説明

通信装置

【課題】地震発生による緊急地震速報を受信し、且つユーザが通話中である場合において、大音量の音声によりユーザの心身に障害を与えることのない通信装置を提供する。
【解決手段】本発明の通信装置は、通信網に接続可能なネットワークカードや無線LAN装置等を含む第一通信部を備えている。また第一通信部を用いてインターネット等の広域通信網から気象庁の配信する緊急地震速報を受信し、避難指示のための文字画像や音声を出力する避難指示部を備えている。また緊急地震速報受信時に、通信装置が通話処理中であるかどうかを判定する通信状態判定手段を備えている。通信状態判定手段により通話処理中であると判定されると、音量調整手段が、音声出力部の出力音量の上限を設定する。また、通話音声と避難指示音声を重畳して出力する、或いは通話の強制切断を行った後、再発信を行って発信先に定型メッセージを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広域通信網に接続されて通信を行う通信装置に関するものであり、特に気象庁が配信する緊急地震速報を受信して避難指示を行う通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信インフラの発達により、通信に関する様々な付加サービスが普及するようになってきた。例えば電話装置においては、一般電話回線以外に、IP電話網やインターネット等の広域通信網に接続して、データ通信サービス等の様々なサービスを受けることが可能な電話装置が普及している。
【0003】
このような通信装置が備える機能の一つとして、地震発生時に気象庁が配信する緊急地震速報の受信機能が実用化されている。緊急地震速報とは、西暦2007年10月1日より実施が開始された情報配信サービスである。ユーザは緊急地震速報に対応する通信装置を購入し、且つ緊急地震速報の配信サービス会社と契約することにより、このサービスを利用することができる。
【0004】
地震発生時に緊急地震速報を受信した通信装置は、通信装置に予め記録されている地域情報、例えば通信装置が設置されている場所の緯度・経度情報等を用いて、予測震度や主要動(=地震動のうち、人体に最も強く感じられる部分。通常はS波)が到達する予測時刻等を算出する。
【0005】
算出結果は、例えば液晶パネルによる画像表示や、スピーカによる音声出力により、ユーザに通知される。これによりユーザは、震源地から主要動が到達するまでの間に、机の下に隠れたり火の元を消したりする等の避難行動をとることができる。
【0006】
上記のような緊急地震速報を受信可能な装置として特許文献1においては、地震による火災等の二次災害の発生可能性を従来よりも低く抑えることができる画像処理装置が開示されている。この画像処理装置は、外部機器との通信を行う通信制御手段と、装置内部の通電状態を変更する電源制御手段とを備えている。
【0007】
そして通信制御手段が外部機器から緊急地震速報を受け取った際に、通電状態を変更するよう電源制御手段を制御する。このように外部からの情報によって電源制御を行うことで、近くで工事をしていたり、装置に偶然何かがぶつかったりといった地震以外の振動による地震の誤検知を防止し、利便性を損なわずに安全を確保することができる。
【0008】
また上記に関連して特許文献2においては、早期地震情報を収集し、地震動の主要動の到達前に注意喚起の要否の判断を行うことができる可搬型早期地震警報装置が開示されている。この可搬型早期地震警報装置は、位置情報の受信手段と、緊急地震速報の受信手段と、前記両受信手段により受信された位置情報と緊急地震速報とに基づいて、地震動の主要動の到達前に注意喚起の要否の判断を行う注意喚起要否判断手段とを具備している。
【0009】
これによれば、鉄道車両や自動車において、地震動の主要動が到達する前に注意喚起を発することができるため、迅速に鉄道車両や自動車の停止措置などをとることができ、大きな被害の発生を防止することができる。
【特許文献1】特開2007−72917号公報
【特許文献2】特開2005−283491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1及び特許文献2によれば、緊急地震速報を受信することにより二次災害を防止することや、主要動が到達するまでに注意喚起や車両の停止措置等を行うことができる。ただし注意喚起を行うための避難指示を音声出力する場合、確実にユーザに地震速報を知らせるため、大音量、或いは最大出力音量によって避難指示音声を出力するのが一般的である。
【0011】
しかしながら、緊急地震速報の受信機が通話機能を備えている場合、ユーザが通話中に緊急地震速報を受信する可能性がある。この場合、ハンズフリー通話中であれば、ユーザは通信装置から離れて通話を行っているため、特に問題にはならない。しかしハンズフリー機能を用いず、耳をスピーカの間近に近づけて通話を行う通常通話の場合、耳もとのスピーカから大音量の避難指示音声が出力される。この結果、ユーザの耳に障害を与える、或いは発作などの心身障害を引き起こす可能があるという問題があった。
【0012】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、地震発生による緊急地震速報を受信し、且つユーザが通話中である場合において、ユーザの心身に障害を与えることのない通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の通信装置は、通信網に接続可能な第一通信手段と、前記第一通信手段を用いて通信網より緊急地震速報を受信する地震情報算出手段と、緊急地震速報受信時に音声出力部を用いて避難指示音声を出力する避難指示手段とを備えた通信装置において、緊急地震速報受信時に前記通信装置の通信状態を判定する通信状態判定手段と、前記通信状態判定手段により前記通信装置が通話処理中であると判定された場合に、前記音声出力部に対して出力音量の上限を設定する音量調整手段とを備えたことを特徴としている。
【0014】
この構成によると、本発明の通信装置は、通信網に接続可能なネットワークカードや無線LAN装置等を含む第一通信手段を備えている。また第一通信部を用いてインターネット等の広域通信網から気象庁の配信する緊急地震速報を受信して予測震度や主要動の予測到達時刻を含む地震情報を算出する地震情報算出手段を備えている。また、緊急地震速報受信時に液晶モニタ等の表示部やスピーカ等の音声出力部を用いて避難指示のための文字画像や音声を出力する避難指示手段を備えている。
【0015】
さらに、緊急地震速報受信時に、通信装置が通話処理中、例えば音声信号の送受信処理中であるかどうかを判定する通信状態判定手段を備えている。通信状態判定手段により通話処理中であると判定されると、音量調整手段が、音声出力部の出力音量の上限を設定する。具体的には、スピーカに接続されたアンプのゲインを所定値まで下げるように制御を行う。
