説明

連続的動脈脈拍輪郭分析による心室一回拍出量分散のリアルタイム測定

【課題】好適な連続的動脈脈拍輪郭分析による心室一回拍出量分散のリアルタイム測定を提供する。
【解決手段】心室一回拍出量分散(SW)が、1つの完全呼吸周期325を含む算出間隔にある心臓周期の各々に対し、少なくとも2つの心臓周期の各々に亘って、測定された動脈血圧値の標準偏差の関数として推定される。1つの実施形態では最大標準偏差値および最小標準偏差値がこの算出間隔に亘って決定される。SWは最大標準偏差値と最小標準偏差値との差異と、平均標準偏差値との比に比例して推定される。別の実施形態ではSWは標準偏差値の標準偏差と、完全算出間隔に亘る平均標準偏差との比に比例して推定される。より一般的な心臓パラメーターまたは血行力学パラメーターの推定値の信頼性を改良するための前処理処置もまた開示され、近似関数312による平滑化、所定の調節率におけるサンプリング313およびローパスフィルタ処理314を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、同時係属中の2003年12月5日に出願された米国特許出願番号第10/728,705号、および2004年7月14日に出願された同第10/890,887号の一部継続出願であり、それらに対する優先権を主張し、そしてそれらは参考として援用される。
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、一般に心臓モニタリングに関し、そして特に心室一回拍出量分散(SVV)の推定およびこの方法を実行するシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
一回拍出量(SV)、心拍出量(CO)などは、疾患の診断のためのみならず、患者を含むヒト被験体および動物被験体の両方の状態の「リアルタイム」モニタリングのためにもまた重要な指標である。従って、これらの心臓パラメーターの1つ以上をモニターするための装置のない病院はほとんどない。多くの技法−侵襲的および非侵襲的、ならびに両者の組み合わせ−が使用され、そして文献ではなおより多くが提案されている。
【0004】
SVを測定するために用いられる技法の大部分は、通常、同様にCOの推定を提供するように容易に適合され得る。なぜなら、COは、一般に、モニタリング装置に通常利用可能である心拍数HRのSV倍として規定されるからである。逆に、COを推定する大部分の装置はまた、サブステップとしてSVを推定する。
【0005】
以下にさらに詳細に説明されるように、臨床的に重要な情報を提供するために有望であるなお別の心臓パラメーターは、一回拍出量分散SVVである。SVVを推定する1つの方法は、単に複数のSV値を収集し、そして測定間隔から測定間隔までの差異を算出することである。
【0006】
SVまたはCOを測定するための1つの一般的方法は、特定の流れ測定デバイスをカテーテル上に取り付けること、そして次にこのカテーテルを被験体に通すこと、およびそれを、このデバイスが被験体の心臓中またはその近傍にあるように操縦することである。いくつかのこのようなデバイスは、右心房のような、上流位置で材料またはエネルギー(通常熱)いずれかを大量瞬時(bolus)注入し、そして肺動脈のような、下流位置で注入された材料またはエネルギーの特徴に基づく流れを決定する。このような侵襲的技法(特に、熱希釈)の履行を開示する特許は:米国特許番号第4,236,527号(Newbowerら、1980年12月2日)(特許文献1);米国特許番号第4,507,974号(Yelderman、1985年4月2日)(特許文献2);米国特許番号第5,146,414号(McKownら、1992年9月8日)(特許文献3);および米国特許番号第5,687,733(McKownら、1997年11月18日)(特許文献4)を含む。
【0007】
なおその他の侵襲的デバイスは、公知のFick技法に基づき、これによれば、COは、動脈性および混合された静脈血の酸素添加の関数として算出される。
【0008】
侵襲的技法は明らかな欠点を有し、その主要な1つは、もちろん、心臓のカテーテル処置は、特に、それが実施される患者(特に集中治療患者)が、特定の実際に、または潜在的に重篤な症状のためにしばしばすでに入院中であることを考慮すれば、潜在的に危険であることである。侵襲的方法はまた、より明らかはない欠点を有している:熱希釈のようないくつかの技法は、それらが如何に良好に満足されるかに依存して測定の正確さに影響する注入された熱の均一な分散のような仮定に依存する。さらに、機器の血流中へのまさに導入がこの器具が測定する値(例えば、流速)に影響し得る。
【0009】
侵襲的および非侵襲的トランスデューサを用いるドップラー技法がまた、流れを測定するため、ならびに流れ測定からSVおよびCOを算出するために用いられる。これらシステムは、代表的には、高価であるのみならず、それらの正確さは、流れチャネルの直径および全体幾何学的形状の正確な知識に依存する。このような正確な知識は、しかし、特に、リアルタイムモニタリングが所望される条件下では、めったに可能ではない。
【0010】
従って、非侵襲的であるか、またはせいぜい最小侵襲的であり、かつ正確である両方の、SV、SVVなどのような心臓パラメーターを決定する特定の方法に対する長年に渡る必要性が存在している。最小侵襲または侵襲なくして、このようなパラメーターを正確に決定するための特に有望であることが証明されている1つの血液特徴は血圧である。
