説明

通信装置及び通信制御方法

【課題】 非接触通信において同調周波数ずれにより非接触通信がエラーになる状態の発生を少なくする。
【解決手段】
携帯電話端末は、少なくとも非接触通信のリーダライタ機能を有する非接触ICカードリーダライタ機能部20を有し、また、異なる周波数で発振可能な発振器32を有している。リーダライタとして動作する時、携帯電話端末の制御部10は、非接触ICカードリーダライタ機能部20から供給される信号により、非接触ICカードとの間で非接触通信が正常に行われるか否か判断し、当該非接触通信が正常に行われないと判断した場合に、発振器32を制御して、非接触ICカードリーダライタ機能部20へ入力される発振信号の周波数を変更し、その周波数変更後の発振信号を用いて再度非接触通信が正常に行われるか判断する処理を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる非接触ICカードに対して搬送信号を送信すると共に信号の送受信を行う非接触ICカードリーダライタ機能を少なくとも備えた通信装置及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、いわゆる電磁誘導を利用して非接触状態にてデータ通信を行う非接触通信システムが広く普及しており、この非接触通信システムにより、例えば通貨を用いない金銭取引や交通機関の自動改札制御などが実用化されている。
【0003】
上記非接触通信は、予め規格化された搬送周波数(例えば13.56MHz)を用い、非接触ICカードと非接触ICカードリーダライタ(以下単にリーダライタと表記する。)との間で信号の送受信が行われることにより実現されている。すなわち、リーダライタ側からは、13.56MHzの搬送波信号の送出及びデータ通信を行い、一方、非接触ICカード側ではリーダライタから送られた搬送波信号に同調して動作すると共にデータ通信を行う。
【0004】
また、非接触通信を用いた従来の技術として、特開2006−279813号の公開特許公報(特許文献1)には、ICカード機能を有する通信端末との間で近距離無線通信を行うリーダライタにおいて、通信端末との距離を推定し、その推定した距離に応じて、同調周波数をシフトさせることにより、通信端末とリーダライタとが非常に近接した場合にヌル状態が発生することを回避するようにした技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−279813公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非接触通信システムは、当初は非接触ICカードとそれに対応したリーダライタのみにより構築されていたが、最近は、非接触ICカード機能を搭載した携帯電話端末、さらには、非接触ICカード機能だけでなくリーダライタ機能をも搭載した携帯電話端末までも登場している。すなわち、非接触通信機能は、様々な機器に搭載されるようになりつつある。
【0007】
このように非接触通信機能が多種多様な機器に搭載されるようになった場合に発生する問題点の一つとして、非接触ICカード側とリーダライタ側の近接により同調周波数がずれてしまい非接触通信が失敗するという問題が挙げられる。特に、携帯電話端末のように、金属部品が多く使われている装置に上記非接触ICカード機能やリーダライタ機能を搭載した場合、それら金属部品により非接触通信用のアンテナが影響を受け、同調周波数がずれ易くなってしまう。なお、上述のように非接触通信が失敗した場合、ユーザは、例えば、携帯電話端末と非接触カード若しくはリーダライタとの間の距離を自ら調整するなどし、再度通信を試みるような非常に煩わしい作業を行わなければならなくなる。
その他、上述した特開2006−279813号の公開特許公報(特許文献1)では、リーダライタにて出力搬送周波数をシフトさせることで同調周波数のずれによるヌル状態の発生を回避するようになされている。しかしながら、この公報記載の技術の場合、周波数をシフトさせるための複雑な回路構成が必要となり、それが装置の小型化の妨げになり、またコストの上昇も招いてしまう。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、非接触通信において同調周波数ずれにより非接触通信がエラーになる状態の発生を少なくすることを可能とする通信装置及び通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の通信装置は、搬送信号の周波数に同調して通信を行う非接触通信端末に対して搬送信号を送信し、その非接触通信端末との間でデータ通信を行う通信装置であり、それぞれ異なる周波数の複数の発振信号を生成するための発振信号生成部と、入力された発振信号から搬送信号を生成して非接触通信端末へ送信すると共に当該非接触通信端末との間で搬送信号を用いた非接触通信を行うための非接触通信部と、非接触通信部から供給される信号により、当該非接触通信部と非接触通信端末との間で非接触通信が正常に行われるか否か判断し、当該非接触通信が正常に行われない場合に、発振信号生成部を制御して、非接触通信部へ入力される発振信号の周波数を変更し、その周波数変更後の発振信号を用いて再度非接触通信が正常に行われるか判断する処理を繰り返す制御部とを有することにより、上述した課題を解決する。
