説明

通信装置、中継装置及びネットワークシステム

【課題】ネットワークの利用効率を向上させる。
【解決手段】本中継装置は、有線ネットワークにおいて時分割のパケット通信を行う中継装置であって、タイムスロットの予約に従って送信される第1のデータパケットと第1のデータパケット以外のデータパケットである第2のデータパケットとのいずれが同一のタイムスロットで送信されるのかを表す第1のデータを含む制御パケットと、第1のデータパケットと、第2のデータパケットとを受信する受信部と、第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表す第1のデータを含む制御パケットを受信部が受信した場合、制御パケットを受信したタイムスロットにおいて受信部が受信した第2のデータパケットをデータ格納部に格納する識別部と、データ格納部に格納された第2のデータパケットを、第2のデータパケット以外に送信すべきデータパケットを有しないタイムスロットで送信する送信部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、有線ネットワークにおいて時分割のパケット通信を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データセンタ内のネットワークで、サーバ系のトラフィックを収容するLAN(Local Area Network)と、ディスク系のトラフィックを収容するSAN(Storage Area Network)又はDAN(Disk Area Network)を1つのネットワークに統合しようとする動きがある。このような統合を行う場合、帯域保証の要否等といった性質の異なるトラフィックを1つのネットワークに収容することになる。
【0003】
一方、タイムスロット(以下、スロットとも呼ぶ)を用いた時分割多重(TDM,Time Division Multiplexing)通信方式によって、ルータの消費電力をシステム的に低減する技術が存在している。例えば、図1に示す例では、回線交換的な手法によりエッジノードで擬似スロットを一定の時間間隔で同期生成して、これに合わせてパケット送出を適切にスケジューリングする。また、中継ノードにおいては擬似スロットを識別してスロット毎にパケットをスイッチングすることで、バッファレス伝送を行い、省電力化を実現する。すなわち、高速検索の可能なメモリを使用したルーティングテーブルや、大容量のメモリによるデータバッファを排除することにより、ルータの消費電力を抑制している。
【0004】
また、管理サーバが、エッジノードの組み合わせで決められる経路に対し予定された使用帯域に合わせて、複数のパス(以下、フローとも呼ぶ)を各スロットに動的に割り当てる技術も存在する。例えば、運用前の静的な固定分割り当てと、運用中の動的な変動分割り当てとにより実現される。
【0005】
しかしながら、いずれの技術であっても、各フローに対し帯域を専有させるように割り当てる。従って、例えば図2に示すように、あるフローに割り当てられた帯域の一部を使用していない場合であっても、他のフローは割り当てられた帯域を超えて通信を行うことができない。図2の例では、各リンクの帯域が1.0Gbpsであるものとし、2つのフローA及びBに対してそれぞれ0.5Gbpsが割り当てられている。なお、各リンクにおける帯域の和が1.0Gbpsを超えないように各フローに対して帯域を割り当てるため、ボトルネック箇所の帯域に合わせて、フローA及びBには0.5Gbpsずつが割り当てられている。従来の技術では、例えばフローAの実使用帯域が0.5Gbps未満の場合でも、フローBは割り当てられた0.5Gbpsを超える帯域を使用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−313745号公報
【特許文献2】特開2003−229857号公報
【特許文献3】特開2002−247072号公報
【特許文献4】特開平8−125654号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】光延,栗田,掛水,”ネットワーク省電力化に向けたパケット転送スケジューリング −バッファレスネットワークへの適用−”,電子情報通信学会2010年総合大会,2010年3月
【非特許文献2】栗田,光延,掛水,”ネットワークの省電力化を実現するパケット転送スケジューリング”,電子情報通信学会ネットワークシステム研究会,2010年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、一側面として、ネットワークの利用効率を向上させるための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施の形態に係る中継装置は、有線ネットワークにおいて時分割のパケット通信を行う中継装置であって、(A)タイムスロットの予約に従って送信される第1のデータパケットと第1のデータパケット以外のデータパケットである第2のデータパケットとのいずれが同一のタイムスロットで送信されるのかを表す第1のデータを含む制御パケットと、第1のデータパケットと、第2のデータパケットとを受信する受信部と、(B)第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表す第1のデータを含む制御パケットを受信部が受信した場合、当該制御パケットを受信したタイムスロットにおいて受信部が受信した第2のデータパケットをデータ格納部に格納する識別部と、(C)データ格納部に格納された第2のデータパケットを、当該第2のデータパケット以外に送信すべきデータパケットを有しないタイムスロットで送信する送信部とを有する。
【0010】
本実施の形態に係る通信装置は、有線ネットワークにおいて時分割のパケット通信を行う通信装置であって、(A)タイムスロットの予約状況を表すデータを格納するデータ格納部と、(B)タイムスロットの予約なしで送信し得るデータパケットがあり、データ格納部に格納されているデータに基づき判断対象のタイムスロットに予約がなされていないと判断された場合には、タイムスロットの予約に従って送信されるデータパケット以外のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表すデータを含む制御パケットとタイムスロットの予約なしで送信し得るデータパケットとを、判断対象のタイムスロットで送信するスケジューラとを有する。
【0011】
本実施の形態に係るネットワークシステムは、(A)有線ネットワークにおいて時分割のパケット通信を行う通信装置と、(B)中継装置とを有し、通信装置は、(A1)タイムスロットの予約状況を表すデータを格納するデータ格納部と、(A2)タイムスロットの予約に従って送信される第1のデータパケット以外のデータパケットである第2のデータパケットとして送信し得るデータパケットがあり、データ格納部に格納されているデータに基づき判断対象のタイムスロットに予約がなされていないと判断された場合には、第1のデータパケットと第2のデータパケットとのいずれが同一のタイムスロットで送信されるのかを表すデータが設定される制御パケットに対して第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表すデータを設定し、当該制御パケットと第2のデータパケットとして送信し得るデータパケットとを、判断対象のタイムスロットで送信するスケジューラとを有し、中継装置は、(B1)制御パケットと第1のデータパケットと第2のデータパケットとを受信する受信部と、(B2)第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表すデータが設定された制御パケットを受信部が受信した場合、当該制御パケットを受信したタイムスロットにおいて受信部が受信した第2のデータパケットをデータ保持部に格納する識別部と、(B3)データ保持部に格納された第2のデータパケットを、当該第2のデータパケット以外に送信すべきデータパケットを有しないタイムスロットで送信する送信部とを有する。
