説明

通信装置及び通信装置を制御する制御方法、通信装置を制御するためのプログラム、プログラムを格納した記憶媒体

【課題】デバイスの休眠中にビーコングループ間のビーコン期間開始タイミングがビーコン同期の許容値以上ずれた場合、ビーコングループのマージ作業が生じ、その間のデータレートが低下する可能性がある。
【解決手段】複数のビーコングループ間のビーコン期間開始タイミングの変化量に基づいて、休眠期間を決定する。そして、決定した休眠期間に従って装置を休眠状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置の休眠期間を決定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、WiMediaのような自立分散型の通信を行う無線通信方法が提案されている。WiMediaは、欧州電子計算工業会(ECMA)においてStandard ECMA-368として標準化されている(非特許文献1)。図7にWiMediaデバイスとその近傍の他のWiMediaデバイスで構成されるビーコングループの配置例を示す。WiMediaデバイスは、ビーコングループ内で互いのデバイスがビーコンを送信し合い、それぞれの通信帯域を確保する。このとき、図8に示すように各デバイスは予め決められた時間長のスーパーフレームの最初の時間帯に配置されるビーコン帯域(ビーコンピリオド)の各ビーコンスロットで順番にビーコンを送信する。図8に示すBG1は、デバイスA1が形成するビーコングループである。また、BG2、BG3、BG4・・・BG8は、それぞれデバイスA2、デバイスA3、デバイスA4・・・デバイスA8が形成するビーコングループである。ここで、各デバイスのビーコンはクロック精度により送信する時間がずれる。そこで、スーパーフレームの開始時間(ビーコンピリオドの開始時間Beacon Period Start Time;以後BPST)が最も遅いデバイスに他の全てのデバイスが合わせることで、デバイス間の同期がとられる。各デバイスは互いにそれぞれのデバイスが送信するビーコン内のBPOIE(Beacon Period Occupied Information Element)を検出し、BPOIEから各デバイスのビーコングループ内のデバイスが特定できる。各デバイスが同期をとる範囲は、自局が形成するビーコングループと、自局が形成するビーコングループ内の各デバイスが形成する各ビーコングループ、すなわちエクステンデッドビーコングループ(EBG)の範囲に限られる。例えば、デバイスA1は、自局のビーコングループBG1と、デバイスA1のビーコングループ内のデバイス(A2,A4,A6,A8)が形成するビーコングループ(BG2、BG4、BG6、BG8)と同期ととる。尚、各デバイスのスーパーフレームの開始時間は、各デバイスのビーコンの順番(ビーコンスロットナンバー)とビーコンを受信した時間からBPSTを計算することによって得られる。
【0003】
また、近年ディジタルカメラやPDAのような可搬型の機器にも無線デバイスが搭載されてきている。これら可搬型の機器は一般的に電池駆動であり、消費電力に対して厳しい要求がされている。従って、無線通信に関しても、消費電力を低減するための休眠モードは必須な機能となりつつある。
【0004】
WiMediaにおいても消費電力の低減のための休眠モードが用意されている。しかしWiMediaのような自立分散型の無線通信方式における休眠モード後の再同期は、容易に達成することはできない。WiMediaにおいてデバイスが休眠モードに入ると、休眠モードに入ったデバイスと、当該デバイスが属するビーコングループで動作する他のデバイスのBPSTとは各デバイスのクロック精度が原因で、徐々にずれて行くからである。
【0005】
このため、WiMediaでは、休眠モードからの復帰に関して以下の処理を義務付けている。即ち、休眠モードに入ったデバイスは、ウェイクアップする1つ前のスーパーフレームにおいて他のデバイスのビーコンを受信する。そして、受信したビーコンの中で最も遅いBPSTに合わせて自身のBPSTを設定し、設定したBPSTに従ってビーコンを送信してウェイクアップすることを義務付けている。逆に休眠モードに入るデバイスからビーコンで休眠モードに入ることを通知されたデバイスは休眠モード中のデバイスのビーコンスロットを確保しておく。そして、休眠モードからウェイクアップしたデバイスがそのビーコンスロットでビーコンを再び送信できるようにしている。