【0010】
また、本発明の通信制御方法は、搬送信号の周波数に同調して通信を行う非接触通信端末に対して、搬送信号を送信し、その非接触通信端末との間でデータ通信を行う通信装置の通信制御方法であり、非接触通信端末との間で搬送信号を用いた非接触通信を行うための非接触通信部が、それぞれ異なる周波数の複数の発振信号を生成可能な発振信号生成部より入力された発振信号から、搬送信号を生成して非接触通信端末へ送信するステップと、非接触通信部から供給される信号により、当該非接触通信部と非接触通信端末との間で非接触通信が正常に行われるか否かを制御部が判断するステップと、当該非接触通信が正常に行われないと判断した場合に、発振信号生成部を制御して、非接触通信部へ入力される発振信号の周波数を変更し、その周波数変更後の発振信号を用いて再度非接触通信が正常に行われるか判断する処理を繰り返すステップとを有することにより、上述した課題を解決する。
【0011】
すなわち、本発明によれば、或る周波数の搬送信号による非接触通信が正常に行われない場合、その搬送信号の周波数を別の周波数に変更して再度非接触通信を試みる処理を繰り返すことにより、同調周波数がずれた場合にその周波数ずれに追従できるようにしている。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、非接触通信が正常に行われない場合に、搬送信号の周波数を遷移させて、その周波数の搬送信号による非接触通信を試みる処理を繰り返すことにより、非接触通信において同調周波数ずれにより非接触通信がエラーになる状態の発生を少なくすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
なお、以下の実施形態では、本発明の通信装置及び通信制御方法の適用例として、非接触ICカード機能と非接触ICカードリーダライタ機能の両方を備えた携帯電話端末を挙げているが、勿論、ここで説明する内容はあくまで一例であり、本発明はこの例に限定されないことは言うまでもない。
【0015】
〔携帯電話端末の基本構成〕
図1には、非接触ICカード機能とリーダライタ機能の両方を備えた携帯電話端末の基本的な内部構成を示す。
【0016】
図1において、通信アンテナ12は、例えば内蔵アンテナであり通話やパケット通信のための信号電波の送受信を行う。通信回路11は、送受信信号の周波数変換、変調と復調等を行う。
【0017】
制御部10は、CPUからなり、通信回路11における通信の制御、音声処理及びその制御、画像処理及びその制御、非接触通信の制御、その他各種信号処理や各部の制御を行う。また、制御部10は、上記メモリ部15のプログラム蓄積部16に蓄積されている各種のアプリケーションプログラムの実行等も行う。
【0018】
スピーカ18は、携帯電話端末に設けられている受話用のスピーカやリンガ(着信音)、アラーム音、警告音、再生音楽、ディジタル音声、再生動画像の音声等の出力用スピーカであり、音源制御部17から供給された音声信号を音響波に変換して空気中に出力する。
【0019】
マイクロホン19は、送話用及び外部音声集音用のマイクロホンであり、音響波を音声信号に変換し、その音声信号を音源制御部17に送る。
【0020】
音源制御部17は、制御部10の音声処理により生成されてデータラインを介して供給された音声データをディジタル/アナログ変換した後増幅し、その増幅後の音声信号を上記スピーカ18へ出力する。また、音源制御部17は、マイクロホン19から供給された入力音声信号を増幅及びアナログ/ディジタル変換し、そのアナログ/ディジタル変換後の音声データを、データラインを介して制御部10へ送る。
【0021】
表示部13は、例えば液晶ディスプレイ等の表示デバイスと、そのディスプレイの表示駆動回路とを含み、上記ディスプレイ上に文字や各種メッセージ、静止画像や動画像等を表示する。
【0022】
操作部14は、本実施形態の携帯電話端末の図示しない筐体上に設けられているテンキーや発話キー、終話/電源キー等の各キーや十字キー,ジョグダイヤル等の各操作子と、それら操作子が操作された時の操作信号を発生する操作信号発生器とからなる。
