説明

通信装置、送信装置、復調方法及び通信方法

【課題】 異なる信号系列のデータを繰り返し復調することにより、繰り返し復調による性能改善効果を向上させること。
【解決手段】 MIMO復調部105は、異なる信号系列の受信データの繰り返し復調を行う。デインタリーブ部106は、デインタリーブを行う。レート・デマッチング処理部107は、レート・デマッチング処理を行う。FEC復号器108は、FEC復号を行う。外部情報生成部109は、CRC検査部111から誤りが検出された旨の情報が入力した場合には、尤度情報に基づいて外部情報を生成する。信号系列変換部110は、再送回数に応じたパターンにて、レート・マッチング処理を行うとともに、再送回数及び繰り返し復調回数に応じたパターンにて、インタリーブを行う。CRC検査部111は、受信データの誤り検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、送信装置、復調方法及び通信方法に関し、特にMIMO(multiple-input multiple-output)チャネルを用いて伝送を行う通信装置、送信装置、復調方法及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MIMOチャネルを用いて伝送を行う際、強力な誤り訂正能力を持つ訂正符号であるターボ符号等のFEC符号を外符号にするとともに、MIMOマッピングを内符号とした連接符号とみなし、MIMO復調部とFEC復号部との間で外部情報をやり取りすることで、繰り返し復号による大きな符号化利得を実現できる(例えば、非特許文献1)。また、無線通信システムにおける高速パケット伝送の実現方法として、再送制御(Automatic-Repeat-Reqest: ARQ)と誤り訂正符号とを融合したHybridARQ(以下「HARQ」と記載する)の手法が提案されており、効率的な誤り制御を行う方式として検討されている。また、MIMOは、限られた周波数帯域を有効に利用し、高速伝送を実現するシステムであり、送受信双方にアレーアンテナを用い、独立な信号を同一帯域において同時に送受信するシステムである。
【非特許文献1】B.M.Hochwald and S.ten Brink, “Achieving Near-capacity on a Multiple-Antenna Channel”, IEEE Trans. On Commun., vol.51, No.3, Mar 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の装置においては、MIMO復調に際して、MIMO復調への外部情報の引渡し及び繰り返し復調による性能改善を実施しようとすると膨大な処理が発生するという問題がある。
【0004】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、異なる信号系列のデータを繰り返し復調することにより、繰り返し復調による性能改善効果を向上させることができる通信装置、送信装置、復調方法及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の通信装置は、複数のストリーム毎の独立したデータを指向性を設けて受信する受信手段と、前記受信手段にて受信したデータの前記ストリーム毎の復調処理を所定回数繰り返すとともに、繰り返し復調する際に前回の復調処理における信号系列とは異なる信号系列に変換した受信データを復調する繰り返し復調手段と、前記繰り返し復調手段における復調処理毎に受信データの誤りを検出するとともに誤りが検出された場合に前記繰り返し復調手段に対して繰り返し復調処理を行わせる誤り検出手段と、を具備する構成を採る。
【0006】
また、本発明の通信装置は、複数のストリーム毎の独立したデータを指向性を設けて受信する受信手段と、前記受信手段にて受信したデータに誤りが検出された場合には再送を要求する再送要求手段と、前記再送要求手段にて再送要求した再送データを受信した場合には再送データの前記ストリーム毎の復調処理を所定回数繰り返すとともに、前回受信時のデータの信号系列とは異なる信号系列の前記再送データを繰り返し復調する繰り返し復調手段と、を具備する構成を採る。
【0007】
本発明の送信装置は、通信相手より再送要求された場合には再送データを前回送信時のデータとは異なる信号系列に変換する信号系列変換手段と、前記信号系列変換手段にて信号系列を変換された送信データを複数のストリームに分割するとともに前記ストリーム毎に復調可能なように変調する変調手段と、前記変調手段にて変調された前記送信データを複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナより前記ストリーム毎に独立して指向性送信する送信手段と、を具備する構成を採る。
【0008】