【0016】
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記通信装置が通話処理中であり且つハンズフリー機能が停止状態であると前記通信状態判定手段により判定された場合に、前記音量調整手段が前記音声出力部に対して出力音量の上限を設定することを特徴としている。
【0017】
この構成によると、本発明の通信装置が備える前記音量調整手段は、ユーザがハンズフリー機能を用いずに通話している状態において緊急地震速報を受信した場合にのみ、音量調整手段による出力音量の制限を行う。従ってハンズフリー通話中は、従来と同じ避難指示処理を行う。
【0018】
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記第一通信手段と、前記地震情報算出手段と、前記避難指示手段と、前記通信状態判定手段と、前記音量調整手段と、前記第一通信手段を用いて前記地震情報を送信する地震情報送信手段とを備えた主通信装置と、前記主通信装置と通信可能な第二通信手段と、前記第二通信手段を用いて前記地震情報を受信する地震情報受信手段と、前記避難指示手段とを備えた副通信装置とを含むことを特徴としている。
【0019】
この構成によると、本発明の通信装置は、親機(=主通信装置)と子機(=副通信装置)とを含むように構成されている。親機は、前述の第一通信手段、地震情報算出手段、避難指示手段、通信状態判定手段、及び音量調整手段を備えている。また、第一通信手段により緊急地震速報が受信された際に、地震情報算出手段が算出した地震情報を子機に送信する地震情報送信手段を備えている。
【0020】
さらに子機は、親機と通信可能な第二通信手段と、親機より送られてくる地震情報を第二通信部を用いて受信する地震情報受信手段とを備えている。また子機は、親機と同じく避難指示手段を備えている。これにより、ユーザが親機による通話中に緊急地震速報を受信した場合に、親機における大音量の避難指示音声の出力や、大音量のアラーム音の出力が行われない。ただし子機においては、通常通りの避難指示が行われる。
【0021】
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記第一通信手段と、前記地震情報算出手段と、前記避難指示手段と、前記第一通信手段を用いて前記地震情報を送信する地震情報送信手段とを備えた主通信装置と、前記主通信装置と通信可能な第二通信手段と、前記第二通信手段を用いて前記地震情報を受信する地震情報受信手段と、前記避難指示手段と、前記通信状態判定手段と、前記音量調整手段とを備えた副通信装置とを含むことを特徴としている。
【0022】
この構成によると、親機は、前述の第一通信手段、地震情報算出手段、避難指示手段、及び地震情報送信手段を備えている。また子機は、前述の第二通信手段、地震情報受信手段、避難指示手段、通信状態判定手段、及び音量調整手段を備えている。これにより、ユーザが子機による通話中に緊急地震速報を受信した場合に、子機における大音量の避難指示音声の出力や、大音量のアラーム音の出力が行われない。
【0023】
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記第一通信手段と、前記地震情報算出手段と、前記避難指示手段と、前記通信状態判定手段と、前記音量調整手段と、前記第一通信手段を用いて前記地震情報を送信する地震情報送信手段とを備えた主通信装置と、前記主通信装置と通信可能な第二通信手段と、前記第二通信手段を用いて前記地震情報を受信する地震情報受信手段と、前記避難指示手段と、前記通信状態判定手段と、前記音量調整手段とを備えた副通信装置とを含むことを特徴としている。
【0024】
この構成によると、親機と子機の両方が通信状態判定手段と音量調整手段とを備えている。これにより、ユーザが親機或いは子機のいずれかで通話中に緊急地震速報を受信した場合に、通話中の親機或いは子機において、大音量の避難指示音声の出力や、大音量のアラーム音の出力が行われない。なお、通話中ではない側、例えば親機側で通話中である場合における子機側では、通常通りの避難指示が行われる。
【0025】
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記第一通信手段が、無線通信網に接続可能な無線通信部を備え、前記地震検知送信手段が、前記第一通信手段が備える無線通信部を用いて前記地震情報を前記副通信装置へ送信し、前記第二通信手段が、無線通信網に接続可能な無線通信部を備え、前記地震情報受信手段が、前記第二通信手段が備える無線通信部を用いて前記地震情報を受信することを特徴としている。
【0026】
この構成によると、本発明の通信装置は、親機及び子機が、無線通信網に接続可能なアンテナ装置を含む無線通信部を備えている。親機の地震情報送信部は、地震情報を無線通信部を用いて子機に送信する。また子機の地震情報受信部は、無線通信部を用いて、親機から送られてくる地震情報を受信する。
【0027】
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記通信装置が通話処理中であると前記通信状態判定手段により判定された場合に、前記音量調整手段が、通話音声を無音状態にするとともに、前記難指示音声の出力音量の上限を設定することを特徴としている。
【0028】
この構成によると、緊急地震速報が受信され、且つ通信状態判定手段により通話処理中であると判定された場合に、音量調整手段が通話音声を無音状態にする。そして避難指示音声の出力音量の上限を設定する。例えば、避難指示音声を通話音声と同じ出力音量に制限する。これにより、スピーカからは避難指示音声のみが聞こえる状態となる。
【0029】
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記通信装置が通話処理中であると前記通信状態判定手段により判定された場合に、通話音声と前記避難指示音声とを重畳して前記音声出力部より出力する音声重畳手段を備えたことを特徴としている。
【0030】
この構成によると、緊急地震速報が受信され、且つ通信状態判定手段により通話処理中であると判定された場合に、音声重畳手段が通話音声と避難指示音声とを重畳して出力する。これにより、スピーカからは通話音声と避難指示音声とが同時に聞こえる状態となる。
【0031】
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記通信装置が通話処理中であると前記通信状態判定手段により判定された場合に、前記第一通信手段に対して通話の切断を指示するとともに、前記切断の完了後、前記第一通信手段を用いて前記切断を行った通信装置に対して発信を行い、緊急地震速報受信に起因して切断が実施されたことを示す情報を前記通信装置へ送信する通信切断手段を備えたことを特徴としている。
