説明

通信端末装置とそのプログラム、ネットワークシステム、及びネットワークでの通信方法

【構成】
通信端末装置は、ネットワークに接続される代理応答部と、代理応答部に接続されている通常応答部とを備えている。通信端末装置の代理応答部は、ネットワークからの要求に対し、通常応答部がスリープ中か起動中かで異なる応答を返信するように構成されている。
【効果】
代理応答部では対応できない要求に対しても、通常応答部をスリープモードから復帰させる必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は通信端末装置等に関し、特に通信端末装置が代理応答モードにある際の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
通信端末装置は、ネットワークとのインターフェースとして、代理応答部と通常応答部を備え、代理応答部がネットワーク側に、通常応答部がその後段に配置されていることが多い。そして代理応答部は小規模な回路で、ネットワークとの間でデータを送受信すると共に、ネットワークからの簡単な要求には自ら応答し、より複雑な要求には通常応答部へネットワークからの要求を転送する。また代理応答部は消費電力も小さいのでスリープモードを持たず、通常応答部は消費電力が大きいのでスリープモードを持つことが多い。
【0003】
代理応答部は自ら対応できる要求に応答し、対応できない要求には、スリープモードか否かを問わず、通常応答部に対応を要求する。このためネットワークを介して接続された他の端末から見た場合、通常応答部がスリープモードに有る場合も無い場合も、応答は同じである。そして通常応答部がスリープモードに有り、代理応答部が対応できない要求を受信すると、通常応答部をスリープモードから復帰させる。例えば複合機のスリープモードからの復帰を、特許文献1(JP2009-151537A)が記載している。しかし代理応答部では対応できない要求に対し、通常応答部をスリープモードから復帰させると、消費電力が増す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP2009-151537A
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、代理応答部では対応できない要求に対しても、通常応答部をスリープモードから復帰させる必要がない、通信端末装置、ネットワークシステム、通信方法、及び通信端末装置のプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ネットワークに接続される代理応答部と、代理応答部に接続されている通常応答部とを備える通信端末装置であって、
ネットワークからの要求に対し、通常応答部がスリープ中か起動中かで異なる応答を返信するように、代理応答部が構成されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、通常応答部がスリープ中か起動中かで異なる応答を返信するように、代理応答部が構成されているとは、返信が代理応答部を介して行われることを意味し、通常応答部が起動中の場合、応答を通常応答部が作成することを排除するものではない。この発明では、通常応答部がスリープ中の場合、起動中の場合と異なる応答を返信するので、要求を送信したクライアントは、他の複合機に要求する、追って再度要求する等の処理を行うことができる。またスリープ中の通常応答部を起動する必要がないので、省エネルギーである。
【0008】
好ましくは、ネットワークからの要求に対し、スリープ中の通常応答部をウェークアップ(起動)しないように、前記代理応答部が構成されている。スリープ中の通常応答部をウェークアップしないとは、全ての要求に対しウェークアップしないことに限らず、特定の種類の要求、例えば特定の種類のコマンド、あるいはネットワークの管理者からの要求以外はウェークアップしないことを含んでいる。
【0009】
またこの発明は、ネットワークに接続される代理応答部と、代理応答部に接続されている通常応答部とを備える複合機での、代理応答部のためのプログラムであって、前記代理応答部を、ネットワークからの要求に対し、通常応答部がスリープ中か起動中かで異なる応答を返信するように機能させることを特徴とする。このプログラムを代理応答部に記憶させることにより、ネットワークからの要求に対し、通常応答部をウェークアップする必要がない複合機が得られる。
【0010】
この発明のネットワークシステムは、ネットワークと、クライアントと、前記の通信端末装置である複数台の複合機を備え、
