説明

連続作動モード保持機構および、連続作動モード保持機構を備えたエアゾール式製品

【課題】連続作動モード(ガス抜きモードまたは内容物連続噴射モード)の保持機構の簡単化を図り、また連続作動モードの設定・解除操作の容易化を図ることを目的とする。
【解決手段】カバー体2’の天井部2cに連続作動モード設定用の操作片部2d’を有しており、例えば内容物連続噴射モード(b) に設定するときは、静止モード(a) の当該操作片部をその連結部2f’を中心にして時計方向に回動操作する。この回動操作にともない、操作片部2d’の端部が、アクチュエータ6を、ステム5の作動位置まで下動させてその状態に継続保持する。内容物連続噴射モード(b) から静止モード(a) に復帰させるときは、起立状態の操作片部2d’の前方操作部分2gを反時計方向に押圧して、それまでのアクチュエータ保持状態を解除すればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール式製品を対象とした連続作動モード保持機構に関し、特にエアゾール式製品の作動モードと静止モードとを選択的に設定するためのアクチュエータを、それと、エアゾール容器のカバー体に設けた操作片部との作用により、作動モード設定位置に簡単,確実に継続して保持できるようにしたものである。
【0002】
本明細書では、
・「作動モード」の語を、エアゾール容器のバルブが開いて容器内部と外部空間とが連通した状態を示す意で用い、
・「連続作動モード」の語を、作動モードが継続的に保持される状態を示す意で用い、
・「静止モード」の語を、エアゾール容器のバルブが閉じて容器内部と外部空間とが連通していない状態を示す意で用いる。
【0003】
また、「アクチュエータ」の語を、作動モード設定用の操作部のみではなく、ステムと連結して内容物を噴射用ガスで外部空間に噴射するための内容物通路の形成部分を含む、ステム駆動用の作動部の総称として用いる。
【0004】
利用者は、作動モードに設定するには通常の操作部(操作ボタン)を用い、連続作動モードに保持するにはエアゾール容器のカバー体に設けた操作片部を用いる。
【0005】
この操作片部の作用は、通常の操作ボタンのモード(静止モードまたは作動モード)とは無関係に連続作動モードを設定することである。したがって、通常の操作ボタンが静止モード,作動モードのいずれの位置にあっても、当該操作片部はカバー体に対して同じ位置にある。
【0006】
そして、容器に内容物をまだ使い切っていない(内容物が残っている)状態で連続作動モードが設定された場合には内容物のいわば連続噴射モードとなり、容器の内容物を略使い切った後で連続作動モードが設定された場合にはいわゆるガス抜きモードとなる。
【0007】
この内容物連続噴射モードとガス抜きモードとはもっぱら用途上の違いにすぎず、エアゾール式製品の動作機構としては、当該各モードともにアクチュエータがその作動モード設定位置に継続的に保持されているものである。すなわち当該モードそれぞれにおけるバルブ機構などの動作メカニズムの違いはない。
【0008】
また、アクチュエータおよび操作片部に関する「係止」や「係止作用」の語を、アクチュエータが操作片部に少なくとも接して受け止められることを示す意で用いる。
【0009】
また、容器内容物の噴射孔の側を「前(先)」とし、当該噴射孔とは反対側を「後」と表現している。すなわち図1〜図8の左側が「前(先)」で、右側が「後」となる。
【0010】
一般にガス抜きモードの設定は、使用済みエアゾール容器を廃棄するときに初めて必要となり、まだ容器内容物が存在している通常の使用段階では不要なものである。
【0011】
そのため、ガス抜きモード保持機構は、エアゾール式製品の通常の使用段階では内容物噴射動作の障害とならず、また利用者にとっていわば目障りにもならず、そしてガス抜きモードの設定操作(およびその解除操作)を利用者が簡単に行えることが望ましく、本発明はこのような要請に応えるものである。
【0012】
さらには、比較的長時間にわたってエアゾール式製品を連続使用する場合に、利用者が、作動モード設定の操作自体を継続的に行わなくても済み、また必要に応じてこの内容物連続噴射モードの解除操作を簡単に行えることが望ましく、本発明はこの要請にも応えるものである。
【背景技術】
【0013】
