説明

連続的に実施される平衡反応のための装置および方法

本発明は、平衡反応を連続的に実施するための装置および方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平衡反応を連続的に実施するための装置および方法に関する。
【0002】
異なる生成物を1つの装置中で製造する場合には、殆んど専ら非連続的に運転される装置が使用される。これとは異なり、連続的に作業する装置は、非連続的方法とは異なり若干の重要な利点を提供する。
【0003】
制御費用および調節費用は、僅かであり、ヒトの需要は、僅かで済み、製品品質は、良好でありかつ殆んど変動せず、装置能力は、個々の製造工程(注入、反応、低沸点物の分離、生成物の分離、吐出)の連続的な使い果たしを排除したために高い。
【0004】
平衡反応のために特殊な方法が開発され、平衡を望ましい方向にシフトさせることが可能になる。
【0005】
大抵の反応方程式は、弱い熱階調を有する平衡反応である。米国特許第3836576号明細書においては、例えば反応は、相応するアルコールチタネートの存在で均一な触媒反応として実施される。望ましくない重合反応を抑制するために、反応混合物には抑制剤が添加される(例えば、ヒドロキノンモノメチルエーテル)。反応の平衡状態を生成物の方向にシフトし、それによって反応速度を上昇させるために、反応の際に遊離される低沸点のアルコールは、蒸留により反応混合物から除去され、蒸留塔によりさらに別の反応生成物と分離される。
【0006】
他の選択可能な方法によれば、分離は、反応蒸留の場合に既に反応室内で行なわれる。反応蒸留は、欧州特許第0968995号明細書中に記載されている。
【0007】
しかし、刊行物(例えば、米国特許第3887609号明細書)には、専ら、殊に新規種類の触媒系を用いての非連続的方法が記載されている。
【0008】
英国特許第841416号明細書には、反応混合物が転向される邪魔板(Abprallbleche)を備えた後接続された反応器を有する攪拌釜が記載されている。この場合、出発物質は、攪拌釜中で予め混合され、反応が開始される。更に、反応のために、反応混合物は、後接続された反応器中に導入することができる。しかし、よりいっそう良好な結果のためには、螺旋状の反応器が推奨され、例えば熱移行が改善される。英国特許第841416号明細書に記載された、邪魔板の装置は、もはや変動不可能な固定した反応体積を生じる。更に、跳躍帯は、邪魔板に対して形成する可能性があり、この場合この邪魔板は、望ましくない重合反応を生じる。同様に、懸濁液は、例えば触媒と一緒に劣悪に輸送されうる。もう1つの問題は、再混合である。それによって、製品品質は、不利に影響を及ぼされる。
【0009】
欧州特許第0968995号明細書には、アルキルメタクリレートを反応塔中で連続的に製造することが記載されている。この場合、エステル交換反応は、直接に蒸留塔中で行なわれる。それによって、常用のバッチエステル交換法と比較してよりいっそう高い反応速度、よりいっそう高い変換率および選択性ならびによりいっそう良好なエネルギー利用率が実現される。しかし、未反応のエダクトの再循環ならびに精製された生成物の取得のための処理工程は、記載されていない。更に、反応と物質の分離とのカップリングは、多重生産装置の範囲内で明らかに制限を生じる。更に、この装置の設計は、生成物にとって特定的に行わなければならない。
【0010】
連続的な方法で使用されるエダクト、殊に生成物の流れから劣悪に分離されうるエダクトの殆んど完全な変換を同時に高い空時収量で達成することができる方法を開発することであった。
【0011】
もう1つの課題は、配合物なしの生成物の交換をも保証する、前記方法を実施するのに適した装置を準備することであった。
【0012】
この課題は、エダクトを精留塔を介してかまたは直接にセグメント化された反応器(所謂コンパートメントリアクター)に供給し、このコンパートメントリアクターの個々のセグメント中でエダクトの添加により温度を制御し、場合によっては触媒の添加によって反応を促進させ、生成物混合物を未反応のエダクトおよび触媒と一緒に搬出することを特徴とする、平衡反応による生成物を連続的に製造するための方法で解決された。同時に、副生成物も処理から排出されうる。
【0013】