【0032】
この構成によると、緊急地震速報が受信され、且つ通信状態判定手段により通話処理中であると判定された場合に、通信切断手段が前記第一通信手段に対して、通話の強制切断を指示する。そして切断完了後、切断を行った通信先に対して再び発信を行う。再発信により通信が再び確立されると、通信先に対して、緊急地震速報受信を原因とした通話の強制切断が実施されたことを示す情報を送信する。例えば、予め記録部に記録されている定型音声メッセージを、第一通信手段を用いて送信する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の構成によれば、緊急地震速報受信時に通話処理中であると判定されると、音声出力部の出力音量の上限を設定する。これにより、ユーザが通話中に緊急地震速報を受信したとしても、大音量による避難指示メッセージの出力や、大音量のアラーム音の出力が行われない。このため、ユーザがスピーカに耳を近づけて通話している場合において、大音量音声により心身に障害を与えることなく、好適な避難指示を行うことができる。
【0034】
また本発明の構成によれば、ユーザがハンズフリー機能を用いずに通話している状態において緊急地震速報を受信した場合にのみ、出力音量の制限を行う。従って、ハンズフリー機能による通話中は、従来と同じ大音量による避難指示を行い、通常通話、つまりスピーカに耳を近づけて通話している場合のみ、所定の音量による避難指示を行う。このため、状況に応じた最適な音量で避難指示を行うことができる。
【0035】
また本発明の構成によれば、通信装置は親機と子機とを含むように構成されている。そして親機が通信状態判定手段、及び音量調整手段を備えている。このため、ユーザが親機で通話中に緊急地震速報を受信したとしても、最適な音量で避難指示を行うことができる。
【0036】
また本発明の構成によれば、通信装置は親機と子機とを含むように構成されている。そして子機が通信状態判定手段、及び音量調整手段を備えている。このため、ユーザが子機で通話中に緊急地震速報を受信したとしても、最適な音量で避難指示を行うことができる。
【0037】
また本発明の構成によれば、通信装置は親機と子機とを含むように構成されている。そして親機と子機との両方が通信状態判定手段、及び音量調整手段を備えている。このため、ユーザが親機或いは子機のいずれで通話中である場合でも、緊急地震速報受信時に最適な音量で避難指示を行うことができる。また、通話中ではない側では、通常通りの避難指示が行われるため、親機側と子機側で異なる避難指示方法を使い分けることができる。
【0038】
また本発明の構成によれば、親機及び子機が無線通信部を備えており、無線通信網を介して避難指示を行う。このため、親機と子機とを有線通信網で接続する必要がなく、従ってユーザが子機を移動させて使用している場合においても、通話状態にあわせた最適な音量で避難指示を行うことができる。
【0039】
また本発明の構成によれば、通話中に緊急地震速報が受信された場合に、通話音声を無音状態にし、スピーカからは避難指示音声のみが聞こえる状態となる。このためユーザは、通話音声に邪魔されることなく避難指示音声の聞き取りに集中できるため、より確実に避難指示内容を確認することができる。
【0040】
また本発明の構成によれば、通話中に緊急地震速報が受信された場合に、通話音声と避難指示音声とが重畳されて同時に出力される。このため、ユーザは通話を継続したまま、避難指示音声を聞くことができる。このため例えば、通話状態を維持したまま、避難指示音声の内容を通話相手に伝えることができるため、利便性が向上する。
【0041】
また本発明の構成によれば、通話中に緊急地震速報が受信された場合に、通話の強制切断を行う。そして切断完了後、切断を行った通信先に対して再び発信を行う。再発信により通信が再び確立されると、通信先に対して、緊急地震速報受信に起因した通話の強制切断が実施されたことを示す情報を送信する。このため、ユーザは避難行動に専念できると共に、通話相手に対しても自動的に地震発生を通知することができる。従って例えば、通話相手が緊急地震速報の受信装置を備えていない場合であっても、地震発生を通知することができるため、本発明の通信装置の機能性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。
[実施の形態1]
〈1−1.電話システムの構成について〉
図1は、本発明のコードレス電話装置(=通信装置)を含む電話システムの構成を示すブロック図である。本システムは少なくとも、親機1(=主通信装置)、子機2(=副通信装置)、有線LAN41、無線通信網42、IP電話ルータ51、ブロードバンドルータ52、ゲートウェイ53、IP電話網61、インターネット62、PSTN網63(=Public Switched Telephone Network:公衆電話交換網)、及び加入者電話装置71を含むように構成されている。
【0043】
本発明のコードレス電話装置は、IP通信網に接続可能なコードレス電話装置であり、図中の親機1及び複数の子機2(子機A2a〜子機C2c)がこれに該当する。親機1は、有線LAN41に接続されることにより、電話網を介した音声通信が可能であるIP電話装置である。また親機1は、有線LAN41と無線通信網42との通信を中継する中継機能を持っている。これにより後述する子機2は、親機1を中継してIP電話網61やPSTN網63を介した通話を行うことが可能である。また親機1は、インターネット62を介して、気象庁が配信する緊急地震速報を受信する機能を持つ。なお、親機1の内部構造の詳細については後述する。
【0044】
子機2は、後述する無線通信網42に接続されて親機1と通信を行うことにより、IP電話網61やPSTN網63を介して他の電話装置と音声通信を行うことが可能な無線通話装置である。なお、子機2の内部構成の詳細については後述する。
【0045】
有線LAN41は、親機1、IP電話ルータ51、ブロードバンドルータ52、及びゲートウェイ53等が有線接続されたローカルのネットワークである。前記の各装置は有線LAN41に接続されることにより、相互に通信が可能となっている。なお、有線LAN41を構成する物理的な手段としては、例えばツイストペアケーブルを用いた10BASE−T(IEEE802.3iとして標準化)や100BASE−TX(IEEE802.3uとして標準化)等があげられる。
【0046】