従来、エアゾール容器のカバー体に設けた専用操作部材で使用済みエアゾール式製品のガス抜きモードを保持する機構としては、
・ステムに取り付けた噴霧ヘッド(アクチュエータ)の上面の押圧操作部とは別の部分に、当該押圧操作部より高い部分からなる段部を形成し、
・噴霧ヘッドを覆って回動可能なヘッドカバー(カバー体)には、当該アクチュエータの段部に係合する垂直状の押し板(ガス抜きモード設定部材)を固定的に形成した、
ものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0014】
このガス抜きモード保持機構の場合、ヘッドカバー(カバー体)をエアゾール容器に対して回動操作することにより、当該ヘッドカバーの押し板(ガス抜きモード設定部材)で噴霧ヘッド(アクチュエータ)の段部を押下げ、かつその状態をガス抜きモードとして保持する。
【特許文献1】特開2003−165588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このような従来のガス抜きモード保持機構は、ヘッドカバー(カバー体)の回動操作にともなって、当該ヘッドカバーが噴霧ヘッド(アクチュエータ)を押下げることを基本的構成にしている。
【0016】
そのため、
(1) 本来は容器外周面側の凹状部に嵌合させて固定するだけでよい(回動可能にする必要がない単一の)ヘッドカバーを、当該固定用の支持台B1と、この支持台に対して回動する肩カバーB2との別部材で構成し、
(2) ヘッドカバーおよび噴霧ヘッドのそれぞれにガス抜きモード設定・保持動作用の部材(ヘッドカバーの押し板および噴霧ヘッドの段部)を新設しなければならない、
という問題点、すなわちガス抜きモード保持機構の構成が複雑となりその製造にもコストがかかるなどの問題点があった。
【0017】
また、利用者がエアゾール式製品をガス抜きモードに設定する場合、一方の手で容器を持って他方の手でヘッドカバーを回動させるといったように両方の手を使わなければならず、ガス抜きモード設定操作上の利便性に欠けるという問題点があった。
【0018】
そこで、本発明では、エアゾール容器の作動モード設定用のアクチュエータをそのガス抜きモード(=連続作動モードの1態様)の位置に保持するための操作片部をカバー体の天井域に形成して、連続作動モード保持機構の構成の簡単化およびその製造コストの低減化を図ることを目的とする。この連続作動モードの利用形態は、上述のように、ガス抜きモードまたは内容物連続噴射モードである。
【0019】
また、利用者が、エアゾール容器を持った方の片手でこの操作片部を例えば折り曲げたり回動させたりすることによりアクチュエータ(ステム)を連続作動モードの位置へと移動させて、ガス抜きモードや内容物連続噴射モードの設定操作上の利便化を図ることを目的とする。
【0020】
また、アクチュエータとしてカバー体と一体のレバー式(てこ式)のものを用い、当該アクチュエータの回動基部から遠い部分を(例えば折り曲げた状態の)上記操作片部で押し下げるようにして、すなわち当該アクチュエータを押し下げる際にその「てこ」作用を利用して、ガス抜きモードや内容物連続噴射モードの設定操作の簡単化を図ることを目的とする。
【0021】
また、連続作動モード設定用の操作片部を折り曲げるなどしてアクチュエータを作動モード対応位置に保持したときに、当該操作片部の一部が、カバー体の上方に飛び出た態様の連続作動モード解除用の操作部分となるようにして、いったん連続作動モード(ガス抜きモード,内容物連続噴射モード)に設定した後でこれを解除したい場合などの操作上の利便化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)エアゾール容器の作動モードおよび静止モードを選択的に設定するアクチュエータ(例えば後述のアクチュエータ6)が作動モード設定位置に継続して保持される連続作動モード保持機構において、
前記エアゾール容器のカバー体(例えば後述のカバー体2,2’,3,3’,4)の天井域(例えば後述の天井部2c,3c,4c)に、前記継続保持用の操作片部(例えば後述の片部2d,2d’,3d,3d’,4d)を、前記アクチュエータに対して変位可能な態様で形成し、
前記操作片部の変位にともなう押圧作用によって前記アクチュエータが前記作動モード設定位置へと移行し、かつ、当該移行後の当該操作片部と当該アクチュエータとの間の保持作用により連続作動モードを設定する。
