説明

通信端末装置

【課題】マルチホップ通信において連続して中継が実施される確率を向上させる。
【解決手段】周辺の中継端末候補から送信される周期パケットには、中継端末候補の周辺端末数及び中継端末候補の位置情報が含まれる。中継端末最適度算出部17で、各スロットで受信した周期パケットに含まれる中継端末候補の位置情報、及び予め定めたマルチホップ通信の宛先に基づいて、中継端末候補と宛先との距離を算出する。そして、その距離が大きいほど小さくなり、中継端末候補の周辺端末数が多いほど大きくなる最適度を算出し、中継端末最適度記憶部18に記憶する。中継端末選択部19で、マルチホップ通信要求が発生した場合に、記憶された1フレーム分の最適度に基づいて、中継端末を選択し、パケット生成部20で、選択した中継端末の識別情報及び宛先情報を含むマルチホップ用パケットを生成して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信端末装置に係り、特に、周期的なパケット通信とは別に、不定期に発生するパケットをマルチホップ通信する通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、通信方式の1つとしてTDMA(Time Division Multiple Access)方式が知られている。このTDMA方式は、一つの情報伝送路を複数の通信端末装置で共有して短時間ずつ交代で各通信端末装置から通信情報を送信する通信方式である。例えば、1つ以上の周辺端末との間で、所定周期で繰り返されるフレームを複数のスロットで時分割し、スロット単位でデータをブロードキャストする通信端末装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような周辺端末間での通信よりも遠くへデータを送信したい場合などに、送信端末から宛先(データを送信したい特定位置)までの間に存在する少なくとも1つ以上の中継端末を介して、データを送信するマルチホップ通信が行われている。例えば、位置情報や移動方向等を用いて中継端末を選択し、宛先に向けて中継を依頼するGeocastの技術が提案されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−28550号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】F. Borgonovo, et all.、「ADHOC MAC:New MAC Architecture for Ad Hoc Networks Providing Efficient and Reliable Point-to-Point and Broadcast Services」
【非特許文献2】R. Scopigno, H. A. Cozzetti、「Mobile Slotted Aloha for Vanets」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、宛先に近づく端末を中継端末として選択しているが、例えば、図21に示すような状況で、端末Aから宛先(図中△印)へデータを送信したい場合には、端末Cよりも宛先に近づいている端末Bが中継端末として選択される。しかし、端末Bから宛先までは直接電波は届かず、また端末Bの通信可能エリア内にデータを中継可能な端末も存在しない。一方、端末Cの場合は、端末Cの通信可能エリア内の端末Dを中継端末とすることで、宛先までデータを届けることができる。
【0007】
このように、従来の技術では、中継端末の候補となる端末の周辺端末の存在を考慮していないため、適切な中継端末の選択が行えず、確実なマルチホップ通信を行うことができない場合がある、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、連続して中継が実施される確率を向上させることができる通信端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明の通信端末装置は、所定期間のフレームを時分割した複数のスロット各々を一単位として周期的に送信され、かつ自端末周辺の端末数及び該自端末の位置情報を含む周期パケットを送信すると共に、選択された場合に、前記周期パケットとは異なる不定期パケットを中継する中継端末候補が送信した前記周期パケットを受信する受信手段と、前記不定期パケットが送信される宛先と前記中継端末候補との距離、及び前記中継候端末候補周辺の端末数に基づいて、1フレーム期間で受信した周期パケットを送信した中継端末候補各々から、前記不定期パケットを中継する中継端末を選択する選択手段と、前記選択手段により選択された中継端末を識別するための情報、及び前記宛先の位置情報を含む不定期パケットを送信する送信手段と、を含んで構成されている。
【0010】
第1の発明の通信端末装置によれば、中継端末候補は、所定期間のフレームを時分割した複数のスロット各々を一単位として周期的に送信され、かつ自端末周辺の端末数及び該自端末の位置情報を含む周期パケットを送信する。また、選択された場合に、周期パケットとは異なる不定期パケットを中継する。受信手段は、中継端末候補が送信した周期パケットを受信し、選択手段が、不定期パケットが送信される宛先と中継端末候補との距離、及び中継候端末候補周辺の端末数に基づいて、1フレーム期間で受信した周期パケットを送信した中継端末候補各々から、不定期パケットを中継する中継端末を選択する。そして、送信手段が、選択手段により選択された中継端末を識別するための情報、及び宛先の位置情報を含む不定期パケットを送信する。
【0011】
このように、中継端末候補と不定期パケットの宛先との距離、及び中継端末候補周辺の端末数に基づいて、不定期パケットを中継する中継端末を選択するため、連続して中継が実施される確率を向上させることができる。
【0012】
また、第1の発明において、前記中継端末候補周辺の端末数を、該中継端末候補から見た方角に応じた領域毎の端末数とし、前記選択手段は、前記中継端末候補から見た前記宛先の方角に対応する前記領域の端末数を用いて、前記中継端末を選択することができる。これにより、中継端末候補から見た宛先の方角も考慮した中継端末候補周辺の端末数に基づいて中継端末が選択されるため、中継の確実性をより向上させることができる。
【0013】
また、第1の発明において、前記中継端末候補周辺の端末数を、該中継端末候補からの距離区間毎の端末数とし、前記選択手段は、前記中継端末候補からの距離区間が遠いほど大きくなる重みと該距離区間の端末数との積を用いて、前記中継端末を選択することができる。これにより、中継端末候補と宛先との距離区間も考慮した中継端末候補周辺の端末数に基づいて、ホップ数が少なくなる中継端末を選択することができるため、中継の効率を向上させることができる。
【0014】
