング確認の結果、電波強度が減少傾向にある場合、さらに、次回の強度確認時に電波強度が設定値B以下になるか否かが、通信状態プロファイル部107により判断される(S306)。
【0043】
S306において、次回の電波強度が設定値B以下になると、通信状態プロファイル部107により判断された場合、WLAN通信部103による通信を可能にするために、帰属先の検索処理、すなわちアクセスポイントに対する通信接続処理が行われる(S304)。また、S306において、次回の電波強度が設定値B以下ではないと、通信状態プロファイル部107により判断された場合、S302に戻り、電波強度の確認の周期ごとに上述の処理が繰り返される。
【0044】
また、S305において、通信状態プロファイル部107によるプロファイルの確認の結果、電波強度が増加傾向または不変状態(微小の減少傾向を含んでも良い)にある場合、さらに、次回の強度確認時に電波強度が設定値A以上になるか否かが、通信状態プロファイル部107により判断される(S307)。ここで、次回の電波強度が設定値A以上になると、通信状態プロファイル部107により判断された場合、WLAN通信部103に対する電源供給が遮断され、スリープ状態に移行するよう、制御部108によりWLAN通信部103は制御される(S308)。S308を経て、S202に進み、上述の処理が繰り返される。また、次回の電波強度が設定値A以上ではないと、通信状態プロファイル部107により判断された場合、S304に進み、帰属先の検索処理行われる(S304)。
【0045】
つぎに、移動機100が通話中(または着信の待ち受け中)であるときの電波強度に基づいて無線通信部101をスリープ状態に移行するときの動作について説明する。図5は、移動機100の通話中における無線通信部101をスリープ状態に移行するときの動作を示すフローチャートである。
【0046】
WLAN通信部103による通話が行われている(S401)。なお、着信の待ち受け中であっても良い。通話中(または着信の待ち受け中)に、WLAN通信の電波強度の確認周期になると(S402)、WLAN通信の電波強度が設定値A以上であるか否かが通信状態監視部105により判断される(S403)。ここで通信状態監視部105により、電波強度が設定値A以上ではないと判断された場合、S501に進む。S501以降の処理について後述する。
【0047】
通信状態監視部105により、電波強度が設定値A以上であると判断された場合、通信状態プロファイル部107によりプロファイルが確認される(S404)。具体的には、増減平均値算出部106により電波強度の履歴における増減傾向の増減平均値が算出され、そして、その平均値に基づいて今後の電波強度が増加傾向若しくは不変状態(微小の減少傾向を含んでもよい)であるか、減少傾向であるかが判断される(S404)。ここで、電波強度が増加傾向若しくは不変状態であると、通信状態プロファイル部107により判断されると、無線通信部101に対する電源供給を遮断し、その機能を停止させ、スリープ状態に移行させる(S405)。なお、すでに無線通信部101がスリープ状態にある場合には、その状態を継続させる。
【0048】
また、S404において、電波強度が減少傾向であると、通信状態プロファイル部107により判断されると、さらに次回の電波強度確認時に電波強度が設定値A以下であるか否かが、通信状態プロファイル部107により判断される(S406)。ここで、次回の電波強度が設定値A以下であると、通信状態プロファイル部107により判断された場合には、S501に進む。次回の電波強度が設定値A以下ではないと、通信状態プロファイル部107により判断された場合には、S401に戻り、上述の処理が繰り返される。
【0049】
このように、移動機100は、WLAN通信部103によるWLAN通信中(または着信待ち受け中)に、その電波強度に基づいて無線通信部101に対する電源供給を遮断して、その機能を停止させることができる。
【0050】
つぎに、S406において次回に確認される電波強度が設定値A以下であると通信状態プロファイル部107により判断された場合、またはS403においてWLAN通信における電波強度が設定値A以上でないと通信状態プロファイル部107により判断された場合の処理について説明する。図6は、S406において次回に確認される電波強度が設定値A以下であると通信状態プロファイル部107により判断された場合、またはS403においてWLAN通信における電波強度が設定値A以上でないと通信状態プロファイル部107により判断された場合における、無線通信部101をスリープ状態に移行するための再確認処理を行うときの移動機100の動作を示すフローチャートである。
【0051】
まず、無線通信部101による通信機能がオン(起動状態)される(S501)。なお、無線通信部101はパワーセーブモードであることが好ましい。また、無線通信部101による通信機能がすでにオン状態(起動状態)になっている場合は、そのオン状態は継続される。そして、WLAN通信部103による通信の電波強度の確認周期になると(S502)、増減平均値算出部106により、電波強度の履歴に基づいて電波強度の増減の傾向を示す増減平均値が算出され、算出された増減平均値に基づいて、通信状態プロファイル部107によりプロファイルの確認が行われる。具体的には、通信状態プロファイル部107により、今後の電波強度が増加傾向若しくは不変状態(微小に減少する傾向も含んでも良い)にあるか、または減少傾向にあるかが判断される(S503)。
【0052】
通信状態プロファイル部107により、電波強度が減少傾向にあると判断された場合(S503)、S502に戻り、上述処理を繰り返す。また、通信状態プロファイル部107により、電波強度が増加傾向若しくは不変状態にあると判断された場合、次回の電波強度確認時に電波強度が設定値A以上であるか否かが、通信状態プロファイル部107により判断される(S504)。ここで、通信状態プロファイル部107により、次回に確認される電波強度が設定値A以上ではないと判断される場合、S502に戻り上述の処理を繰り返す。また、通信状態プロファイル部107により、次回に確認される電波強度が設定値A以上であると判断される場合、無線通信部101に対する電源供給が遮断され、無線通信機能が停止され、スリープ状態となる(S505)。そして、図5におけるS402に戻り、繰り返し上述の処理が行われる。
【0053】
