説明

連係操作機構

【課題】一対の操作部材の動作をワイヤにて連係させる場合の誤作動を抑えることが可能な連係操作機構を提供する。
【解決手段】ワイヤ50を利用して操作ペダル12と従動レバー32とをロック位置とロック解除位置との間でピン17、38の回りに連係回転させる機構において、ばね33にて従動レバー32をロック位置側に駆動し、操作ペダル12とワイヤ50との間にワイヤホルダ13を介在させ、ワイヤホルダ13を操作ペダル12の長孔12cに嵌めてピン17に対し接近及び離間可能、かつピン17の回りに操作ペダル12と一体回転可能とし、右ホルダ11にはワイヤ50の張力を受け止めつつワイヤホルダ13と接触し、操作ペダル12がロック位置及びロック解除位置のときにワイヤホルダ13が嵌り込む凹部16a、16bと、ワイヤホルダ13が乗り越える凸部16cとを有する案内部18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の操作部材を連係して操作する連係操作機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ベビーカーに設けられた左右の車輪のブレーキ装置を操作する機構として、各車輪の回転を制動するための操作部材をロック位置に向かってばねで押し付ける一方で、両操作部材をワイヤにて接続し、一方の操作部材をばねに抗してロック位置(作用位置)からロック解除位置(待機位置)へ動作させたとき、その動作をワイヤ経由で他方の操作部材に伝達して当該他方の操作部材もロック位置からロック解除位置へと動作させる連係操作機構が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−14894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の連係操作機構では、ワイヤを一対の操作部材のそれぞれと直結して両操作部材を連動させている。したがって、ワイヤをその途中で引っ張るような操作が加えられると、一方の操作部材のみがその操作に連動して本来あるべき位置から偏位するといった不都合が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は一対の操作部材の動作をワイヤにて連係させる場合の誤作動を抑えることが可能な連係操作機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の連係操作機構は、第1ベース部(11)に対して第1支点(17)を中心に作用位置と待機位置との間で回転できるように設けられた第1操作部材(12)と、第2ベース部(31)に対して第2支点(38)を中心に作用位置と待機位置との間で回転できるように設けられた第2操作部材(32)と、前記第1操作部材と前記第2操作部材とが前記作用位置と前記待機位置との間で連動するように両操作部材の間に配置されるワイヤ(50)と、前記両操作部材が前記作用位置又は前記待機位置のいずれか一方に向かって駆動されるよう前記ワイヤに張力を付与するばね部材(33)と、前記第1操作部材と前記ワイヤの一端部(50a)との間に介在し、前記第1支点に対して接近及び離間する方向に移動可能な状態で前記第1操作部材に取り付けられ、前記ワイヤの一端部とは、前記第1操作部材に対して一体的に移動できるように結合されるワイヤ連結部材(13)と、を具備し、前記第1ベース部には、前記ワイヤ連結部材に作用する前記ワイヤの張力を受けるようにして当該ワイヤ連結部材と接触し、かつ前記第1操作部材が前記作用位置及び前記待機位置にあるときに前記ワイヤ連結部材が嵌り込む凹部(16a、16b)と、両凹部間に位置し、かつ前記ワイヤ連結部材が、前記凹部に嵌っているときよりも前記第1支点から遠方にある状態で乗り越える凸部(16c)とを有する案内部(18)が設けられたものである。
【0007】