また、第2の発明の通信端末装置は、所定期間のフレームを時分割した複数のスロット各々を一単位として周期的に送信され、かつ自端末での1フレーム期間におけるスロット毎の観測情報からなるフレーム情報及び該自端末の位置情報を含む周期パケットを送信すると共に、選択された場合に、前記周期パケットとは異なる不定期パケットを中継する中継端末候補が送信した前記周期パケットを受信する受信手段と、前記受信手段により受信したフレーム情報に基づいて、前記中継端末候補周辺の端末数を算出する算出手段と、前記不定期パケットが送信される宛先と前記中継端末候補との距離、及び前記中継候端末候補周辺の端末数に基づいて、1フレーム期間で受信した周期パケットを送信した中継端末候補各々から、前記不定期パケットを中継する中継端末を選択する選択手段と、前記選択手段により選択された中継端末を識別するための情報、及び前記宛先の位置情報を含む不定期パケットを送信する送信手段と、を含んで構成されている。
【0015】
第2の発明の通信端末装置によれば、中継端末候補は、所定期間のフレームを時分割した複数のスロット各々を一単位として周期的に送信され、かつ自端末での1フレーム期間におけるスロット毎の観測情報からなるフレーム情報及び該自端末の位置情報を含む周期パケットを送信する。また、選択された場合に、周期パケットとは異なる不定期パケットを中継する。受信手段が、中継端末候補が送信した周期パケットを受信し、算出手段が、受信手段により受信したフレーム情報に基づいて、中継端末候補周辺の端末数を算出する。選択手段は、不定期パケットが送信される宛先と中継端末候補との距離、及び中継候端末候補周辺の端末数に基づいて、1フレーム期間で受信した周期パケットを送信した中継端末候補各々から、不定期パケットを中継する中継端末を選択する。そして、送信手段が、選択手段により選択された中継端末を識別するための情報、及び宛先の位置情報を含む不定期パケットを送信する。
【0016】
このように、周期パケットに含まれるフレーム情報に基づいて、中継端末候補周辺の端末数を算出するため、周期パケットに中継端末候補周辺の端末数の情報が含まれない場合でも、第1の発明と同様の効果を奏することができる。
【0017】
また、第2の発明において、前記算出手段は、前記フレーム情報内の正常受信を示す観測情報の数を、前記中継端末候補周辺の端末数として算出することができる。
【0018】
また、第2の発明において、前記算出手段は、1フレーム前の自端末でのスロット毎の観測情報からなるフレーム情報において、受信失敗または受信異常を示す観測情報のスロットであって、前記受信手段により受信した前記中継端末候補のフレーム情報において、正常受信を示す観測情報のスロットの数を、前記中継端末候補周辺の端末数として算出することができる。これにより、不定期パケットを送信する自端末と中継端末との双方で観測している可能性が高い周辺端末を除外した中継端末候補周辺の端末数が算出されるため、中継端末としての適性がより高い中継端末を選択することができる。
【0019】
また、第2の発明において、前記フレーム情報は、さらに前記中継端末候補から見た周辺端末の方角を示すスロット毎の方角情報を含み、前記算出手段は、前記中継端末候補から見た前記宛先の方角を算出し、前記中継端末候補のフレーム情報において、正常受信を示す観測情報のスロットであって、算出した前記宛先の方角に対応した方角情報を有するスロットの数を、前記中継端末候補周辺の端末数として算出することができる。これにより、周期パケットに中継端末候補周辺の方角毎の端末数の情報が含まれない場合でも、中継端末候補から見た宛先の方角も考慮した中継端末候補周辺の端末数に基づいて中継端末が選択されるため、中継の確実性をより向上させることができる。
【0020】
また、第2の発明において、前記フレーム情報は、さらに前記中継端末候補から見た周辺端末の方角を示すスロット毎の方角情報を含み、前記算出手段は、1フレーム前の自端末のフレーム情報、及び前記中継端末候補のフレーム情報において、正常受信を示す観測情報のスロットであって、前記1フレーム前の自端末の方角情報と前記中継端末候補の方角情報とが異なるスロットの数を、前記中継端末候補周辺の端末数に加えることができる。これにより、中継端末としての適性がより高い中継端末を選択することができる。
【0021】
また、第2の発明において、前記フレーム情報は、さらに前記中継端末候補からの距離区間を示すスロット毎の距離区間情報を含み、前記選択手段は、前記中継端末候補からの距離区間が遠いほど大きくなる重みと該距離区間の端末数との積を用いて、前記中継端末を選択することができる。これにより、周期パケットに中継端末候補周辺の距離区間毎の端末数の情報が含まれない場合でも、ホップ数を少なくすることができる中継端末が選択され、中継の効率を向上させることができる。
【0022】
また、第1及び第2の発明において、前記選択手段は、前記宛先と前記中継端末候補との距離が大きいほど小さくなり、前記中継候端末候補周辺の端末数が多いほど大きくなる最適度に基づいて、前記中継端末を選択することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の通信端末装置によれば、中継端末候補と不定期パケットの宛先との距離、及び中継端末候補周辺の端末数に基づいて、不定期パケットを中継する中継端末を選択するため、連続して中継が実施される確率を向上させることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置によって送受信されるフレームの構成を示すイメージ図である。
【図3】第1の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される周期パケット受信処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行されるマルチホップ用パケット送信処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置によって送受信されるフレームの構成を示すイメージ図である。
【図6】中継端末候補の方角毎の周辺端末数を説明するための図である。
【図7】第2の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される周期パケット受信処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図8】中継端末候補から見た宛先方角の算出を説明するための図である。
【図9】第3の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置によって送受信されるフレームの構成を示すイメージ図である。
【図10】第4の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置によって送受信されるフレームの構成を示すイメージ図である。
【図11】第5の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置の構成を示すブロック図である。
【図12】第5の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置によって送受信されるフレームの構成を示すイメージ図である。
