連続可変比動力伝達装置に関する改良
【課題】バリエータから駆動力を取り出す際に、特に動力伝達装置が後輪駆動車又は四輪駆動車で使用される場合には駆動力を中央ディスクから取り出して、主軸線上に置かれた構成要素に伝えるように構成するようにする。
【解決手段】ローリングトラクション連続可変比動力伝達ユニットのためのローラ及び軸受組立体。前記ローラが、一対の動力伝達レース上で動くための外周を有し、一方の動力伝達レースから他方の動力伝達レースへ駆動力を伝達し、且つ前記動力伝達レースにより前記ローラに加えられる圧縮力を受けるためのフープを備え、前記軸受が、ローラフープ内に配置され且つ内側及び外側軸受レースを有する回転軸受を含み、前記ローラフープと前記軸受との間の結合部材が、前記ローラを前記軸受上で回転自在に取り付けるように機能し、前記圧縮力による前記ローラフープの変形をこれに応じた前記外側軸受レースの変形なしに調整することを特徴とする。
【解決手段】ローリングトラクション連続可変比動力伝達ユニットのためのローラ及び軸受組立体。前記ローラが、一対の動力伝達レース上で動くための外周を有し、一方の動力伝達レースから他方の動力伝達レースへ駆動力を伝達し、且つ前記動力伝達レースにより前記ローラに加えられる圧縮力を受けるためのフープを備え、前記軸受が、ローラフープ内に配置され且つ内側及び外側軸受レースを有する回転軸受を含み、前記ローラフープと前記軸受との間の結合部材が、前記ローラを前記軸受上で回転自在に取り付けるように機能し、前記圧縮力による前記ローラフープの変形をこれに応じた前記外側軸受レースの変形なしに調整することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にトロイダル・レース・ローリング・トラクション型の連続可変比動力伝達ユニット(「バリエータ」)に関する。
【背景技術】
【0002】
「フルトロイダル」型の公知のトロイダル・レース・ローリング・トラクション・バリエータ10の主要な構成要素を図1に示す。この図においては、2つの入力ディスク12、14が駆動シャフト16上にこれと共に回転するように装着されており、これらは、それぞれ中央出力ディスク26に形成された対応する部分トロイダル面22、24に対面する部分トロイダル面18、20を有する。出力ディスクは、シャフト16とは独立的に回転できるように軸装されている。シャフト16及び入力ディスク12、14を介して入力されるエンジン又は他の原動機からの駆動力は、トロイダルキャビティ内に配置された1組のローラを介して伝達される。1つの代表的なローラ28だけが図示されているが、両キャビティ内には典型的には3つのこのようなローラがそれぞれ設けられている。油圧式端部荷重装置15により入力ディスク12、14に加えられる端部荷重により、駆動力を伝達するローラとディスク間の接触力が与えられる。駆動力は、出力ディスクから動力伝達装置の他の部材、典型的には当該技術分野において公知であり、例えば欧州特許出願第85308344.2(EP0185463として公開済み)に記載されたエピサイクリック・ミキサに取り出される。各ローラは、それぞれのキャリッジ30内に装着される。キャリッジ自体は、油圧アクチュエータ32に結合され、これにより、ローラ/キャリッジ連結体に、シャフト16によって定められる主軸線をほぼ横切る方向に沿って制御された並進移動力を印加することができる。
【0003】
ローラの運動は、3つの要素に分けることができる。
i.関係する入力ディスク12又は14により駆動された時、キャリッジ30の回転軸受35により、ローラを対称軸(「ローラ軸線」)の周りで自転させることができる。もちろん、バリエータディスク間で駆動力を伝達するのは、この回転運動である。
ii.図1の先行技術による構成においては、アクチュエータ32のピストン34は、そのシリンダ内で回転することができ、その結果ローラが歳差運動を行う。すなわち、キャリッジ30、ピストン34、ローラ28は、軸線CAの周りで回転することができる。ここで使用する用語「歳差運動」は、ローラ軸線の回転を意味するものとして使用される。同様に、このような歳差運動はいわゆるローラの傾きの変化も含む。ローラがその周りで歳差運動する軸線CAは、「キャスタ軸線」と呼ばれる。
iii.ピストン34がそのシリンダに沿って移動する時、ローラとキャリッジは、主軸線に対して円周方向に沿って並進移動する。このような並進運動において、ローラの中心は、バリエータディスクによって定められるトーラスの中心円をたどるよう規制され、これは、この円からの逸脱が、端部荷重に抗してディスクを更に離間させることを意味することによる。
【0004】
当業者であれば認識しているように、キャスタ軸線の周りでのローラの上記歳差運動は、ローラが関連する入力ディスクと出力ディスクの面でたどる経路の相対的直径を変化させ、これによりバリエータの変速比が変化する。図1に見られるように、ディスク12、26に対するアクチュエータ32の配置によって決まるキャスタ軸線CAは、主軸線と直角な平面に対して角度Cを成している。この角度Cが「キャスタ角」であり、バリエータの制御に対し重要な影響を及ぼす。バリエータが作動している時、ローラに対するディスクの影響は、当業者にはよく知られているように、ローラ軸線が主軸線と交差する方向に向けてローラを強制的に動かすことである。例えば、アクチュエータ32が加る力の変化に起因してローラが円周方向への並進運動は、ローラ軸線が主軸線との交点から遠ざかる方向へ移動することになる。しかしながら、このような並進運動によって、キャスタ軸線の周りでのローラの歳差運動が起こり、ローラ軸線を主軸線との交点へ、即ち安定位置へと戻す。これはキャスタ角によるものである。
【0005】
図1に示すのは、「トルク制御」型のバリエータである。各ローラに対して関連するアクチュエータ32により加えられる(制御可能な)力は、隣接するディスクがローラに加えるリアクション力によって平衡が保たれる必要がある。ディスクによりローラに加えられる正味の力はいわゆるリアクション・トルクに比例する。その結果、ローラは、これらがアクチュエータ力によって決定されるトルクを伝えるよう機能する位置に自動的に移動及び歳差運動する。この原理は、当技術分野においてはよく知られている。
【0006】
本発明をその全ての異なる実施形態において理解するためには、バリエータ設計に関わる更なる幾つかの問題を理解する必要がある。
【0007】
キャスタ角の大きさはバリエータの性能に影響する。小さなキャスタ角は、結果としてバリエータが低減衰となり、ローラが平衡位置をオーバーシュートする傾向になり、望ましくない振動が生じる。図1に示す幾何学的配置は、ディスク直径とこれらの間隔に関係するキャスタ角に制限を加えるものである。この形式の公知のバリエータにおいては適正なキャスタ角が達成されるが、この制限を排除できる場合、設計上の自由度が更に得られことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願第85308344.2(EP0185463)
【特許文献2】米国特許第1002479号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
バリエータは、典型的には自動車のエンジンベイ内で使用可能な限られた空間に取り付ける必要があることから、その容積及び外部形状は非常に重要である。図1に示す装置の実用的な実施形態は、複動式(ピストンの両側に作動チャンバを有する)であるため不可避的に長く、且つディスクの半径方向外側に配置されなくてはならないアクチュエータ32を収納するために、バリエータのケーシングの外部に突出する「ローブ」を有する。これらのローブは、バリエータを車両に取り付ける際に幾つかの問題を生じている。更に一般的には、このバリエータ設計がディスク間のトロイダルキャビティ内に何ら有用な働きをしない大容積の空き空間を有すること、及びバリエータの全容積を低減するためにこの空間を利用するのが有利であろうことが長い間認識されてきた。すなわち、ローラが油圧ピストンのような線形アクチュエータによって制御されるので、これは困難な問題であることがこれまでに判明している。
【0010】
向き合っている一対の単動ピストンによってローラを制御するバリエータがこれまでにも存在している。そのピストンは、ローラキャリッジの両端に1つずつ配置され、各々がそれぞれのシリンダ内に収容されている。このような構成のピストンとシリンダは、ローラの回転を可能にするために、半径方向平面に対して角度を成す(この角度がキャスタ角)1つの共通軸線(キャスタ軸線)上に置かれる。しかしながら、この場合もまた、アクチュエータは、ディスクの半径方向外側に置かれて、嵩張った不規則な外形を形成する。