【0023】
メモリ部15は、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)を含む。ROMは、NAND型フラッシュメモリ(NAND-type flash memory)のような書き換え可能な記憶媒体を含み、例えば、OS(Operating System)のプログラムや制御部10が各部を制御するための制御プログラム、各種のアプリケーションプログラム、圧縮符号化された楽曲データコンテンツや動画像データコンテンツの他、各種の初期設定値、フォントデータ、各辞書データ、機種名情報や端末識別情報などをも記憶する。RAMは、制御部10が各種のデータ処理を行う際の作業領域として、随時データを格納する。また、メモリ部15は、非接触通信によりやり取りされるデータの記憶等も行う。なお、メモリ部15には、着脱可能な外部メモリカードを含んでいてもよい。
【0024】
非接触ICカードリーダライタ機能部20は、非接触ICカード機能とリーダライタ機能とを備えた非接触通信処理部であり、集積回路(IC)により形成されている。当該非接触ICカードリーダライタ機能部20は、非接触通信の専用アンテナ21を通じて非接触通信を行う。この非接触ICカードリーダライタ機能部20における非接触通信時の詳細な動作については後述する。
【0025】
その他、図1には図示を省略しているが、本発明の携帯電話端末は、写真画像の撮影のためのディジタルカメラ部、キー照明や着信ライト用などのLED(発光ダイオード)とその駆動部、各部へ電力を供給するバッテリとその電力をコントロールするパワーマネージメントIC部、いわゆるブルートゥース方式(Bluetooth:登録商標)やUWB(Ultra Wide Band)方式、無線LAN(Local Area Network)などによる近距離無線通信を行うための近距離無線通信部、GPS(Global Positioning System)通信部、外部メモリ用スロット、ディジタル放送の受信チューナ部とAVコーデック部、タイマ(時計部)など、一般的な携帯電話端末に設けられる各構成要素についても備えている。
【0026】
〔非接触ICカードリーダライタ機能部の動作〕
非接触ICカードリーダライタ機能部20は、制御ラインを通じて制御部10に接続され、また、データラインを通じてメモリ部16や制御部10に接続されており、制御部10から制御ラインを介して受け取った制御情報に従い、例えば機密性のあるデータを、非接触通信専用アンテナ21を通じて送受信する。
【0027】
また、非接触ICカードリーダライタ機能部20は、制御部10からの制御を受けずに独立して動作することも可能となされており、その為に、電源ラインを通じて常に電源が供給されている。
【0028】
そして、非接触ICカードリーダライタ機能部20は、非接触ICカードとして動作する場合には、非接触通信の通信相手方から供給される搬送波信号の周波数に同調するようにして通信を行い、一方、リーダライタとして動作する場合には、非接触通信専用に設けられた発振器30が出力する基準周波数の発振信号に基づいて搬送波信号を作り出し、その搬送波信号を用いてデータの送受信を行う。すなわち、当該非接触通信専用発振器30が出力する基準周波数の発振信号に基づいて作られる搬送波信号の周波数は、13.56MHzとなる。
【0029】
また、非接触ICカードリーダライタ機能部20は、非接触ICカードとの間で行われる非接触通信に関する信号、例えば、非接触ICカードとの間で非接触通信が正常に行われているか否かを示す信号や例えば再送信が発生した場合にはその旨を示す信号などを生成し、それら信号を制御部10へ出力することも行う。これにより、制御部10は、非接触通信がどのような状態であるのか(成功しているのかや失敗したのか、再送信が行われたか等)を知ることができる。
【0030】
なお、非接触ICカードリーダライタ機能部20の内部回路構成については、非接触通信専用の発振器30からの基準信号により動作する既存の構成と同じであるためその内部構成の図示及び説明については省略する。
【0031】
〔発振周波数の遷移・第1の実施形態〕
ここで、本実施形態の携帯電話端末は、特にリーダライタとして動作する場合において、当該リーダライタ機能が起動された後、非接触ICカード側から返答が無い場合やエラーが返信されてきた場合には、非接触ICカードリーダライタ機能部20へ供給される発振信号の周波数を遷移させることで、非接触通信の相手方の同調周波数に合わせるような動作を実行することにより、非接触通信が完全にエラーになってしまう状態の発生を少なくすることを可能としている。
【0032】
