説明

通信装置及び方法、並びにプログラム

【課題】チャネル占有率の予測精度を向上させる。
【解決手段】分離部104は、端末装置から送信されてくるパケットのヘッダ情報の解析結果に基づいて、端末装置ごとにパケットを分離して、対応する占有率計算部105ないし占有率計算部105に入力する。そして、占有率計算部105ないし占有率計算部105は、端末装置ごとのチャネル占有率を計算し、占有率予測部107ないし占有率予測部107は、端末装置ごとのチャネル占有率の計算結果に基づいて、端末装置ごとのチャネル占有率を予測し、全体占有率予測部108は、端末装置ごとのチャネル占有率の予測結果を集約して、全体のチャネル占有率を予測し、制御部100は、無線LAN通信部102を制御して、全体のチャネル占有率の予測結果に基づいた所定の通信処理を行う。本発明は、例えば、無線LAN通信で使用される通信装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置及び方法、並びにプログラムに関し、特に、チャネル占有率の予測精度を向上させることができるようにした通信装置及び方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、同一の周波数で複数の無線システムを共用するシステムが、コグニティブ無線技術として注目されている。
【0003】
コグニティブ無線システムでは、従来のシステム(以下、プライマリシステムという)が利用している周波数帯域を共用して、2次システム(以下、セカンダリシステムという)が通信を実施する形態が考えられており、限りある周波数資源を有効に利用する手法として注目されている。
【0004】
このようなプライマリ・セカンダリ周波数共用システムでは、プライマリシステムを保護した上で、セカンダリシステムの運用を行う必要があり、プライマリシステムを保護しつつ、セカンダリシステムが最大周波数帯域を活用することが求められる。
【0005】
プライマリ・セカンダリ周波数共用システムには、様々な手法があるものの、その一つの形態としては、プライマリシステムとして無線LANのようなもともと周波数を複数ユーザで自律的に共用している無線システムを考え、そのシステムが時間的に利用していない間を、セカンダリシステムが利用することにより周波数を有効利用することが考えられている。このような周波数共有システムでは、プライマリシステムである無線LANの通信を保護しつつ、セカンダリシステムを利用する必要がある。
【0006】
この一つの方式として、プライマリシステムのチャネル占有率を求め、その占有率をもとにして、セカンダリシステムのアクセス確率を変更する手法や、パケット送信開始時のバックオフ時間を適応的に低減する手法により、プライマリシステムへ与える影響を適応的に低減する方式が考えられている。これらの方式では、チャネル占有率をもとにして、プライマリシステムが確実に通信できる時間を残しつつ、周波数を共用してセカンダリシステムが通信を実施するものであり、自律的に高い周波数共用特性が得られることが分かっている。
【0007】
また、特許文献1には、コグニティブ無線システムにおいて、パケットの時間占有率を監視して、パケットの欠如の補完を行う無線環境監視装置が提案されている。
【0008】
また、上述したコグニティブ無線システムに限らず、時間占有率を利用するものとしては、回線の占有率を利用して、不必要な親局を休止モードにすることで、無線LANにおける消費電力削減を行う無線LANシステムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−49588号公報
【特許文献2】特開2003−32264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、コグニティブ無線システムにおいて、プライマリシステムとしてランダムアクセスを行う無線LAN通信などでは、無線環境が時々刻々と変化するため、現時点の無線環境情報のみでは情報が不十分であり、無線環境を予測することが必要になるが、その予測の精度確保が困難であるという問題があった。
【0011】
特許文献1には、コグニティブ無線システムにおいて、パケットの時間占有率を監視することが記載されているが、特定の端末装置のトラヒック変動に対する予測手法については記載されておらず、時間占有率を予測しきれない場合がある。
【0012】
また、特許文献2には、回線の占有率を利用することが記載されているが、占有率の予測については記載されておらず、また、回線の占有率の周波数共用への利用についても記載されていいない。
【0013】
以上のように、従来のチャネル占有率の予測では、精度確保が困難であるため、チャネル占有率の予測精度を向上させることが求められていた。
【0014】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、チャネル占有率の予測精度を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の通信装置は、1又は複数の端末装置から送信されるパケットを受信する受信手段と、受信された前記パケットのヘッダ情報から前記端末装置を特定する識別子を抽出する抽出手段と、抽出された前記識別子により特定される前記端末装置ごとのチャネル占有率を計算する計算手段と、前記端末装置ごとのチャネル占有率の計算結果に基づいて、前記端末装置ごとのチャネル占有率を予測する端末占有率予測手段と、前記端末装置ごとのチャネル占有率の予測結果を集約して、全体のチャネル占有率を予測する全体占有率予測手段と、全体のチャネル占有率の予測結果に基づいて、所定の通信処理を行う処理手段とを備える。
【0016】
前記通信装置と前記端末装置は、コグニティブ無線による通信を行っており、前記処理手段は、全体のチャネル占有率の予測結果から得られるプライマリシステムのチャネル占有率の最も低いチャネルに対して、前記プライマリシステムと周波数帯域を共用するセカンダリシステムを割り当てる。
【0017】
前記端末占有率予測手段は、1又は複数の前記端末装置の中から、無線通信を終了した特定の端末装置が検出された場合、前記特定の端末装置に対するチャネル占有率の予測を中止し、前記全体占有率予測手段は、中止された前記特定の端末装置のチャネル占有率の予測以外のチャネル占有率の予測結果を集約して、全体のチャネル占有率を予測する。
【0018】