【0011】
更に別の設計上の考慮事項は、本明細書では「軸方向コンプライアンス」と呼ばれるものである。作動中にリアクション・トルクに対して変化する端部荷重装置15により加えられる相当量の軸方向力により、ディスクのトロイダル面18、20は、主にディスクと、これらの取付け部材と、シャフト等のコンプライアンスによって、主軸線に沿った方向に移動する。ディスクのこのようなコンプライアンス運動は、1mm程度とすることができる。ローラ28は、ディスク面に沿うとともに主軸線の方向に沿う幾らかの対応する運動が可能でなければならない。この運動は、図1の構成においては、シリンダ内におけるピストン34の僅かな角運動によって直接与えられる。一対のアクチュエータ間に各ローラを配置した上記形式の構成において所要の軸方向運動を形成することは、あまり簡単なことではない。
【0012】
最後の設計考慮事項は、バリエータから駆動力を取り出すことに関する。これは、中央ディスク26の半径方向外側の表面に形成された歯車の歯に掛けられて動くチェーンによって可能である。しかしながら、場合によっては(特に動力伝達装置が後輪駆動車又は四輪駆動車で使用される場合には)駆動力を中央ディスクから取り出して、主軸線上に置かれた構成要素に伝えるように構成することが望ましい。この形式の「同軸駆動」は、非常に小形化することができ、これを単純な方式で提供することが望ましい。
【0013】
特許出願に先立って行った先行技術調査の過程で、本出願人は、1964年に出願された米国特許第1002479号を知るに至った。この米国特許において開示されているのは、バリエータの変速比を変えるためにローラ支持「アーム」に対して各ローラ軸線が歳差運動できるように、ローラをアームに装着したバリエータである。しかしながら、このバリエータは、3つのローラの全てが1つの共通中央スリーブによって作動させられ、このスリーブの回転がアーム42を変位させ、従ってまたローラを変位させる形式のバリエータである。このような構成は、実用的でないことが判明した。「均等化」を達成するため、即ち共通スリーブによって作動させられる全てのローラが同一比にて作動するよう構成されることを保証するためには、必要とされる機械的構成は不満足なものであることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、主軸線の周りで回転するように装着された第1と第2のディスクを有し、トロイダルキャビティが、ディスクの互いに向き合っている面によってディスク間に形成されるとともに、そこに1つのディスクから他方のディスクへ駆動力を伝達する働きをする複数のローラを収容し、各ローラは、それぞれの軸受装置を介してそれぞれのキャリッジに結合されており、各キャリッジが、第1の端部にて第1の線形アクチュエータに結合され、第2の端部にて第2の線形アクチュエータに結合され、これによってキャリッジが主軸線を横断する方向に沿って移動可能であり、第1及び第2の線形アクチュエータが、キャリッジに調節可能な正味力を加えるように反対方向に作動し、キャリッジの向きを規制して、軸受装置がローラをローラ軸線の周りで回転させることによってディスクの一方から他方のディスクへ駆動力を伝達できるようにし、且つ変速比を変えるために、キャリッジに対してローラ軸線に歳差運動を行わせることができるように構成された連続可変比動力伝達ユニットが開示される。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、ローリングトラクション連続可変比動力伝達ユニットのためのローラ及び軸受組立体であって、ローラが、一方の動力伝達レースから他方の動力伝達レースへ駆動力を伝達するための一対の動力伝達レース上で動くための外周を有し、且つ動力伝達レースによりローラに加えられる圧縮力を支持するためのフープを備え、軸受が、ローラフープ内に配置され且つ内側と外側軸受レースを有する回転軸受を含み、ローラフープと軸受との間の結合部材が、ローラを軸受上で回転自在に取り付けるように機能し、圧縮力によるローラフープの変形をこれに応じた外側軸受レースの変形なしに調整することを特徴とするローラ及び軸受組立体が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】公知の形式のバリエータの半径方向に沿った簡略図である。
【図2】本発明を具現したバリエータの幾つかの主要構成要素の主軸線に沿った簡略図である。
【図3】一方の移動端部におけるバリエータのローラ/キャリッジ組合せを示す図2に対応する図である。
【図4】反対側の移動端部におけるバリエータのローラ/キャリッジ組合せを示す図2及び3に対応する図である。
【図5】図2〜4に見られる構成要素の斜視図である。
【図6】図5と同じ構成要素の平面図である。
【図7】ローラとこれに関係する軸受装置の断面を示す、本発明を具現したバリエータで使用するためのローラ/キャリッジ組立体の半分部分の斜視図である。
【図8】ローラ/キャリッジ組立体の斜視図である。
【図9】バリエータ主軸線の方向に沿ったバリエータの主要構成要素の図である。
【図10】本発明の諸態様を具現するバリエータの簡略図である。
【図11】本発明の諸態様を具現するローラ/ベアリング装置の軸方向平面における断面図である。
【図12】本発明の諸態様を具現するローラ/ベアリング装置の軸方向平面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の幾つかの特定実施形態を、例証の目的で添付図面を参照しながら説明する。
【0018】
図2〜図6は、本発明を具現するバリエータの構成の特定の態様を明らかにするのに役立ち、明瞭化のために簡略化されている。これらの図面の各々は、1つのバリエータディスク100と1つのローラ102のみを示しているが、もちろん、実際には更にもう1つのディスク(更に典型的には、図1に示すように、2つのトロイダルキャビティを形成するために3つのより多くのディスクがあり、)が存在しなくてはならず、そのキャビティ又は各キャビティは、それらのキャビティに離間して配置された1組のローラを収容し、典型的には、キャビティ当たりに3つのローラが設けられる。
【0019】
図示した構成において、各ローラ102は、キャリッジ104に装着され、該キャリッジは、ローラより(メインシャフト108により定められる主軸線に対して)半径方向内側に置かれた接線方向に延びるリム106を含む。リム106の両端部は、それぞれピストン110、112につながっており、両ピストンは、それぞれシリンダ114、115内に受けられている。もちろん、これらのシリンダは、図示されていないバリエータケーシング内に収容される。ローラは各々、キャリッジリム106からほぼ半径方向外向きに突出するステム116に軸受装置によって装着される。この軸受装置は、以下に詳細に説明する。
【0020】
図6を参照すると、両ピストン110、112は、主軸線に対して垂直な平面内にある軸線P1、P2を有することが分かるであろう。しかしながら、これらのピストンは互いに整列していない。代わりに、一方のピストンが、他方のピストンから主軸線Mの方向に沿って距離Dだけずれている。この軸方向のずれは、以下で明らかになるように、パッケージングの観点から非常に好ましい。2つのピストン110、112の相対的な軸方向のずれにも拘わらず、ピストン110、112と、これらに連結されたキャリッジ104との組立体全体は、限定された回転を行うことが可能であり、これは、図6には示されていないが、両ピストンの中心を結ぶキャリッジ軸線(図2に符号PAで示す)の周りの回転である。キャリッジ軸線はピストン軸線に一致してないことから、ピストン/キャリッジ組立体のこうした回転は、ピストンのシリンダ内における幾分かの斜行を含むが、これは、シリンダに対してピストンを密閉する円周方向溝118内の密閉リングによって調整できる。別の実施形態(図示せず)において、キャリッジのこのような限定された回転運動は、玉継手のようなそれぞれの関節継手を介して、キャリッジを両ピストンに連結することによって得られる。
【0021】
キャリッジ104の上記回転運動は、特に図2を参照しながら次に説明するように、ローラ102とバリエータディスクとの相互作用により、どのような場合でも厳密に規制される。図2において、キャリッジ軸線は、両ピストン110、112の中心を通り、符号PAで示している。点線CCは、符号100で示されたバリエータディスクによって定められるトーラスの中心円を表している。中心円の位置は、図5に最もよく見られる。上述のように、ローラ102の中心は、バリエータディスクによって定められるトーラスの中心円CC上に位置する。