【非特許文献1】Standard ECMA-368(High Rate Ultra Wideband PHY and MAC Standard)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら同じビーコングループ内の休眠モードに移行したデバイスのビーコンが受信できなくなることによって、複数のビーコングループの同期関係が切れてしまう場合がある。例えば、図7においては、デバイスA1が休眠モードに入ると、ビーコングループBG1がなくなる。そのため、デバイスA2が形成するビーコングループBG2とデバイスA4が形成するビーコングループBG4は同期をとる必要がなくなり、独立にビーコングループ内で同期を取り始める。
【0007】
図9にデバイスA1が休眠モード中の各デバイスのビーコングループにおけるビーコン送信位置を示す。デバイスA1が休眠する前にビーコングループBG1に所属していた各デバイスA2,A4,A6,A8は休眠モードに入ったデバイスA1のビーコンスロットを確保している。デバイスA8はデバイスA1がデバイスA6のビーコンスロットとして確保していたビーコンスロットが空くため、ビーコンスロットを詰める。ビーコングループBG2内の各デバイス(A2,A8,A3)とビーコングループBG4内の各デバイス(A4,A5,A6)のBPSTはそれぞれのビーコングループが独立に同期を取り始めるため、徐々にずれてしまう。
【0008】
このように複数のビーコングループが独立に同期を取り始めた状態でデバイスA1が休眠モードからウェイクアップする場合を考える。このとき、デバイスA1は、ウェイクアップの1スーパーフレーム前のビーコン帯域で他のデバイス(A2,A4,A6,A8)のビーコンを受信することになる。ところが、WiMediaでは、互いのビーコンが届く2つのビーコングループのBPSTのずれが一定時間(24マイクロ秒)を超えている場合は、これらのビーコングループを1つのビーコングループにマージすることになっている。従って、2つのビーコングループBG2,BG4のBPSTがビーコン同期の許容値(24マイクロ秒)以上ずれていた場合には、デバイスA1がウェイクアップしてビーコングループBG1を再結成する時にマージ作業が発生し、すぐには同期できない。
【0009】
ここでビーコングループBG1とビーコングループBG1に所属していた各デバイスのビーコングループとのマージ方法を図12を用いて説明する。なお、デバイスA1はウェイクアップする際にビーコングループBG2,BG4のどちらかに同期してビーコンを送信するが、ここではビーコングループBG2に同期してビーコンを送信することとする。
【0010】
WiMediaにおいてはビーコンピリオドが重なっているビーコングループのマージはBPSTの遅い方のビーコングループがBPSTが早い方のビーコングループのビーコンスロットの後にビーコンを移動する。図12AにおいてはデバイスA1のビーコンを受信したデバイスA4,A6はランダム数のスーパーフレーム待った後、デバイスA8の後のビーコンスロットでビーコンを送信することによって、ビーコンの衝突を避けながらマージする(図12B)。
【0011】
デバイスA5はデバイスA4がデバイスA1のビーコンを受信後、しばらくビーコンを送信しないため、その間はデバイスA7としか通信できない。更にデバイスA4がデバイスA1と同期してビーコンを送信し始めると、デバイスA5はランダム数のスーパーフレームの期間ビーコンを送信できなくなる。そして、デバイスA5は、その後デバイスA6のビーコンスロットの後にデバイスA4と同期してビーコンを送信することになる(図12C)。デバイスA5のマージ作業中にデバイスA4,A6は他のデバイスが帯域を確保していないビーコンスロットを詰める可能性がある(図12C)。
【0012】
さらにビーコングループの同期関係がある場合、一つのビーコングループのマージが他のビーコングループへ波及していき、ビーコングループのマージの際には非常に大きな通信の制限が生じ、通信効率が低下する。
【0013】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、デバイスが休眠状態からウェイクアップしても、ビーコングループのマージ作業が発生しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため本発明の一態様による通信装置は以下の構成を備える。即ち、