無線通信網42は、親機1と、複数の子機2とが無線接続された小規模の通信網である。具体的には例えば、2.4GHz(ギガヘルツ)の周波数帯の電波を利用したFHSS−WDCT(Frequency Hopping Spread Spectrum - Worldwide Digital Cordless Telephone)準拠の通信方式等を用いて相互に通信を行う。
【0047】
IP電話ルータ51、及びブロードバンドルータ52は、複数のIPネットワークを相互接続するためのネットワーク中継装置である。具体的には、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルでいうネットワーク層(第3層)やトランスポート層(第4層)の一部のプロトコルを解析して転送を行う。本実施形態では、IP電話ルータ51は有線LAN41とIP電話網61との二つのIPネットワークを相互に接続する役割を持つ。またブロードバンドルータ52は、有線LAN41とインターネット62との二つのIPネットワークを相互に接続する役割を持つ。
【0048】
ゲートウェイ53は、プロトコル体系が異なるネットワーク間を相互接続するためのプロトコル変換器である。ゲートウェイ53は例えば、有線LAN41とPSTN網63とを接続し、SIP等のシグナリングプロトコルを用いてシグナル変換を行うことにより、両ネットワーク間での通信を可能とする。
【0049】
IP電話網61は、電話網の一部もしくは全てにVoIP(Voice over Internet Protocol)技術を利用した通信網であり、用いる通信回線としてはFTTH(Fiber To The Home)やADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等の、いわゆるブロードバンド回線が利用される。なおVoIPとは、音声を各種符号化方式で圧縮してパケットに変換し、IPネットワークでリアルタイム伝送する技術である。これによりIP電話網61は音声通話サービスの他、画像の送受信を行うテレビ電話サービス等も提供可能である。
【0050】
インターネット62は、通信プロトコルによるネットワークを相互接続して構築された広域通信網である。大小様々なコンピュータネットワークを相互に連結させて、国際的な通信ネットワークが構築されている。通信プロトコルとしては主に、TCP/IPが標準的なプロトコルとして採用されている。
【0051】
PSTN網63は、一般の加入者電話回線ネットワークである。末端に電話装置を接続し、回線交換方式で通信相手に接続して音声通話を行うのに用いられる。加入者電話装置71は、電話加入者がPSTN網63を用いて他の加入者電話装置やIP電話装置と音声通話を行うための電話装置である。
〈1−2.親機の内部構成について〉
図2は、本発明の第一の実施形態に係る親機1の内部を示すブロック図である。親機1は少なくとも、制御部11、メモリ12、表示部13、入力部14、通信制御部15(=第一通信手段)、アンテナ装置16(=無線通信部)、音声信号処理部17、スピーカ18(=音声出力部)、及びマイク19を含むように構成されている。
【0052】
制御部11は、親機1の各部を制御することにより通信制御処理(音声データの送受信、発呼の実施、或いは着呼の検知等)を統括制御するための中央処理装置である。また制御部11は、制御部11が備える演算処理装置上でプログラムを実行することにより実現される機能部として、地震情報算出部11a(=地震情報算出手段)、地震情報送信部11b(=地震情報送信手段)、避難指示部11c(=避難指示手段)、通信状態判定部11d(=通信状態判定手段)、及び音量調整部11e(=音量調整手段)を備えている。
【0053】
地震情報算出部11aは、通信制御部15を用いてインターネット62から緊急地震速報を受信する。緊急地震速報には、地震検知時刻、地震識別番号、震央地名コード、震源の緯度・経度、震源の深さ、マグニチュード、最大予測震度、データの正確性(測定に使用したシステムや処理手法等)等のデータが含まれている。ただし緊急地震速報に含まれる予測震度及び主要動到達までの予測時間は大まかなものであり、地域毎の詳細な予測震度等は受信装置側で算出する必要がある。
【0054】
算出処理には大きく分けて、単独観測点処理と、複数観測点処理との二つが存在する。単独観測点処理は、例えばP波検測やレベル法といった、観測点の近くで地震が発生したことを前提とした、局地的な一点型の測定処理である。複数観測点処理は、複数の単独測定点処理の結果を用いて、特定地の予測震度や主要動到達時刻を算出するためのものである。代表的な処理方法としては、テリトリー法やグリッドサーチ法が存在する。
【0055】
地震情報算出部11aは、緊急地震速報に含まれる単独観測点処理結果と、メモリ12に記録されている緯度・経度情報に基づき、複数観測点処理を行う。具体的には例えば、まず複数の単独観測点処理結果から地震の三要素(震央:X、Y、時間:T、大きさ:M )を求める。さらに特定地の震央距離(震央X、Yから特定地X0、Y0までの距離)D、及び地震の大きさMから有感半径Rを求める。なおここでいう特定地とは、親機1が存在する緯度・経度を意味する。
【0056】
地震情報算出部11aは、震央距離Dと、地震の大きさMと、震源の深さHとから、特定地での標準強度Sr を求める。そして地質状況などによる特定地における増幅係数Aを求め、標準強度Sr と増幅係数Aとを用いて主要動(S波)の予測強度、最大速度、最大加速度、最大変位、及び到達予測時刻等を求める。なお、地震情報算出部11aが用いる算出方法は上記内容に限定されるものではなく、運用の形態や緊急地震速報に含まれるデータ内容に応じて適宜変更可能である。
【0057】
さらに地震情報算出部11aは、主要動到達予測時刻とタイマ(不図示)から通知される現在時刻とから、主要動到達までの予測時間、すなわちユーザが避難行動をとることができる猶予時間を算出する。算出結果は次の地震情報送信部11b、及び避難指示部11cに与えられる。なお地震情報算出部11aは、新たな緊急地震速報を受信するたびに上記算出処理を行う。
【0058】
地震情報送信部11bは、地震情報算出部11aから算出結果を与えられた際に、算出された主要動到達予測時刻、予測震度、及び主要動到達までの予測時間を含む地震情報を、通信制御部15を用いて子機2へ送信する。
【0059】
避難指示部11cは、地震情報算出部11aから主要動到達までの予測時間を与えられた際に、予測時間に対応する避難指示を出力する。例えば避難指示音声を音声信号処理部17及びスピーカ18を用いて出力する。また、表示部13を用いて避難指示画像を出力する。これにより、予測時間に応じた避難指示をユーザに対して行うことが可能である。
【0060】