従って、(メタ)アクリレートの添加により個々のセグメント内で温度を制御することにより、(メタ)アクリレートとアルコールまたはアミンとの反応のためにエダクトを精留塔によるかまたは直接にコンパートメントリアクターに供給し、場合によっては触媒の添加によって反応を促進し、生成物混合物を未反応のエダクトおよび触媒と一緒に搬出することを特徴とする、平衡反応による生成物を連続的に製造するための方法を提供することでもあった。
【0014】
本明細書中で、(メタ)アクリレートの記載は、メタクリレート、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等、ならびにアクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート等を意味する。
【0015】
従来の反応蒸留と比較して、意外なことに、実質的に高い柔軟性が見出された。それというのも、物質分離と反応は、互いに分離されていてよいからである。その上、本発明による方法で、自由な触媒選択、例えば不均一な触媒の使用も可能になる。
【0016】
意外なことに、配合物なしの生成物の交換は、エダクトの流れ制御、第2のエダクトでの反応器の洗浄および引き続く新しいエダクトへの交換によって行なうことができることが見出された。特に、配合物なしの生成物の交換は、(メタ)アクリレートとアルコールまたはアミンとの反応の際にエダクトアルコール流またはエダクトアミン流の制御、(メタ)アクリレートでの反応器の洗浄および引き続く新しいエダクトアルコールまたは新しいエダクトアミンへの交換によって行なうことができる。
【0017】
エダクトは、精留塔の側方流として取り出すことができ、温度制御のために個々のセグメントに意図的に供給されることが見出された。特に、(メタ)アクリレートとアルコールまたはアミンとの反応の場合には、(メタ)アクリレートは、精留塔の側方流として取り出すことができ、個々のセグメントで意図的に温度制御に供給されうる。
【0018】
基礎となる反応方程式の1つで、(メタ)アクリレート(C)または(メタ)アクリルアミド(F)は、メチル(メタ)アクリレート(A)をアルコール(B)またはアミン(E)とメタノール(D)の遊離下に連続的に反応させることによって製造される:
【化1】

【0019】
上記式中、R1は、HまたはCH3であり、R2、R3は、同一かまたは異なり、2〜100個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基またはアリール基、場合によってはアルコキシ基を表わす。第1アミンをエダクトとして使用する場合、R3は、水素を表わす。
【0020】
アルコールR2OHとしては、例えばエタノール、プロパノールまたはイソプロパノール、ブタノールまたはイソブタノール、ペンタノール、シクロヘキサノールまたはヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールまたはイソオクタノールおよび2−エチルヘキサノールがこれに該当し、ジオールおよびトリオールもこれに該当する。更に、アルコールとしては、イソボルネオール、ベンジルアルコール、テトラヒドロフルフロール、アリルアルコール、エチレングリコール、3,3,5−トリメチル−シクロヘキサノール、フェニルエタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、種々のポリエチレングリコール、第三ブチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルトリグリコール、ブチルジグリコール、メチルトリグリコールまたはイソプロピリデングリセリンが使用されてよい。エダクトとして使用されるアルコールは、他の官能基を含有していてよい。
【0021】
エダクトとして使用されるアミンは、第1アミノまたは第2アミノに加えて他の官能基を含有することができる。2個以上の第1アミノ基または第2アミノ基を有するアミンは、相応するビス(メタ)アクリルアミド、トリス(メタ)アクリルアミドまたは高級(メタ)アクリルアミドを生じる。更に、アミンは、1個以上の第3アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基、エーテル基またはチオエーテル基を含有することができる。例えば、含有されているヒドロキシ基は、他の分子状(メタ)アクリレートとエステル交換によって反応しうる。