【発明の効果】
【0012】
ネットワークの利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、従来技術を説明するための図である。
【図2】図2は、従来技術を説明するための図である。
【図3】図3は、実施の形態に係るネットワークシステムの構成を説明するための図である。
【図4】図4は、実施の形態に係るネットワークシステムの処理を説明するための図である
【図5】図5は、実施の形態に係るエンドシステムの機能ブロック図である。
【図6】図6は、実施の形態に係る中継ノードの機能ブロック図である。
【図7】図7は、エンドシステムがパケットを受信した場合の処理の処理フローを示す図である。
【図8】図8は、エンドシステムテーブル格納部に格納されるデータの一例を示す図である。
【図9】図9は、パス管理テーブル格納部に格納されるデータの一例を示す図である。
【図10】図10は、スロット予約テーブル格納部に格納されるデータの一例を示す図である。
【図11】図11は、エンドシステムにおける割り込み処理の処理フローを示す図である。
【図12】図12は、マーキングポリシ(markパラメータ)の値の意味の一例を示す図である。
【図13】図13は、マーキングポリシ(markパラメータ)の一例を示す図である。
【図14A】図14Aは、制御パケットとスロットとの関係を説明するための図である。
【図14B】図14Bは、制御パケットのフォーマットの一例を説明するための図である。
【図15】図15は、中継ノードがパケットを受信した場合の処理の処理フローを示す図である。
【図16】図16は、スロットテーブル格納部に格納されるデータの一例を示す図である。
【図17】図17は、中継ノードにおける割り込み処理の処理フローを示す図である。
【図18】図18は、コンピュータの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、図3及び図4を用いて、本技術の実施の形態に係るネットワークシステム全体の処理について説明する。
【0015】
本実施の形態では、図3に示すようなネットワーク構成を例に説明する。図3のネットワークシステムには、3つのエンドシステム1(エンドシステム1a、1b及び1c)と、2つの中継ノード3(中継ノード3a及び3b)とが含まれる。そして、エンドシステム1aと中継ノード3aとの間、エンドシステム1bと中継ノード3aとの間、中継ノード3aと中継ノード3bとの間及び中継ノード3bとエンドシステム1cとの間が、それぞれ有線で接続されている。また、矢印で示すように、エンドシステム1a及びエンドシステム1bの各々から、エンドシステム1cへのトラフィックフローが存在するものとする。なお、エンドシステム1は、データパケットを送受信する端末であってもよいし、そのような端末に接続されたエッジノードであってもよい。このようなネットワークシステムにおいて、時分割多重通信を行う。
【0016】
次に、図4を用いてエンドシステム1及び中継ノード3の動作を説明する。時分割多重通信では、通信回線を使用する時間を所定のフレームに区切り、さらにそのフレームを分割した複数のスロットを用いて通信を行う。すなわち、各スロットは一定のフレーム周期の通信タイミングとして回ってくる。図4では、エンドシステム1a、エンドシステム1b及び中継ノード3aから送信されるパケットを時間軸に沿って模式的に示している。なお、各フレームは3つのスロットに分割されており、各四角形は1つのスロットを表している。ここで、エンドシステム1aからエンドシステム1cへのパスに、各フレームにおける1番目のスロットが予約され、エンドシステム1bからエンドシステム1cへのパスに、各フレームにおける2番目のスロットが予約されているものとする。
【0017】
なお、スロットの予約は、エンドシステム1が、送信元エンドシステムの識別子及び送信先エンドシステムの識別子を含むスロット割当要求を送信し、管理サーバが、スロットIDと通信経路(以下、パス又はフローとも呼ぶ)とを決定することにより行われる。また、エンドシステム1は、割り当てられたスロットIDと通信経路情報とを管理サーバから受信し、保持しておくと共に、これらのデータ含む制御パケットを割り当てられた通信経路上の中継ノード3へ送信する。これらのデータは、中継ノード3を経由して送信先のエンドシステム1まで通知され、スロットの予約に係る情報が共有される。このような管理サーバ及びスロットの予約処理は、従来の技術と同様である。
【0018】
動作の説明に戻り、エンドシステム1a又は1bのアプリケーションにおいて、エンドシステム1cへ送信すべきパケットが発生した場合(図4:ステップ(1))、又は図示していない他の端末からエンドシステム1a又は1bが、エンドシステム1cへ送信すべきパケットを受信した場合、送信先エンドシステムに対応するキューにパケットを格納する。なお、対応するキューが存在しない場合は、例えばキューを生成してからパケットを格納し、当該パスについて上で述べたように管理サーバに対してスロット割当要求を送信する。
【0019】
また、エンドシステム1は、パケットのキューへの格納とは独立して、キューに格納されたパケットをスロットのタイミングで送信する(ステップ(2))。ここで、本実施の形態のエンドシステム1は、予約されたスロット及び予約されていないスロットの両方を使用する。なお、各スロットにおいて送信される制御パケットに、当該送信が予約に基づくスロットを用いるものか否かを設定するためのマーク領域を設け、同一のスロットで送信されるデータパケットが予約に従って送信されるものであるか判断できるようにする。すなわち、スロット予約で確保されたスロット(図4の保証領域)であれば、確実に送信できるスロットであるので、例えばマーク(以下、マーキングとも呼ぶ)なしで送信する。一方、スロット予約で確保されていないスロット(図4の非保証領域)であれば、ネットワーク内部(すなわち中継ノード)で輻輳が起きた時には廃棄も許容できることを前提とし、マークありで送信する。従って、割り当てられた帯域は最低限保証される。
【0020】
図4の例では、エンドシステム1aは予約されたスロット及び予約されていないスロットの両方を使用してパケット送信を行っている。なお、「空スロット」は、予約されたスロットであるが、当該スロットのタイミングでは送信すべきパケットが発生せず、送信されるデータパケットのないスロットである。一方、エンドシステム1bは、予約されたスロットのみを使用してパケット送信を行っている。
【0021】
中継ノードは、中継すべきパケットを受信した場合、制御パケットのスロットIDをキーに出力IFを特定する。また、制御パケットのマーク領域からマークの有無を識別する。そして、マークがなければ同一のスロットで送信されるデータパケットは予約に従って送信されるパケットであるから、出力IFからバッファリングせずに出力する(ステップ(3))。マークがあれば、出力IF毎に用意された待ちキューに一旦格納する(ステップ(4))。また、パケットの受信とは独立して、空きスロットから待ちキューのパケットを送信する(ステップ(5))。なお、ここでいう空きスロットとは、いずれかのパスに予約されたスロットであって送信すべきパケットが発生していないスロット(図4の(A))、及びいずれのパスにも予約されていないスロット(図4の(B))を指す。このように、予約に従って送信されるパケットについては、割り当てられたスロットを用いてバッファリングせずに送信先のエンドシステム1まで送信し、予約なしで送信されるパケットについては、エンドシステム1及び中継ノード3の間、又は中継ノード3同士の間のリンク毎に、他に送信すべきパケットが存在しないスロットを用いて送信する。