ビーコングループを形成して通信する通信装置であって、前記通信装置が休眠状態に移行することにより生じる変化量であって、複数のビーコングループ間のビーコン期間開始タイミングの変化量に基づいて、休眠期間を決定する決定手段と、前記決定手段で決定された休眠期間に従って当該装置を休眠状態とする休眠手段とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、デバイスの休眠によってビーコングループが独立に同期を取り始めてもデバイスがウェイクアップした時にビーコングループのマージ作業を必要とせず、ビーコングループのマージ作業が発生したときの通信効率の低下が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態における無線通信デバイス(以下、デバイスという)によるビーコングループの形成例を説明する図である。図1においてデバイスA1が休眠モードに入る前の各デバイスのビーコングループにおけるビーコン送信の様子を図2に示す。また、デバイスA1が休眠モード中の各ビーコングループにおけるビーコン送信の様子を図3に示す。図4は、デバイスA1がウェイクアップした後の各デバイスのビーコングループにおけるビーコン送信の様子を説明する図である。又、図5は、第1実施形態による無線通信デバイスの構成例を示すブロック図、図6はデバイスA1の動作フローチャートである。
【0018】
図1においてデバイスA1〜A8は自立分散型プロトコルによる無線通信をしているデバイスである。なお、本説明では、上記自立分散型プロトコルはStandard ECMA-368により定義されるWiMediaを例に説明する。ここでデバイスA1のビーコングループBG1はデバイスA1と、デバイスA1と通信可能なデバイスA2,A4,A6,A8によって形成されている。デバイスA2のビーコングループBG2はデバイスA2と、デバイスA2と通信可能なデバイスA1,A8によって形成されている。デバイスA4のビーコングループBG4はデバイスA4と、デバイスA4と通信可能なデバイスA1,A6によって形成されている。デバイスA6のビーコングループBG6はデバイスA6と、デバイスA6と通信可能なデバイスA1,A4によって形成されている。デバイスA8のビーコングループBG8はデバイスA8と、デバイスA8と通信可能なデバイスA1,A2によって形成されている。ここでデバイスA1は休眠モードに入るデバイスである。
【0019】
図1に示した各デバイスは図5に示されるような無線通信装置を有する。図1のデバイスがプリンタであった場合は、図5に示されるような無線通信装置101を具備することにより、プリント機能の他に無線通信機能をも有することになる。無線通信装置101において、コントローラ102は以下に説明する休眠制御を含む無線通信に関する各種制御を実現する。コントローラ102は例えばCPU102aを有し、ROM102bに格納された制御プログラムを実行することで無線通信制御を実現する。ROM102bに格納された制御プログラムは以下に説明する休眠制御を含む無線通信に関する各種制御を実現するためのプログラムである。RAM102cはCPU102aが各種制御を実行する際の作業領域等を提供する。無線インターフェース103はコントローラから出力された送信信号をアンテナ104を介して無線送信したり、アンテナ104を介して受信された無線信号をコントローラ102で処理可能なデジタル信号に変換する。尚、例えばデバイスがプリンタ装置であった場合は、例えばプリントコントローラの機能がコントローラ102を兼ねるようにしてもよい。
【0020】
図2、図3、図4のBG1は、デバイスA1が形成するビーコングループである。同様に、BG2、BG4、BG6、BG8は、それぞれデバイスA2、デバイスA4、デバイスA6、デバイスA8が形成するビーコングループである。また、各ビーコングループのA1、A2・・・は、それぞれデバイスA1、デバイスA2・・・がビーコンを送信するビーコンスロットである。
【0021】
図2において、BG1では、BG1に属するデバイスA1、デバイスA2、デバイスA4、デバイスA6、デバイスA8が、各ビーコンスロットでビーコンを送信する。同様に、BG8では、BG8に属するデバイスA1、デバイスA2、デバイスA8がビーコンを送信する。ここでデバイスA8は、デバイスA1が送信するビーコン内のBPOIEからBG1に属するデバイスを特定できる。また、デバイスA8は、自局が形成するビーコングループ内の各デバイスが形成する各ビーコングループ、すなわちエクステンデッドビーコングループ(EBG)と同期をとる。他のデバイスにおいても、EBGと同期をとり、動作する。
【0022】
図2の状態からデバイスA1が休眠モードに移行すると、BG1がなくなり、図3の状態になる。図3に示すように、BG2、BG4、BG6、BG8では、休眠モードに移行したデバイスA1のビーコンスロットを確保している。また、BG8では、BG1が消滅したので、BG2と同期をとればよくなり、同様にBG2では、BG8と同期をとればよくなる。BG4でも、BG1が消滅したので、BG6と同期をとればよくなり、BG6では、BG4と同期をとればよくなる。
【0023】