クライアントは、ネットワークを介して要求を送信した複合機の通常応答部がスリープ中であることを、代理応答部からの応答により検出すると、他の複合機に前記要求を送信するように構成されている。
【0011】
この発明の通信方法は、ネットワークと、クライアントと、代理応答部と通常応答部とを有する複数台の複合機を備えるネットワークシステムでの通信方法であって、
複合機がクライアントからネットワークを介して要求を受信すると、通常応答部がスリープ中か起動中かで異なる応答を、代理応答部から返信するステップと、
要求を送信したクライアントは、スリープ中の場合の応答を受信すると、他の複合機に前記要求を送信するステップ、とを実行することを特徴とする。
【0012】
この発明のネットワークシステム及び通信方法では、複合機の通常応答部がスリープモードに有る場合、起動中とスリープ中とで応答が異なることから、クライアントは通常応答部がスリープ中であることを検出できる。そしてクライアントが他の複合機に同じ要求を行うと、要求を充たすことができる。また最初に要求を受けた複合機では、通常応答部をウェークアップ(起動)する必要がないので、省エネルギーである。この明細書で、複合機等の通信端末装置に関する記載は、そのまま通信端末装置のプログラム、ネットワークシステム、及び通信方法の発明にも当てはまる。なお実施例では、通信端末装置として複合機を示すが、これに限るものではない。

【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例でのネットワーク環境を示す図
【図2】実施例の複合機のブロック図
【図3】複合機のネットワークインターフェースでの処理を示すフローチャート
【図4】複合機のクライアントでの処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書とこの分野の周知技術を参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0015】
図1〜図4に、実施例を示す。図において、2はネットワークシステムで、4はネットワークで、例えばLANであるが、他のネットワークでも良い。ネットワーク4には複合機6が例えば複数台接続され、他にファイルサーバ8が接続されている。複合機6,ファイルサーバ8はサーバの例で、他のサーバでも良い。そしてネットワーク4には、パーソナルコンピュータなどから成るクライアント10が多数接続されている。なお複合機6がこの発明での通信端末装置である。
【0016】
複合機6は代理応答部と通常応答部とを備え、PING,ARP,SNMPなどの簡単な要求には代理応答部が応答し、eメールの受信,プリントの要求などのより複雑な要求には、通常応答部が応答する。なお複合機6の場合、受信したeメールの多くは、インターネットファクシミリにより転送される。そして通常応答部がスリープ中に、eメールの受信あるいはプリントなどの要求を受け付けると、代理応答部はスリープ中で対応できない旨をクライアント10に回答し、通常応答部をウェークアップしない。クライアント10は、応答から、要求先の複合機6の通常応答部がスリープモードにあることを認識できるので、他の複合機に対し、eメールの受信,プリントなどを要求できる。そしてネットワーク4に接続された全ての複合機6がスリープモードにある場合、ファイルサーバ8のMIB(管理情報ベース)などへ、eメールの受信を要求したこととeメール自体、あるいはプリントを要求したこととプリントデータ自体などを送信する。ファイルサーバ8への送信形態は任意である。
【0017】
このようにすると、例えばネットワーク4に接続されたいずれかの複合機がウェークアップしており、かつユーザにとってどの複合機でプリントするか、あるいはeメールを受信するかが重要でない場合、当初要求した複合機とは異なる複合機で、eメールの受信,プリントなどの要求を処理する。そして全ての複合機がスリープ中の場合、ファイルサーバ8などへ要求を送信し、後にいずれかの複合機がウェークアップした際にファイルサーバからデータを取り出し、処理を行うようにする。
【0018】
特定の複合機6で処理を行うことがユーザにとって重要なことがある。例えば複合機6が互いに離れた場所に配置されている場合がそうである。このような場合、最初に要求した複合機の通常応答部がスリープ中であると、ファイルサーバ8へeメール、プリントデータ等を送信することを標準的な処理とするように、クライアント10を構成しても良い。そしてその場合、当初の複合機6がウェークアップした際に、ファイルサーバ8からデータを受け取り処理するようにすると良い。
