説明

連結移動装置

【課題】移動体が目標地点へ移動している途中で、バッテリー残量が低下しても、当該移動体が継続して移動できるようにする。
【解決手段】連結移動装置10は、不整地上を移動する複数の移動体3と、これらの移動体3を連結し電力を伝達可能な線状体5とを備える。複数の移動体3が、線状体5で連結された状態で移動する。各移動体3は、不整地上を移動するための移動手段と、給電されることにより該移動手段を駆動する駆動装置と、移動用エネルギーを蓄積し該エネルギーを用いて駆動装置に給電する給電装置と、を有する。各移動体3の給電装置は、他の移動体の給電装置から線状体5を介して電力を受けられるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整地上を移動(例えば、走行)する装置に関する。なお、本願において、不整地は、地球、あるいは、火星、月などの不整地をいう。
【背景技術】
【0002】
不整地上を移動させる移動体として、例えば、月や火星で利用する探査車(ローバ)がある。
【0003】
移動体には、エネルギーを蓄えたバッテリーが搭載されている。このエネルギーを用いて、移動体は不整地上を移動する。
【0004】
移動体が移動の途中で、バッテリーに蓄えられているエネルギー(以下、バッテリー残量という)がなくなると、移動体は移動できなくなる。
【0005】
この問題に関連して、下記の特許文献1では、目標地点までの移動に要するバッテリー量とバッテリー残量との差が、しきい値以下になると警告信号を生成する。このようにして、バッテリー残量の低下により、移動が継続できなくなることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−285547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、不整地面を移動体が移動する場合には、目標地点までの移動に要するバッテリー量を見積もることは難しい。移動経路の不整地面の状態によって、目標地点までの移動に要するバッテリー量が変わり、不整地面の状態を予め把握しておくことは困難となるからである。
【0008】
そのため、不整地面の移動の場合、特許文献1の手段によっても、移動体が目標地点へ移動している途中で、バッテリー残量がゼロになる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、移動体が目標地点へ移動している途中で、バッテリー残量が低下しても、当該移動体が継続して移動できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明によると、不整地上を移動する複数の移動体と、これらの移動体を連結し電力を伝達可能な線状体とを備え、前記複数の移動体が、前記線状体で連結された状態で移動する連結移動装置であって、
各移動体は、不整地上を移動するための移動手段と、給電されることにより該移動手段を駆動する駆動装置と、移動用エネルギーを蓄積し該エネルギーを用いて駆動装置に給電する給電装置と、を有し、
前記各移動体の給電装置は、他の移動体の給電装置から前記線状体を介して電力を受けられるようになっている、ことを特徴とする連結移動装置が提供される。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によると、前記給電装置は、移動用エネルギーを蓄積し前記駆動装置に給電するバッテリーと、該バッテリーに充電を行う充電器とを有し、
前記各移動体の前記充電器は、他の移動体の前記バッテリーから前記線状体を介して電力を受けられるようになっている。
【0012】
本発明の別の実施形態によると、前記給電装置は、移動用エネルギーを蓄積し前記駆動装置に給電するバッテリーと、該給電装置が設けられた移動体とは別の移動体のバッテリーを電源として前記駆動装置に給電する外部バッテリー利用装置とを有し、
前記各移動体の前記外部バッテリー利用装置は、他の移動体の前記バッテリーから前記線状体を介して電力を受けられるようになっている。
【0013】
好ましくは、前記各移動体は、
該移動体の前記バッテリーが蓄積する移動用エネルギーの残量を検出し、該残量がしきい値より小さくなったら、バッテリー残量低下信号を出力するバッテリー残量検出部と、
前記バッテリー残量低下信号が入力されることにより、該移動体の給電装置に対し、他の移動体の給電装置から給電する制御を行う給電制御部と、を有する。
【0014】
さらに好ましくは、前記バッテリー残量低下信号が入力された給電制御部は、