本発明によれば、ワイヤが第1操作部材と直結されることなく、ワイヤ連結部材を介して第1操作部材と連結され、そのワイヤ連結部材はワイヤの張力で第1ベース部の案内部と接触する。そのため、第1操作部材を第1支点の回りに作用位置と待機位置との間で回転させるとき、ワイヤ連結部材は第1支点に対して接近及び離間するように動作しつつ第1ベース部の案内部に沿って移動する。第1操作部材が作用位置及び待機位置にあるときは、ワイヤ連結部材が案内部の凹部に嵌り込み、それらの凹部の間をワイヤ連結部材が移動するときには、途中でワイヤ連結部材が第1支点から遠ざかる方向に移動して凸部を乗り越える。したがって、第1操作部材が作用位置及び待機位置にそれぞれある状態でワイヤを引き出すように操作しても、ワイヤ連結部材が凹部内に押し付けられ、凸部を乗り越えて反対側の凹部へとワイヤ連結部材が意図せずに移動するおそれがない。これにより、操作部材の誤作動を抑えることができる。
【0008】
本発明の一形態において、前記第1操作部材がユーザによる操作によって前記作用位置と前記待機位置との間を回転するように設けられてもよい。その場合、前記第1支点から一方の凹部までの距離と前記第1支点から他方の凹部までの距離とが互いに相違してもよい。第1操作部材を作用位置と待機位置との間で回転させる場合、ワイヤ連結部材が各凹部から移動を開始して凸部を乗り越えるまでの間は第1操作部材の操作に抵抗が生じるが、その抵抗は、凸部が第1支点に対して遠方に移動すべき距離の大小によって変化する。距離が大きければ抵抗も増加し、それに伴ってユーザに要求される操作力も増加する。したがって、第1操作部材を作用位置から待機位置へと回転させるときと、反対方向へ回転させるときとの間でユーザの操作力を差別化し、いずれの操作を行っているかを認識する手掛かりをユーザに与えることができる。
【0009】
上記の形態においては、前記第1操作部材及び前記第2操作部材は、前記作用位置にあるときに一対の操作対象(6)のそれぞれを制動し、前記待機位置にあるときには前記一対の操作対象の制動を解除するように設けられてもよい。その場合、前記第1操作部材が前記作用位置にあるときに前記ワイヤ連結部材が前記一方の凹部(16a)に嵌り合い、前記待機位置にあるときには前記ワイヤ連結部材が前記他方の凹部(16b)に嵌り合い、前記第1支点から前記一方の凹部までの距離が前記第1支点から前記他方の凹部までの距離よりも大きく設定されてもよい。これによれば、操作対象を制動している状態からその制動を解除する状態へと切り替えるように第1操作部材を操作するときの操作力を、反対方向への操作時の操作力よりも増加させることができる。そのため、ユーザによる不用意な制動解除操作を防止する効果が期待できる。
【0010】
上記の形態においては、前記ばね部材が、前記第2操作部材を前記作用位置に向かって駆動するように設けられてもよい。これによれば、作用位置から待機位置への第1操作部材の操作に対してばね部材が抵抗として働く一方、待機位置から作用位置への第1操作部材の操作に対しては、ばね部材がその操作を補助するように働く。したがって、制動解除操作時の操作力が制動操作時の操作力よりもさらに増加し、ユーザによる不用意な制動解除操作を防止する効果がさらに高まる。
【0011】
さらに、前記一対の操作対象は、手押し車の左右一対の車輪(6)であってもよい。これによれば、手押し車の車輪の制動及び制動解除を切り替える機構に対して本発明の作用効果を発揮させることができる。また、前記第1操作部材として、前記作用位置と前記待機位置との間のユーザによる踏み込み操作が可能な操作ペダル(12)が設けられてもよい。これによれば、ユーザの踏み込み操作による車輪の制動及び制動解除操作に対して本発明の作用効果を発揮させることが可能である。さらに、前記第1ベース部及び前記第2ベース部が、前記手押し車の左右一対の脚部(4)の先端部に設けられ、前記一対の脚部の先端部間には連結杆(8)が配置され、前記ワイヤはチューブ(51)に収容され、該チューブは前記連結杆の内部に通されてもよい。これによれば、ワイヤがその途中で意図せずに引っ張られるおそれがなくなる。そのため、上述した本発明の作用効果との相乗により、誤作動をより一層確実に防止することが可能である。
【0012】