【0011】
最も知られた血圧を基にするシステムは、いわゆる脈拍輪郭法(PCM)に依存し、これは、拍動から拍動まで(beat−to−beat)の圧力波形の特徴から目的の心臓パラメーター(単数または複数)の推定値を算出する。PCMでは、代表的には、「Windkessel」(「空気チャンバーのドイツ語」)パラメーター(特徴的な大動脈のインピーダンス、コンプライアンス、および合計末梢抵抗)を用いて、大動脈の線形または非線形血行力学モデルを構築する。基本的に、血液流れは、インピーダンスが、並列に接続された抵抗および静電容量(コンプライアンス)の直列である回路における電流の流れに類推される。このモデルの3つの必要なパラメーターは、通常、複雑な較正プロセスにより実験的に、または編集された「人体計測」データ、すなわち、その他の患者または試験被験体の年齢、性別、身長、体重などについてのデータからのいずれかで決定される。米国特許番号第5,400,793号(Wesseling、1995年3月28日)(特許文献5)および米国特許番号第5,535,753号(Petrucelliら、1996年7月16日)(特許文献6)は、COを決定するために、Windkessel回路モデルに依存するシステムの代表である。
【0012】
PCMを基礎にするシステムは、SV由来の心臓パラメーターを、患者中にカテーテルを残す(通常、右心に)必要性なく、多かれ少なかれ連続的にモニターし得る。実際、幾つかのPCMシステムは、指カフを用いてとられた血圧パラメーター測定値を用いて作動する。PCMの1つの欠点は、しかし、それが由来するむしろ簡単な3パラメーターモデルよりも正確でないことである:一般に、例えば、動脈分岐によって引き起こされる複数のインピーダンスミスマッチに起因する圧力波反射の複雑なパターンのようなその他の現象を忠実に説明するためには、かなりより高い次数のモデルが必要とされ得る。上記基礎的モデルの正確さは、通常、十分に良好でないので、変化する程度の複雑さで、多くの改良が提案されている。
【0013】
公開された米国特許出願番号第20020022785A1(特許文献7)においてSalvatore Romanoによって開示された「心拍拍出量を測定する方法および装置」(2002年2月21日「心拍拍出量を測定する方法および装置」)は、全体圧力曲線の下の領域と、インピーダンスの種々の構成要素の線形組み合わせとの間の比の関数として、侵襲的または非侵襲的いずれかでSVを推定することにより、PCM技法に対し改良する異なる試みを提示している。圧力反射を説明するための試みにおいて、Romanoのシステムは、この圧力関数の固有にノイズのある派生物の正確な推定に依存するのみならず、一連の実験的に決定された平均圧力値に対する数値調節にもまた依存する。
【0014】
血行力学的に不安定な患者における流体投与は、それが、SV、CO、またはその他の血行力学的パラメーターをリアルタイムに測定することになるとき、しばしば、主要な挑戦である。初期治療戦略として流体救急蘇生法をとる決定のような、血液量不足症の正確な臨床的評価は困難である。具体的には、血行力学的に不安定な患者が一回拍出量および心拍拍出量における増加をともなって流体治療に応答するか否かを予測することは非常に困難である。さらに、流体過剰負荷は、有意な肺または心臓機能不全を引き起こし得、その一方、流体不足は、致命的な器官不全を生じる組織損傷を引き起こし得る。患者の流体応答性は、流体救急蘇生法治療の適切性を評価するため、および最適心臓性能および器官灌流を確実にするための主要かつ最も重要な決定因子である。
【0015】
心室前負荷の多くのベッドサイド指標は、流体応答性の予測指標として用いられている。右動脈圧(RAP)および肺動脈閉塞圧(PAOP)は、集中治療ユニット(ICU)で、流体を投与することを決定するとき、最も共通して用いられる。その他の心室前負荷のベッドサイド指標は、経食道的に心エコー検査法で測定された、右心室端部拡張期容量(RVEDV)および左心室端部拡張期容量(LVEDA)を含む。いくつかの研究および事例報告は、しかし、これらの心臓充填圧力を基礎にするこれらの静的指標値は乏しい予測値を有し、そしてしばしば、流体応答性について適切な情報を与えないことを示した。
【0016】
最近、いくつかの研究が、機械的人工呼吸の下で、心臓血管系と肺との相互作用から生じる、左心室一回拍出量で観察された分散をモニターすることの臨床的重要性を確認した。これらの一回拍出量分散(SVV)は、機械的人工呼吸に起因する胸腔内圧力における周期的増加および減少によって引き起こされ、これは、心臓前負荷および後負荷における分散に至る。SVVは、最近、広範に調査され、そしていくつかの研究は、種々の臨床状況において流体応答性の予測因子としてSVVを用いることの有用性を示している。SVVに基づくいくつかのその他のパラメーターが同様に有用であることが見出されている。特に、収縮期圧力分散(SPV)がそのデルタ−上昇(Δ上昇)およびデルタ−下降(Δ下降)構成要素が流体応答性の非常に有用な予測因子であることが見出されている。SPVは、一回拍出量における呼吸誘導分散に起因する動脈拍圧力における変化に基づく。最近調査されて、かつ流体応答性の有効な指標であることが示されたなお別のパラメーターは、脈圧分散(PPV)である。
【0017】