【0022】
本技術の実施の形態に係るネットワークシステムは、図3に示したように、エンドシステム1と中継ノード3とを有する。
【0023】
図5に、本実施の形態におけるエンドシステム1の機能ブロック図を示す。第1の実施の形態におけるエンドシステム1は、パケット受信部101と、エンドシステムテーブル格納部103と、パス管理テーブル格納部105と、パケット分類部107と、スロット生成部109と、スロット予約部111と、スロット予約テーブル格納部113と、スケジューラ部115とを有する。また、スケジューラ部115は、送信部1151と、マーキング部1153と、マーキングポリシ格納部1155と、タイマ制御部1157とを有する。
【0024】
パケット受信部101は、例えば図示していないエンドシステム1内のアプリケーション実行部から、又は外部ネットワークからパケットを受信し、パケット分類部107へ出力する。パケット分類部107は、送信先エンドシステムに対応するキュー1071(図5では、1071a、1071b、1071c、・・・)を生成したり、削除したりする。また、パケット分類部107は、エンドシステムテーブル格納部103及びパス管理テーブル格納部105に格納されているデータに基づき、パケット受信部101により受信したパケットをいずれかのキュー1071に格納したり、スロットの予約がなされていない場合には、スロット予約部111にその旨を通知したりする。スロット生成部109は、管理サーバから、1フレームに含まれるスロットの数とスロット時間と伝送時間とを含むスロット定義情報を受信し、スケジューラ部115に出力する。スロット予約部111は、パケット分類部107からの指示に応じて、スロット割当要求を管理サーバに送信し、管理サーバからスロットの割り当てを受けた場合には、エンドシステムテーブル格納部103及びパス管理テーブル格納部105に格納されたデータを用いて、スロットの割り当てに係るデータをスロット予約テーブル格納部113に登録する。スケジューラ部115の送信部1151は、スロット生成部109により受信したスロット定義情報と、管理サーバからの同期時刻情報と、スロット予約テーブル格納部113に格納されているデータとに基づき、特定のスロットにおいて送信すべきデータパケットをパケット分類部107内のキュー1071から読み出して送信するなどの処理を実施する。なお、スケジューラ部115のマーキング部1153は、マーキングポリシ格納部1155に格納されているデータに基づいて、送信部1151が送信するデータパケットが予約されていないスロットで送信される場合、その旨を示すデータを制御パケットのマーク領域に設定する。また、タイマ制御部1157は、スケジューラ部115が行う割り込み処理を制御する。
【0025】
図6に、本実施の形態における中継ノード3の機能ブロック図を示す。本実施の形態における中継ルータ3は、スイッチング部301と、スロットテーブル格納部303と、出力インタフェース(IF)処理部305(図6では、305a、305b、305c、・・・)とを有する。
【0026】
スイッチング部301は、エンドシステム1又は他の中継ノード3からパケットを受信し、スロットテーブル格納部303に格納されているデータに基づき、出力IFに対応する出力IF処理部305にパケットを出力する。出力IF処理部305のマーク識別部3051は、制御パケットのマーク領域を識別し、マークありの場合は同一のスロットで受信したパケットを待ちキュー3053に格納し、マークなしの場合は、送出スケジューラ部3055に出力する。送出スケジューラ部3055は、マーク識別部3051から受け取ったパケットをエンドシステム1又は他の中継ノード3へ送信したり、他に送信すべきパケットのないスロットにおいて待ちキュー3053に格納されたパケットを送信したりする。なお、待ちキュー3053は、例えば1フレーム又は数フレーム分のパケットを格納できる容量で用意する。また、タイマ制御部3057は、スロットテーブル格納部303に格納されているデータに基づき、出力IF処理部305が行う割り込み処理を制御する。
【0027】
次に、図7乃至図17を用いて、エンドシステム1及び中継ノード3の処理フローを説明する。
【0028】
なお、各エンドシステム1は、予め管理サーバからスロット時間とスロット数と伝送時間とを含むスロット定義情報と、同期時刻情報とを受信しており、ネットワークシステムにおいてスロットの同期がとれているものとする。そして、マーキングポリシ格納部1155には、マーキング部1153によって、エンドシステム1の起動時に、送信元エンドシステムと送信先エンドシステムとの組合せで定義されるパス毎にマーキングポリシが設定されているものとする。マーキングポリシについての詳細は、後に説明する。また、中継ノード3のスロットテーブル格納部には、経路情報が登録されているものとする。
【0029】
図7に、エンドシステム1において送信すべきデータパケットが発生した場合、又はエンドシステム1が中継すべきパケットを受信した場合の処理の処理フローを示す。
【0030】
まず、パケット受信部101は、エンドシステム1が有するアプリケーション実行部又は外部装置からパケットを受信すると、パケット分類部107に出力する(図7:ステップS1)。例えば、パケット受信部101が、エンドシステム1aにおいて実行されている図示していないアプリケーション実行部から、エンドシステム1cへ送信すべきパケットを受信したものとする。パケット分類部107は、エンドシステムテーブル格納部103に格納されているエンドシステムテーブルに基づいて、パケットの送信先アドレスに対応する送信先エンドシステムを特定する(ステップS3)。エンドシステムテーブル格納部103には、例えば図8に示すようなエンドシステムテーブルが格納されている。図8のエンドシステムテーブルには、送信先アドレス(Dest.)の列と、ネットマスク(Mask)の列と、デフォルト・ゲートウェイ(GW)の列と、出力インタフェース(IF)の列と、送信先エンドシステムの列とが含まれる。本ステップでは、パケットの宛先アドレスをキーとして送信先エンドシステムを特定する。
【0031】
次に、パケット分類部107は、パス管理テーブル格納部105に格納されているパス管理テーブルに基づいて、送信先エンドシステムに対応するキュー1071が存在するか判断する(ステップS5)。パス管理テーブル格納部105には、例えば図9に示すようなパス管理テーブルが格納されている。図9のパス管理テーブルには、キューIDの列と、送信先エンドシステムの列とが含まれる。本ステップでは、送信先エンドシステムに対応するキュー1071が登録されているか判断する。
【0032】
そして、対応するキュー1071が存在しないと判断された場合、パケット分類部107は、キュー1071を生成すると共に、キューIDと特定送信先エンドシステムの識別子とを含むレコードをパス管理テーブルに追加する(ステップS7)。そして、パケット分類部107は、生成したキュー1071にパケットを格納する(ステップS9)。
【0033】
