説明

通気・防水性シート及びそれを用いた壁構築工法

【課題】壁構築の作業時間を短縮し、また安定した通気構造を確保する。
【解決手段】通気・防水性シート10は、壁用通気・防水性シートであり、ライナー部13と通気構造部14とが積層された構造である。ライナー部13は、透湿防水シート11からなる。透湿防水シート11は、高密度ポリエチレン不織布(例えば、タイベック(登録商標))からなる。透湿防水シート11の表面には、ポリエチレン樹脂が一定幅の接着層12として作製されている。通気構造部14は、断面が波型形状にコルゲーター加工された構造の不織布である。通気構造部14を構成する不織布は、壁構築時のサイディング材施工時に潰れないような十分な強度が要求されるため、硬直性の高いポリプロピレン不織布(例えば、ザバーン(登録商標))が用いられる。通気構造部14の波型形状の谷の部分と透湿防水シート11との間の空間に通気層が形成され、通気性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通気・防水性シート及びそれを用いた壁構築工法に係り、特に通気性及び防水性を兼ね備えた通気・防水性シート、及びそれを用いて建築物の外壁や屋根等を構築する壁構築工法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅品質確保法による耐久性の高い住宅を得るため、建築物の躯体の下地材と外壁や屋根等の外装材との間に通気層を設けることが推奨されている。この通気層を設ける壁構築工法としては、例えば、躯体の外側面に固定された合板に透湿防水シートを貼り、この上に縦胴縁を配設し、更にその上に空気流通体を固定し、その上に外壁や屋根等の外装材として例えば金属サイディング材を取り付ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、縦胴縁により通気層が透湿・防水シートと空気流通体との間に形成され、また空気流通体は、一面にハニカム構造等の空隙を有する構造であるため、通気層を効率的に機能させることができる。
【0003】
なお、上記の空気流通体を設けないサイディング仕上げと称する壁構築工法も一般に知られている(例えば、特許文献2参照)。また、上記の透湿防水シートとしては、例えば特許文献3に記載された透湿防水シートを使用することができる。
【0004】
また、通気性を有する屋根を施工する方法として、屋根下地の上に平板状の断熱材を敷き、その上に通気層を確保するために複数の桟木を取り付け、更にその桟木の上に合板等の支持板、支持板の上に屋根材を順次に敷設する壁構築工法もある。あるいは、屋根下地に防湿材を敷設してから上記の方法で屋根を施工することもある。この壁構築工法では、通気層を通して空気の流れを生じさせ、屋根の棟部を経由して屋外へ排気させることで、排熱して断熱効果を高めている。
【0005】
ここで、本明細書において、「壁構築」とは、建築物の外壁の壁構造の構築だけでなく、壁構造と同様の屋根構造の構築も包含するものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−276046号公報
【特許文献2】特表2007−518007号公報
【特許文献3】特開2002−172739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来の壁構築工法では、合板に透湿防水シートを貼る工程と、その上に縦胴縁を配設する工程とを別々に行っているため、また、防湿材の敷設工程や通気層構築のための桟木や支持板敷設の工程を別々に実施するため、作業工程が多く、外装構築に時間がかかり、また安定した通気構造が得られない可能性があるという問題がある。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、壁構築の作業時間を短縮し、また安定した通気構造が確保できる通気・防水性シート及びそれを用いた壁構築工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、第1の発明の通気・防水性シートは、防水機能を備えるライナー部と、コルゲート加工により断面が波型形状とされ、ライナー部との間に形成された空間を通気層とする通気構造部とが積層されたことを特徴とする。
【0010】
また、上記の目的を達成するため、第2の発明の通気・防水性シートは、ライナー部が、透湿性と防水性とを備えるシートと、シートの表面に一定間隔で形成された複数の接着層とを有し、通気構造部が、波型形状の谷の部分及び山の部分のうちの一方の部分が接着層に接着されたポリプロピレン不織布であることを特徴とする。
【0011】
また、上記の目的を達成するため、第3の発明の通気・防水性シートは、ライナー部は、水を吸水して膨潤するシート状の吸水材と、吸水材の表面に形成されたポリプロピレン不織布からなるシート状のベース不織布と、吸水材の裏面に形成されたシート状のカバー不織布とを少なくとも有し、通気構造部は、波型形状の谷の部分及び山の部分のうちの一方の部分がカバー不織布に接着されたポリプロピレン不織布であることを特徴とする。