その結果、BG2、BG8では、デバイスA4、デバイスA6のためのビーコンスロットを空けておく必要がなくなり、デバイスA8のビーコンスロットをデバイスA2のビーコンスロットの直後に移動する。BG4、BG6でも、デバイスA2のビーコンスロットを空けておく必要がなくなり、デバイスA4、デバイスA6のビーコンスロットをデバイスA1のビーコンスロットの後に移動する。
【0024】
図3の状態からデバイスA1が休眠モードからウェイクアップした時の各ビーコングループにおけるビーコン送信の様子を図4に示す。図4においてデバイスA1はウェイクアップする1スーパーフレーム前にデバイスA2,A4,A6,A8のビーコンを傍受する。ここでデバイスA1が休眠している間にデバイスA4,A6,A8がビーコンスロットを詰めたため、デバイスA2とA4,及びA6とA8のビーコンは衝突している。そのためデバイスA1がウェイクアップする1スパーフレーム前においては衝突しているデバイスのビーコンのどちらかしか受信できない。しかしながらWiMediaの物理フォーマットにより干渉信号耐性があるため、衝突しているデバイスのビーコンが存在しても正確にビーコンに含まれる情報を解析できる可能性が高い。ここでデバイスA1がデバイスA2とA8のビーコンを受信できたと仮定する。デバイスA1は、デバイスA2、A8のビーコンを受信できるので、図4のようにデバイスA2、A8をBG1のメンバとし、デバイスA1、A2、A8のビーコンの位置を示す情報を有するBPOIEを含むビーコンを送信する。デバイスA1がウェイクアップし、他のデバイスがデバイスA1用に確保していたビーコンスロットでビーコンを送信し始めるとデバイスA2,A4,A6,A8はデバイスA1のビーコンを受信する。デバイスA1はデバイスA2,A8のビーコンをウェイクアップ前に受信しているため、デバイスA1の次のビーコンスロットをデバイスA2に、その次のビーコンスロットをデバイスA8用に確保する。デバイスA4,A6はデバイスA1のビーコンを受信するとそれまでビーコンを送信していたビーコンスロットが他のデバイスに使用されていることがわかる。そのため、デバイスA4はデバイスA8の次のビーコンスロットを、デバイスA6はさらに次のビーコンスロットにビーコンを移動して送信し始める。これによってデバイスA1におけるビーコンの衝突は回避される。
【0025】
本実施形態のデバイスA1は、デバイスA1が休眠中のビーコングループBG2とBG4のBPSTのずれ量を後述する方法で計算し、ビーコングループBG2とBG4のBPSTのずれ量が同期可能な時間以内に休眠モードからウェイクアップする。よって図4に示すようにデバイスA1がウェイクアップした直後のスーパーフレームにおいて各デバイスは互いのビーコンを検出し、各デバイスがビーコンで予約した帯域で通信可能になる。つまり、マージ作業に必要なランダム数のスーパーフレーム待つ動作、該動作の際にビーコン送信を停止するための発生するビーコンスロットの移動等を防止し、迅速な同期確立を実現し、通信効率の低下を防止する。
【0026】
本実施形態のBPSTのずれ量の計算方法と、デバイスの休眠期間の設定方法を図6のフローチャートに従って説明する。デバイスA1はBG1を構成するすべてのデバイスからのビーコンを検出している(S101)。そして、デバイスA1はBG1内の各デバイスのビーコン内のBPOIEから各デバイスが受信可能なデバイスを予め判別しておく。該判別結果から、デバイスA1は休眠モードに移行する際に、デバイスA1が休眠モードに入ったときにどのデバイスのビーコングループが独立して同期をとり始めるかを判断する(S102)。デバイスA1は、休眠モードに移行しても独立したビーコングループができないと判断した場合には(S102)、予め設定してある休眠時間を設定し、休眠モードに移行する(S109)。また、デバイスA1は、休眠モードに移行すると独立して同期を取り始めるビーコングループができると判断した場合は、各ビーコングループ内で最もクロック周波数が小さいデバイスを決定する(S103)。そして、独立するビーコングループ内のクロック周波数が小さいデバイス間の周波数差から独立する各ビーコングループのBPSTのずれ量を算出し(S104)、ずれ量が同期の許容値(24マイクロ秒)以上にならないような時間を休眠時間として設定する(S105)。
【0027】
図1に示すように、デバイスA2,A8からなるビーコングループBG2、BG8とデバイスA4,A6からなるビーコングループBG4、BG6は独立に同期を取り始めることをデバイスA1は認識する。ここで、各ビーコングループBG2、BG4、BG6、BG8においてビーコンピリオド開始時間BPSTは、それぞれのビーコングループ内で最も遅いデバイスに合わされる。
【0028】