本発明の一形態において、前記第1操作部材は、前記案内部を覆い隠すようにして前記第1ベース部に取り付けられてもよい。これによれば、異物の付着から案内部を保護し、それにより誤作動をより一層確実に防止することができる。
【0013】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、本発明においては、ワイヤを第1操作部材と直結せず、ワイヤ連結部材を介して第1操作部材と連結し、第1操作部材を第1支点の回りに作用位置と待機位置との間で回転させるときに、ワイヤ連結部材をその回転途中で第1支点から遠ざかる方向に移動させて凸部を乗り越えさせている。したがって、第1操作部材が作用位置及び待機位置にそれぞれある状態でワイヤが引き出すように操作されても、ワイヤ連結部材が凹部内に保持され、凸部を乗り越えて反対側の凹部へと意図せずに移動するおそれを排除することができる。これにより、操作部材の誤作動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一形態に係る連係操作機構としてのブレーキ装置を備えたベビーカーの斜視図。
【図2A】右制動部を拡大して示す斜視図。
【図2B】右制動部を別の方向から拡大して示す斜視図。
【図3】左制動部を拡大して示す斜視図。
【図4】ブレーキ装置の主要部における断面図。
【図5】操作ペダルがロック位置にあるときの右制動部の部分破断斜視図。
【図6】操作ペダルがロック解除位置にあるときの右制動部の部分破断斜視図。
【図7】ワイヤホルダを拡大して示す斜視図。
【図8】従動レバーがロック位置にあるときの左制動部の部分破断斜視図。
【図9】従動レバーがロック解除位置にあるときの左制動部の部分破断斜視図。
【図10】ブレーキ装置をロック解除状態に切り替えるときの作用を説明するための断面図。
【図11】ブレーキ装置をロック状態に切り替えるときの作用を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る連係操作機構を、手押し車の一例であるベビーカーのブレーキ装置に適用した一形態を説明する。図1はベビーカーの一例を示している。ベビーカー1は、フレーム構造の本体2を有し、その本体2には一対の前脚3及び一対の後脚4が設けられている。前脚3の先端部(下端部)には前輪5が、後脚4の先端部には後輪6がそれぞれ取り付けられている。後脚4の先端部には、操作対象としての左右一対の後輪6の回転の制動及び制動解除を一体的に切り替えるブレーキ装置7が設けられている。図2A及び図3に示したように、ブレーキ装置7は、右側の後脚4の先端部に設けられた右制動部10と、左側の後脚4の先端部に設けられた左制動部30とを備えている。
【0017】
図4に示したように、右制動部10は、第1ベース部としての右ホルダ11と、その右ホルダ11に組み付けられる第1操作部材としての操作ペダル12と、その操作ペダル12と組み合わされるワイヤ連結部材としてのワイヤホルダ13とを備えている。一方、左制動部30は、第2ベース部としての左ホルダ31と、その左ホルダ31に組み付けられる第2操作部材としての従動レバー32と、左ホルダ31と従動レバー32との間に配置されたコイルばね33とを備えている。制動部10、30の間にはワイヤ50が架け渡されている。ワイヤ50は、左右のホルダ11、31の間に設けられたチューブ51の内部に通され、その一端部50aはワイヤホルダ13に固定され、他端部50bは従動レバー32に固定されている。したがって、操作ペダル12を動作させると、その動作がワイヤ50を介して従動レバー32に伝達され、それにより従動レバー32が操作ペダル12に連係して動作する。なお、図2A及び図3から明らかなように、左右のホルダ11、31の間には、本体2を補強するための後部連結杆8が架け渡される。後部連結杆8はパイプ状の部材である。チューブ51はホルダ11、31から引き出された部分を除いて、後部連結杆8の内部に収容される。
【0018】
