説明

通報システムおよび通報の受付方法。

【課題】あまりコストを掛けることなく、受付指令センタのシステムに障害が発生した場合に通報者からの通報に応対できるようにする。
【解決手段】受付指令システム1ごとに、他の受付システムが通報を受け付け得る状態であるか否かを監視する監視装置14と、他の受付システムが通常管轄する地域の電話機4からの呼があった際に、当該他の受付システムが通報を受け付け得る状態でないことが確認されている場合に限り、その受付指令システム1自身の電話オペレータの通話ユニット11とその電話機4とを接続する、回線制御装置13と、を設ける。さらに、収容局2ごとに、その収容局2がカバーする受付指令システム1が通常管轄する地域の電話機4から発信された通報に係る呼をその受付指令システム1および他の受付システムの両方に送信する分配装置21を、設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる110番通報または119番通報の受付を行うシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消防または警察などの受付指令センタは、通報の応対を常に安定的に行うことが要求される。しかし、大規模な災害によって受付指令センタのシステムまたは通信回線にダメージが生じ、受付指令センタが機能しなくなることがあり得る。また、システムまたは通信回線に障害が発生し、受付指令センタが機能しなくなることもあり得る。
【0003】
従来は、受付指令センタが機能しなくなった場合は、通報者からの電話が受付指令センタの代わりに支局(警察署、消防署、または派出所など)に繋がるように通信事業者(NTTなど)に対して依頼する。通信事業者は、その依頼に従って、交換機の設定を変更する。
【特許文献1】特開2002−218070号公報
【特許文献2】特開2003−60809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、通報の内容は多様なので、一定の訓練を受けた電話オペレータでなければ、通報に十分に応対することはできない。よって、支局は、本来、通報の応対を総合的に行う組織ではないので、通報が転送されてきても、期待通りに応対することができないことがある。
【0005】
そこで、受付指令センタのシステムを二重化することが考えられる。しかし、そうすると、多くのコストが掛かる。
【0006】
特許文献1には、複数の受付指令センタのシステムを連携する方法が開示されている。特許文献2には、通報者からの発呼信号を、緊急車両および要員が確保されている最寄の消防署および警察署に着信させる方法が開示されている。
【0007】
しかし、これらの方法では、受付指令センタのシステムに障害が発生した場合に、そのシステムのバックアップを行うことは、できない。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑み、あまりコストを掛けることなく、受付指令センタのシステムに障害が発生した場合に通報者からの通報に応対できるようにすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る通報システムは、通報を受け付ける受付システムごとに、他の受付システムが通報を受け付け得る状態であるか否かを監視する監視手段と、他の受付システムが通常管轄する地域の電話機からの呼があった場合に、当該他の受付システムが通報を受け付け得る状態でないことが前記監視手段によって確認されていれば、当該受付システム自身の電話オペレータの端末と当該電話機とを接続し、当該他の受付システムが通報を受け付け得る状態であることが前記監視手段によって確認されていれば、当該端末と当該電話機とを接続しない、接続制御手段と、が設けられ、前記受付システムをカバーする電話局ごとに、当該受付システムが通常管轄する地域の電話機から発信された通報に係る呼を当該受付システムおよび他の受付システムの両方に送信する、発信呼配信手段、が設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記受付システムごとに、当該受付システムが通常管轄する地域からの通報に応対するためのデータを記憶させたデータベースと、当該受付システムと前記データベースにアクセスする他の受付システムとをIP網を介して接続するゲートウェイと、が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、あまりコストを掛けることなく、受付指令センタのシステムに障害が発生した場合に通報者からの通報に応対できるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は緊急通報処理システム1KTの全体的な構成の例を示す図、図2は回線制御装置13の構成の例を示す図、図3は監視装置14の構成の例を示す図である。
