説明

通行遮断棒

【課題】風圧を受けにくい棒状体で出来ていながらも視認性や干渉性が高く而も剛性が適度に保たれている通行遮断棒を実現する。
【解決手段】中実または中空の棒状部材からなり一端部50aまたは両端部50a,50dを保持されて踏切道4の開閉に用いられる通行遮断棒50において、一平面上で繰り返し折り曲げられた形にして、その平面に沿って見ると真っ直ぐな物に見えるが、その平面に向かって見ると蛇行状の物に見えるようにする。また、踏切道4を閉じる遮断状態で、下向き開口幅U,Vが乳母車より狭く且つ小児の肩幅よりも狭くなり、極小部位高さHLが背もたれを倒した乳母車より低く且つ小児が容易に潜り抜けできる高さより低くなり、極大になる反転曲折部50bと反転曲折部50cの高さが交互に高低を繰り返すようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、棒状部材からなり、人や車両といった移動体の通行を時によって許容したり阻止したりするために通路や通り口その他の通行箇所を開閉するのに用いられる通行遮断棒に関する。通行遮断棒は、通行遮断時に物理的・機械的な阻止力を示すのに加え、視覚や触覚に訴えることで、通行遮断時の心理的な阻止効果も発揮するものである。
【背景技術】
【0002】
図6(a)に正面図を示した揺動式の踏切遮断機10は、直桿一段式のものであり、揺動式保持部材11にて真っ直ぐな遮断桿12を一本だけ片持ち梁状態で保持している(例えば特許文献1参照)。そして、揺動式保持部材11を約90゜ほど双方向に軸回転させて遮断桿12を揺動させることにより、踏切道4の通行を許容する開通状態Bでは遮断桿12を鉛直状態にして踏切道4を開けているが、踏切道4の通行を阻止したい遮断状態Aでは遮断桿12を水平状態にして踏切道4を閉じるようになっている。この遮断状態Aにおける遮断桿12の踏切道4からの高さHは0.8mである。
【0003】
図6(b)に正面図を示した揺動式の踏切遮断機20は、直桿二段式のものであり、連接部材を兼ねる揺動式保持部材21にて真っ直ぐな二本の遮断桿22,23を何れも片持ち梁状態で保持している。そして、上述した踏切遮断機10と同様に遮断桿22,23を揺動させて遮断状態Aか開通状態Bかをとらせるようになっている。遮断状態Aで下側になる遮断桿22は、上述の遮断桿12と同じく踏切道4からの高さHが0.8mになっているが、遮断状態Aで上側になる遮断桿23は、遮断桿22から1mほど離れて遮断桿22と平行になっている。遮断桿23は、遮断状態Aでの視認性を高めるためのものであり、特に大型自動車の高い運転席からの視認性を高める役目を担っている。
【0004】
図6(c)に正面図を示したホームドア装置30も、やはり、直桿二段式で、真っ直ぐな二本の遮断桿33,34を装備しているが、このホームドア装置30は、昇降式であり、遮断桿33,34を両端で保持している。ホームドア装置30は、プラットホーム6の縁部の上に設置された仕切壁8の間の乗降時通路を開閉するために、プラットホーム6の縁部の乗降時通路の左右に分かれて仕切壁8の端部に立設された二本の支柱部31,31と、支柱部31,31の中に収まっていて同時に昇降する一対の昇降式保持部材32,32とを具えている。遮断桿33,34は、何れも両端を昇降式保持部材32,32によって保持されて、水平かつ平行な姿勢で同時に昇降させられ、遮断状態Aではプラットホーム6の上面近くまで下降し、開通状態Bでは車両の扉より高い位置まで上昇するようになっている。上側の遮断桿33と下側の遮断桿34との間隙Gは1m弱である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−112151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通路や出入口を開閉する通行遮断部材としては、板状体からなる戸や扉が最も一般的であるが、板状では、風圧の影響を受けやすいので、それに耐えられる構造にすると、重くなって駆動機構の大形化や費用の増加を招来する。