本発明の復調方法は、複数のストリーム毎の独立したデータを指向性を設けて受信するステップと、受信したデータの前記ストリーム毎の復調処理を所定回数繰り返すとともに、繰り返し復調する際に前回の復調処理における信号系列とは異なる信号系列に変換した受信データを復調するステップと、前記復調処理毎に受信データの誤りを検出するとともに誤りが検出された場合に繰り返し復調処理を行わせるステップと、を具備するようにした。
【0009】
本発明の通信方法は、複数のストリーム毎の独立したデータを通信装置が指向性を設けて受信するステップと、受信したデータに誤りが検出された場合には通信相手に再送を要求するステップと、再送要求された前記通信相手が再送データを前回送信時のデータとは異なる信号系列に変換するステップと、前記信号系列を変換した再送データを複数のストリームに分割するとともに前記ストリーム毎に復調可能なように変調するステップと、変調した前記再送データを複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナより前記ストリーム毎に独立して指向性送信するステップと、前記通信装置が前記再送データを受信するステップと、受信した前記再送データの前記ストリーム毎の復調処理を所定回数繰り返すステップと、を具備するようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異なる信号系列のデータを繰り返し復調することにより、繰り返し復調による性能改善効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る通信装置100の構成を示すブロック図である。MIMO復調部105、デインタリーブ部106、レート・デマッチング処理部107、FEC復号器108、外部情報生成部109及び信号系列変換部110は、繰り返し復調部117を構成する。
【0013】
アンテナ素子101−1〜101−n(nは2以上の任意の自然数)は、アレーアンテナを構成し、受信したデータを受信RF部102−1〜102−nへ出力する。アンテナ素子101−1〜101−nは、複数のストリーム毎の独立したデータを、所定の指向性を設けて受信する。また、アンテナ素子101−1〜101−nは、送信RF部116−1〜116−nから入力した送信データを、指向性制御部115−1〜115−nにて設定された指向性にて指向性送信する。
【0014】
受信RF部102−1〜102−nは、アンテナ素子101−1〜101−nから入力した受信データを、無線周波数からベースバンド周波数にダウンコンバートして指向性制御部103−1〜103−nへ出力する。
【0015】
指向性制御部103−1〜103−nは、アンテナ素子101−1〜101−nにて指向性を設けてデータを受信できるように指向性を制御する。また指向性制御部103−1〜103−nは、受信RF部102−1〜102−nから入力した受信データを、制御信号と個別チャネルの信号とに分離して、制御信号を制御信号復調部104へ出力するとともに、個別チャネルの信号をMIMO復調部105へ出力する。
【0016】
制御信号復調部104は、指向性制御部103−1〜103−nから入力した制御信号より、変調多値数、MIMO多重方法、再送回数及び符号化の情報を取り出す。そして、制御信号復調部104は、取り出した変調多値数及びMIMO多重方法の情報に基づいてMIMO復調を行うようにMIMO復調部105に対して指示し、取り出した再送回数及び符号化の情報に基づいて処理を行うようにデインタリーブ部106及びレート・デマッチング処理部107及び信号系列変換部110に対して指示する。
【0017】
MIMO復調部105は、個別チャネルを扱い、制御信号復調部104により指示された変調多値数及びMIMO多重方法に従ってMIMO復調を実施する。即ち、MIMO復調部105は、指向性制御部103−1〜103−nから入力した受信データを復調してデインタリーブ部106へ出力するとともに、信号系列変換部110から入力した復調後の受信データを再び復調することにより、繰り返し復調を行う。MIMO復調としては、例えば、Zero−Forcing(以下「ZF」と記載する)の方法を用いる。
【0018】
デインタリーブ部106は、制御信号復調部104により指示された再送回数及び符号化に従ってMIMO復調部105から入力した受信データを並び替えて元の配列に戻す処理であるデインタリーブを行う。具体的には、デインタリーブ部106は、送信装置にて並び替えられる前の配列になるように受信データを並び替える。そして、デインタリーブ部106は、並び替えた受信データをレート・デマッチング処理部107へ出力する。
【0019】
レート・デマッチング処理部107は、制御信号復調部104により指示された再送回数及び符号化に従ってデインタリーブ部106から入力した受信データに対して、間引かれたデータを補充する処理であるレート・デマッチング処理を行う。そして、レート・デマッチング処理部107は、レート・デマッチング処理後の受信データをFEC復号器108へ出力する。
【0020】