【0013】
本発明に係る緊急通報処理システム1KTは、図1に示すように、受付指令システム1、収容局2、支局通信端末3、および電話機4などによって構成される。
【0014】
受付指令システム1は、通話ユニット11、回線接続装置12、回線制御装置13、監視装置14、通報応対用データベース15、およびゲートウェイ16などによって構成される。この受付指令システム1は、警察または消防などの公共機関の受付指令センタ(「コールセンタ」などと呼ばれることもある。)ごとに設置され、緊急の通報に応対するために用いられる。
【0015】
また、この受付指令システム1によると、他の受付指令センタの受付指令システム1と連携することができる。そして、一方に障害が発生し管轄の電話機4からの通報に応対できなくなった場合に、他方がそれに応対することができる。
【0016】
通話ユニット11は、受付指令センタに勤務する電話オペレータが使用する通話用の通信端末であって、パーソナルコンピュータ、マイク、およびイヤホンなどによって構成される。1人の電話オペレータごとに1組の通話ユニット11が割り当てられている。通話ユニット11は、受付指令台に設置されている。電話オペレータは、自分に割り当てられた通話ユニット11を操作することによって通報に応対する。通話ユニット11として、従来から受付指令センタに設置されている通話ユニットが用いられる。
【0017】
回線接続装置12は、従来通り、回線制御装置13からの制御信号に基づいて、通話ユニット11と通信事業者(例えば、NTT)の回線とを接続するための処理を行う。例えば、通信事業者の回線を介して届いた電話機4からの着信呼を、空いている通話ユニット11に振り分ける処理または電話オペレータの通話ユニット11と支局通信端末3とを接続するための処理などを行う。つまり、回線接続装置12は、PBX(構内交換機)に相当する役割を果たす。VoIPの内線電話が受付指令システム1で用いられている場合は、回線接続装置12として、VoIPトランクなどが用いられる。
【0018】
回線制御装置13は、図2に示すように、モード切換命令受信部131、接続先支局決定部132、着信呼応答要否判別部133、および接続先ユニット決定部134などによって構成され、上述のように回線接続装置12を制御する。
【0019】
監視装置14は、図3に示すように、自センタ障害監視部141、自センタ障害情報通知部142、他センタ障害情報受信部143、他センタ障害監視部144、およびモード切換命令部145などによって構成される。このような構成により、その受付指令システム1に障害が発生していないかどうかを監視し、その結果を適宜、他の受付指令システム1に通知する。また、他の受付指令システム1に障害が発生していないかどうかを監視する。
【0020】
通報応対用データベース15は、後に説明する、電話機4から掛かってきた通報に応対するための、種々のデータが保存されている。
【0021】
ゲートウェイ16は、その受付指令システム1の通話ユニット11、回線接続装置12、回線制御装置13、監視装置14、および通報応対用データベース15を、IP網を介して接続する。これにより、その受付指令システム1と他の受付指令システム1とは、VPN(Virtual Private Network)を形成する。
【0022】
収容局2は、通信事業者の収容局(電話局)であって、従来通り、その収容局2自身がカバーする受付指令システム1に、電話機4からの呼を中継する。さらに、本実施形態の収容局2には、分配装置21が設けられている。分配装置21は、電話機4からの呼を、その受付指令システム1の連携相手である他の受付指令システム1に分配する。また、分配装置21は、受付指令システム1からの音声信号を複数の支局通信端末3に分配する機能(多者通話の機能)をも有する。
【0023】
支局通信端末3は、受付指令システム1からの指令を受信し、それを警察官または隊員に対して出力する。受付指令システム1が警察の受付指令センタである場合は、警察署、派出所、または交番など、通報者に対処できる警察官が駐在する施設ごとに設置される。受付指令システム1が消防の受付指令センタである場合は、消防署または消防団など、通報者に対処できる隊員が駐在する施設ごとに設置される。以下、警察官または隊員が駐在する施設を「支局」と記載する。
【0024】
