説明

通気性複合防水工法

【課題】コンクリートなどの下地層と防水層との間に発生した水や水蒸気に起因する防水層の膨れや剥離の防止効果が高く、下地層のクラックに対する追従性に優れると共に、極めて優れた防水性、耐久性と良好な施工性とを併せ持ち、さらに平坦な仕上り面を形成できる防水工法を提供する。
【解決手段】構造物の施工面にアスファルト系防水シートを敷設する工程と、前記アスファルト系防水シートの上面にポリマーセメント組成物を塗布して硬化させる工程とを有する通気性複合防水工法であって、アスファルト系防水シートの最下面が部分的14に自己粘着性を有することを特徴とする通気性複合防水工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上、ベランダ、床、駐車場などに敷設することができる通気性複合防水層の施工方法及びその施工方法によって得られる通気性複合防水構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
防水層の厚みを確保しやすく、かつ反応硬化型改質アスファルトの使用により施工効率に優れ、さらに塗膜の伸びと強度のバランス(抗張積)に優れる防水層が確保でき、また、施工現場において火気や熱源、揮発性の高い溶剤を使用しない施工環境の向上に優れる複合防水工法として、ガラス転移温度−80℃〜+10℃の重合体のラテックス、界面活性剤、アスファルトを含有するアスファルトエマルジョンと、反応性イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含有してなる改質アスファルト塗膜防水材と、防水性能を有する厚み0.5〜4.0mmの防水シートとを積層する複合防水工法が特許文献1に開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、従来のゴムアスファルト防水層の長所であるクラック追従性と、軟質FRP複合防水層の長所である強靱性、重歩行可能性、耐候性、耐摩耗性、高い防水、防食性と、通気型防水層の長所である防水層間に発生した水や水蒸気を脱水または脱気することにより膨れや剥離の防止効果とを併せ持った通気型複合防水防食工法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−293070公報
【特許文献2】特開2003−3617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コンクリートなどの下地層と防水層との間に発生した水や水蒸気に起因する防水層の膨れや剥離の防止効果が高く、下地層のクラックに対する追従性に優れると共に、極めて優れた防水性、耐久性と良好な施工性とを併せ持ち、さらに平坦な仕上り面を形成できる防水工法の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、通気性を確保でき、下地ひび割れ追従性、耐水性、耐候性及び施工性に優れた改質アスファルト防水シート工法と、下地ひび割れ追従性、耐水性、耐候性及び施工性に優れるポリマーセメント組成物を用いた塗膜防水工法とを組み合わせて用いることにより、下地層と防水層との間に発生した水や水蒸気に起因する防水層の膨れや剥離の防止効果が高く、施工面のクラックに対する追従性に優れ、極めて優れた防水性、耐久性と良好な施工性とを併せ持ち、さらに平坦な仕上り面を形成して良好な歩行安全性を確保できる防水工法を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の第一は、
構造物の施工面にアスファルト系防水シートを敷設する工程と、
前記アスファルト系防水シートの上面にポリマーセメント組成物を塗布して硬化させる工程とを有する通気性複合防水工法であって、
アスファルト系防水シートの最下面が部分的に自己粘着性を有すること
を特徴とする通気性複合防水工法である。
本発明の第二は、
構造物の施工面に防水シート用プライマーを施工する工程と、
前記プライマー層の上面にアスファルト系防水シートを敷設する工程と、
前記アスファルト系防水シート層の上面にポリマーセメント組成物を塗布する工程と、
前記ポリマーセメント組成物の未硬化の塗布層に織布及び/又は不織布を敷設する工程と、
前記織布及び/又は不織布の上面にポリマーセメント組成物を塗布して硬化させる工程とを有する通気性複合防水工法であって、
アスファルト系防水シートの最下面が円形及び/又は楕円形の部分的な自己粘着部を有すること
を特徴とする通気性複合防水工法である。
本発明の第三は、
本発明の第一又は本発明の第二の通気性複合防水工法により得られる通気性複合防水構造体である。
【0008】
本発明の通気性複合防水工法及び通気性複合防水構造体の好ましい態様を以下に示す。これらは複数組み合わせることができる。
1)ポリマーセメント組成物の硬化層の上面にトップコート層を設ける工程とを有すること。
2)アスファルト系防水シートは、最下層に円形及び/又は楕円形の複数の開口穴を有する樹脂フィルム層を有し、前記樹脂フィルム層、自己粘着性を有する改質アスファルト層及び基材層を含む層から構成されること。
3)ポリマーセメント組成物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション及び/又はアクリル共重合体エマルションと、アルミナセメントを含むコンクリート防水用ポリマーセメント組成物であること。
4)構造物の施工面は、新築建築物または既存建築物の屋上、ベランダ及びバルコニーのいずれかであること。
【発明の効果】
【0009】