【0012】
ここで、上記吸水材は、吸水ポリマーとホットメルトパウダーとをミックスした構成であり、上記カバー不織布は芯成分がポリプロピレンで、鞘成分がポリエチレンである芯鞘構造の不織布であってもよい。
【0013】
また、上記の目的を達成するため、本発明の壁構築工法は、第2の発明の通気・防水性シートを用いた壁構築工法であって、ライナー部を室内側にし、通気構造部を屋外側にするように、所定間隔で施工されている壁の間柱に通気・防水性シートをタッカー又は釘留めした後、別の通気・防水性シートを施工する壁の面に沿って所定方向に重ねていく第1の工程と、第1の工程を経た複数の通気・防水性シートの通気構造部側から通気・防水性シートを通して間柱に外装材を固定する第2の工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
また、上記の目的を達成するため、本発明の壁構築工法は、第3の発明の通気・防水性シートを用いた壁構築工法であって、ライナー部を屋外側にし、通気構造部を室内側にするように屋根下地上に通気・防水性シートを固定した後、別の通気・防水性シートを屋根の勾配方向に沿って重ねていく第1の工程と、第1の工程を経た複数の通気・防水性シートの上に屋根材を施工する第2の工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、壁構築の作業時間を短縮し、また安定した通気構造が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の通気・防水性シートの第1の実施の形態の要部の構成図である。
【図2】本発明の通気・防水性シートの第1の実施の形態の要部の平面図及び断面図である。
【図3】本発明の通気・防水性シートの第1の実施の形態の壁構築工法を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の通気・防水性シートの壁構築方法の一実施の形態により構築された壁構造の一例を示す図である。
【図5】本発明の通気・防水性シートの第2の実施の形態の断面図及び要部の断面図である。
【図6】斜め胴縁の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明になる通気・防水性シートの第1の実施の形態の要部の構成図、図2は、本発明になる通気・防水性シートの第1の実施の形態の要部の平面図及び断面図を示す。両図中、同一構成部分には同一符号を付してある。
【0019】
図1(B)の斜視図に示すように、本実施の形態の通気・防水性シート10は、壁用通気・防水性シートであり、ライナー部13と通気構造部14とが積層された構造である。なお、図1及び図2は図示の便宜上、構造や断面形状を簡易にかつ模式的に示してある。例えば、通気構造部14の断面形状は図1(B)や図2(B)では三角波形状として簡易に図示しているが、実際は、三角部分の頂点が丸みを帯びた略正弦波状の波型形状である。これは、後述の図5(B)の通気構造部22の断面形状も同様である。
【0020】
ライナー部13は、図1(A)の平面図に示すように、表面に接着層12が一定間隔で複数形成された透湿防水シート11からなる。透湿防水シート11は、透湿性と防水性の両方の機能を備えるシートで、例えば、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー社製の「タイベック」(登録商標)のような高密度ポリエチレン不織布からなる。この透湿防水シート11の表面には、幅方向に直交する長手方向に、透湿防水シート11の機能を損なわないように、ポリエチレン(PE)樹脂の接着層12として例えば2mmのピッチで複数、筋ラミネート加工により作製されている。接着層12は例えば幅が1mm、厚みが0.04mmである。透湿防水シート11の接着層12を含めた全体の厚さは、ばらつきがあるが例えば0.33mm程度である。また、透湿防水性シート11は、図1(A)の平面図に示すように、接着層12が作製されていない部分は通気層部11aとして機能する。
【0021】
なお、透湿性と防水性の機能を損なわない接着方法としては、上記の方法以外に、ポリウレタンやポリオレフィン系のホットメルトによるドット接着でもよい。
【0022】
通気構造部14は、図1(B)の斜視図に示すように、通気層を確保するために片段コルゲーター機で断面が波型形状にコルゲーター加工された構造の不織布である。この通気構造部14を構成する不織布は、壁構築時のサイディング材施工時に潰れないような十分な強度が要求されるため、硬直性の高いポリプロピレン(PP)不織布(例えば、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー社製の「ザバーン」(登録商標))が用いられる。「ザバーン」(登録商標)を通気構造部14として用いる場合、単位面積重量150〜240g/m2のものを使用できるが、好ましくは単位面積重量150〜200g/m2のものが用いられる。
【0023】