図5及び図6は右制動部10の詳細を示し、図5は操作ペダル12がロック位置(作用位置)にある状態を、図6は操作ペダル12がロック解除位置(待機位置)にある状態をそれぞれ示している。ロック位置は作用位置に相当し、ロック解除位置は待機位置に相当する。右ホルダ11には、上方に開口する後脚嵌合部14と、側方に開口する連結杆嵌合部15とが設けられている。図2Aから明らかなように、後脚嵌合部14には右の後脚4の先端部が、連結杆嵌合部15には後部連結杆8の右端部がそれぞれ差し込まれている。後脚4及び後部連結杆8はピン等の締結手段(不図示)を利用して右ホルダ11と一体的に結合される。
【0019】
図5及び図6から明らかなように、右ホルダ11の後部には、一対のペダル取付壁16が互いに平行に突出するように設けられている。操作ペダル12は、中央を底とする緩い上り勾配が付された一対の操作部12a、12bを表面に有し、裏面側は、肉厚がほぼ一定となるようにくり抜かれた部品である。操作ペダル12は、ペダル取付壁16を内部に取り込むようにして右ホルダ11と組み合わされている。言い換えれば、ペダル取付壁16は操作ペダル12によって覆い隠されている。一方のペダル取付壁16から操作ペダル12を貫いて他方のペダル取付壁16に達するようにピン17が装着されている。それにより、操作ペダル12は、ピン17を第1支点として、当該ピン17の回りにロック位置(図5の位置)とロック解除位置(図6の位置)との間を回転可能な状態で右ホルダ11に取り付けられている。図2Bに示したように、後輪6のハブには、半径方向外周に向かって延びる多数のフィン状の突起6aが周方向に一定間隔で設けられている。操作ペダル12には後輪6に向かって突出するストッパピン12dが設けられている。操作ペダル12が図5のロック位置にあるときは、ストッパピン12dが突起6a同士の隙間に嵌り込む。それにより、右後輪6の回転がロックされる。操作ペダル12が図6のロック解除位置に回転すると、ストッパピン12dが突起6a間の隙間から外周側に退避し、右後輪6のロックが解除されて右後輪6の回転が可能となる。
【0020】
ペダル取付壁16の外周には、第1凹部16a及び第2凹部16bが設けられ、それらの凹部16a、16bの間には凸部16cが形成されている。それにより、ペダル取付壁16の外周はワイヤホルダ13に対する案内部18として機能する。操作ペダル12には長孔12cが設けられ、その長孔12cにワイヤホルダ13が装着されている。図7に示したように、ワイヤホルダ13は、概略円筒形状のガイド筒13aと、そのガイド筒13aの外周から突出したワイヤ固定部13bとを有している。ワイヤ50の一端部50aは、ワイヤ固定部13bに固定される。図5及び図6に示したように、ワイヤホルダ13のガイド筒13aはその両端において長孔12cに嵌め合わされ、それによりワイヤホルダ13は長孔12cに沿って移動可能である。また、ワイヤホルダ13のガイド筒13aはワイヤ50に作用する張力でペダル取付壁16の外周に接触する。言い換えれば、ペダル取付壁16の外周は、ワイヤホルダ13に作用する張力を受け止めつつワイヤホルダ13を所定の軌跡で動作させるカムとして機能する。操作ペダル12がロック位置(図5)にあるときはガイド筒13aが第1凹部16aに、ロック解除位置(図6)にあるときはガイド筒13aが第2凹部16bにそれぞれ嵌り合う。
【0021】
ピン17から第1凹部16a、第2凹部16b及び凸部16cまでの距離を比較すると、ピン17から第1凹部16aまでの距離がピン17から第2凹部16bまでの距離よりも小さい。ピン17から凸部16cまでの距離は、ピン17から第2凹部16bまでの距離よりも大きい。したがって、操作ペダル12がピン17を中心としてロック位置とロック解除位置との間で回転するとき、ワイヤホルダ13は凸部16cを乗り越えるために長孔12c内をピン17から遠ざかる方向に一旦移動し、凸部16cを通過すると長孔12c内をピン17に近付く方向に移動する。さらに、第1凹部16aから凸部16cに至るまでのペダル取付壁16の外周(つまり、ワイヤホルダ13と接触する部分)の輪郭形状と、第2凹部16bから凸部16cに至るまでのペダル取付壁16の輪郭形状とは互いに異なっている。具体的には、操作ペダル12が単位角度回転するときの距離の変化量を比較すると、第1凹部16aから凸部16cに至る間の変化量が、第2凹部16bから凸部16cに至る間の変化量よりも大きくなるようにペダル取付壁16の輪郭形状が設定されている。