(2)上記(1)において、
前記アクチュエータは、その回動基部(例えば後述の接続部6a)が前記カバー体と一体になっているレバー式のものであり、
前記操作片部は、前記回動基部からみて、ステム結合部(例えば後述のL字状通路部6cの上流側端部)よりも遠いアクチュエータ部分(例えば後述のL字状通路部6cの上面部分)を押圧する。
(3)上記(1),(2)において、
前記操作片部は、前記保持作用を解除する静止モード復帰用の操作部分(例えば図5の前方操作部分2g,図6・図8の後方操作部分2h,図7・図9の後方操作部分3g,3h)を、前記連続作動モードのときに前記天井部から飛び出る態様で備えている。
【0023】
このような構成からなる連続作動モード保持機構および、この連続作動モード保持機構を備えたエアゾール式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、このように、カバー体天井部の変位可能な操作片部によりアクチュエータをその作動モード設定位置に継続して保持するので、ガス抜きモードや内容物連続噴射モードとなる連続作動モードの保持機構の構成の簡単化およびその製造コストの低減化を図ることができる。
【0025】
また、利用者はエアゾール容器を持った方の片手でこの片部を例えば折り曲げたり回動させたりして連続作動モードへと移行し得るので、ガス抜きモードや内容物連続噴射モードの設定操作上の利便化を図ることができる。
【0026】
また、アクチュエータとしてカバー体と一体のレバー式のものを用い、その回動中心から操作片部のアクチュエータ作用点までのいわゆる腕部分も長く設定されているので、連続作動モード設定時の当該アクチュエータの押下げの際には十分な「てこ」作用が働き、連続作動モードの設定操作の簡単化を図ることができる。
【0027】
また、連続作動モード設定用の操作片部をその作動状態、すなわちガス抜きモードや内容物連続噴射モードに設定したときに、当該操作片部の一部がカバー体の上方から飛び出て連続作動モードの解除操作に使用されるようにしているので、内容物連続噴射モードの積極的な利用を図り、さらにはいったんガス抜きモードに設定した後でこれを解除する必要が生じた場合などの操作上の利便化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1乃至図9を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0029】
これまでも繰り返し述べたように、本発明はガス抜きモードや内容物連続噴射モードといった連続作動モードの保持機構に関するものである。そして、連続作動モード設定用の操作片部を、通常の作動モード設定用の操作ボタンとは別に設けている。
【0030】
この保持機構がガス抜きモードまたは内容物連続噴射モードのどちらで使用されているかということは、いわば利用者の意識の違いにすぎず、当該保持機構の動作メカニズム自体はいずれのモードの使用状態でも同じである。
【0031】
すなわち通常の(操作ボタンによって設定される)作動モードの状態を強制的に連続保持し、また必要応じてこれを解除できるようにしたものである。
【0032】
例えば利用者がガス抜きをするつもりで連続作動モードに設定しても容器に内容物が十分残っていれば内容物の連続噴射状態になり、これに気付いた利用者は連続作動モードを解除することもできる。
【0033】
内容物の連続噴射状態を設定した利用者が必要に応じて操作片部によりこの連続作動モードを解除できることは勿論である。
【0034】
以下、単なる説明の便宜上であるが、図1〜図4に関してはガス抜きモードの設定を前提とし、図5〜図9に関しては内容物連続噴射モードの設定を前提とする。
【0035】
それぞれの説明において、「ガス抜きモード」および「内容物連続噴射モード」の用語を置き換えても個々の説明内容の妥当性が担保されるのは勿論である。
【0036】
ここで、
図1は、連続作動モード保持機構(その1;折り曲げ可能な中央片部)であって、(a)は静止モードを、(b)は通常の操作ボタン(アクチュエータ)をその下動位置に保持した状態のガス抜きモードをそれぞれ示し、
図2は、図1のガス抜きモード保持機構の上面図を示し、