該給電制御部が設けられた前記移動体とは別の複数の前記移動体のバッテリー残量検出部から、当該別の複数の移動体の前記バッテリーが蓄積する移動用エネルギーの残量を示す信号を受け、これらの信号に基づいて、前記残量が最も多い移動体の前記バッテリーから、該給電制御部が設けられた前記移動体の給電装置に電力を供給する制御を行う。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によると、各移動体の給電装置は、他の移動体の給電装置から前記線状体を介して電力を受けられるようになっているので、いずれかの移動体の給電装置に蓄積された移動用エネルギーが低下しても、当該移動体は、他の移動体の給電装置から給電されることにより、移動を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態または第2実施形態による連結移動装置を示す平面図である。
【図2】図1の各移動体の構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態による連結移動装置の給電系統を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態による連結移動方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態による連結移動装置の給電系統を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態による連結移動方法を示すフローチャートである。
【0017】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態による連結移動装置10を示す平面図である。図2(A)は、図1の各移動体3を示す平面図である。図2(B)は、図2(A)のIIB−IIB矢視図であり、図2(C)は、図2(B)の部分拡大図である。
【0019】
連結移動装置10は、不整地上を移動する複数の移動体3と、これらの移動体3を互いに連結し電力を伝達可能な複数の線状体5と、を備える。
【0020】
各移動体3は、不整地上を移動するための構成として、移動手段7、駆動装置9、および給電装置11(図3を参照)を備える。
【0021】
移動手段7は、不整地上を移動するため手段である。図2の例では、移動手段7は、不整地面に接触する複数の走行車輪7である。走行車輪7が回転駆動されることにより、移動体3は、不整地上を移動(走行)する。
駆動装置9は、給電されることにより移動手段7を駆動する。図2の例では、駆動装置9は、走行車輪7を回転駆動する電動モータである。
給電装置11は、移動用エネルギーを蓄積し該エネルギーを用いて、該給電装置11が設けられた移動体3の駆動装置9に給電する。
【0022】
各移動体3の給電装置11は、線状体5(すなわち、線状体5を構成する給電線)により他の移動体3の給電装置11と電気的に接続されている。すなわち、各移動体3の給電装置11は、他の移動体3の給電装置11から線状体5を介して電力を受けられるようになっている。
【0023】
なお、線状体5は、給電線と、この給電線を覆って保護するカバー部材とを有していてよい。線状体5は、可撓性を有する。
【0024】
第1実施形態では、各移動体3の給電装置11は、前記駆動装置9に給電するバッテリー11aと、該バッテリー11aに充電を行う充電器11bとを有する。
この場合、各移動体3の充電器11bは、他の移動体3のバッテリー11aから前記線状体5を介して電力を受けられるようになっている。従って、各移動体3の充電器11bは、他の移動体3のバッテリー11aから電力を受けることにより、該充電器11bが設けられた移動体3のバッテリー11aの充電を行うことができる。
【0025】
各移動体3は、移動体3間の給電を制御する構成として、図3のように、バッテリー残量検出部13および給電制御部15を有する。図3で、複数の移動体3を、それぞれ符号3a,3b,3cにより区別して示している。
【0026】
バッテリー残量検出部13は、該バッテリー残量検出部13が設けられた移動体3の給電装置11(バッテリー11a)が蓄積している移動用エネルギーの残量(バッテリー残量)を検出する。バッテリー残量検出部13は、当該移動用エネルギーの残量がしきい値より小さくなったことを検出したら、その旨を示すバッテリー残量低下信号を、該バッテリー残量検出部13が設けられた移動体3の給電制御部15に出力する。
給電制御部15は、バッテリー残量低下信号を受けると、該給電制御部15が設けられた移動体3の給電装置11(バッテリー11a)に対し、他の移動体3の給電装置11(バッテリー11a)から給電する制御を行う。すなわち、給電制御部15は、図3において、該給電制御部15が設けられた移動体3a,3bまたは3cのスイッチSW1を動作させることにより接点X3と接点Y1またはY2とを接続する制御を行いつつ、他の移動体の給電制御部15に制御信号を送信することにより、当該他の移動体の給電制御部15は、当該他の移動体3のスイッチSW1またはSW2を動作させることにより接点X1またはX2を接点Y1またはY2に接続する制御を行う(詳しくは、後述のステップS6を参照)。