【0022】
図8及び図9は左制動部30の詳細を示し、図8は従動レバー32がロック位置にある状態を、図9は従動レバー32がロック解除位置にある状態をそれぞれ示している。左ホルダ31には、上方に開口する後脚嵌合部34と、側方に開口する連結杆嵌合部35とが設けられている。図3から明らかなように、後脚嵌合部34には左の後脚4の先端部が、連結杆嵌合部35には後部連結杆8の左端部がそれぞれ差し込まれている。後脚4及び後部連結杆8はピン等の締結手段(不図示)を利用して左ホルダ31と一体的に結合される。
【0023】
左ホルダ31の後部には、一対のレバー取付壁36が互いに平行に突出するように設けられている。一方、従動レバー32にはばね支持軸37が一体に形成されている。ばね支持軸37の外周にはコイルばね33が取り付けられている。そのコイルばね33が装着された状態で、ばね支持軸37はレバー取付壁36の間に挿入され、さらに一方のレバー取付壁36からばね支持軸37を貫いて他方のレバー取付壁36に達するようにピン38が装着される。それにより、従動レバー32は、ピン38を第2支点として、当該ピン38の回りにロック位置(図8の位置)とロック解除位置(図9の位置)との間を回転可能な状態で左ホルダ31に取り付けられている。従動レバー32と左後輪6との関係は、操作ペダル12と右後輪6との関係と同様である。すなわち、従動レバー32がロック位置にあるときは従動レバー32のストッパピン(不図示)が左後輪6の突起間の隙間に入り込んで左後輪6がロックされ、従動レバー32がロック解除位置に移動するとそのストッパピンが左後輪6の突起間の隙間から退避し、左後輪6のロックが解除されて左後輪6の回転が可能となる。
【0024】
左ホルダ31に従動レバー32を取り付けたとき、コイルばね33の一方の腕33aは左ホルダ31に、他方の腕33bは従動レバー32にそれぞれ押し付けられる。それにより、コイルばね33は、図4の時計方向に沿って適度に捩られた状態で左ホルダ31と従動レバー32との間に介在する。その捩りに対する復元力で従動レバー32はピン38の回りにロック位置に向かって押し返される。従動レバー32には、さらにワイヤ固定部32aが設けられている。ワイヤ50の他端部50bはそのワイヤ固定部32aに固定されている。ワイヤ50の長さは、ワイヤホルダ13のガイド筒13aが右ホルダ11の第2凹部16bに位置するときに従動レバー32がロック解除位置まで回転するように調整されている。コイルばね33の復元力により、まず従動レバー33がピン38を中心としてロック位置に向かう方向に駆動される。その復元力がワイヤ50及びワイヤホルダ13を介して操作ペダル12にも伝達されることにより、操作ペダル12もロック位置に向かう方向に駆動される。従動レバー32は、ガイド筒13aが右ホルダ11の凸部16cを乗り越えるときにロック解除位置を超えてさらに図4の時計方向に回転できるように定められている。ガイド筒13aが右ホルダ11の第1凹部16aにあるときは、従動レバー32がコイルばね33の復元力でロック位置に保持される。
【0025】
次に、ブレーキ装置7の動作を説明する。図4に示すように、後輪6の回転がロックされた状態では、操作ペダル12がピン17を中心として時計方向に回転した位置にあり、ワイヤホルダ13はペダル取付壁16の第1凹部16aに嵌め合わされた位置にある。この場合、操作ペダル12はロック位置に保持され、ワイヤ50は左制動部30に向かって繰り出された状態にある。それにより、従動レバー32は、コイルばね33の復元力でピン38を中心に反時計方向に回転してロック位置に保持される。図10に矢印Aで示したように、操作ペダル12の上側の操作部12aが踏み込み操作(ロック解除操作と呼ぶ。)されると、操作ペダル12はピン17を中心として図中の反時計方向に回転する。それにより、操作ペダル12はロック解除位置へと移動し、それに伴ってワイヤホルダ13は長孔12cを移動しつつ、ペダル取付壁16の第1凹部16aから凸部16cを超えて第2凹部16bへと移動する。これにより、ワイヤ50が矢印Bで示したように右制動部10側に引き寄せられる。そのため、従動レバー32は、図中に矢印Cで示したように、コイルばね33に抗してピン38を中心に時計方向に回転し、ロック解除位置へと移動する。これにより、左右の後輪6の回転に対するロックが一体的に解除される。