【0022】
好ましくは、一般式HN−R−NR’R’’の第3アミノアルキルアミンは、アミンとして使用され、上記式中、Rは、有利に2〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の鎖であり、R’およびR’’は、同一かまたは異なり、1〜8個の炭素原子、有利に1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であるか、または第3の窒素原子と一緒になってピペリジノ基、モルホリノ基またはピペラジノ基に由来するものを表わす。特に有利には、γ−ジメチルアミノプロピルアミンが使用される。
【0023】
記載された反応と共に、他の平衡反応、例えばエステル化が基礎になってもよい。
【0024】
その上、特に好ましくは、反応体積を変化させ、同時にエダクト流を適合させることによって生産効率は、簡単に適合される。例えば、英国特許第841416号明細書中に記載されているような従来法で存在するような反応体積の固定した寸法は、存在しない。
【0025】
反応体積の変化は、液体の水位以下でセグメント壁に開口を設けることによって実現される。好ましくは、隣接したセグメント中へのエダクト/生成物の輸送のためにセグメント壁中での穿孔が利用される。この開口は、任意の位置で、有利にセグメント壁の下方の三分の一に存在することができる。この開口は、有利に交換側に配置されており、セグメント中で最適な混合を保証する。従って、エダクト/生成物流は、分離に導く必要はない。それによって、本発明による装置は、反応室の寸法の制限により影響を及ぼされない。
【0026】
意外なことに、セグメント間での再混合の現象を阻止することができることが見出された。実験により算出される濃度経過は、計算された理想的なカスケード型釜に殆んど正確に相応する。それによって、再混合は、セグメント内だけで起こる。このような挙動は、配合物なしの生成物の急速な交換のための前提条件である。更に、それによって高い変換率を達成させることができる。更に、個々のセグメントで攪拌機の使用を省略することができる。
【0027】
エダクト流を正確に計量供給することによって、反応器中の温度は、制御されうる。エダクトは、予熱して添加されることができる。
【0028】
特に好ましい実施態様において、温度制御される(メタ)アクリレート分配が使用される。(メタ)アクリレートは、個々のセグメント中に供給される。生成物の最適に適合した温度プロフィールは、最大限可能な反応速度の達成、ひいては高い空時収量を生じる。温度制御される計量供給によって、反応器の制御および装置の運転は、著しく簡易化される。不変の温度プロフィールは、一定の製造条件を生じ、このことは、製品品質にプラスに作用する。側方流との組合せで、温度制御に使用可能な、例えばメチルメタクリレートの量は、上昇させることができる。
【0029】
好ましくは、エダクトアルコールまたはエダクトアミンは、精留塔を経て添加される。それによって、コンパートメントリアクター中での変換前にエダクト、例えば水の中の不純物は、分離されうる。
【0030】
意外なことに、本発明による装置を用いて、大きな釜数を簡単で安価に実現させることできることが見い出された。反応器のセグメント化は、多数の小さなセグメントへの反応器の分布を生じる。全てのセグメントは、セグメント壁により直ぐ次のセグメントと分離され、それによって個別の反応器のような挙動を取る。反応器内での小さな反応器に相応する、互いに接して列を成す多数のセグメントは、多数の利点を有する。例えば、変換率は、多数のセグメントで制御されうる。セグメントの数を増加させることによって、空時収量は、不変の最終変換率で高めることができる。できるだけ完全な変換率のために、多数のセグメントが使用される。これとは異なり、低い変換率が望まれる生成物の場合には、セグメントの数は、減少させることができる。これは、例えば生成物が重合傾向を有する場合である。それによって、調整された反応の実施は、体積に固有の僅かな投資費用を実現させることができる。
【0031】