さらに、スロット予約部111は、管理サーバに対してスロット予約を行う(ステップS11)。本ステップでは、スロット予約部111が管理サーバに対してスロット割当要求を送信する。また、割り当てられたスロットIDと通信経路情報とを管理サーバから受信し、スロット予約テーブル格納部113のスロット予約テーブルにデータを登録する。ここで、スロット予約テーブル格納部113には、図10に示すようなスロット予約テーブルが格納されている。図10のスロット予約テーブルには、出力インタフェース(IF)の列と、スロットIDの列と、キューIDの列と、予約フラグ(0:未予約/1:予約済み)の列と、解放フラグ(0:解放しない/1:解放する)の列とが含まれる。スロット予約部111は、管理サーバから受信した通信経路情報に基づいて、エンドシステムテーブルからインタフェースを特定し、パス管理テーブルからキューIDを特定する。そして、スロット予約部111は、インタフェースの識別子とスロットIDとキューIDとを含むレコードをスロット予約テーブルに追加する。その後、パケット受信時の処理を終了する。
【0034】
一方、ステップS5において対応するキュー1071が存在すると判断された場合、パケット分類部107は、対応するキュー1071にパケットを格納する(ステップS13)。そして、パケット受信時の処理を終了する。
【0035】
以上のような処理により、パケット受信部101が受け取ったパケットが宛先アドレス毎に用意したキュー1071へ格納される。また、キュー1071に格納されたパケットは、別途実行される処理により適切なタイミングで送信される。
【0036】
次に、図11を用いてエンドシステム1におけるタイマ割り込み発生時の処理フローについて説明する。ここで、スケジューラ部115のタイマ制御部1157は、上で述べたパケット受信時の処理とは独立に、スロット時間の間隔で定期的にタイマ割り込み処理を発生させる。これにより、スロットにあわせてデータの送信処理を行うことができる。なお、エンドシステム1は起動後に管理サーバから同期時刻情報等を受信し、初期化処理として最初の割り込みを設定する。そして、以後はスロット時間の間隔で割り込みの発生と設定とを繰り返す。
【0037】
まず、スケジューラ部115の送信部1151は、スロット予約テーブル格納部113のスロット予約テーブルにおいて、処理対象のスロットがいずれかのキュー1071に対応付けられているか判断する(図11:ステップS21)。そして、いずれかのキュー1071に対応付けられている場合、送信部1151は、対応するキュー1071にパケットが格納されているか判断する(ステップS23)。さらに、キュー1071にパケットが格納されている場合、スケジューラ部115のマーキング部1153は、マーキングポリシ格納部1155に格納されたマーキングポリシにおいて、キュー1071に格納されているパケットの送信元エンドシステムに対して設定されたパラメータが「1」又は「3」であるか判断する(ステップS25)。本ステップにおいてパラメータが「1」又は「3」であると判断された場合、マーキングなしのスロットを用いて(すなわち、予約された、処理対象のスロットを用いて)当該スロットに対応付けられたキュー1071のパケットを送信する。
【0038】
本実施の形態におけるマーキングポリシは、例えば、送信元エンドシステムと送信元エンドシステムの組合せで定義されるパス毎にパラメータ(「markパラメータ」とも呼ぶ)として設定される。送信元エンドシステムは、このマーキングポリシに基づいて、特定の送信元エンドシステムへのパケット送信に「マーキングなし」及び「マーキングあり」のうちいずれのスロットを使うのか判断する。図12に、markパラメータの値及び値の意味の一例を示す。本実施の形態では、値が1の場合は「マーキングなし」スロットのみを使ってデータを伝送することを意味し、値が2の場合は「マーキングあり」スロットのみを使ってデータを伝送することを意味し、値が3の場合は「マーキングなし」スロット及び「マーキングあり」スロットの両方を使ってデータを伝送することを意味するものとする。また、パス毎にmarkパラメータの値が設定されるため、例えばエンドシステム1は、送信元エンドシステム毎に、予約されたスロットのみを使用してパケット送信を行うべきか、予約されていないスロットのみを使用してパケット送信を行うべきか、又は両方のスロットを使用してパケット送信を行うべきか判断することができる。
【0039】
さらに、マーキングポリシとトラフィック(すなわち、送信されるデータパケット)との関係について説明しておく。Voice、Videoなど等時性トラフィック(すなわち回線交換型トラフィック。遅延保証型伝送を行う。)に対しては、「マーキングなし」のみのスロットを使って伝送し、一定の遅延と帯域を保証する。そして、Webデータなどバーストトラフィック(すなわちパケット交換型トラフィック。ベストエフォート伝送を行う。)に対しては、「マーキングあり」のみのスロットを使って伝送し、フルに統計多重効果を得る。なお、この場合は、例えば使用するスロットを予約による保証分0としてマーキングポリシに設定し、エンドシステム1においてパケットが発生した時に、パスに関する情報を中継ノード3において登録するようにする。また、このようなトラフィックについては、本実施の形態で割り当てるようなパスとは別に全体で共有するようなパスのクラスを用意し、別制御としてもよい。また、これらの中間型トラフィック(すなわち最低帯域保証とベストエフォート型伝送との組み合わせ)に対しては、「マーキングなし」及び「マーキングあり」のスロットを併用して伝送し、最低帯域の保証をすると共にそれを超える分(マーキングあり分)の統計多重効果を実現する。以上の使い分けを、実際のトラフィック条件に合わせてディスパッチする。なお、本実施の形態ではパス毎にマーキングポリシを設定しているが、ここで述べたようなトラフィックの内容を表す他の情報に基づいてマーキングポリシを設定するようにしてもよい。
【0040】
スケジューラ部115が有するマーキングポリシを模式的に表すと、例えば図13のようになる。図13では、送信元エンドシステムの識別子に対応付けられてmarkパラメータが設定されている。
【0041】
また、本実施の形態では、図14Aに示すように、スロットの開始及び終了を示す制御パケットを各スロットの始めと終わりに送受信する。なお、データパケットが存在せず、空のスロットの場合もある。また、図14Bに、本実施の形態における制御パケットのフォーマットの一例を示す。本実施の形態の制御パケットは、一般的なIPヘッダを有し、ペイロードに「制御種別(1:開始/0:終了)」、「スロット状態(1:使用/0:未使用)」、「マーク領域(1:あり/0:なし)」及び「スロットID」の各フィールドが設けられているものとする。
【0042】
なお、「制御種別」フィールドは、本制御パケットが、スロットの開始か終了かを表す値である。図14Bのように、例えば8ビットで表される情報であり、その値が、「1」を開始とし、「0」を終了とする。「スロット状態」フィールドは、本スロットが、有効なデータを含むかどうかを表す値である。例えば8ビットで表される情報であり、その値が、「1」を使用(すなわち有効なデータパケットを含む)とし、「0」を未使用(すなわち有効なデータパケットを含まない)とする。「マーク領域」フィールドは、本制御パケットが、マーキングされているかどうかを表す値である。例えば8ビットで表される情報であり、その値が、「1」をマーキングありとし、「0」をマーキングなしとする。また、「Padding」フィールドは、「スロットID」フィールドとの境界を32ビットに揃えるためのものであり、意味を持たない8ビットのフィールドである。例えば、値はALL0とする。そして、「スロットID」フィールドは、スロットIDの値を表すフィールドである。例えば32ビットで表される情報であり、その値の範囲は、0乃至232である。