これに対し、そのような部材の使用が不都合な応用分野では、移動体の通行箇所を開閉する通行遮断部材として、板状体でなく棒状体からなる通行遮断棒が用いられる。
【0007】
すなわち、通行遮断棒は、棒状体なので風圧の影響をあまり受けないで済むとともに比較的軽量で済むものとなっているが、さらに、保持している端部を介して駆動することで運動させるのに適う剛体としての性質を持つことが必要である。
また、応用目的によっては、その剛性をできるだけ高めて通行遮断時に絶対的な阻止を図るべきものもあれば、非常時や緊急時には力ずくで変形させて強行突破するのも可能な可撓性や柔軟性をも適度に兼ね備えた剛性を持つのが望ましいとされることもある。
【0008】
そして、そのような特性を持った通行遮断棒として、従来は、上述したように真っ直ぐな棒状体が用いられていた。真っ直ぐな通行遮断棒は、片持ちでの揺動などが可能であって非常時等には人力でも或る程度は押し曲げることができる中空の竹材や、容易には変形しない中実の硬質材などから作られる。また、踏切の遮断桿などに用いられている真っ直ぐな通行遮断棒にあっては、心理的な阻止効果を発揮する源である視認性を高めるために、黒と黄との交互彩色にて目立たせるといったことも行われている。
【0009】
しかしながら、真っ直ぐな通行遮断棒の場合、一本や二本を設けただけでは、板状体に匹敵するところまで視認性を高めるのは難しい。また、隙間が広いため、背もたれを倒した乳母車(ただし、箱型のものではなく、乳児が寝た姿勢に合うように背もたれの傾斜が深くとれる、いわゆる、ベビーカをいう。以下同じ) の前端部が通行遮断棒を超えて飛び出し、また小児が若干かがむことにより比較的容易に通行遮断棒を潜り抜けできることもあるので、接触による干渉性も、板状体に及ばない。かといって、視認性や干渉性を高めるべく多数本の通行遮断棒を密に配設したのでは、材工費や管理費などのコストが板状体よりも嵩みかねない。
そこで、風圧を受けにくい棒状体で出来ていながらも視認性や干渉性が高く而も剛性が適度に保たれている通行遮断棒を実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の通行遮断棒は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、中実または中空の棒状部材からなり一端部または両端部を保持されて移動体の通行箇所の開閉に用いられる通行遮断棒において、一平面上で繰り返し折り曲げられた形をしていて、前記平面に沿って見ると真っ直ぐな物に見えるが、前記平面に向かって見ると蛇行状の物に見えるようになっていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の通行遮断棒は(解決手段2)、上記解決手段1の通行遮断棒であって、前記通行箇所を閉じる遮断状態に置かれて下向きになる開口の横幅が、何れも、乳母車より狭く且つ小児の肩幅よりも狭いとされる0.2m以下になっていることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の通行遮断棒は(解決手段3)、上記解決手段1,2の通行遮断棒であって、前記通行箇所を閉じる遮断状態に置かれて極小になる部位の高さが、何れも、背もたれを倒した乳母車より低く且つ小児が容易には潜り抜け出来ない高さとされる0.4m以下になっていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の通行遮断棒は(解決手段4)、上記解決手段1〜3の通行遮断棒であって、前記通行箇所を閉じる遮断状態に置かれて極大になる部位の高さが、交互に、高低を繰り返していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような本発明の通行遮断棒にあっては(解決手段1)、棒状体であっても一平面上で繰り返し折り曲げられた形をしていて、平面に沿って見ると平板と同様に真っ直ぐな物に見えるが、平面に向かって見ると蛇行状の物に見えて平板の占有領域の各所に及んでいるため、視認性も干渉性も平板のそれに近いところまで高まっている。特に、曲折部では模様が変化しているようにも見えるため、更には遮断時に垂直部が各方位から見えるため、視認性が平板のそれより高まることも多い。