図2には、本発明の第1の実施形態として、本実施形態の携帯電話端末をリーダライタとして動作させる際に、非接触ICカードリーダライタ機能部20へ供給する発振信号の周波数を遷移可能とする構成例を示す。なお、当該図2において、図1と同じ指示符号が付された各構成要素は図1のものと同一であり、それらの説明は省略する。
【0033】
図2の構成の場合、図1で非接触通信専用発振器30となされていた構成要素は、電圧制御発振器32となっている。そして、本実施形態によれば、制御部10が当該電圧制御発振器32の制御電圧値を制御することにより、上記非接触ICカードリーダライタ機能部20へ供給される発振信号の周波数遷移が可能となっている。なお、電圧制御発振器32の発振周波数をどのように遷移させるかについては後述する。
【0034】
すなわち、この図2の構成では、制御部10が電圧制御発振器32を制御し、当該電圧制御発振器32から出力される発振信号の周波数を所望の周波数に遷移させることにより、上記非接触ICカードリーダライタ機能部20にて作られる搬送波信号の周波数を所望の周波数へシフトさせる。言い換えると、当該非接触ICカードリーダライタ機能部20にて作られる搬送波信号の周波数を、非接触通信の相手方の同調周波数に合うようにシフトさせる。これにより、非接触通信がエラーになる状態の発生を少なくすることが可能となる。
【0035】
〔発振周波数の遷移・第2の実施形態〕
次に、図3には、本発明の第2の実施形態として、非接触ICカードリーダライタ機能部20へ供給する発振信号の周波数を遷移可能とする他の構成例を示す。なお、当該図3において、図1と同じ指示符号が付された各構成要素は図1のものと同一であり、それらの説明は省略する。
【0036】
図3の構成では、図1に示した非接触通信専用発振器30が出力する基準周波数の発振信号をミキサ31へ供給し、またこのミキサ31には別の周波数で発振する発振器33からの発振信号を供給し、当該ミキサ31にて上記非接触通信専用発振器30の発振信号に発振器33からの発振信号をミキシングすることにより、上記非接触ICカードリーダライタ機能部20へ供給する発振信号の周波数を遷移させることを可能としている。なお、電圧制御発振器32の発振周波数をどのように遷移させるかについては後述する。
【0037】
ここで、上記別の発振器33は、当該携帯電話端末内に搭載されている他の構成要素が使用するクロック信号を発生させるために設けられた発振器を用いることができる。また本実施形態において、当該他の構成要素が使用する発振器は、それぞれ異なる周波数の発振信号を出力する複数の発振器となっている。なお、それら複数の発振器としては、一例として、制御部10のCPU用のクロックを発生する発振器や、タイマ用のクロックを発生する発振器、音源用のクロックを発生する発振器などを挙げることができる。そして、それら複数の発振器のそれぞれ異なる周波数の発振信号のうちの何れかを選択的にミキサ31へ供給すれば、当該ミキサ31から非接触ICカードリーダライタ機能部20へ送られる発振信号の周波数を変えることができる。このように、複数の発振器からの出力のうち何れかを選択的にミキサ31へ供給する場合の具体的構成例としては、例えば上記複数の発振器と上記ミキサ31との間に切換選択スイッチ(図示は省略する)などを設け、その切換選択スイッチを例えば制御部10が切換選択制御するような構成を挙げることができる。
【0038】
また、上記別の発振器33は、制御部10により制御される電圧制御発振器であっても良い。この場合、制御部10により制御された発振器33からの出力をミキサ31に供給することで、上記ミキサ31から非接触ICカードリーダライタ機能部20へ送られる発振信号の周波数を変えることができる。
【0039】
上述したように、図3の構成によれば、ミキサ31にて非接触通信専用発振器30の発振信号に別の発振器33からの発振信号をミキシングし、上記非接触ICカードリーダライタ機能部20に供給される発振信号の周波数を所望の周波数に遷移させることによって、当該非接触ICカードリーダライタ機能部20にて作られる搬送波信号の周波数を所望の周波数へシフト可能となされているため、当該非接触ICカードリーダライタ機能部20にて作られる搬送波信号の周波数を、非接触通信の相手方の同調周波数に合うようにシフトさせることができる。これにより、非接触通信がエラーになる状態の発生を少なくすることが可能となる。
【0040】
〔発振周波数の遷移・第3の実施形態〕
次に、図4には、本発明の第3の実施形態として、非接触ICカードリーダライタ機能部20へ供給する発振信号の周波数を遷移可能とする他の構成例を示す。なお、当該図4において、図3と同じ指示符号が付された各構成要素は図3のものと同一であり、それらの説明は省略する。
【0041】