動脈拍動輪郭分析法における最近の発展は、より少ない侵襲性の、連続的でかつリアルタイムのSVVの推定のために特有の機会を開いた。これは、臨床医が、救命救急患者の血行力学状態のそれらの評価において、SVおよびCOとともにSVVを慣用的に用いることを可能にする。
【0018】
動脈拍圧における呼吸で誘導される変化に基づく流体応答性を測定するための現存するシステムは、ほとんどすべて2〜3の方法のみの1つに基づく。文献中に記載された幾つかの方法は、脈拍圧分散(PPV)、収縮期圧力分散(SPV)および一回拍出量分散(SVV)の以下の測定を含む。
【0019】
PPV推定は、以下の等式1の特定のバージョンに基づく:
PPV=100・[PPmax−PPmin]/[1/2(PPmax+PPmin)](等式1)
ここで、PPは測定された脈拍圧力、PPmaxおよびPPminは、それぞれ、1回の呼吸(吸息−呼息)周期の間の脈拍圧力の最大および最小のピークからピークまでの値である。
【0020】
SPV推定は、以下の等式2の特定のバージョンに基づく:
SPV=100・[SPmax−SPmin]/[1/2(SPmax+SPmin)](等式2)
ここで、SPは測定された収縮期圧力、SPmaxおよびSPminは、それぞれ、1つの呼吸周期の間の収縮期圧力の最大値および最小値である。
【0021】
同様に、SVV推定は、以下の等式3の特定のバージョンに基づく:
SVV=100・[SVmax−SVmin]/[1/2(SVmax+SVmin)](等式3)
ここで、SVは一回拍出量、SVmaxおよびSVminは、それぞれ、1つの呼吸周期の間の一回拍出量の最大値および最小値である。
【0022】
等式1、2、および3において、支配因子は、それぞれ、PP、SPおよびSVの最大値および最小値の平均である。換言すれば、2つの測定点のみであるにもかかわらず、これら支配因子は平均値である。この単純な極限値を平均することは、最も共通してこれら算出を単純にし、これらは、代表的には、手動で実施されている。しかし、より信頼性のある値は、測定間隔に亘るすべての測定値の平均、すなわち、PP、SP、およびSVの第1の統計的積率を用いることにより得られ得る。
【0023】
従って、PPV、SPVおよびSVVの各々について、上記個々の分散値式は、極限値(最大および最小)値の平均に対して所定範囲の値(最大−最小)の大きさを示す。
【0024】
SVVの詳細なモニタリングは、特有の困難性および利点の両方を有する。生理学的には、SVVは、心臓−呼吸相互作用のいくつかの複雑な機構に基づく。簡単には:機械的人工呼吸は左心室前負荷に変化を引き起こし、これは、左心室一回拍出量および収縮期動脈圧における明確な分散に至る。SVVのモニタリングは、容量投与に対する左心室応答の予測を可能にし、血液量不足症の正確な評価とともに、そして、多くの重要な状況で容量救急蘇生を行うための引き続く決定を支援する。
【0025】
上記に列挙した3つの方法に加え、一般に、「呼吸収縮期分散試験」と呼ばれるPerel法として知られる第4の方法がある。この方法は、短い無呼吸期間によって先行される変化する大きさの換気量を誘導することのような、気道圧力操縦を含む。米国特許番号第5,769,082号(Perel)は、この方法を記載している。圧力操縦の必要性のため、この方法は、リアルタイムモニタリングには適切ではない。
【0026】
上記に列挙した方法は、LiDCO Ltdの心臓モニターおよびPulsion Medical SystemsのPiCCOシステムのような特定のCOモニタリング機器で実施され(例えば、米国特許番号第6,315,735号(特許文献8)−−Joekenら、を参照のこと)、その両方は、等式3に依存する。しかし、本発明者らによる試験は、これらの方法はノイズが多く、それらが動脈拍圧力における呼吸誘導変化の正確なリアルタイムモニタニングを可能にしないことを示す。これら機器におけるSVV推定におけるこのノイズ問題の主要な理由は、SVが算出される方法である。例えば、上記PiCCOシステムは、重拍脈ノッチのような、血圧波形における特定点の決定を含む脈拍輪郭アルゴリズムに基づく拍動から拍動への一回拍出量推定法を用いる。血圧信号中の重拍脈ノッチおよびその他の点の正確な検出は、しかし、血圧波形およびその不安定な性質の不定に起因して困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第4,236,527号明細書
【特許文献2】米国特許第4,507,974号明細書
【特許文献3】米国特許第5,146,414号明細書
【特許文献4】米国特許第5,687,733号明細書
【特許文献5】米国特許第5,400,793号明細書
【特許文献6】米国特許第5,535,753号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2002/0022785号明細書
【特許文献8】米国特許第6,315,735号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
従って、必要なのは、せいぜい最小侵襲的技法を用い、現在可能なよりも、より正確にかつ頑健にリアルタイムでSVVを推定するための操作のシステムおよび方法である。本発明は、この必要性に合致する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
(発明の要旨)