図3は、連続作動モード保持機構(その2;折り曲げ可能な先端片部)であって、(a)は静止モードを、(b)は通常の操作ボタン(アクチュエータ)をその下動位置に保持した状態のガス抜きモードをそれぞれ示し、
図4は、連続作動モード保持機構(その3;折り曲げ可能な中央片部)であって、(a)は静止モードを、(b)は通常の操作ボタン(アクチュエータ)をその下動位置に保持した状態のガス抜きモードをそれぞれ示し、
図5は、図1の中央片部に解除用の操作部分を設けた連続作動モード保持機構(その1)であって、(a)は静止モードを、(b)は通常の操作ボタン(アクチュエータ)をその下動位置に保持した状態の内容物連続噴射モードをそれぞれ示し、
図6は、図1の中央片部に解除用の操作部分を設けた連続作動モード保持機構(その2)であって、(a)は静止モードを、(b)は通常の操作ボタン(アクチュエータ)をその下動位置に保持した状態の内容物連続噴射モードをそれぞれ示し、
図7は、図3の先端片部に解除用の操作部分を設けた連続作動モード保持機構であって、(a)は静止モードを、(b)は通常の操作ボタン(アクチュエータ)をその下動位置に保持した状態の内容物連続噴射モードをそれぞれ示し、
図8は、図6の連続作動モード保持機構の静止モードにおける上面図を示し、
図9は、図7の連続作動モード保持機構で用いる先端片部を示している。
【0037】
なお、図1および図6それぞれの(a) は正確にいうと連続作動モード設定用の中央片部をまだ1度も使用していないとき(初期状態)の静止モードを示している。
【0038】
また、通常の操作ボタンを押圧した(連続作動モード設定用の中央片部や先端片部は押圧されていない)ときの作動モードは図示していないが、この作動モードにおける当該中央片部や当該先端片部のカバー体に対する位置関係は図示の静止モードのそれと同様である。
【0039】
以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えばアンダーカット1a)は原則として、そのアルファベットなし参照番号の構成要素(例えば容器本体1)の一部であることを示している。
【0040】
これらの図において、
1は後述の内容物および噴射用ガスを収納したエアゾール式製品の容器本体,
1aは当該容器本体の外周面の一部であって後述のカバー体を嵌合させる際に用いる環状のアンダーカット,
2,2’,3,3’,4は当該アンダーカットに嵌合状態で取り付けられるカバー体,
2a,3a,4aは当該カバー体の下方筒状部の内周下端部分に形成されてアンダーカット1aと嵌合する環状突部,
2b,3b,4bは当該カバー体の上面側部分に形成されて後述の押圧操作部6bを露出させるための開口域,
2c,3c,4cは当該カバー体の天井部,
2d,2d’,3d,3d’,4dはそれぞれ当該天井部に折り曲げ可能な態様で形成された連続作動モード保持用の片部(連続作動モード設定用の操作片部),
2e,2e’は片部2d,2d’(の自由端側)と天井部2cとを連結して、最初の連続作動モード設定操作により引き裂かれる薄肉状部,
2f,2f’は天井部2cと片部2d,2d’との(回動中心)連結部,
2gは片部2d’の前方操作部分,
2hは片部2d’の後方操作部分,
3eは天井部3cと片部3d,3d’との(回動中心)連結部,
3fは連続作動モードの設定時などに用いられる前方操作部分,
3g,3hは連続作動モードの解除時や設定時に用いられる後方操作部分,
4eは片部4dの後方端部にその全幅にわたって形成されたドーム状部分,
4fは天井部4cから下方に続く一対の内側面に形成されて、連続作動モードにおける片部4dの上面の幅方向(図面と垂直の方向)端部を係合保持する凸状部,
4gは天井部4cと片部4dとの(薄肉状の)連結部,
5は弾性力により上方向に付勢されている周知のステム(バルブ作用部),
6は当該ステムと連結して容器本体1の内容物を噴射させるためのもので、かつ、カバー体2〜4と一体になったいわゆるレバー式(てこ式)のアクチュエータ,
6aは当該アクチュエータとカバー体2〜4との接続部(回動基部),
6bは当該接続部に続くスロープ状の作動モード設定用の操作部,
6cはステム5の出力側に連結されてこれに続く内容物通路空間域を形成するL字状の通路部,
6dは当該通路部の出力側に取り付けられた周知の2ウェイ用噴射部材(特開2000−61370号公報参照)の噴射基部,
6eは当該噴射基部の前方に形成された開口部,