図4の構成では、図1に示した非接触通信専用発振器30が出力する基準周波数の発振信号をミキサ31へ供給し、またこのミキサ31には別の周波数で発振する発振器34からの発振信号を分周器35にて分周した発振信号を供給し、当該ミキサ31にて上記非接触通信専用発振器30の発振信号に上記分周器35からの発振信号をミキシングすることにより、上記非接触ICカードリーダライタ機能部20へ供給する発振信号の周波数を遷移させることを可能としている。なお、電圧制御発振器32の発振周波数をどのように遷移させるかについては後述する。
【0042】
ここで、上記別の発振器34は、図3の例と同様に当該携帯電話端末内に搭載されている他の構成要素が使用するクロック信号を発生させるために設けられた発振器を用いることができる。但し、本実施形態の場合は、他の各構成要素が使用する複数の発振器である必要はなく、それらのうち何れか一つの発振器で良い。そして、本実施形態では、当該他の構成要素が使用する発振器から出力された発振信号を、分周器35にて所望の周波数に分周することにより、上記ミキサ31から上記非接触ICカードリーダライタ機能部20へ供給される発振信号の周波数を遷移させる。また、本実施形態において、上記分周器34は、例えば制御部10からの制御により、分周比を変更若しくは切り換え可能となされ、複数の周波数の何れかの分周信号を出力するものとなされている。
【0043】
この図4の構成によれば、別の発振器34の発振信号を分周器35にて分周した発振信号を、ミキサ31にて上記非接触通信専用発振器30の発振信号とミキシングすることで、上記非接触ICカードリーダライタ機能部20に供給される発振信号の周波数を所望の周波数に遷移させることによって、当該非接触ICカードリーダライタ機能部20にて作られる搬送波信号の周波数を所望の周波数へシフト可能となされているため、当該非接触ICカードリーダライタ機能部20にて作られる搬送波信号の周波数を、非接触通信の相手方の同調周波数に合うようにシフトさせることができる。これにより、非接触通信がエラーになる状態の発生を少なくすることが可能となる。
【0044】
なお、図4の例では、上記別の発振器34の出力を分周器35にて分周する例を挙げたが、分周器に変えて逓倍器を用いても良い。すなわち、この場合の逓倍器は、例えば制御部10からの制御により、逓倍比を変更若しくは切り換え可能となされ、複数の周波数の何れかの逓倍信号を出力するものとなされる。そして、この逓倍器の出力がミキサ31へ送られる。
【0045】
〔発振周波数遷移の例〕
図5には、本発明の各実施形態の携帯電話端末において、上述したように非接触カードリーダライタ機能部20へ供給する発振信号の周波数を遷移させる際の一例を示す。
【0046】
本発明の各実施形態の携帯電話端末は、リーダライタ機能を起動した後に、非接触ICカード側から返答が無い場合やエラーが返信されてきた場合、或いは非接触通信の再送信回数が増加して非接触通信が正常に行われていないことが判る場合には、非接触ICカードリーダライタ機能部20へ供給される発振信号の周波数を、図5に示すように順次遷移させ、それら各遷移後の発振周波数を用いて相手方との間で非接触通信を試みるような通信試行処理を実行する。
【0047】
すなわち、本発明の各実施形態の携帯電話端末は、非接触通信専用発振器30が出力する基準周波数を中心周波数とした非接触通信を試み、当該中心周波数での非接触通信において例えば非接触ICカード側から返答が無い場合やエラーが返信されてきた場合のように非接触通信が正常に行われていない場合には、先ず、図5に示すように、例えば中心周波数から−20kHzだけ低い周波数に遷移させた発振信号を上記非接触カードリーダライタ機能部20へ供給する。ここで、当該−20kHzの発振信号を用いた際の非接触通信を試みても、非接触通信が正常に行われない場合には、例えば中心周波数から+20kHzだけ高い周波数に遷移させた発振信号を非接触カードリーダライタ機能部20へ供給する。以下同様であり、当該+20kHzの発振信号を用いた際の非接触通信を試みても、非接触通信が正常に行われない場合には、更に例えば中心周波数から−40kHzだけ低い周波数に遷移させた発振信号を非接触カードリーダライタ機能部20へ供給し、それでも非接触通信が正常に行われない場合には、例えば中心周波数から+40kHzだけ高い周波数に遷移させた発振信号を非接触カードリーダライタ機能部20へ供給するような周波数スイープ処理を繰り返す。
【0048】
そして、上記周波数スイープ処理を順次繰り返していったことで、何れかの周波数の発振信号を非接触カードリーダライタ機能部20へ供給した時に、非接触ICカード側との非接触通信が正常に行われるようになった場合、非接触ICカード側との非接触通信を行う。