【図13】第5の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される周期パケット受信処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図14】第5の実施の形態におけるフレーム情報に基づく中継端末候補の周辺端末数の算出を説明するための図である。
【図15】第6の実施の形態におけるフレーム情報に基づく中継端末候補の周辺端末数の算出を説明するための図である。
【図16】第7の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置によって送受信されるフレームの構成を示すイメージ図である。
【図17】第7の実施の形態におけるフレーム情報に基づく中継端末候補の周辺端末数の算出を説明するための図である。
【図18】第8の実施の形態におけるフレーム情報に基づく中継端末候補の周辺端末数の算出を説明するための図である。
【図19】第9の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置によって送受信されるフレームの構成を示すイメージ図である。
【図20】第10の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置によって送受信されるフレームの構成を示すイメージ図である。
【図21】従来技術の問題点を説明するためのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、本発明を適用した無線通信端末装置を車両などの移動する移動体に搭載し、複数の無線通信端末装置の間でパケット(packet)を交換することにより無線通信を行なう場合を例に説明する。
【0026】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る無線通信ネットワークの移動体無線通信端末装置10は、受信アンテナ11を介して周辺の他の移動体無線通信端末装置10が送信したパケットを受信する受信回路12と、受信したパケットがどのスロットを用いて送信されてきたのかを検出するパケット検出部13と、検出されたパケットから送信されてきたデータを復調するパケット復調部14と、復調されたデータに基づいて、パケットを送信した端末の中継端末としての最適度を算出する中継端末最適度算出部17と、算出された最適度を1フレーム分記憶する中継端末最適度記憶部18と、記憶された最適度に基づいて、中継端末を選択する中継端末選択部19と、周期パケット及びマルチホップ用パケットを生成するパケット生成部20と、送信アンテナ22を介してパケットを送信する送信回路21と、を備えている。
【0027】
ここで、移動体無線通信端末装置10によって送受信されるフレームの構成について図2を用いて説明する。1フレームは、例えば100msに設定され、フレーム周期が周期的に繰り返されている。各フレーム周期は、N個の期間に分割されたN個のスロットにより構成されている。この1つのスロットは、1パケットを送信できる期間を示すものである。移動体無線通信端末装置10間で、このスロット単位でやり取りされるパケットを周期パケットという。なお、1フレーム周期は各移動体無線通信端末装置10のデータの送信周期に合わせて設定するとよい。例えば、各移動体無線通信端末装置10において、100msに1度のパケットの送信を保証するためには、100msに設定すると良い。本実施の形態に係る移動体無線通信端末装置10では、フレーム周期は100msとされているものとする。
【0028】
周期パケットは、プリアンブルと、送信対象となる実データが含まれるデータ領域と、スロットの同期ずれの影響を軽減するためのガードタイムとを有している。なお、本発明ではスロットの同期方法に関しては限定しないが、例えば同期のための基準局を設ける等の何らかの手段によって、ガードタイムで補償できる程度の同期がとれているものとする。
【0029】
データ領域には、自端末周辺に存在する端末数を示す周辺端末数情報、及び自端末の位置を示す自端末位置情報が含まれる。周辺端末数情報は、1フレーム期間におけるパケットの観測情報に基づいて算出された値が用いられる。具体的には、1フレーム期間において、パケットを正常受信した回数を周辺端末数とする。また、自端末位置情報は、図示しないGPS装置等により検出された情報が用いられる。
【0030】
次に、図3を参照して、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10において実行される周期パケット受信処理ルーチンについて説明する。なお、ここでは、周期パケットを送信した自端末周辺の端末を中継端末候補といい、スロットiを用いて周期パケットを送信している中継端末候補を中継端末候補iと表記する。また、自端末は後述するマルチホップ用パケット送信処理における送信端末となるため、自端末を送信端末ともいう。
【0031】
ステップ100で、パケット検出部13により、スロットiのタイミングで受信回路12の状態を取り込む。
【0032】
次に、ステップ102で、上記ステップ100で周期パケットを受信した場合には、パケット復調部14により、受信した周期パケットを復調して中継端末候補iから送信されたデータを復元すると共に、周期パケットに含まれる周辺端末数情報及び自端末位置情報(=中継端末候補iの位置情報)を取得する。
【0033】
次に、ステップ104で、上記ステップ102で取得した中継端末候補iの位置情報、及び予め設定されたマルチホップ用パケットの宛先の位置情報に基づいて、中継端末候補iと宛先との距離を算出する。マルチホップ用パケットの宛先は、例えば、送信端末の現在位置から送信端末が搭載された移動体の進行方向後方1kmの地点を中心とする周辺10mの範囲内、のように、特定の位置を示す情報を予め定めておく。なお、距離の算出は、単純に2点間の直線距離を算出してもよいし、地図情報等を利用して道路形状に沿った距離を算出するようにしてもよい。
【0034】
次に、ステップ106で、上記ステップ102で取得した中継端末候補iの周辺端末数、及び上記ステップ104で算出した中継端末候補iと宛先との距離に基づいて、マルチホップ通信の中継端末としての最適度を算出する。最適度は、中継端末候補iと宛先との距離が大きいほど小さくなり、中継端末候補iの周辺端末数が多いほど大きくなる値とすることができ、例えば、下記(1)式のように定めることができる。
【0035】
【数1】

【0036】
ここで、α及びβは所定の係数であり、α+β=1とする。また、送信端末と宛先との距離は、移動体無線通信端末装置10に設けられた図示しないGPS装置等により検出された自端末の位置情報に基づいて算出することができる。また、最大収容台数とは、1フレーム期間におけるスロット数である。
【0037】
そして、算出された中継端末候補iの最適度を、中継端末最適度記憶部18に記憶する。中継端末最適度記憶部18には、1フレーム分の各スロットで得られた最適度が記憶される。
【0038】