【0022】
キャリッジ軸線PAは、ローラから、従って中心円CCから半径方向に沿ってずれていることに留意されたい。このずれは、図2において符号OFで示されている。図示された実施形態において、キャリッジ軸線PAは、ローラから半径方向内側にずれており、これはパッケージングの観点から有利である。しかしながら、ずれ方向が逆であっても、すなわちキャリッジ軸線PAがローラの半径方向外側にある場合でも、機能的なバリエータを製作することは可能である。
【0023】
この半径方向のずれにより、キャリッジ軸線PAの周りでのキャリッジ104のいかなる回転によっても、ローラ102の中心は主軸線108に対してほぼ平行な方向に沿って運動する。しかしながら、上で指摘されたように、ローラ102の中心は、バリエータディスク100によって定められるトーラスの中心円と常に一致しなくてはならない。従って、キャリッジ軸線PAの周りでのキャリッジ104のどのような回転運動も厳密に規制される。実際、キャリッジ軸線の周りのキャリッジの回転位置は、バリエータディスク100の位置によって決まる。上で指摘したように、ディスク100の位置は、僅かに変化する。バリエータに端部荷重が加わると、ディスクは、主軸線108の方向に沿って僅かに移動することができる。ディスクのこのような運動は、同じ方向に沿ったローラの対応する運動を伴い、これは、図示した実施形態においてはキャリッジ軸線PAの周りでのキャリッジ軸線PAの僅かな回転運動によって調整される。従って、半径方向のずれは、ローラ位置における所要の「軸方向コンプライアンス」を与え、同時にキャリッジの回転位置を規制する。
【0024】
図1に示す先行技術による構成においては、バリエータの変速比の変更に必要とされるローラ軸線の歳差運動は、アクチュエータ32によって定められるキャスタ軸線の周りで、ローラ28とキャリッジ30とが共に自由に回転できることにより可能になる。しかしながら、本実施形態においては、ずれOFによりキャリッジの回転位置が規制されるので、ローラ軸線の角度を変えるためにローラとキャリッジとを共に回転させるこの方式は可能ではない。その代わりに、本実施形態のローラ102をキャリッジ104に装着するための軸受装置により、キャリッジに対してローラが歳差運動をしてローラ軸線の角度を変えることが可能となる。この原理は、ローラ/キャリッジ組立体を異なる移動位置において示した図2、3、4を比較することによって明らかとなろう。キャリッジ104の向きは一貫して変わらないが、ローラ軸線そしてもちろんローラ自体の角度は変化し、これに応じてバリエータ変速比が変化する。次に、キャリッジ104に対するローラ102の歳差運動を可能にする軸受装置について、図7及び8を参照しながら説明する。これらの図面に示された幾つかの構成要素は、図2〜6にも示されており、これらの図面全体を通じて同じ参照符号が使用されている。
【0025】
図7に示すローラ102は、もちろんバリエータディスク上で動く円形外表面200と、弾性スペーサ206を介してボールレース型の回転軸受204の外側レース203に結合された円形内表面202とを有する。スペーサ206の機能については、以下で説明する。回転軸受204の内側レース205は、その中央に円形開口を有しており、従って、符号208で示す内表面は、球の一部を形成するようなソケットの形状にされている。回転軸受204(従ってローラ102自体)を装着するボールとソケットかなる玉継手を形成するように、この内表面208がボール210に乗っている。ボール210は、キャリッジリム106から(バリエータのメインシャフトの軸線からほぼ半径方向外向きに)突出するステム116にも取り付けられる。
【0026】
玉継手208、210は、ローラ回転軸(回転軸受204の軸線)の所要の歳差運動を可能にする。しかしながら、この歳差運動は、ボール210から外向きに突出して、内側レース205の部分球形面208内に形成された対応する溝内に受けられる舌状部212によって規制される点に留意されたい。更に、舌状部212の向きは、ボール210と舌状部212がステムの周りで回転するのを防止するために、舌状部212の隣接する内側部分に係合するステム116上に形成されたキー溝214により、キャリッジに対して固定される。その結果、ローラ(すなわちその回転軸)が、舌状部の主要面216に対して垂直な、選ばれた「キャスタ」軸線の周りでのみ歳差運動することが可能となる。
【0027】
図7、8、9において、ローラ102は、それぞれのシュラウド217により部分的に囲まれていることが分かるであろう。これらのシュラウドは、ローラに対するオイル流体(「トラクション流体」と呼ばれる)の供給を容易にするために使用される。これによりローラは冷却され、バリエータディスクとローラとの間のローラ表面に流体薄膜が保持される。当業者であれば分かるように、駆動力はこの流体薄膜を介したその剪断によって伝達される。
【0028】
次に、弾性スペーサ206の機能について説明するために、作動時にローラ102に作用する2つのバリエータディスクは、ローラの直径に沿って大きな圧縮力を作用させ、この方向に沿ったローラの外径(200)と内径(202)を減少させるようにローラを幾分変形させる傾向がある点を理解する必要がある。この圧縮力が回転軸受204と玉継手208、210に伝達される場合には、その結果これらを拘束することになる。回転軸受204の磨耗や回転軸受での摩擦損失は、望ましくないほどに増大することとなる。この問題を回避するために、図示した実施形態においては、ローラ102自体が圧縮力を支持するフープを形成していることが理解できるであろう。ローラと軸受装置との間に介在するスペーサ206は、これらを互いに結合させるが、圧縮力を軸受装置に伝達することなく、この圧縮力によるローラフープの変形を調整する。スペーサは、波形バネ鋼のバンドとして形成することができる。「トレランスリング」と呼ばれるこのような構成要素は、例えば、熱膨張の影響にも拘らず軸受に加わる半径方向荷重が一定でなくてはならない状況において歯車を取り付ける場合に使用されるものとして知られている。
【0029】
次に図5に戻って参照すると、舌状部212によって定められるキャスタ軸が符号CAで示されている。ローラの軸線(これ自体は図面に示されていない)は、ローラの歳差運動にも拘らず、常にキャスタ軸線に対して垂直な平面内にある。キャスタ軸線は、バリエータメインシャフトの軸線と垂直な平面に対して角度CAだけ傾斜していることに注目されたい。この角度は、上にその重要性を説明した「キャスタ角」である。キャスタ角は、ローラ軸受装置(又は、図示した実施形態においては、特に舌状部212の向き)によってのみ決まるので、バリエータの機能の観点から最も望ましい値であるように選ぶことができる。図1に示す先行技術による構成では達成できない大きなキャスタ角を選ぶことができ、これによってローラ運動をより大きく減衰させることができる。
【0030】
ピストン110、112がこれらのシリンダ114、115に沿って移動すると、キャリッジは1本の直線に沿って移動することが理解されるであろう。しかしながら、ローラの中心はトロイダルキャビティの中心円をたどるので、キャリッジのこのような運動には湾曲した経路に沿ったローラ中心の運動が伴わねばならない。従って、キャリッジに対してローラ中心が幾らか運動(浮動)する必要があり、図示した実施形態においては、これは、上述したように、ステム116を僅かに上下に移動させる自由度をボール210に与えることによって行われる。
【0031】