【0027】
各移動体3は、他の移動体3と該移動体3とを線状体5で連結するための構成として、巻き取り繰り出し装置17、保持装置19およびロボットハンド21を有する。
【0028】
巻き取り繰り出し装置17は、図2において、線状体5を巻き取り可能であるとともに、線状体5を繰り出し可能である。巻き取り繰り出し装置17は、移動体3の本体25に対し回転軸C1回りに回転自在になっている。回転軸C1は、移動体3が不整地上に水平に置かれた状態で鉛直方向を向き、巻き取り繰り出し装置17の中央を貫通する。そのために、図2の例では、巻き取り繰り出し装置17は、回転軸C1を中心軸とする回転支持部23に設置されており、回転支持部23は、移動体3の本体25に対し回転軸C1回りに回転自在に本体25に設けられている。図2の例では、巻き取り繰り出し装置17は、水平軸C2回りに回転自在な回転ドラムである。この水平軸C2は、回転支持部23に固定されている。回転ドラム17には、線状体5が巻き付けられており、該回転ドラム17の回転数に応じた長さの線状体5を巻き取りまたは繰り出す。
【0029】
巻き取り繰り出し装置17は、該巻き取り繰り出し装置17が設けられた移動体3のバッテリー11aから、接点X1またはX3と接点Y1を経由して延びている電線との接点Z1(図3を参照)を有する。すなわち、接点Z1は、スイッチSW1の動作により接点X1またはX2と接点Y1とが接続されると、バッテリー11aまたは充電器11bと電気的に接続される。また、接点Z1は、巻き取り繰り出し装置17に巻き取られる線状体5の前記給電線に電気的に接続されている。
【0030】
保持装置19は、線状体5を保持する。保持装置19が保持する線状体5は、この保持装置19が設置された移動体3とは別の移動体3の巻き取り繰り出し装置17から繰り出された線状体5である。
保持装置19は、図2の例では、線状体5の端部5aを挟み込んで保持する。
保持装置19は、図2の例では、回転支持部23に対して、回転軸C1回りに回転可能に回転支持部23に設けられている。図1の例では、保持装置19は、1対の挟持部材27、29と、近接離間装置31とを有する。1対の挟持部材27、29は、回転軸C1方向に隙間を置いて、回転支持部23に対して、回転軸C1回りに回転可能に回転支持部23に設けられている。近接離間装置31は、回転軸C1方向に関して、1対の挟持部材27、29を互いに近接または離間させる。
図2の例では、近接離間装置31は、一方の挟持部材27に固定されたサーボモータ31aと、サーボモータ31aの出力軸に螺合し他方の挟持部材29に固定されたナット31bと、を有する。この構成で、サーボモータ31aの出力軸の回転により、1対の挟持部材27、29を互いに近接または離間させる。
【0031】
保持装置19は、該保持装置19が設けられた移動体3のバッテリー11aから延びている電線との接点Z2(図3を参照)を有する。この接点Z2に、当該保持装置19が保持した線状体5は電気的に接続される。例えば、線状体5を挟み込んで保持した1対の挟持部材27、29が接点Z2となってよい。すなわち、1対の挟持部材27、29は、接点Z2を構成する導電性材料で形成されており、1対の挟持部材27、29が挟持する線状体5の端部5aは、導電性材料で形成されているとともに当該線状体5の前記給電線と電気的に接続されている。
【0032】
ロボットハンド21は、保持装置19が線状体5の端部5aを保持できる保持位置に線状体5を持っていく。この状態で、保持装置19は、(例えば、1対の挟持部材27、29で線状体5の端部5aを挟み込む動作をして)線状体5の端部5aを保持する。
例えば、ロボットハンド21は、該ロボットハンド21が設置された移動体3とは別の移動体3の巻き取り繰り出し装置17から延びている線状体5を把持(例えば、挟んで把持)し、把持した線状体5を、該ロボットハンド21が設置された移動体3の保持装置19が保持できる保持位置へ持っていく。
【0033】