【0043】
処理の説明に戻り、マーキング部1153は、スロット状態に「使用」を、マーク領域に「なし」を、スロットIDに処理対象のスロットのスロットIDを設定した制御パケットを生成する(ステップS27)。また、送信部1151は、制御パケット及びキュー1071に格納されているデータパケットを送信する(ステップS29)。その後、ステップS43の処理へ移行する。
【0044】
一方、ステップS23においてキュー1071にパケットがないと判断された場合、又はステップS25においてマーキングポリシのパラメータが「2」であると判断された場合は、処理対象のスロットで送信できるパケットがない。従って、マーキング部1153は、スロット状態に「未使用」を、スロットIDに処理対象のスロットのスロットIDを設定した制御パケットを生成する(ステップS31)。そして、送信部1151は、処理対象のスロットにおいて、制御パケットのみを送信する(ステップS33)。受信側の装置では、制御パケットに設定されたデータから、当該スロットは空きスロットであると判断することができる。その後、ステップS43の処理へ移行する。
【0045】
また、ステップS21において処理対象のスロットがいずれのキュー1071とも対応付けられていないと判断された場合、送信部1151は、いずれかのキュー1071にパケットが格納されているか判断する(ステップS35)。すなわち、予約のなされていないスロットである場合には、いずれかの送信先エンドシステムに対して送信を待っているパケットがあるか判断する。いずれのキュー1071にもパケットが存在しない場合、ステップS43の処理に移行する。一方、いずれかのキュー1071にパケットが存在する場合、1つのキュー1071を処理対象として、マーキング部1153は、マーキングポリシ格納部1155に格納されたマーキングポリシにおいて、当該パケットの送信先エンドシステムに対して設定されたパラメータが「2」又は「3」であるか判断する(ステップS37)。本ステップにおいてパラメータが「1」であると判断された場合は、ステップS43の処理に移行する。一方、ステップS37においてパラメータが「2」又は「3」であると判断された場合は、マーキングありのスロットを用いて(すなわち、予約のなされていない、処理対象のスロットを用いて)処理対象のキュー1071のパケットを送信することができる。よって、マーキング部1153は、スロット状態に「使用」を、マーク領域に「あり」を設定した制御パケットを生成する(ステップS39)。そして、送信部1151は、制御パケット及びキュー1071に格納されているデータパケットを送信する(ステップS41)。
【0046】
ステップS35においていずれのキュー1071にもパケットが存在しないと判断された場合、若しくはステップS37においてパラメータが「1」であると判断された場合、又はステップS29、ステップS33若しくはステップS41の後、スケジューラ部115のタイマ制御部1157は、1スロット時間後にタイマ割り込みが発生するように次回割り込みの設定を行い(ステップS43)、当該タイマ割り込み発生時の処理を終了する。
【0047】
以上のような処理により、キュー1071に格納されたパケットを送信する。本実施の形態では、マーキングポリシに従い、予約されたスロットで送信すべきパケットは、予約により確保されたスロットを用いてマークなしで送信される。すなわち、設定された帯域が保証される。一方、予約なしに送信できるパケットについては、予約による割り当てのないスロットを用いることもある。これにより、統計多重効果が得られ、ネットワークの利用効率が向上する。
【0048】
次に、図15を用いて、中継ノード3におけるパケット受信時の処理フローを説明する。本処理は、エンドシステム1又は他の中継ノード3からのパケット受信を契機に開始される。ここでは、中継ノード3のスイッチング部301が、既にパケットを受信したものとして説明する。
【0049】
まず、スイッチング部301は、制御パケットのスロットIDに基づいて、スロットテーブル格納部303に格納されているスロットテーブルから出力IFを特定し、出力IFに対応する出力IF処理部305へ受信したパケットを出力する(図15:ステップS51)。ここで、スロットテーブル格納部303には、図16に示すようなスロットテーブルが格納されている。図16のスロットテーブルには、入力(IN)の列と、出力インタフェース(OUT(IF))の列とが含まれる。また、入力の列は、入力インタフェース(IF)の列と、スロットIDの列とに分かれている。入力インタフェースの列と、出力インタフェースの列とには、当該レコードに係るタイムスロットにおけるパケット通信で用いられる入力インタフェースの識別子及び出力インタフェースの識別子がそれぞれ設定される。なお、タイムスロットの予約により、スロットテーブルには事前に通信経路に係るデータが登録されているものとする。なお、出力IFは、フレーム内におけるスロットの時間軸上の位置で一意に決められるものではなく、スロットIDを手掛りに決定される。例えば、フレームの中での順序が1番目、2番目のスロット(スロットIDが1、2ということではない)が同一のスロットIDを持ち、同一の出力IFから出力されることもあり得る。
【0050】
次に、出力IF処理部305のマーク識別部3051は、制御パケットのマーク領域を識別し、マーキングがあるか判断する(ステップS53)。マーキングがあると判断された場合、同一のスロットで受信するパケットはスロットの予約なしに送られてくるものであるため、同じスロットでは中継しない。マーク識別部3051は、当該スロットで受信したパケットは待ちキュー3053に格納する(ステップS65)。ここで、待ちキュー3053に空き容量がない場合には、当該スロットに係るパケットを破棄する。また、本ステップでは、例えば制御パケットについても待ちキュー3053に格納しておき、後の処理で用いるようにする。なお、制御パケットは格納せずにスロットID又は出力IFがわかるようにしておき、後のステップで新たに制御パケットを生成するようにしてもよい。その後、パケット受信時の処理を終了する。
【0051】
一方、ステップS63においてマーキングがないと判断された場合には、マーク識別部3051は、制御パケットのスロット状態を識別し、当該スロットが使用されているか判断する(ステップS55)。そして、使用されていないと判断された場合、送出スケジューラ部3055は、待ちキュー3053にパケットが格納されているか判断する(ステップS57)。待ちキュー3053にパケットが格納されている場合、送出スケジューラ部3055は、受信した制御パケットのスロットIDには待ちキュー3053に格納されていたパケットのスロットIDを設定し、スロット状態を「使用」に、マーク領域を「あり」に変更する。また、これらのフィールドを変更した制御パケット及び待ちキュー3053に格納されていたデータパケットを当該スロットで送信する(ステップS61)。そして、パケット受信時の処理を終了する。
【0052】
また、ステップS55で当該スロットが使用されていると判断された場合、又はステップS57で待ちキュー3053にパケットが存在しないと判断された場合、送出スケジューラ部3055は、これらのパケットをバッファリングなしにそのまま送信する(ステップS63)。なお、ステップS57で待ちキュー3053にパケットが存在しないと判断された場合は、制御パケットのみが送信され、受信側の装置では、制御パケットのスロット状態から、当該スロットはデータパケットのない空きスロットであると判断することができる。
【0053】