6fは当該開口部の一対の側壁部分,
6gは当該噴射基部の共通通路,
6hは当該共通通路に続く部分で噴射基部6dに対して回動可能な選択通路部,
6iは当該選択通路部を形成する短尺ノズル,
6jは当該選択通路部を形成する長尺ノズル,
6kは側壁部分6fからその後方の非開口部にかけて形成され、連続作動モードにおける片部3d,3d’の前方端部を係合保持する凹状切欠部,
6mは図5(b),図6(b) の内容物連続噴射モード(連続作動モード)に設定された各片部2d'を係止して保持するための受け部,
をそれぞれ示している。
【0041】
なお、連続作動モード保持用の片部2d,2d’,4dはカバー体上面の前後方向の前方中央寄り部分に設けられており、また、同保持用の片部3d,3d’はカバー体上面の前端部分に設けられている。
【0042】
ここで、カバー体2,2’,3,3’,4,ステム5,アクチュエータ6はポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものであり、それぞれ外力を受けることによりいくらか変形し、当該外力を受けなくなると元の形状に略復帰する。なお、各図の容器本体1およびステム5は同一のものを示している。
【0043】
カバー体2〜4は、それぞれの下方筒状部の環状突部2a〜4aが容器本体1のアンダーカット1aに嵌合・保持されている。この保持状態のカバー体を容器本体1から取り外すのは比較的簡単である。
【0044】
また、アクチュエータ6は、その接続部6aを介して回動可能な形でカバー体2〜4と一体になっている。
【0045】
静止モードのアクチュエータ6は、ステム5を図示上方向に付勢するコイルスプリング(図示省略)などの作用により上動した状態、すなわち図1,図3,図4,図5,図6および図7それぞれの(a)の状態に位置している。
【0046】
図1乃至図9の連続作動モード保持機構のそれぞれに共通する基本的特徴は、
(11) 連続作動モード(ガス抜きモードまたは内容物連続噴射モード)の設定部材としての片部2d〜4dを、アクチュエータ6に対するカバー体2〜4の天井部2〜4と一体に変位可能な形で設け、
(12) エアゾール式製品をガス抜きモードまたは内容物連続噴射モードに設定する際は、この片部2d〜4dをアクチュエータ側に曲げることにより、その折曲げ部分でアクチュエータを作動モード設定操作時と同じように押下げていき、最終的には折曲げ後の当該片部でアクチュエータをその作動状態に保持する、すなわち連続作動モードに保持する、
ことである。
【0047】
図1および図6の中央寄りの片部2d,2d’の場合、(a)の静止モード(=当該片部が内容物連続噴射モードにまだ一度も設定されていない初期状態)や、通常の作動モード(=アクチュエータ6の操作部6を押圧してステムを押下げた状態)では、連結部2f,2f’の他に、薄肉状部2e,2e’を介しても天井部2cと連結されている。
【0048】
図5の中央寄りの片部2d’の場合、天井部2cとの間には図6の薄肉状部2e’を形成していないが、当該薄肉状部を設けるようにしてもよいことは勿論である。
【0049】
なお、図5の片部2d’の連結部2f’は、図面で明示されるように前後方向の中央部分がその両側部分よりも(上下方向に)厚くなるように設定されている。
【0050】
これにより、図5の片部2d’は、図6の薄肉状部2e’を備えていなくても、内容物連続噴射モードにまだ一度も設定されていない場合には略水平状態(=図示の静止モード位置)に保持される。
【0051】
図1,図5および図6の連続作動モード保持機構において、各図(b) のガス抜きモードや内容物連続噴射モードを最初に設定するときは、それぞれの片部2d,2d’を上から押圧すればよい。
【0052】
すなわち、
(21) 図1の場合は、天井部2cとの間の薄肉状部2eをいわば引き裂きながら片部2dを下方に押し、
(22) 図5の場合は、片部2d′の後方操作部分2hを下方に押し、
(23) 図6の場合は、天井部2cとの間の薄肉状部2e′をいわば引き裂きながら片部2d′の前方操作部分2gを下方に押す。
【0053】
この押圧操作にともなって、図1および図5の片部は時計方向に回動し、図6の片部は反時計方向に回動する。それぞれの回動中心は連結部2f,2f′である。
【0054】