前記端末装置ごとのチャネル占有率の計算結果を蓄積する蓄積手段をさらに備え、前記全体占有率予測手段は、新たに無線通信を開始した端末装置が検出された場合、蓄積された過去のチャネル占有率の最大値を、予測する全体のチャネル占有率であるとみなし、その後、前記端末占有率予測手段により、新たに無線通信を開始した端末装置についての一定のチャネル占有率が予測されたとき、前記端末装置ごとのチャネル占有率の予測結果を集約して、全体のチャネル占有率を予測する。
【0019】
全体のチャネル占有率は、k番目の前記端末装置のチャネル占有率の自己回帰係数をφ(k)とし、時刻tのk番目の前記端末装置のチャネル占有率をX(k)とし、平均0、分散Vの正規分布をb(k)とし、自己回帰の次数をpとし、前記端末装置の数をNとしたとき、ARモデル(Autoregressive model)を用いて、
【数1】


により予測される。
【0020】
前記識別子は、前記ヘッダ情報に格納された前記端末装置のIP(Internet Protocol)アドレス又はMAC(Media Access Control)アドレスである。
【0021】
前記ヘッダ情報には、前記端末装置で実行されているアプリケーションを特定する識別子がさらに含まれており、前記計算手段は、前記識別子により特定される前記端末装置で実行されているアプリケーションごとのチャネル占有率を計算し、前記端末占有率予測手段は、前記端末装置のアプリケーションごとのチャネル占有率の計算結果に基づいて、前記端末装置のアプリケーションごとのチャネル占有率を予測し、前記全体占有率予測手段は、前記端末装置のアプリケーションごとのチャネル占有率の予測結果を集約して、全体のチャネル占有率を予測する。
【0022】
前記識別子は、前記ヘッダ情報に格納された前記端末装置のIPアドレス又はMACアドレス、及びポート番号である。
【0023】
本発明の通信方法は、通信装置が、1又は複数の端末装置から送信されるパケットを受信し、受信された前記パケットのヘッダ情報から前記端末装置を特定する識別子を抽出し、抽出された前記識別子により特定される前記端末装置ごとのチャネル占有率を計算し、前記端末装置ごとのチャネル占有率の計算結果に基づいて、前記端末装置ごとのチャネル占有率を予測し、前記端末装置ごとのチャネル占有率の予測結果を集約して、全体のチャネル占有率を予測し、全体のチャネル占有率の予測結果に基づいて、所定の通信処理を行うステップを含む。
【0024】
本発明のプログラムは、1又は複数の端末装置から送信されるパケットを受信する受信手段と、受信された前記パケットのヘッダ情報から前記端末装置を特定する識別子を抽出する抽出手段と、抽出された前記識別子により特定される前記端末装置ごとのチャネル占有率を計算する計算手段と、前記端末装置ごとのチャネル占有率の計算結果に基づいて、前記端末装置ごとのチャネル占有率を予測する端末占有率予測手段と、前記端末装置ごとのチャネル占有率の予測結果を集約して、全体のチャネル占有率を予測する全体占有率予測手段と、全体のチャネル占有率の予測結果に基づいて、所定の通信処理を行う処理手段として、コンピュータを機能させる。
【0025】
本発明の通信装置及び方法、並びにプログラムにおいては、1又は複数の端末装置から送信されるパケットが受信され、受信されたパケットのヘッダ情報から端末装置を特定する識別子が抽出され、抽出された識別子により特定される端末装置ごとのチャネル占有率が計算され、端末装置ごとのチャネル占有率の計算結果に基づいて、端末装置ごとのチャネル占有率が予測され、端末装置ごとのチャネル占有率の予測結果が集約され、全体のチャネル占有率が予測され、全体のチャネル占有率の予測結果に基づいて、所定の通信処理が行われる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、チャネル占有率の予測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を適用した無線LANシステムの構成例を示す図である。
【図2】本発明を適用した通信装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【図3】チャネル占有率予測処理を説明するフローチャートである。
【図4】パケットのヘッダ情報の例を示す図である。
【図5】チャネル占有率の計算方法について説明する図である。
【図6】プライマリシステムのチャネル占有率の予測結果に基づいたセカンダリシステムの割り当てについて説明する図である。
【図7】チャネル占有率予測精度の推移を示す図である。
【図8】コンピュータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.本発明を無線LANシステムに適用した場合の実施の形態
2.変形例
【0029】
<1.本発明を無線LANシステムに適用した場合の実施の形態>
まず、図1乃至図7を参照して、本発明を無線LANシステムに適用した場合の実施の形態について説明する。
【0030】
[無線LANシステムの構成例]
図1は、本発明を適用した無線LANシステムの構成例を示す図である。
【0031】
無線LANシステム1は、例えば、同じ室内に設置される、1台の親通信装置11、2台の子通信装置12及び子通信装置12、並びにN台の端末装置13ないし端末装置13から構成される。
【0032】
親通信装置11は、例えば、無線LAN用の中継器であって、自身を中心として形成される無線通信エリア内の配下の子通信装置12及び子通信装置12との通信を無線により行う。
【0033】
また、親通信装置11には、モデムを内蔵したルータ(不図示)がケーブルを介して接続されており、ルータ内のモデムは、CATV回線、xDSL回線等の通信回線と、プロバイダの専用回線を介してインターネットに接続されている。
【0034】
子通信装置12及び子通信装置12は、例えば、親通信装置11により管理される無線LAN用の中継器であって、子通信装置12及び子通信装置12のそれぞれを中心として、無線通信エリアが形成されている。
【0035】
端末装置13ないし端末装置13は、例えば、パーソナルコンピュータや携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)などの端末である。端末装置13ないし端末装置13には、子通信装置12及び子通信装置12との間で電波の送受信を行えるようにする無線LAN接続用デバイスとして、無線LANアダプタがそれぞれ装着されている。