次に、通話ユニット11、回線接続装置12、図2に示す回線制御装置13の各部、図3に示す監視装置14の各部、収容局2、支局通信端末3、および電話機4の処理内容について、障害の監視のための処理、通報を受付のための処理、および支局への指令のための処理に大別して詳細に説明する。
【0025】
〔障害の監視のための処理〕
図3において、自センタ障害監視部141は、その受付指令システム1に設けられている通話ユニット11、回線接続装置12、および回線制御装置13などの状況を監視している。
【0026】
自センタ障害情報通知部142は、その受付指令システム1の通信の障害に関する情報を、連携相手である他の受付指令システム1に通知する処理を、次のように行う。
【0027】
自センタ障害監視部141による監視の結果、通話ユニット11と支局通信端末3または電話機4との通信に障害が発生していることが分かった場合に、障害が発生した旨を示す障害発生信号SG1を、連携相手である他の受付指令システム1の監視装置14に宛てて直ちに送信する。
【0028】
または、障害が発生していない場合は、定期的に、障害が発生していない旨を示す正常動作信号SG2を、連携相手である他の受付指令システム1の監視装置14に宛てて送信する。
【0029】
または、連携相手である他の受付指令システム1から問合せがあった場合に、自センタ障害情報通知部142は、自センタ障害監視部141に障害の発生の有無を確認させ、その結果に応じて障害発生信号SG1または正常動作信号SG2を、当該他の受付指令システム1に宛てて送信する。
【0030】
なお、障害発生信号SG1および正常動作信号SG2は、ゲートウェイ16によってIP網を介して他の受付指令システム1の監視装置14に届けられる。または、通信事業者の回線を介して届けてもよい。
【0031】
他センタ障害情報受信部143は、他の受付指令システム1からの障害発生信号SG1および正常動作信号SG2を受信する。
【0032】
他センタ障害監視部144は、連携相手である他の受付指令システム1で通信の障害が発生していないかどうかを、次のように監視する。
【0033】
前述のように、当該他の受付指令システム1からは、当該他の受付指令システム1における通信が正常であれば、定期的に正常動作信号SG2が送信されてくる。もしも、前に正常動作信号SG2が送信されてきてから所定の期間が経過しても、正常動作信号SG2が送信されてこなかった場合は、当該他の受付指令システム1に対して、障害の発生の有無を問い合わせる。
【0034】
問合せ後、所定の時間が経過するまでに正常動作信号SG2が送信されてきたら、当該他の受付指令システム1が正常であると判別する。一方、問合せ後、所定の時間が経過しても正常動作信号SG2が送信されてこなかった場合は、当該他の受付指令システム1に障害が発生していると判別する。障害発生信号SG1が送信されてきた場合も、障害が発生していると判別する。
【0035】
モード切換命令部145は、他センタ障害情報受信部143によって障害発生信号SG1が受信された場合に、直ちに回線制御装置13に対して、その障害発生信号SG1の送信元である他の受付指令システム1について障害発生時モードに切り換えるように命令する。また、その後、当該他の受付指令システム1の障害が解消し通常通り通信が可能になった場合は、当該他の受付指令システム1について障害発生時モードを解除し通常モードに切り換えるように命令する。
【0036】
図2において、回線制御装置13のモード切換命令受信部131は、監視装置14からモードの切換えに関する命令を受け付ける。
【0037】
〔通報を受付のための処理〕
電話機4において110番または119番などの緊急番号がダイヤルされると、従来通り、その電話機4のエリアを受け持つ特定の受付指令システム1に呼が届けられる。その呼は、その受付指令システム1をカバーする収容局2を経由するが、この際に、その収容局2の分配装置21は、その受付指令システム1と連携する他の受付指令システム1にも、呼を分配する。よって、従来通りの受付指令システム1だけでなく、連携相手である他の受付指令システム1にも着信呼(着呼)がある。
【0038】
図2において、回線制御装置13の着信呼応答要否判別部133は、回線接続装置12に着信呼があった場合に、通話ユニット11を呼び出すべきか否かを、次のように判別する。
【0039】
その呼の発信者番号に基づいて、その回線制御装置13が設置されている受付指令センタが、その呼の発信元を管轄しているか否かを判別する。または、他のいずれの受付指令システム1が管轄しているかを判別する。
【0040】