なお、ロボットハンド21は、図2(A)に示す認識装置33とハンド制御装置35により制御されてよい。認識装置33は、カメラまたは3次元レーザ距離計(図2(A)の例ではカメラ37)を利用して、線状体5の位置および姿勢を認識する装置である。(後述の移動制御装置45により移動体3同士を近接させた上で)認識装置33により認識した線状体5の位置および姿勢に基づいて、ハンド制御装置35は、ロボットハンド21の動作を制御する。これにより、ロボットハンド21は、線状体5を把持して、保持装置19が線状体5の端部5aを保持できる前記保持位置に該端部5aを持っていく。次いで、当該ハンド制御装置35から線状体設置完了信号を、当該保持装置19の制御部が受けることにより、当該保持装置19は、線状体5の端部5aを(図2の例では、挟み込んで)保持するように当該制御部に制御される。なお、移動体3において前記保持位置がどの位置にあるかは、予め求められており、ハンド制御装置35に利用される。
【0034】
各移動体3は、図2(B)に示すように、角度センサ39a、線状体繰り出し長さセンサ41、通信装置43、および移動制御装置45を有する。
角度センサ39aは、当該センサが設けられた移動体3の本体25に対する当該移動体の巻き取り繰り出し装置17(すなわち、回転支持部23)の回転軸C1回りの回転角を検出する。図2の例では、角度センサ39aは、回転支持部23の基準姿勢(基準回転角)に対する当該回転支持部23の回転軸C1回りの回転角を検出する。この回転角は、移動体3から線状体5が延びている方向を示す。
線状体繰り出し長さセンサ41は、当該センサが設けられた移動体3の巻き取り繰り出し装置17から延びている(繰り出されている)線状体5の長さを検出する。巻き取り繰り出し装置17が回転ドラムである場合には、線状体繰り出し長さセンサ41は、回転ドラム17の回転数を回転センサ39bにより計測し、当該計測値に基づいて線状体5の長さを算出する。
通信装置43は、当該通信装置43が設けられた移動体3の角度センサ39aが検出した回転角と、当該移動体3の線状体繰り出し長さセンサ41が算出した線状体5の長さとを、他の全ての移動体3の通信装置43に送信する。
【0035】
各移動体3の移動制御装置45は、各移動体3の通信装置43の前記送信により、各移動体3の角度センサ39aが検出した回転角と、各移動体3の線状体繰り出し長さセンサ41が検出した線状体5の長さとを得ることができ、これらの回転角および線状体5の長さに基づいて、複数の移動体3の相対位置を求める。各移動体3の移動制御装置45は、求めた相対位置と、予め定められた設定相対位置に基づいて、複数の移動体3の相対位置が設定相対位置(例えば、図1に示す複数の移動体3の相対位置)になるように、該移動制御装置45が設けられた移動体3の移動方向および移動速度を制御する(以下、この制御を相対位置制御という)。
【0036】
各移動体3の移動制御装置45は、上述の相対位置制御を行いつつ、移動制御を行う。各移動体3の移動制御では、当該移動体3の移動制御装置45は、当該移動体3に設けられた走行用のカメラまたは3次元レーザ距離計などにより前方の移動可能部分を判断し、この移動可能部分を当該移動体3が移動する制御を行う。また、各移動体3の移動制御では、当該移動体3の移動制御装置45は、予め設定された目標位置へ向かうように当該移動体3の移動を制御してよい。
代わりに、各移動体3の移動制御を、次のように、遠隔位置から行ってもよい。この場合、移動体3に設けられた走行用のカメラまたは3次元レーザ距離計などにより前方の画像データや障害物データを取得する。このデータを、移動体3に対する遠隔位置に送信する。遠隔位置では、送信されてきたデータをディスプレイに表示する。表示されたデータに基づいて、人が、移動体3の移動に関する指令を入力装置により入力する。入力された指令は、移動体3の移動制御装置27に送信される。移動制御装置27は、送信されてきた指令に基づいて、移動体3の移動を制御する。
【0037】
なお、角度センサ39a,39bと線状体繰り出し長さセンサ41は、複数の移動体3のうちの一部に設けられてもよく、これら一部の移動体3の角度センサ39a,39bと線状体繰り出し長さセンサ41により複数の移動体3の相対位置を求めるようにしてもよい。この場合、この相対位置に基づいて、各移動体3の移動制御装置45は、上述の相対位置制御を行う。
【0038】
図4は、上述した連結移動装置10を用いた連結移動方法を示すフローチャートである。
【0039】
ステップS1において、次のように、複数の移動体3を上述のように線状体5で互いに連結した状態にする。線状体5で連結されていない2台の移動体3からなる組について、両者を互いに近づけて、一方の移動体3のロボットハンド21により、他方の移動体3の巻き取り繰り出し装置17から延びている線状体5を把持し、把持した線状体5を、一方の移動体3の保持装置19が保持できる位置へ持っていく。この状態で、保持装置19が線状体5を保持することにより、移動体3同士を線状体5を用いて連結する。このような連結動作を、ステップS1において、線状体5で連結されていない2台の移動体3からなる複数の組について行う。これにより、複数の移動体3を上述のように線状体5で互いに連結した状態にする。