【0036】
子通信装置12及び子通信装置12のそれぞれを中心とする無線通信エリア内に入った端末装置13ないし端末装置13は、装着された無線LANアダプタと、子通信装置12又は子通信装置12のいずれか(基本的には、最も近くに配置されている子通信装置12)との間で電波が送受信されることにより、子通信装置12との通信を無線により行う。
【0037】
これにより、端末装置13ないし端末装置13は、それぞれ、子通信装置12又は子通信装置12を中心とする無線通信エリアに属して、子通信装置12又は子通信装置12と、親通信装置11との間の無線通信を介することにより、親通信装置11に接続されたルータ(不図示)を介したインターネットへの接続を行うことが可能となる。
【0038】
また、図1において、端末装置13と端末装置13のように、同じ子通信装置12を中心とする無線通信エリアに属している端末間において互いに無線通信を行うことは勿論、端末装置13と端末装置13のように、異なる子通信装置12と子通信装置12を中心とする無線通信エリアにそれぞれ属している端末間においても、子通信装置12及び子通信装置12と親通信装置11との間での無線通信を介して、互いに無線通信を行うことが可能となる。
【0039】
なお、図1の無線LANシステム1では、1台の親通信装置11と、2台の子通信装置12及び子通信装置12からなる構成について説明したが、複数台の親通信装置11を設けて、それらの親通信装置11をそれぞれLANケーブルなどにより接続して構成するようにしてもよい。また、図1の無線LANシステム1では、親子関係を有する親通信装置11と子通信装置12及び子通信装置12とからなる構成を図示したが、親通信装置11又は子通信装置12のいずれか一方の通信装置のみを設けて、その一方の通信装置が、単独で、端末装置13ないし端末装置13との間で互いに行われる無線通信を可能にさせるとともに、ルータ(不図示)を接続して、インターネットへの接続を可能にさせる構成としてもよい。すなわち、例えば、無線LANシステム1は、アクセスポイントとしての親通信装置11と、アクセスポイント(親通信装置11)に接続する端末装置13ないし端末装置13から構成されるものであってもよい。
【0040】
また、以下の説明では、子通信装置12及び子通信装置12を個々に区別する必要がない場合、単に、子通信装置12と称し、親通信装置11と子通信装置12を個々に区別する必要がない場合、総称して通信装置という。さらに、端末装置13ないし端末装置13を個々に区別する必要がない場合、単に、端末装置13と称するとともに、端末装置13ないし端末装置13のうち、任意のものを、端末装置13と称する。
【0041】
[通信装置の構成例]
図2は、本発明を適用した通信装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【0042】
なお、図2では、子通信装置12の構成を示しているが、親通信装置11の構成も基本的には同様である。
【0043】
子通信装置12は、制御部100、アンテナ101、無線LAN通信部102、パケットヘッダ解析部103、分離部104、占有率計算部105ないし占有率計算部105、占有率蓄積部106ないし占有率蓄積部106、占有率予測部107ないし占有率予測部107、及び全体占有率予測部108から構成される。
【0044】
アンテナ101は、親通信装置11又は端末装置13との間で所定の周波数帯域の電波を送受するために設けられる。アンテナ101は、親通信装置11又は端末装置13から送信されてくる電波を受信した場合、その電波信号を、無線LAN通信部102に供給する。
【0045】
無線LAN通信部102は、子通信装置12の各部の動作を制御する制御部100の制御にしたがって、パケットの変調処理又は復調処理を行う。すなわち、無線LAN通信部102は、アンテナ101により電波信号が受信された場合、受信された電波信号からパケットを復調し、パケットヘッダ解析部103に供給する。また、無線LAN通信部102は、パケットを変調し、アンテナ101より電波信号として送信する。
【0046】
パケットヘッダ解析部103は、無線LAN通信部102から供給されるパケットのヘッダ情報を抽出して解析を行う。パケットヘッダ解析部103は、ヘッダ情報の解析結果を分離部104に供給する。
【0047】
なお、ヘッダ情報の解析結果としては、例えば、端末装置13ないし端末装置13を特定する識別子であるIP(Internet Protocol)アドレス又はMAC(Media Access Control)アドレスが得られる。
【0048】
分離部104は、パケットヘッダ解析部103からの解析結果に基づいて、端末装置13(ユーザ)ごとに復調されたパケットを分離して、占有率計算部105ないし占有率計算部105に供給する。
【0049】
すなわち、図1の端末装置13ないし端末装置13のそれぞれから送信されたパケットは、分離部104によって、端末装置13ごとにN通りに分離され、N通りに分離されたパケットがそれぞれ対応する占有率計算部105ないし占有率計算部105のいずれかに入力される。例えば、図1の端末装置13から送信されたパケットは、占有率計算部105に入力され、図1の端末装置13から送信されたパケットは、占有率計算部105に入力される。同様に、図1の端末装置13から送信されたパケットは、占有率計算部105に入力されることになる。
【0050】
占有率計算部105は、分離部104から供給される、端末装置13から送信されたパケットのチャネル占有率を計算する。占有率計算部105は、計算により得られた端末装置13のチャネル占有率の計算結果を、占有率蓄積部106に供給する。
【0051】
占有率蓄積部106は、占有率計算部105から供給される、端末装置13のチャネル占有率の計算結果を蓄積するとともに、占有率予測部107に供給する。すなわち、占有率蓄積部106には、過去に計算されたチャネル占有率の計算結果が順次蓄積されることになる。
【0052】
占有率予測部107は、占有率蓄積部106から供給される、端末装置13のチャネル占有率の計算結果に基づいて、端末装置13のチャネル占有率を予測する。この予測結果は、全体占有率予測部108に供給される。
【0053】