本発明の通気性複合防水工法は、構造物の施工面に複数の開口穴を有する樹脂フィルム層を最下層に有する改質アスファルト防水シートを敷設し、開口穴に露出した自己粘着性改質アスファルトが構造物の施工面と強固に接着して防水シートを固定するとともに、構造物の施工面と防水シートとの間に連続する通気層を形成して、下地に含まれていた水、水蒸気を任意随所に設けられた脱気部の方向に移動させて外部に放出して防水シートの膨れを防止することができる。
構造物の施工面に敷設した複数の防水シートの上面に、ポリマーセメント組成物を塗布して硬化させることにより、防水シートと防水シートの重ね合わせ部分を完全にシーリングでき、防水性の信頼性を大幅に向上させることができる。
また、ポリマーセメント組成物を塗布層内に織布及び/又は不織布の層を介在させることによって、より耐久性が高いポリマーセメント組成物の硬化層を形成することができる。
さらに本発明の通気性複合防水工法では、防水シートの重ね合せによって生じる段差を、ポリマーセメント組成物の硬化層によって解消することができ、平坦な仕上り面を形成して良好な歩行安全性を確保できるとともに、複数の防水シート全面に塗布・硬化したポリマーセメント組成物の硬化層の優れた防水特性によって、構造物の施工面全面の防水性能は際立ったものとなる。
また、ポリマーセメント組成物の硬化層の上面にトップコート層を設けることによって、改質アスファルト防水シートとポリマーセメント組成物の硬化層とから構成される防水層の耐候性をより一層高めることができる。
本発明の通気性複合防水工法は、防水性と下地追従性を有する防水シートと、防水性と下地追従性に優れ、さらに複数の防水シートを重ね合わせた部分のシール効果に優れるポリマーセメント組成物(塗膜防水組成物)とを組み合わせた二重防水工法であり、極めて優れた防水性能を有しつつ高耐久性であることから、長々期の供用に耐えてメンテナンス頻度を大幅に低減し、ライフサイクルコストの抑制に貢献するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、構造物の施工面にアスファルト系防水シートを敷設する工程と、前記アスファルト系防水シートの上面にポリマーセメント組成物を塗布して硬化させる工程とを有する通気性複合防水工法であって、アスファルト系防水シートの最下面が部分的に自己粘着性を有することを特徴とする通気性複合防水工法と、該工法によって得られる通気性複合防水構造体である。
さらに、本発明は、構造物の施工面に防水シート用プライマーを施工する工程と、前記プライマー層の上面にアスファルト系防水シートを敷設する工程と、前記アスファルト系防水シート層の上面にポリマーセメント組成物を塗布する工程と、前記ポリマーセメント組成物の未硬化の塗布層に織布及び/又は不織布を敷設する工程と、前記織布及び/又は不織布の上面にポリマーセメント組成物を塗布して硬化させる工程とを有する通気性複合防水工法であって、アスファルト系防水シートの最下面が円形及び/又は楕円形の自己粘着部を有することを特徴とする通気性複合防水工法と、該工法によって得られる通気性複合防水構造体である。
【0011】
本発明の通気性複合防水工法および該工法によって得られる通気性複合防水構造体について、図1及び図2に従って説明する。
図1(a、b、c)は、本発明の通気性複合防水工法で用いるアスファルト系防水シートの一例を示す部分断面図(a)と部分下面図(b)であり、防水シート長辺方向の重ね合せ部の部分断面図(c)である。
【0012】
本発明で用いるアスファルト系防水シート11は、基材層12、改質アスファルト層13、複数の開口穴14を有する樹脂フィルム層15、離型紙(又は離型フィルム)の順に積層された防水シートを用い、該防水シートを構造物の施工面に敷設する際には、最下層の離型紙(又は離型フィルム)を剥離・除去して使用する。
本発明で用いるアスファルト系防水シート11は、防水シートの長辺方向のいずれか片側80〜120mmには複数の開口穴14を有する樹脂フィルム層15が積層されていない部分16が設けられている。該防水シート(シートB18)の敷設時に、先に敷設した隣接する防水シート(シートA19)の長辺方向の端部20に対して、該防水シート(シートB)の長辺方向の端部で樹脂フィルム層15が積層されていない部分16を、好ましくは80〜120mm(図2、r=80〜120mm)重ね合わせて敷設することにより、隣り合う防水シートの重ね合わせ部分21においても良好な防水性能を確保できる。
防水シート(シートA19、シートB18)は、それぞれ樹脂フィルムの開口穴14の改質アスファルト自己粘着層が露出した部分で下地と強固な接着部22を形成している。
また、防水シート(シートA19、シートB18)最下層の樹脂フィルム層15と下地とは接着しておらず連続的な通気部23が形成されていて、下地から発生する水蒸気や水分が移動する通路として機能する。
【0013】
図2(a〜d)は、構造物の施工面(一例として屋上面)に本発明の通気性複合防水工法を適用する手順を示す模式図である。
本発明の通気性複合防水工法では、まず構造物30の施工面31の全面を対象として、施工面の表面に付着した汚れ、埃及び付着物などの除去を行い、防水シート用プライマーを施工面全体に塗布して乾燥させる。
次に、図2(a)に示すように施工面31にアスファルト系防水シート32を、防水シート短辺部33が施工面の側壁34から好ましくは300mm以上、さらに好ましくは500mm以上離れた位置になるように敷設し、防水シート長辺部35が施工面の側壁36から好ましくは300mm以上、さらに好ましくは500mm以上離れた位置になるように敷設する。
次に、構造物の施工面31の全面にアスファルト系防水シートを敷設する工程では、先行して敷設された防水シートの長辺方向の端部と、後から敷設される防水シートの長辺方向の端部(図1に示すように複数の開口穴14を有する樹脂フィルム層15が積層されていない部分が上側に位置する)とを、好ましくは80〜120mm(図2、r=80〜120mm)重ね合わせて敷設することで良好な防水性能が得られる。