本発明は、心臓一回拍出量分散(SVV)に等しいか、または誘導可能な心臓パラメーターを決定するための方法および関連システム履行を提供し:侵襲的または非侵襲的のいずれかで決定される、動脈血圧に対応する波形データセットが、決定され、そして少なくとも2つの心臓周期を含む算出間隔に亘り処理システムに入力され;この波形データのセットに対する標準偏差値が次いで各心臓周期に亘って算出され;そして上記SVVの推定値がこの標準偏差値の関数として算出される。
【0030】
異なる方法が、このSVV推定で用いられる値を算出するために用いられ得る。例えば、上記算出間隔に亘る最大標準偏差値および最小標準偏差値が決定され得、そして上記SVVの推定値が次いでこの最大標準偏差値および最小標準偏差値の関数として算出され得る。平均標準偏差値がまた、好ましくは、上記算出間隔に亘って算出され、そして上記SVVの推定値が次いで上記平均標準偏差値に対する最大標準偏差値と最小標準偏差値との間の差異に比例して算出され得る。1つの代替物として、上記処理システムは、上記算出間隔に亘る上記標準偏差値の標準偏差を算出し得、そして次にこの標準偏差値の標準偏差と、標準偏差値の平均との間の比に比例するとして上記SVVを推定する。
【0031】
血圧は、侵襲的または非侵襲的いずれかで、例えば、カテーテルに取り付けられた圧力トランスデューサまたは指カフを用いることにより測定され得る。この測定された動脈圧は、次いで、波形データセットに変換される。
【0032】
本発明者らは、本発明による上記に記載の方法がまた、上記心臓一回拍出量分散の算出された推定値に反比例する、右心室端部拡張期容量の推定値を算出するために用いられ得ることを見出した。
【0033】
有利であることが見出された本発明の1つの特徴によれば、少なくとも1つの算出間隔に亘って所定の測定基準に従って、上記算出された標準偏差値に最良に一致する近似関数が算出される。この近似関数は、次いで、間隔特異的なサンプリング速度でサンプリングされ、サンプリングされた近似値のセットを生成し、これは、次いで、それから上記SVVの推定値が算出される前にローパスフィルタ処理される。
【0034】
調節可能な速度で近似し、再サンプリングし、およびローパスフィルタ処理するこの方法は、SVV以外のその他の心臓または血行力学パラメーター、例えば、収縮期圧力分散、脈拍圧力分散などを推定することにおける使用にために拡張され得る。この場合、波形データセットが生成され、そして処理システムに入力され、いかなる測定パラメーターが選択されようとも対応する。一連の測定値が、次いで、この波形データセットから生成され;所定の計測基準に従って、これら測定値に最良に一致する近似関数(またはその特定の関数)が算出され;少なくとも1つの算出間隔の各々に亘り、サンプリングされた近似値のセットが、次いで、この近似関数を間隔特異的なサンプリング速度でサンプリングすることにより生成され;このサンプリングされた近似値は、次いで、ローパスフィルタ処理され;そして拍出量の推定値が、ローパス処理され、サンプリングされた近似値の関数として算出される。
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
心臓一回拍出量分散(SVV)に等しいか、または誘導可能な心臓パラメーターを決定する方法であって:
少なくとも2つの心臓周期を含む算出間隔に亘り動脈血圧に対応する波形データセットを入力する工程;
各心臓周期に亘る波形データセットについて標準偏差値を算出する工程;および
該標準偏差値の関数として該SVVの推定値を算出する工程、を包含する、方法。
(項目2)
前記算出間隔に亘り、最大標準偏差値および最小標準偏差値を決定する工程;および
前記SVVの推定値を、該最大標準偏差値および最小標準偏差値の関数として算出する工程、をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記算出間隔に亘り、平均標準偏差値を算出する工程;および
該平均標準偏差値に対し、前記最大標準偏差値と前記最小標準偏差値との間の差異に比例しているSVVの推定値を算出する工程をさらに包含する、項目2に記載の方法。
(項目4)
呼吸周期の境界を検出する工程;および
少なくとも1つの呼吸周期である算出間隔を設定する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記算出間隔に亘る標準偏差値の標準偏差を算出する工程;
該算出間隔に亘る標準偏差値の平均を算出する工程;および
該標準偏差値の標準偏差と該標準偏差の平均との間の比に比例するSVVの推定値を算出する工程をさらに包含する、項目4に記載の方法。
(項目6)
カテーテルに取り付けられた圧力トランスデューサを用いて動脈圧を測定する工程;および
測定された該動脈圧を波形データセットに変換する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目7)
動脈圧を非侵襲的に測定する工程;および
測定された該動脈圧を波形データセットに変換する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目8)
右心室端部拡張期容量の推定値を、前記心臓一回拍出量分散の算出された推定値に反比例するとして算出する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記算出間隔の少なくとも1つに亘る所定の測定基準に従って、算出された標準偏差値に最良に一致する近似関数を算出する工程:
間隔に特異的なサンプリング速度で該近似関数をサンプリングすることによってサンプリングされた近似値のセットを生成する工程;
該サンプリングされた近似値をローパスフィルタ処理する工程;および
前記SVVの推定値を、該ローパスフィルタ処理され、サンプリングされた近似値の関数として算出する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目10)
心臓一回拍出量分散(SVV)に等しいか、または誘導可能な心臓パラメーターを決定するためのシステムであって:
少なくとも2つの心臓周期を含む算出間隔に亘り動脈血圧に対応する波形データセットを決定および入力する配列;
各心臓周期に亘る波形データセットについて標準偏値差値を算出するため;および
該標準偏差値の関数として該SVVの推定値を算出するためのコンピューターで実行可能なコードを含む処理システム、
を備える、システム。
(項目11)
前記処理システムが:
前記算出間隔に亘り、最大標準偏差値および最小標準偏差値を決定するため;および
前記SVVの推定値を、該最大標準偏差値および最小標準偏差値の関数として算出するための、さらなるコンピューターで実行可能なコードをさらに含む、項目10に記載のシステム。
(項目12)
前記処理システムが:
前記算出間隔に亘り、平均標準偏差値を算出するため;および
該平均標準偏差値に対し、前記最大標準偏差値と前記最小標準偏差値との間の差異に比例しているSVVの推定値を算出するための、さらなるコンピューターで実行可能なコードをさらに含む、項目11に記載のシステム。
(項目13)
前記算出間隔が少なくとも1つの呼吸周期である、呼吸周期の境界を検出するための機構をさらに備える、項目10に記載のシステム。
(項目14)
前記処理システムが:
前記算出間隔に亘る標準偏差値の標準偏差を算出するため;
該算出間隔に亘る標準偏差値の平均を算出するため;および
該標準偏差値の標準偏差と該標準偏差の平均との間の比に比例するSVVの推定値を算出するための、さらなるコンピューターで実行可能なコードをさらに含む、項目13に記載のシステム。
(項目15)
動脈圧を測定するカテーテルに取り付けられた圧力トランスデューサ;および
測定された該動脈圧を波形データセットに変換する変換回路をさらに備える、項目10に記載のシステム。
(項目16)
非侵襲的動脈圧測定デバイス;および
測定された該動脈圧を波形データセットに変換する変換回路をさらに備える、項目10に記載のシステム。
(項目17)
前記処理システムが:
右心室端部拡張期容量の推定値を、前記心臓一回拍出量分散の算出された推定値に反比例するとして算出するためのさらなるコンピューターで実行可能なコードをさらに含む、項目10に記載のシステム。
(項目18)
前記処理システムが:
前記算出間隔の少なくとも1つに亘る所定の測定基準に従って、算出された標準偏差値に最良に一致する近似関数を算出するため:
間隔に特異的なサンプリング速度で該近似関数をサンプリングすることによってサンプリングされた近似値のセットを生成するため;および
前記SVVの推定値を、ローパスフィルタによって、ローパスフィルタ処理され、サンプリングされた近似値の関数として算出するために、ローパスフィルタおよびさらなるコンピューターで実行可能なコードをさらに含む、項目10に記載のシステム。
(項目19)
心臓または血行力学拍出量値を決定する方法であって:
測定パラメーターの測定値に対応する波形データセットを入力する工程;
該波形データセットから一連の測定値を生成する工程;
所定の測定基準に従って該測定値に最良に一致する近似関数を算出する工程;
少なくとも1つの算出間隔の各々に亘り、間隔に特異的なサンプリング速度で近似関数をサンプリングすることによってサンプリングされた近似値のセットを生成する工程;
該サンプリングされた近似値をローパスフィルタ処理する工程;および
該ローパス処理され、サンプリング処理された近似値の関数として該拍出量値の推定値を算出する工程を包含する、方法。
(項目20)
前記拍出量値が呼吸誘導分散を表示し:
複数の呼吸周期を識別する工程;
心臓周期を検出する工程;
呼吸周期である算出間隔を設定する工程;および
各算出間隔について、各個々の呼吸周期中の心臓周期の数の関数として間隔特異的なサンプリング速度を設定する工程、をさらに包含する、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記一連の測定値を生成する工程が、前記波形データセットを予備処理する工程を含む、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記波形データセットが血圧に対応し、各測定値が、各個々の算出間隔に亘る血圧の標準偏差の関数であるとして算出する工程をさらに包含する、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記拍出量値が、収縮期圧力分散である、項目19に記載の方法。
(項目24)
前記拍出量値が、脈拍圧力分散である、項目19に記載の方法。
(項目25)
心臓または血行力学拍出量値を決定するためのシステムであって:
測定パラメーターの測定値に対応する波形データセットを決定および入力するための配列;
ローパスフィルタ;