通信状態判定部11dは、地震情報算出部11aにより緊急地震速報が検知された際に、親機1の通話状態を判定する。具体的には、通信制御部15及び音声信号処理部17を用いた音声通話がユーザにより行われているかを判定する。通話中であると判定された場合、ハンズフリー機能が実行中であるかどうかの判定を行う。なおこの判定は、制御部11の処理状態を確認することにより実施可能である。
【0061】
通話処理中であり、且つハンズフリー機能が未実行状態であると判定された場合、次の音量調整部11eに対して音量制限指示を与える。なおこの際、あわせて避難指示部11cに対して、表示部13を用いた避難指示画像の出力を禁止するようにしても構わない。
【0062】
音量調整部11eは、通信状態判定部11dより音量制限指示を与えられた際に、スピーカ18が備えるアンプのゲインを所定値まで下げるとともに、その上限値を制限する。上限値としては、例えばハンズフリー機能を用いない通常通話時の通話音量を上限値として用いる。これにより、通話中に緊急地震速報を受信したとしても、大音量による避難指示メッセージやアラーム音の出力を防止することができる。
【0063】
メモリ12は、親機1が保持する各種データを一時的に記録する媒体であり、例えば書込可能なRAM(Random Access Memory)等により構成されている。メモリ12は制御部11によって各種通信制御処理が行われる際の処理データや、ユーザから受けた指示命令等を一時的に記録しておくためのバッファメモリとしての役割を持つ。
【0064】
表示部13は、親機1が保持する各種情報(例えば着信時における発信側電話番号等)をユーザに対して表示する。表示部13は例えば、液晶パネル等の小型で消費電力の少ない表示装置を用いる。入力部14は、ユーザが親機1を用いて通信を行うための各種操作(例えば通話を行う相手の電話番号の入力等)を行うためのものである。入力部14は通常、数字ボタンやリダイヤルボタン等の複数の操作ボタンから構成されている。
【0065】
通信制御部15は、親機1を有線LAN41に接続するための通信インタフェースである。通信制御部15は、有線LAN41に接続された呼制御サーバ(不図示)と通信を行うことにより、IP電話システムにおける着信処理や発信処理等を実施することが可能である。また通信制御部15は、アンテナ装置16による無線通信網42を介した無線通信の制御を行う。
【0066】
アンテナ装置16は、子機2との間で無線通信電波の送受信を行うための無線通信装置である。アンテナ装置16は、所定の通信規格、例えばFHSS−WDCT(Frequency Hopping Spread Spectrum - Worldwide Digital Cordless Telephone)準拠の通信方式等に則って、無線通信を行う。これにより、子機2との間で音声通信やデータ通信等を行うことが可能である。
【0067】
音声信号処理部17は、通信制御部15により入力された音声データの復号処理を行い、音声信号としてスピーカ18に与える。また音声信号処理部17は、マイク19より入力された音声信号に所定の符号化処理を施して音声データを作成し、通信制御部15に与える。これにより音声データは有線LAN41、無線通信網42、或いはIP電話網61等を通じて接続される他の電話装置へ送信される。
〈1−3.子機の内部構成について〉
図3は、本発明の第一の実施形態に係る子機2の内部を示すブロック図である。子機2は少なくとも、制御部21、メモリ22、表示部23、入力部24、通信制御部25(=第二通信手段)、アンテナ装置26(=無線通信部)、音声信号処理部27、スピーカ28(=音声出力部)、マイク29、及びバッテリ部30を含むように構成されている。
【0068】
制御部21は、子機2の各部を制御することにより通信制御処理(音声データの送受信、発呼の実施、或いは着呼の検知等)を統括制御するための中央処理装置である。また制御部21は、制御部21が備える演算処理装置上でプログラムを実行することにより実現される機能部として、地震情報受信部21a(=地震情報受信手段)、避難指示部21b(=避難指示手段)、通信状態判定部21c(=通信状態判定手段)、及び音量調整部21d(=音量調整手段)を備えている。
【0069】
地震情報受信部21aは、親機1から受信する各種情報の中に、地震情報が含まれているかどうかの判定を行う。そして地震情報が含まれていると判定された場合に、地震検知を示す電文を避難指示部21bに与える。なお、避難指示部21b〜音量調整部21dについては、親機1の避難指示部11c〜音量調整部11eと同一の構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0070】
メモリ22は、子機2が保持する各種データを一時的に記録する媒体であり、例えば書込可能なRAM(Random Access Memory)等により構成されている。メモリ22は制御部21によって各種通信制御処理が行われる際の処理データや、ユーザから受けた指示命令等を一時的に記録しておくためのバッファメモリとしての役割を持つ。
【0071】
表示部23は、子機2が保持する各種情報(例えば着信時における発信側電話番号等)をユーザに対して表示する。表示部23は例えば、液晶パネル等の小型で消費電力の少ない表示装置を用いる。入力部24は、ユーザが子機2を用いて通信を行うための各種操作(例えば通話を行う相手の電話番号の入力等)を行うためのものである。入力部24は通常、数字ボタンやリダイヤルボタン等の複数の操作ボタンから構成されている。
【0072】
通信制御部25は、アンテナ装置26による無線通信の制御を行う。これにより子機2は、無線通信網42に接続された親機1との通信を行うことが可能である。また、親機1を中継して、PSTN網63を介した着信処理や発信処理等を実施することが可能である。
【0073】
アンテナ装置26〜マイク29については、親機1のアンテナ装置16〜マイク29と同一の構成であるため、ここでは説明を省略する。バッテリ部30は、外部電源(不図示)より電力の供給を受け、電力を一時的に備蓄しておく。例えば充電式アルカリ電池やリチウムイオンバッテリ等が用いられる。
〈1−4.避難指示処理について〉
ここで、本発明の第一の実施形態における親機1及び子機2を用いた、緊急地震速報受信時における避難指示処理について、図1〜図3のブロック図と、図4及び図5のフロー図とを用いながら説明する。
【0074】
図4は、緊急地震速報の受信待機を行っている親機1の処理フローである。図4に示す処理フローは、親機1の電源が起動し、且つインターネット62との通信が可能な状態において任意のタイミングで開始可能である。本処理の開始後、速報受信部11aはステップS110において、通信制御部15によりインターネット62から緊急地震速報を受信したかどうかの判定を行う。
【0075】
緊急地震速報が受信されていないと判定された場合、再びステップS110に移行し、緊急地震速報が検知されるまで監視を継続して行う。緊急地震速報の受信を検知した場合、速報受信部11aはステップS120において、緊急地震速報に含まれる電文の解析処理を行う。