次に、図4を参照して、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10において実行されるマルチホップ用パケット送信処理ルーチンについて説明する。
【0039】
ステップ120で、マルチホップ通信による中継を要求する事象(以下、マルチホップ通信要求という)が発生したか否かを判定する。マルチホップ通信要求とは、例えば、事故情報などの通常のシングルホップ通信時の周期パケットには含まれない情報である。マルチホップ通信要求の発生は、例えば、カーナビゲーションシステムと連動して検出したり、他の移動体無線通信端末装置から取得したり、自車両に搭載された車載カメラやレーザレーダ等により検出された車両周辺状況から判断したりすることができる。マルチホップ通信要求が発生した場合には、ステップ122へ移行し、発生しない場合には、本ステップの判定を繰り返す。
【0040】
ステップ122では、中継端末最適度記憶部18に記憶されたスロット毎、すなわち中継端末候補毎の最適度を参照して、最適度が最大の中継端末候補を、マルチホップ通信の中継端末として選択する。
【0041】
次に、ステップ124で、上記ステップ122で選択した中継端末を識別するための情報、予め定めた宛先の位置情報、及び上記ステップ120で検出したマルチホップ通信要求が示す事象に関する情報をデータ領域に含むマルチホップ用パケットを生成する。中継端末を識別する情報は、自端末(中継端末候補)を識別するためのID情報を周期パケットに含めておき、このID情報を用いるようにしてもよいし、選択した中継端末が使用しているスロットの番号「i」を用いてもよい。そして、生成したマルチホップ用パケットを周辺端末へ送信して、処理を終了する。
【0042】
このように送信されたマルチホップ用パケットを受信した各中継端末候補は、マルチホップ用パケットに含まれる情報から、自端末が中継端末として選択されたか否かを判断する。中継端末として選択されている場合には、中継端末が送信端末となって、上記マルチホップ用送信処理を実行する。この際、上記ステップ120の判定は、自端末を中継端末として指定するマルチホップ用パケットを受信することにより肯定判定される。そして、マルチホップ用パケットに含まれる宛先にパケットが届くまで、この中継を繰り返す。
【0043】
以上説明したように、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、各端末において、自端末の周辺に存在する中継端末候補から周期パケットを受信した際に、中継端末候補の周辺端末数及び宛先までの距離に基づく最適度を算出し、マルチホップ通信要求が発生した際に、最適度が最大の中継端末候補を中継端末として選択するため、連続して中継が実施される確率を向上させることができる。
【0044】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、周期パケットに含まれる周辺端末数情報の構成が、第1の実施の形態とは異なる。なお、第2の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10の構成と同一であるため、説明を省略する。
【0045】
図5に示すように、第2の実施の形態で用いられる周期パケットは、周辺端末数情報が、自端末を中心とした方角毎に構成されている。例えば、図6(A)に示すように、自端末の位置を基準として周辺領域を四方位に対応した複数の領域(図中破線で分割された各領域)に分割し、この領域毎に周辺端末数をカウントする。周辺端末がいずれの領域に存在するかは、周辺端末から送信されてきた周期パケットに含まれる自端末位置情報に基づいて判断する。同図(A)のように端末Bの周辺に他の端末(○印)が存在する場合、端末Bから送信される周期パケットには、同図(B)に示すような周辺端末数情報が含まれることになる。なお、ここでは、方角を4つに区分する場合について説明したが、3つ以下でもよいし、5つ以上でもよい。
【0046】
次に、図7を参照して、第2の実施の形態の移動体無線通信端末装置10において実行される周期パケット受信処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の周期パケット受信処理ルーチンと同一の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
ステップ100で、スロットiで中継端末候補iから送信された周期パケットを受信し、次に、ステップ102で、受信した周期パケットを復調して、中継端末候補iの周辺端末数情報及び位置情報を取得する。次に、ステップ104で、中継端末候補iと宛先との距離を算出する。
【0048】
次に、ステップ205で、中継端末候補iから見た宛先の方角を算出する。例えば、図8に示すように、中継端末候補B、送信端末A及び宛先(△印)が位置する場合、送信端末Aから見た宛先方角Dは、検出した自端末の位置情報と予め定めた宛先の位置情報とに基づいて算出することができる。また、送信端末Aが中継端末候補Bから周期パケットを受信した受信方角Rは、検出した自端末(送信端末A)の位置情報と周期パケットに含まれる中継端末候補Bの位置情報とに基づいて算出することができる。中継端末候補Bから見た宛先の方角Rは、この宛先方角D及び受信方角Rを用いて、R=D+Rのベクトル演算により算出することができる。
【0049】
次に、ステップ206で、中継端末候補iの最適度を算出する。最適度の算出に用いる周辺端末数は、上記ステップ205で算出した方角Rに対応した方角に存在する端末数とする。例えば、下記(2)式により最適度を算出する。
【0050】
【数2】

【0051】
例えば、図6及び図8の例では、算出した方角Rは方角Eの領域に対応するため、周辺端末数のE領域の端末数である「1」を、最適度の算出に用いる。
【0052】
以上説明したように、第2の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、中継端末候補から見た宛先方角も考慮した中継端末候補の周辺端末数を用いて最適度を算出するため、より最適な中継端末が選択され、中継の確実性を向上させることができる。
【0053】
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、周期パケットに含まれる周辺端末数情報の構成が、第1及び第2の実施の形態で用いられる周期パケットの構成とは異なる。なお、第3の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10の構成と同一であるため、説明を省略する。
【0054】
図9に示すように、第3の実施の形態で用いられる周期パケットは、周辺端末数情報が、自端末からの距離区間毎に構成されている。自端末と周辺端末との距離は、単純に2点間の直線距離としてもよいし、地図情報等を利用して道路形状に沿った距離としてもよい。なお、ここでは、距離区間を4つ設ける場合について説明したが、3つ以上設けてもよいし、5つ以上設けてもよい。また、1距離区間の間隔も適宜設定可能である。