本実施の形態の通気・防水性シート10は、透湿防水シート11の接着層12に通気構造部14が接着された構造である。ここで、接着層12の長手方向(すなわち、透湿防水シート11の幅方向)と、通気構造部14の波型形状の波型方向とが同じ方向となるように接着される。これにより、通気構造部14の波型形状の谷の部分と透湿防水シート11の通気層部11aとの間の空間に通気層が形成され、通気性が得られることとなる。
【0024】
また、出荷される製品としての本実施の形態の通気・防水性シート10は、図2(A)の平面図及び同図(B)の断面図に示すように、幅1000mmの透湿防水シート11の幅900mmの部分に高さ10mmの通気構造部14が加工され、残りの100mmの部分は通気構造部14が加工されていない重ねシロ部11bとされた長さ20mのシートである。重ねシロ部11bは、複数の通気・防水性シート10を長手方向と直交する方向に順次重ねて使用する際に、繋ぎ貼り合わせて用いる部分である。
【0025】
本実施の形態の通気・防水性シート10によれば、透湿防水シート11からなるライナー部13と通気層を構成する通気構造部14とが一体化構造とされた、透湿防水性と通気性とを兼ね備えた構成である。通気構造部14は、上述の通気層を構成すると共に、壁構築時にサイディング材と間柱との間のスペーサとしての機能も有する。
【0026】
なお、接着層12の素材は、基本的にはポリエチレンであるが、これに限定されるものではない。また、ライナー部13は、必ずしもタイベック(登録商標)のような透湿防水シートでなくてもよく、透湿性と防水性とを兼ね備える他の材質、例えばポリビニールアルコールフィルム、プラスチックフィルム(例えば、日本合成化学工業株式会社製の「ボブロン」(登録商標))でもよい。
【0027】
次に、本発明の通気・防水性シートの第1の実施の形態の壁構築工法について、図3のフローチャートと共に説明する。
【0028】
まず、繊維系断熱材(セルロース、グラスウール、ロックウール等)を施工した上に、本実施の形態の通気・防水性シート10のライナー部13を室内側にし、通気構造部14を屋外側になるように、所定間隔(例えば455mmピッチ)で施工されている間柱にタッカー又は釘留めする(工程S1)。
【0029】
続いて、通気・防水性シート10を壁の下から上方向に順に貼っていく(工程S2)。このとき、互いに縦方向に貼り合わされる2枚の通気・防水性シート10の通気構造部14の波型形状の山と谷とを合わせるようにして、通気・防水性シート10の重ねシロ部11bの上に次の通気・防水性シート10を貼る。また、横方向の重ねシロ部11bは、透湿防水シート11と通気構造部14とを適当な長さ(例えば150mm)剥がしてその間に次の通気・防水性シート10を差し込む。
【0030】
このようにして、通気・防水性シート10を施工した後、サイディング材等の外装材を通気・防水性シート10の通気構造部14側に配置し、通気・防水性シート10を介在させて間柱に釘留め又は取付金物で施工する(工程S3)。
【0031】
このように、本実施の形態の通気・防水性シート10によれば、透湿防水シート11からなるライナー部13と通気層を構成する通気構造部14とが一体化構造とされた、透湿防水性と通気性とを兼ね備えた構造の通気・防水性シート10を用いるため、この通気・防水性シート10を取り付ける工程だけで、従来の透湿防水シートを合板に貼る工程と、その上に通気層を構成するための胴縁を配設する工程とができるため、従来に比べて作業時間を短縮化でき、また安定した通気構造が確保できる。
【0032】
財団法人建材試験センターによる本実施の形態の通気・防水性シート10の通気性能試験によれば、4.77[(m3/h)Pa1/n]という、大なる通気率が得られた。この通気性能試験は、通気・防水性シート10を、幅455mm、高さ1000mm、厚さ10mmで厚さ12mmの合板に固定したものを試験体とし、温度23.0℃、気圧1012hPaの試験室内で試験体前後の圧力差を段階的に変化させ、その際の通気量を測定し、通気量から通気率を算出した。1気圧の空気の密度における通気量Q(単位m3/h)は、通気率αと試験体前後の圧力差ΔP(単位Pa)の1/n乗(nは隙間特性値で通常は1〜2)とを乗算した値により得られるとし、その式から通気率αを算出した。
【0033】
なお、従来の壁構造では、防水透湿シートが断熱材の膨張により防水透湿シートが通気層に押し出されて通気層を狭くしたり、塞いでしまうことがある。通気層が狭くなるとその部分で内部結露が起きやすくなり、通気層の役割が低減してしまう。このことを防止するため、適度な間隔で図6に41で示すような斜め胴縁を入れ、断熱材43を押さえて通気層を確保する工法が従来知られている。縦胴縁の胴縁受けの間柱42を増やすと断熱性能を低下させるため、縦胴縁ではなく、図6に示すような斜め胴縁41とするのである。また、スペーサ確保のために板を入れたり、多数の小孔が側面に穿設された公知の通気用のスペーサ(例えば、城東テクノ株式会社製の通気スペーサー)を入れる方法もある。
【0034】