【0076】
具体的には、電文に含まれる各種パラメータ、例えば予測震度算出用パラメータや、予測時間算出用パラメータを取得する。そして取得したパラメータと、メモリ12に予め記録されている緯度・経度情報とを用いた演算処理を行う。これにより、親機1が設置されている地域における予測震度と、主要動到達予測時刻とが算出される。そしてタイマ(不図示)から現在時刻を取得し、算出した主要動到達予測時刻との差分を計算することにより、到達までの予測時間を算出する。
【0077】
次に地震検知送信部11bはステップS130において、地震情報算出部11aが算出した予測震度、主要動到達予測時刻、及び主要動到達までの予測時間を含む地震情報を、通信制御部15及びアンテナ装置16を用いて、一又は複数の子機2へ送信する。
【0078】
次に通信状態判定部11dはステップS140において、親機1の通話状態を確認する。なお、本実施の形態では制御部11がソフトウェア処理により通話制御を統括的に行っているため、通信状態判定部11dは制御部11のプログラム実行状況を確認することによりにより、通話状態/非通話状態の確認を内部的に行うことが可能である。
【0079】
次に通信状態判定部11dはステップS150において、通話状態の確認結果による分岐を行う。通話中ではないと判定された場合、後述するステップS180に移行する。通話中であると判定された場合、ステップS160において、ハンズフリー機能のON/OFFにより分岐を行う。ハンズフリー機能を使用していると判定された場合、後述するステップS180に移行する。
【0080】
ハンズフリー機能を使用していないと判定された場合、音量調整部11eはステップS170において、スピーカ18が備えるアンプのゲインが所定値となるように調整する。あわせてゲインの上限値を設定し、上限値を超える音声を出力する場合は所定値まで低下させて出力するように制御を行う。
【0081】
次に避難指示部11cはステップS180において、表示部13を用いた避難指示画像の表示と、音声信号処理部15及びスピーカ18を用いた避難指示音声の出力とを行う。そして主要動の到達まで避難指示を行った後、本処理を終了する。
【0082】
次に図5を用いて、子機2の処理フローを説明する。図5に示す処理フローは、子機2の電源が起動し、且つ親機1との通信が可能な状態において任意のタイミングで開始可能である。本処理の開始後、地震情報受信部21aはステップS210において、通信制御部25が親機1から地震情報を受信したかどうかの判定を行う。なおここでいう地震情報とは、図4のステップS130において親機1から送信されるものを示している。
【0083】
地震情報が受信されていないと判定された場合、再びステップS210に移行し、地震情報が検知されるまで監視を継続して行う。地震情報の受信を検知した場合、ステップS220に移行するが、ステップS220〜ステップS250は親機1のステップS140〜ステップS170(図4)と同内容であるため、ここでは説明を省略する。
【0084】
ステップS250の実行後、避難指示部21bはステップS260において、表示部23に対して避難指示画像の表示を禁止する。これは、子機2において通話処理中且つハンズフリー機能が未使用状態である場合は、ユーザは子機2を耳の近くにおいて使用しているため、表示部23を視認できないためである。
【0085】
次に避難指示部21bはステップS270において、表示部23を用いた避難指示画像の表示と、音声信号処理部25及びスピーカ28を用いた避難指示音声の出力を行う。ただしステップS260において避難指示画像の表示が禁止されている場合は、避難指示音声の出力のみを行う。そして主要動の到達まで避難指示を行った後、本処理を終了する。
【0086】
以上の処理フローによれば、ユーザがスピーカ18或いはスピーカ28に耳を近づけて通話している際に緊急地震速報が受信されたとしても、大音量の避難指示音声を用いることなく避難指示を行う。このため、突然の大音量により心身に障害をもたらすことがない。また子機2においては、通話中は表示部23が視認できない位置にあるため、無駄な表示処理を省いて消費電力を削減することが可能である。
【0087】
次に、本発明の第二の実施形態ついて、図面を参照しつつ説明する。
[実施の形態2]
〈2−1.電話システムの構成について〉
実施の形態1と同内容であるため、ここでは説明を省略する。
〈2−2.親機の内部構成について〉
構成部材は実施の形態1と同内容であるが、図6に示すように、音量調整部11eに代わって音声重畳部11f(=音声重畳手段)を備えている。音声重畳部11fは、通信状態判定部11dにより通話中と判定された場合に、スピーカ18のアンプのゲインを所定値に設定するとともに、通話音声と避難指示音声とを重畳するように音声信号処理部17に指示する。これにより、スピーカ18から両音声が同時に出力される。
〈2−3.子機の内部構成について〉
実施の形態1の音量調整部21dに代わって音声重畳部21eを備えている。音声重畳部21eは親機1の音声重畳部11fと同じく、通話音声と避難指示音声とを重畳して出力する。なお、その他の構成については実施の形態1と同内容であるため、説明を省略する。
〈2−4.避難指示処理について〉
ここで、本発明の第二の実施形態における親機1及び子機2を用いた、緊急地震速報受信時における避難指示処理について、図1及び図6のブロック図と、図7のフロー図とを用いながら説明する。なお、実施の形態1と同内容の処理については、図4と同じステップ番号を付加することにより説明を省略する。
【0088】
図7は、緊急地震速報の受信待機を行っている親機1の処理フローである。図7に示す処理フローは、親機1の電源が起動し、且つインターネット62との通信が可能な状態において任意のタイミングで開始可能である。なおステップS110〜ステップS150、及びステップS180については、実施の形態1の図4と同内容であるため説明を省略する。
【0089】
ステップS160において、ハンズフリー機能を使用していると判定された場合、後述するステップS175に移行する。ハンズフリー機能を使用していないと判定された場合、音声重畳部11fはステップS170において、アンプのゲインの調整、及び上限値の制限を行う。
【0090】
次に音声重畳部11fはステップS175において、避難指示部11cが出力する避難指示音声と、通信制御部15により外部から入力される通話音声とを重畳するように、音声信号処理部17に指示する。また音声重畳部11fは、避難指示部11cによる避難指示音声の出力が開始された場合に強制的に通話が切断されないように、通信制御部15の制御を行う。
【0091】