同様にして、占有率計算部105ないし占有率計算部105には、それぞれ、端末装置13ないし端末装置13から送信されてきたパケットが入力されるので、占有率計算部105ないし占有率計算部105によって、端末装置13ないし端末装置13のそれぞれのチャネル占有率が計算される。続いて、占有率蓄積部106ないし占有率蓄積部106によって、端末装置13ないし端末装置13のそれぞれのチャネル占有率の計算結果が蓄積され、占有率予測部107ないし占有率予測部107によって、端末装置13ないし端末装置13のそれぞれのチャネル占有率が予測される。そして、占有率予測部107ないし占有率予測部107によって予測された端末装置13ごとの予測結果は、すべて、全体占有率予測部108に供給される。
【0054】
全体占有率予測部108には、占有率予測部107ないし占有率予測部107からの端末装置13ないし端末装置13ごとに予測されたチャネル占有率の予測結果が入力される。
【0055】
全体占有率予測部108は、端末装置13ないし端末装置13ごとに予測されたチャネル占有率の予測結果を集約して(足し合わせて)、全体のチャネル占有率を予測する。全体占有率予測部108により予測された全体のチャネル占有率の予測結果は、制御部100に供給される。
【0056】
制御部100は、全体占有率予測部108から供給される全体のチャネル占有率の予測結果に基づいて、所定の通信処理を行う。この通信処理としては、例えば、子通信装置12と端末装置13ないし端末装置13が、コグニティブ無線による通信を行っている場合、制御部100は、無線LAN通信部102を制御して、全体のチャネル占有率の予測結果から得られるプライマリシステムのチャネル占有率の最も低いチャネルに対して、そのプライマリシステムと周波数帯域を共用するセカンダリシステムを割り当てる処理を行う。
【0057】
なお、以下の説明では、占有率計算部105ないし占有率計算部105を個々に区別する必要がない場合、単に、占有率計算部105と称し、占有率蓄積部106ないし占有率蓄積部106を個々に区別する必要がない場合、単に、占有率蓄積部106と称し、占有率予測部107ないし占有率予測部107を個々に区別する必要がない場合、単に、占有率予測部107と称する。
【0058】
また、占有率計算部105ないし占有率計算部105、占有率蓄積部106ないし占有率蓄積部106、占有率予測部107ないし占有率予測部107のうち、任意のものを、それぞれ、占有率計算部105、占有率蓄積部106、占有率予測部107と称する。
【0059】
[チャネル占有率予測処理]
次に、図3のフローチャートを参照して、図2の子通信装置12により実行される、チャネル占有率予測処理について説明する。
【0060】
ステップS11において、制御部100は、無線LAN通信部102を制御して、子通信装置12の周辺に配置されている端末装置13の通信状況を監視する。すなわち、制御部100は、無線LAN通信部102を制御して、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)などのプロトコルにしたがって交換されるパケットを監視することにより、無線LAN通信を開始又は終了した端末装置13を特定できる。このとき、パケットヘッダ解析部103は、無線LAN通信部102により復調されたパケットのヘッダ情報を解析して、端末装置13を特定する識別子を抽出する。
【0061】
図4は、パケットのヘッダ情報の例を示す図である。
【0062】
図4に示すように、パケットは、データと、そのデータに付加されたヘッダ情報から構成される。ヘッダ情報には、図4に示すように、送信元の端末装置13のMACアドレスを示す送信元MACアドレス、宛先の機器のMACアドレスを示す宛先MACアドレス、IPのバージョンを示すIPバージョン、上位層の種別を示すプロトコル番号、送信元の端末装置13のIPアドレスを示す送信元IPアドレス、宛先の機器のIPアドレスを示す宛先IPアドレス、パケットの長さを示すパケット長、送信元の端末装置13のポートを示す送信元ポート、及び宛先の機器のポートを示す宛先ポートが格納される。
【0063】
図4のパケットのヘッダ情報のうち、送信元IPアドレスと送信元MACアドレスは、パケットの送信元の端末装置13を特定するための識別子となるため、例えば、パケットヘッダ解析部103は、ヘッダ情報の解析結果として、送信元IPアドレス又は送信元MACアドレスを分離部104に供給する。分離部104は、パケットヘッダ解析部103からの送信元IPアドレス又は送信元MACアドレスを用いて、パケットを送信してきた端末装置13ごとにパケットを分離し、対応する占有率計算部105に供給する。
【0064】
図3のフローチャートの説明に戻り、ステップS12において、制御部100は、通信状況の監視結果に基づいて、無線LAN通信を開始又は終了した端末装置13を検出したか否かを判定する。
【0065】
ステップS12において、無線LAN通信を開始又は終了した端末装置13が検出されていないと判定された場合(ステップS12の「No」)、処理は、ステップS13に進み、以降、端末装置13ごとの通常のチャネル占有率の予測処理が行われる。ここでは、説明の簡略化のため、任意の端末装置13に対するチャネル占有率の予測処理を代表して説明する。
【0066】
すなわち、ステップS13において、占有率計算部105は、分離部104から供給される、端末装置13のチャネル占有率を計算する。
【0067】
ここで、図5を参照して、時間経過に対する無線環境の使用率であるチャネル占有率(時間占有率)の計算方法について説明する。
【0068】
図5に示すように、所定のチャネルにおいて、例えば、集計時間Δtの間に、時間t、時間t、時間tにパケットが伝送された場合、チャネル占有率は、下記の式(1)により計算される。
【0069】
チャネル占有率=(t+t+t)/Δt・・・(1)
【0070】
なお、式(1)において、パケットの伝送時間tは、t=パケット長/伝送レートにより求めることができる。
【0071】
図3のフローチャートの説明に戻り、ステップS14において、占有率蓄積部106は、占有率計算部105により計算された端末装置13のチャネル占有率を蓄積する。
【0072】
ステップS15において、占有率予測部107は、占有率計算部105により計算された端末装置13のチャネル占有率に基づいて、端末装置13のチャネル占有率を予測する。
【0073】
ステップS16において、全体占有率予測部108は、占有率予測部107により予測された端末装置13のチャネル占有率の予測結果を集約する。
【0074】
