説明

通信装置

【課題】高周波信号の伝送に適したアンテナ接続ができる構成を提案する。
【解決手段】通信回路と接続された配線パターンを有する第1の基板130と、その第1の基板の端面130aに接続され、第1の基板に対してほぼ直交した状態で固定される第2の基板110とを備える。そして、第2の基板110上に、直線状導体303,304よりなるアンテナを並列に複数配置する。さらに、そのアンテナ配置部のそれぞれの直線状導体303,304の給電点と、第1の基板130上の配線パターンとを導通した状態で接続する第2の基板内のスルーホールを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手の装置のアンテナと近接させて非接触で無線通信を行う通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固定側の装置と可搬装置とを近接させて、両装置の間で非接触で無線通信を行うものが、各種実用化されている。例えば、可搬装置として非接触ICカードや無線タグなどの機器を用意し、その機器を固定側装置であるリーダに近接させて、無線通信を行うようなものが普及している。
【0003】
非接触ICカードや無線タグのような用途の場合、リーダ側のアンテナは比較的大型に構成し、そのリーダ側のアンテナで無線通信可能な範囲内にカードやタグを近接させることで、無線通信が行える。無線通信が可能な範囲としては、例えばリーダのアンテナから数センチ以内とすることが考えられる。非接触で無線通信を行う構成とすることで、従来の端子を有するICカードなどの可搬装置を、コネクタを介して固定側に装着させる場合のような挿抜回数の制約などが無くなり、可搬装置の使い勝手を向上させることができる。
【0004】
一方、このような非接触の無線通信を、例えば数Gbps以上の高速で効率良く行うことを考えた場合、各装置それぞれでアンテナを複数配置して、それぞれのアンテナ間で個別に非接触無線通信を行い、複数の無線通信系でパラレルに通信を行うことが考えられる。
この場合、固定側装置に用意した複数のアンテナと、可搬側装置に用意した複数のアンテナとを、それぞれ対応したものどうしを近接させる必要があり、また装置の小型化を考えた場合、複数のアンテナはある程度近接させて密集させて配置する必要がある。
【0005】
特許文献1には、近接させた機器間で、非接触で無線通信を行う例についての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−115511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、数Gbps以上の高速伝送を非接触の近接無線通信で行う場合、アンテナそのものの特性だけでなく、アンテナと通信回路との接続状態についても、良好な特性を確保する上で重要になっている。
例えば、図13に示すように、通信回路を配置した第1基板1に、アンテナ導体3aを配置した第2基板3を接続する場合、両基板1,3を接続するコネクタ2で接続する構成が一般的である。図13では、断面で示してあり、コネクタ2内の2枚の導電板2a,2bで、第1基板1の端面を挟むと共に、その導電板2a,2bで、両基板1,3間の電気的接続を行う構成としてある。アンテナ導体3aと導電板2aとの間は、配線パターン3bで接続させてある。
【0008】
ところが図13に示す構成の場合、コネクタ2内の導電板2a,2bの形状が複雑であり、この導電板2aなどを使って接続させると、第1基板1内の回路から第2基板2のアンテナ導体3aまでの伝送経路が複雑になり、高周波信号の伝送特性が劣化してしまう。
図14は、この図13に示した接続構成での特性劣化状態を、実際にTDR(Time Domain Reflectometry)で測定した例である。図14に示した特性値の落ち込みが特性の劣化に相当し、図14に示した特性劣化a1が、コネクタ2内の導電板2aの形状に対応したインピーダンス不整合による特性劣化である。なお、特性劣化a2及びa3は、信号を測定するために回路基板に接続した測定装置側のコネクタによる特性劣化である。
【0009】
この図14に示した信号劣化があると、無線伝送される信号がそれだけ劣化することになり、伝送信号の高周波数化の阻害、つまり伝送レートの高速化を阻害する要因になってしまう。
インピーダンス不整合の対処がなされたコネクタも存在するが、構成が複雑で高価であり、簡単には適用できない問題がある。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、高周波信号の伝送に適したアンテナ接続ができる構成を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の通信装置は、通信回路と接続された配線パターンを有する第1の基板と、その第1の基板の端面に接続され、第1の基板に対してほぼ直交した状態で固定される第2の基板とを備える。そして、第2の基板上に、直線状導体よりなるアンテナを並列に複数配置し、そのアンテナ配置部のそれぞれの直線状導体の給電点と、第1の基板上の配線パターンとを導通した状態で接続する第2の基板内のスルーホールを設けた。