特殊な実施態様は、セグメントの寸法の変化を可能にする。好ましくは、反応器内でのセグメントの寸法は、減少される。それというのも、例えば促進される反応の場合に触媒は、第1のセグメント中に流れる、精留塔の返送流によって急速すぎる程に直ぐ次のセグメント中に洗い流されるであろうからである。別の変換のためには、再び同じセグメントの寸法が好ましい。
【0032】
セグメント壁は、種々の材料から製造されうる。使用されるエダクト/生成物に応じて、セグメント壁および反応器には、ガラス、鋼、セラミック等のような材料を使用することができる。セグメント壁に特に好ましいのは、薄板(邪魔板)である。それというのも、この薄板は、簡単に加工することができるからである。
【0033】
この邪魔板は、反応壁と気密に結合されていない。好ましくは、この邪魔板は、さらになおセグメントから精留塔へのガスの取出しを行なうことができるような高さである。
【0034】
本発明による装置は、跳躍帯を最小化する幾何学的寸法を有する。それによって、エダクトおよび生成物の望ましくない重合反応は、殆んど完全に排除される。
【0035】
本発明による装置は、従来の温度調節装置、例えばジャケット加熱装置で加熱または冷却することができる。
【0036】
特殊な好ましい実施態様において、コンパートメントリアクターは、加熱蛇管を装備している。それによって、最適な熱の搬入が可能になる。加熱蛇管は、個々のセグメントに導通されていてよいし、全てのセグメントに導通されていてよい。急速に蒸発するエダクトの供給は、蒸気気泡の形成のために極めて良好な混合を生じる。個々のセグメント中での温度制御のためには、必要に応じて新しいエダクトが供給される。本明細書中では特に簡単に分離可能なエダクト(例えば、(メタ)アクリル酸エステル)が供給される。他の選択可能な方法によれば、従来の温度制御を使用してもよい。例えば、コンパートメントリアクターは、圧力下で運転されてもよい。
【0037】
本発明による装置は、精留塔をも含む。好ましくは、分離効率が塔の負荷量に依存しない塔が使用される。これは、可変の蒸発効率を可能にする。特に好ましくは、塔は、温度制御に使用されるエダクトを殆んど純粋な形で取り出すことを可能にする。それによって、塔(第1のセグメント)中への塔からの返送流は、減少され、それによって洗い流される効果は、減少されうる。更に、反応器の第1のセグメント中での反応温度は、幅広い範囲で調節されることができ、ひいては温度プロフィールのよりいっそう良好な適合が達成されうる。
【0038】
しばしばエステルの製造の際に使用される不均質な触媒は、最少の費用で反応混合物から除去されうることが見出された。本発明による装置中で触媒は、反応混合物と一緒に反応器に導通され、端部で生成物と一緒に搬出され、かつ濾別される。均一な触媒による反応の場合には、後接続された後処理工程で沈殿反応によって触媒は、問題なしに混合物から除去されうる。蒸留(塔、薄膜蒸発器)によって、未反応のエダクトは、生成物混合物と分離することができ、場合によっては処理に再度供給されうる。
【0039】
意外なことに、本発明による装置で配合物なしの生成物の急速な交換は、可能になることが見出された。エダクトのアルコールまたはアミンの供給管の流れ制御または遮断によって、反応器は、メタクリレートで洗浄されることができる。それによって、エダクトだけが反応器中に存在する。種々の処理パラメーター、例えばオンライン分析、温度を把握することによって、排除された生じる生成物の濃度減少は、制御されることができる。引続き、新しいエダクトアルコールまたは新しいエダクトアミンへの交換を直接に行なうことができる。それによって、製品の切り換えのための費用および時間的出費は、最少化される。
【0040】
意外なことに、本発明による方法で特に純粋な生成物を製造することができることが見出された。若干の平衡反応の場合には、副生成物としてマイケル付加生成物が生じる。例えば、(メタ)アクリレートは、メチルメタクリレートをアルコールとメタノールの放出下に連続的に反応させることによって製造される。生成物中には、通常、マイケル付加生成物1.25〜1.6%が見出される。本発明による方法により、マイケル付加生成物の含量は、1%未満、特に0.5%未満に減少される。
【0041】
本発明による装置は、有利に2〜10゜の勾配を有する。それによって、1つのセグメントから次のセグメントへの物質輸送は、簡易化される。その上、ポンプは、不要である。
【0042】