しかも、蛇行させたことにより、バネのように伸び変形や曲げ変形が生じやすくて、十分な可撓性や柔軟性を確保しやすいものとなっている一方で、太さを変えることで容易に剛性を高めることもできるので、必要な剛性を確保するも容易なものとなっている。
したがって、この発明によれば、風圧を受けにくい棒状体で出来ていながらも視認性や干渉性が高く而も剛性が適度に保たれている通行遮断棒を実現することができる。
【0015】
また、本発明の通行遮断棒にあっては(解決手段2,3)、遮断時に下を向く下向き開口の横幅を狭くしたことや、遮断時に下に来る下側部分の高さを低くしたことにより、遮断時の下側部分の視認性や干渉性が高まって、乳母車や小児が無意識に通行してしまうといった事態の発生を未然に且つ確実に防止することができる。
【0016】
さらに、本発明の通行遮断棒にあっては(解決手段4)、遮断時に上に来る部分が凸凹するようにしたことにより、高い所からの視認性がより一層高まる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1について、通行遮断棒の構造と使用態様を示し、(a)が本発明の通行遮断棒の平面図と正面図、(b)が直桿一段式遮断桿に代えて本発明の通行遮断棒を装着した揺動式の踏切遮断機の閉状態を示す正面図、(c)がその踏切遮断機の開状態を示す正面図である。
【図2】本発明の実施例2について、直桿二段式遮断桿に代えて本発明の通行遮断棒を装着した揺動式の踏切遮断機の閉状態を示す正面図である。
【図3】本発明の実施例3について、直桿二段式遮断桿に代えて本発明の通行遮断棒を装着した昇降式のホームドア装置の正面図である。
【図4】本発明の実施例4について、本発明の通行遮断棒を装着するとともに支柱部等も改良した昇降式のホームドア装置を示し、(a)が平面図、(b)がホーム側から見た正面図、(c)が左側面図、(d)が左の支柱部を右手前から見た斜視図、(e)がホームドア装置の右側面図である。
【図5】本発明の実施例4に係る昇降式ホームドア装置をホーム側から見た斜視図である。
【図6】従来の通行遮断棒を示し、(a)が直桿一段式遮断桿を装着した揺動式の踏切遮断機の正面図、(b)が直桿二段式遮断桿を装着した揺動式の踏切遮断機の正面図、(c)が直桿二段式遮断桿を装着した昇降式のホームドア装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
このような本発明の通行遮断棒について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜4により説明する。図1に示した実施例1は、上述した解決手段1〜4(出願当初の請求項1〜4)を総て具現化したものであり、図2に示した実施例2や、図3に示した実施例3、図4〜図5に示した実施例4は、その変形例である。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,電動モータ等の駆動源,タイミングベルト等の伝動部材,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。また、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の通行遮断棒の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1(a)は、通行遮断棒50の平面図と正面図である。
【0020】
通行遮断棒50は、所望の蛇行状態のものをプレス成型等で直接的に作るのも不可能ではないが、量産されていて入手も容易な真っ直ぐの棒状部材を曲げ加工して作る方が実用的である。素材となる棒状部材は、軒樋で集めた雨水を地上へ流す竪樋のような中空の丸い管体であって、耐候性にも優れた熱可塑性プラスチック例えばポリ塩化ビニルからなるものが、取り扱い易く加工もし易く寿命も長くて良い。曲げ加工は、プラスチック配管作業等に用いられている既成のベンダーを流用しても良く、曲折部が扁平になるのを防止するために管体中空に圧搾空気を送り込みながら、曲げたい部位を加熱して、行われる。