【0040】
なお、ステップS1において、各移動体3の巻き取り繰り出し装置17から線状体5が繰り出し自在になっていてよい。従って、線状体5で連結されていない移動体3を互いに近づける時に、これら移動体3の一方または両方が、他の移動体3と線状体5で連結されている場合には、この線状体5は、移動体3の移動に伴い、他の移動体3の巻き取り繰り出し装置17から繰り出される。
【0041】
ステップS1は、認識装置33とハンド制御装置35と移動制御装置45を用いて行われる。なお、各移動体3の移動制御装置45は、1つまたは複数のカメラまたは3次元レーザ距離計などを用いて複数の移動体3の相対位置を把握して、上述の連結動作を行ってよい。なお、各移動体3の移動制御装置45により、予め設定された比較的狭い基準領域内に各移動体3を移動させておいてから、ステップS1を行ってよい。
【0042】
ステップS2において、線状体5の張力制御を開始する。各移動体3の巻き取り繰り出し装置17から繰り出されている線状体5の張力が一定値(以下、張力設定値という)となるように線状体5の張力を制御する。
【0043】
この張力制御は、図示しない張力制御装置により行われる。張力制御装置は、張力センサを用いて各線状体5の張力を計測して、次のように張力制御を行う。
計測した線状体5の張力が張力設定値より小さくなった場合には、張力制御装置は、当該張力を前記張力設定値にするように、巻き取り繰り出し装置17が当該線状体5を巻き取る力を制御する。例えば、当該張力が前記張力設定値になるように回転ドラム17のトルクを制御する。
一方、計測した線状体5の張力が張力設定値より大きくなった場合には、張力制御装置は、当該張力が前記張力設定値になるように、巻き取り繰り出し装置17が当該線状体5を繰り出すように当該巻き取り繰り出し装置17を制御する。例えば、当該線状体5を繰り出すように回転ドラム17を回転させる。
【0044】
上述の張力制御において、複数の移動体3の相対位置にかかわらず、線状体5が、撓まないように移動体3の間で張られる。従って、線状体5が不整地面に接触しないようにすることができ、線状体5が、不整地上にある背の低い障害物に引っ掛からないようにすることができる。
また、上述の張力制御において、ステップS2以降で、複数の移動体3の相対位置が変化することにより、線状体5の張力が張力設定値を超えると、線状体5が巻き取り繰り出し装置17から繰り出される。従って、複数の移動体3の相対位置が、後述の設定相対位置からずれた場合に、移動体3同士が線状体5により引っ張り合って、接地状態の悪いほうの移動体3が転倒することが回避される。
【0045】
ステップS3において、上述した相対位置制御により、線状体5で連結された複数の移動体3の相対位置を、予め定めておいた設定相対位置にする。好ましくは、この設定相対位置にある複数の移動体3は、移動体3の移動方向と直交する水平方向に互いにずれている。従って、複数の移動体3は、次のステップS4で互い異なる経路(例えば、図1の破線矢印で示す経路)上を移動する。
【0046】
ステップS4において、複数の移動体3が線状体5で互いに連結され、複数の移動体3の相対位置が設定相対位置になった状態で、この状態を維持するように複数の移動体3が不整地上を移動する。すなわち、上述した相対位置制御を行いつつ、上述した移動制御を行う。
【0047】
ステップS5において、いずれかの移動体3のバッテリー残量検出部13が、給電装置11(バッテリー11a)に蓄積された移動用エネルギーの残量がしきい値より小さくなったことを検出したとする。この場合、当該バッテリー残量検出部13は、バッテリー残量低下信号を出力する。
【0048】
ステップS6において、バッテリー残量低下信号に基づいて、移動用エネルギーの残量がしきい値より小さくなった給電装置11に電力を供給する。
直前のステップS5で出力されたバッテリー残量低下信号は、当該信号を出力したバッテリー残量検出部13が設けられた移動体3の給電制御部15に出力される。これにより、当該給電制御部15は、該給電制御部15が設けられた移動体3の給電装置11(バッテリー11a)に対し、別の移動体3の給電装置11(バッテリー11a)から給電する制御を行う。この制御は、当該2つの移動体3のスイッチSW1またはSW2を動作させる制御である。
【0049】
好ましくは、ステップS5でバッテリー残量低下信号を受けた給電制御部15は、該給電制御部15が設けられた移動体3とは別の各移動体3のバッテリー残量検出部13からバッテリー残量を示す信号を受け、これらの信号に基づいて、最もバッテリー残量が多い移動体3のバッテリー11aから、該給電制御部15が設けられた移動体3の給電装置11に電力を供給する制御を行う。