FEC復号器108は、例えばターボ復号器であり、レート・デマッチング処理部107から入力した受信データ、即ちシステマチックビットデータを外部情報として扱い、FEC復号を行う。具体的には、FEC復号器108は、受信データを軟判定復号して尤度を求め、求めた尤度の情報である尤度情報を外部情報生成部109へ出力する。また、FEC復号器108は、復号後の受信データをCRC検査部111へ出力する。
【0021】
外部情報生成部109は、CRC検査部111から誤りが検出された旨の情報が入力した場合には、FEC復号器108から入力した尤度情報に基づいて外部情報を生成して、生成した外部情報を信号系列変換部110へ出力する。
【0022】
信号系列変換部110は、制御信号復調部104により指示された再送回数及び符号化に従って、外部情報生成部109から入力した外部情報を次回受信用の再送回数に応じたパターンとマッチングさせて加算する。具体的には、信号系列変換部110は、再送回数に応じたパターンにて、データを間引く処理であるレート・マッチング処理を行うとともに、再送回数及び繰り返し復調回数に応じたパターンにて、並び替える処理であるインタリーブを行う。即ち、信号系列変換部110は、レート・マッチングまたはインタリーブにより受信データの信号系列を変換する。そして、信号系列変換部110は、加算した外部情報をMIMO復調部105へ出力する。
【0023】
誤り検出手段であるCRC検査部111は、FEC復号器108から入力した受信データの誤り検出を行う。そして、CRC検査部111は、誤りがない場合には受信データを出力し、誤りがある場合には誤りが検出された旨の情報を外部情報生成部109及び再送要求信号生成部112へ出力する。
【0024】
再送要求信号生成部112は、CRC検査部111から誤りが検出された旨の情報が入力した場合には、再送要求するための信号である再送要求信号を生成する。再送要求信号生成部112は、再送要求信号を生成する際には、送信側にて設定する符号化、変調多値数、MIMO多重方法、再送回数の情報を含める。そして、再送要求信号生成部112は、生成した再送要求信号を多重部113へ出力する。
【0025】
多重部113は、再送要求信号生成部112から入力した再送要求信号と送信データとを多重して送信データとしてMIMO変調部114へ出力する。
【0026】
MIMO変調部114は、多重部113から入力した送信データに対して複数のストリーム毎に独立して送信されるように変調する。具体的には、MIMO変調部114は、多重部113から入力した送信データをストリーム毎、即ち指向性送信する際の指向性毎に分割し、分割した送信データを変調した後に、指向性制御部115−1〜115−nへ出力する。
【0027】
指向性制御部115−1〜115−nは、MIMO変調部114から入力した送信データの指向性を制御して送信RF部116−1〜116−nへ出力する。
【0028】
送信RF部116−1〜116−nは、指向性制御部115−1〜115−nから入力した送信データをベースバンド周波数から無線周波数にアップコンバートしてアンテナ素子101−1〜101−nへ出力する。
【0029】
次に、送信装置200の構成について、図2を用いて説明する。図2は、送信装置200の構成を示すブロック図である。
【0030】
アンテナ素子201−1〜201−nは、アレーアンテナを構成し、受信したデータを受信RF部202−1〜202−nへ出力する。アンテナ素子201−1〜201−nは、複数のストリーム毎の独立したデータを、後述する指向性制御部203−1〜203−nにて設定された指向性にて受信する。また、アンテナ素子201−1〜201−nは、送信RF部212−1〜212−nから入力した送信データを、後述する指向性制御部211にて設定された指向性にて指向性送信する。
【0031】
受信RF部202−1〜202−nは、アンテナ素子201−1〜201−nから入力した受信データを無線周波数からベースバンド周波数にダウンコンバートして指向性制御部203−1〜203−nへ出力する。
【0032】
指向性制御部203−1〜203−nは、受信RF部202−1〜202−nから入力した受信データを用いて、アンテナ素子201−1〜201−nにて指向性を設けてデータを受信できるように指向性を制御する。そして、指向性制御部203−1〜203−nは、受信データをMIMO復調部204へ出力する。
【0033】
MIMO復調部204は、指向性制御部203−1〜203−nから入力した受信データをMIMO復調して分離部205へ出力する。
【0034】
分離部205は、MIMO復調部204から入力した受信データを再送要求信号と再送要求信号以外の信号に分離する。そして、分離部205は、分離した再送要求信号を再送要求信号復調部206へ出力するとともに、分離した再送要求信号以外の信号を出力する。
【0035】