ローラとキャリッジ、それに付随のアクチュエータから成る図示の構成が、バリエータのパッケージングを小形化する上で有利であることは上述の通りである。次にこの理由を、バリエータの1つのキャビティ内に3つのローラ102の全てをこれらに関連する構成要素と共に見ることができる図9を特に参照しながら説明する。6つの油圧シリンダが、符号114、115、220、222、224、226で示されている。主軸線の方向に沿って見た場合、114と220のような隣接するシリンダのペアが重なり合っているという点に留意されたい。一方が他方の隣りに置かれ、このような対を成す2つのシリンダは、主軸線とほぼ平行な方向に沿って互いに交互に配置される。この重なり関係は、特定の1つのキャリッジ104に働きかける2つのシリンダの相対的な軸方向変位Dによって可能となる。これにより、シリンダを収納するためにバリエータケーシングの外側に必要とされる任意の「ローブ」のサイズを小さくするために、従来のバリエータ構成と比べてシリンダ位置を半径方向内側に移動させることができる。更に、シリンダは、第1のバリエータディスク100とこれに対応する相手ディスク(図示せず)との間のキャビティの内側に部分的に入っていることが分かる。「両端型」油圧アクチュエータを用いたこれまでのバリエータ(上の先行技術の説明で述べたような)においては、キャスタ角はシリンダの位置によって決まり、その結果望ましくないことながら、ディスク間のシリンダ配置はキャスタ角を制限していた。図示した実施形態においては、キャスタ角は代わりにキャリッジ104に対して定められるので、この問題は発生しない。更に、半径方向のずれOF(図2)が存在することにより、全てのシリンダが主軸線Mに向って移動するので、この場合もまたシリンダの突出が軽減される。このようにシリンダを少なくとも部分的にトロイダルキャビティ内に置くことにより、バリエータの容積が少なくなる。
【0032】
図10は、バリエータから駆動力を取り出すための装置を概略的に示している。この装置においては、符号306で示すように、2つの外側バリエータディスク300、302が、メインシャフト304にスプライン固定又はキー固定される。また、内側ディスク組立体308から駆動力を取り出すことも必要である。これは、当業者にはよく知られた方式で、ディスク組立体308の外側に係合したチェーンによって行われる。しかしながら、幾つかのバリエータ取付けにおいては、代わりに、シャフト310により定められるバリエータ主軸線の周りで回転する構成要素によって駆動力を取り出すことが望ましい。これを達成するための特に簡単な方法は、図10に示すように、バリエータディスクの半径方向外側に置かれ、外側ディスク302を超えて軸方向に沿って領域314まで延びるドラム312として形成されたロータを、内側ディスク組立体308に結合する方法である。図示されてはいないが、典型的には遊星歯車をこの領域内でドラム312に係合させることもできる。
【0033】
本出願人は、この形式の動力取出し装置が望ましいものであることを長年にわたり認識しており、実際に個々のローラを制御するために線形アクチュエータを使用しない以前の試作用バリエータにおいて実施してきたが、これは、以前のこうした装置におけるローラ制御用シリンダが半径方向に突出することは、これらのシリンダを通過させるのに要するドラム312の直径が過度に大きくなることを意味することから、ローラがこのようなアクチュエータを使用することに関してこれまでのところ実用的ではなかった。図10ではシリンダが省略されているが、これらは、図2〜9を参照して上述されたように構成及び配置される点を理解されるべきである。その結果、これらシリンダの半径方向の突出は最小化され、ドラム312の直径を過度に大きくする必要はない。
【0034】
上記の実施形態は、例示の目的でのみ示され、本発明の範囲内で様々な変更が可能なことは当業者には明らかであろう。例えば、他の実施形態(図示せず)においては、半径方向のずれOFを省いてもよい。このような実施形態においては、ローラを支持するキャリッジの向きは、例えばピストンの回転を防止するために、キー及びキー溝を有するか又は非円形断面を有するピストン/シリンダ構成を形成することによるなど、他の何らかの方法で規制することができる。このような実施形態においては、ローラ位置に所要の軸方向コンプライアンスを与えるために、典型的には何らかの別の方法が必要であり、これはキャリッジに対する幾らかの横方向の「浮動性」を軸受装置に持たせることによって可能となる。
【0035】
図示した実施形態においては、図6にP1及びP2で示すローラアクチュエータの軸線が半径方向平面内にあるが、両方のアクチュエータを半径方向平面に対して傾斜させて1つの共通軸線上に配置することも可能であろう。
【0036】
図示した軸受装置は、技術的な諸要求事項に特に良く適合するように考えられているが、同様に他の構造を有する軸受装置も可能である。例えば、キャスタ角を定めるために、図7に示す舌状部及び溝構成の代わりに、ボール及びソケットを通ってキャスタ角と整列したピンを利用して、ボール及びソケットの相対的回転がピンによって定められた軸線の周りでのみ可能であるようにすることもできる。
【0037】
図11及び12は、ローラ及びこれに関連する軸受の2つの可能な代替構造を示す。いずれの場合も、この装置は、バリエータディスクによりローラに加えられる圧縮荷重から軸受を効果的に切り離す働きをする。前述と同様に、ローラ自体は符号102で、ローラを軸装した回転軸受は符号204で、またローラの歳差運動を可能にする玉継手は符号208、210で示されている。
【0038】
図11において、回転軸受204の外側レース400は、ローラの半径方向内向きに突出するリップ404を受ける半径方向外側に開いたチャネル402を有する。リップは、チャネル内のフランジ406によってチャネル内に係留され、弾性バンド408を介してチャネルに結合される。従って、ローラの変形によりリップが更に溝402内に進入するが、この移動は対応する外側レース400が変形することなく調整される。
【0039】
図12において、リップ500は、ローラ102から半径方向内向きに突出して、軸受204の内側レースに結合されたフランジ502で終端する。軸受の外側レースは、リング504を介してソケット208に結合される。ローラが、矢印Dの方向に沿ってこれに加わる圧力によって変形されると、フランジ502及び軸受は、これに応じて内向きに変形されるが、これにより軸受レース間の間隙が増大するので、軸受の機能が損なわれることはない。ローラに加わる圧縮荷重に耐えるために軸受は必要ではない。
【符号の説明】
【0040】
100…ディスク、102…ローラ、104…キャリッジ、106…リム、110…ピストン、
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にトロイダル・レース・ローリング・トラクション型の連続可変比動力伝達ユニット(「バリエータ」)に関する。
【背景技術】
【0002】
「フルトロイダル」型の公知のトロイダル・レース・ローリング・トラクション・バリエータ10の主要な構成要素を図1に示す。この図においては、2つの入力ディスク12、14が駆動シャフト16上にこれと共に回転するように装着されており、これらは、それぞれ中央出力ディスク26に形成された対応する部分トロイダル面22、24に対面する部分トロイダル面18、20を有する。出力ディスクは、シャフト16とは独立的に回転できるように軸装されている。シャフト16及び入力ディスク12、14を介して入力されるエンジン又は他の原動機からの駆動力は、トロイダルキャビティ内に配置された1組のローラを介して伝達される。1つの代表的なローラ28だけが図示されているが、両キャビティ内には典型的には3つのこのようなローラがそれぞれ設けられている。油圧式端部荷重装置15により入力ディスク12、14に加えられる端部荷重により、駆動力を伝達するローラとディスク間の接触力が与えられる。駆動力は、出力ディスクから動力伝達装置の他の部材、典型的には当該技術分野において公知であり、例えば欧州特許出願第85308344.2(EP0185463として公開済み)に記載されたエピサイクリック・ミキサに取り出される。各ローラは、それぞれのキャリッジ30内に装着される。キャリッジ自体は、油圧アクチュエータ32に結合され、これにより、ローラ/キャリッジ連結体に、シャフト16によって定められる主軸線をほぼ横切る方向に沿って制御された並進移動力を印加することができる。
【0003】
ローラの運動は、3つの要素に分けることができる。
i.関係する入力ディスク12又は14により駆動された時、キャリッジ30の回転軸受35により、ローラを対称軸(「ローラ軸線」)の周りで自転させることができる。もちろん、バリエータディスク間で駆動力を伝達するのは、この回転運動である。
ii.図1の先行技術による構成においては、アクチュエータ32のピストン34は、そのシリンダ内で回転することができ、その結果ローラが歳差運動を行う。すなわち、キャリッジ30、ピストン34、ローラ28は、軸線CAの周りで回転することができる。ここで使用する用語「歳差運動」は、ローラ軸線の回転を意味するものとして使用される。同様に、このような歳差運動はいわゆるローラの傾きの変化も含む。ローラがその周りで歳差運動する軸線CAは、「キャスタ軸線」と呼ばれる。