本発明による方法の特殊な実施態様は、(メタ)アクリレートと種々のアルコールまたはアミンとの連続的な反応を可能にし、この場合には、よりいっそう高いアルコール変換率またはアミン変換率が必要とされる。
【0043】
本発明による方法で製造された(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミドは、分離するのが困難なエダクトの極めて僅かな残留含量を示す。反応のためにアルコールまたはアミンが使用されてよい。その上、本発明による方法の場合、望ましくない後反応(例えば、重合)は、最少化される。モノエステル、ジエステル、トリエステルまたは高級エステルは、種々の触媒で製造されてもよい。
【0044】
後接続された薄膜蒸発器により、粗製生成物は、さらに精製されてよい。蒸留可能性生物を均一な触媒の触媒反応によって製造する場合には、生成物は、蒸留により、例えば薄膜蒸発器により触媒と分離されることができ、この触媒は、処理中に返送されることができる。
【0045】
コンパートメントリアクターの特に好ましい実施形式は、図1中に図示されている。
【0046】
本発明による方法または本発明による装置は、次の実施例によって詳説されるが、これに限定されることはない。
【0047】
記載される実施例は、次に記載される半技術的な試験装置中で実施された。試験装置の構造は、図1に略示されている実施形式に相応する。
【0048】
反応装置(7)として、蛇管により水蒸気で加熱される、変動可能な充填容量を有する非機械的に攪拌されるセグメント化された反応器(コンパートメントリアクター)が使用される。コンパートメントリアクターは、蒸気導管を介して上方に取り付けられた蒸留塔(6)と結合されている。精留塔(頭頂部圧力=1バール絶対)は、金網充填物(Metalldrahtgewebepackungen)を装備している。塔は、2つの範囲に分割されている。上方のセグメント中で、多くの場合に共沸物として生じる低沸点の反応生成物(10)での塔頂生成物の含量増加が生じ、この場合には、同時に側方流取出し管(9)により、温度制御に使用されるエダクトは、殆んど純粋なまま得られる。下方のセグメントは、アルコール/アミン(1)からの低沸点の不純物(触媒毒)の除去に使用され、高沸点物が上方のセグメントに到達することが回避される。場合によっては、アルコール/アミンは、直接に反応器中に供給されてもよい。側方流(9)として取り出されるエダクトは、緩衝容器(13)を経て個々のセグメントに温度調節して供給され、したがって反応器中で望ましい温度プロフィールが生じる。側方流として取り出される量が十分でない場合には、温度制御は、付加的に自動的に新しいエダクト(11)で行なわれる。重合反応を抑制するために、個々のセグメント中に空気(5)は、供給された。更に、エダクト中に溶解された重合抑制剤(14)は、塔の頭頂部で添加されるかまたは直接に反応器中に添加された。反応に必要とされる触媒(2)は、エダクト中に溶解して第1のセグメントに添加された。次の実施例は、100 lの反応容量に規定されている。物質流(MMA含量、アルコール含量、MeOH含量および生成物エステル含量)は、ガスクロマトグラフィー処理により測定された。
【0049】
例1
2−エチルヘキシルメタクリレートの連続的製造
2−エチルヘキシルメタクリレートの連続的製造のために、反応器(7)の第1のセグメント中にメチルメタクリレート中の10%テトラ−2−エチルヘキシルオルトチタネート(触媒)の溶液(2)2.2kg/hを供給した。更に、エダクトアルコール2−エチルヘキシルアルコール(1)44kg/hを塔(6)中に連続的に計量供給した。エダクトメチルメタクリレート(MMA)を温度制御しながら緩衝容器(13)から反応器のセグメント中に計量供給し、この緩衝容器を非連続的に必要に応じてメチルメタクリレート(MMA)(11)で充填した。反応器(6)中で常圧下および沸騰温度でエステル交換が行なわれた。反応の際に形成される低沸点副生成物メタノール(MeOH)をMMA/MeOH共沸物として塔の頭頂部(10)から除去した。反応器中の温度を下記の表の記載により規定し、かつ意図的にMMAを個々のセグメント中に計量供給することによって調節した:
【表1】

【0050】