【0012】
このように構成したことで、第1の基板側の通信回路と、第2の基板側のアンテナを構成する直線状導体とが、第2の基板のスルーホールを介して直接接続されるようになる。従って、通信回路側の基板とアンテナ側の基板とを、コネクタなどの機構部品で接続する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、通信回路と接続された第1の基板側と、第2の基板側のアンテナを構成する直線状導体とが、第2の基板のスルーホールを介して直接接続され、コネクタなどの機構部品で接続する必要がなくなる。従って、アンテナに給電して送信させる信号や、アンテナで受信して通信回路に供給する信号に、コネクタなどの影響による劣化がなくなり、高周波信号であっても良好に無線通信できるようになる。
また、第2の基板上の複数のアンテナを構成する複数の直線状導体を、第1の基板側とそれぞれ別のスルーホールを介して接続することが可能になり、効率のよい接続が行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態による可搬型装置の構成例を示す斜視図である。
【図2】図1のI−I線に沿う断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるアンテナ配置部のパターン例を示す構成図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるアンテナ基板と通信基板との接続状態の例を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態によるアンテナ構成例を示す説明図である。
【図6】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態によるベース装置の構成例を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施の形態によるシステム構成例を示す構成図である。
【図9】本発明の一実施の形態による通信処理構成例を示す構成図である。
【図10】図9の構成による変復調状態の例を示したタイミング図である。
【図11】本発明の他の実施の形態によるアンテナ基板と通信基板との接続状態の例を示す斜視図である。
【図12】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図13】従来例として、アンテナ基板にコネクタを介して他の基板を接続した例を示した断面図である。
【図14】図13の接続構成での信号特性劣化状態の例を示した特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態の例を、以下の順序で説明する。
1.可搬型装置の構成(図1,図2)
2.アンテナとその周辺の構成例(図3〜図6)
3.ベース装置の構成(図7)
4.システム全体の通信構成(図8,図9)
5.通信状態の説明(図10)
6.アンテナの他の例の説明(図11,図12)
7.実施の形態の変形例の説明
【0016】
[1.可搬型装置の構成]
本実施の形態においては、可搬型装置100とベース装置200とで通信システムが構成される。
まず、図1を参照して可搬型装置100について説明する。
可搬型装置100は、内部にデータ記憶部と通信回路とが内蔵させてあり、後述するベース装置200に接続して使用される。可搬型装置100とベース装置200との間でのデータのやり取りは、非接触無線通信で行う構成としてある。通信構成については図8以降の説明で後述する。
【0017】
可搬型装置100は、箱形の筐体101の内部に、データ記憶部や通信回路などが内蔵させてある。101は、例えば合成樹脂などで構成させてある。
筐体101は、薄型形状としてあり、底面104にアンテナ基板110が配置してある。アンテナ基板110には、表面に複数のアンテナが並列に配置してある。アンテナの構成と配置状態の詳細については後述するが、それぞれのアンテナは、2つの直線状導体部303,304を表面に配置した差動アンテナとして構成してある。
【0018】
図1に示すように、この直線状導体部303,304は、筐体101の厚さ方向(図1中のx方向)に伸びるように配置してある。そして、複数のアンテナは、その直線状導体部303,304が伸びる方向(長手方向)と直交する方向(図1中のy方向)に、一定間隔で配列してある。
【0019】