再送要求信号復調部206は、分離部205から入力した再送要求信号を復調する。そして、再送要求信号復調部206は、復調した再送要求信号に含まれている符号化の情報をレート・マッチング処理部208へ出力し、再送回数の情報をインタリーブ部209へ出力するとともに、復調した再送要求信号に含まれている変調多値数及びMIMO多重方法の情報をMIMO変調部210へ出力する。
【0036】
FEC符号器207は、例えばターボ符号器であり、送信データをFEC符号化してレート・マッチング処理部208へ出力する。
【0037】
レート・マッチング処理部208は、再送回数に応じたレート・マッチング処理のパターンの情報をあらかじめ記憶しており、再送要求信号復調部206から入力した符号化の情報に基づいて、FEC符号器207から入力した送信データに対して、HARQ用の信号生成処理として再送回数に応じてレート・マッチング処理を実施する。そして、レート・マッチング処理部208は、レート・マッチング処理を行った後に送信データをインタリーブ部209へ出力する。なお、レート・マッチング処理部208が記憶しているレート・マッチング処理のパターンの情報は、通信装置100のレート・デマッチング処理部107も記憶しているので、レート・デマッチング処理部107は間引きしたデータを補充することができる。
【0038】
インタリーブ部209は、再送回数に応じたインタリーブのパターンの情報をあらかじめ記憶しており、再送要求信号復調部206から入力した再送回数の情報に基づいて、レート・マッチング処理部208から入力した送信データを再送回数に応じてインタリーブする。そして、インタリーブ部209は、インタリーブ後の送信データをMIMO変調部210へ出力する。なお、インタリーブ部209が記憶しているインタリーブのパターンの情報は、通信装置100のデインタリーブ部106も記憶しているので、デインタリーブ部106は元の配列に戻すことができる。
【0039】
MIMO変調部210は、再送要求信号復調部206から入力した変調多値数及びMIMO多重方法の情報に基づいて、インタリーブ部209から入力した送信データに対してストリーム毎に独立して送信されるように変調する。具体的には、MIMO変調部210は、インタリーブ部209から入力した送信データをストリーム毎、即ち指向性送信する際の指向性毎に分割し、分割した送信データを変調した後に、指向性制御部211へ出力する。
【0040】
指向性制御部211は、アンテナ素子201−1〜201−nから送信データが指向性送信されるように、指向性制御信号に基づいて、MIMO変調部210から入力した送信データの指向性を制御して送信RF部212−1〜212−nへ出力する。
【0041】
送信RF部212−1〜212−nは、指向性制御部211から入力した送信データをベースバンド周波数から無線周波数にアップコンバートしてアンテナ素子201−1〜201−nへ出力する。
【0042】
次に、通信装置100及び送信装置200の動作について、図3〜図5を用いて説明する。図3は、送信装置200の動作を示すフロー図であり、図4は、通信装置100の動作を示すフロー図であり、図5は、レート・マッチング処理部208におけるレート・マッチング処理を示す図である。
【0043】
最初に、再送要求信号復調部206は、再送要求信号を受信しているか否か、即ち再送要求されている否かを検出する(ステップST301)。再送要求されていない場合には、再送要求信号復調部206は、新規に送信データを送信するものと判断する。
【0044】
そして、レート・マッチング処理部208は、レート・マッチング処理を行う(ステップST302)。図5より、レート・マッチング処理前の送信データ#501において、システマチックビットデータ#504とパリティビットデータ#505とパリティビットデータ#506とは同じデータ量である。レート・マッチング処理部208はパリティビットデータを優先的に間引くので、レート・マッチング処理部208にてレート・マッチング処理された後の送信データ#502は、システマチックビットデータ#507よりもパリティビットデータ#508及びパリティビットデータ#509の方のデータ量が少なくなる。即ち、レート・マッチング処理部208は、システマチックビットデータの間引くデータ量よりも、パリティビットデータの間引くデータ量の方が多くなるようにレート・マッチング処理を行う。さらに、レート・マッチング処理部208は、再送データ#503も同様に、システマチックビットデータ#510よりもパリティビットデータ#511及びパリティビットデータ#512の方のデータ量が少なくなるように間引く。再送データ#503は、送信データ#502とは異なるパターンにてデータを間引くようにしている。なお、送信データ#502と再送データ#503とは、全体のデータ量が互いに同一の場合に限らず、全体のデータ量が互いに異なるようにレート・マッチング処理を行っても良い。また、再送毎にデータ量が異なるようにレート・マッチング処理を行っても良い。
【0045】