82kg/hの生じる反応器排出流(12)は、次のような組成を有していた:2−エチルヘキシルメタクリレート80.2面積百分率、2−エチルヘキシルアルコール0.9面積百分率、MMA18.8面積百分率、副生成物0.1面積百分率。従って、2−エチルヘキシルメタクリレートに対する空時収量は、98.3%の計算によるアルコール変換率の場合に682kg/(m3h)であった。従って、2−エチルヘキシルアルコールに対する選択率は、殆んど100%であった。MMA/MeOH共沸物によるMMA損失を考慮しながらのメチルメタクリレートに対する選択率は、同様に殆んど100%であった。
【0051】
重合を阻止するために、蒸留塔(6)の全留出物流への安定剤溶液0.85 l/h(MMA中のヒドロキノンモノメチルエーテル1.25質量%)の連続的な添加が行なわれた。
【0052】
反応器排出流の後処理は、2工程の蒸留によって行なわれた。
【0053】
生じる最終生成物は、次の組成を有していた:2−エチルヘキシルメタクリレート98.5面積百分率、2−エチルヘキシルアルコール1.1面積百分率、MMA0.3面積百分率、副生成物0.1面積百分率。
【0054】
例2
均一な触媒の触媒反応によるメタクリル酸エステル13.5(ME−13.3)の連続的な製造
(Neodol 25のメタクリル酸エステル、Shell Chemical LP社)
Neodol 25のメタクリル酸エステル(ME−13.5)を連続的に製造するために、反応器(7)の第1のセグメントに10質量%のテトラ−イソプロピルオルトチタネートの含量を有するMMA/触媒供給原料(2) 2.0kg/hを供給した。更に、使用物質Neodol 25(1)50kg/hを連続的に塔(6)の下方のセグメント中に計量供給した。エダクトメチルメタクリレート(MMA)を温度制御しながら緩衝容器(13)から反応器のセグメント中に供給し、この緩衝容器を非連続的に必要に応じて"新しい"MMA(11)で充填した。反応器(6)中で常圧下および沸騰温度でエステル交換が行なわれた。反応の際に形成される低沸点副生成物メタノール(MeOH)をMMA/MeOH混合物(共沸物の形成)として塔の頭頂部(10)から除去した。
【0055】
温度制御されたMMAの計量供給によって、次の表中に記載された温度プロフィールが生じた:
【表2】

【0056】
80kg/hの生じる反応器排出流(12)は、次のような組成を有していた:ME−13.5 83.1面積百分率、Neodol 25 0.3面積百分率、MMA15.2面積百分率、副生成物1.4面積百分率(Neodolは、反応不可能な成分約0.8%を含有する)。従って、ME-13.5に対する反応器の空時収量は、99.5%の計算によるアルコール変換率の場合に665kg/(m3h)であった。従って、Neodol 25に対する選択率は、殆んど100%であった。MMA/MeOH共沸物によるMMA損失を考慮しながらのメチルメタクリレートに対する選択率は、同様に殆んど100%であった。
【0057】
重合を阻止するために、蒸留塔(6)の全留出物流への安定剤溶液2.4 l/h(MMA中のヒドロキノンモノメチルエーテル0.25質量%)の連続的な添加が行なわれた。
【0058】
粗製生成物(12)は、エステル交換生成物の含量が著しく増加し、未反応のエダクトの除去のために薄膜蒸発器により真空蒸留(120ミリバール)に掛けられた。なお触媒および微少量の重合抑制剤および高沸点副生成物で汚染された前記蒸留の塔底生成物から、触媒を希硫酸の添加によって沈殿させた。その後に、ソーダ液の添加によって酸の中和を行なった。更に、蒸発濃縮工程で真空(120ミリバール)下にMMAの残分ならびに沈殿によって添加された水を除去した。最後に、沈殿した触媒の除去を濾過によって行ない、この場合純粋な生成物が得られた。
【0059】
生じる最終生成物は、次のような組成を有していた:ME−13.5 97.8面積百分率、Neodol 25 0.5面積百分率、MMA0.1面積百分率、副生成物1.6面積百分率(Neodolは、反応不可能な成分約0.8%を含有する)。
【0060】
例3
不均一な触媒の触媒反応によるメタクリル酸エステル13.5(ME−13.3)の連続的な製造
(Neodol 25のメタクリル酸エステル、Shell Chemical LP社)