さらに、各アンテナの直線状導体部303,304の長手方向と直交する方向(即ちy方向)の筐体100の一方及び他方の端部を、テーパ状傾斜面102及び103としてある。テーパ状傾斜面102及び103は、この例では平面としてあり、アンテナ配置面110である底面104側がすぼまる形状としてある。また、テーパ状傾斜面102及び103の内部には、シールド作用を有する板(シールド板)を配置する。
なお、図1の例では、アンテナ配置面110は、底面104から若干奥の位置としてあるが、底面104と同一面上にアンテナ配置面110を配置してもよい。
【0020】
次に、図2を参照して、可搬型装置100の内部構成について説明する。図2は、図1のI−I線に沿う断面図である。
図2に示すように、筐体101の底面104(図2での左端の面)に、アンテナ110基板が配置してあり、そのアンテナ基板110の裏面に、端面130aを突き当てて接続した状態で、通信基板130が固定させてある。アンテナ基板110と通信基板130とは直交した位置関係で配置してある。通信基板130は図1にも破線で筐体101内の配置位置を示してある。アンテナ基板110と通信基板130との接続状態の詳細については、図4〜図6の説明で後述する。
【0021】
通信基板130には、通信回路部品131とデータ書き込み・読出しコントローラ132とコネクタ133とが配置してある。通信回路部品131は、図示しない配線パターンでアンテナ基板110側のアンテナと接続させてあり、無線送信処理及び無線受信処理を行う。送信処理や受信処理の例は後述する。
コネクタ133には、2つの記憶ユニット141,142が接続してあり、データ書き込み・読出しコントローラ132の制御でデータの読出し及び書き込みが行われる。各記憶ユニット141,142は、それぞれ例えばSSD(Solid State Drive)と称される不揮発性メモリを使った記憶装置、或いはハードディスクドライブ装置で構成してあり、それぞれ例えば数百Gバイト程度の大容量データを記憶する。
【0022】
また図2に示すように、通信基板130とは別の位置に、電源基板150と制御基板160が配置してある。電源基板150には、電源回路部品151が配置してあり、内蔵されたバッテリ170から得た電源を所望の電圧に変換して各部に供給する処理が行われる。また、外部から得られた電源でバッテリ170を充電させる制御も、電源回路部品151が行う。制御基板160には、制御回路部品161が配置してあり、この可搬型装置100内の動作を制御する中央制御ユニットとして動作する。
なお、図2では図示しないが、通信基板130と電源基板150と制御基板160は、フレキシブル基板などでそれぞれの配線を接続してある。
【0023】
[2.アンテナとその周辺の構成例]
次に、可搬型装置100のアンテナ基板110に配置されるアンテナの構成と、その周辺構成について、図3〜図6を参照して説明する。アンテナ基板上のアンテナそのものについては、ベース装置200のアンテナ配置面204に配置されるアンテナについても同一の構成である。
【0024】
アンテナ基板110は、硬質の配線基板であるアンテナ基板300で構成される。アンテナ基板300は、図1及び図2に示した可搬型装置100の底面104に配置できるように、細長い形状としてある。
図3に示すように、アンテナ基板110の表面には、接地導体部301がほぼ全面に設けてあり、楕円形の非導電部302が、それぞれのアンテナ配置部ごとに設けてある。非導電部302は、接地導体部301が形成されていない箇所である。接地導体部301は、通信基板130側の接地電位部と電気的に接続させてある。
【0025】
それぞれの非導電部302内には、2つの直線状導体部303,304が配置してある。この2つの直線状導体部303,304は、可搬型装置100の厚さ方向(図1でのx方向)を長手方向として、平行に配置してある。この2本の直線状導体部303,304で、差動アンテナが構成される。
直線状導体部303,304の長さLは、例えば25mmとしてあり、2つの直線状導体部303と直線状導体部304との幅Wは、例えば6mmとする。これらの値は、無線通信を行う信号の周波数として7.5GHz帯の信号とし、転送レートを5Gbpsとしたときの一例の値である。なお、可搬型装置100側のアンテナのこれらの寸法の数値と、ベース装置側のアンテナのこれらの数値は等しくしてある。
【0026】
図4に示すように、アンテナ基板110の裏面110a側には、通信基板130の端面130aを突き合わせた状態で接続してある。この接続状態で確実に固定されるように、接続部の四隅などにアングル材191を配置して補強してある。
【0027】
図5は、1つのアンテナの詳細を示した図である。
接地導体部301で囲まれた楕円形の非導電部302内に、同じ太さの2本の直線状導体部303及び304が平行に配置してあり、各直線状導体部303,304の一端に給電点303a,304aが設けてある。給電点303a,304aには、アンテナ基板110に設けたスルーホールを介して、通信基板130側のアンテナ接続用導電部が接続してある。1つのアンテナの一方の給電点303aと他方の給電点304aには、相互に逆位相の信号である差動信号を供給する。