次に、インタリーブ部209は、インタリーブを行う(ステップST303)。次に、MIMO変調部210は、MIMO変調を行う(ステップST304)。次に、送信装置200はストリーム毎に独立した指向性にて指向性送信する(ステップST305)。
【0046】
一方、ステップST301において、再送要求されている場合には、再送要求信号復調部206は再送要求信号を復調し、レート・マッチング処理部208は前回の送信時とはパターンを変更してレート・マッチング処理を行う(ステップST306)。また、インタリーブ部209は前回の送信時とはパターンを変更してインタリーブする(ステップST307)。次に、MIMO変調部210は、MIMO変調を行う(ステップST304)。次に、送信装置200はストリーム毎に独立した指向性にて指向性送信する(ステップST305)。
【0047】
MIMO符号化の具体例として空間多重の方法が挙げられる。空間多重では、単純にシリアル/パラレル変換の処理を施して送信信号系列を各アンテナ素子201−1〜201−nに分配し、(1)式のように送信する。
【0048】
【数1】

【0049】
(1)式にて送信されたデータを受信した通信装置100は、MIMO復調部105にて、MIMO復調を行う(ステップST401)。MIMO復調において、ZFの方法を用いる場合には、受信信号を復調する際に、(2)式を用いる。
【0050】
【数2】

【0051】
次に、デインタリーブ部106は、インタリーブ部209にてインタリーブする前の配列に戻るようにデインタリーブを行う(ステップST402)。次に、レート・デマッチング処理部107は、レート・マッチング処理部208にて間引かれたデータを補充して、レート・マッチング処理部208にてデータが間引かれる前の状態に戻す(ステップST403)。
【0052】
次に、FEC復号器108は、FEC復号を行う(ステップST404)。次に、CRC検査部111は、誤りの検出を行う(ステップST405)。誤りが検出されなかった場合には、CRC検査部111は受信データを出力する(ステップST406)。一方、誤りが検出された場合には、再送要求信号生成部112は再送要求信号を生成して再送要求するとともに(ステップST407)、外部情報生成部109は外部情報を生成し、信号系列変換部110は繰り返しの復調回数に応じたパターンのインタリーブを行う(ステップST408)。
【0053】
そして、インタリーブ後の外部情報を用いて再度MIMO復調を行う(ステップST401)。このようにステップST401〜ステップST405、ステップST407、ステップST408の処理を繰り返すことにより、繰り返し復調を行う。そして、CRC検査部111にて誤りが検出されなければ繰り返し復調の処理を終了する。また、繰り返し復調の際にデータが再送された場合には、再送データにて引き続き繰り返し復調処理を行う。MIMO復調における外部情報の例として、(3)式のように算出可能である。
【0054】
【数3】

【0055】
また、MIMO復調に際しての事前情報は、(4)式より算出できる。
【0056】
【数4】

【0057】
続いて、FEC復号結果を信号系列変換部110にて再びインタリーブしてMIMO復調部105に引渡し、前述のチャネル毎に取り出した信号をMIMO復調する際に外部情報として扱う。ここでの外部情報は、例えば、(5)式の値を用いることができる。
【0058】
【数5】

【0059】
これらの処理を繰り返すことで、MIMOとFECにおける符号化利得を最大限に引き出すことが可能となる。これにより、繰り返し復調の処理を現実的な回路規模で構成可能である。なお、上記ではMIMO符号化として空間多重を、MIMO復調としてZFを用いたが、これに限らず、Space Time Block Code、Linear Dispersion Code及びそれらの復調手法、さらにMinimum Mean Squares(MMSE)やSphere Decoding(SD)などの復調手法にも適用可能である。
【0060】
図6は、通信装置100における性能改善動作のイメージを示す図である。図6はアンテナ素子101−1〜101−nが2本である場合において、各アンテナ素子にて受信した受信データを合成する状態を示すものであり、図6(a)は、アンテナ素子1にて受信した受信データ(シンボル1)をI−Q平面にマッピングした図、図6(b)は、アンテナ素子1とは異なるアンテナ素子2にて受信した受信データ(シンボル2)をI−Q平面にマッピングした図、図6(c)は、従来において図6(a)の受信データと図6(b)の受信データとを合成した状態を示す図、及び図6(d)は、本実施の形態1において図6(a)の受信データと図6(b)の受信データとを合成した状態を示す図である。なお、図6(a)〜図6(d)において、横軸はI軸であり、縦軸はQ軸である。
【0061】