ステップS16の処理が終了すると、ステップS17において、全ての端末装置13の予測結果を集約したかが判定され、まだ、全ての端末装置13についての予測結果の集約が終了していないと判定された場合(ステップS17の「No」)、処理は、ステップS11に戻る。
【0075】
そして、上述したように、ステップS11において、周辺に配置されている端末装置13の通信状況が監視され、無線LAN通信を開始又は終了した端末装置13が検出されていないと判定された場合(ステップS12の「No」)、上述したステップS11ないしS17の処理が繰り返される。すなわち、端末装置13ごとのチャネル占有率が計算されて蓄積されるとともに、端末装置13ごとのチャネル占有率が予測式により予測され、集約される。
【0076】
このチャネル占有率の予測には、例えば、ARモデル(Autoregressive model)を用いたチャネル占有率の予測式を適用することができる。すなわち、端末装置13ごとに予測されたチャネル占有率を集約するARモデルを用いた予測式は、下記の式(2)のように表される。
【0077】
【数2】

【0078】
:時刻tのチャネル占有率の予測値(左辺)
φ(k):k番目の端末装置13(ユーザ)のチャネル占有率の自己回帰係数
X(k):時刻tのk番目の端末装置13(ユーザ)のチャネル占有率
b(k):平均0、分散Vの正規分布
p:自己回帰の次数
N:端末装置13(ユーザ)の数
【0079】
すなわち、式(2)においては、端末装置13ごとに予測パラメータが決定されるため、全体の予測精度を向上させることができる。
【0080】
例えば、式(2)のような、端末装置13ごとに予測パラメータを決定する手法ではなく、下記の式(3)のように、全体チャネルでのARモデルを用いたチャネル占有率を予測する手法であると、チャネル全体と異なるトラヒックを持つ端末装置13が存在する場合などにチャネル占有率を予測しきれないことも考えられ、チャネル占有率の予測精度が低下する可能性がある。
【0081】
【数3】

【0082】
t:時刻tのチャネル占有率の予測値(左辺)
φi:全体チャネル占有率の自己回帰係数
t:時刻tの実際のチャネル占有率
b:平均0、分散Vの正規分布
p:自己回帰の次数
【0083】
以上のように、本発明では、チャネル占有率の予測手法として、ARモデルを用いた予測法を適用するに際し、周囲の端末装置13(ユーザ)ごとにチャネル占有率の予測を行い、その予測結果を足し合わせることで、チャネル全体の占有率を予測している。
【0084】
図3のフローチャートの説明に戻り、ステップS17において、全ての端末装置13の予測結果を集約したと判定された場合、処理は、ステップS18に進む。
【0085】
ステップS18において、全体占有率予測部108は、全体のチャネル占有率予測結果を制御部100に出力する。
【0086】
ステップS19において、制御部100は、全体占有率予測部108から出力された全体のチャネル占有率予測結果(次のフレームのチャネル占有率予測結果)に基づいて、所定の通信処理を行う。
【0087】
例えば、制御部100は、全体のチャネル占有率の予測結果から得られるプライマリシステムのチャネル占有率に基づいて、所定のチャネルに対して、プライマリシステムと周波数帯域を共用するセカンダリシステムが割り当てられるように、無線LAN通信部102を制御する。
【0088】
図6は、プライマリシステムのチャネル占有率の予測結果に基づいたセカンダリシステムの割り当てについて説明する図である。
【0089】
図6には、全体占有率予測部108により予測された全体のチャネル占有率の予測結果として、3つのチャネル(チャネル1ないしチャネル3)のチャネル占有率が図示されている。
【0090】
チャネル1は、チャネル占有率が60%であり、チャネル全体のうち、60%がプライマリシステムにより使用されている。また、チャネル2では、チャネル占有率が20%であり、その20%のチャネルがプライマリシステムに使用され、チャネル3では、チャネル占有率が80%であり、その80%のチャネルがプライマリシステムに使用されている。
【0091】
ここで、チャネル占有率80%のチャネル3にセカンダリシステムを割り当ててしまうと、プライマリシステムに干渉を与える可能性が高くなる一方、チャネル占有率20%のチャネル2にセカンダリシステムを割り当てると、プライマリシステムに干渉を与える可能性は低くなる。
【0092】
そこで、制御部100は、コグニティブ無線による通信により、プライマリ・セカンダリシステム共用を行う場合、チャネル1ないしチャネル3のうち、プライマリシステムのチャネル占有率の最も低いチャネル2に対して、セカンダリシステムが割り当てられるようにする。これにより、プライマリシステムに干渉を与える確率の最も低いチャネル2に、セカンダリシステムを割り当てることができるため、プライマリシステムを確実に保護することができる。換言すれば、制御部100は、無線LAN通信部102を制御して、チャネル占有率に基づいたプロトコル制御により、プライマリシステムを保護しつつセカンダリシステムを運用することが可能となる。
【0093】
より具体的には、例えば、無線LAN通信として、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.11b規格を使用する場合、IEEE802.11b規格では、2.4GHzの周波数帯域が使用され、1chないし14chの14個が利用可能なチャネルとなるが、1chないし14chのうち、プライマリシステムのチャネル占有率の最も低いチャネルに、セカンダリシステムが割り当てられることになる。また、例えば、プライマリシステムが既存の無線LAN通信であり、セカンダリシステムが別の無線システム(例えば無線LAN通信や小さなセルラーシステムなど)で構成される場合において、通信装置は、セカンダリシステムのチャネル占有率の予測を行うようにしてもよい。この場合には、セカンダリシステムを構成する端末装置ごとにチャネル占有率が予測され、それらを集約することで、全体のチャネル占有率予測結果が得られる。このように、本発明の通信装置では、プライマリシステムやセカンダリシステムなどにとらわれることなく、端末装置ごとにチャネル占有率の予測を行って、所望のチャネル占有率予測結果を得ることができる。
【0094】