【0055】
第3の実施の形態の移動体無線通信端末装置10において実行される周期パケット受信処理ルーチンは、第1の実施の形態の周期パケット受信処理ルーチンと、最適度の算出方法(図3のステップ106)が異なるため、異なる点について説明する。
【0056】
第3の実施の形態における最適度は、例えば、下記(3)式のように算出することができる。
【0057】
【数3】

【0058】
ここで、距離区間の重み係数は、距離区間が遠くなるほど大きくなる値とする。従って、遠くに多くの周辺端末が存在する中継端末候補ほど最適度が大きくなる。このような中継端末候補が中継端末として選択されることにより、マルチホップ通信のホップ数を少なくすることができる。例えば、各距離区間の最大値、中央値、最小値等をそのまま重み係数としたり、距離区間0〜50mは1、距離区間50〜100mは2、距離区間100〜150mは3、距離区間150〜200mは4のような重み係数としたりすることができる。
【0059】
以上説明したように、第3の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、中継端末候補からの距離区間も考慮した中継端末候補の周辺端末数を用いて最適度を算出するため、ホップ数が少なくなる中継端末が選択され、マルチホップ通信の効率を向上させることができる。
【0060】
次に、第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態では、周期パケットに含まれる周辺端末数情報の構成が、第1〜第3の実施の形態とは異なる。なお、第4の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10の構成と同一であるため、説明を省略する。
【0061】
図10に示すように、第4の実施の形態で用いられる周期パケットは、周辺端末数情報が、自端末を中心とした方角毎に構成され、さらに各方角が自端末からの距離区間毎に構成されている。なお、距離区間各々をさらに方角毎に構成するようにしてもよい。
【0062】
第4の実施の形態の移動体無線通信端末装置10において実行される周期パケット受信処理ルーチンは、第2の実施の形態の周期パケット受信処理ルーチンと、最適度の算出方法(図7のステップ206)が異なるため、異なる点について説明する。
【0063】
第4の実施の形態における最適度は、例えば、下記(4)式のように算出することができる。
【0064】
【数4】

【0065】
以上説明したように、第4の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、中継端末候補から見た宛先方角及び中継端末候補からの距離区間も考慮した中継端末候補の周辺端末数を用いて最適度を算出して中継端末を選択するため、中継の確実性及び効率を向上させることができる。
【0066】
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態では、送信端末において、中継端末候補の周辺端末数を算出する点が、第1〜第4の実施の形態とは異なる。なお、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10と同一の構成については、同一または対応する符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0067】
図11に示すように、第5の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置510は、受信アンテナ11と、受信回路12と、パケット検出部13と、パケット復調部14と、自端末の観測情報に基づいてフレーム情報を生成するフレーム情報生成部15と、周期パケットに含まれるフレーム情報に基づいて、中継端末候補の周辺端末数を算出する周辺端末数算出部16と、中継端末最適度算出部17と、中継端末最適度記憶部18と、中継端末選択部19と、パケット生成部20と、送信回路21と、送信アンテナ22と、を備えている。
【0068】
第5の実施の形態で送受信される周期パケットのフレーム構成について図12を用いて説明する。周期パケットは、プリアンブルと、自端末で観測された1フレーム周期中のスロットの使用状態を示すフレーム情報(FI)と、自端末位置情報を含むデータ領域と、ガードタイムとを有している。
【0069】
フレーム情報には、スロット数分の領域が設けられている。本実施の形態では、N個のスロットに対応してN個の領域[SI、SI、・・・、SI]が設けられている。この各領域には、自端末のパケット検出部13での検出結果及びパケット復調部14の復調の成否情報に基づくスロットの使用状態を示す観測情報(SI)が設定される。
【0070】
フレーム情報の観測情報は、「ACK」(正常受信)、「RTC」(スロット変更要求:パケット衝突)、「NACK」(受信失敗)、及び「FREE」(空き)の何れかを示す値が設定される。観測情報の「ACK」は、対象となるスロットにおいて、パケットの受信が成功したことを示す。なお、パケットの受信が成功したとは、単にパケットを受信・検出しただけでなく、パケット内の情報を復調できたことをいう。また、「RTC」は、パケットが衝突したことを示す。また、「NACK」は、対象となるスロットにおいて、パケットの受信が失敗したことを示し、パケットを受信・検出したが、パケット内の情報を復調できなかったことを示す。「FREE」は、対象となるスロットにおいて、パケットが受信されなかったことを示す。
【0071】
次に、図13を参照して、第5の実施の形態の移動体無線通信端末装置510において実行される周期パケット受信処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の周期パケット受信処理と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、以下では、フレーム情報生成部15で生成したフレーム情報と、受信した周期パケットに含まれるフレーム情報とを区別するために、フレーム情報生成部15で生成したフレーム情報を観測フレーム情報(観測FI)、受信した周期パケットに含まれるフレーム情報を受信フレーム情報(受信FI)という。また、観測FIの観測情報を単に観測情報(観測SI)、受信FIの観測情報を受信観測情報(受信SI)という。
【0072】
ステップ100で、スロットiで中継端末候補iから送信された周期パケットを受信し、次に、ステップ500で、パケット復調部14により、受信した周期パケットを復調して中継端末候補iから送信されたデータを復元する。
【0073】
次に、ステップ502で、上記ステップ100での受信結果、及び上記ステップ500での復調結果に基づいて、スロットiの観測情報(観測SI)が「ACK」か否かを判定する。観測SI=ACKの場合には、ステップ504へ移行して、観測SIとして「ACK」を生成して、ステップ508へ移行する。一方、観測SI≠ACKの場合には、ステップ506へ移行し、受信結果及び復調結果に応じて、観測SIとして「NACK」、「RTC」または「FREE」を生成して、処理を終了する。