【0021】
通行遮断棒50の外径は、遮断桿12に代えて通行遮断棒50を踏切遮断機10に装備させる際の軽量化を意識して遮断桿12より細いものを図示したが、踏切遮断機10で揺動させることができれば遮断桿12より太くても良い。ただし、踏切遮断機10の揺動式保持部材11に取り付けられる一端部50aだけは、互換性のため遮断桿12と同じ太さにされ、強度確保のため肉厚または中実にされている。その一端部50aを除き、通行遮断棒50の大部分は、どこも同じく軽量で均一な管体からなり、一つの仮想平面の上で繰り返し折り曲げられた形をしている。そして、その仮想平面に沿って見ると即ち仮想平面と平行な方向から見ると真っ直ぐな一本物に見えるが(図1(a)の平面図を参照)、その仮想平面に向かって見ると即ち仮想平面を貫く方向から見ると蛇行状の物に見えるものとなっている(図1(a)の正面図を参照)。
【0022】
通行遮断棒50の多数の反転曲折部のうち下側の反転曲折部の高さはほぼ同じで下側の仮想包絡線はほぼ直線になるが、上側の部分を見ると、反転曲折部50bの方が反転曲折部50cよりも少し例えば0.1mほど高いので、上側の仮想包絡線は凸凹になる。このような反転曲折部50bと反転曲折部50cの上側頂点は、通行箇所を閉じる遮断状態に置かれると即ち通行遮断棒50が踏切道4の上で横向きにされると(図1(a)の正面図および(b)を参照)、それぞれ、極大になる部位なので、この通行遮断棒50は、極大になる部位の高さが交互に高低を繰り返している、というものになっている。
【0023】
また、反転曲折部50bの下方の下向き開口も、反転曲折部50cの下方の下向き開口も(図1(a)の正面図を参照)、通行箇所を閉じる遮断状態に置かれると即ち通行遮断棒50が踏切道4の上で横向きにされると(図1(b)参照)、何れも、下向きになる開口であるが、反転曲折部50bの下方の下向き開口の幅Uも、反転曲折部50cの下方の下向き開口の幅Vも、0.2m程度であり、その幅は、小さめの乳母車の幅0.28mより狭く、しかも、細めの小児の肩幅0.25mよりも狭いものである。
【0024】
さらに、通行遮断棒50の下側の反転曲折部の高さがほぼ同じで下側の仮想包絡線がほぼ直線になることは上述したが、それら下側の反転曲折部は、通行遮断棒50が通行箇所を閉じる遮断状態に置かれると即ち通行遮断棒50が踏切道4の上で横向きにされると(図1(b)参照)、極小になる部位である。そして、それらの極小部位の高さHLが、何れも、0.4mで、背もたれを倒した低めの乳母車の前頭部の高さ0.45mより低く、しかも、小児が容易に潜り抜けできる高さより低いものである。
また、最も低い極小部位と最も高い極大部位との差である曲折振幅Wは、約0.8mである(図1(a)の正面図を参照)。
【0025】
この実施例1の通行遮断棒50について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図1(b),(c)は、直桿一段式の遮断桿12に代えて本発明の通行遮断棒50を装着した揺動式の踏切遮断機10の正面図であり、(b)が閉状態を示し、(c)が開状態を示している。
【0026】
遮断桿12の代わりに通行遮断棒50を踏切遮断機10に取り付けるには、揺動式保持部材11に遮断桿12の一端部と同様に通行遮断棒50の一端部50aを保持させれば良いが、その際、予め揺動式保持部材11を遮断側に揺動させておくとともに、通行遮断棒50の取り付け姿勢を調整して反転曲折部50bや反転曲折部50cを上側にしてから、取り付けを固定する(図1(b)参照)。それから、揺動式保持部材11の揺動範囲の下限設定を調整して、極小部位高さHLを予定の0.4mにする。
【0027】
そうすると、上述した0.8mの曲折振幅Wで通行遮断棒50が上下に折れ曲がっているので、最大高さHHが1.2mになる。
このように、遮断状態では(図1(b)参照)、踏切道4の上方における極小部位高さHLから最大高さHHまでの空域を通行遮断棒50が蛇行して、踏切道4が柵式で仕切られる。