【0049】
本実施形態において、図5に示したように、周波数スイープ処理で最初に中心周波数から−20kHzだけ低い周波数に遷移させることにしたのは、経験的に周波数を低くした方が通信エラーが少なくなることが判っているためである。また、周波数を遷移させる量として20kHzとしたのは、経験的に20kHz程度だけ周波数を遷移させた時に通信状態が変化することが判っているためである。
【0050】
図5の例では、周波数を−方向(中心周波数から低くなる方向)と+方向(中心周波数から高くなる方向)に交互に遷移させるような周波数スイープパターン例を挙げたが、例えば図6に示すように、最初の数回は中心周波数から20kHzずつ周波数を低くする方向に遷移させ、その後の数回は中心周波数から20kHzずつ周波数を高くする方向へ遷移させるような周波数スイープパターンにしても良いし、その他のパターンを用いても良い。
【0051】
なお、前述の第2の実施形態で説明した上記別の複数の発振器33の出力を切り換えてミキサ31へ供給する例の場合のように、各発振器33の個数つまり各発振器33で得られる周波数の数に限りがある場合には、上記周波数スイープの回数(つまり変更される周波数の数)は、それら各発振器33の個数(各発振器33で得られる周波数の数)と同じ数になる。
【0052】
〔周波数スイープ処理制御のフロー〕
上述したような周波数スイープ処理は、制御部10が図2の電圧制御発振器32の制御電圧の制御や、図3の発振器33からミキサ31への発振信号の切換制御、図4の分周器35の分周比変更制御等を行うことにより実現され、その際、上記制御部10は、例えば図7に示すようなフローの実行により当該周波数スイープ処理の制御を行う。
【0053】
図7において、制御部10は、ステップS1にて本実施形態の携帯電話端末のリーダライタ機能が起動されると、ステップS2にて非接触ICカード側からの返信を例えば5秒間待つと共に、ステップS3にて、非接触ICカードリーダライタ機能部20からの信号により、非接触ICカードとの間の非接触通信が成功したか否か、言い換えると、非接触ICカード側から返答が無かったりエラーが返信されてきたか否か判断する。当該ステップS3にて非接触通信が成功した(正常な非接触通信が可能になった)と判断した場合、制御部10は、ステップS4にて、所望のデータ通信が完了した後に当該リーダライタ機能を終了させる。
【0054】
一方、ステップS3にて非接触通信が成功していないと判断した場合、制御部10は、ステップS5にて、上述したような周波数スイープ処理を実行する。
【0055】
次に、制御部10は、ステップS6へ処理を進め、非接触ICカード側からの返信を例えば10ミリ秒間待つと共に、ステップS7にて非接触ICカードとの間の非接触通信が成功したか否か、つまり非接触ICカード側から返答が無かったりエラーが返信されてきたか否か判断する。当該ステップS7にて非接触通信が成功したと判断した場合、制御部10は、ステップS9の処理として、当該非接触通信が成功した周波数の発振信号を利用した非接触通信にて所望のデータ通信が完了した後に当該リーダライタ機能を終了させる。
【0056】
ステップS7にて非接触通信が成功していないと判断した場合、制御部10は、ステップS8の処理として、上述した周波数スイープの回数が予め決めた制限回数に達したか否か、すなわち一例として周波数スイープ回数が制限回数としての100回に達したか否か判断し、当該制限回数に達していない時にはステップS5へ処理を戻して周波数スイープ処理を行い、一方、制限回数に達したと判断した時にはステップS10にて所定の通信エラー処理(例えば通信エラーである旨の表示や音声によるユーザへの通知)を行った後、当該図7のフローチャートの処理を終了する。
【0057】
〔周波数スイープ処理制御の他のフロー〕
本実施形態の携帯電話端末の制御部10は、図7のフローに代えて、図8のようなフローの実行により周波数スイープ処理の制御を行うこともできる。
【0058】
図8において、制御部10は、ステップS11にて本実施形態の携帯電話端末のリーダライタ機能が起動された後、ステップS12の処理として、非接触ICカードリーダライタ機能部20からの信号により、非接触ICカードとの間で再送信の回数が増加したか否か判断し、再送信の回数が増加した時にはステップS13の処理として周波数スイープ処理を行う。すなわち、制御部10は、非接触ICカードとの間で再送信が行われた場合、当該再送信の回数を例えばメモリ部15に蓄積してゆき、ステップS12にて、上記メモリ部15に蓄積した再送信の回数が例えば予め決めた規定回数よりも増加したときに、非接触通信が正常に行われなくなっていると判断して、ステップS13の周波数スイープ処理を行う。一方、ステップS12にて再送信の回数が増加していないと判断した場合、制御部10は、ステップS18の処理として、現時点における周波数の発振信号を利用して非接触通信を継続する。