【0026】
図11に矢印Dで示したように、操作ペダル12の下側の操作部12bが踏み込み操作(その操作をロック操作と呼ぶ。)された場合、操作ペダル12はピン17を中心としてロック解除位置へと回転する。その回転に伴って、ワイヤホルダ13は長孔12cを移動しつつ、ペダル取付壁16の第2凹部16bから凸部16cを超えて第1凹部16aへと移動する。これにより、ワイヤ50が矢印Eで示したように左制動部30側に繰り出される。そのため、従動レバー32は、図中に矢印Fで示したようにコイルばね33の復元力でピン38を中心として反時計方向に回転してロック位置へと移動する。これにより、左右の後輪6の回転が一体的にロックされる。
【0027】
以上のブレーキ装置7においては、ワイヤ50が操作ペダル12にワイヤホルダ13を介して連結されている。ワイヤホルダ13は操作ペダル12に対して長孔12cに沿って移動可能に組み合わされているので、操作ペダル12の回転中心であるピン17と、ワイヤ50の操作ペダル12に対する取付位置であるワイヤ固定部13bとの間の距離は、操作ペダル12がロック位置とロック解除位置との間で回転する間において適宜に変化させることが可能である。そして、その距離は、ロック位置である第1凹部16a及びロック解除位置である第2凹部16bにワイヤホルダ13が位置するときに小さく、途中の凸部16cをワイヤホルダ13が乗り越えるときに最大となる。したがって、コイルばね33がワイヤ50に付加する張力で、操作ペダル12がロック位置にあるときにはワイヤホルダ13が第1凹部16aに押し付けられ、ロック解除位置にあるときはワイヤホルダ13が第2凹部16bに押し付けられる。
【0028】
操作ペダル12が図10のロック解除位置にある状態で、ワイヤ50が図10に矢印Xで示したように、操作ペダル12をロック位置へ戻す方向に引き込み操作されたとしても、ワイヤホルダ13は第2凹部16b内に拘束され、凸部16cを乗り越えて第1凹部16a側に移動するおそれがない。したがって、操作ペダル12の意図しない回転により、右制動部10のみがロック解除状態からロック状態へと不意に切り替わるおそれがない。操作ペダル12がロック位置にあるときにワイヤ50が同様に引っ張られた場合も、同様にワイヤホルダ13が第1凹部16aに拘束され、操作ペダル12が意図せずに回転するおそれはない。ちなみに、ワイヤホルダ13を省略して、ワイヤ50の一端部50aを操作ペダル12に直結した場合、その連結点とピン17との距離は操作ペダル12の位置に関わりなく一定である。その場合、図10に矢印Xで示したような操作がワイヤ50の途中に加えられると、その操作に連動して操作ペダル12がロック位置側へと回転し、ロック状態が不意に切り替わるおそれがある。
【0029】
上記の形態によれば、ペダル取付壁16の第1凹部16aは第2凹部16bよりもピン17に近い位置にある。操作ペダル12をロック位置とロック解除位置との間で回転させる場合、ワイヤホルダ13が第1凹部16a又は第2凹部16bから移動を開始して凸部16cを乗り越えるまでの間は操作ペダル12の操作に抵抗が生じるが、その抵抗は、凸部16cがピン17に対して遠方に移動すべき距離の大小によって変化し、距離が大きければ抵抗も増加し、それに伴ってユーザに要求される操作力も増加する。したがって、ロック位置からロック解除位置へと操作するときと、反対方向へ操作するときとの間で、操作ペダル12の操作力に差を付けることができる。これにより、ロック操作又はロック解除操作との間で操作力を差別化し、いずれの操作を行っているかを認識する手掛かりをユーザに与えることができる。