【0014】
構造物の施工面31の全面にプライマー層を設け、通気性を有するアスファルト系防水シート32を敷設した後、図2(b)に示すように、基材層と最下層全面が自己粘着性を有する改質アスファルトとを含む防水シート37を、先に敷設が完了している通気性を有するアスファルト系防水シート32敷設部の周囲に、該防水シート敷設部と好ましくは100mm以上、さらに好ましくは200mm以上、特に好ましくは300mm以上、重なった部分が形成されるように敷設する。
最下層全面が自己粘着性を有する改質アスファルトである防水シート37は、施工面32から側壁部34、36までそれぞれ連続的に敷設することによって、側壁の壁面を伝って雨水が進入することを防止できることから好ましい。
また、防水シートの短辺部と短辺部とを突き合わせた部分については、最下層全面が自己粘着性を有する改質アスファルトの防水シートを突き合わせ部分の上面に敷設して防水性能を確保する。
【0015】
次に、通気性を有するアスファルト系防水シート32の敷設部に10〜50m当たりに一カ所の割合で適宜間隔をおいて脱気部40を配設する。脱気部40は、下地に含まれていた水、水蒸気を、アスファルト系防水シート32の樹脂フィルム層と下地との間に形成される通気部を介して脱気部から外部に放出して、防水シートの膨れを防止するために設ける。
【0016】
構造物の施工面31の全面に通気性を有するアスファルト系防水シート32を敷設し、該シート敷設部の周囲と側壁34、36、および、防水シート短辺部どうしを突き合わせた部分に、全面自己粘着性を有する改質アスファルト防水シート37を敷設し、脱気部40を設けた後、図2(c)に示すように防水シートを敷設した施工面及び壁面にポリマーセメント組成物38を塗布して硬化させる。
また、ポリマーセメント組成物38を塗布して未硬化な状態で、ポリマーセメント組成物38の塗布層の上面に織布及び/又は不織布を敷設して未硬化のポリマーセメント組成物38を含浸させ、さらにポリマーセメント組成物38を織布及び/又は不織布の上面に塗布して硬化させることにより、織布及び/又は不織布を中間層とする、より強度特性に優れたポリマーセメント組成物の硬化層を形成させることができる。
【0017】
ポリマーセメント組成物が硬化したことを確認した後、図2(d)のように耐候性の向上をはかるために、前記ポリマーセメント組成物の硬化層38の上面にトップコート層39を設けることが好ましい。
【0018】
本発明の通気性複合防水工法で得られた通気性複合防水構造体の部分断面図を図3に示す。
図3(a)は、防水シートの短辺部方向から見た通気性複合防水構造体51の部分断面図であり、隣り合う防水シートの長辺部は重ね合わさった部分52を有していて、上部の防水シート下面の改質アスファルト自己粘着部と下部の防水シート上面とが強固に接着されている。(接着部53)
さらに、ポリマーセメント組成物の硬化体層54が、前記の防水シートの重ね合わさった部分52のシート上端より、好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.3mm以上、より好ましくは1.6mm以上、特に好ましくは2.0mm以上の厚さ(t)に、通気性防水シート施工部全体がほぼ平坦になるように形成され、特に防水シートの重ね合せ部分の段差が解消されるように形成される。更にポリマーセメント組成物の硬化体層の上面にはトップコート層55が設けられている。
【0019】
図3(b)は、防水シート61短辺部と防水シート62短辺部とを突き合わせて、さらに突き合わせ部63の上面に最下層全面が改質アスファルト自己粘着層の防水シート64を施工したジョイント部分65を有する通気性複合防水構造体66を、防水シートの長辺部方向から見た部分断面図である。
隣り合う防水シートの短辺部は突き合わさった状態にあり、防水シート最下層の樹脂フィルム15と下地面との間に形成される通気層23が途切れることなく連続性が保持されている。また、短辺部は突き合わさった部分63の上面には、接合部分を跨ぐように好ましくは100mm以上、さらに好ましくは120mm以上、より好ましくは150mm以上、特に好ましくは200mm以上の幅(s)の自己粘着性防水シート64が敷設されている。
さらに、ポリマーセメント組成物の硬化体層54が、前記接合部分65の防水シートの重ね合わさった部分より好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.3mm以上、より好ましくは1.6mm以上、特に好ましくは2.0mm以上の厚さ(t)に、通気性防水シート施工部全体がほぼ平坦になるように形成され、特に防水シートの重ね合わせ部分の段差が解消されるように形成される。
更にポリマーセメント組成物の硬化体層54の上面にはトップコート層55が設けられている。
【0020】
本発明の通気性複合防水工法で得られた通気性複合防水構造体では、図3(a、b)に示すように、防水シート敷設時に避けることができない防水シートと防水シートとの重ね合わせ部分52及び防水シートと防水シートとの突き合わせ部分65の上からポリマーセメント組成物の防水層を形成して、ポリマーセメント組成物自体の防水性能によって、防水シートの重ね合わせ部分及び突き合わせ部分の防水性能を補完し、通気性複合防水構造体51、66の防水性能を飛躍的に高めたものであり、長々期に渡る供用においても卓越した耐久性を提供するものである。
また、防水シートを重ね合わせた部分の段差は、その上面に施工するポリマーセメント組成物の硬化体層によって解消されることから、良好な歩行安全性が確保できる。
【0021】
本発明の通気性複合防水工法では、防水シートを敷設する下地面とアスファルト系防水シートの自己粘着部とを強固に粘着させるため、下地面に防水シート用プライマーを塗布施工することが好ましい。