以上のような処理により、予約されたスロットで中継すべきパケットを受信した場合は同一の(すなわち予約された)スロットで送信する。従って、本来の時分割多重通信と同様に、予約で割り当てられた帯域が保証される。また、予約されたスロットにおいて中継すべきパケットがない場合は、当該スロットを用いて待ちキュー3053に格納されているパケットを送信する。すなわち、空きスロットを用いて予約なしに送信できるパケットを送信するため、統計多重効果が得られ、ネットワークの利用効率が向上する。
【0054】
次に、図17を用いて、中継ノード3におけるタイマ割り込み発生時の処理フローを説明する。ここで、出力IF処理部305のタイマ制御部3057は、上で述べたパケット受信時の処理とは独立して、出力IFについて予約のなされていないスロットの開始時刻にあわせてタイマ割り込み処理を発生させる。これにより、空きスロットにあわせて待ちキューのデータの送信処理を行うことができるようになる。なお、初期化処理により最初の割込みが設定され、以後、タイマ制御部3057はスロットテーブルに基づいて次の空きスロットを特定し、空きスロットにあわせて割り込みを設定する。
【0055】
タイマ割り込み処理が発生すると、出力IF処理部305の送出スケジューラ部3055は、待ちキュー3053にパケットが格納されているか判断する(図17:ステップS71)。パケットが格納されている場合、送出スケジューラ部3055は、例えば格納されている制御パケットに対して、スロット状態には「使用」を、マーク領域には「あり」を、スロットIDには当該パケットの出力IFに対応するスロットIDを設定する(ステップS73)。そして、送出スケジューラ部3055は、当該制御パケットと、待ちキュー3053に格納されているデータパケットとを当該スロットで送信する(ステップS75)。
【0056】
ステップS75の後、又はステップS71で待ちキュー3053にパケットが格納されていないと判断された場合、タイマ制御部3057は、次の空スロットでタイマ割り込みが発生するように、次回割り込みを設定する(ステップS77)。次の空きスロットの時刻を見つけるためには、スロットテーブルに登録された特定の出力IFについてのスロットの予約状況を時間軸上で並べ、次に空きスロットが回ってくる時刻を特定する。なお、例えばスロットの予約状況と当該スロットの次の開始時刻を関連付けて保持しておき、空きスロットの時刻を抽出できるようにしておいてもよい。また、事前にスロット時間を保持しておき、これに基づいて算出できるようにしておいてもよい。その後、タイマ割り込み発生時の処理を終了する。
【0057】
以上のような処理により、保持しておいた、予約なしに送信できるパケットを、予約による割り当てのないスロットを用いて送信する。これにより、統計多重効果が得られ、ネットワークの利用効率が向上する。
【0058】
ネットワークシステム全体としては、予約されたスロットが使われていない場合、又はスロットが予約されていない場合、他のパスにリンク単位でスロットを使わせて統計多重効果を実現し、ネットワークの利用効率を向上させることができる。また、ロスレスな通信が要求される場合は、予約したスロットのみを用いてマークなしで送信することにより、低遅延かつロスレスな通信を実現することができる。そして、従来のパケット交換やMPLS(Multi-Protocol Label Switching)では、中継装置に数百MB乃至数GB程度のバッファメモリを用いていたのに対し、本実施の形態に係る中継ノード3では1フレーム分のメモリ(数百KB程度)でよいため、コスト削減および省電力化を実現することができる。
【0059】
以上本技術の実施の形態を説明したが、本技術はこれに限定されるものではない。例えば、機能ブロック図は一例であって、必ずしも実際のプログラムモジュール構成と一致しない場合もある。また、処理フローについても、処理結果が変わらない限り、ステップの順番を入れ替えたり、並列実施するようにしてもよい。
【0060】
なお、上で述べたエンドシステム1は、コンピュータ装置である場合もある。コンピュータ装置は、例えば図18に示すように、メモリ2501とCPU2503とハードディスク・ドライブ(HDD)2505と表示装置2509に接続される表示制御部2507とリムーバブル・ディスク2511用のドライブ装置2513と入力装置2515とネットワークに接続するための通信制御部2517とがバス2519で接続されている。オペレーティング・システム(OS:Operating System)及び本実施例における処理を実施するためのアプリケーション・プログラムは、HDD2505に格納されており、CPU2503により実行される際にはHDD2505からメモリ2501に読み出される。CPU2503は、アプリケーション・プログラムの処理内容に応じて表示制御部2507、通信制御部2517、ドライブ装置2513を制御して、所定の動作を行わせる。また、処理途中のデータについては、主としてメモリ2501に格納されるが、HDD2505に格納されるようにしてもよい。本技術の実施例では、上で述べた処理を実施するためのアプリケーション・プログラムはコンピュータ読み取り可能なリムーバブル・ディスク2511に格納されて頒布され、ドライブ装置2513からHDD2505にインストールされる。インターネットなどのネットワーク及び通信制御部2517を経由して、HDD2505にインストールされる場合もある。このようなコンピュータ装置は、上で述べたCPU2503、メモリ2501などのハードウエアとOS及びアプリケーション・プログラムなどのプログラムとが有機的に協働することにより、上で述べたような各種機能を実現する。
【0061】
以上述べた本実施の形態をまとめると、以下のようになる。
【0062】
本実施の形態に係る中継装置は、有線ネットワークにおいて時分割のパケット通信を行う中継装置であって、(A)タイムスロットの予約に従って送信される第1のデータパケットと第1のデータパケット以外のデータパケットである第2のデータパケットとのいずれが同一のタイムスロットで送信されるのかを表す第1のデータを含む制御パケットと、第1のデータパケットと、第2のデータパケットとを受信する受信部と、(B)第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表す第1のデータを含む制御パケットを受信部が受信した場合、当該制御パケットを受信したタイムスロットにおいて受信部が受信した第2のデータパケットをデータ格納部に格納する識別部と、(C)データ格納部に格納された第2のデータパケットを、当該第2のデータパケット以外に送信すべきデータパケットを有しないタイムスロットで送信する送信部とを有する。
【0063】
このようにすれば、時分割のパケット通信において、タイムスロットの予約なしでデータパケットを送受信することができるようになる。すなわち、タイムスロットの予約にかかわらず他に送信すべきデータパケットを有しないタイムスロットで送受信を行うことができるようになり、統計多重効果が得られ、ネットワークの利用効率が向上する。なお、第2のデータパケットは、第2のデータパケット以外に送信すべきデータパケットを有しないタイムスロットで送信されるため、タイムスロットの予約に従って送信される第1のデータパケットの送受信を妨げることはない。すなわち、時分割のパケット通信においてタイムスロットの予約により本来割り当てられていた帯域は保証される。
【0064】