ステップS19の処理が終了すると、処理は、ステップS20に進み、チャネル占有率予測を終了するか否かが判定される。ステップS21において、チャネル占有率予測を継続すると判定された場合(ステップS20の「No」)、ステップS11に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0095】
そして、ステップS12において、無線LAN通信を開始又は終了した端末装置13が検出されたと判定された場合(ステップS12の「Yes」)、処理は、ステップS21に進む。そして、ステップS21,S16において、占有率予測部107及び全体占有率予測部108は、修正予測式によりチャネル占有率を予測して、予測結果を集約する。
【0096】
例えば、無線LAN通信を終了した端末装置13が検出された場合、占有率予測部107は、該当する端末装置13のチャネル占有率の予測を中止する。具体的には、上記の式(2)において、該当する端末装置13のチャネル占有率の自己回帰係数をゼロにする(φ(k)=0)ことで、全体占有率予測部108によって、該当する端末装置13の予測結果が集約されるとき(ステップS16の処理)、該当する端末装置13の予測のみが中止されることになる。
【0097】
図7は、チャネル占有率予測精度の推移の例を示す図である。
【0098】
図7において、横軸は時間、縦軸はチャネル占有率をそれぞれ示している。また、図中の記号のうち、菱形は実際のチャネル占有率、四角は全体のチャネル占有率、三角は端末装置13(ユーザ)のチャネル占有率を示している。
【0099】
ここで、時刻tにおいて、チャネルの65%程度の割合を使用していた端末装置13での無線LAN通信が終了した場合、矢印Aで囲まれた領域で示すように、時刻t以降のユーザトラヒックが大きく変化することになる。このような場合でも、端末装置13ごとに予測を行って、該当する端末装置13の予測を中止することで、急な変化に対しても迅速に対応して、予測精度を向上させることができる。また、詳細は、「2.変形例」で説明するが、端末装置13で実行されているアプリケーションごとのチャネル占有率を予測することで、端末装置13側のアプリケーション層とも連携して、予測の精度をさらに改善することができる。
【0100】
なお、図7のチャネル占有率の推移の例は、ユーザ5名(5台の端末装置13)による実際の実験で得られたデータに基づいたユーザトラヒックとチャネルトラヒックのポアソンモデルを図示したものである。
【0101】
また、例えば、無線LAN通信を開始した端末装置13が検出された場合、全体占有率予測部108は、占有率予測部107を介して占有率蓄積部106に蓄積された過去のチャネル占有率を取得し、計測された過去のチャネル占有率の最大値を求める。そして、全体占有率予測部108は、過去のチャネル占有率の最大値を、予測するチャネル占有率であるとみなして、制御部100に出力する(ステップS18の処理)。この場合のチャネル占有率は、下記の式(4)により求められる。
【0102】
【数4】

【0103】
さらに、この処理と並行して、占有率予測部107は、無線LAN通信を開始した端末装置13の自己回帰係数(φ(k))を求める。そして、新たに無線LAN通信を開始した端末装置13について、一定の情報が集まった段階で、全体占有率予測部108は、チャネル占有率の推測を、過去のチャネル占有率の最大値から、自己回帰係数による予測(上記の式(2)による予測)に切り替える。
【0104】
このように、無線LAN通信を開始した端末装置13が検出された場合、いきなり上記の式(2)を用いた予測を開始するのではなく、はじめはチャネル占有率が高めの予測を立てることで、チャネル占有率を低く見積もってしまうことを回避できる。
【0105】
図3のフローチャートの説明に戻り、ステップS20において、チャネル占有率予測を終了すると判定された場合(ステップS20の「Yes」)、図3のチャネル占有率予測処理は終了する。
【0106】
以上のように、無線環境は時々刻々変化するため、現時点での無線環境情報のみでは不十分であり、チャネル占有率の予測精度を向上させることが求められているが、端末装置13ごとにチャネル占有率の予測を行うことで、全体のチャネル占有率の予測精度を向上させることができる。その結果、例えば、プライマリ・セカンダリシステムを共用で用いる場合には、プライマリシステムのチャネル占有率が求められれば、セカンダリシステムが利用可能な無線リソースが明確化されるため、その精度が向上した予測結果を用いてセカンダリシステムを割り当てることで、プライマリシステムを確実に保護することができる。また、より効率的なセカンダリシステムの運用も可能となる。
【0107】
また、特定の端末装置13(ユーザ)のトラヒックが大きく変化する環境では、チャネル全体のトラヒックの変化を監視してしまうと、チャネル占有率の予測が困難であるとの問題があったが、端末装置13ごとにチャネル占有率の予測を行うことで、ユーザのトラヒック追従性を改善することができる。
【0108】
<2.変形例>
以上の説明では、ヘッダ情報に格納された送信元IPアドレス又は送信元MACアドレスなどの端末装置13を特定する識別子を用いて、端末装置13ごとのチャネル占有率を予測する例について説明したが、例えば、ヘッダ情報に格納されたポート番号などの端末装置13で実行されているアプリケーションを特定する識別子を用いて、端末装置13で実行されているアプリケーションごとのチャネル占有率を予測することも可能である。
【0109】
すなわち、TCP/IP通信では、IPアドレス(MACアドレス)などにより通信する端末装置13を特定してから、ポート番号などにより通信するアプリケーションを特定するため、それらの識別子を用いることで、アプリケーションごとのチャネル占有率を予測することが可能となる。この場合、チャネル占有率は、端末装置13ごとではなく、その端末装置13で実行されているアプリケーション単位で計算・予測されることになるため、端末装置単位で予測するよりも、より細かい単位でチャネル占有率の予測を行うことができる。
【0110】
なお、アプリケーションを特定するための情報としては、上述したポート番号に限らず、プライマリシステムの端末装置13から通知されるアプリケーションの停止や開始に関する情報を用いることも可能である。この場合、プライマリシステムの端末装置13から所定の情報を載せたパケットが通知されることで、通信装置側でアプリケーションの停止や開始を判定することが可能となる。
【0111】