【0059】
次に、制御部10は、ステップS14へ処理を進め、上記ステップS13での周波数スイープ処理の実行により、非接触ICカードとの間の再送信回数が低下した(予め決めた規定回数を下回るようになった)か否か判断する。なお、ステップS14での規定回数とステップS12での規定回数は同じでも良いし異なっていても良い。そして、ステップS14にて再送信の回数が低下したと判断した場合、制御部10は、ステップS16にて、上記周波数スイープで設定された周波数の発振信号を利用して非接触通信を継続する。
【0060】
一方、ステップS14にて再送信回数が低下しないと判断した場合、制御部10は、ステップS15にて、周波数スイープの回数が予め決めた制限回数(例えば100回)に達したか否か判断し、当該制限回数に達していない時にはステップS13へ処理を戻して周波数スイープ処理を行い、一方、制限回数に達したと判断した時にはステップS10にて所定の通信エラー処理(例えばユーザへの通知)を行った後、ステップS19にて元の周波数(例えば図6の中心周波数)に戻した後、当該図8のフローチャートの処理を終了する。
【0061】
〔まとめ〕
以上説明したように、本発明実施形態の携帯電話端末によれば、特にリーダライタとして動作する場合に、非接触ICカードとの間で通信が成功しなかったり、再送信が増加した場合には、非接触ICカードリーダライタ機能部20へ供給される発振信号の周波数を遷移させて、非接触通信の相手方の同調周波数に合わせるようにする動作を実行することにより、非接触通信が完全にエラーになってしまう状態の発生を少なくすることが可能となっている。また、本実施形態によれば、簡単な構成で且つ安価な電圧制御発振器や、既存の他の構成要素のために設けられている発振器を流用することなどにより、周波数の遷移を実現しているため、コスト上昇を抑えることができ、また装置の小型化が妨げられることもない。
【0062】
なお、上述した本発明の各実施形態の説明は、本発明の一例である。このため、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0063】
本実施形態の通信装置は、携帯電話端末に限定されず、少なくとも非接触通信におけるリーダライタ機能を備えたPDA(Personal Digital Assistant)やパーソナルコンピュータ、携帯型テレビゲーム装置、携帯型ディジタルテレビジョン受信機、カーナビゲーション装置など様々な端末や、据え置き型の通信装置などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】非接触ICカード機能とリーダライタ機能の両方を備えた携帯電話端末の基本的な内部構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の携帯電話端末の内部構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の携帯電話端末の内部構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施形態の携帯電話端末の内部構成例を示すブロック図である。
【図5】本実施形態における周波数スイープ処理時の周波数遷移パターンの一例を示す図である。
【図6】本実施形態における周波数スイープ処理時の周波数遷移パターンの他の例を示す図である。
【図7】本実施形態の携帯電話端末の制御部にて実行される周波数スイープ処理の制御のフローチャートである。
【図8】本実施形態の携帯電話端末の制御部にて実行される周波数スイープ処理の制御の他の例のフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
10 制御部、11 通信回路、12 通信アンテナ、13 表示部、14 操作部、15 メモリ部、16 プログラム蓄積部、17 音源制御部、18 スピーカ、19 マイクロホン、20 非接触ICカードリーダライタ機能部、30 非接触通信専用発振器、31 ミキサ、32 電圧制御発振器、33,34 別の発振器、35 分周器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送信号の周波数に同調して通信を行う非接触通信端末に対して、上記搬送信号を送信し、その非接触通信端末との間でデータ通信を行う通信装置において、
それぞれ異なる周波数の複数の発振信号を生成するための発振信号生成部と、