その受付指令センタが管轄すると判別した場合は、従来通り、空いている通話ユニット11を呼び出す。そして、その通話ユニット11の電話オペレータが所定の操作を行うと、その通話ユニット11と発信元である電話機4とを接続するように回線接続装置12を制御する。
【0041】
一方、発信元を他の受付指令センタが管轄していると判別した場合は、現在の当該他の受付指令センタの受付指令システム1についてのモードに応じて、次のような処理を行う。
【0042】
通常モードである場合は、その着信呼を放置するように回線接続装置12を制御する。つまり、通話ユニット11を呼び出さない。この場合は、当該他の受付指令センタにおいて、応対が可能だからである。一方、障害発生時モードである場合は、空いている通話ユニット11を呼び出し、その通話ユニット11と電話機4とを接続するように回線接続装置12を制御する。そして、電話オペレータは、障害が発生している当該他の受付指令センタの代わりに、通報に応対する。
【0043】
なお、着信呼に係る電話機4と接続させる通話ユニット11を決定する処理は、接続先ユニット決定部134が行う。
【0044】
〔支局への指令のための処理〕
通話ユニット11の電話オペレータは、通報者と会話し、どのように対処すべきかを判断する。そして、警察官、救急隊員、または消防隊員の出動、病院の手配、その他必要な措置を講じるように、所定の支局に指令する。
【0045】
この際に、回線制御装置13の接続先支局決定部132は、次のように、その通話ユニット11を支局の支局通信端末3と接続するように回線接続装置12を制御する。
【0046】
通報者の電話機4の管轄がその受付指令センタである場合は、通常通り、その受付指令センタの配下にある各支局の支局通信端末3とその電話機4とを接続するように回線接続装置12を制御する。すると、両者は、通常通り、専用の回線を介して接続される。
【0047】
一方、通報者の電話機4の管轄が他の受付指令センタである場合は、当該他の受付指令センタ配下にある各支局の支局通信端末3とその通話ユニット11とを、非常用に確保しておいた回線を介して接続するように、回線接続装置12を制御する。通話ユニット11からの音声信号は、これらの支局通信端末3をカバーする収容局2の分配装置21によって分配され、これらの支局通信端末3に届けられる。
【0048】
以上のような処理によって、複数の受付指令センタの受付指令システム1同士が連携し、いずれかの受付指令システム1に障害が発生した際に、残りの受付指令システム1がバックアップ(支援)を行うことができる。
【0049】
なお、電話オペレータは、他の受付指令センタで本来応対されるべき通報があった場合は、IP網を介して当該他の受付指令センタの通報応対用データベース15にアクセスし、その通報に応対するために必要なデータを参照することができる。
【0050】
また、受付指令システム1は、他の受付指令システム1の通報応対用データベース15に記憶されている全部または一部のデータを、当該他の受付指令システム1が正常に動作している間にダウンロードしてもよい。
【0051】
次に、地域Xの消防および救急を管轄する受付指令センタAの受付指令システム1Aと地域Yの消防および救急を管轄する受付指令センタBの受付指令システム1Bとが連携する場合を例に、処理の流れを説明する。以下、受付指令センタAをカバーする収容局2を「収容局2A」と記載し、受付指令センタBをカバーする収容局2を「収容局2B」と記載する。
【0052】
〔受付指令システム1A、1Bが正常に動作している場合〕
図4は受付指令システム1A、1Bが正常である場合の通報の受付の処理の流れの例を説明する図、図5は受付指令システム1A、1Bが正常である場合の支局に対する指令の処理の流れの例を説明する図である。
【0053】
受付指令システム1A、1Bがともに正常に支局通信端末3および電話機4と通信できるときは、図4に示すような手順で処理が行われる。
【0054】
通報者が地域Xから電話機4を操作して119番をダイヤルすると(丸数字1)、収容局2Aの分配装置21は、その電話機4からの呼を受付指令システム1Aおよび受付指令システム1Bの両方に分配し中継する。
【0055】
電話機4からの呼が受付指令システム1Aの回線接続装置12に届くと(丸数字2)、受付指令システム1Aの回線制御装置13は、その呼の発信元が受付指令センタAが管轄する地域つまり地域Xからのものであることを確認し、空いている通話ユニット11に着呼させる(丸数字3)。そして、その通話ユニット11とその電話機4とを接続させる。
【0056】