例えば、図3において、移動体3aのバッテリー残量検出部13がステップS5でバッテリー残量低下信号を出力したとし、他の移動体3b、3cのバッテリー11aのうち、移動体3bのバッテリー11aのほうがバッテリー残量が多いとする。この場合、移動体3aの給電制御部15は、スイッチSW1により接点X3と接点Y1とを接続するとともに、移動体3bの給電制御部15に、スイッチSW2により接点X2と接点Y2とを接続する旨の信号を出力する。当該信号に基づいて、移動体3bの給電制御部15は、スイッチSW2を動作させて接点X2と接点Y2とを接続する。その結果、移動体3bのバッテリー11aから移動体3aの充電器11bに給電され、これにより、当該充電器11bは、移動体3aのバッテリー11aに充電を行う。
【0050】
好ましくは、ステップS6は、複数の移動体3の移動を継続しながらなされる。すなわち、上述した相対位置制御および移動制御を行いながら、ステップS6を行う。この場合、ステップS5で移動用エネルギーの残量がしきい値より小さくなったバッテリー11aは、駆動装置9に給電しつつ、充電器11bにより充電される。一方、当該充電器11bに給電しているバッテリー11aは、該バッテリー11aが設けられた駆動装置9にも給電する。
【0051】
ステップS7において、ステップS6で開始した給電を終了する。この給電を終了するタイミングは、例えば、次の(1)(2)または(3)であってよい。
(1)ステップS6で給電を開始した時点から設定時間だけ経過したタイミング。
(2)給電されている給電装置11のバッテリー残量が、許容値以上になったタイミング。
(3)給電を行っている給電装置11のバッテリー残量と、給電されている給電装置11のバッテリー残量との差が、設定値以下になったタイミング。当該設定値は、ゼロであってもよい。
【0052】
ステップS7で給電を終了したらステップS4へ戻る。
【0053】
なお、移動体3間の各信号の送受信は、無線通信により行ってもよいし、線状体5により有線通信により行ってもよい。
後者の場合、線状体5は、有線通信用の信号線を有し、この信号線と上述の給電線とを束ねたものが給電線5を構成する。また、図示を省略するが、線状体5の端部5aは、コネクタを構成し、当該コネクタは、保持装置19のコネクタに接続される。上述の保持位置は、両コネクタが接続された位置である。また、両コネクタは、給電端子と信号端子を有する。線状体5のコネクタの給電端子と信号端子は、それぞれ、前記給電線と前記信号線に接続されている。保持装置19のコネクタの給電端子は、上述の接点Z1およびZ2に接続されており、当該コネクタの信号端子は、移動体2に設けた信号線に接続されている。
【0054】
[第2実施形態]
第2実施形態において、以下で説明しない他の点は、第1実施形態と同じである。例えば、第2実施形態を示す図1、図2および図5において、第1実施形態の各構成要素と同じ符号を有する構成要素は、第1実施形態の対応する当該構成要素と同じである。
【0055】
第2実施形態では、給電系統は、第1実施形態による図3のブロック図に代えて、図5のブロック図の構成を有する。第2実施形態では、図5のように、第1実施形態の充電器11bが省略される。
【0056】
第2実施形態では、図5に示すように、各移動体3の給電装置11は、該給電装置が設けられた移動体3とは別の移動体3のバッテリー11aを電源として前記駆動装置9に給電する外部バッテリー利用装置11cを有する。すなわち、各移動体3の外部バッテリー利用装置11cは、他の移動体のバッテリー11aから線状体5を介して電力を受けられるようになっている。
【0057】
外部バッテリー利用装置11cは、図5に示すように、接点X1と、スイッチSWとから構成される。
【0058】
図5に関して、巻き取り繰り出し装置17は、該巻き取り繰り出し装置17が設けられた移動体3のバッテリー11aから、接点X1と接点Y1を経由して延びている電線との接点Z1を有する。すなわち、接点Z1は、スイッチSWの動作により接点X1と接点Y1とが接続されると、バッテリー11aと電気的に接続される。また、接点Z1は、巻き取り繰り出し装置17に巻き取られる線状体5の前記給電線に電気的に接続されている。
一方、保持装置19は、該保持装置19が設けられた移動体3のバッテリー11aから延びている電線との接点Z2を有する。この接点Z2に、当該保持装置19が保持した線状体5は電気的に接続される。
【0059】
給電制御部15は、該給電制御部15が設けられた移動体3のバッテリー残量検出部13からバッテリー残量低下信号を受けると、当該移動体3の外部バッテリー利用装置11cに対し、別の移動体3の給電装置11(バッテリー11a)から給電する制御を行う。これにより、この外部バッテリー利用装置11cは、該外部バッテリー利用装置11cが設けられた移動体3の駆動装置9に対し給電する。