特に、特定の端末装置13において、ユーザによってアプリケーションの終了が指示されて、データレートが急激に下がった場合や、ユーザが新たにアプリケーションを起動したりして、急に無線LAN通信が開始された場合などは、チャネル占有率の予測がさらに困難なものとなる。そのような場合であっても、端末装置13ごとのチャネル占有率の予測において、上位層であるアプリケーションに関する情報(アプリケーションの起動又は終了の情報)やネットワークのパケット交換の状況に関する情報(例えばTCP/IPに関する情報やデータレートの変更情報など)などを利用して、端末装置13の通信状況を監視して、その通信状況に応じて、チャネル占有率の予測に用いられる、過去に蓄積された値や初期値などを適切に設定して、チャネル占有率の予測の精度を改善させることができる。また、端末装置13側のアプリケーション層などの上位層と連携することで、端末装置13から送信される電波信号の大きな変化に対して追従することが可能となる。
【0112】
また、以上の説明では、端末装置13ごとにチャネル占有率を集約して得られる全体のチャネル占有率予測結果を用いた通信処理として、コグニティブ無線による通信において、プライマリ・セカンダリシステムを共用で用いる場合について説明したが、全体のチャネル占有率予測結果によれば、チャネル占有率に応じた利用帯域の選択・組み合わせが可能となるため、他の通信処理に用いることができる。例えば、適応的な空きチャネルの選択や、有線ネットワークのトラヒック予測、次世代無線LAN、車車間通信システム、次世代無線分散システムなど、チャネル占有率を用いるものであれば、いずれにも適用することができる。また、近年、家屋等の建物内に配線されている電力線を介して電力線通信装置間のデータ通信である電力線通信を行うことが検討されているが、この電力線通信にも適用することができる。
【0113】
また、以上の説明では、無線LAN通信として、IEEE802.11b規格について説明したが、2.4GHzの周波数帯域を使用するIEEE802.11g規格など、他の無線LAN通信の規格でも同様に適用することができる。具体的には、IEEE802.11g規格の場合には、チャネル数は、1chないし13chの13個となるので、例えば、1chないし13chのうち、プライマリシステムのチャネル占有率の最も低いチャネルに、セカンダリシステムが割り当てられることになる。
【0114】
なお、通信とは、無線通信及び有線通信は勿論、無線通信と有線通信とが混在した通信、すなわち、ある区間では無線通信が行われ、他の区間では有線通信が行われるようなものであってもよい。さらに、ある装置から他の装置への通信が有線通信で行われ、他の装置からある装置への通信が無線通信で行われるようなものであってもよい。
【0115】
また、通信装置は、独立した装置であってもよいし、情報処理装置の通信処理を行うブロックであってもよい。
【0116】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、又は、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のコンピュータ等に、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0117】
図8は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータの構成の例を示すブロック図である。CPU(Central Processing Unit)211は、ROM(Read Only Memory)212、又は記録部218に記録されているプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM(Random Access Memory)213には、CPU211が実行するプログラムやデータ等が適宜記憶される。これらのCPU211、ROM212、及びRAM213は、バス214により相互に接続されている。
【0118】
CPU211にはまた、バス214を介して入出力インターフェース215が接続されている。入出力インターフェース215には、マイクロホン等よりなる入力部216、ディスプレイ、スピーカ等よりなる出力部217が接続されている。CPU211は、入力部216から入力される指令に対応して各種の処理を実行する。そして、CPU211は、処理の結果を出力部217に出力する。
【0119】
入出力インターフェース215に接続されている記録部218は、例えばハードディスクからなり、CPU211が実行するプログラムや各種のデータを記録する。通信部219は、インターネットやローカルエリアネットワーク等のネットワークを介して外部の装置と通信する。
【0120】
また、通信部219を介してプログラムを取得し、記録部218に記録してもよい。
【0121】
入出力インターフェース215に接続されているドライブ220は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等のリムーバブルメディア221が装着されたとき、それらを駆動し、そこに記録されているプログラムやデータ等を取得する。取得されたプログラムやデータは、必要に応じて記録部218に転送され、記録される。
【0122】
コンピュータにインストールされ、コンピュータによって実行可能な状態とされるプログラムを格納するプログラム記録媒体は、図8に示すように、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリ等よりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア221、又は、プログラムが一時的もしくは永続的に格納されるROM212や、記録部218を構成するハードディスク等により構成される。プログラム記録媒体へのプログラムの格納は、必要に応じてルータ、モデム等のインターフェースである通信部219を介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線又は無線の通信媒体を利用して行われる。
【0123】
なお、本明細書において、記録媒体に格納されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0124】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0125】