なお、上述の通信状態を測定するパラメータとして電波強度を用いて説明したが、パケットロス値を用いた場合でも同様の処理を行うことができる。ただし、パケットロス値を用いた場合は、電波強度に対する扱いと逆にする必要がある。具体的には、図2のS102においては、パケットロス値が設定値以下であるか否かが判断され、設定値以下である場合には、S103に進み、パケットロス値が設定値以下ではない場合には、S104に進むように処理する必要がある。そのほか、図3のS203、S206、S207、図4のS303、S306、S307、図5のS403、S406、図6のS504においても同様にパケットロス値を用いた判断処理を行うことができる。
【0054】
つぎに、本実施形態の移動機100の作用効果について説明する。この移動機100は、移動通信網に対して通信接続することができる無線通信部101とWLANに対して通信接続することができるWLAN通信部103とを備えており、予め定めた設定値に基づいて、無線通信部101による通信が可能か否かを通信状態監視部105が判断する。そして、移動機100において、無線通信部101による通信が可能ではあると判断された場合には、WLAN通信部103の起動状態を停止し、無線通信部101による通信が可能ではないと判断された場合には、WLAN通信部103の起動状態を継続するよう、WLAN通信部103を制御することができる。これにより、無線通信部101が通信可能であるときには、WLAN通信部103の起動状態を停止することができ、無線通信部101の通信状態を確保しつつ、WLAN通信部103の起動状態による電力消費を低減することができる。
【0055】
また、この移動機100によれば、無線通信部101により検出される電波強度が予め定めた設定値以上、またはパケットロス値が設定値以下であるか否かにより、無線通信部101による通信が可能であるか否かを通信状態監視部105が判断することができる。これにより、無線通信部101が通信可能か否かを高精度で判断することができ、WLAN通信部103の起動状態による電力消費を低減することができる。
【0056】
また、この移動機100によれば、通信状態監視部105が無線通信部101による通信が可能であると判断した場合、さらに、通信状態プロファイル部107が無線通信部101による今後の通信状態を予測して、無線通信部101による通信が可能であるか否かを判断することができる。これにより、無線通信部101が現時点で通信可能であっても、今後の通信状態を予測した結果に基づいて通信可能であるか否かを判断することができ、通信状態を確保しつつ、電力消費を低減することができる。
【0057】
また、移動機100によれば、無線通信部101により検出される電波強度、またはパケットロス値の履歴に基づいて、今後の通信状態を予測することができる。これにより、高精度で今後の通信状態を予測することができる。
【0058】
なお、上述の作用効果において、WLAN通信部103が通信可能となっている場合に、無線通信部101をスリープ状態に移行させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態に係る移動機100のブロック図である。
【図2】通信開始時におけるWLAN通信部103をスリープ状態に移行するときの移動機100の動作を示すフローチャートである。
【図3】通話中におけるWLAN通信部103をスリープ状態に移行するときの移動機100の動作を示すフローチャートである。
【図4】WLAN通信部103をスリープ状態に移行するための再確認処理を行うときの移動機100の動作を示すフローチャートである。
【図5】通話中における無線通信部101をスリープ状態に移行するときの移動機100の動作を示すフローチャートである。
【図6】無線通信部101をスリープ状態に移行するための再確認処理を行うときの移動機100の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
100…移動機、101…無線通信部、102…無線通信状態測定部、103…WLAN通信部、104…WLAN通信状態測定部、105…通信状態監視部、106…増減平均値算出部、107…通信状態プロファイル部、108…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信方式により通信を行う第1の通信手段と、
第2の通信方式により通信を行う第2の通信手段と、
予め定めた設定値に基づいて、前記第1の通信手段による通信が可能か否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記第1の通信手段による通信が可能ではあると判断された場合には、前記第2の通信手段の起動状態を停止し、前記判断手段により前記第1の通信手段による通信が可能ではないと判断された場合には、前記第2の通信手段の起動状態を継続するよう、前記第2の通信手段を制御する制御手段と、
を備える通信端末。
【請求項2】
前記判断手段は、前記第1の通信手段により検出される電波強度が予め定めた設定値以上、またはパケットロス値が設定値以下であるか否かにより、前記第1の通信手段による通信が可能であるか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
前記判断手段は、前記第1の通信手段による通信が可能であると判断した場合、さらに前記第1の通信手段による今後の通信状態を予測して、前記第1の通信手段による通信が可能であるか否かを判断することを特徴とする請求項1または2に記載の通信端末。
【請求項4】
前記判断手段は、前記第1の通信手段により検出される電波強度、またはパケットロス値の履歴に基づいて、今後の通信状態を予測することを特徴とする請求項3に記載の通信端末。
【請求項5】
第1の通信方式により通信を行う第1の通信手段と、第2の通信方式により通信を行う第2の通信手段と、を備える通信端末の通信方法において、
予め定めた設定値に基づいて、前記第1の通信手段による通信が可能か否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップにより前記第1の通信手段による通信が可能ではあると判断された場合には、前記第2の通信手段の起動状態を停止し、前記判断ステップにより前記第2の通信手段による通信が可能ではないと判断された場合には、前記第2の通信手段の起動状態を継続するよう、前記第2の通信手段を制御する制御ステップと、
を備える通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−88773(P2007−88773A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274522(P2005−274522)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】