該波形データセットから一連の測定値を生成するため;所定の測定基準に従って該測定値に最良に一致する近似関数を算出するため;少なくとも1つの算出間隔の各々に亘り、間隔に特異的なサンプリング速度で近似関数をサンプリングすることによってサンプリングされた近似値のセットを生成し;該ローパスフィルタによってフィルター処理した後に、サンプリングされた近似値の関数として該拍出量値を算出するための、コンピューターで実行可能なコードを含む処理システム、を備える、システム。
(項目26)
前記拍出量値が呼吸誘導分散を表示し:
複数の呼吸周期を識別するための配列;
心臓周期を検出するための配列;をさらに備える項目25に記載のシステムであって、
ここで、該処理システムが、
呼吸周期である算出間隔を設定するため;および
各算出間隔について、各個々の呼吸周期中の心臓周期の数の関数として間隔特異的なサンプリング速度を設定するためのさらなるコンピューターで実行可能なコードをさらに含む、項目25に記載のシステム。
(項目27)
前記一連の測定値の予備処理が、前記波形データセットを予備処理することを含む、前記処理システム中に含まれる、予備処理モジュールをさらに含む、項目25に記載のシステム。
(項目28)
前記波形データを決定および入力するための配列が、血圧を決定するための機構を含み、前記波形データセットが血圧に対応する項目25に記載のシステムであって、
ここで、前記処理システムが、各測定値が各個々の算出間隔に亘る血圧の標準偏差の関数であるとして算出するためのさらなるコンピューターで実行可能なコードをさらに含む、システム。
(項目29)
前記拍出量値が、収縮期圧力分散である、項目25に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、1つの拍動から拍動への心臓周期に亘る複合血圧曲線の例示の例である。
【図2】図2は、図1における圧力波形の別個の時間表示を示す。
【図3】図3は、異なる呼吸周期に亘る一連の血圧信号(波形)を示す。
【図4】図4は、図3の波形における拍動から拍動への検出、すなわち、心臓周期あたりの個々の圧力波形の単離を示す。
【図5】図5は、圧力標準偏差曲線を示す。
【図6】図6は、別個の心臓または血行力学測定値の平滑化およびフィルター処理を含む必要に応じたデジタル前処理を示す。
【図7】図7は、本発明によるシステムの主要構成要素を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(詳細な説明)
(序論)
最も広い意味で、本発明は、複数の心臓周期に亘る血圧波形の標準偏差の関数として脈拍から脈拍の一回拍出量分散SVVを含む。勿論、本発明は、SVVから派生し得る任意のその他の心臓パラメーターを決定するために用いられ得る。
【0037】
本発明は、ヒトまたは動物にかかわらず、任意のタイプの被験体とともに有利に用いられ得る。本発明の最も一般的使用は、診断設定におけるヒトに対してであることが予期されるので、本発明は、「患者」との使用において以下に主に説明される。しかしこれは、例示のみにより、−−用語「患者」は、設定にかかわらず、ヒトおよび動物両方のすべての被験体を包含すべきことが意図される。
【0038】
その臨床的重要性のため、本発明の大部分の履行は、全身の動脈血圧の測定に基づくSVV推定値を生成することが予期される。しかし、右側の肺動脈におけるような、いずれの場所でとられる血圧(このような部位は、侵襲的心臓内測定必要とし得るけれども)の測定値を用いることも可能であり得る。
【0039】
(圧力波形)
図1は、ここでは、時間tdia0における拡張期圧力Pdiaの点から、収縮期圧力Psys圧力の時間tsysを通り、血圧がもう一度Pdiaに到達する時間tdia1までの単一の心臓周期に亘ってとられた動脈圧の波形P(t)の例を示す。
【0040】
本発明によれば、P(t)、またはP(t)に比例する任意の信号は、動脈樹における任意の点で侵襲的または非侵襲的に測定され得る。侵襲的機器、特にカテーテルに取り付けられた圧力トランスデューサが用いられるならば、任意の動脈が測定点として用いられ得る。非侵襲的トランスデューサの配置は、代表的には、機器それ自身によって指示される−指カフ、上腕圧力カフ、および耳たぶクランプの配置は明らかである。機器にかかわらず、最終的には、P(t)に対応(例えば、比例)する電気信号が生成されるか、または生成するようにされる。
【0041】
動脈血圧を直接測定するよりむしろ、血圧に比例している任意のその他の入力信号が用いられ得る。任意の必要なスケーリングまたは変換が、次いで、以下に説明される算出におけるいくつかの点の任意またはすべてで行われ得る。例えば、動脈血圧自身以外の特定の信号が入力として用いられるならば、その値が以下に説明される算出で用いられ前に、それは血圧に対して較正され得る。要するに、本発明が、いくつかの場合には、動脈血圧の直接測定とは異なる入力信号を用い得るという事実は、正確なSVV推定値を生成するその能力を制限しない。本発明に唯一必要なのは、目的の間隔(連続的を含む)に亘る患者の血圧に等しいか、または(比例しているような)少なくとも既知の関係を有する信号またはデータセットが、以下に説明される信号条件づけおよび種々の算出を実施する処理システム(以下を参照のこと)に利用可能にされなければならないということである。
【0042】