さらに、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 無線LANシステム, 11 親通信装置, 12 子通信装置, 13 端末装置, 100 制御部, 101 アンテナ, 102 無線LAN通信部, 103 パケットヘッダ解析部, 104 分離部, 105 占有率計算部, 106 占有率蓄積部, 107 占有率予測部, 108 全体占有率予測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の端末装置から送信されるパケットを受信する受信手段と、
受信された前記パケットのヘッダ情報から前記端末装置を特定する識別子を抽出する抽出手段と、
抽出された前記識別子により特定される前記端末装置ごとのチャネル占有率を計算する計算手段と、
前記端末装置ごとのチャネル占有率の計算結果に基づいて、前記端末装置ごとのチャネル占有率を予測する端末占有率予測手段と、
前記端末装置ごとのチャネル占有率の予測結果を集約して、全体のチャネル占有率を予測する全体占有率予測手段と、
全体のチャネル占有率の予測結果に基づいて、所定の通信処理を行う処理手段と
を備える通信装置。
【請求項2】
前記通信装置と前記端末装置は、コグニティブ無線による通信を行っており、
前記処理手段は、全体のチャネル占有率の予測結果から得られるプライマリシステムのチャネル占有率の最も低いチャネルに対して、前記プライマリシステムと周波数帯域を共用するセカンダリシステムを割り当てる
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記端末占有率予測手段は、1又は複数の前記端末装置の中から、無線通信を終了した特定の端末装置が検出された場合、前記特定の端末装置に対するチャネル占有率の予測を中止し、
前記全体占有率予測手段は、中止された前記特定の端末装置のチャネル占有率の予測以外のチャネル占有率の予測結果を集約して、全体のチャネル占有率を予測する
請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記端末装置ごとのチャネル占有率の計算結果を蓄積する蓄積手段をさらに備え、
前記全体占有率予測手段は、新たに無線通信を開始した端末装置が検出された場合、蓄積された過去のチャネル占有率の最大値を、予測する全体のチャネル占有率であるとみなし、その後、前記端末占有率予測手段により、新たに無線通信を開始した端末装置についての一定のチャネル占有率が予測されたとき、前記端末装置ごとのチャネル占有率の予測結果を集約して、全体のチャネル占有率を予測する
請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
全体のチャネル占有率は、k番目の前記端末装置のチャネル占有率の自己回帰係数をφ(k)とし、時刻tのk番目の前記端末装置のチャネル占有率をX(k)とし、平均0、分散Vの正規分布をb(k)とし、自己回帰の次数をpとし、前記端末装置の数をNとしたとき、ARモデル(Autoregressive model)を用いて、
【数1】


により予測される
請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記識別子は、前記ヘッダ情報に格納された前記端末装置のIP(Internet Protocol)アドレス又はMAC(Media Access Control)アドレスである
請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記ヘッダ情報には、前記端末装置で実行されているアプリケーションを特定する識別子がさらに含まれており、
前記計算手段は、前記識別子により特定される前記端末装置で実行されているアプリケーションごとのチャネル占有率を計算し、
前記端末占有率予測手段は、前記端末装置のアプリケーションごとのチャネル占有率の計算結果に基づいて、前記端末装置のアプリケーションごとのチャネル占有率を予測し、
前記全体占有率予測手段は、前記端末装置のアプリケーションごとのチャネル占有率の予測結果を集約して、全体のチャネル占有率を予測する
請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記識別子は、前記ヘッダ情報に格納された前記端末装置のIPアドレス又はMACアドレス、及びポート番号である
請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
通信装置が、
1又は複数の端末装置から送信されるパケットを受信し、
受信された前記パケットのヘッダ情報から前記端末装置を特定する識別子を抽出し、
抽出された前記識別子により特定される前記端末装置ごとのチャネル占有率を計算し、
前記端末装置ごとのチャネル占有率の計算結果に基づいて、前記端末装置ごとのチャネル占有率を予測し、
前記端末装置ごとのチャネル占有率の予測結果を集約して、全体のチャネル占有率を予測し、
全体のチャネル占有率の予測結果に基づいて、所定の通信処理を行う
ステップを含む通信方法。
【請求項10】
1又は複数の端末装置から送信されるパケットを受信する受信手段と、
受信された前記パケットのヘッダ情報から前記端末装置を特定する識別子を抽出する抽出手段と、
抽出された前記識別子により特定される前記端末装置ごとのチャネル占有率を計算する計算手段と、
前記端末装置ごとのチャネル占有率の計算結果に基づいて、前記端末装置ごとのチャネル占有率を予測する端末占有率予測手段と、
前記端末装置ごとのチャネル占有率の予測結果を集約して、全体のチャネル占有率を予測する全体占有率予測手段と、
全体のチャネル占有率の予測結果に基づいて、所定の通信処理を行う処理手段と
して、コンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−217107(P2011−217107A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83167(P2010−83167)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、「コグニティブ無線のためのインテリジェントMACレイヤ技術に関する研究開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】