図1のようにデバイスA1が休眠前にBG1内の各デバイスが検出している全てのデバイスのビーコンを検出できている場合、デバイスA1は各デバイスのビーコンや、その他の通信信号を受信することにより、各デバイスのクロック速度を算出可能である。
【0029】
図1においてデバイスA1が休眠した場合、次のことが予測できる。即ち、BG2に属するデバイスA2,A8のクロック周波数の小さい方のデバイスのBPSTがクロック周波数の大きい方のデバイスのBPSTよりBPSTが遅くなる。そして、クロック周波数の大きい方のデバイスがクロック周波数が小さい方のデバイスと同期を取り始める。同様にBG4に含まれるデバイスA4,A6のクロック周波数の小さい方のデバイスのBPSTがクロック周波数の大きい方のデバイスのBPSTよりBPSTが遅くなる。そして、クロック周波数の大きい方のデバイスがクロック周波数が小さい方のデバイスと同期を取り始める。よってデバイスA1は独立して同期を取り始める各ビーコングループ内で最もクロック周波数が小さいデバイスを決定する(S103)。
【0030】
デバイスA2,A8のクロック周波数が小さい方のデバイスとデバイスA4,A6のクロック周波数が小さい方のデバイスの周波数差からデバイスA1の休眠中における各ビーコングループのBPSTのずれ量を計算する(S104)。そして、算出したずれ量からデバイスA1がウェイクアップした時にそのずれ量が各ビーコングループ同士が同期していると判断される範囲内になるように休眠時間を決定する(S105)。つまり、デバイスA1がウェイクアップした時にずれ量が同期の許容値(24マイクロ秒)以上にならないような時間(期間)を休眠時間として決定する。
【0031】
そして、決定した休眠時間の間、休眠モードに移行し、休眠時間を経過すると(S106)、1スーパーフレームの間、他のデバイスのビーコンを検出する。ビーコン検出により隣接する各ビーコングループのBPSTを検出し(S107)、検出したBPSTに従ってデバイスA1が形成するビーコングループBG1のBPSTを必要に応じて調整し、ビーコンの送信を開始することでウェイクアップする(S108)。なお、デバイスA1のウェイクアップ時の動作は、図3、図4を用いて既に説明済みなので詳細な説明は割愛する。
【0032】
以上のように、独立して同期を取っていたビーコングループは複雑なマージ作業を必要とせずに1つのビーコングループに戻るため、データレートの低下が防止される。
【0033】
<第2実施形態>
図7は第2実施形態におけるビーコングループの形成例を説明する図である。なお、図7〜図9は、背景技術の説明でも利用したが、説明の簡略化のため第2実施形態の説明にも利用する。図7においてデバイスA1が休眠モードに入る前の各デバイスのビーコングループにおけるビーコン送信の様子を図8に示す。また、デバイスA1が休眠モード中の各ビーコングループにおけるビーコン送信の様子を図9に示す。図10は、デバイスA1がウェイクアップした後の各デバイスのビーコングループにおけるビーコン送信の様子を説明する図である。又、図11はデバイスA1の動作フローチャートである。本実施形態におけるデバイスも、第1実施形態と同様に図5に示す無線通信装置を有する。ただし、ROM102bに格納される制御プログラムは、以下に説明する動作を行う点で相違する。
【0034】
図7におけるデバイスA1〜A8は自立分散型プロトコルによる無線通信をしているデバイスである。デバイスA1のビーコングループBG1はデバイスA1と、デバイスA1と通信可能なデバイスA2,A4,A6,A8によって形成されている。デバイスA2のビーコングループBG2はデバイスA2と、デバイスA2と通信可能なデバイスA1,A8、A3により形成されている。デバイスA4のビーコングループBG4はデバイスA4と、デバイスA4と通信可能なデバイスA1,A5、A6によって形成されている。さらにデバイスA1のビーコングループBG1と、デバイスA1のビーコングループ内のデバイス(A2,A4,A6,A8)が形成するビーコングループ(同図においてはBG2,BG4)によってエクステンデッドビーコングループEBG1が形成されている。ここでデバイスA1は休眠モードに入るデバイスである。
【0035】
図7のように各デバイスが配置されている場合、デバイスA1はデバイスA3,A5のように離れたデバイスのビーコンを受信できない。ここで、デバイスA3のクロック周波数がデバイスA2より低い場合や、デバイスA5のクロック周波数がデバイスA4やA6より低い場合、デバイスA1は休眠中における各ビーコングループBG2,4のBPSTのずれ量を予測できない。ビーコングループBG2,BG4のBPSTが、それぞれデバイスA1によってビーコンの受信ができないデバイスA3,A5のクロック周波数に依存してしまうためである。従って、休眠モードへ移行するデバイスがエクステンデッドビーコングループEBG1を形成している場合には、第1実施形態の手法を適用してもBPST間のずれがビーコン同期の許容値を超えるような休眠期間が設定されてしまう可能性がある。