上記発振信号生成部より入力された発振信号から上記搬送信号を生成して上記非接触通信端末へ送信すると共に、上記非接触通信端末との間で上記搬送信号を用いた非接触通信を行うための非接触通信部と、
上記非接触通信部から供給される信号により、当該非接触通信部と上記非接触通信端末との間で上記搬送信号を用いた非接触通信が正常に行われるか否か判断し、当該非接触通信が正常に行われない場合に、上記発振信号生成部を制御して、上記非接触通信部へ入力される発振信号の周波数を変更し、その周波数変更後の発振信号を用いて再度非接触通信が正常に行われるか判断する処理を繰り返す制御部とを有する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
上記発振信号生成部は、制御電圧値により発振周波数が制御される電圧制御発振器であり、
上記制御部は、上記電圧制御発振器への制御電圧値を制御することにより、上記発振信号生成部から上記非接触通信部へ入力される発振信号の周波数を変更させることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
上記発振信号生成部は、それぞれ異なる周波数で発振する複数の発振器からなり、
上記制御部は、上記複数の発振器の何れかの発振器の出力発振信号を選択して上記非接触通信部へ入力させることにより、上記発振信号生成部から上記非接触通信部へ入力される発振信号の周波数を変更させることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項4】
上記発振信号生成部は、少なくとも一つの発振器と、当該発振器からの発振信号を複数の分周比で分周して出力する分周器とからなり、
上記制御部は、上記分周器を制御して上記複数の分周比の何れかにより分周された出力発振信号を上記非接触通信部へ入力させることにより、上記発振信号生成部から上記非接触通信部へ入力される発振信号の周波数を変更させることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項5】
上記発振信号生成部は、少なくとも一つの発振器と、当該発振器からの発振信号を複数の逓倍比で逓倍して出力する逓倍器とからなり、
上記制御部は、上記逓倍器を制御して上記複数の逓倍比の何れかにより逓倍された出力発振信号を上記非接触通信部へ入力させることにより、上記発振信号生成部から上記非接触通信部へ入力される発振信号の周波数を変更させることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項6】
上記制御部は、上記非接触通信部から供給される信号として、非接触通信が成功したか否かを示す信号を用いて、当該非接触通信部と上記非接触通信端末との間で上記搬送信号を用いた非接触通信が正常に行われるか否か判断することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項7】
上記制御部は、上記非接触通信部から供給される信号として、非接触通信の再送回数を示す信号を用いて、当該非接触通信部と上記非接触通信端末との間で上記搬送信号を用いた非接触通信が正常に行われるか否か判断することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項8】
搬送信号の周波数に同調して通信を行う非接触通信端末に対して、上記搬送信号を送信し、その非接触通信端末との間でデータ通信を行う通信装置の通信制御方法であって、
上記非接触通信端末との間で搬送信号を用いた非接触通信を行うための非接触通信部が、それぞれ異なる周波数の複数の発振信号を生成可能な発振信号生成部より入力された発振信号から、上記搬送信号を生成して上記非接触通信端末へ送信するステップと、
上記非接触通信部から供給される信号により、当該非接触通信部と上記非接触通信端末との間で上記搬送信号を用いた非接触通信が正常に行われるか否かを制御部が判断するステップと、
上記判断のステップにて当該非接触通信が正常に行われないと判断した場合に、制御部が、上記発振信号生成部を制御して、上記非接触通信部へ入力される発振信号の周波数を変更し、その周波数変更後の発振信号を用いて再度非接触通信が正常に行われるか判断する処理を繰り返すステップとを有する、
ことを特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−60497(P2009−60497A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227593(P2007−227593)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】