【0028】
また図5に示すように、各直線状導体部303,304の他端には、抵抗接続点303b,304bが設けてあり、その抵抗接続点303bと抵抗接続点304bgとの間に、抵抗器305を接続してある。抵抗器305についても、アンテナ基板110の裏面側に配置してある。なお、図5の例では抵抗器で接続した例としてあるが、他の素子で接続してもよい。
この図5に示す1個のアンテナが、図3及び図4に示すように複数並列に連続して配置してある。
【0029】
図6は、アンテナ基板110と通信基板130との接続状態を断面で示した図である。図6は、アンテナ基板110上に直線状導体部303(又は304)が配置された位置の断面を示してあり、直線状導体部303の給電点303a(又は304a)の基板110にはスルーホール110bを設けてある。このスルーホール110bの裏面110a側は、通信基板130の端面130aの固定部としてある。そのスルーホール110bに埋められた導電部材(無鉛ハンダなど)を介して、給電点303aを通信基板130の配線パターン130bと電気的に接続してある。配線パターン130bは、図2に示した通信回路部品131のアンテナ接続端子に接続された導電部である。
【0030】
また、アンテナ基板110上の接地導体部301は、基板110の表面から裏面に連続して設けてあり、その裏面110a側の接地導体部301を、通信基板130の配線パターン130cと電気的に接続してある。図6の例では、通信基板130上の配線パターン130cは、配線パターン130bとは反対側の面に設けてある。
【0031】
また図6に示すように、直線状導体部303(又は304)の抵抗接続点303b(又は304b)を、スルーホール110cを介して、基板110の裏面側と導通させ、裏面側に抵抗器305を配置してある。
【0032】
この図6に示すように、アンテナ基板110と通信基板130とをスルーホール110bを介して直接、直交状態に接続してあることで、従来のようにアンテナ基板をコネクタを介して通信基板側と接続した場合に比べて特性改善ができる。即ち、図13に示した従来例のように、コネクタを介してアンテナ基板を接続した構成の場合には、そのコネクタ内で高周波信号の劣化があるが、本実施の形態の場合にはコネクタがなく、そのような信号劣化を防ぐことができる。具体的な特性については示さないが、図14に示した特性劣化a1が発生しない、高周波信号の伝送を行う上で特に劣化が発生しない伝送状態である。
【0033】
[3.ベース装置の構成]
次に、図7を参照して、可搬型装置100が接続されるベース装置200の構成を説明する。
ベース装置200は、図7に示すように、可搬型装置接続部210,220,230,240を備え、それぞれの接続部210〜240に、1個ずつの可搬型装置100が接続可能である。図2の例では、接続部210だけが可搬型装置100が接続されていない状態であり、3つの接続部220,230,240に、可搬型装置100を配置した状態を示している。各接続部210〜240は同一構成である。
【0034】
図7に示すように、可搬型装置接続部210は、細長い窪みが形成されたスロット状の形状であり、テーパ状傾斜面202,203を有し、両テーパ状傾斜面202,203の間にアンテナ配置面204を設けてある。テーパ状傾斜面202,203の配置間隔は、可搬型装置100側のテーパ状傾斜面102,103の配置と全く同じとしてあり、傾斜角度も同じである。また、テーパ状傾斜面202及び203の内部には、シールド作用を有する板(シールド板)を配置する。
アンテナ配置面204に配置されるアンテナについても、可搬型装置100側のアンテナ基板110に配置されるアンテナと同様の配置状態である。即ち、アンテナ配置面204には、それぞれが直線状導体部303,304を有するアンテナを複数並べてあり、その複数のアンテナを並べる間隔なども、可搬型装置100側のアンテナ基板110側と等しくしてある。
【0035】
このように構成されるベース装置200の各接続部210〜240には、基本的に可搬型装置100を載せるだけで接続が完了する構成としてある。この接続時には、可搬型装置100のテーパ状傾斜面102,103が、ベース装置200側のテーパ状傾斜面202,203と接するように載せる。なお、図7では、アンテナ配置面204にアンテナだけを設けた構成としてあるが、例えば可搬型装置100に電源を供給する端子などを設けてもよい。
【0036】
[4.システム全体の通信構成]
図8は、通信システム全体の内部構成を示した図である。
図8に沿って説明すると、可搬型装置100内には、例えばハードディスクドライブで構成される記憶部112を備え、その記憶部112に各種データを記憶させることができる。記憶部112は、図2に示した記憶ユニット141,142と、制御回路部品161などで構成される。