周知であるように、そして図2に示されるように、P(t)のようなアナログ信号は、任意の標準的なアナログ−デジタルコンバーター(ADC)を用いてデジタル値のシークエンスにデジタル化され得る。換言すれば、P(t)、t0≦t≦tfは、公知の方法および回路を用いて、デジタル形態P(k)、k=0、n−1、ここでt0およびtfは、それぞれ、算出間隔の初期時間および最終時間であり、そしてnは、通常、算出間隔に亘って均一に分布された、算出に含められ得るP(t)のサンプルの数である。
【0043】
(標準偏差)
連続的または別個の関数またはデータセットfの平均および標準偏差の算出は、非常に周知な手順であり、そして、通常、それぞれギリシャ文字μおよびσによって、または、大部分のプログラミング言語では、meanおよびstdのような関数名によって参照されて示される。従って、μ(f)およびmean(f)は、特定の間隔に亘る関数またはデータセットfの平均を表し、そしてσ(f)およびstd(f)は、その標準偏差を表す。
【0044】
ここで、k=1、・・・、nのような特定の間隔に亘る一連の血圧値P=P(k)の平均および標準偏差の算出を考える。平均μ(P)および標準偏差σ(P)を算出するための最も一般的な方法は、統計学の入門コースさえ知っているすべての者が知っているアルゴリズムを用いることであり:
μ(P)=mean(P)=1/m*SUM[P(k)]
(等式4)
σ(P)=std(P)=sqrt{1/(m−1)*SUM[P(i)−μ(P)]
(等式5)
ここで、sqrtは平方根を示し、そしてSUMは、i=0、・・・、(m−1)の間隔に亘る総和を示す。通常、周知の統計学的理由のため、1/mの代わりに1/(m−1)の倍率をかける分散(標準偏差の平方)に対する別個の値式に注意のこと。
【0045】
以下からより明瞭になるように、本発明は、好ましくはいくつかの心臓周期に亘る圧力波形の標準偏差の算出から、リアルタイムでSVVの頑健な推定値を生成する。標準偏差の標準的な「教科書」の式(等式5)が周知の統計学的理由のために好ましいが、標準偏差の受容可能に正確な値、またはそれに対応する値を提供する任意の式またはアルゴリズムがその代わりに本発明では用いられ得る。例えば、少なくとも血圧に基づく測定の文脈では、σ(P)に対する粗い近似は、最大測定圧力値と最小測定圧力値との差異を3で割ることにより算出され得る。さらに、時間に対するP(t)の一次微分の最大値、または最小値の絶対値は、σ(P)にほぼ比例する。
【0046】
本発明のこの論議では、「圧力」値および「標準偏差」値を用いる算出へのいくつかの参照がある。本発明の好ましい実施形態では、これらは、実際、血圧、特に動脈血圧の直接測定、および、等式5として上記で与えられた最も一般的な式を用いて算出されるような標準偏差である。しかし、「圧力」は、間接的測定値、または圧力に相関または対応またはそうでなければ関連し得る特定の生理学的特徴の測定値に等しく言及し得ることが理解されるべきである。同様に、「標準偏差」はまた、通常の式によって与えられ得るこの値に近似することが知られる任意の値に言及し得る;このような代替物の例は、先の段落に与えられている。
【0047】
(SVV算出)
心臓拍出量(CO)を算出するための標準的な式は、CO=SV・HRであり、これは、単に、心臓が1分あたりポンプ輸送する血液の量が、それが1周期あたりポンプ輸送する量(SV)に1分間の周期の数を乗じたものに等しいという関係を表しているに過ぎない。HRが与えられれば、問題は、勿論、一定値のSV、または平均SVの知識を想定していることである。圧力波形の拍動性が動脈樹中への心臓の一回拍出量によって生成されるという観察に基づけば、本発明者らの一人は、先に、SVが、動脈圧波形P(t)、またはそれ自身がP(t)に比例している特定のその他の信号の標準偏差に比例しているとして近似され得ることを発見した。従って、SVを推定する1つの方法は、以下の関係を適用することであり
SV=K・σ(P)=K・std(P)
(等式6)
ここで、Kは較正定数であって、そしてこれから、以下が導かれる:
CO=K・σ(P)・HR=K・std(P)・HR
(等式7)
式6を式3に代入して、std(P)の関数であるSVVのための式が得られる:
SVV=100・[std(P)max−std(P)min]/[1/2(std(P)max+std(P)min)]
(等式8)
ここで、std(P)maxおよびstd(P)minは、それぞれ、算出間隔に亘る圧力波形の標準偏差の最大値および最小値である。本発明の好ましい実施形態では、この算出間隔は呼吸サイクルである。
【0048】
上記で述べたように、測定間隔に亘る分母で圧力−mean(P)の統計学的平均を用いることは、一般に、最大値および最小値のみの平均を用いることより正確かつ頑健な推定値を提供するが、本発明は、この分母にいずれの平均をも用い得る。従って、式8の好ましい形態は:
SVV=100・[std(P)max−std(P)min]/mean(std(P))
(等式9)であり、ここで、mean(std(P))は、圧力波形それ自身の平均μ(P)ではなく、圧力波形の標準偏差の平均であるが、このパラメーターは、任意のstd(P)値の算出に含められ得る。また、測定された圧力信号P(t)を条件付けるため、そして次にそれを別個の形態に変換するために用いられる信号条件付け、および変換方法のタイプに依存して(以下を参照のこと)、等式9に倍率をかけることが必要であり得るか、または所望され得る。倍率をかけるか否か、およびそれをどのようにするかは当業者のシステム設計者には自明であり:その理由のため、任意の倍率因子は等式9には示されないが、推定され得る。
【0049】