iii.ピストン34がそのシリンダに沿って移動する時、ローラとキャリッジは、主軸線に対して円周方向に沿って並進移動する。このような並進運動において、ローラの中心は、バリエータディスクによって定められるトーラスの中心円をたどるよう規制され、これは、この円からの逸脱が、端部荷重に抗してディスクを更に離間させることを意味することによる。
【0004】
当業者であれば認識しているように、キャスタ軸線の周りでのローラの上記歳差運動は、ローラが関連する入力ディスクと出力ディスクの面でたどる経路の相対的直径を変化させ、これによりバリエータの変速比が変化する。図1に見られるように、ディスク12、26に対するアクチュエータ32の配置によって決まるキャスタ軸線CAは、主軸線と直角な平面に対して角度Cを成している。この角度Cが「キャスタ角」であり、バリエータの制御に対し重要な影響を及ぼす。バリエータが作動している時、ローラに対するディスクの影響は、当業者にはよく知られているように、ローラ軸線が主軸線と交差する方向に向けてローラを強制的に動かすことである。例えば、アクチュエータ32が加る力の変化に起因してローラが円周方向への並進運動は、ローラ軸線が主軸線との交点から遠ざかる方向へ移動することになる。しかしながら、このような並進運動によって、キャスタ軸線の周りでのローラの歳差運動が起こり、ローラ軸線を主軸線との交点へ、即ち安定位置へと戻す。これはキャスタ角によるものである。
【0005】
図1に示すのは、「トルク制御」型のバリエータである。各ローラに対して関連するアクチュエータ32により加えられる(制御可能な)力は、隣接するディスクがローラに加えるリアクション力によって平衡が保たれる必要がある。ディスクによりローラに加えられる正味の力はいわゆるリアクション・トルクに比例する。その結果、ローラは、これらがアクチュエータ力によって決定されるトルクを伝えるよう機能する位置に自動的に移動及び歳差運動する。この原理は、当技術分野においてはよく知られている。
【0006】
本発明をその全ての異なる実施形態において理解するためには、バリエータ設計に関わる更なる幾つかの問題を理解する必要がある。
【0007】
キャスタ角の大きさはバリエータの性能に影響する。小さなキャスタ角は、結果としてバリエータが低減衰となり、ローラが平衡位置をオーバーシュートする傾向になり、望ましくない振動が生じる。図1に示す幾何学的配置は、ディスク直径とこれらの間隔に関係するキャスタ角に制限を加えるものである。この形式の公知のバリエータにおいては適正なキャスタ角が達成されるが、この制限を排除できる場合、設計上の自由度が更に得られことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願第85308344.2(EP0185463)
【特許文献2】米国特許第1002479号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
バリエータは、典型的には自動車のエンジンベイ内で使用可能な限られた空間に取り付ける必要があることから、その容積及び外部形状は非常に重要である。図1に示す装置の実用的な実施形態は、複動式(ピストンの両側に作動チャンバを有する)であるため不可避的に長く、且つディスクの半径方向外側に配置されなくてはならないアクチュエータ32を収納するために、バリエータのケーシングの外部に突出する「ローブ」を有する。これらのローブは、バリエータを車両に取り付ける際に幾つかの問題を生じている。更に一般的には、このバリエータ設計がディスク間のトロイダルキャビティ内に何ら有用な働きをしない大容積の空き空間を有すること、及びバリエータの全容積を低減するためにこの空間を利用するのが有利であろうことが長い間認識されてきた。すなわち、ローラが油圧ピストンのような線形アクチュエータによって制御されるので、これは困難な問題であることがこれまでに判明している。
【0010】
向き合っている一対の単動ピストンによってローラを制御するバリエータがこれまでにも存在している。そのピストンは、ローラキャリッジの両端に1つずつ配置され、各々がそれぞれのシリンダ内に収容されている。このような構成のピストンとシリンダは、ローラの回転を可能にするために、半径方向平面に対して角度を成す(この角度がキャスタ角)1つの共通軸線(キャスタ軸線)上に置かれる。しかしながら、この場合もまた、アクチュエータは、ディスクの半径方向外側に置かれて、嵩張った不規則な外形を形成する。
【0011】
更に別の設計上の考慮事項は、本明細書では「軸方向コンプライアンス」と呼ばれるものである。作動中にリアクション・トルクに対して変化する端部荷重装置15により加えられる相当量の軸方向力により、ディスクのトロイダル面18、20は、主にディスクと、これらの取付け部材と、シャフト等のコンプライアンスによって、主軸線に沿った方向に移動する。ディスクのこのようなコンプライアンス運動は、1mm程度とすることができる。ローラ28は、ディスク面に沿うとともに主軸線の方向に沿う幾らかの対応する運動が可能でなければならない。この運動は、図1の構成においては、シリンダ内におけるピストン34の僅かな角運動によって直接与えられる。一対のアクチュエータ間に各ローラを配置した上記形式の構成において所要の軸方向運動を形成することは、あまり簡単なことではない。
【0012】
最後の設計考慮事項は、バリエータから駆動力を取り出すことに関する。これは、中央ディスク26の半径方向外側の表面に形成された歯車の歯に掛けられて動くチェーンによって可能である。しかしながら、場合によっては(特に動力伝達装置が後輪駆動車又は四輪駆動車で使用される場合には)駆動力を中央ディスクから取り出して、主軸線上に置かれた構成要素に伝えるように構成することが望ましい。この形式の「同軸駆動」は、非常に小形化することができ、これを単純な方式で提供することが望ましい。
【0013】
特許出願に先立って行った先行技術調査の過程で、本出願人は、1964年に出願された米国特許第1002479号を知るに至った。この米国特許において開示されているのは、バリエータの変速比を変えるためにローラ支持「アーム」に対して各ローラ軸線が歳差運動できるように、ローラをアームに装着したバリエータである。しかしながら、このバリエータは、3つのローラの全てが1つの共通中央スリーブによって作動させられ、このスリーブの回転がアーム42を変位させ、従ってまたローラを変位させる形式のバリエータである。このような構成は、実用的でないことが判明した。「均等化」を達成するため、即ち共通スリーブによって作動させられる全てのローラが同一比にて作動するよう構成されることを保証するためには、必要とされる機械的構成は不満足なものであることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、主軸線の周りで回転するように装着された第1と第2のディスクを有し、トロイダルキャビティが、ディスクの互いに向き合っている面によってディスク間に形成されるとともに、そこに1つのディスクから他方のディスクへ駆動力を伝達する働きをする複数のローラを収容し、各ローラは、それぞれの軸受装置を介してそれぞれのキャリッジに結合されており、各キャリッジが、第1の端部にて第1の線形アクチュエータに結合され、第2の端部にて第2の線形アクチュエータに結合され、これによってキャリッジが主軸線を横断する方向に沿って移動可能であり、第1及び第2の線形アクチュエータが、キャリッジに調節可能な正味力を加えるように反対方向に作動し、キャリッジの向きを規制して、軸受装置がローラをローラ軸線の周りで回転させることによってディスクの一方から他方のディスクへ駆動力を伝達できるようにし、且つ変速比を変えるために、キャリッジに対してローラ軸線に歳差運動を行わせることができるように構成された連続可変比動力伝達ユニットが開示される。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、ローリングトラクション連続可変比動力伝達ユニットのためのローラ及び軸受組立体であって、ローラが、一方の動力伝達レースから他方の動力伝達レースへ駆動力を伝達するための一対の動力伝達レース上で動くための外周を有し、且つ動力伝達レースによりローラに加えられる圧縮力を支持するためのフープを備え、軸受が、ローラフープ内に配置され且つ内側と外側軸受レースを有する回転軸受を含み、ローラフープと軸受との間の結合部材が、ローラを軸受上で回転自在に取り付けるように機能し、圧縮力によるローラフープの変形をこれに応じた外側軸受レースの変形なしに調整することを特徴とするローラ及び軸受組立体が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】公知の形式のバリエータの半径方向に沿った簡略図である。