【0074】
ステップ508では、上記ステップ500で復元されたデータから中継端末候補iの受信FI及び自端末位置情報(=中継端末候補iの位置情報)を取得する。次に、ステップ104で、中継端末候補iと宛先との距離を算出する。
【0075】
次に、ステップ512で、上記ステップ508で取得した中継端末候補iの受信FIに基づいて、中継端末候補iの周辺端末数を算出する。具体的には、受信FI中の中継端末候補iの送信スロットを除き、受信SIが「ACK」となっているスロット数を、中継端末候補iの周辺端末数として算出する。例えば、受信FIが、図14に示すようなものであった場合、周辺端末数は「3」と算出される。
【0076】
次に、ステップ106で、上記ステップ104で算出した中継端末候補iと宛先との距離、及び上記ステップ512で算出した中継端末候補iの周辺端末数を用いて、上記(1)式に従って、中継端末候補iの最適度を算出し、算出した最適度を中継端末最適度記憶部18に記憶して、処理を終了する。
【0077】
以上説明したように、第5の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、周期パケットに含まれるフレーム情報に基づいて、中継端末候補の周辺端末数を算出するため、周期パケットに周辺端末数の情報が含まれない場合でも、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0078】
次に、第6の実施の形態について説明する。第6の実施の形態では、自端末のフレーム情報も用いて中継端末候補の周辺端末数を算出する点が、第5の実施の形態と異なる。なお、第6の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、周辺端末数算出部16において、フレーム情報生成部15で生成されたフレーム情報も用いる点を除いて、第5の実施の形態の移動体無線通信端末装置10の構成と同一であるため、説明を省略する。
【0079】
第6の実施の形態の移動体無線通信端末装置10において実行される周期パケット受信処理ルーチンは、第5の実施の形態の周期パケット受信処理ルーチンと、中継端末候補の周辺端末数の算出方法(図13のステップ512)の処理が異なるため、異なる点について説明する。
【0080】
第6の実施の形態では、スロットiで受信した受信FIと1フレーム前の観測FIとを比較し、1フレーム前の観測SIが「ACK」ではなく、かつ受信SIが「ACK」となっているスロット数を、中継端末候補の周辺端末数として算出する。例えば、図15に示すような観測FI及び受信FIの場合、3スロット目及び7スロット目が上記条件に該当するため、中継端末候補iの周辺端末数は「2」と算出される。
【0081】
受信FIだけみると、4スロット目も「ACK」となっているが、1フレーム前の観測FIにおいても、4スロット目は「ACK」となっているため、周辺端末数としてカウントしない。このような場合、送信端末と中継端末候補iとで、同一の周辺端末を観測している可能性が高い。中継端末候補の周辺端末数が同じ場合には、送信端末及び中継端末候補の双方から電波が届く周辺端末数が多い場合よりも、送信端末からは電波が届かないが、中継端末からは電波が届く周辺端末数が多い方が、マルチホップ通信の中継端末としての適性が高いといえる。そこで、送信端末及び中継端末候補の双方で観測している可能性が高い周辺端末を、中継端末候補の周辺端末数から除外することで、より適性の高い中継端末候補の最適度が高くなるようにしたものである。
【0082】
以上説明したように、第6の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、周期パケットに含まれるフレーム情報とあわせて、自端末において観測されたフレーム情報も用いて、送信端末及び中継端末候補の双方で観測している可能性が高い周辺端末を除外して中継端末候補の周辺端末数を算出するため、マルチホップ通信の中継端末としての適性がより高い中継端末を選択することができる。
【0083】
次に、第7の実施の形態について説明する。第7の実施の形態では、周期パケットに含まれるフレーム情報の構成が、第5及び第6の実施の形態とは異なる。なお、第7の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、第5または第6の実施の形態の移動体無線通信端末装置510の構成と同一であるため、説明を省略する。
【0084】
図16に示すように、第7の実施の形態で用いられる周期パケットに含まれるフレーム情報は、拡張フレーム情報(eFI)となっており、拡張フレーム情報には、観測SI領域と共に、N個の領域[DI、DI、・・・、DI]が設けられている。この各領域には、周期パケットを受信した際の自端末から見た周辺端末の方角に対応した方角情報(DI)が設定される。方角情報は、例えば、図6(A)に示すように、自端末の位置を基準として周辺領域を四方位に対応した複数の領域(図中破線で分割された各領域)に分割し、いずれの領域に周辺端末が存在するかによって、「N」、「S」、「W、「E」のいずれかを設定する。周辺端末がいずれの領域に存在するかは、周辺端末から送信されてきた周期パケットに含まれる自端末位置情報に基づいて判断する。なお、ここでは、方角情報として4区分を用いる場合について説明したが、3つ以下でもよいし、5つ以上でもよい。
【0085】
第7の実施の形態の移動体無線通信端末装置510において実行される周期パケット受信処理ルーチンは、第5の実施の形態の周期パケット受信処理ルーチン(図13)のステップ104とステップ512との間に、中継端末候補から見た宛先の方角を算出するステップを設ける点、及び中継端末候補の周辺端末数の算出方法(ステップ512)が異なるため、異なる点について説明する。なお、以下では、観測eFI中の方角情報を単に方角情報(観測DI)、受信eFI中の方角情報を受信方角情報(受信DI)という。
【0086】
中継端末候補から見た宛先の方角は、第2の実施の形態の周期パケット受信処理(図7)のステップ205と同様に算出することができる。
【0087】
そして、ステップ512では、受信eFI中の受信SIが「ACK」で、かつ受信DIが上記ステップ205で算出した方角Rに対応した方角情報を示すスロット数を、中継端末候補の周辺端末数として算出する。例えば、受信eFIが、図17に示すような場合であって、算出された方角Rが「E」の場合には、4スロット目のみが条件に該当するため、中継端末候補の周辺端末数は「1」と算出される。
【0088】
なお、ステップ106で算出される最適度は、上記ステップ512で算出された方角Rに対応した周辺端末数となるため、上記(2)式に従って算出される最適度と同様のものとなる。
【0089】