図6(a)より、アンテナ素子1の受信データは信号点#601にマッピングされることより、他の3点は信号点#602、#603、#604にマッピングされるものと推定される。即ち、I軸とQ軸の交点#606を回転中心として、θ1だけ半時計回りに位相が回転した状態になっている。従って、しきい値#605の位置にて、システマチックビットデータの「1」または「0」を判定する。なお、しきい値#605より右側の領域が「0」であり、しきい値#605より左側の領域が「1」である。
【0062】
また、図6(b)より、アンテナ素子2の受信データは信号点#610にマッピングされることより、他の3点は信号点#611、#612、#613にマッピングされるものと推定される。
【0063】
従来は、図6(c)に示すように、図6(a)の信号点#601と図6(b)の信号点#610とを合成すると、信号点#620になる。しかし、雑音成分等の影響により、信号点#620にマッピングされるはずのものが、「1」の領域に寄った信号点#621にマッピングされることが起こり得る。この場合には、信号点#621は、本来判定値が「0」であるのに誤って「1」と判定されてしまう可能性が高くなる。一方、本実施の形態1においては、図6(d)に示すように、アンテナ素子2にて受信した再送データの外部情報として「0」の尤度を付加することにより、図6(b)の信号点#610を考慮せずにマッピングされることになる。従って、信号点#601は信号点#624にマッピングされ、信号点#602は信号点#625にマッピングされ、信号点#603は信号点#626にマッピングされるとともに、信号点#604は信号点#627にマッピングされる。この結果、雑音成分等の影響を受けた場合であっても、信号点#601にマッピングされていた信号点は信号点#622にマッピングされるので、信号点#622は、しきい値#623より右側の領域、即ち判定値「0」の領域にマッピングされ、本来の判定値である「0」と判定される可能性が高くなる。
【0064】
このように、本実施の形態1によれば、インタリーブのパターンを変更しながら繰り返し復調するので、繰り返し復調による性能改善効果を向上させることができる。また、本実施の形態1によれば、HARQによる再送時には、レート・マッチング処理においては前回の受信時のパターンとは異なるパターンにてデータを間引くとともに、インタリーブにおいては前回の受信時のパターンとは異なるパターンにてデータを並び替えるので、繰り返し復調による性能改善効果をさらに向上させることができるとともに、HARQと繰り返し復調とを組み合わせた場合においても処理に要する時間を最小限にすることができる。
【0065】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係る送信装置700の構成を示すブロック図である。
【0066】
本実施の形態2に係る送信装置700は、図2に示す実施の形態1に係る送信装置200において、図7に示すように、マッピング調整部701を追加する。なお、図7においては、図2と同一構成である部分には同一の符号を付してその説明は省略する。また、受信側の通信装置の構成は図1と同一構成であるので、その説明は省略する。
【0067】
レート・マッチング処理部208は、再送回数に応じたレート・マッチング処理のパターンの情報をあらかじめ記憶しており、再送要求信号復調部206から入力した符号化の情報に基づいて、FEC符号器207から入力した送信データに対して、HARQ用の信号生成処理として再送回数に応じてレート・マッチング処理を実施する。そして、レート・マッチング処理部208は、レート・マッチング処理を行った後に送信データをインタリーブ部209へ出力する。また、レート・マッチング処理部208は、レート・マッチング処理の情報をマッピング調整部701へ出力する。なお、レート・マッチング処理部208が記憶しているレート・マッチング処理のパターンの情報は、通信装置100のレート・デマッチング処理部107も記憶しているので、レート・デマッチング処理部107は間引きしたデータを補充することができる。
【0068】
インタリーブ部209は、再送回数に応じたインタリーブのパターンの情報をあらかじめ記憶しており、再送要求信号復調部206から入力した再送回数の情報に基づいて、レート・マッチング処理部208から入力した送信データを再送回数に応じてインタリーブする。そして、インタリーブ部209は、インタリーブ後の送信データをMIMO変調部210へ出力する。また、インタリーブ部209は、インタリーブの情報をマッピング調整部701へ出力する。なお、インタリーブ部209が記憶しているインタリーブのパターンの情報は、通信装置100のデインタリーブ部106も記憶しているので、デインタリーブ部106は元の配列に戻すことができる。
【0069】
マッピング調整部701は、レート・マッチング処理部208から入力したレート・マッチング処理の情報及びインタリーブ部209から入力したインタリーブの情報に基づいて、MIMO変調におけるMIMO多重時の信号配置を調整する。そして、マッピング調整部701は、調整した信号配置になるように、MIMO変調部210に対して指示する。
【0070】