防水シート用プライマーとしては、特に限定されるものではなく、改質アスファルトと強固な粘着力が得られるものであればよく、市販のプライマーを使用することができる。
【0022】
本発明の通気性複合防水工法では、基材層、改質アスファルト層、複数の開口穴を有する樹脂フィルム層、離型紙(又は離型フィルム)の順に積層されたアスファルト系防水シートを用いる。
該防水シートを構造物の施工面に敷設する際には、最下層の離型紙(又は離型フィルム)を剥離・除去して使用する。
本発明で用いるアスファルト系防水シートは、基材層、改質アスファルト層、複数の開口穴を有する樹脂フィルム層、離型紙(又は離型フィルム)の順に積層されたアスファルト系の防水シートであれば、特に限定されることなく使用することができる。
【0023】
本発明で用いるアスファルト系防水シートを構成する基材層としては、不織布、織布、フィルムなど、改質アスファルト層の補強性を有する材料が好ましく使用できる。
基材層として用いる不織布、織布は、合成樹脂繊維又は化学繊維からなるもので、特に合成繊維からなる不織布が好ましい。
合成樹脂としては、特に制限はないが、例えばポリエチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステルなどのポリエステル、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンなどを挙げることができる。これらの繊維は単独または併用して使用することができる。
基材層に用いる不織布または織布の目付は、特に限定されるものではないが、基材層に用いる不織布又は織布の目付は、好ましくは30〜200g/mの範囲、特に好ましくは30〜180g/mの範囲のものが可撓性を有し、施工作業性に優れるため好ましい。
【0024】
本発明で用いるアスファルト系防水シートを構成する改質アスファルト組成物としては、特に限定されるものではなく、一般の防水シート用として使用されている改質アスファルト組成物を適宜選択して用いることができる。
前記の改質アスファルト組成物は、アスファルト、スチレン系合成ゴム、粘着性付与剤及び無機フィラーを含む改質アスファルト組成物を好ましく用いることができる。
前記の改質アスファルト組成物は、その構成材料の配合割合によって種々の特性が得られ、製造・加工上および燃料費面から改質アスファルト組成物の軟化点は100〜150℃、特に105〜145℃の範囲が好ましい。
また、本発明で用いるアスファルト系防水シートを生産する場合の生産性および加工性の点から、改質アスファルト組成物の粘度は、2000〜14000cps以下が好ましく、2200〜13000cps以下がさらに好ましく、2500〜12000cps以下が特に好ましい。
【0025】
アスファルトの配合割合は、改質アスファルト組成物の25〜90質量%が好ましく、30〜70質量%がさらに好ましく、35〜50質量%が特に好ましい。
アスファルトは、原油を常圧もしくは減圧蒸留してガソリン、灯油、軽油、潤滑油などを取り除いて得られるもので、針入度10〜250程度のストレートアスファルトが好適に使用できる。
【0026】
前記の改質アスファルト組成物に含まれるアスファルトは、ストレートアスファルト、ブローンアスファルトなどを用いることができる。
アスファルトは、ストレートアスファルトの軟化点やせん断力を改善するためにブローンアスファルトを合わせて用いることができ、ブローンアスファルトの配合量は、アスファルトの合計質量に対して、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下で利用することができる。
ブローンアスファルトの配合量が40質量%を超えると改質アスファルト組成物の粘度が増加して、不織布など防水シートの基材への含浸性が低下するため好ましくない。
【0027】
前記の改質アスファルト組成物に含まれるスチレン系合成ゴムとしては、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体から選ばれる1種或いは2種以上を用いることができ、特にスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体が好適に用いられる。また、官能基改善変性ポリマーも用いることができる。
スチレン系合成ゴムの配合割合は、アスファルト100質量部に対し、好ましくは5〜30質量部、さらに好ましくは6〜28質量部、より好ましくは、7〜26質量部、特に好ましくは8〜25質量部の範囲が特に好ましい。
スチレン系合成ゴムの配合割合が、5質量部未満では実用上充分なせん断接着強度を得られないことがあり、30質量部を超えると改質アスファルト組成物の粘度が高くなって、製造・加工上、特に基材への含浸性が低下することから好ましくない。
【0028】
前記の改質アスファルト組成物では、本発明の特性を損なわない範囲で、粘着付与剤、無機充填材などの各種添加剤を適宜選択して添加することができる。
改質アスファルト組成物の自己粘着性を適正に向上させるためには、プロセスオイルやポリブテンなどの粘着性付与剤を適宜選択して適正量を用いることが好ましい。
無機充填材としては、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、クレー、カーボンブラック、タルク、マイカ、硫酸バリウム、珪藻土、シリカ等の粒子状無機充填材、ワラストナイトやガラス繊維などの繊維状無機充填材を用いることができる。
【0029】