以上説明したように、第7の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、周期パケットに含まれるフレーム情報に、中継端末候補から見た周辺端末の方角を示すスロット毎の方角情報を含めることで、周期パケットに方角毎の周辺端末数の情報が含まれない場合でも、第2の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0090】
次に、第8の実施の形態について説明する。第6の実施の形態において、送信端末及び中継端末候補の双方で観測している可能性が高い周辺端末を除外して中継端末候補の周辺端末数を算出する場合について説明したが、第8の実施の形態では、この除外の判断をより厳密に行う場合について説明する。なお、第8の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、第5の実施の形態の移動体無線通信端末装置510の構成と同一であるため、説明を省略する。また、第8の実施の形態で用いられる拡張フレーム情報は、第7の実施の形態で用いられる拡張フレーム情報と同様である。
【0091】
また、第8の実施の形態の移動体無線通信端末装置510において実行される周期パケット受信処理ルーチンは、第5の実施の形態の周期パケット受信処理ルーチンと、中継端末候補の周辺端末数の算出方法(図13のステップ512)の処理が異なるため、異なる点について説明する。
【0092】
第8の実施の形態では、まず、スロットiで受信した受信eFIと1フレーム前の観測eFIとを比較し、1フレーム前の観測SIが「ACK」ではなく、かつ受信SIが「ACK」となっているスロットの数を算出する。次に、受信SIが「ACK」であって、かつそのスロットの受信DIと1フレーム前の観測DIとが異なるスロットの数を加えて、中継端末候補の周辺端末数として算出する。例えば、図18に示すような観測eFI及びe受信FIの場合、3スロット目が前者の条件に該当し、7スロット目が後者の条件に該当するため、中継端末候補iの周辺端末数はあわせて「2」と算出される。2スロット目は、受信DIと観測DIとが同一であるため、カウントされない。
【0093】
受信SI及び1フレーム前の観測SIだけみると、7スロット目は共に「ACK」であるため、第6の実施の形態の判断を適用すると、周辺端末数から除外される。しかし、中継端末候補が7スロット目で観測した周辺端末は、送信端末の通信エリア外に存在し、送信端末が7スロット目で観測した周辺端末は、中継端末候補の通信エリア外に存在する場合には、双方の「ACK」は異なる周辺端末からの受信状況を示すものである。この場合、中継端末候補は、送信端末からの電波が届かない周辺端末と通信可能であることを示しており、中継端末としての適性が高いといえる。このような状況であるか否かを、受信DIと1フレーム前の観測DIとが異なるか否かによって判断するものである。
【0094】
さらに、第7の実施の形態のように、中継端末から見た宛先方角Rに対応する方角情報で、算出する周辺端末数をさらに限定してもよい。例えば、方角Rが「S」の場合、図18の例では、3スロット目はカウントされるが、7スロット目はカウントされないため、中継端末候補iの周辺端末数は「1」と算出される。
【0095】
以上説明したように、第8の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、周期パケットに含まれるフレーム情報とあわせて、自端末において観測されたフレーム情報も用いて、さらに、方角情報での照合も取ることにより、マルチホップ通信の中継端末としてより適性の高い中継端末を選択することができる。
【0096】
次に、第9の実施の形態について説明する。第9の実施の形態では、周期パケットに含まれるフレーム情報の構成が、第5〜第8の実施の形態とは異なる。なお、第9の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、第5の実施の形態の移動体無線通信端末装置510の構成と同一であるため、説明を省略する。
【0097】
図19に示すように、第9の実施の形態で用いられる周期パケットに含まれるフレーム情報は、拡張フレーム情報(eFI)となっており、拡張フレーム情報には、観測SI領域と共に、N個の領域[DT、DT、・・・、DT]が設けられている。この各領域には、周期パケットを受信した際の自端末と周辺端末との距離区間を示す距離テーブル情報(DT)が設定される。距離テーブル情報は、例えば、自端末と周辺端末との距離が0〜50mの場合には「0」、50〜100mの場合には「1」、100〜150mの場合には「2」、150〜200mの場合には「3」のように定めることができる。なお、ここでは、距離テーブル情報として4区分を用いる場合について説明したが、3つ以下でもよいし、5つ以上でもよい。
【0098】
第9の実施の形態の移動体無線通信端末装置510において実行される周期パケット受信処理ルーチンは、第5の実施の形態の周期パケット受信処理ルーチンと、最適度の算出方法(図13のステップ106)の処理が異なるため、異なる点について説明する。
【0099】
第9の実施の形態では、上記(3)式に従って、最適度を算出する。距離区間の重み係数は、例えば、距離テーブル情報の値をそのまま用いることができる。
【0100】
以上説明したように、第9の実施の形態の形態の移動体無線通信端末装置によれば、周期パケットに含まれるフレーム情報に、中継端末候補と周辺端末との距離区間を示す距離テーブル情報を含めることで、周期パケットに距離区間毎の周辺端末数の情報が含まれない場合でも、第3の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0101】
なお、第6の実施の形態に、第9の実施の形態の距離テーブル情報を含む拡張フレーム情報を適用して、上記(3)式により最適度を算出するようにしてもよい。
【0102】
次に、第10の実施の形態について説明する。第10の実施の形態では、周期パケットに含まれるフレーム情報の構成が、第5〜第9の実施の形態とは異なる。なお、第10の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、第5の実施の形態の移動体無線通信端末装置510の構成と同一であるため、説明を省略する。
【0103】
図20に示すように、第10の実施の形態で用いられる周期パケットに含まれるフレーム情報は、拡張フレーム情報(eFI)となっており、拡張フレーム情報には、SI領域、DI領域、及びDT領域が設けられている。
【0104】
第10の実施の形態の移動体無線通信端末装置510において実行される周期パケット受信処理ルーチンは、第7の実施の形態の周期パケット受信処理ルーチンと、最適度の算出方法(図13のステップ106)において、上記(4)式に従って最適度を算出する点が異なるのみである。
【0105】
以上説明したように、第10の実施の形態によれば、周期パケットに含まれるフレーム情報に、方角情報及び距離テーブル情報を含めることで、周期パケットに方角及び距離区間毎の周辺端末数の情報が含まれない場合でも、第4の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0106】