この結果、スピーカ18から通話音声と避難指示音声とが同時に出力される。なお、ステップS170により上限を制限される避難指示音声の音量は、通話音声と同音量であることが望ましい。ただし、予め設定によりどちらか一方の音量を他方より大きくして重畳するように指定できる形態であってもよい。重畳出力処理は主要動到達の予測時間まで継続され、出力が完了すると本処理を終了する。
【0092】
以上の処理フローによれば、ユーザがスピーカ18に耳を近づけて通話している際に緊急地震速報が受信されたとしても、通話状態を維持したま、避難指示音声による地震発生の通知を行う。このため、大音量の避難指示音声によりユーザの心身に障害をもたらすことない。また、通話を継続したまま避難指示を行うことができるため、通話相手に地震の発生を知らせることもできる。
【0093】
なお、本実施形態の子機2の処理フローについては、地震情報受信部21aが親機1から地震情報を受信した段階で、避難指示部21b〜音声重畳部21e(不図示)が図7のステップS140〜ステップS180と同様の処理を実行する。このため、詳細については説明を省略する。
【0094】
次に、本発明の第三の実施形態ついて、図面を参照しつつ説明する。
[実施の形態3]
〈3−1.電話システムの構成について〉
実施の形態1と同内容であるため、ここでは説明を省略する。
〈3−2.親機の内部構成について〉
構成部材は実施の形態1と同内容であるが、制御部11が、地震情報算出部11a〜音量調整部11eに加えて通信切断部11g(=通信切断手段)を備えている。通信切断部11gは、地震情報算出部11aにより緊急地震速報の受信が検知され、且つ通信制御部15による通信処理、例えば音声通話やFAXの送受信が実行中であった場合に、強制的に通信を切断する。そして切断後、通信制御部15を用いて、切断を行った通信先に対する再発信を行う。通信が再び確立されると、緊急地震速報受信に起因する通信切断が行われたことを示す通知情報を通信先に送信する。
【0095】
なお、送信する通知情報としては、例えば予めメモリ12に記録されている定型の音声メッセージを用いる。或いは、親機1がFAX機能を持つ場合、FAX通信により所定の通知画像を送信する形態であってもよい。なお、切断後の再発信処理は避難指示処理のバックグラウンド処理として実行され、ユーザには認識されないことが望ましい。これにより、ユーザは避難行動に専念することができる。
〈3−3.子機の内部構成について〉
実施の形態1と同内容であるため、ここでは説明を省略する。
〈3−4.避難指示処理について〉
ここで、本発明の第三の実施形態における親機1を用いた、緊急地震速報受信時における避難指示処理について、図1及び図8のブロック図と、図9のフロー図とを用いながら説明する。なお、実施の形態1と同内容の処理については、図4と同じステップ番号を付加することにより説明を省略する。
【0096】
図8は、緊急地震速報の受信待機を行っている親機1の処理フローである。図8に示す処理フローは、親機1の電源が起動し、且つインターネット62との通信が可能な状態において任意のタイミングで開始可能である。ステップS110〜ステップS180については、実施の形態1の図4と同内容であるため説明を省略する。
【0097】
ステップS170においてアンプのゲイン調整、及び上限値の設定を行った後、通信切断部11gはステップS190において、通信制御部15に対して通信の強制切断を指示する。これにより、ユーザ操作を必要とすることなく、通話状態から非通話状態に遷移する。次に避難指示部11cはステップS200において、表示部13を用いた避難指示画像の表示と、音声信号処理部15及びスピーカ18を用いた避難指示音声の出力とを行う。
【0098】
次に通信切断部11gはステップS210において、ステップS190で切断を行った通信先に対して再発信を行う。なお、発信先の電話番号は、メモリ12等に記録されている通信履歴或いは切断履歴等から取得する。そして通信が確立されると、通信切断部11gはステップS220において、予め定められた定型メッセージをメモリ12より読み出し、通信先に送信する。
【0099】
定型メッセージとしては、例えば「緊急地震速報の受信により、通話が強制的に切断されました。速やかに避難してください」といった音声メッセージを用いる。なお、再発信に対する応答がなく通話が確立できない場合は、主要動の到達予測時刻まで再発信を繰り返し行うことが望ましい。そして主要動の到達予測時刻の到来により、本処理を終了する。
【0100】
以上の処理フローによれば、通話中に緊急地震速報が受信され、且つ避難指示を優先するために通話を強制切断したとしても、通信先に対して切断理由を通知することができる。またあわせて、通信先に対して緊急地震速報が発令されたことを通知することができる。このため、通信先が緊急地震速報受信機を備えていない場合でも、通信先のユーザは地震発生の認識、及び避難活動を行うことができる。
[その他の実施の形態]
以上、好ましい実施の形態及び実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【0101】
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
【0102】
(A)本実施形態では、親機1が緊急地震速報を受信するための通信回線として、有線LAN41、及びインターネット62を使用しているが、これ以外の通信網、例えば専用回線やケーブルテレビ回線から緊急地震速報を受信する形態であってもよい。また、地上デジタル放送やBSデジタル放送のような、放送波から緊急地震速報を取得する形態であってもよい。
【0103】
(B)本実施形態では、本発明の緊急地震速報通知機能を備えた通信装置として、親機1及び子機2を含むコードレス電話機を例にあげているが、広域通信網に接続して緊急地震速報を受信可能な通信装置であれば、これ以外の装置において本発明を実施する形態でもよい。例えば、ファクシミリ装置、携帯電話、インターネット電話、IP通信が可能な子機を備えたIP電話、ナビゲーション装置等において実施する形態であってもよい。
【0104】
(C)本実施形態では、本発明の避難指示処理に関わる親機1及び子機2の各種機能部が、マイクロプロセッサ等の演算処理装置上でプログラムを実行することにより実現されているが、各種機能部が複数の回路により実現される形態でもよい。なおこの場合、通話状態の確認やハンズフリー機能の実行有無の判定を、各回路の動作状態、或いは通信制御部15や音声信号処理部17の動作状態を監視することにより行う。
【0105】
(D)本実施形態では、本発明の避難指示処理に関わる子機として無線通信機能を備えた子機2を例に説明しているが、無線通信機能を持たない有線通信のみ可能な子機において、本発明の避難指示処理を行う形態であってもよい。