そして、この片部2d,2d′の回動に応じる形で、アクチュエータ6は、各片部2d,2d’の下側となった端部で下方に押されながら(操作部6bを押圧した作動モード設定時と同じように)接続部6aを中心に反時計方向に回動する。
【0055】
アクチュエータ6は、最終的には図1および図5,図6それぞれの(b)に示すように、ステム5を作動モード位置まで下動させた状態で、片部2dのまたは片部2d’の端部に保持される。このときの片部2d’はアクチュエータ6の受け部6mに当接した状態で保持されている。
【0056】
なお、片部2d’(図5,図6)の上記押圧操作に際しては、その押圧操作部分とは反対側の部分(図5の場合は前方操作部分2g,図6の場合は後方操作部分2h)がすぐに斜めに起きてくるので、利用者は、この斜め状態となった各操作部分を新たな操作対象とすればよい。図5の片部2d’に対しては前方操作部分2gの(静止モードの)下面側を自らの方に引き上げるようにし、図6の片部2d’に対しては後方操作部分2hの(静止モードの)下面側を前方に押し上げるようにする。
【0057】
図3および図7の片部3d,3d’の場合、(a)の静止モードや通常の作動モードでは、その両側面部分が天井部3cの側面部分に当接した状態で安定している。
【0058】
この安定状態の片部3dを上から押圧し、また片部3d’の前方操作部分3fを上から押圧することにより、当該片部はそれぞれ、図1の場合と同じように連結部3eの部分を境に折り曲げられて(=回動して)、その底面側で側壁部分6fの上面を押しながらアクチュエータ6を反時計方向に回動させる。
【0059】
そして、片部3d,3d’はそれぞれ最終的には図3(b) および図7(b)に示すように、ステム5を作動モード位置まで下動させた状態で、その前方端部が噴射基部6dの凹状切欠部6kに係合する。
【0060】
図4の片部4dの場合、(a)の静止モードや通常の作動モードでは、その両側面部分が天井部3cの側面部分に当接した状態で安定している。
【0061】
この安定状態の片部4dを上から押圧することにより、当該片部は、図1や図3の場合と同じように連結部4gの部分を境に折り曲げられて(=回動して)、その(カバー体4の凸状部4fを乗り越えた)ドーム状部分4eで通路部6cの上面を押しながらアクチュエータ6を反時計方向に回動させる。
【0062】
そして、片部4dは最終的には図4(b)に示すように、ステム5を作動モード位置まで下動させた状態で、片部上面が凸状部4fに係止された位置に保持される。
【0063】
以上のいずれの連続作動モードの場合も、ステム5がそれに対する上方向への弾性力に抗して下動し、容器本体内部と外部空間とを連通させる周知のステム孔部(図示省略)が開いた作動モードの状態に設定されている。
【0064】
これにより、容器本体1の残留ガス(ガス抜きモード)や内容物(内容物連続噴射モード)は、概略、容器本体−ステム孔部−ステム内通路−L字状の通路部6c−共通通路6g−選択通路部6h(短尺ノズル6i/長尺ノズル6j)の経路により外部空間に噴射される。
【0065】
なお、ガス抜きモードや内容物連続噴射モードやガス抜きモードへの設定操作を解除するには、片部2d’および片部3d’それぞれの突出している操作部分(図5の前方操作部分2g,図6・図8の後方操作部分2h,図7・図9の後方操作部分3g,3h)を操作して、当該各片部を図示の矢印とは逆方向に回動させればよい。回動中心は連結部2f’,3eである。ここで片部3d’に対する解除操作の際には、必要に応じて、側壁部分6fなどを少し押下げことにより当該片部と凹状切欠部6kとの係合を解く。
【0066】
この回動操作に基づいて、片部2d′,3d’のそれまでのステム5およびアクチュエータ6に対する作動モード対応位置への連続保持状態が解除される。
【0067】
そしてこの解除にともない、ステム5が周知のスプリング(図示省略)の弾性力により上方向へと移動し、アクチュエータ6も当該ステムと連動して図5(a),図6(a)および図7(a)の静止モード位置へそれぞれ復帰する。
【0068】
図7の片部3d’(カバー体3’)としては、図9に示すように、その幅方向の両端に形成された一対の後方操作部分3gからなるものや、同幅方向の中央に形成された単一の後方操作部分3hからなるものを用いる。
【0069】