一方、電話機4からの呼が収容局2Bなどを介して受付指令システム1Bの回線接続装置12に届くと(丸数字4、5)、受付指令システム1Bの回線制御装置13は、その呼の発信元が地域Xであることを確認する。そして、現在、受付指令システム1Aの障害を検知していないので(つまり、受付指令システム1Aについてのモードが通常モードなので)、その呼を放置する。
【0057】
受付指令センタAの電話オペレータは、通報者と会話し、対処方法を判断すると、その通報者の地域つまり地域Xの各支局に対して、従来通り、指令を与える。この指令は、図5に示すように、従来通り、受付指令システム1Aの回線接続装置12、収容局2A、および専用の回線を介して、一斉に各支局の支局通信端末3に発信される(丸数字1、2、3)。
【0058】
〔受付指令システム1Aに障害が発生した場合〕
図6は受付指令システム1Aに障害が発生している間における通報の受付の処理の流れの例を説明する図、図7は受付指令システム1Aに障害が発生している間における支局に対する指令の処理の流れの例を説明する図である。
【0059】
図6において、受付指令システム1Bの監視装置14は、受付指令システム1Aに障害が発生していることを検知すると(丸数字1)、受付指令システム1Aについてのモードを障害発生時モードに切り換えるように受付指令システム1Bの回線制御装置13に命令する(丸数字2)。
【0060】
受付指令システム1Aに障害が発生している間に、通報者が地域Xの電話機4を操作して119番をダイヤルすると、(丸数字3)、収容局2Aの分配装置21は、その電話機4からの呼を受付指令システム1Aおよび受付指令システム1Bの両方に分配し中継する。
【0061】
電話機4からの呼が受付指令システム1Aの回線接続装置12に届いても(丸数字4)、受付指令システム1Aは、障害が発生中なので、応対のための処理を行うことができない。
【0062】
一方、電話機4からの呼が収容局2Bなどを介して受付指令システム1Bの回線接続装置12に届くと(丸数字5、6)、受付指令システム1Bの回線制御装置13は、その呼の発信元が受付指令システム1Aの管轄であることを確認する。現在、受付指令システム1Aのモードは障害発生時モードなので、回線制御装置13は、受付指令システム1Bの中の空いている通話ユニット11に着呼させる(丸数字7)。そして、その通話ユニット11とその電話機4とを接続させる。
【0063】
受付指令センタBの電話オペレータは、通報者と会話し、対処方法を判断すると、その通報者の地域つまり地域Xの各支局に対して、指令を与える。この指令は、図7に示すような手順で、受付指令センタAの配下の各支局の支局通信端末3に届けられる。
【0064】
その通話ユニット11から発信した指令の信号(電話オペレータの音声信号)は、受付指令システム1Bの回線接続装置12、非常用の回線、および収容局2Bなどを介して収容局2Aに届く(図7の丸数字1、2、3)。そして、収容局2Aの分配装置21は、その信号を分配し、受付指令センタAの配下の各支局の支局通信端末3に配信する(丸数字4)。
【0065】
その後、受付指令システム1Aの障害が解消され、正常の動作するようになったら、受付指令システム1Bは、受付指令システム1Aのモードを通常モードに切り換える。切換え後は、地域Xの電話機4からの通報は、上述の図4および図5のように処理される。
【0066】
本実施形態によると、複数の受付指令システム1同士で、障害の発生時のバックアップを実現することができる。しかも、監視装置14および分配装置21を新たに設け、連携相手のモードに応じて回線制御装置13の動作を変えるだけで、それを実現することができる。よって、受付指令システム1を二重化する場合に比べて大幅にコストを抑えることができる。
【0067】
また、本実施形態によると、通信事業者は、障害が発生した受付指令センタの受付指令システム1への呼を従来のようにその配下の支局に転送させる切換作業を行わなくて済む。よって、通信事業者の作業の負担も軽減される。
【0068】
受付指令システム1を連携させる受付指令センタ同士は、地理的に隣り合っていてもよいし、福岡市および大阪市のように離れていてもよい。隣り合っていれば、双方の受付指令システム1同士で行う通信を高速にすることができる。離れていれば、地震などの天災によって両方の受付指令システム1がダウンする可能性を低減させることができる。
【0069】
本実施形態では、分配装置21は、1台の電話機4から複数の(N組の)受付指令システム1への呼の配信および1組の受付指令システム1から複数の(N台の)支局通信端末3への信号の配信の両方を行ったが、それぞれの配信を別々の装置が受け持つように構成してもよい。
【0070】