【0106】
(E)本実施形態では、三つの実施形態を個別の通信装置で実施する形で説明しているが、各実施形態の構成を一つの通信装置に含め、予めユーザ設定によりどの実施形態の避難指示処理を行うかを選択可能にした形態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】は、本発明の電話システムの構成を示すブロック図である。
【図2】は、本発明の第一の実施形態に係る親機の構成を示すブロック図である。
【図3】は、本発明の子機の構成を示すブロック図である。
【図4】は、本発明の第一の実施形態に係る親機の避難指示処理の処理フローを示すフロー図である。
【図5】は、本発明の第一の実施形態に係る子機の避難指示処理の処理フローを示すフロー図である。
【図6】は、本発明の第二の実施形態に係る親機の構成を示すブロック図である。
【図7】は、本発明の第二の実施形態に係る親機の避難指示処理の処理フローを示すフロー図である。
【図8】は、本発明の第三の実施形態に係る親機の構成を示すブロック図である。
【図9】は、本発明の第三の実施形態に係る親機の避難指示処理の処理フローを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0108】
1 親機(主通信装置)
11a 地震情報算出部(地震情報算出手段)
11b 地震情報送信部(地震情報送信手段)
11c 避難指示部(避難指示手段)
11d 通信状態判定部(通信状態判定手段)
11e 音量調整部(音量調整手段)
11f 音声重畳部(音声重畳手段)
11g 通信切断部(通信切断手段)
13 表示部
15 通信制御部(第一通信手段)
16 アンテナ装置(無線通信部)
18 スピーカ(音声出力部)
2 子機(副通信装置)
21a 地震情報受信部(地震情報受信手段)
21b 避難指示部(避難指示手段)
21c 通信状態判定部(通信状態判定手段)
21d 音量調整部(音量調整手段)
23 表示部
25 通信制御部(第二通信手段)
26 アンテナ装置(無線通信部)
28 スピーカ(音声出力部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網に接続可能な第一通信手段と、前記第一通信手段を用いて通信網より緊急地震速報を受信する地震情報算出手段と、緊急地震速報受信時に音声出力部を用いて避難指示音声を出力する避難指示手段と、
を備えた通信装置において、
緊急地震速報受信時に前記通信装置の通信状態を判定する通信状態判定手段と、
前記通信状態判定手段により前記通信装置が通話処理中であると判定された場合に、前記音声出力部に対して出力音量の上限を設定する音量調整手段と、を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通信装置が通話処理中であり且つハンズフリー機能が停止状態であると前記通信状態判定手段により判定された場合に、前記音量調整手段が前記音声出力部に対して出力音量の上限を設定すること、
を特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第一通信手段と、前記地震情報算出手段と、前記避難指示手段と、前記通信状態判定手段と、前記音量調整手段と、前記第一通信手段を用いて前記地震情報を送信する地震情報送信手段とを備えた主通信装置と、
前記主通信装置と通信可能な第二通信手段と、前記第二通信手段を用いて前記地震情報を受信する地震情報受信手段と、前記避難指示手段とを備えた副通信装置と、
を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第一通信手段と、前記地震情報算出手段と、前記避難指示手段と、前記第一通信手段を用いて前記地震情報を送信する地震情報送信手段とを備えた主通信装置と、
前記主通信装置と通信可能な第二通信手段と、前記第二通信手段を用いて前記地震情報を受信する地震情報受信手段と、前記避難指示手段と、前記通信状態判定手段と、前記音量調整手段とを備えた副通信装置と、
を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第一通信手段と、前記地震情報算出手段と、前記避難指示手段と、前記通信状態判定手段と、前記音量調整手段と、前記第一通信手段を用いて前記地震情報を送信する地震情報送信手段とを備えた主通信装置と、
前記主通信装置と通信可能な第二通信手段と、前記第二通信手段を用いて前記地震情報を受信する地震情報受信手段と、前記避難指示手段と、前記通信状態判定手段と、前記音量調整手段とを備えた副通信装置と、
を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第一通信手段が、無線通信網に接続可能な無線通信部を備え、
前記地震検知送信手段が、前記第一通信手段が備える無線通信部を用いて前記地震情報を前記副通信装置へ送信し、
前記第二通信手段が、無線通信網に接続可能な無線通信部を備え、
前記地震情報受信手段が、前記第二通信手段が備える無線通信部を用いて前記地震情報を受信すること、
を特徴とする請求項3〜請求項5のいずれかに記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信装置が通話処理中であると前記通信状態判定手段により判定された場合に、前記音量調整手段が、通話音声を無音状態にするとともに、前記難指示音声の出力音量の上限を設定すること
を特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の通信装置。
【請求項8】
前記通信装置が通話処理中であると前記通信状態判定手段により判定された場合に、通話音声と前記避難指示音声とを重畳して前記音声出力部より出力する音声重畳手段
を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の通信装置。
【請求項9】
前記通信装置が通話処理中であると前記通信状態判定手段により判定された場合に、前記第一通信手段に対して通話の切断を指示するとともに、前記切断の完了後、前記第一通信手段を用いて前記切断を行った通信装置に対して発信を行い、緊急地震速報受信に起因して前記切断が実施されたことを示す情報を前記通信装置へ送信する通信切断手段、
を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−130419(P2009−130419A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300289(P2007−300289)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】