【0030】
しかも、ロック操作時とロック解除操作時との間で、ワイヤホルダ13が凸部16cを乗り越えるまでにピン17から遠ざかる方向へ移動する距離を比較すると、ロック解除操作時の距離が、ロック操作時の距離よりも大きい。したがって、ロック解除操作時には、ロック操作時よりも大きな操作力が必要となり、ユーザによる不用意なロック解除操作を防止する効果が期待できる。コイルばね33の復元力がワイヤ50及びワイヤホルダ13を介して操作ペダル12をロック解除位置からロック位置へと引き込む方向に作用するので、ロック解除操作時の操作力をロック操作時のそれと比してさらに増大させ、それにより、不用意なロック解除操作を抑制する効果をさらに高めることが可能である。
【0031】
上記のブレーキ装置7によれば、操作ペダル12と従動レバー32とを単一のコイルばね33にてロック位置に保持することができる。したがって、左右の制動部に別々にばねを設けて両操作部材を個別にロック位置に保持する構成と比較して、部品点数を削減することが可能である。さらに、操作ペダル12は、その内部にペダル取付壁16の案内部18を覆い隠すようにして右ホルダ11に取り付けられている。したがって、後輪6がはね飛ばす泥等の異物の付着から案内部18を保護することができる。
【0032】
本発明は上述した形態に限ることなく、適宜の変更が可能である。例えば、本発明の連係操作機構は、ベビーカーの後輪のブレーキ装置に適用される例に限らず、ベビーカー以外の手押し車に設けられる車輪の制動装置に適用可能である。車輪の制動及び制動解除を切り替える例に限らず、各種の操作対象の状態を、第1操作部材の作用位置と待機位置との間の回転によって切り替えるものであれば、本発明は適宜に適用可能である。さらに、手押し車の一部として設けられる例に限らず、一方の操作部材の操作を他方の操作部材にワイヤを介して伝達することにより、両操作部材を作用位置と待機位置との間で連動させる各種の連係操作機構に本発明は適用可能である。
【0033】
上記の形態では、第1操作部材としての操作ペダル12をユーザ自身が操作する例を示したが、第1操作部材はユーザが操作するものに限定されない。例えば、モータ等の動力で第1操作部材が操作れてもよい。ユーザの操作によって第1操作部材を回転させる場合でも、そのユーザが直接操作すべき部材は、第1操作部材及び第2操作部材とは異なる他の操作部材としてもよく、その操作部材を操作した結果として第1操作部材が操作され、その操作がワイヤを介して伝達されて第2操作部材が操作されてもよい。この場合、他の操作部材と第1操作部材との間に減速機構、倍力機構その他の各種の機構がさらに介在してもよい。
【0034】
第1操作部材及び第2操作部材のそれぞれの作用位置及び待機位置は上記のロック位置及びロック解除位置として認識される例に限らず、適宜の設定が可能である。作用位置は、第1操作部材及び第2操作部材が、それらの操作対象に対して何らかの作用を与える位置であれば足り、待機位置はその作用位置から操作部材が離れて、操作部材による作用位置の作用が失われる位置であればよい。したがって、作用位置にあるときの作用が待機位置にて失われる限りにおいて、その待機位置で他の作用が生じるか否かは問わない。
【0035】
第1ベース部及び第2ベース部は、上記の形態のように互いに離れた位置に独立して設けられる例に限定されない。第1操作部材と第2操作部材とがそれぞれの第1支点及び第2支点を中心として回転可能である限り、第1ベース部及び第2ベース部は共用されてもよい。第1支点及び第2支点は、第1及び第2操作部材を互いに平行な軸線の回りに回転させるように設けられる例に限らない。すなわち、第1操作部材及び第2操作部材は、互いに非平行な軸線を中心として回転できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 ベビーカー
7 ブレーキ装置(連係操作機構)
10 右制動部
11 右ホルダ(第1ベース部)