【0019】
図2に複合機6の構成を示し、ネットワーク4側から見て最前段に代理応答部12があり、その後段に通常応答部14があって、代理応答部12を介してネットワーク4に接続され、代理応答部12と通常応答部14とでネットワークインターフェースを構成する。通常応答部14は複合機本体16と接続され、複合機本体16はスキャナ26,プリンタ28,G3ファクシミリ処理部30,画像処理部32などを備えている。代理応答部12は低速のCPU18と、小規模なプログラムメモリ19及び小規模なデータメモリ20を備え、通常応答部14はより高速のCPU22とより大規模なプログラムメモリ23,より大規模なデータメモリ24を備えている。通常応答部14は複合機本体16の状態をデータメモリ24に記憶し、複合機本体16がスリープモードに入ると、その旨をデータメモリ24に記憶する。また通常応答部14もスリープモードを持ち、複合機本体16と通常応答部14が同時にスリープモードに移行し、同時にウェークアップするようにしても良く、複合機本体16と通常応答部14が独立してスリープ/ウェークアップするようにしても良い。代理応答部12は、通常応答部14から通常応答部14の状態(スリープ/ウェークアップ)と複合機本体16の状態(スリープ/ウェークアップ)のデータを受け取り、データメモリ20に記憶する。
【0020】
図3にクライアントからの要求に対する複合機の応答アルゴリズムを示し、図3での処理の主体は代理応答部12あるいは通常応答部14である。ステップ1でネットワークから要求を受信すると、代理応答モードか通常応答モードかで異なる応答を行う(ステップ2)。ここで、通常応答モードは通常応答部14がウェークアップしているモードであり、代理応答モードは通常応答部14がスリープしているモードである。通常応答モードでは、クライアントからネットワークを介した要求に対し、代理応答部12で対応できる要求には代理応答部でパケットデータを作成し、代理応答部12で対応できず、通常応答部が応答すべき要求に対しては、通常応答部でパケットデータを作成する(ステップ3)。
【0021】
代理応答モードでは、全ての要求に対し代理応答部12が応答パケットのデータを作成し、パケットデータに代理応答モードである旨のデータを付加する(ステップ4)。代理応答モードである旨を付加したデータとは、例えば、通常応答部14がスリープ中で応答できない旨のデータを付加する。なお代理応答モードで、代理応答部12が単独で応答できる要求に対しては、通常応答部14がスリープ中であるとのデータを付加してもしなくても良い。通常応答モードの場合、代理応答モードの場合も、作成したパケットをステップ5で、代理応答部12から送信する。
【0022】
図3のアルゴリズムの要点は、通常応答部14しか応答できない要求に対し、通常応答部14をウェークアップせずに、代理応答部12が、通常応答部14がスリープ中で要求に対応できないなどの返信パケットを作成する点にある。このためネットワークからの要求に対し、通常応答部14をウェークアップする必要はなく、省エネルギーである。またクライアント10側からすると、通常応答部14がスリープ中で対応できないことを認識できるので、他の複合機6あるいはファイルサーバ8などに処理を要求することが可能になる。なお全ての要求に対し、通常応答部14をウェークアップしないようにする必要はない。通常応答部14をウェークアップさせずに、代理応答部12で、通常応答部14の応答とは異なるパケットデータを作成する機能を設けることが重要である。
【0023】
図4に、クライアント10側から見た処理を示し、処理の主体は図1のクライアント10である。ステップ11でeメールの受信,プリントなどの、代理応答部12では対応できない要求をネットワークを介し、複合機6へ行ったとする。複合機6のネットインターフェースが通常応答モードに有る場合、クライアント10は通常応答モードでの返信パケットを受信する(ステップ12,ステップ13)。そして通常応答モードでの返信に引き続いて、eメールの送信、プリントデータの送信などを行うと(ステップ14)、処理を終了する。代理応答モードで、複合機6の通常応答部14が応答できない場合、クライアント10は代理応答モードでのパケットを受信する(ステップ15)。同じ要求に対して、通常応答モードでの返信パケットと、代理応答モードでの返信パケットは異なるデータを含んでいる。以上のようにして、クライアント10は通常応答部14がスリープモードにあることを認識できるので、他の複合機に対し、eメールの受信,プリントなどを要求する(ステップ16)。