【0036】
第2実施形態では、上記のような場合においても、分割されたビーコングループ間のBPSTの差を適切に予測し、適切な休眠期間を設定可能にする構成を説明する。
【0037】
デバイスA1が休眠する前のビーコングループBG1において、他のデバイスからのビーコンがデバイスA1に受信できないデバイスをBPOIEで伝達している時、デバイスA1はエクステンデッドビーコングループが形成されていることを確認できる。
【0038】
デバイスA1はエクステンデッドビーコングループが形成されている場合には以下のようにしてBPSTのずれを算出する。即ち、まずデバイスA1を一定期間だけ休眠させ、その休眠中に独立して同期を取るビーコングループBG2、BG4のBPSTの変化量から任意の休眠期間に対するずれ量を計算する。そして、この計算されたずれ量に基づいて、BPSTのずれがビーコン同期の許容値以内となるように、以降の休眠モードの期間を算出する。
【0039】
上述したように、デバイスA1が休眠することで独立に同期を取り始める複数のビーコングループのBPSTの変化量を調べるために、まずデバイスA1を一定期間だけ休眠させるが、この一定期間の設定には例えば以下の方法が考えられる。
(1)各デバイスのクロック精度に大きいばらつきがある場合でも複数のBGのBPSTがビーコン同期の許容値を越えない程度に短い期間を設定する。
(2)(1)においてデバイスA1が検出できないデバイスをBPOIEに入れているビーコンを送信しているデバイスのビーコングループのBPSTから、そのビーコングループのデバイスがどのデバイスにBPSTを同期させているかを検出する。ここで他のデバイスの参加がない限り、ビーコングループがデバイスA1が検出しているデバイスに同期を合わせている場合、以後の休眠においてはそのデバイスのBPSTのずれを計算する。ビーコングループがデバイスA1が検出していないデバイスに同期を合わせていると算出される場合、(1)に設定した休眠時間でデバイスA1が検出していないデバイスのクロック周波数を算出する。そして、以後の休眠においては他の独立して同期しているビーコングループのBPSTとのずれを計算し、その後の休眠時間BPSTがビーコン同期の許容値を越えないように設定する。
(3)独立して同期を取っているビーコングループの各デバイスのビーコンのBPOIEにデバイスA1が検出できないデバイスがない場合、デバイスA1は次のように動作する。即ち、デバイスA1はそのビーコングループの中で最も周波数が小さいデバイスの、デバイスA1の休眠中におけるBPSTのずれ量を計算する。
【0040】
尚、(2)の場合、デバイスA1がすでに各BGにおいてクロック周波数が最も低いデバイスのビーコンを受信していた場合、休眠時間の再設定の必要がない。
【0041】
以上のような第2実施形態におけるデバイスA1による処理を図11のフローチャートを参照して更に説明する。
【0042】
デバイスA1はBG1を構成するすべてのデバイスからのビーコンを検出している(S101)。そして、デバイスA1はBG1内の各デバイスのビーコン内のBPOIEから各デバイスが受信可能なデバイスを予め判別しておく。該判別結果から、デバイスA1は休眠モードに移行する際に、デバイスA1が休眠モードに入ったときにどのデバイスのビーコングループが独立して同期をとり始めるかを判断する(S102)。デバイスA1は、休眠モードに移行しても独立したビーコングループができないと判断した場合には(S102)、予め設定してある休眠時間を設定し、休眠モードに移行する(S109)。また、デバイスA1は、休眠モードに移行すると独立して同期を取り始めるビーコングループができると判断した場合は、デバイスA1は、デバイスA1がビーコンを検出できないデバイスをBPOIEに入れてビーコンを送信しているデバイスの有無を判定する。例えば、図7においてはデバイスA1は、デバイスA4からのビーコン信号内のBPOIEにデバイスA5が含まれているものの、デバイスA1はデバイスA5からのビーコン信号を受信できていない。このようにデバイスA1は、デバイスA1には直接電波が届かないデバイスをビーコングループに含むデバイスの有無を判定する。この判定により、デバイスA1は、デバイスA1が休眠モードに移行すると独立して同期を取り始める各ビーコングループ内に、デバイスA1がビーコンを検出できないデバイスがあるか否かを判定する(S201)。
【0043】