【図2】本発明を具現したバリエータの幾つかの主要構成要素の主軸線に沿った簡略図である。
【図3】一方の移動端部におけるバリエータのローラ/キャリッジ組合せを示す図2に対応する図である。
【図4】反対側の移動端部におけるバリエータのローラ/キャリッジ組合せを示す図2及び3に対応する図である。
【図5】図2〜4に見られる構成要素の斜視図である。
【図6】図5と同じ構成要素の平面図である。
【図7】ローラとこれに関係する軸受装置の断面を示す、本発明を具現したバリエータで使用するためのローラ/キャリッジ組立体の半分部分の斜視図である。
【図8】ローラ/キャリッジ組立体の斜視図である。
【図9】バリエータ主軸線の方向に沿ったバリエータの主要構成要素の図である。
【図10】本発明の諸態様を具現するバリエータの簡略図である。
【図11】本発明の諸態様を具現するローラ/ベアリング装置の軸方向平面における断面図である。
【図12】本発明の諸態様を具現するローラ/ベアリング装置の軸方向平面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の幾つかの特定実施形態を、例証の目的で添付図面を参照しながら説明する。
【0018】
図2〜図6は、本発明を具現するバリエータの構成の特定の態様を明らかにするのに役立ち、明瞭化のために簡略化されている。これらの図面の各々は、1つのバリエータディスク100と1つのローラ102のみを示しているが、もちろん、実際には更にもう1つのディスク(更に典型的には、図1に示すように、2つのトロイダルキャビティを形成するために3つのより多くのディスクがあり、)が存在しなくてはならず、そのキャビティ又は各キャビティは、それらのキャビティに離間して配置された1組のローラを収容し、典型的には、キャビティ当たりに3つのローラが設けられる。
【0019】
図示した構成において、各ローラ102は、キャリッジ104に装着され、該キャリッジは、ローラより(メインシャフト108により定められる主軸線に対して)半径方向内側に置かれた接線方向に延びるリム106を含む。リム106の両端部は、それぞれピストン110、112につながっており、両ピストンは、それぞれシリンダ114、115内に受けられている。もちろん、これらのシリンダは、図示されていないバリエータケーシング内に収容される。ローラは各々、キャリッジリム106からほぼ半径方向外向きに突出するステム116に軸受装置によって装着される。この軸受装置は、以下に詳細に説明する。
【0020】
図6を参照すると、両ピストン110、112は、主軸線に対して垂直な平面内にある軸線P1、P2を有することが分かるであろう。しかしながら、これらのピストンは互いに整列していない。代わりに、一方のピストンが、他方のピストンから主軸線Mの方向に沿って距離Dだけずれている。この軸方向のずれは、以下で明らかになるように、パッケージングの観点から非常に好ましい。2つのピストン110、112の相対的な軸方向のずれにも拘わらず、ピストン110、112と、これらに連結されたキャリッジ104との組立体全体は、限定された回転を行うことが可能であり、これは、図6には示されていないが、両ピストンの中心を結ぶキャリッジ軸線(図2に符号PAで示す)の周りの回転である。キャリッジ軸線はピストン軸線に一致してないことから、ピストン/キャリッジ組立体のこうした回転は、ピストンのシリンダ内における幾分かの斜行を含むが、これは、シリンダに対してピストンを密閉する円周方向溝118内の密閉リングによって調整できる。別の実施形態(図示せず)において、キャリッジのこのような限定された回転運動は、玉継手のようなそれぞれの関節継手を介して、キャリッジを両ピストンに連結することによって得られる。
【0021】
キャリッジ104の上記回転運動は、特に図2を参照しながら次に説明するように、ローラ102とバリエータディスクとの相互作用により、どのような場合でも厳密に規制される。図2において、キャリッジ軸線は、両ピストン110、112の中心を通り、符号PAで示している。点線CCは、符号100で示されたバリエータディスクによって定められるトーラスの中心円を表している。中心円の位置は、図5に最もよく見られる。上述のように、ローラ102の中心は、バリエータディスクによって定められるトーラスの中心円CC上に位置する。
【0022】
キャリッジ軸線PAは、ローラから、従って中心円CCから半径方向に沿ってずれていることに留意されたい。このずれは、図2において符号OFで示されている。図示された実施形態において、キャリッジ軸線PAは、ローラから半径方向内側にずれており、これはパッケージングの観点から有利である。しかしながら、ずれ方向が逆であっても、すなわちキャリッジ軸線PAがローラの半径方向外側にある場合でも、機能的なバリエータを製作することは可能である。
【0023】
この半径方向のずれにより、キャリッジ軸線PAの周りでのキャリッジ104のいかなる回転によっても、ローラ102の中心は主軸線108に対してほぼ平行な方向に沿って運動する。しかしながら、上で指摘されたように、ローラ102の中心は、バリエータディスク100によって定められるトーラスの中心円と常に一致しなくてはならない。従って、キャリッジ軸線PAの周りでのキャリッジ104のどのような回転運動も厳密に規制される。実際、キャリッジ軸線の周りのキャリッジの回転位置は、バリエータディスク100の位置によって決まる。上で指摘したように、ディスク100の位置は、僅かに変化する。バリエータに端部荷重が加わると、ディスクは、主軸線108の方向に沿って僅かに移動することができる。ディスクのこのような運動は、同じ方向に沿ったローラの対応する運動を伴い、これは、図示した実施形態においてはキャリッジ軸線PAの周りでのキャリッジ軸線PAの僅かな回転運動によって調整される。従って、半径方向のずれは、ローラ位置における所要の「軸方向コンプライアンス」を与え、同時にキャリッジの回転位置を規制する。
【0024】
図1に示す先行技術による構成においては、バリエータの変速比の変更に必要とされるローラ軸線の歳差運動は、アクチュエータ32によって定められるキャスタ軸線の周りで、ローラ28とキャリッジ30とが共に自由に回転できることにより可能になる。しかしながら、本実施形態においては、ずれOFによりキャリッジの回転位置が規制されるので、ローラ軸線の角度を変えるためにローラとキャリッジとを共に回転させるこの方式は可能ではない。その代わりに、本実施形態のローラ102をキャリッジ104に装着するための軸受装置により、キャリッジに対してローラが歳差運動をしてローラ軸線の角度を変えることが可能となる。この原理は、ローラ/キャリッジ組立体を異なる移動位置において示した図2、3、4を比較することによって明らかとなろう。キャリッジ104の向きは一貫して変わらないが、ローラ軸線そしてもちろんローラ自体の角度は変化し、これに応じてバリエータ変速比が変化する。次に、キャリッジ104に対するローラ102の歳差運動を可能にする軸受装置について、図7及び8を参照しながら説明する。これらの図面に示された幾つかの構成要素は、図2〜6にも示されており、これらの図面全体を通じて同じ参照符号が使用されている。
【0025】
図7に示すローラ102は、もちろんバリエータディスク上で動く円形外表面200と、弾性スペーサ206を介してボールレース型の回転軸受204の外側レース203に結合された円形内表面202とを有する。スペーサ206の機能については、以下で説明する。回転軸受204の内側レース205は、その中央に円形開口を有しており、従って、符号208で示す内表面は、球の一部を形成するようなソケットの形状にされている。回転軸受204(従ってローラ102自体)を装着するボールとソケットかなる玉継手を形成するように、この内表面208がボール210に乗っている。ボール210は、キャリッジリム106から(バリエータのメインシャフトの軸線からほぼ半径方向外向きに)突出するステム116にも取り付けられる。
【0026】
玉継手208、210は、ローラ回転軸(回転軸受204の軸線)の所要の歳差運動を可能にする。しかしながら、この歳差運動は、ボール210から外向きに突出して、内側レース205の部分球形面208内に形成された対応する溝内に受けられる舌状部212によって規制される点に留意されたい。更に、舌状部212の向きは、ボール210と舌状部212がステムの周りで回転するのを防止するために、舌状部212の隣接する内側部分に係合するステム116上に形成されたキー溝214により、キャリッジに対して固定される。その結果、ローラ(すなわちその回転軸)が、舌状部の主要面216に対して垂直な、選ばれた「キャスタ」軸線の周りでのみ歳差運動することが可能となる。