しかし、本実施の形態の通気・防水性シート10によれば、そのような斜め胴縁41やスペーサ確保のための板や通気用スペーサを有しなくても、通気構造部14が十分な強度を有しているためスペーサとして働き、サイディング材等の外装材施工時に潰れないため、膨張しようとする断熱材により通気構造部14が押されて通気層が狭くなることは殆どなく、断熱材の膨張を押さえて通気層を確保することができる。
【0035】
図4は、本発明の通気・防水性シートの壁構築方法の一実施の形態により構築された壁構造の一例を示す。同図中、図1及び図2と同一構成部には同一符号を付してある。図4において、壁の室内側の内装材31に対して屋外側に防湿シート又は調湿シート32が貼られ、更に間柱33が所定間隔で施工されている。間柱33の間には繊維系断熱材であるセルロースファイバー34が充填施工されている。
【0036】
そして、通気・防水性シート10が、ライナー部13を室内側にし、通気構造部14を屋外側になるように、かつ、セルロースファイバー34を覆うようにして、間柱33にタッカー又は釘留めされている。サイディング材35が通気構造部14に取り付けられる。
【0037】
この壁構造において、室内からの水蒸気は、内装材31、調湿シート32、セルロースファイバー34、通気・防水性シート10の透湿防水シート11、通気構造部14の通気層を通して排出される。
【0038】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図5(A)は、本発明になる通気・防水性シートの第2の実施の形態の要部の断面図、同図(B)は同図(A)中のカバー不織布の一例の断面図を示す。
【0039】
本実施の形態の通気・防水性シート20は、屋根用通気・防水性シートであり、図5(A)の断面図に模式的に示すように、防水機能と滑り止め機能とを兼ね備えるライナー部21と、通気機能を備える通気構造部22とが積層された構造である。
【0040】
ライナー部21は、図5(A)に模式的に示すように、表面に30μm厚程度のポリプロピレン(PP)フィルム26が被覆されたシート状のベース不織布25の裏面に、高吸水性ポリマー(Superabsorbent Polymer:SAP)とホットメルトパウダーのミックス品である吸水材24を散布し介在させてシート状のカバー不織布23と貼り合わせた、サンドラミ加工された構造である。ライナー部21の上に瓦などの屋根材が設けられるため、ライナー部21の表面のPPフィルム26は屋根施工時(壁構築時)に作業者の滑落を防止するため、防滑性を有している。
【0041】
ベース不織布25は、例えば前述の「ザバーン」(登録商標)などのポリプロピレン不織布が用いられる。ベース不織布25に用いられる「ザバーン」(登録商標)は、例えば単位面積重量が30〜100g/m2のものを使用できる。
【0042】
また、カバー不織布23は芯鞘構造の不織布で、例えば図5(B)の断面図に模式的に示すように、中心に断面円柱状のポリプロピレン(PP)232が充填された、断面が中空円筒状のポリエチレン(PE)231からなる構造である。つまり、カバー不織布23は、例えば、芯成分がPP232で、鞘成分がPE231である芯鞘構造の複合不織布であり、例えばシンワ株式会社製の「ハイボン」(登録商標)を用いることができる。ただし、カバー不織布23は芯鞘構造の不織布に限定されるものではない。もし、ポリプロピレン不織布をカバー不織布23として用いる場合は、コルゲート加工用のホットメルト加工(例えば、ポリエチレンやEVAなど)をしておく必要がある。
【0043】
通気構造部22は、コルゲート加工によりライナー部21に積層された、例えば前述の「ザバーン」(登録商標)などのポリプロピレン不織布である。この通気構造部22は、カバー不織布23側に積層された後、コルゲート加工により断面が波型形状に加工されたポリプロピレン不織布で、波型形状の山の部分と谷の部分との間の高さは例えば10mm程度である。通気構造部22として用いられる「ザバーン」(登録商標)は、単位面積重量150〜240g/m2のものを使用できるが、好ましくは単位面積重量150〜200g/m2のものが用いられる。
【0044】
なお、カバー不織布23が芯鞘構造の不織布の場合、芯鞘構造の鞘成分のポリエチレンは融点が低いため、接着層として通気層構造部22のコルゲート加工に寄与するため、鞘成分の上に接着層を加工しなくてもカバー不織布23に通気構造部22の波型形状の山の部分と谷の部分のうちの一方の部分が接着される。
【0045】
出荷される製品としての本実施の形態の通気・防水性シート20は、通気・防水性シート10と同様に、ベース不織布25及びPPフィルム26に重ねシロ部が形成される。なお、ベース不織布25及びPPフィルム26は幅が例えば1000mm、カバー不織布23は幅が例えば900mmである。
【0046】