各図の選択通路部6hは短尺ノズル6iの使用モードを示している。長尺ノズル6jを用いるには、選択通路部6hを時計方向に90度回動させて、共通通路6gに当該長尺ノズルを連通させればよい。なお、長尺ノズル側の通路途中の短尺ノズル通路とのいわば交差部分は、長尺ノズル側通路が短尺ノズル通路を迂回する形になっている。
【0070】
静止モードから通常の作動モードに設定するにはアクチュエータ6の操作部6bを押圧して、当該アクチュエータを図示の反時計方向に少し回動させればよい。この回動によりステム5が下動して、上述のようにステム孔部がそれまでの閉状態から開状態へとシフトする。
【0071】
本発明が図示の内容に限定されないことは勿論であり、例えば、
(31) 片部2d,2d’の各静止モード位置を、当該片部側面とそれが対向するカバー体部分との当接(摩擦)により保持する、
(32) 片部3d,3d’,4dの各初期状態を、片部2d,2d’(図6)の場合と同じように、薄肉状部を介した各カバー体の天井部3c,4cとの連結作用により保持する、
(33) 片部2d,2d’,3d,3d’,4dの各静止モード位置を、例えば当該片部に形成した突状部/凹状部と天井部2c,3c,4cの側に形成した凹状部/突状部との着脱自在な係止作用により保持する、
(34) 片部3d,3d’の各静止モードを、当該片部の底面と側壁部分6fの上面部分との当接・係止作用により保持する、
(35) 片部4dの静止モードを、当該片部のドーム状部分4eと凸状部4fの上面部分との当接・係止作用により保持する、
(36) 図1のガス抜きモード位置の片部2dを係止する任意の手段を形成する、例えば当該片部の後端部分を係止して保持する凹状部などを通路部6cの外周面に形成する、
(37) 片部4dに、片部2d’や片部3d’と同様のガス抜きモード解除用の前方操作部分を形成する、
(38) 片部2d’に代えて片部3d’と同様のものを用いる、
(39) 図5の片部2d′として、図6の薄肉状部2e′および連結部2f′を設けたものを用いる、
(40) 図6の片部2d′として、薄肉状部2e′を形成せずに図5の連結部2f′を設けたものを用いる、
(41) 片部3d’に代えて片部2d’と同様のものを用いる、
(42) カバー体2,2’,3,3’,4に連結されていない上下動タイプの操作ボタンからなるアクチュエータを用いる、
(43) 2ウェイ用噴射部材を用いずに、短尺ノズルに対応した単一の連続通路のみを形成し、または長尺ノズルに対応した回動タイプの通路のみを形成する、
ようにしてもよい。
【0072】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0073】
容器本体に収納する内容物は、例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分などである。
【0074】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0075】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0076】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0077】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0078】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼインなどを用いる。
【0079】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0080】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0081】
エアゾール式製品における内容物噴射用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の、連続作動モード保持機構(その1;折り曲げ可能な中央片部)であって、(a)は静止モードを、(b)は操作ボタン(アクチュエータ)を下動位置に保持した状態のガス抜きモードをそれぞれ示す説明図である。
【図2】本発明の、図1の連続作動モード保持機構の上面を示す説明図である。
【図3】本発明の、連続作動モード保持機構(その2;折り曲げ可能な先端片部)であって、(a)は静止モードを、(b)は操作ボタン(アクチュエータ)を下動位置に保持した状態のガス抜きモードをそれぞれ示す説明図である。