Neodol 25のメタクリル酸エステル(ME−13.5)を連続的に製造するために、反応器(7)の第1のコンパートメントに2.3質量%の水酸化リチウムの含量を有するMMA/触媒供給原料(2) 0.4kg/hを供給した。更に、使用物質Neodol 25(1)37kg/hを連続的に塔(6)の下方のセグメント中に計量供給した。エダクトメチルメタクリレート(MMA)を温度制御しながら緩衝容器(13)から反応器のセグメント中に供給し、この緩衝容器を非連続的に必要に応じて"新しい"MMA(11)で充填した。反応器(6)中で常圧下および沸騰温度でエステル交換が行なわれた。反応の際に形成される低沸点副生成物メタノール(MeOH)をMMA/MeOH混合物(共沸物の形成)として塔の頭頂部(10)から除去した。温度制御されたMMAの計量供給によって、次の表中に記載された温度プロフィールが生じた:
【表3】

【0061】
59kg/hの生じる反応器排出流(12)は、次のような組成を有していた:ME−13.5 82.9面積百分率、Neodol 25 0.3面積百分率、MMA15.1面積百分率、副生成物1.7面積百分率(Neodolは、反応不可能な成分約0.8%を含有する)。従って、ME-13.5に対する反応器の空時収量は、99.5%の計算によるアルコール変換率の場合に492kg/(m3h)であった。従って、Neodol 25に対する選択率は、殆んど100%であった。MMA/MeOH共沸物によるMMA損失を考慮しながらのメチルメタクリレートに対する選択率は、同様に殆んど100%であった。
【0062】
重合を阻止するために、蒸留塔(6)の全留出物流への安定剤溶液1.5 l/h(MMA中のヒドロキノンモノメチルエーテル0.25質量%)の連続的な添加が行なわれた。粗製生成物は、エステル交換生成物の含量が著しく増加し、未反応のエダクトの除去のために薄膜蒸発器により真空蒸留(120ミリバール)に掛けられた。塔底生成物から触媒を濾過によって除去し、この場合純粋な生成物が得られた。
【0063】
生じる最終生成物は、次のような組成を有していた:ME−13.5 96.6面積百分率、Neodol 25 0.4面積百分率、MMA1.0面積百分率、副生成物2.0面積百分率(Neodolは、反応不可能な成分約0.8%を含有する)。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明によるコンパートメントリアクターの特に好ましい実施形式を示す略図。
【符号の説明】
【0065】
1 アルコールまたはアミンの供給管、 2 触媒の供給管、 3 蒸気の供給管、 4 凝縮物の排出管、 5 空気の導入管、 6 精留塔、 7 コンパートメントリアクター、 8 冷却水の導入管および導出管を備えた凝縮器、 9 メチル(メタ)アクリレートの側方流取出し管、 10 メタノール/メチル(メタ)アクリレート共沸物排出管、 11 メチル(メタ)アクリレートの供給管、 12 粗製エステルの排出管、 13 メチル(メタ)アクリレートの緩衝容器、 14 安定性供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平衡反応による生成物を連続的に製造するための方法において、エダクトを精留塔を介してかまたは直接にコンパートメントリアクターに供給し、このコンパートメントリアクターの個々のセグメント中でエダクトの添加により温度を制御し、場合によっては触媒の添加によって反応を促進させ、生成物混合物を未反応のエダクトおよび触媒と一緒に搬出することを特徴とする、平衡反応による生成物を連続的に製造するための方法。
【請求項2】
配合物なしの生成物の交換を、エダクトの流れ制御、第2のエダクトでの反応器の洗浄および引き続く新しいエダクトへの交換によって行なう、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ダクトを精留塔の側方流として導出し、温度制御のために個々のセグメントに意図的に供給する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
請求項1記載の、平衡反応による生成物を連続的に製造するための方法において、(メタ)アクリレートとアルコールとの反応のために、エダクトを精留塔を介してかまたは直接にコンパートメントリアクターに供給し、個々のセグメント中への(メタ)アクリレートの添加により温度を制御し、場合によっては触媒の添加によって反応を促進させ、生成物混合物を未反応のエダクトおよび触媒と一緒に搬出することを特徴とする、請求項1記載の、平衡反応による生成物を連続的に製造するための方法。