記憶部112には、非接触通信部113が接続してあり、ベース装置200側と非接触通信で、記憶部112に記憶させるデータの受信、及び記憶部112から読出したデータの送信などが行われる。非接触通信部113は、図2に示した通信回路部品131などで構成される。非接触通信部113では、送信時に送信に必要な変調処理や複数のアンテナへのデータ分割処理が行われる。また受信時に、複数のアンテナで受信したデータの結合処理や、受信に必要な復調処理などが行われる。
【0037】
非接触通信部113には、複数のアンテナ111a〜111nが接続してあり、それぞれのアンテナ111a〜111nで並列にデータの送信及び受信が行われる。アンテナ111a〜111nは、可搬型装置100のアンテナ基板110に配置したそれぞれのアンテナを示す。ここではアンテナ111a〜111nの具体的な数は示さないが、例えば10個から数十個程度のアンテナで構成する。但し可搬型装置100のアンテナの数とベース装置200のアンテナの数は等しくする必要がある。
【0038】
ベース装置200は、非接触通信部206を備え、この非接触通信部206に複数のアンテナ205a〜205nが接続させてあり、複数のアンテナ205a〜205nで並列に送信及び受信が可能な構成としてある。非接触通信部206では、送信時には、送信に必要な変調処理や各アンテナへのデータ分割処理が行われる。また受信時には、各アンテナで受信したデータの結合処理や、受信に必要な復調処理などが行われる。アンテナ205a〜205nは、アンテナ配置面204に配置してあり、可搬型装置100側のアンテナ111a〜111nと同じ数で同じ配置間隔で配置してある。可搬型装置100をベース装置200の接続部210などに接続させた状態では、可搬型装置100側のそれぞれのアンテナ111a〜111nは、ベース装置200側のアンテナ205a〜205nと、1つ1つが正確に対向した位置となるようにしてある。
【0039】
非接触通信部206は、内部バスを介して中央制御ユニット(CPU)207及びデータ処理部208などと接続してある。例えば、CPU207の制御で、データ処理部208で処理されたデータを、非接触通信部206に接続されたアンテナ205a〜205nから並列で無線送信させる。或いは、非接触通信部206に接続されたアンテナ205a〜205nで受信したデータを、CPU207の制御で、データ処理部208に供給して処理させることが行われる。また、ベース装置200には図示しないデータの入力部や出力部を設けて、可搬型装置100側に送信するデータの外部からの入力や、可搬型装置100側から受信したデータの外部への出力を行うようにしてもよい。
【0040】
[5.通信状態の説明]
次に、可搬型装置100とベース装置200との間で、非接触無線通信が行われる状態について、図9及び図10を参照して説明する。
図9は、無線通信の具体的な構成例を示したものである。図9では、説明を簡単にするために、可搬型装置100を送信側、ベース装置200を受信側として示してあるが、実際にはベース装置200を送信側、可搬型装置100を受信側とした逆の構成も備えて、双方向にデータ通信が行えるようにしてある。
【0041】
図9に基づいて説明すると、可搬型装置100側では、入力バッファ121に入力した送信データは、イコライザ122を介して送信アンプ123に供給し、送信アンプ123から複数のアンテナ111a〜111nに分割して送信データを供給する。複数のアンテナ111a〜111nに分割する処理としては、例えばN(Nは任意の整数)ビットのパラレルデータの各ビット位置ごとに、それぞれ別のアンテナに供給するように分割する。或いは、その他の分割処理でもよい。送信アンプ123から各アンテナ111a〜111nに供給する送信信号については、相互に位相が反転した差動信号を送信アンプ123などで生成させて、その差動信号を各アンテナ111a〜111nの2つの直線状導体部303,304に供給する。
【0042】
ベース装置200側では、アンテナ201a〜201nで受信したデータを、それぞれ受信アンプ221に供給し、1系統の受信データに合成した上で増幅する。このとき、アンテナ201a〜201nの2つの直線状導体部303,304では差動信号が受信される。受信アンプ221が出力する受信データ(差動信号)は、データ復調部222に供給して復調処理し、復調された受信データを、第1出力バッファ223を介して出力させ、後段の回路に供給する。また、データ復調部222で復調された受信データを、自動利得調整を行うAGC回路(自動利得調整回路)224で利得調整をした後、第2出力バッファ225を介して出力させ、後段の回路に供給する。
【0043】
図10は、図9の構成での無線通信状態を示したタイミング図である。
図10(a)に示すようにバッファ121に送信データが入力したとき、アンテナ111a〜111nから送信する信号は、図10(b)に示す状態となる。送信信号は差動信号であるので、図10(a)及び(b)に破線で示す逆位相の信号についても送信されている。