本発明で用いるアスファルト系防水シートを構成する複数の開口穴を有する樹脂フィルム層としては、合成樹脂フィルムが用いられ、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステルなどのポリエステルフィルム、ナイロン6などのポリアミドフィルムなどの合成樹脂フィルムを用いることが出来る。合成樹脂フィルムは、一軸延伸、二軸延伸などの延伸フィルム、又は無延伸フィルムが好ましい。
合成樹脂フィルムは、フィルムを2層以上に積層した積層フィルムを用いることができる。合成樹脂フィルム層としては、特に低密度ポリエチレンが柔軟性に優れているため好ましい。
さらに合成樹脂フィルムは、合成樹脂フィルムと織布及び/又は不織布とを積層した積層フィルムを用いることができ、合成樹脂フィルムと織布及び/又は不織布との積層順は問わず、合成樹脂フィルムが最下層でも、織布及び/又は不織布が最下層でもよい。
不織布、織布は、合成樹脂繊維又は化学繊維からなるものであれば、特に制限なく使用すること出来る。合成樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステルなどのポリエステル、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンなどを挙げることができる。これらの繊維は単独または併用して使用することができる。
合成樹脂フィルムの厚みは、製造時に支障がなく、施工時あるいは使用時に損傷を受けにくい適度な厚さであればよく、好ましくは3〜100μmの範囲、さらに好ましくは4〜75μmの範囲、特に好ましくは5〜50μmの範囲が好ましい。
【0030】
樹脂フィルム層に設けられた複数の開口穴の形状は、下地上面と開口部を有する樹脂フィルム層の上層の改質アスファルト組成物との接着部が、強固な接着強度を有するとともに、下地上面と前記フィルム層(フィルム層の非開口部の面)との間に形成された隙間を、蒸気あるいは水分が移動する場合の抵抗を小さくすることが好ましいので、円形及び/又は楕円形であることが好ましい。
前記開口穴の配置は、図4及び図5に示すように円形の開口穴及び/又は楕円形の開口穴を千鳥格子状に配置すると良好な通気性、通水性(下地から蒸発した水分)を得られることから好ましい。
前記開口穴が円形である場合、開口穴の直径は好ましくは35〜55mm、さらに好ましくは38〜52mm、より好ましくは40〜50mm、特に好ましくは42〜48mmの範囲が、防水シートと下地との接着強度及び防水シートと下地との間の通気性の双方で良好な特性が得られることから好ましい。
前記開口穴が楕円形である場合、開口穴の短径(Z)は好ましくは30〜50mmの範囲、さらに好ましくは33〜49mmの範囲、より好ましくは35〜45mmの範囲、特に好ましくは38〜43mmの範囲であり、開口穴の長径は、前記開口穴の短径(Z)に対して、Z(開口穴の短径)×1.1〜1.3の範囲が、防水シートと下地との接着強度及び防水シートと下地との間の通気性の双方で良好な特性が得られることから好ましい。
【0031】
図4及び図5に示す円形及び/又は楕円形の開口穴中心間の間隔は、通気性防水シートの短辺方向については、開口穴中心間の間隔aが好ましくは60〜130mm、さらに好ましくは65〜110mm、特に好ましくは70〜100mmの範囲である。
通気性防水シートの長辺方向については、開口穴中心間の間隔bは、好ましくは70〜260mm、さらに好ましくは85〜240mm、特に好ましくは100〜200mmの範囲である。
また、ひとつの開口穴と、その開口穴を基準にして通気性防水シートの短辺方向と長辺方向の間に位置する隣り合った開口穴との中心間の間隔cは、好ましくは45〜150mm、さらに好ましくは50〜130mm、特に好ましくは55〜100mmの範囲にあることが好ましい。
円形及び/又は楕円形の開口穴中心間の間隔が、上記範囲にあることによって、防水シートと下地との接着面積を充分に確保でき、また防水シートと下地との間に安定した通気性を確保できる。
【0032】
本発明で用いるアスファルト系防水シートを構成する剥離層としては、剥離紙或いは剥離フィルムを使用できる。特に、剥離紙、剥離フィルムはいずれについてもクレープ加工されたもので伸縮性に優れたものが好適に用いることができる。
剥離フィルムとしては、合成樹脂フィルムが用いられ、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステルなどのポリエステルフィルム、ナイロン6などのポリアミドフィルムなどの合成樹脂フィルムを用いることができる。合成樹脂フィルムは、一軸延伸、二軸延伸などの延伸フィルム、又は無延伸フィルムが好ましい。
合成樹脂フィルムは、フィルムを2層以上に積層した積層フィルムを用いることができる。合成樹脂フィルム層としては、特に低密度ポリエチレンが柔軟性に優れているため好ましい。
合成樹脂フィルムの厚みは、製造時に支障がなく、施工時あるいは使用時に損傷を受けにくい適度な厚さであればよく、好ましくは3〜100μmの範囲、さらに好ましくは4〜75μmの範囲、特に好ましくは5〜50μmの範囲が好ましい。
合成樹脂フィルム層は、改質アスファルトコンパウンド層のアスファルトをほとんど、又はまったく透過させない合成樹脂フィルム層が、施工者の衣服や靴および建築部材や屋根部材などを汚さないために好ましい。
【0033】
本発明では、高い防水性能を確保するためにアスファルト系防水シートの短辺部と短辺部とを突き合わせた箇所には、全面自己粘着タイプのアスファルト系防水シートを前記短辺部を突き合わせた箇所の上面に敷設する。
前記の全面自己粘着タイプのアスファルト系防水シートとしては、基材層、改質アスファルト層、離型紙(又は離型フィルム)の順に積層されたアスファルト系の防水シートであれば、特に限定されることなく使用することができる。
【0034】