なお、第8及び第9の実施の形態に、第10の実施の形態の方角情報及び距離テーブル情報を含む拡張フレーム情報を適用して、上記(4)式により最適度を算出するようにしてもよい。
【0107】
また、上記実施の形態では、周辺端末が、中継端末候補から見た宛先方角Rに対応する方角か否かを、中継端末候補を基準として周辺領域を四方位に対応した複数の領域の中の同じ領域に存在するか否かで判断する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、宛先−中継端末候補−周辺端末のなす角が所定の閾値角度以下か否かにより判断するようにしてもよい。また、地図情報等を利用して、中継端末候補と周辺端末とが同じ道路上(リンク上)に位置するか否かにより判断するようにしてもよい。
【0108】
また、上記(1)〜(4)式に示した最適度の算出式は一例であり、これに限定されない。中継端末候補と宛先との距離、及び中継端末候補の周辺端末数に基づいて算出するものであればよい。より適切な中継端末を選択するためには、宛先と中継端末との距離が大きいほど小さくなり、中継端末候補の周辺端末数が多いほど大きくなる値が算出できることが好ましい。
【0109】
また、上記実施の形態では、最適度が最大の中継端末候補を中継端末として選択する場合について説明したが、選択される中継端末は1つに限定されない。例えば、最適度が所定の閾値以上の複数の中継端末候補を中継端末として選択してもよいし、最適度上位の所定個の中継端末候補を中継端末として選択してもよい。
【符号の説明】
【0110】
10、510 移動体無線通信端末装置
11 受信アンテナ
12 受信回路
13 パケット検出部
14 パケット復調部
15 フレーム情報生成部
16 周辺端末数算出部
17 中継端末最適度算出部
18 中継端末最適度記憶部
19 中継端末選択部
20 パケット生成部
21 送信回路
22 送信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間のフレームを時分割した複数のスロット各々を一単位として周期的に送信され、かつ自端末周辺の端末数及び該自端末の位置情報を含む周期パケットを送信すると共に、選択された場合に、前記周期パケットとは異なる不定期パケットを中継する中継端末候補が送信した前記周期パケットを受信する受信手段と、
前記不定期パケットが送信される宛先と前記中継端末候補との距離、及び前記中継候端末候補周辺の端末数に基づいて、1フレーム期間で受信した周期パケットを送信した中継端末候補各々から、前記不定期パケットを中継する中継端末を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された中継端末を識別するための情報、及び前記宛先の位置情報を含む不定期パケットを送信する送信手段と、
を含む通信端末装置。
【請求項2】
前記中継端末候補周辺の端末数を、該中継端末候補から見た方角に応じた領域毎の端末数とし、
前記選択手段は、前記中継端末候補から見た前記宛先の方角に対応する前記領域の端末数を用いて、前記中継端末を選択する
請求項1記載の通信端末装置。
【請求項3】
前記中継端末候補周辺の端末数を、該中継端末候補からの距離区間毎の端末数とし、
前記選択手段は、前記中継端末候補からの距離区間が遠いほど大きくなる重みと該距離区間の端末数との積を用いて、前記中継端末を選択する
請求項1または請求項2記載の通信端末装置。
【請求項4】
所定期間のフレームを時分割した複数のスロット各々を一単位として周期的に送信され、かつ自端末での1フレーム期間におけるスロット毎の観測情報からなるフレーム情報及び該自端末の位置情報を含む周期パケットを送信すると共に、選択された場合に、前記周期パケットとは異なる不定期パケットを中継する中継端末候補が送信した前記周期パケットを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信したフレーム情報に基づいて、前記中継端末候補周辺の端末数を算出する算出手段と、
前記不定期パケットが送信される宛先と前記中継端末候補との距離、及び前記中継候端末候補周辺の端末数に基づいて、1フレーム期間で受信した周期パケットを送信した中継端末候補各々から、前記不定期パケットを中継する中継端末を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された中継端末を識別するための情報、及び前記宛先の位置情報を含む不定期パケットを送信する送信手段と、
を含む通信端末装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記フレーム情報内の正常受信を示す観測情報の数を、前記中継端末候補周辺の端末数として算出する請求項4記載の通信端末装置。
【請求項6】
前記算出手段は、1フレーム前の自端末でのスロット毎の観測情報からなるフレーム情報において、受信失敗または受信異常を示す観測情報のスロットであって、前記受信手段により受信した前記中継端末候補のフレーム情報において、正常受信を示す観測情報のスロットの数を、前記中継端末候補周辺の端末数として算出する請求項4記載の通信端末装置。
【請求項7】
前記フレーム情報は、さらに前記中継端末候補から見た周辺端末の方角を示すスロット毎の方角情報を含み、
前記算出手段は、前記中継端末候補から見た前記宛先の方角を算出し、前記中継端末候補のフレーム情報において、正常受信を示す観測情報のスロットであって、算出した前記宛先の方角に対応した方角情報を有するスロットの数を、前記中継端末候補周辺の端末数として算出する請求項4記載の通信端末装置。
【請求項8】
前記フレーム情報は、さらに前記中継端末候補から見た周辺端末の方角を示すスロット毎の方角情報を含み、
前記算出手段は、1フレーム前の自端末のフレーム情報、及び前記中継端末候補のフレーム情報において、正常受信を示す観測情報のスロットであって、前記1フレーム前の自端末の方角情報と前記中継端末候補の方角情報とが異なるスロットの数を、前記中継端末候補周辺の端末数に加える請求項6及び請求項7記載の通信端末装置。
【請求項9】
前記フレーム情報は、さらに前記中継端末候補からの距離区間を示すスロット毎の距離区間情報を含み、
前記選択手段は、前記中継端末候補からの距離区間が遠いほど大きくなる重みと該距離区間の端末数との積を用いて、前記中継端末を選択する
請求項4〜請求項8のいずれか1項記載の通信端末装置。
【請求項10】
前記選択手段は、前記宛先と前記中継端末候補との距離が大きいほど小さくなり、前記中継候端末候補周辺の端末数が多いほど大きくなる最適度に基づいて、前記中継端末を選択する請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−195680(P2012−195680A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56708(P2011−56708)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】