すなわち、給電制御部15は、図5において、該給電制御部15が設けられた移動体3a,3bまたは3cのスイッチSWにより接点X1と接点Y1またはY2とを接続する制御を行いつつ、他の移動体3の給電制御部15を介して当該他の移動体3のスイッチSWにより接点X1と接点Y1またはY2とを接続する制御を行う(詳しくは、後述のステップS6を参照)。
【0060】
従って、バッテリー残量が低下した移動体3の駆動装置9は、他の移動体3のバッテリー11aから電力を受けて、移動手段7を駆動する。当該他の移動体3のバッテリー11aは、当該他の移動体3の駆動装置9だけでなく、バッテリー残量が低下した移動体3の駆動装置9にも電力を供給する。これにより、複数の移動体3は、移動を継続することができる。
【0061】
図6は、第2実施形態の連結移動装置10を用いた連結移動方法を示すフローチャートである。
【0062】
第2実施形態では、ステップS6において、ステップS5で出力したバッテリー残量低下信号に基づいて、移動用エネルギーの残量がしきい値より小さくなった給電装置11に電力を供給する。
直前のステップS5で出力されたバッテリー残量低下信号は、当該信号を出力したバッテリー残量検出部13が設けられた移動体3の給電制御部15に出力される。これにより、この給電制御部15は、該給電制御部15が設けられた移動体3の駆動装置9に対し、別の移動体3の給電装置11(バッテリー11a)を電源として給電する制御を行う。この制御は、当該2つの移動体3のスイッチSWを動作させる制御である。
【0063】
好ましくは、ステップS5でバッテリー残量低下信号を受けた給電制御部15は、該給電制御部15が設けられた移動体3とは別の各移動体3のバッテリー残量検出部13からバッテリー残量を示す信号を受け、これらの信号に基づいて、最もバッテリー残量が多い移動体3のバッテリー11aから、該給電制御部15が設けられた移動体3の給電装置11(外部バッテリー利用装置11cの接点X1)に給電する制御を行う。
【0064】
例えば、図5において、移動体3aのバッテリー残量検出部13がバッテリー残量低下信号を出力したとし、他の移動体3b、3cのバッテリー11aのうち、移動体3bのバッテリー11aのほうがバッテリー残量が多いとする。この場合、移動体3aの給電制御部15は、スイッチSWにより接点X1と接点Y1とを接続するとともに、移動体3bの給電制御部15に、スイッチSWにより接点X1と接点Y2とを接続する旨の信号を出力する。当該信号に基づいて、移動体3bの給電制御部15は、スイッチSWを動作させて接点X1と接点Y2を接続する。その結果、移動体3bのバッテリー11aから移動体3aの駆動装置9に給電され、これにより、当該駆動装置9は、上述の移動手段7を駆動する。
従って、移動体3bのバッテリー11aは、移動体3aの駆動装置9と移動体3bの駆動装置9の両方に電力を供給する。これにより、複数の移動体3a,3b,3cは移動を継続することができる。
【0065】
第2実施形態では、ステップS7が省略される。
【0066】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変形例1〜8のいずれかを単独で、または、以下の変形例1〜8を任意に組み合わせて採用してよい。この場合、他の点は上述と同じである。
【0067】
(変形例1)
図1や図2の例では、移動体3は、走行車輪により不整地面を走行する車両(ローバ)であったが、移動体3が不整地面を移動する移動手段7は、走行車輪に限定されず他のもの(例えば、歩行脚やキャタピラー)であってもよい。
【0068】
(変形例2)
線状体5で互いに連結される移動体3の数は、3つに限定されず、2つまたは4つ以上であってもよい。
【0069】
(変形例3)
ロボットハンド21の代わりに、人により、複数の移動体3を線状体5で連結させてもよい。
【0070】
(変形例4)
上述では、ロボットハンド21は、各移動体3に設けられていたが、線状体5で連結する複数の移動体3のうちの一部(例えば、1台または2台)にのみ設けられてもよい。このようなロボットハンド21により、上述のステップS1を行ってよい。この場合、線状体5を最大限に巻き取った時における当該線状体5の端部5aの位置を待機位置として、同じ移動体3における待機位置とロボットハンド21との位置関係を予め求めておき、この位置関係に基づいて上述のステップS1を行ってよい。
【0071】
(変形例5)
回転支持部23または巻き取り繰り出し装置17は、回転軸C1(ヨー軸)回りに回転自在になっているだけでなく、水平軸(ピッチ軸)回りに回転自在になっていてもよい。