そして、目線の低い子供ばかりか目線の高い大人でも目前に通行遮断棒50が来るため、真っ直ぐな遮断桿12を用いていた従来より視認性が増し、通行遮断時の心理的な阻止効果が高まる。
【0028】
また、下向きの開口幅U,Vが狭いうえ(図1(a)の正面図を参照)、極小部位高さHLが低いため(図1(b)参照)、大人はもちろん,背もたれを倒した乳母車や,小さな子供ですら、通常の楽な姿勢のままで通行遮断棒50に接触しないで擦り抜けるのは無理なので、真っ直ぐな遮断桿12を用いていた従来より通行遮断時に物理的・機械的に阻止力が増す。
とはいえ、通行遮断棒50は、長手方向(図1(a),(b)では左右方向)の伸縮性が大きく増すとともに、捻り変形も容易になっていて、絶対阻止力は寧ろ抑えられているので、非常時の緊急避難等のためどうしても突破したいときには、手で強く押したり体を預けて体重を掛けたりすれば、通り抜けることができる。
【0029】
このような適度な可撓性・柔軟性を備えた通行遮断棒50でも、片持ち支持での揺動に適う程度には剛性も備えているので、また、重量も遮断桿12と大差ないかそれより軽くなっていて踏切遮断機10の駆動力で揺動しうるようにもなっているので、揺動式保持部材11が約90゜ほど軸回転した開通状態では(図1(c)参照)、踏切遮断機10の上方に行って、踏切道4の上方を開け、人や車両が踏切道4を通行するのを許容する。
【実施例2】
【0030】
本発明の通行遮断棒の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図2は、直桿二段式の遮断桿22,23に代えて本発明の通行遮断棒50を装着した揺動式の踏切遮断機20の正面図であり、閉状態を示している。
【0031】
この通行遮断棒50が上述した実施例1のものと相違するのは、曲折振幅Wが0.8mから1.4mに拡がった点と、それに伴って最大高さHHが1.8mに上がった点である。曲折振幅Wが拡がったことにより、通行遮断棒50が一本だけでも既述した従来の平行な二本の遮断桿22,23より広い範囲をカバーするとともに、遮断桿22,23に代わって踏切遮断機20の揺動式保持部材21に取り付けられるものとなっている。そして、通行遮断棒50を踏切遮断機20に取り付けるときには、揺動式保持部材21における下側の遮断桿22の保持部に通行遮断棒50の一端部50aを保持させ、揺動式保持部材21における上側の遮断桿23の保持部には保持補助具51を取り付けて保持補助具51にて通行遮断棒50の途中を支えさせるようになっている。
【0032】
このような通行遮断棒50は、通行箇所を閉じる遮断状態に置かれると即ち通行遮断棒50が踏切道4の上で横向きにされると(図2参照)、上側だった遮断桿23に匹敵する高さで上側に来た反転曲折部50bと反転曲折部50cが湾曲していて目に付きやすいうえ、それぞれ極大になる反転曲折部50bと反転曲折部50cの上側頂点の高さが交互に高低を繰り返していて、より一層視認性が高いものになっているため、大型自動車の運転席など高い位置から見ても良く見えて直ぐ気づくものとなっている。なお、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが高い干渉性や適度な剛性などは上述したのと同様である。
【実施例3】
【0033】
本発明の通行遮断棒の実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図3は、直桿二段式遮断桿33,34に代えて本発明の通行遮断棒50を装着した昇降式のホームドア装置30の正面図であり、昇降途中状態を示している。
この通行遮断棒50が上述した実施例1,2のものと相違するのは、両端保持のため一端部50aだけでなく他端部50dも昇降式保持部材32の保持部に適合した形状になっている点である。
【0034】
通行遮断棒50が一本だけでも既述した従来の平行な二本の遮断桿33,34より広い範囲をカバーするとともに、遮断桿33,34に代わってホームドア装置30の昇降式保持部材32に取り付けられるものとなっていることや、通行遮断棒50をホームドア装置30に取り付けるときには、昇降式保持部材32における下側の遮断桿34の保持部に通行遮断棒50の一端部50aや他端部50dを保持させ、昇降式保持部材32における上側の遮断桿33の保持部には保持補助具51を取り付けて保持補助具51にて通行遮断棒50の途中を支えさせるようになっていることは、上述の実施例2と同様である。