本実施の形態の通気・防水性シート20を用いる屋根施工時(壁構築時)には、屋根下地の軒先にタッカー等で100mmのスターターをまず施工する。続いて、スターターの通気面に通気・防水性シート20の前端面を位置決めした後、屋根下地上の屋根の勾配方向で通気・防水性シート20のライナー部21に付いている重ねシロ部に、隣接する別の通気・防水性シート20の通気構造部22側を上から乗せ、以下同様にして下から順に鎧方式で施工する。そのようにして施工された複数の通気・防水性シート20の各ライナー部21の上に瓦や屋根材を施工して屋根を施工する。
【0047】
本実施の形態の通気・防水性シート20は、防水機能と滑り止め機能とを兼ね備えるライナー部21と通気層を構成する通気構造部22とが一体化構造とされているため、この通気・防水性シート20を軒先の屋根下地に取り付ける工程だけで、通気層を形成するための工程と防湿剤を敷設する工程を同時にできるため、従来に比べて作業時間を短縮化でき、また安定した屋根構造を構築できる。
【0048】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、例えば図5の吸水材24は釘穴やステープルの自己修復性機能を持たせるために水を吸水して膨潤する防水性(吸水機能)を有していればよく、よって吸水ポリマー以外に無機系のベントナイト等も同じように使用可能である。また、通気構造部22に使用する素材は、不織布以外に板紙等も使用できる。更に、PPフィルム26は必ずしも有しなくてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10、20 通気・防水性シート
11 透湿防水シート
11a 通気層部
11b 重ねシロ部
12 接着層
13、21 ライナー部
14、22 通気構造部
23 カバー不織布
24 吸水材
25 ベース不織布
26 PPフィルム
231 鞘成分のポリエチレン
232 芯成分のポリプロピレン
31 内装材
32 防湿シート又は調湿シート
33 間柱
34 セルースファイバー
35 サイディング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水機能を備えるライナー部と、
コルゲート加工により断面が波型形状とされ、前記ライナー部との間に形成された空間を通気層とする通気構造部と
が積層されたことを特徴とする通気・防水性シート。
【請求項2】
前記ライナー部は、透湿性と防水性とを備えるシートと、前記シートの表面に一定間隔で形成された複数の接着層とを有し、
前記通気構造部は、前記波型形状の谷の部分及び山の部分のうちの一方の部分が前記接着層に接着されたポリプロピレン不織布である
ことを特徴とする請求項1記載の通気・防水性シート。
【請求項3】
前記ライナー部は、水を吸水して膨潤するシート状の吸水材と、前記吸水材の表面に形成されたポリプロピレン不織布からなるシート状のベース不織布と、前記吸水材の裏面に形成されたシート状のカバー不織布とを少なくとも有し、
前記通気構造部は、前記波型形状の谷の部分及び山の部分のうちの一方の部分が前記カバー不織布に接着されたポリプロピレン不織布である
ことを特徴とする請求項1記載の通気・防水性シート。
【請求項4】
前記吸水材は、吸水ポリマーとホットメルトパウダーとをミックスした構成であり、
前記カバー不織布は芯成分がポリプロピレンで、鞘成分がポリエチレンである芯鞘構造の不織布である
ことを特徴とする請求項3記載の通気・防水性シート。
【請求項5】
請求項2記載の通気・防水性シートを用いた壁構築工法であって、
前記ライナー部を室内側にし、前記通気構造部を屋外側にするように、所定間隔で施工されている壁の間柱に前記通気・防水性シートをタッカー又は釘留めした後、別の前記通気・防水性シートを施工する壁の面に沿って所定方向に重ねていく第1の工程と、
前記第1の工程を経た複数の前記通気・防水性シートの前記通気構造部側から前記通気・防水性シートを通して前記間柱に外装材を固定する第2の工程と
を含むことを特徴とする壁構築工法。
【請求項6】
請求項3記載の通気・防水性シートを用いた壁構築工法であって、
前記ライナー部を屋外側にし、前記通気構造部を室内側にするように屋根下地上に前記通気・防水性シートを固定した後、別の前記通気・防水性シートを屋根の勾配方向に沿って重ねていく第1の工程と、
前記第1の工程を経た複数の前記通気・防水性シートの上に屋根材を施工する第2の工程と
を含むことを特徴とする壁構築工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−36170(P2013−36170A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170636(P2011−170636)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【特許番号】特許第5052692号(P5052692)
【特許公報発行日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(511190731)
【出願人】(511190487)シーピー加工株式会社 (1)
【出願人】(511190753)株式会社アクト (2)
【Fターム(参考)】