その他、緊急通報処理システム1KT、受付指令システム1、収容局2の全体または各部の構成、処理内容、処理順序、データベースの内容などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】緊急通報処理システムの全体的な構成の例を示す図である。
【図2】回線制御装置の構成の例を示す図である。
【図3】監視装置の構成の例を示す図である。
【図4】受付指令システムが正常である場合の通報の受付の処理の流れの例を説明する図である。
【図5】受付指令システムが正常である場合の支局に対する指令の処理の流れの例を説明する図である。
【図6】受付指令システムに障害が発生している間における通報の受付の処理の流れの例を説明する図である。
【図7】受付指令システムに障害が発生している間における支局に対する指令の処理の流れの例を説明する図である。
【符号の説明】
【0072】
1 受付指令システム(受付システム)
13 回線制御装置(接続制御手段)
14 監視装置(監視手段)
15 通報応対用データベース
16 ゲートウェイ
2 収容局(電話局)
21 分配装置(発信呼配信手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通報を受け付ける受付システムごとに、
他の受付システムが通報を受け付け得る状態であるか否かを監視する監視手段と、
他の受付システムが通常管轄する地域の電話機からの呼があった場合に、当該他の受付システムが通報を受け付け得る状態でないことが前記監視手段によって確認されていれば、当該受付システム自身の電話オペレータの端末と当該電話機とを接続し、当該他の受付システムが通報を受け付け得る状態であることが前記監視手段によって確認されていれば、当該端末と当該電話機とを接続しない、接続制御手段と、が設けられ、
前記受付システムをカバーする電話局ごとに、
当該受付システムが通常管轄する地域の電話機から発信された通報に係る呼を当該受付システムおよび他の受付システムの両方に送信する、発信呼配信手段、が設けられている、
ことを特徴とする通報システム。
【請求項2】
前記受付システムごとに、
当該受付システムが通常管轄する地域からの通報に応対するためのデータを記憶させたデータベースと、
当該受付システムと前記データベースにアクセスする他の受付システムとをIP網を介して接続するゲートウェイと、
が設けられている、
請求項1記載の通報システム。
【請求項3】
通報を受け付ける受付システムに、他の受付システムが通報を受け付け得る状態であるか否かを監視する処理を実行させ、
電話局に、電話機から発信された通報に係る呼を、当該電話機の地域を通常管轄する前記受付システムおよび他の受付システムの両方に送信する処理を実行させ、
前記受付システムに、他の受付システムが通常管轄する地域の電話機からの呼があった場合に、当該他の受付システムが通報を受け付け得る状態でないことが確認されていれば、当該受付システム自身の電話オペレータの端末と当該電話機とを接続する処理を実行させ、当該他の受付システムが通報を受け付け得る状態であることが確認されていれば、当該端末と当該電話機とを接続する処理を実行させる、
ことを特徴とする通報の受付方法。
【請求項4】
前記受付システムごとに、当該受付システムが通常管轄する地域からの通報に応対するためのデータを記憶させたデータベースと、当該受付システムと前記データベースにアクセスする他の受付システムとをIP網を介して接続するゲートウェイと、を設けておく、
請求項3記載の通報の受付方法。
【請求項5】
前記受付システムに、他の受付システムが正常に動作している間に、当該他の受付システムの前記データベースに記憶されている前記データの一部または全部をダウンロードする処理を実行させておく、
請求項4記載の通報の受付方法。
【請求項6】
電話局に、前記受付システムの電話オペレータが他の受付システムによって通常管轄される地域からの通報に関して決めた指令のデータを、当該他の受付システムの配下にある各支局に配信する処理を、実行させる、
請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の通報の受付方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−172290(P2008−172290A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−771(P2007−771)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】