これにより、線状体5の巻き取りまたは繰り出しをより円滑にしやすいので、上述した相対位置制御の精度を高く維持できる。また、不整地の起伏が大きい場合に、相対位置制御の精度を高く維持できる。
【0072】
(変形例6)
上述の例では、巻き取り繰り出し装置17は、線状体5の張力に応じて受動的に線状体5を繰り出していたが、各移動体3の移動制御装置45が、複数の移動体3の相対位置を取得し、この相対位置の変化に応じて、能動的に線状体5を繰り出しまたは巻き取るようにしてもよい。ここで、巻き取り繰り出し装置17が回転ドラムである場合には、移動制御装置45は、前記相対位置の変化に応じて能動的に線状体5を繰り出しまたは巻き取るように回転ドラム17を回転させる。
【0073】
(変形例7)
移動方向において先頭となる1つの移動体3をマスターとし、他のすべての移動体3をスレーブとし、マスターの移動に合わせて、上述の設定相対位置を維持するようにスレーブの移動がその移動制御装置45により制御されてもよい。この場合、マスターの移動制御装置45は、上述の相対位置制御を行わずに上述の移動制御を行い、各スレーブの移動制御装置45は、上述の移動制御を行わずに上述の相対位置制御を行う。
【符号の説明】
【0074】
3 移動体、5 線状体、7 移動手段(走行車輪)、9 駆動装置、11 給電装置、11a バッテリー、11b 充電器、11c 外部バッテリー利用装置、13 バッテリー残量検出部、15 給電制御部、17 巻き取り繰り出し装置(回転ドラム)、19 保持装置、21 ロボットハンド、23 回転支持部、25 本体、27、29 挟持部材、31 近接離間装置、31a サーボモータ,31b ナット、33 認識装置、35 ハンド制御装置、37 カメラ、39a,39b 角度センサ、41 線状体繰り出し長さセンサ、43 通信装置、45 移動制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不整地上を移動する複数の移動体と、これらの移動体を連結し電力を伝達可能な線状体とを備え、前記複数の移動体が、前記線状体で連結された状態で移動する連結移動装置であって、
各移動体は、不整地上を移動するための移動手段と、給電されることにより該移動手段を駆動する駆動装置と、移動用エネルギーを蓄積し該エネルギーを用いて駆動装置に給電する給電装置と、を有し、
前記各移動体の給電装置は、他の移動体の給電装置から前記線状体を介して電力を受けられるようになっている、ことを特徴とする連結移動装置。
【請求項2】
前記給電装置は、移動用エネルギーを蓄積し前記駆動装置に給電するバッテリーと、該バッテリーに充電を行う充電器とを有し、
前記各移動体の前記充電器は、他の移動体の前記バッテリーから前記線状体を介して電力を受けられるようになっている、ことを特徴とする請求項1に記載の連結移動装置。
【請求項3】
前記給電装置は、移動用エネルギーを蓄積し前記駆動装置に給電するバッテリーと、該給電装置が設けられた移動体とは別の移動体のバッテリーを電源として前記駆動装置に給電する外部バッテリー利用装置とを有し、
前記各移動体の前記外部バッテリー利用装置は、他の移動体の前記バッテリーから前記線状体を介して電力を受けられるようになっている、ことを特徴とする請求項1に記載の連結移動装置。
【請求項4】
前記各移動体は、
該移動体の前記バッテリーが蓄積する移動用エネルギーの残量を検出し、該残量がしきい値より小さくなったら、バッテリー残量低下信号を出力するバッテリー残量検出部と、
前記バッテリー残量低下信号が入力されることにより、該移動体の給電装置に対し、他の移動体の給電装置から給電する制御を行う給電制御部と、を有する、ことを特徴とする請求項2または3に記載の連結移動装置。
【請求項5】
前記バッテリー残量低下信号が入力された給電制御部は、
該給電制御部が設けられた前記移動体とは別の複数の前記移動体のバッテリー残量検出部から、当該別の複数の移動体の前記バッテリーが蓄積する移動用エネルギーの残量を示す信号を受け、これらの信号に基づいて、前記残量が最も多い移動体の前記バッテリーから、該給電制御部が設けられた前記移動体の給電装置に電力を供給する制御を行う、ことを特徴とする請求項4に記載の連結移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−135859(P2012−135859A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291791(P2010−291791)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】