また、制御パケットが、第1のデータパケット又は第2のデータパケットが送信されるか否かを表す第2のデータをさらに含むようにしてもよい。そして、送信部が、第1のデータパケット及び第2のデータパケットのいずれもが送信されないことを表す第2のデータを含む第1の制御パケットを受信したタイムスロットにおいて、第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表す第1のデータを含む第2の制御パケットとデータ格納部に格納されている第2のデータパケットとを送信するようにしてもよい。このようにすれば、予約されているスロットであるがデータパケットが送られてこないことを表す制御パケットを受信した場合には、このスロットを有効活用すべく、第2のデータパケットを送信することになる。よって、ネットワークの利用効率が向上する。
【0065】
さらに、送信部が、予約がなされていないタイムスロットにおいて、第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表す第1のデータを含む第3の制御パケットとデータ格納部に格納されている第2のデータパケットとを送信するようにしてもよい。このようにすれば、予約がなされていないタイムスロットを利用して第2のデータパケットを送信することになる。すなわち、未割り当てのスロットを利用して送受信を行うことができるようになるため、ネットワークの利用効率が向上する。
【0066】
本実施の形態に係る通信装置は、有線ネットワークにおいて時分割のパケット通信を行う通信装置であって、(A)タイムスロットの予約状況を表すデータを格納するデータ格納部と、(B)タイムスロットの予約なしで送信し得るデータパケットがあり、データ格納部に格納されているデータに基づき判断対象のタイムスロットに予約がなされていないと判断された場合には、タイムスロットの予約に従って送信されるデータパケット以外のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表すデータを含む制御パケットとタイムスロットの予約なしで送信し得るデータパケットとを、判断対象のタイムスロットで送信するスケジューラとを有する。
【0067】
このようにすれば、時分割のパケット通信において、予約がなされていないタイムスロットを利用してデータパケットを送信することができるようになり、ネットワークの利用効率が向上する。また、制御パケットからタイムスロットの予約なしで送信されたことがわかる。従って、時分割のパケット通信を行う場合であっても、上記制御パケットを受信した装置は、同一のタイムスロットで送信されてきたデータパケットをそのタイムスロットで中継すべきか否か判断することができる。
【0068】
本実施の形態に係るネットワークシステムは、(A)有線ネットワークにおいて時分割のパケット通信を行う通信装置と、(B)中継装置とを有し、通信装置は、(A1)タイムスロットの予約状況を表すデータを格納するデータ格納部と、(A2)タイムスロットの予約に従って送信される第1のデータパケット以外のデータパケットである第2のデータパケットとして送信し得るデータパケットがあり、データ格納部に格納されているデータに基づき判断対象のタイムスロットに予約がなされていないと判断された場合には、第1のデータパケットと第2のデータパケットとのいずれが同一のタイムスロットで送信されるのかを表すデータが設定される制御パケットに対して第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表すデータを設定し、当該制御パケットと第2のデータパケットとして送信し得るデータパケットとを、判断対象のタイムスロットで送信するスケジューラとを有し、中継装置は、(B1)制御パケットと第1のデータパケットと第2のデータパケットとを受信する受信部と、(B2)第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表すデータが設定された制御パケットを受信部が受信した場合、当該制御パケットを受信したタイムスロットにおいて受信部が受信した第2のデータパケットをデータ保持部に格納する識別部と、(B3)データ保持部に格納された第2のデータパケットを、当該第2のデータパケット以外に送信すべきデータパケットを有しないタイムスロットで送信する送信部とを有する。
【0069】
このようにすれば、時分割のパケット通信において、タイムスロットの予約なしでデータパケットを送受信することができるようになる。すなわち、通信装置は、予約がなされていないタイムスロットを利用してデータパケットを送信し、中継装置は、他に送信すべきデータパケットを有しないタイムスロットを利用してデータパケットを中継することで、ネットワークの利用効率が向上する。一方で、タイムスロットの予約により本来割り当てられていた帯域は保証されるため、ロスレスな通信を行うべきデータパケットとベストエフォート型の通信で十分なデータパケットとが混在するようなネットワークにも適用できる。
【0070】
なお、上記方法による処理をコンピュータに行わせるためのプログラムを作成することができ、当該プログラムは、例えばフレキシブルディスク、CD−ROM、光磁気ディスク、半導体メモリ、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体又は記憶装置に格納される。また、中間的な処理結果はメインメモリ等の記憶装置に一時保管される。
【0071】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0072】
(付記1)
有線ネットワークにおいて時分割のパケット通信を行う中継装置(図6:3)であって、
タイムスロットの予約に従って送信される第1のデータパケットと前記第1のデータパケット以外のデータパケットである第2のデータパケットとのいずれが同一のタイムスロットで送信されるのかを表す第1のデータを含む制御パケットと、前記第1のデータパケットと、前記第2のデータパケットとを受信する受信部(図6:301)と、
前記第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表す第1のデータを含む制御パケットを前記受信部が受信した場合、当該制御パケットを受信したタイムスロットにおいて前記受信部が受信した前記第2のデータパケットをデータ格納部に格納する識別部と、
前記データ格納部に格納された前記第2のデータパケットを、当該第2のデータパケット以外に送信すべきデータパケットを有しないタイムスロットで送信する送信部(図6:3055)と、
を有する中継装置。(1)
【0073】
(付記2)
前記制御パケットが、前記第1のデータパケット又は前記第2のデータパケットが送信されるか否かを表す第2のデータをさらに含み、
前記送信部が、前記第1のデータパケット及び前記第2のデータパケットのいずれもが送信されないことを表す第2のデータを含む第1の制御パケットを受信したタイムスロットにおいて、前記第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表す第1のデータを含む第2の制御パケットと前記データ格納部に格納されている前記第2のデータパケットとを送信する
付記1記載の中継装置。(2)
【0074】
(付記3)
前記送信部が、予約がなされていないタイムスロットにおいて、前記第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表す第1のデータを含む第3の制御パケットと前記データ格納部に格納されている前記第2のデータパケットとを送信する
付記1又は2記載の中継装置。(3)
【0075】
(付記4)
有線ネットワークにおいて時分割のパケット通信を行う通信装置であって、
タイムスロットの予約状況を表すデータを格納するデータ格納部と、