本発明では通気性を有する防水シート層を敷設した後、防水シート層全体および防水シート接合部分の防水性能をより高め、さらに防水シートの重ね合わせ部分の段差を解消して歩行時の安全性を確保するためにポリマーセメント組成物を塗布・硬化させて平坦性に優れた防水仕上り面を形成する。
【0035】
本発明で用いるポリマーセメント組成物としては、アルミナセメントを含む水硬性成分、充填材、ポリマーエマルション及び増粘剤を含むスラリー状のポリマーセメント組成物を好適に用いることができる。
本発明で用いるポリマーセメント組成物は、防水シート層の上面に、吹き付け、鏝塗り、ローラー塗工の塗布方法により施工することができる。
【0036】
水硬性成分は、アルミナセメントのほかに、ポルトランドセメント及び石膏から選ばれる成分を1種又は2種含むことができる。
水硬性成分は、水硬性成分100質量%中に、アルミナセメントを好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上含むものを用いることが好ましい。
特に水硬性成分は、水硬性成分100質量%中に、アルミナセメントを50質量%以上含むものを用いることが、硬化物の伸び率に優れるために好ましい。
【0037】
アルミナセメントは、潜在的に急硬性を有しており、硬化後は耐化学薬品性、耐火性に優れた硬化体を与える。また、潜在水硬性を有する高炉スラグの存在により、その欠点である硬化体強度の経時的な低下も抑制される。アルミナセメントは鉱物組成が異なるものが数種知られ市販されており、何れも主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であるが、強度および着色性の面からは、CA成分が多く且つCAF等の少量成分が少ないアルミナセメントが好ましい。
【0038】
ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどの混合セメントなどを用いることができる。
【0039】
石膏は、無水、半水等の各石膏がその種を問わず1種又は2種以上の混合物として使用できる。石膏は急硬性であり、また、硬化後の寸法安定性保持成分として働くものである。
【0040】
充填材としては、珪砂、川砂、海砂、山砂、砕砂などの砂類、スラグ粉、フライアッシュ、シリカフーム、石灰石粉、タルク、カオリン、アルミナ粉、酸化チタン、水酸化アルミニウムなどを用いることができ、これらの充填材を1種または2種以上用いることができる。特に珪砂を使用する場合、5〜7号の粒度を有するものを使用することが好ましい。
【0041】
ポリマーエマルションとしては、公知のポリマーエマルションを用いることができる。
ポリマーエマルションとしては、ポリ酢酸ビニルエマルション、エチレンと酢酸ビニルの共重合体エマルション、エチレン、酢酸ビニルと(メタ)クリル酸誘導体の共重合体マルション、エチレンと(メタ)クリル酸誘導体との共重合体エマルション、ポリ(メタ)クリル酸誘導体のエマルション、スチレンと(メタ)クリル酸誘導体との共重合体エマルション、ポリクロロプレンラテックス、酢酸ビニルと塩化ビニルの共重合体エマルション、スチレンとブタジエンの共重合体エマルション、アクリロニトリとブタジエンの共重合体エマルション、酢酸ビニルと(メタ)クリル酸誘導体のエマルションなどのエチレン、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)クリル酸誘導体などを少なくとも1種含む合成樹脂のエマルションを用いることができる。(メタ)クリル酸誘導体は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸、これらのエステルなどの酸誘導体を意味し、少なくともこれらの成分を1種以上含むものである。
【0042】
ポリマーエマルションに含まれるポリマー成分のガラス転移温度は、特に限定されず市販のものを用いることができるが、好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−25℃以下、より好ましくは−25℃〜−50℃の範囲、特に好ましくは−33℃〜−50℃の範囲を有するものが、低温環境下でも優れた特性を有するために好ましく、さらに(メタ)クリル酸誘導体を含むガラス転移温度が0℃以下、好ましくは−25℃以下、特に好ましくは−25℃〜−50℃の範囲のポリマーエマルションを、硬化物の伸び率が優れているために好ましく用いることができる。
【0043】
前記の(メタ)クリル酸誘導体は、アクリル酸誘導体及びメタクリル酸誘導体を示し、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、などである。
ポリマーエマルションは、(メタ)クリル酸誘導体を1種または2種以上を使用して製造するアクリル系エマルションを用いることが好ましい。
【0044】
ポリマーエマルションは、公知の製造方法により得られるものを用いることができ、例えば、乳化剤の存在下に、重合開始剤を用いて、水又は含水溶媒中で合成樹脂の原料となる重合性モノマーを乳化重合する方法などにより製造することができる。
【0045】
乳化剤としては、公知のものを用いることができ、アニオン性、ノニオン性、カチオン性又は両性の界面活性剤やポリビニルアルコール等の保護コロイドなどを挙げることができる。
【0046】
ポリマーエマルションは、水又は含水溶媒を含まない粉末状の合成樹脂粒子を含み、粉末状の合成樹脂粒子を用いると、水又は含水溶媒を除いた全成分を一つのパッケージとすることができ、施工現場では水を添加するだけで使用できるので便利である。
【0047】
ポリマーエマルションは、水又は含水溶媒を含むものを使用する場合には、ポリマーセメント組成物単独で混練してモルタルを得ることができ、また粘度を調整する目的で、さらに必要に応じて水を加えることができる。