MIMO変調部210は、マッピング調整部701の指示に従って、再送要求信号復調部206から入力した変調多値数及びMIMO多重方法の情報に基づいて、インタリーブ部209から入力した送信データに対してストリーム毎に独立して送信されるように変調する。具体的には、MIMO変調部210は、インタリーブ部209から入力した送信データをストリーム毎、即ち指向性送信する際の指向性毎に分割し、分割した送信データを変調した後に、指向性制御部211へ出力する。
【0071】
マッピング調整部701における具体的な信号配置の調整方法としては、前回までに送信したシステマチックビットに対応するビットが各アンテナ素子201−1〜201−nまたはビームに対しほぼ均等に配置するパターンを用いることが可能である。また、具体的な信号配置の他の調整方法として、前回までに送信したシステマチックビットに対応するビットが特定のシンボルに集中するパターンを用いることが可能である。なお、送信装置700及び受信側の動作は、マッピング調整部701にて信号配置を調整する以外は図3〜図5と同一であるので、その説明は省略する。
【0072】
このように、本実施の形態2によれば、上記実施の形態1の効果に加えて、前回までに送信したシステマチックビットに対応するビットが各アンテナ素子201−1〜201−nまたはビームに対しほぼ均等に配置するようにした場合には、受信側において、外部情報を利用することが可能なビットの位置を分散させることができるので、FEC復号器は、符号化ブロック内にて、繰り返し復調処理の恩恵を均一に得ることができる。また、本実施の形態2によれば、前回までに送信したシステマチックビットに対応するビットが特定のシンボルに集中するようにした場合には、受信側のMIMO復調部で外部情報の効果を特定のシンボルに集中することができるので、同一のタイミングにてMIMO多重された系列が、繰り返し復調処理の恩恵を得ることができる。
【0073】
なお、上記実施の形態1及び実施の形態2において、再送回数に応じてインタリーブのパターンとレート・マッチング処理のパターンの両方を変更したが、これに限らず、再送回数に応じてインタリーブのパターン及びレート・マッチング処理のパターンの何れか一方のみを変更するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明にかかる通信装置、送信装置、復調方法及び通信方法は、特にMIMOチャネルを用いて伝送を行うのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態1に係る通信装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1に係る送信装置の構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態1に係る送信装置の動作を示すフロー図
【図4】本発明の実施の形態1に係る通信装置の動作を示すフロー図
【図5】本発明の実施の形態1に係るレート・マッチング処理を示す図
【図6】本発明の実施の形態1に係る通信装置における性能改善動作のイメージを示す図
【図7】本発明の実施の形態2に係る送信装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0076】
100 通信装置
101−1〜101−n アンテナ素子
102−1〜102−n 受信RF部
103−1〜103−n 指向性制御部
104 制御信号復調部
105 MIMO復調部
106 デインタリーブ部
107 レート・デマッチング処理部
108 FEC復号器
109 外部情報生成部
110 信号系列変換部
111 CRC検査部
112 再送要求信号生成部
113 多重部
114 MIMO変調部
115−1〜115−n 指向性制御部
116−1〜116−n 送信RF部
117 繰り返し復調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のストリーム毎の独立したデータを指向性を設けて受信する受信手段と、
前記受信手段にて受信したデータの前記ストリーム毎の復調処理を所定回数繰り返すとともに、繰り返し復調する際に前回の復調処理における信号系列とは異なる信号系列に変換した受信データを復調する繰り返し復調手段と、
前記繰り返し復調手段における復調処理毎に受信データの誤りを検出するとともに誤りが検出された場合に前記繰り返し復調手段に対して繰り返し復調処理を行わせる誤り検出手段と、
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記繰り返し復調手段は、繰り返し復調する際に前回の復調処理における配列とは異なる配列に変換した受信データを復調することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
複数のストリーム毎の独立したデータを指向性を設けて受信する受信手段と、