この送信信号は、受信側のアンテナ201a〜201nでは、図10(c)に示すように、変化分を示した微分信号として受信される。受信信号についても差動信号として受信されるので、破線で示すように、相互に逆位相の2系統の信号が得られる。
【0044】
この微分信号となった受信信号は、図10(d)に示すように、増幅された後、データ復調部222で、+方向の閾値及び−方向の閾値と比較されて、ヒステリシスを持った回路で元の送信データが復調されて、図10(e)に示す出力信号が得られる。無線伝送途中でのエラーがない限り、図10(a)に示した送信側の信号と、図10(e)に示した受信側の信号は、同じ信号となる。
【0045】
[6.アンテナの他の例の説明]
次に、図11及び図12を参照して、アンテナ基板110へのアンテナの配置状態の変形例について説明する。
この図11,図12の例は、可搬装置が備えるアンテナ基板110′に2列にアンテナを配置した例である。
即ち、図11に示すように、アンテナ基板110′の表面には、接地導体部401がほぼ全面に設けてあり、楕円形の非導電部402が、それぞれのアンテナ配置部ごとに設けてある。非導電部402は、接地導体部401が形成されていない箇所である。
【0046】
それぞれの非導電部402内には、4つの直線状導体部403,404,405,406が配置してある。配置状態としては、2つの直線状導体部403,404を平行に隣接して配置し、他の2つの直線状導体部405,406を平行に隣接して配置する。なお、図示はしないが、2つの直線状導体部403,404は端部を抵抗器などの素子で接続してあり、他の2つの直線状導体部405,406についても、端部を抵抗器などの素子で接続してあり、それぞれ個別の差動アンテナとして機能する構成である。一方の組の直線状導体部403,404には、1組の差動信号を供給する。他方の組の直線状導体部405,406にも、別の1組の差動信号を供給する。
従って、1つの非導電部402内には、2つの差動アンテナが配置された状態になっている。そして、その2つの差動アンテナの内の一方のアンテナが、アンテナ基板110′の長手方向に配列された第1のアンテナ列と、他方のアンテナが、アンテナ基板110′の長手方向に配列された第2のアンテナ列とを備える構成となっている。一方のアンテナは、2つの直線状導体部403,404で構成されるアンテナである。他方のアンテナは、2つの直線状導体部405,406で構成されるアンテナである。なお、図11の構成では、2つのアンテナで1つの非導電部402を共有する構成としたが、1つ1つのアンテナごとに非導電部402を設けて、接地導体部401で囲う構成としてもよい。
【0047】
図12は、図11に示したアンテナ基板110′と通信基板130′との接続状態を断面で示した図である。
図12に示すように、一方の組の直線状導体部403,404と、他方の組の直線状導体部405,406とが向き合った位置の裏面側のアンテナ基板110′に、通信基板130′を接続して固定してある。2つの基板110′,130′の固定状態は、例えば図4に示した2つの基板110,130の接続構成と同じ構成が適用可能である。そして、それぞれの導体部403〜406の端部に電気的に接続されるスルーホール110b′を個別に設け、それぞれのスルーホール接続点をアンテナ給電点とする。
【0048】
各スルーホール110b′は、通信基板130′の表面及び裏面の配線パターン130d及び130eと個別に電気的に接続してある。それぞれの配線パターン130d,130eは、通信基板130に配置された通信回路部品(図示せず)と接続してある。また、通信基板130′は4層の配線層を備えた基板としてあり、内部の配線層に、接地電位の配線パターン130f,130gを備える。この接地電位の配線パターン130f,130gは、アンテナ基板110′の接地導体部401と電気的に接続してある。図12ではこの接地導体部401と配線パターン130f,130gとを接続した位置は図示されていないが、他の位置で接続する。接地電位の配線パターン130f,130gが、基板130′の表面又は裏面に配置できる場合には、表面又は裏面に配置してもよい。
なお、図11及び図12に示した構成は、可搬装置側のアンテナであるが、ベース装置側のアンテナも同様の2列配列とする。
【0049】
この図11及び図12に示した2列のアンテナ列を配置した構成としたことで、1つのアンテナ基板に配置できるアンテナの数がそれだけ増え、限られた配置スペースに効率良く多数のアンテナを配置できるようになる。
【0050】
[7.実施の形態の変形例の説明]
なお、各図に図示したアンテナの配置状態は、構成が判り易いように比較的大きく示してあるが、図示したものよりもサイズの小さなアンテナをより多数配置するようにしてもよい。また、図4などに示した例では、複数のアンテナを1列に配置した例とし、図11の例では2列配列とした例を示したが、3列やそれ以上の複数列でアンテナを配置してもよい。