各ビーコングループ内にデバイスA1が検出不能なデバイスがない場合、図6と同様にS103へ分岐し、第1実施形態で説明した処理を実行する。
【0044】
他方、各ビーコングループ内のひとつでもデバイスA1が検出不能なデバイスがある場合、デバイスA1は、上述の一定期間を休眠期間として休眠を実行する(S202)。そして、この休眠からのウェイクアップ時に、デバイスA1は分割された各ビーコングループのデバイス(例えば、デバイスA2とA4)からのビーコン信号を受信する。そして各ビーコングループのBPSTを検出し、各ビーコングループがどのデバイスのBPSTに同期しているかを検出する。そして、各ビーコングループがデバイスA1が検出しているデバイスに同期を合わせているかどうかを判断する(S203)。そして、デバイスA1が検出しているデバイスに同期を合わせている場合には、そのデバイスをそのビーコングループ内で最も周波数が小さいデバイスと判断し、S103へ分岐し、第1実施形態で説明した処理を実行する。一方、何れかのビーコングループがデバイスA1が検出できないデバイスに同期を合わせていると算出される場合は次のように動作する。即ち、上述の一定時間の休眠で発生した当該ビーコングループのBPSTのずれ量から、デバイスA1が検出できないデバイスのクロック周波数を算出する(S204)。そして、そのデバイスのクロック周波数をそのビーコングループ内で最も周波数が小さいデバイスの周波数として採用する(S103)。各ビーコングループの最も周波数が小さいデバイスを決定(S103)した後は、上述の第1実施形態の動作と同様になので説明は割愛する。
【0045】
尚、上記図11のフローチャートでは、BPSTのずれ量を検出するための仮の休眠期間による休眠を休眠の開始に先立って毎回行うことになるが、これに限られるものではない。例えば、最初の休眠開始時にのみ仮の休眠期間による休眠を行って休眠期間を設定し、以降の休眠では、この設定された休眠期間を用いるようにしてもよい。或は、所定回数の休眠を実行する毎に、上記BPSTのずれの検出を実行するようにしてもよい。
【0046】
更に、第2実施形態において、前回の休眠期間と前回の休眠期間で生じたBPSTのずれ量に基づいて、次回の休眠期間を決定するようにしてもよい。このようにすれば、常に休眠期間が更新され、各回の休眠動作に適切な休眠期間が設定されることになる。
【0047】
又、デバイスの休眠期間の最大値は規格によって決められており、それ以上休眠をする場合においてはデバイスはアソシエーションを切断する必要がある。従って、例えばデバイスA1の休眠によって独立に同期を取り始める複数のBGのBPSTのずれ量が小さく、デバイスA1の休眠期間を長く設定できたとしても、休眠期間の最大値の規格値を越えてまでは休眠しないようにすることが好ましい。
【0048】
以上述べてきたように上記各実施形態によれば、消費電力の低減のための休眠モードの期間が、独立に同期を取り始める各ビーコングループ間のBPSTのずれ量がビーコン同期の許容値を超えないように設定される。即ち、消費電力の低減のための休眠モードの期間がデバイスのクロック精度に応じて、BPSTのずれ量が所定値を超えないように決定されることになる。このため、休眠していたデバイスのウェイクアップ時にBGのマージ作業に時間が取られず、マージ作業期間のデータレートの低下を防ぐことができる。また、マージ作業の負荷もなくなり、消費電力をさらに低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施形態における無線通信デバイスによるビーコングループの形成例を説明する図である。
【図2】図1においてデバイスA1が休眠モードに入る前の各デバイスのビーコングループにおけるビーコン送信の様子を示す図である。
【図3】デバイスA1が休眠モード中の各ビーコングループにおけるビーコン送信の様子を示す図である。
【図4】デバイスA1がウェイクアップした後の各デバイスのビーコングループにおけるビーコン送信の様子を説明する図である。
【図5】第1実施形態による無線通信デバイスの構成例を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態によるデバイスA1の動作フローチャートである。
【図7】WiMediaデバイスとその近傍の他のWiMediaデバイスで構成されるビーコングループの配置例を示す図である。
【図8】各デバイスのビーコングループにおけるビーコン送信の様子を示す図である。
【図9】デバイスA1が休眠モード中の各デバイスのビーコングループにおけるビーコン送信位置を示す図である。
【図10】デバイスA1がウェイクアップした後の各デバイスのビーコングループにおけるビーコン送信の様子を説明する図である。