前記受信手段にて受信したデータに誤りが検出された場合には再送を要求する再送要求手段と、
前記再送要求手段にて再送要求した再送データを受信した場合には再送データの前記ストリーム毎の復調処理を所定回数繰り返すとともに、前回受信時のデータの信号系列とは異なる信号系列の前記再送データを繰り返し復調する繰り返し復調手段と、
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項4】
前記繰り返し復調手段は、前回受信時における配列とは異なる配列の再送データを繰り返し復調することを特徴とする請求項3記載の通信装置。
【請求項5】
前記繰り返し復調手段は、前回受信時のパターンとは異なるパターンにてデータを間引かれた再送データを繰り返し復調することを特徴とする請求項3または請求項4記載の通信装置。
【請求項6】
通信相手より再送要求された場合には再送データを前回送信時のデータとは異なる信号系列に変換する信号系列変換手段と、
前記信号系列変換手段にて信号系列を変換された送信データを複数のストリームに分割するとともに前記ストリーム毎に復調可能なように変調する変調手段と、
前記変調手段にて変調された前記送信データを複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナより前記ストリーム毎に独立して指向性送信する送信手段と、
を具備することを特徴とする送信装置。
【請求項7】
前記信号系列変換手段は、データを並び替えることにより前記信号系列を変換することを特徴とする請求項6記載の送信装置。
【請求項8】
前記信号系列変換手段は、データを間引くことにより前記信号系列を変換することを特徴とする請求項6または請求項7記載の送信装置。
【請求項9】
前記信号系列変換手段は、システマチックビットデータよりもパリティビットデータの方を優先的に間引くことを特徴とする請求項8記載の送信装置。
【請求項10】
前記通信相手から再送要求された場合には前記変調手段にて変調する際に再送データのシステマチックビットデータが前記アンテナ素子に対して均等な配置になるように調整するマッピング調整手段を具備し、
前記送信手段は、前記マッピング調整手段にてアレーアンテナのアンテナ素子に対してシステマチックビットデータが均等に配置されるように調整された再送データを、前記ストリーム毎に独立して指向性送信することを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の送信装置。
【請求項11】
前記通信相手から再送要求された場合には前記変調手段にて変調する際に再送データのシステマチックビットデータが特定のシンボルに集中するように調整するマッピング調整手段を具備し、
前記送信手段は、前記マッピング調整手段にてシステマチックビットデータが特定のシンボルに集中するように調整された再送データを、複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナより前記ストリーム毎に独立して指向性送信することを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の送信装置。
【請求項12】
複数のストリーム毎の独立したデータを指向性を設けて受信するステップと、
受信したデータの前記ストリーム毎の復調処理を所定回数繰り返すとともに、繰り返し復調する際に前回の復調処理における信号系列とは異なる信号系列に変換した受信データを復調するステップと、
前記復調処理毎に受信データの誤りを検出するとともに誤りが検出された場合に繰り返し復調処理を行わせるステップと、
を具備することを特徴とする復調方法。
【請求項13】
複数のストリーム毎の独立したデータを通信装置が指向性を設けて受信するステップと、
受信したデータに誤りが検出された場合には通信相手に再送を要求するステップと、
再送要求された前記通信相手が再送データを前回送信時のデータとは異なる信号系列に変換するステップと、
前記信号系列を変換した再送データを複数のストリームに分割するとともに前記ストリーム毎に復調可能なように変調するステップと、
変調した前記再送データを複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナより前記ストリーム毎に独立して指向性送信するステップと、
前記通信装置が前記再送データを受信するステップと、
受信した前記再送データの前記ストリーム毎の復調処理を所定回数繰り返すステップと、
を具備することを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−246341(P2006−246341A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62393(P2005−62393)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】