ポリマーエマルションとして粉末状の合成樹脂粒子を使用する場合には、ポリマーセメント組成物単独ではスラリー状のモルタルを得ることができないため、ポリマーセメント組成物と水とを混練することにより均質なスラリーを製造することができる。
【0048】
水又は含水溶媒を含まない粉末状の合成樹脂を除くエマルションは、エマルション中に含まれるポリマーの固形分を適宜選択することができるが、エマルション100質量部中、30〜80質量部が好ましく、40〜60質量部がより好ましい。
【0049】
ポリマーセメント組成物は、エマルションのポリマー固形分100質量部に対し、水硬性成分を好ましくは15〜175質量部、さらに好ましくは20〜120質量部、より好ましくは22〜90質量部、特に好ましくは23〜70質量部含むものを用いることができる。
【0050】
ポリマーセメント組成物は、エマルションのポリマー固形分100質量部に対し、水硬性成分と充填材とを含む粉体を好ましくは15〜350質量部、さらに好ましくは20〜330質量部、より好ましくは22〜300質量部、より好ましくは23〜270質量部、より好ましくは80〜250質量部、特に好ましくは150〜230質量部を含むものを用いることができる。
【0051】
増粘剤は、ポリエーテル系、ウレタン系、アクリル系などの水溶性ポリマー系、セルロース系、蛋白質系、などの増粘剤を用いることができ、特に水溶性ポリウレタン系などの水溶性ポリマー系の増粘剤を好ましく用いることができる。
増粘剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で適宜添加量を調整することができ、水硬性組成物100質量%中、0.05〜1.0質量%、さらに0.1〜0.7質量部、特に0.2〜0.5質量部含むことが好ましい。
【0052】
ポリマーセメント組成物は、本発明の特性を損なわない範囲で、凝結遅延剤や凝結促進剤の凝結調整剤、流動化剤、消泡剤などを配合することができる。
【0053】
ポリマーセメント組成物の製造法の一例としては、攪拌容器にエマルションを所定量計量し、攪拌機でエマルションを攪拌しながら所定量のアルミナセメントを含む水硬性成分、充填材及び増粘剤を、さらに必要に応じて凝結遅延剤や凝結促進剤の凝結調整剤、流動化剤、消泡剤などを添加し、数分間攪拌・混合して、さらに必要に応じて水を添加し、所定の粘度を有するスラリー状の組成物を製造することができる。
ポリマーセメント組成物の製造法の一例としては、容器にポリマーセメント組成物の各成分を所定の量を計量して加え、さらに必要に応じて凝結遅延剤や凝結促進剤の凝結調整剤、流動化剤、消泡剤などを添加し、攪拌機で数分間攪拌・混合して、さらに必要に応じて水を添加し、所定の粘度を有するスラリー状の組成物を製造することができる。
アルミナセメントを含む水硬性成分、充填材、増粘剤或いは添加剤などは、単独で添加しても良いし、予め他の数種と混合したものを添加しても良く、添加順序は特に選ばない。また、攪拌機は、一般的な固液攪拌機など撹拌機能を有するものを問題なく用いることができる。
水を添加する場合は、成分が分離しないように、均質なスラリーを得るように添加することが好ましい。
【0054】
本発明で用いるポリマーセメント組成物は、ローラー、コテ及び吹き付け(スプレーなど)などを用いる一般的方法で、先に敷設した防水シート層の表面に塗布して使用し、ポリマーセメント組成物の硬化体と防水シート層とを含む複合防水構造体を得ることができる。
ポリマーセメント組成物が乾燥した後に更に同じ操作を繰り返し、複数層のポリマーセメント組成物を形成させてより防水性能が高い構造体を得ることができる。
【0055】
また、屋上などの施工でポリマーセメント組成物が未硬化な状態で、織布及び/又は不織布を敷設してポリマーセメント組成物を含浸させ、その上面に再びポリマーセメント組成物を塗布施工することによって、より強度特性に優れた塗膜防水層を形成することができる。(図3)
ポリマーセメント組成物の中間層に用いる織布及び/又は不織布としては、ポリマーセメント組成物の補強性を有する材料が好ましく使用できる。
不織布、織布は、合成樹脂繊維又は化学繊維からなるもので、特に合成繊維からなる不織布が好ましい。
合成樹脂としては、特に制限はないが、例えばポリエチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステルなどのポリエステル、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンなどを挙げることができる。これらの繊維は単独または併用して使用することができる。
不織布または織布の目付は、特に限定されるものではないが、好ましくは15〜100g/mの範囲、特に好ましくは30〜80g/mの範囲のものが可撓性を有し、施工作業性に優れるため好ましい。
さらに、ポリマーセメント組成物が乾燥した後に、セメントモルタル層を形成させて、或いはコンクリート層を形成させて、防水性能を有する強靭な構造体を得ることができる。
【0056】
本発明では通気性を有する防水シート層を敷設し、さらに防水性能をより高めるために施工したポリマーセメント組成物の硬化層の上面に、耐候性および耐久性を向上させるためにトップコート層を設けることが好ましい。
本発明で用いるトップコートとしては、アクリルゴム系、ポリウレタン系等のエマルションを主成分とするトップコート材や、アクリルゴム系、ポリウレタン系等のエマルションと珪砂、スラグ砂、石灰石砂などの細骨材とを主成分とするトップコート材を適宜選択して使用することができ、防水層の保護や防水性の向上効果とを付与できることから好ましい。