【図11】第2実施形態によるデバイスA1の動作フローチャートである。
【図12A】ビーコングループとビーコングループに所属していた各デバイスのビーコングループとのマージ方法を説明する図である。
【図12B】ビーコングループとビーコングループに所属していた各デバイスのビーコングループとのマージ方法を説明する図である。
【図12C】ビーコングループとビーコングループに所属していた各デバイスのビーコングループとのマージ方法を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーコングループを形成して通信する通信装置であって、
前記通信装置が休眠状態に移行することにより生じる変化量であって、複数のビーコングループ間のビーコン期間開始タイミングの変化量に基づいて、休眠期間を決定する決定手段と、
前記決定手段で決定された休眠期間に従って当該装置を休眠状態とする休眠手段とを有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記決定手段は、当該装置が休眠状態へ移行することにより互いに独立するビーコングループとなる複数のビーコングループ間のビーコン期間開始タイミングのずれ量と休眠状態の経過時間との関係を表すずれ量を算出し、前記休眠状態の期間を決定することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記決定手段は、当該装置が休眠状態へ移行することにより互いに独立するビーコングループとなる複数のビーコングループ間のビーコン期間開始タイミングの変化量が、前記複数のビーコングループ同士が同期状態であると判断する値になるように、前記休眠期間を決定することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信装置のビーコングループに属する各デバイスから受信したビーコン信号に基づいて各デバイスのクロック周波数を判別する判別手段と、
前記各デバイスのクロック周波数に基づいて、前記複数のビーコングループの各々のビーコン期間の開始タイミングの変化量を算出する算出手段と、
前記決定手段は、前記算出手段による算出結果に基づいて、前記休眠期間を決定することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記複数のビーコングループの各々において、クロック周波数の最も遅いデバイスのクロック周波数に基づいて前記複数のビーコングループの各々のビーコン期間の開始タイミングを算出し、算出したビーコン期間の開始タイミングに基づいて前記複数のビーコングループ間のビーコン期間の開始タイミングのずれ量を算出することを特徴とする請求項に記載の通信装置。
【請求項6】
休眠状態への移行を一定期間実行し、この休眠により生じた前記複数のビーコングループ間のビーコン期間の開始タイミングの変化量を検出する検出手段を有し、
前記決定手段は、前記検出手段により検出した前記変化量に基づいて、前記休眠期間を決定することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記決定手段は、前記休眠手段による休眠の実行により生じた前記複数のビーコン期間の開始タイミングの変化量に基づいて次の休眠の休眠期間を決定することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
ビーコングループを形成して通信する通信装置の制御方法であって、
前記通信装置が休眠状態に移行することにより生じる変化量であって、複数のビーコングループ間のビーコン期間開始タイミングの変化量に基づいて、休眠期間を決定する決定工程と、
前記決定工程において決定した休眠期間に従って前記通信装置を休眠状態にする休眠工程とを有することを特徴とする通信装置の制御方法。
【請求項9】
コンピュータにより実行され、ビーコングループを形成して通信する通信装置を制御するためのプログラムであって、
前記通信装置が休眠状態に移行することにより生じる変化量であって、複数のビーコングループ間のビーコン期間開始タイミングの変化量に基づいて、休眠期間を算出する工程と、
前記算出した休眠期間に従って前記通信装置を休眠状態にする工程とを有することを特徴とするプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【公開番号】特開2008−61134(P2008−61134A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238169(P2006−238169)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】