12 操作ペダル(第1操作部材)
13 ワイヤホルダ(ワイヤ連結部材)
16 ペダル取付壁
16a 第1凹部
16b 第2凹部
16c 凸部
17 ピン(第1支点)
18 案内部
30 左制動部
31 左ホルダ(第2ベース部)
32 従動レバー(第2操作部材)
33 コイルばね
38 ピン(第2支点)
50 ワイヤ
50a ワイヤの一端部
50b ワイヤの他端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ベース部に対して第1支点を中心に作用位置と待機位置との間で回転できるように設けられた第1操作部材と、
第2ベース部に対して第2支点を中心に作用位置と待機位置との間で回転できるように設けられた第2操作部材と、
前記第1操作部材と前記第2操作部材とが前記作用位置と前記待機位置との間で連動するように両操作部材の間に配置されるワイヤと、
前記両操作部材が前記作用位置又は前記待機位置のいずれか一方に向かって駆動されるよう前記ワイヤに張力を付与するばね部材と、
前記第1操作部材と前記ワイヤの一端部との間に介在し、前記第1支点に対して接近及び離間する方向に移動可能な状態で前記第1操作部材に取り付けられ、前記ワイヤの一端部とは、前記第1操作部材に対して一体的に移動できるように結合されるワイヤ連結部材と、を具備し、
前記第1ベース部には、前記ワイヤ連結部材に作用する前記ワイヤの張力を受けるようにして当該ワイヤ連結部材と接触し、かつ、前記第1操作部材が前記作用位置及び前記待機位置にあるときに前記ワイヤ連結部材が嵌り込む凹部と、両凹部間に位置し、かつ前記ワイヤ連結部材が、前記凹部に嵌っているときよりも前記第1支点から遠方にある状態で乗り越える凸部とを有する案内部が設けられている、
連係操作機構。
【請求項2】
前記第1操作部材がユーザによる操作によって前記作用位置と前記待機位置との間を回転するように設けられ、
前記第1支点から一方の凹部までの距離と前記第1支点から他方の凹部までの距離とが互いに相違する請求項1に記載の連係操作機構。
【請求項3】
前記第1操作部材及び前記第2操作部材は、前記作用位置にあるときに一対の操作対象のそれぞれを制動し、前記待機位置にあるときには前記一対の操作対象の制動を解除するように設けられ、
前記第1操作部材が前記作用位置にあるときに前記ワイヤ連結部材が前記一方の凹部に嵌り合い、前記待機位置にあるときには前記ワイヤ連結部材が前記他方の凹部に嵌り合い、
前記第1支点から前記一方の凹部までの距離が前記第1支点から前記他方の凹部までの距離よりも大きく設定されている請求項2に記載の連係操作機構。
【請求項4】
前記ばね部材が、前記第2操作部材を前記作用位置に向かって駆動するように設けられている請求項3に記載の連係操作機構。
【請求項5】
前記一対の操作対象が、手押し車の左右一対の車輪である請求項3又は4に記載の連係操作機構。
【請求項6】
前記第1操作部材として、前記作用位置と前記待機位置との間のユーザによる踏み込み操作が可能な操作ペダルが設けられている請求項5に記載の連係操作機構。
【請求項7】
前記第1ベース部及び前記第2ベース部が、前記手押し車の左右一対の脚部の先端部に設けられ、前記一対の脚部の先端部間には連結杆が配置され、前記ワイヤはチューブに収容され、該チューブは前記連結杆の内部に通されている請求項5又は6に記載の連係操作機構。
【請求項8】
前記第1操作部材は、前記案内部を覆い隠すようにして前記第1ベース部に取り付けられている請求項1〜7のいずれか一項に記載の連係操作機構。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−221453(P2012−221453A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89957(P2011−89957)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(391003912)コンビ株式会社 (165)
【Fターム(参考)】