【0035】
このような通行遮断棒50は、両端50a,50dを昇降式保持部材32にて保持されて、プラットホーム6の上で横向きの姿勢を維持し続け、昇降式保持部材32の昇降に随伴して昇降するが、プラットホーム6の直ぐ上まで下降すると、プラットホーム6の上面のうち左右の支柱部31の間に位置する通行箇所を閉じて、遮断状態に置かれるが、この状態では、上述したように視認性も干渉性も高いうえ剛性は適度に維持され可撓性・柔軟性は増しているので、ホームドア装置30の機能向上に寄与している。
【実施例4】
【0036】
本発明の通行遮断棒の実施例4について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図4は、ドアとして本発明の通行遮断棒50を装着するとともに支柱部等も改良した昇降式のホームドア装置60を示し、(a)が平面図、(b)がホーム側から見た正面図、(c)が左側面図、(d)が左のフレーム62を右手前から見た斜視図、(e)がホームドア装置60の右側面図である。
また、図5は、ホーム側から見たホームドア装置60の外観斜視図である。
【0037】
この通行遮断棒50が上述した実施例1〜3のものと相違するのは、単独で用いられるのでなく、遮断桿61と組み合わせられている点である。遮断桿61は、真っ直ぐな丸棒を図示したが、角棒でも良く、中実棒でも、中空棒でも良い。また、通行遮断棒50と多点で連結されているが、その連結は、通行遮断棒50を多数のU字状部材に分割して個々のU字状部材の端部を締結や溶接等で接合させるのでも良く、一本の棒体に多数の穴を穿孔して各穴にU字状部材の端部を嵌め込むのでも良く、遮断桿61を縦に二つ割りして一繋がりの通行遮断棒50を挟み込んでから締結等で固定するのでも良く、要するに、真っ直ぐな遮断桿61と九十九折り状の通行遮断棒50とが繰り返し交差しながら一体となって謂わば棒製ドア50+61を構成していれば良い。
【0038】
このような通行遮断棒50と遮断桿61との結合体からなる棒製ドア50+61は、左端が昇降部材66にて保持されるとともに、右端が昇降部材67にて保持されて、左の支柱部であるフレーム62と右の支柱部であるフレーム63との間で水平に保持されて、両フレーム62,63間の乗降時通路を開閉するものとなっている。なお、通行遮断棒50は、下向きの開口幅U,Vが上例と同じ0.2mであり、極小部位と最大の極大部位との距離である曲折振幅Wが1.2mであり、極小部位と遮断桿61の中心との距離Xが0.6〜0.7mであり、極小部位と最大でない極大部位との距離Yが1.0mであり、完全降下時には極小部位の高さHLが0.05〜0.1mになるように形成されている。
【0039】
左右のフレーム62,63は、何れも中空部材からなり、プラットホームに立設され、下部から中間部までは真っ直ぐで鉛直になっているが、上部が線路側へ緩やかに湾曲している。フレーム62,63の中空にはそれぞれ昇降部材66,67が収まっており、昇降部材66,67がそれぞれ駆動部材64,66に駆動されて昇降することにより、棒製ドア50+61が昇降するようになっている。昇降部材66,67が直方体状になっていてフレーム62,63に姿勢を規制されて昇降するので、棒製ドア50+61は、下降して乗降時通路を閉じたときには縦になるが、上昇して乗降時通路を開けたときには車両の扉の上の方へ傾くようになっている。また、昇降部材66,67が直方体状になっているので、乗降客等が棒製ドア50+61を手で押したり棒製ドア50+61に体を押しつけたりしても、棒製ドア50+61が不所望に回転する心配はない。
【0040】
なお、フレーム62,63は、棒製ドア50+61の端部が移動する部分が下端から上端まで切り欠かれている他、上部の湾曲部分については昇降部材66,67の頭部が露出するよう大きな切欠部62a,63aが形成されている。また、それに対応して、昇降部材66,67は、下端のカドを落とされて下端部がテーパ状になっているので、下降に際してフレーム62,63の上部の湾曲部分から中間部の真直部分へ移行するときでもスムーズに下降することができるものとなっている。