【0024】
ネットワーク4に接続された他の複合機の内で、通常応答モードにあるものが存在すると(ステップ17)、クライアントは、その複合機に対しステップ14と同様にeメール,プリントデータなどのデータを送信する(ステップ18)。ステップ17で他の複合機の通常応答部もスリープモードに有る場合、ステップ19でさらに他の複合機が存在するか否かを判断し、存在する場合、結合子Aからステップ16に戻る。ネットワークに接続された全ての複合機6が代理応答モードにある場合、ファイルサーバ8へeメール,プリントデータなどを送信する(ステップ20)。これに対して、当初要求を行った複合機がウェークアップした際に、ファイルサーバ8のMIBなどにアクセスし、自己宛のeメールあるいはプリントデータなどを検出すると、該当するデータをファイルサーバ8から受信し、処理を行う。
【0025】
ステップ17,ステップ19で他の複合機をチェックする範囲は、例えばLANなどのネットワーク4に接続された全ての複合機6としても良く、あるいはネットワークに接続された複合機中の同じフロアにあるもののみ等に制限しても良い。またネットワーク4に接続された複合機6が1台しかない環境では、あるいは当初要求した複合機で処理することが必要な場合には、ステップ15に引き続いてステップ20を実行しても良い。
【0026】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 通常応答部14がスリープモードにある場合、ネットワークからの要求でスリープモードを解除する必要がない。従って省エネルギーである。
(2) クライアント側では、通常応答部14が対応できないことを検出できるので、他の複合機6に処理を依頼する、あるいはファイルサーバ8へデータを転送するなどのことができる。

【符号の説明】
【0027】
2 ネットワークシステム
4 ネットワーク
6 複合機
8 ファイルサーバ
10 クライアント
12 代理応答部
14 通常応答部
16 複合機本体
18,22 CPU
19,23 プログラムメモリ
20,24 データメモリ
26 スキャナ
28 プリンタ
30 G3ファクシミリ処理部
32 画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続される代理応答部と、代理応答部に接続されている通常応答部とを備える通信端末装置であって、
ネットワークからの要求に対し、通常応答部がスリープ中か起動中かで異なる応答を返信するように、前記代理応答部が構成されていることを特徴とする、通信端末装置。
【請求項2】
ネットワークからの要求に対し、スリープ中の通常応答部をウェークアップしないように、前記代理応答部が構成されていることを特徴とする請求項1の通信端末措置。
【請求項3】
ネットワークに接続される代理応答部と、代理応答部に接続されている通常応答部とを備える複合機での、代理応答部のためのプログラムであって、
前記代理応答部を、ネットワークからの要求に対し、通常応答部がスリープ中か起動中かで異なる応答を返信するように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項4】
ネットワークと、クライアントと、請求項1または2の通信端末装置である複数台の複合機を備え、
クライアントは、ネットワークを介して要求を送信した複合機の通常応答部がスリープ中であることを、代理応答部からの応答により検出すると、他の複合機に前記要求を送信するように構成されている、ネットワークシステム。
【請求項5】
ネットワークと、クライアントと、代理応答部と通常応答部とを有する複数台の複合機を備えるネットワークシステムでの通信方法であって、
複合機がクライアントからネットワークを介して要求を受信すると、通常応答部がスリープ中か起動中かで異なる応答を、代理応答部から返信するステップと、
要求を送信したクライアントは、スリープ中の場合の応答を受信すると、他の複合機に前記要求を送信するステップ、とを実行することを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−137985(P2012−137985A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290648(P2010−290648)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】