【0027】
図7、8、9において、ローラ102は、それぞれのシュラウド217により部分的に囲まれていることが分かるであろう。これらのシュラウドは、ローラに対するオイル流体(「トラクション流体」と呼ばれる)の供給を容易にするために使用される。これによりローラは冷却され、バリエータディスクとローラとの間のローラ表面に流体薄膜が保持される。当業者であれば分かるように、駆動力はこの流体薄膜を介したその剪断によって伝達される。
【0028】
次に、弾性スペーサ206の機能について説明するために、作動時にローラ102に作用する2つのバリエータディスクは、ローラの直径に沿って大きな圧縮力を作用させ、この方向に沿ったローラの外径(200)と内径(202)を減少させるようにローラを幾分変形させる傾向がある点を理解する必要がある。この圧縮力が回転軸受204と玉継手208、210に伝達される場合には、その結果これらを拘束することになる。回転軸受204の磨耗や回転軸受での摩擦損失は、望ましくないほどに増大することとなる。この問題を回避するために、図示した実施形態においては、ローラ102自体が圧縮力を支持するフープを形成していることが理解できるであろう。ローラと軸受装置との間に介在するスペーサ206は、これらを互いに結合させるが、圧縮力を軸受装置に伝達することなく、この圧縮力によるローラフープの変形を調整する。スペーサは、波形バネ鋼のバンドとして形成することができる。「トレランスリング」と呼ばれるこのような構成要素は、例えば、熱膨張の影響にも拘らず軸受に加わる半径方向荷重が一定でなくてはならない状況において歯車を取り付ける場合に使用されるものとして知られている。
【0029】
次に図5に戻って参照すると、舌状部212によって定められるキャスタ軸が符号CAで示されている。ローラの軸線(これ自体は図面に示されていない)は、ローラの歳差運動にも拘らず、常にキャスタ軸線に対して垂直な平面内にある。キャスタ軸線は、バリエータメインシャフトの軸線と垂直な平面に対して角度CAだけ傾斜していることに注目されたい。この角度は、上にその重要性を説明した「キャスタ角」である。キャスタ角は、ローラ軸受装置(又は、図示した実施形態においては、特に舌状部212の向き)によってのみ決まるので、バリエータの機能の観点から最も望ましい値であるように選ぶことができる。図1に示す先行技術による構成では達成できない大きなキャスタ角を選ぶことができ、これによってローラ運動をより大きく減衰させることができる。
【0030】
ピストン110、112がこれらのシリンダ114、115に沿って移動すると、キャリッジは1本の直線に沿って移動することが理解されるであろう。しかしながら、ローラの中心はトロイダルキャビティの中心円をたどるので、キャリッジのこのような運動には湾曲した経路に沿ったローラ中心の運動が伴わねばならない。従って、キャリッジに対してローラ中心が幾らか運動(浮動)する必要があり、図示した実施形態においては、これは、上述したように、ステム116を僅かに上下に移動させる自由度をボール210に与えることによって行われる。
【0031】
ローラとキャリッジ、それに付随のアクチュエータから成る図示の構成が、バリエータのパッケージングを小形化する上で有利であることは上述の通りである。次にこの理由を、バリエータの1つのキャビティ内に3つのローラ102の全てをこれらに関連する構成要素と共に見ることができる図9を特に参照しながら説明する。6つの油圧シリンダが、符号114、115、220、222、224、226で示されている。主軸線の方向に沿って見た場合、114と220のような隣接するシリンダのペアが重なり合っているという点に留意されたい。一方が他方の隣りに置かれ、このような対を成す2つのシリンダは、主軸線とほぼ平行な方向に沿って互いに交互に配置される。この重なり関係は、特定の1つのキャリッジ104に働きかける2つのシリンダの相対的な軸方向変位Dによって可能となる。これにより、シリンダを収納するためにバリエータケーシングの外側に必要とされる任意の「ローブ」のサイズを小さくするために、従来のバリエータ構成と比べてシリンダ位置を半径方向内側に移動させることができる。更に、シリンダは、第1のバリエータディスク100とこれに対応する相手ディスク(図示せず)との間のキャビティの内側に部分的に入っていることが分かる。「両端型」油圧アクチュエータを用いたこれまでのバリエータ(上の先行技術の説明で述べたような)においては、キャスタ角はシリンダの位置によって決まり、その結果望ましくないことながら、ディスク間のシリンダ配置はキャスタ角を制限していた。図示した実施形態においては、キャスタ角は代わりにキャリッジ104に対して定められるので、この問題は発生しない。更に、半径方向のずれOF(図2)が存在することにより、全てのシリンダが主軸線Mに向って移動するので、この場合もまたシリンダの突出が軽減される。このようにシリンダを少なくとも部分的にトロイダルキャビティ内に置くことにより、バリエータの容積が少なくなる。
【0032】
図10は、バリエータから駆動力を取り出すための装置を概略的に示している。この装置においては、符号306で示すように、2つの外側バリエータディスク300、302が、メインシャフト304にスプライン固定又はキー固定される。また、内側ディスク組立体308から駆動力を取り出すことも必要である。これは、当業者にはよく知られた方式で、ディスク組立体308の外側に係合したチェーンによって行われる。しかしながら、幾つかのバリエータ取付けにおいては、代わりに、シャフト310により定められるバリエータ主軸線の周りで回転する構成要素によって駆動力を取り出すことが望ましい。これを達成するための特に簡単な方法は、図10に示すように、バリエータディスクの半径方向外側に置かれ、外側ディスク302を超えて軸方向に沿って領域314まで延びるドラム312として形成されたロータを、内側ディスク組立体308に結合する方法である。図示されてはいないが、典型的には遊星歯車をこの領域内でドラム312に係合させることもできる。
【0033】
本出願人は、この形式の動力取出し装置が望ましいものであることを長年にわたり認識しており、実際に個々のローラを制御するために線形アクチュエータを使用しない以前の試作用バリエータにおいて実施してきたが、これは、以前のこうした装置におけるローラ制御用シリンダが半径方向に突出することは、これらのシリンダを通過させるのに要するドラム312の直径が過度に大きくなることを意味することから、ローラがこのようなアクチュエータを使用することに関してこれまでのところ実用的ではなかった。図10ではシリンダが省略されているが、これらは、図2〜9を参照して上述されたように構成及び配置される点を理解されるべきである。その結果、これらシリンダの半径方向の突出は最小化され、ドラム312の直径を過度に大きくする必要はない。
【0034】
上記の実施形態は、例示の目的でのみ示され、本発明の範囲内で様々な変更が可能なことは当業者には明らかであろう。例えば、他の実施形態(図示せず)においては、半径方向のずれOFを省いてもよい。このような実施形態においては、ローラを支持するキャリッジの向きは、例えばピストンの回転を防止するために、キー及びキー溝を有するか又は非円形断面を有するピストン/シリンダ構成を形成することによるなど、他の何らかの方法で規制することができる。このような実施形態においては、ローラ位置に所要の軸方向コンプライアンスを与えるために、典型的には何らかの別の方法が必要であり、これはキャリッジに対する幾らかの横方向の「浮動性」を軸受装置に持たせることによって可能となる。
【0035】
図示した実施形態においては、図6にP1及びP2で示すローラアクチュエータの軸線が半径方向平面内にあるが、両方のアクチュエータを半径方向平面に対して傾斜させて1つの共通軸線上に配置することも可能であろう。
【0036】
図示した軸受装置は、技術的な諸要求事項に特に良く適合するように考えられているが、同様に他の構造を有する軸受装置も可能である。例えば、キャスタ角を定めるために、図7に示す舌状部及び溝構成の代わりに、ボール及びソケットを通ってキャスタ角と整列したピンを利用して、ボール及びソケットの相対的回転がピンによって定められた軸線の周りでのみ可能であるようにすることもできる。
【0037】