【0041】
[その他]
なお、上記実施例では通行遮断棒50が丸管すなわち丸い中空の棒状部材から作られていたが、通行遮断棒50は、中空で断面角形の棒状部材からなるものでも良く、中実の棒状部材からなるものであっても良い。また、通行遮断棒50をホームドアに応用するに際し、通行遮断棒50で通行箇所を閉じていても、その通行箇所とは別に非常時の通路や避難場所を確保できるような場合、通行遮断棒50の剛性が高い方が好都合なこともあるので、そのときには通行遮断棒50を金属製にしたり太くしても良い。
【0042】
さらに、上記の実施例2,3では、揺動式保持部材21に通行遮断棒50を保持させるときや,昇降式保持部材32に通行遮断棒50を保持させるときに、一端部50aを下側にし、一端部50aより上側の所に保持補助具51を配したが、これに限定される訳でなく、一端部50aを上側にし、一端部50aより下側の所に保持補助具51を配しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の通行遮断棒は、踏切遮断機に装着されて踏切道を開閉する遮断桿や,プラットホームでホームドア装置に装着されて列車の乗降口の手前の乗降時通路を開閉する遮断桿といった上述の鉄道分野に限らず、駐車場の出入口の開閉部材や、ETC料金所のゲートの開閉部材など、種々の通路や通り口の開閉部材に適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
4…踏切道、6…プラットホーム(乗降時通路)、8…仕切壁、
10…踏切遮断機、11…揺動式保持部材、12…遮断桿、
20…踏切遮断機、21…揺動式保持部材、22,23…遮断桿、
30…ホームドア装置、31…支柱部、32…昇降式保持部材、33,34…遮断桿、
50…通行遮断棒、
50a…一端部、50b,50c…反転曲折部、50d…他端部、51…保持補助具、
60…ホームドア装置、
61…遮断桿、62,63…フレーム(支柱部)、
62a,63a…切欠部、64,65…駆動部材、66,67…昇降部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中実または中空の棒状部材からなり一端部または両端部を保持されて移動体の通行箇所の開閉に用いられる通行遮断棒において、一平面上で繰り返し折り曲げられた形をしていて、前記平面に沿って見ると真っ直ぐな物に見えるが、前記平面に向かって見ると蛇行状の物に見えるようになっていることを特徴とする通行遮断棒。
【請求項2】
前記通行箇所を閉じる遮断状態に置かれて下向きになる開口の横幅が、何れも、乳母車より狭く且つ小児の肩幅よりも狭いとされる0.2m以下になっていることを特徴とする請求項1記載の通行遮断棒。
【請求項3】
前記通行箇所を閉じる遮断状態に置かれて極小になる部位の高さが、何れも、背もたれを倒した乳母車より低く且つ小児が容易には潜り抜け出来ない高さとされる0.4m以下になっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された通行遮断棒。
【請求項4】
前記通行箇所を閉じる遮断状態に置かれて極大になる部位の高さが、交互に、高低を繰り返していることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載された通行遮断棒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−35315(P2013−35315A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170564(P2011−170564)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000207470)大同信号株式会社 (83)
【Fターム(参考)】