また、アンテナ素子そのものの構成として、2本の直線状導体を平行に配置して、差動信号を供給する差動アンテナとしたが、1本の直線状導体で構成されるアンテナとしてもよい。但し、図5に詳細を示した差動アンテナとして構成して、差動信号の無線伝送を行うことで、高周波信号による非接触近接無線通信が高い伝送効率で行える。
また、複数配置したアンテナの使い分けについては、単に並列に使用するとだけ述べたが、例えば送信に使用するアンテナ群と受信に使用するアンテナ群を分けるなどの、より高度な使い分けをしてもよい。
【0051】
また、図1や図2に示した可搬型装置100やベース装置200の形状についても、好適な一例を示したものであり、アンテナ配置部の両端にテーパ状の傾斜面を有する形状であれば、その他の形状としてもよい。さらに、図3の構成例として示した可搬型装置100は、データ記憶(記録)を行う装置としたが、その他の処理を行う装置として構成してもよい。
【0052】
また、図4などに示したアンテナ構成では、アンテナを構成するアンテナ基板上の直線状導電部303,304は、露出した状態としてある。これに対して、可搬型装置100やベース装置200に配置する際に、表面に何らかの保護部材を配置して、電極部材が露出しない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
100…可搬型装置、101…筐体、102,103…テーパ状傾斜面、104…底面、110…アンテナ基板、110a…裏面、110b…スルーホール、110c…スルーホール、111a〜111n…アンテナ、112…記憶部、113…非接触通信部、121…入力バッファ、122…イコライザ、123…送信アンプ、130…通信基板、130a…端面、130b,130c…配線パターン、131…通信回路部品、132…データ書き込み・読出しコントローラ、133…コネクタ、141,142…記憶ユニット、150…電源基板、151…電源回路部品、160…制御基板、161…制御回路部品、170…バッテリ、191…アングル材、200…ベース装置、201…筐体、202,203…テーパ状傾斜面、204…アンテナ配置面、205a〜205n…アンテナ、206…非接触通信部、207…中央制御ユニット(CPU)、208…データ処理部、210,220,230,240…可搬型装置接続部、221…受信アンプ、222…データ復調部、223…第1出力バッファ、224…AGC回路、225…第2出力バッファ、300…アンテナ基板、301…接地導体部、302…非導電部、303,304…直線状導体部、303a,304a…給電点、303b,304b…抵抗接続点、305…抵抗器、401…接地導体部、401…接地導体部、402…非導電部、403,404,405,406…直線状導体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回路と接続された配線パターンを有する第1の基板と、
前記第1の基板の端面に接続され、前記第1の基板に対してほぼ直交した状態で固定される第2の基板と、
前記第2の基板上に配置された、直線状導体よりなるアンテナを並列に複数配置したアンテナ配置部と、
前記アンテナ配置部のそれぞれの直線状導体の給電点と、前記第1の基板上の配線パターンとを導通した状態で接続する前記第2の基板内のスルーホールとを備えた
通信装置。
【請求項2】
前記第2の基板上の前記直線状導体の周囲に接地電位部を設け、
前記第2の基板上の接地電位部を、前記第1の基板の接地電位部と導通した状態で接続した
請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記直線状導体は、2本の直線状導体を1組とし、その1組の直線状導体を所定の素子を介して接続し、その接続した直線状導体の給電点に差動信号を供給するアンテナとして構成した
請求項2記載の通信装置。
【請求項4】
前記直線状導体を2列に配置し、その2列の内の一方の列の直線状導体の給電点を、スルーホールを介して前記第1の基板の第1の配線層に接続し、
前記2列の内の他方の列の直線状導体の給電点を、スルーホールを介して前記第1の基板の第2の配線層に接続した
請求項1記載の通信装置。
【請求項5】
前記第2の基板上の前記直線状導体の周囲に接地電位部を設け、
前記前記第2の基板の接地電位部を、前記第1の基板の内部の第3の配線層の接地電位部と接続した
請求項4記載の通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−35733(P2011−35733A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180904(P2009−180904)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】