図11及び12は、ローラ及びこれに関連する軸受の2つの可能な代替構造を示す。いずれの場合も、この装置は、バリエータディスクによりローラに加えられる圧縮荷重から軸受を効果的に切り離す働きをする。前述と同様に、ローラ自体は符号102で、ローラを軸装した回転軸受は符号204で、またローラの歳差運動を可能にする玉継手は符号208、210で示されている。
【0038】
図11において、回転軸受204の外側レース400は、ローラの半径方向内向きに突出するリップ404を受ける半径方向外側に開いたチャネル402を有する。リップは、チャネル内のフランジ406によってチャネル内に係留され、弾性バンド408を介してチャネルに結合される。従って、ローラの変形によりリップが更に溝402内に進入するが、この移動は対応する外側レース400が変形することなく調整される。
【0039】
図12において、リップ500は、ローラ102から半径方向内向きに突出して、軸受204の内側レースに結合されたフランジ502で終端する。軸受の外側レースは、リング504を介してソケット208に結合される。ローラが、矢印Dの方向に沿ってこれに加わる圧力によって変形されると、フランジ502及び軸受は、これに応じて内向きに変形されるが、これにより軸受レース間の間隙が増大するので、軸受の機能が損なわれることはない。ローラに加わる圧縮荷重に耐えるために軸受は必要ではない。
【符号の説明】
【0040】
100…ディスク、102…ローラ、104…キャリッジ、106…リム、110…ピストン、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローリングトラクション連続可変比動力伝達ユニットのためのローラ及び軸受組立体であって、
前記ローラが、一対の動力伝達レース上で動くための外周を有し、一方の動力伝達レースから他方の動力伝達レースへ駆動力を伝達し、且つ前記動力伝達レースにより前記ローラに加えられる圧縮力を受けるためのフープを備え、前記軸受が、ローラフープ内に配置され且つ内側及び外側軸受レースを有する回転軸受を含み、前記ローラフープと前記軸受との間の結合部材が、前記ローラを前記軸受上で回転自在に取り付けるように機能し、前記圧縮力による前記ローラフープの変形をこれに応じた前記外側軸受レースの変形なしに調整することを特徴とするローラ及び軸受組立体。
【請求項2】
前記ローラと軸受組立体をローラキャリッジに装着可能にするピボット装着部材を更に含み、そのピボット装着部材が、前記キャリッジに対する前記ローラ軸線の歳差運動を可能にするようになっていることを特徴とする請求項1に記載のローラ及び軸受組立体。
【請求項3】
前記ピボット装着部材が、前記軸受内に配置されたボールとソケットを含むことを特徴とする請求項2に記載のローラ及び軸受組立体。
【請求項4】
前記ボールとソケットの一方から他方に突出して、キャスタ軸線の周りでのみ前記ボールとソケットの相対的回転を可能にする制御部材が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のローラ及び軸受組立体。
【請求項5】
前記制御部材が、前記ボールとソケットの一方から突出し、前記ボールとソケットの他方に形成された溝内に受けられる舌状部を含み、該舌状部が、前記ボールとソケットの相対的回転を可能にするように前記溝に沿って摺動可能であることを特徴とする請求項4に記載のローラ及び軸受組立体。
【請求項6】
前記軸受が内側及び外側レースを含み、前記内側レースが前記ソケットを形成するように形作られた内表面を有し、これにより前記ボール上に取り付けられることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のローラ及び軸受組立体。
【請求項7】
前記ボール内に受けられるステムを介してローラキャリッジ上に装着され、前記キャリッジに対する前記ローラの変位を調整するために前記ステムに沿って移動可能である請求項3〜6のいずれかに記載のローラ及び軸受組立体、
【請求項8】
前記結合部材が、前記軸受が前記ローラフープに結合される弾性バンドを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のローラ及び軸受組立体。
【請求項9】
前記ローラフープが、前記結合部材を介して前記軸受の内側レース上に装着されることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のローラ及び軸受組立体。
【請求項1】
ローリングトラクション連続可変比動力伝達ユニットのためのローラ及び軸受組立体であって、
前記ローラが、一対の動力伝達レース上で動くための外周を有し、一方の動力伝達レースから他方の動力伝達レースへ駆動力を伝達し、且つ前記動力伝達レースにより前記ローラに加えられる圧縮力を受けるためのフープを備え、前記軸受が、ローラフープ内に配置され且つ内側及び外側軸受レースを有する回転軸受を含み、前記ローラフープと前記軸受との間の結合部材が、前記ローラを前記軸受上で回転自在に取り付けるように機能し、前記圧縮力による前記ローラフープの変形をこれに応じた前記外側軸受レースの変形なしに調整することを特徴とするローラ及び軸受組立体。
【請求項2】
前記ローラと軸受組立体をローラキャリッジに装着可能にするピボット装着部材を更に含み、そのピボット装着部材が、前記キャリッジに対する前記ローラ軸線の歳差運動を可能にするようになっていることを特徴とする請求項1に記載のローラ及び軸受組立体。
【請求項3】
前記ピボット装着部材が、前記軸受内に配置されたボールとソケットを含むことを特徴とする請求項2に記載のローラ及び軸受組立体。
【請求項4】
前記ボールとソケットの一方から他方に突出して、キャスタ軸線の周りでのみ前記ボールとソケットの相対的回転を可能にする制御部材が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のローラ及び軸受組立体。
【請求項5】
前記制御部材が、前記ボールとソケットの一方から突出し、前記ボールとソケットの他方に形成された溝内に受けられる舌状部を含み、該舌状部が、前記ボールとソケットの相対的回転を可能にするように前記溝に沿って摺動可能であることを特徴とする請求項4に記載のローラ及び軸受組立体。
【請求項6】
前記軸受が内側及び外側レースを含み、前記内側レースが前記ソケットを形成するように形作られた内表面を有し、これにより前記ボール上に取り付けられることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のローラ及び軸受組立体。
【請求項7】
前記ボール内に受けられるステムを介してローラキャリッジ上に装着され、前記キャリッジに対する前記ローラの変位を調整するために前記ステムに沿って移動可能である請求項3〜6のいずれかに記載のローラ及び軸受組立体、
【請求項8】
前記結合部材が、前記軸受が前記ローラフープに結合される弾性バンドを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のローラ及び軸受組立体。
【請求項9】
前記ローラフープが、前記結合部材を介して前記軸受の内側レース上に装着されることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のローラ及び軸受組立体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−103312(P2009−103312A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21329(P2009−21329)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【分割の表示】特願2003−562505(P2003−562505)の分割
【原出願日】平成15年1月24日(2003.1.24)
【出願人】(301037257)トロトラック・(ディベロップメント)・リミテッド (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【分割の表示】特願2003−562505(P2003−562505)の分割
【原出願日】平成15年1月24日(2003.1.24)
【出願人】(301037257)トロトラック・(ディベロップメント)・リミテッド (13)
【Fターム(参考)】
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