【請求項5】
配合物なしの生成物の交換を、エダクトアルコール流またはエダクトアミン流の制御、(メタ)アクリレートでの反応器の洗浄および引き続く新しいエダクトアルコールまたは新しいエダクトアミンへの交換によって行なう、請求項4記載の方法。
【請求項6】
(メタ)アクリレートを精留塔の側方流として導出し、温度制御のために個々のセグメントに意図的に供給する、請求項4記載の方法。
【請求項7】
後精製工程を後接続する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
蒸留処理、濾過処理または沈殿処理および濾過処理を生成物混合物からの触媒の分離のためにコンパートメントリアクターに後接続する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
エダクトを予熱する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
未反応のエダクトを循環路内に導く、請求項1記載の方法。
【請求項11】
平衡反応による生成物を連続的に製造する装置において、セグメント壁、このセグメント壁中の開口を有するコンパートメントリアクターが種々の大きさのセグメントに分割されており、精留塔にエダクトを供給することができ、ならびに後接続された後処理工程で触媒を分離する、平衡反応による生成物を連続的に製造する装置。
【請求項12】
請求項11記載の、平衡反応による生成物を連続的に製造するための装置において、セグメント壁が薄板の全面に亘って開口を備えている、請求項11記載の、平衡反応による生成物を連続的に製造するための装置。
【請求項13】
請求項11記載の、平衡反応による生成物を連続的に製造するための装置において、セグメント壁が薄板の下方の三分の一に開口を備えている、請求項11記載の、平衡反応による生成物を連続的に製造するための装置。
【請求項14】
請求項4の記載により製造された(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミドにおいて、アルコール含量またはアミン含量が2%未満であることを特徴とする、請求項4の記載により製造された(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド。
【請求項15】
請求項4の記載により製造された(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミドにおいて、アルコール含量またはアミン含量が0.5%未満であることを特徴とする、請求項4の記載により製造された(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド。
【請求項16】
請求項4の記載により製造された(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミドにおいて、マイケル付加生成物の含量が1%未満であることを特徴とする、請求項4の記載により製造された(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド。
【請求項17】
請求項4の記載により製造された(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミドにおいて、マイケル付加生成物の含量が0.5%未満であることを特徴とする、請求項4の記載により製造された(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−507880(P2009−507880A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530455(P2008−530455)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065336
【国際公開番号】WO2007/031382
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】