タイムスロットの予約なしで送信し得るデータパケットがあり、前記データ格納部に格納されているデータに基づき判断対象のタイムスロットに予約がなされていないと判断された場合には、タイムスロットの予約に従って送信されるデータパケット以外のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表すデータを含む制御パケットと前記タイムスロットの予約なしで送信し得るデータパケットとを、前記判断対象のタイムスロットで送信するスケジューラと、
を有する通信装置。(4)
【0076】
(付記5)
有線ネットワークにおいて時分割のパケット通信を行う通信装置と、
中継装置と、
を有し、
前記通信装置は、
タイムスロットの予約状況を表すデータを格納するデータ格納部と、
タイムスロットの予約なしで送信し得るデータパケットがあり、前記データ格納部に格納されているデータに基づき判断対象のタイムスロットに予約がなされていないと判断された場合には、タイムスロットの予約に従って送信される第1のデータパケット以外のデータパケットである第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表すデータを含む制御パケットと前記タイムスロットの予約なしで送信し得るデータパケットとを、前記判断対象のタイムスロットで送信するスケジューラと、
を有し、
前記中継装置は、
前記第1のデータパケットと前記第2のデータパケットとのいずれが同一のタイムスロットで送信されるのかを表すデータを含む制御パケットと、前記第1のデータパケットと、前記第2のデータパケットとを受信する受信部(図6:301)と、
前記第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表すデータを含む前記制御パケットを前記受信部が受信した場合、当該制御パケットを受信したタイムスロットにおいて前記受信部が受信した前記第2のデータパケットをデータ保持部に格納する識別部と、
前記データ保持部に格納された前記第2のデータパケットを、当該第2のデータパケット以外に送信すべきデータパケットを有しないタイムスロットで送信する送信部と、
を有するネットワークシステム。(5)
【符号の説明】
【0077】
101 パケット受信部 103 エンドシステムテーブル格納部
105 パス管理テーブル格納部 107 パケット分類部
1071 キュー
109 スロット生成部 111 スロット予約部
113 スロット予約テーブル格納部 115 スケジューラ部
1151 送信部 1153 マーキング部
1155 マーキングポリシ格納部 1157 タイマ制御部
301 スイッチング部 303 スロットテーブル格納部
305 出力IF処理部
3051 マーク識別部 3053 待ちキュー
3055 送出スケジューラ部 3057 タイマ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有線ネットワークにおいて時分割のパケット通信を行う中継装置であって、
タイムスロットの予約に従って送信される第1のデータパケットと前記第1のデータパケット以外のデータパケットである第2のデータパケットとのいずれが同一のタイムスロットで送信されるのかを表す第1のデータを含む制御パケットと、前記第1のデータパケットと、前記第2のデータパケットとを受信する受信部と、
前記第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表す第1のデータを含む制御パケットを前記受信部が受信した場合、当該制御パケットを受信したタイムスロットにおいて前記受信部が受信した前記第2のデータパケットをデータ格納部に格納する識別部と、
前記データ格納部に格納された前記第2のデータパケットを、当該第2のデータパケット以外に送信すべきデータパケットを有しないタイムスロットで送信する送信部と、
を有する中継装置。
【請求項2】
前記制御パケットが、前記第1のデータパケット又は前記第2のデータパケットが送信されるか否かを表す第2のデータをさらに含み、
前記送信部が、前記第1のデータパケット及び前記第2のデータパケットのいずれもが送信されないことを表す第2のデータを含む第1の制御パケットを受信したタイムスロットにおいて、前記第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表す第1のデータを含む第2の制御パケットと前記データ格納部に格納されている前記第2のデータパケットとを送信する
請求項1記載の中継装置。
【請求項3】
前記送信部が、予約がなされていないタイムスロットにおいて、前記第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表す第1のデータを含む第3の制御パケットと前記データ格納部に格納されている前記第2のデータパケットとを送信する
請求項1又は2記載の中継装置。
【請求項4】
有線ネットワークにおいて時分割のパケット通信を行う通信装置であって、
タイムスロットの予約状況を表すデータを格納するデータ格納部と、
タイムスロットの予約なしで送信し得るデータパケットがあり、前記データ格納部に格納されているデータに基づき判断対象のタイムスロットに予約がなされていないと判断された場合には、タイムスロットの予約に従って送信されるデータパケット以外のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表すデータを含む制御パケットと前記タイムスロットの予約なしで送信し得るデータパケットとを、前記判断対象のタイムスロットで送信するスケジューラと、
を有する通信装置。
【請求項5】
有線ネットワークにおいて時分割のパケット通信を行う通信装置と、
中継装置と、
を有し、
前記通信装置は、
タイムスロットの予約状況を表すデータを格納するデータ格納部と、
タイムスロットの予約なしで送信し得るデータパケットがあり、前記データ格納部に格納されているデータに基づき判断対象のタイムスロットに予約がなされていないと判断された場合には、タイムスロットの予約に従って送信される第1のデータパケット以外のデータパケットである第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表すデータを含む制御パケットと前記タイムスロットの予約なしで送信し得るデータパケットとを、前記判断対象のタイムスロットで送信するスケジューラと、
を有し、
前記中継装置は、
前記第1のデータパケットと前記第2のデータパケットとのいずれが同一のタイムスロットで送信されるのかを表すデータを含む制御パケットと、前記第1のデータパケットと、前記第2のデータパケットとを受信する受信部と、
前記第2のデータパケットが同一のタイムスロットで送信されることを表すデータを含む前記制御パケットを前記受信部が受信した場合、当該制御パケットを受信したタイムスロットにおいて前記受信部が受信した前記第2のデータパケットをデータ保持部に格納する識別部と、
前記データ保持部に格納された前記第2のデータパケットを、当該第2のデータパケット以外に送信すべきデータパケットを有しないタイムスロットで送信する送信部と、
を有するネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−142657(P2012−142657A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291959(P2010−291959)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】