本発明で用いるトップコートは、ローラー、コテ及び吹き付け(スプレーなど)などを用いる一般的方法で、先に施工したポリマーセメント組成物の硬化層の上面に塗布或いは吹付け施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】通気性を有する防水層を形成するために使用するアスファルト防水シートの断面図と部分下面図、および、防水シートを敷設した場合の防水シート長辺方向の重ね合わせ部の部分断面図である。
【図2】通気性複合防水工法の施工手順の一例を示す模式図である。
【図3】通気性複合防水工法によって得られる構造体(一例を示す模式図)の部分断面図である。
【図4】通気性を有する防水層を形成するために使用するアスファルト防水シートの最下面に用いるフィルムの円形開口穴の配置図(一例を示す模式図)の部分平面図である。
【図5】通気性を有する防水層を形成するために使用するアスファルト防水シートの最下面に用いるフィルムの楕円形開口穴の配置図(一例を示す模式図)の部分平面図である。
【符号の説明】
【0058】
11 : アスファルト系防水シート
12 : 基材層
13 : 改質アスファルト層
14 : 複数の開口穴
15 : 樹脂フィルム層(非開口部)
16 : 防水シート長辺方向で樹脂フィルム層が積層されていない部分
17 : 防水シート用プライマー層
18 : 防水シート(シートB)
19 : 防水シート(シートA)
20 : 防水シート(シートA)の長辺方向の端部
21 : 隣り合う防水シートの長辺方向の重ね合わせ部分
22 : 防水シートと下地との強固な接着部
23 : 防水シート最下層の樹脂フィルム層と下地と間に形成された連続的な通気部
24 : 構造物
30 : 構造物
31 : 構造物の施工面
32 : アスファルト系防水シート
33 : 防水シート短辺部
34 : 施工面の側壁
35 : 防水シート長辺部
36 : 施工面の側壁
37 : 最下層全面が自己粘着性を有する改質アスファルトを含む防水シート
38 : ポリマーセメント組成物
39 : トップコート層
40 : 脱気部
50 : 構造物
51 : 通気性複合防水構造体
52 : 隣り合う防水シート長辺部の重ね合わさった部分
53 : 隣り合う防水シート長辺部の重ね合わさって強固に接着された接着部
54 : ポリマーセメント組成物の硬化体層
55 : トップコート層
56 : 基材層
57 : 改質アスファルト層
58 : 樹脂フィルム層(非開口部)
59 : 防水シートと下地との強固な接着部
60 : 防水シート最下層の樹脂フィルム層と下地との間に形成された連続的な通気部
61 : 防水シート(短辺部)
62 : 防水シート(短辺部)
63 : 防水シート突き合わせ部
64 : 最下層全面が改質アスファルト自己粘着層の防水シート
65 : ジョイント部分
66 : 通気性複合防水構造体
67 : 織布及び/又は不織布の敷設層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の施工面にアスファルト系防水シートを敷設する工程と、
前記アスファルト系防水シートの上面にポリマーセメント組成物を塗布して硬化させる工程とを有する通気性複合防水工法であって、
アスファルト系防水シートの最下面が部分的に自己粘着性を有すること
を特徴とする通気性複合防水工法。
【請求項2】
構造物の施工面に防水シート用プライマーを施工する工程と、
前記プライマー層の上面にアスファルト系防水シートを敷設する工程と、
前記アスファルト系防水シート層の上面にポリマーセメント組成物を塗布する工程と、
前記ポリマーセメント組成物の未硬化の塗布層に織布及び/又は不織布を敷設する工程と、
前記織布及び/又は不織布の上面にポリマーセメント組成物を塗布して硬化させる工程とを有する通気性複合防水工法であって、
アスファルト系防水シートの最下面が円形及び/又は楕円形の部分的な自己粘着部を有すること
を特徴とする通気性複合防水工法。
【請求項3】
ポリマーセメント組成物の硬化層の上面にトップコート層を設ける工程とを有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の通気性複合防水工法。
【請求項4】
アスファルト系防水シートは、最下層に円形及び/又は楕円形の複数の開口穴を有する樹脂フィルム層を有し、前記樹脂フィルム層、自己粘着性を有する改質アスファルト層及び基材層を含む層から構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の通気性複合防水工法。
【請求項5】
ポリマーセメント組成物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション及び/又はアクリル共重合体エマルションと、アルミナセメントを含むコンクリート防水用ポリマーセメント組成物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の通気性複合防水工法。
【請求項6】
構造物の施工面は、新築建築物または既存建築物の屋上、ベランダ及びバルコニーのいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の通気性複合防水工法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の通気性複合防水工法によって得られる通気性複合防水構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−240255(P2008−240255A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78470(P2007−78470)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】