【図4】本発明の、連続作動モード保持機構(その3;折り曲げ可能な中央片部)であって、(a)は静止モードを、(b)は操作ボタン(アクチュエータ)を下動位置に保持した状態のガス抜きモードをそれぞれ示す説明図である。
【図5】図1の中央片部に連続作動モード解除用の操作部分を設けた連続作動モード保持機構(その1)であって、(a)は静止モードを、(b)は操作ボタン(アクチュエータ)を下動位置に保持した状態の内容物連続噴射モードをそれぞれ示す説明図である。
【図6】図1の中央片部に連続作動モード解除用の操作部分を設けた連続作動モード保持機構(その2)であって、(a)は静止モードを、(b)は操作ボタン(アクチュエータ)を下動位置に保持した状態の内容物連続噴射モードをそれぞれ示す説明図である。
【図7】図3の先端片部に連続作動モード解除用の操作部分を設けた連続作動モード保持機構であって、(a)は静止モードを、(b)は操作ボタン(アクチュエータ)を下動位置に保持した状態の内容物連続噴射モードをそれぞれ示す説明図である。
【図8】図6の連続作動モード保持機構における静止モードの上面図を示す説明図である。
【図9】図7の連続作動モード保持機構で用いる先端片部を示す説明図である。
【符号の説明】
【0083】
1:エアゾール式製品の容器本体
1a:環状のアンダーカット
2,2’,3,3’,4:カバー体
2a,3a,4a:環状突部
2b,3b,4b:開口域
2c,3c,4c:天井部
2d,2d’,3d,3d’,4d:片部(連続作動モード設定用の操作片部)
2e,2e’:薄肉状部
2f,2f’:薄肉状の連結部
2g:前方操作部分
2h:後方操作部分
3e:(回動中心)連結部
3f:前方操作部分
3g,3h:後方操作部分
4e:ドーム状部分
4f:凸状部
4g:薄肉状の連結部
5:ステム(バルブ作用部)
6:レバー式(てこ式)のアクチュエータ
6a:接続部(回動基部)
6b:作動モード設定用の操作部
6c:L字状の通路部
6d:2ウェイ用噴射部材の噴射基部
6e:開口部
6f:一対の側壁部分
6g:共通通路
6h:回動可能な選択通路部
6i:短尺ノズル
6j:長尺ノズル
6k:凹状切欠部
6m:受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器の作動モードおよび静止モードを選択的に設定するアクチュエータが作動モード設定位置に継続して保持される連続作動モード保持機構において、
前記エアゾール容器のカバー体の天井域に、前記継続保持用の操作片部を、前記アクチュエータに対して変位可能な態様で形成し、
前記操作片部の変位にともなう押圧作用によって前記アクチュエータが前記作動モード設定位置へと移行し、かつ、当該移行後の当該操作片部と当該アクチュエータとの間の保持作用により連続作動モードが設定される、
ことを特徴とする連続作動モード保持機構。
【請求項2】
前記アクチュエータは、その回動基部が前記カバー体と一体になっているレバー式のものであり、
前記操作片部は、前記回動基部からみて、ステム結合部よりも遠いアクチュエータ部分を押圧する、
ことを特徴とする請求項1記載の連続作動モード保持機構。
【請求項3】
前記操作片部は、前記保持作用を解除する静止モード復帰用の操作部分を、前記連続作動モードのときに前記天井部から飛び出る態様で備えている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の連続作動モード保持機構。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の連続作動モード保持機構を備え、かつ、噴射用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−327680(P2006−327680A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170017(P2005−170017)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【特許番号】特許第3792710号(P3792710)
【特許公報発行日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】