図3は、ほぼ3つの呼吸サイクルに亘って測定され、またはそうでなければ獲得された動脈圧波形のシークエンスを示す。実際、このシークエンスは、動脈圧P(t)のサンプリングされた測定から由来するデータセットP(k)である。上記で述べたように、このP(k)値は、直接に、侵襲的または非侵襲的測定により得られ得るか、または遠隔モニターまたは予め記録されたデータセットからでさえ(この後者の可能性は、勿論、リアルタイムニモタリングは提供せず、そして大部分の場合、主に、比較または実験が請われ得る)、特定のその他の供給源からの入力であり得る。
【0050】
図4には、図3の波形に点が含められ、示される算出間隔に亘る各心臓周期(すなわち、各「拍動」)の開始を示す。各心臓周期の開始は、心拍数モニターであるか、またはそれを含む任意の公知のシステムを用いる任意の数の公知の方法で決定され得る。例えば、よくあることであるが、患者の心臓の電気的活動度はまた、心電図システム(EKG)によってモニターされている場合、各心臓手記の開始は、各R波の直後のサンプリングされた圧力値で生じると決定され得る。圧力を基にした脈拍数モニターがまた用いられ得、そして実際好ましい。なぜなら、それらは、次に、例えば、EKG信号より、血圧信号とより良好に同調され得るからである。
【0051】
そのような外部デバイスが存在しないならば、各心臓周期の開始はまた、例えば、各拍動は、単に、最小(拡張期)圧力Pdia(図1を参照のこと)の時間で開始すると仮定することにより、またはフーリエ変換もしくは微分分析を用いることにより、圧力波形P(k)自身からソフトウェア単独を用いて決定され得る。これらの場合には、心拍数「モニター」は、ソフトウェア構築物である。このような場合には、公知に技法を用いて、局所的圧力最小は、呼吸自身によって引き起こされず、実際に拡張期時間であることを確実にすることに注意を払うべきである。
【0052】
P(k、i)を、算出間隔中で第i番目の拍動−拍動動脈圧信号とする。標準偏差std(P(k、i))が、次いで、上記に記載のように算出され得、そして信号値(スカララー)結果を得る。上記算出間隔中の拍動−拍動動脈圧信号の各々に対する標準偏差値が同様に算出され得る。図5では、標準偏差曲線std(P(t))上の各点は、1つの拍動−拍動動脈圧信号に対する算出された標準偏差値を示す。
【0053】
等式9に従うSVVの算出は、各算出間隔について、std(P(k、i))の最大値、最小値および平均値を必要とする。所定の呼吸周期(図5には、ほぼ3つの呼吸周期が示されている)についてstd(P)maxおよびstd(P)minを得る1つの方法は、単に、この周期中で最大および最小の別個のstd(P(k、i))値をとることである。これらは、これら算出された値を単に走査することにより迅速に識別され得る。
【0054】
実際のモニタリングの間に、ノイズおよびその他の因子は、1つ以上のstd(P(k、i))値の信頼性を損なう。逸脱値および潜在的に信頼性のないstd(P(k、i))値は、パターンマッチングに基づくような公知のアルゴリズムを用いて検出され得る。次いで、内挿を用いて、この排除された値(単数または複数)について置換値を決定し得る。SVV以外のその他の心臓パラメーターおよび血行力学パラメーターの決定においてさえ適用可能な、信頼性を増加するために測定された値を平滑およびフィルター処理するための好ましい方法は以下に説明される。
【0055】
任意の標準的なアルゴリズムを用いて、std(P(k、i))からstd(P)maxおよびstd(P)minを識別し得る。最も単純な方法は、最も大きい値、および最も小さな値をとることである。あるいは、これら測定されたstd(P(k、i))点は、近似または平滑化関数を決定するための基礎として用いられ得(例えば、スプライン関数または多項式を用いて);これは、多くの場合において、図5に示されるstd(P)minのような、算出値間にあるstd(P(t))の極値の識別を可能にする。これら値のmean(std(P(k、i))=mean(std(P))は、標準的な統計学的式を用いて算出され得る(等式4を参照のこと)。図5はまた、第1の呼吸周期についてmean(std(P))の値を示す。一旦、std(P)maxおよびstd(P)minが所定の呼吸周期について決定されると、次いで、その呼吸周期に対するSVV値が、式8または式9のいずれかに従って容易に算出され得る。mean(std(P(k)))がまた算出される好ましい事例を仮定すると、式9を用いてより正確および頑健なSVVが算出され得る。SVVの算出された値(単数または複数)は、次いで、使用者のために表示され、記憶され、伝達され、そして/または任意の所望の方法でさらなる算出において用いられ得る。
【0056】
上記で述べたように、好ましい算出間隔は1つの呼吸周期である。これら周期の開始時間および終了時間は、任意の公知のデバイスを用いて検出され得る。本発明を必要とし得る多くの患者はまた人工呼吸され得、その場合には、この人工呼吸器自体が、異なる呼吸周期を分離するために本発明に必要なタイミング信号を提供し得ることに注目のこと。
【0057】
しかし、図3および4に示されるように、獲得された圧力波形それ自身のスートを分析することにより呼吸周期の境界を検出することもまた可能であり得:最も少ない拡張期圧力(圧力波形の「エンベロープ」の局所的最小値)の時間はまた、通常、呼吸周期の開始の印である。いくつかの状況では、しかし、このようなソフトウェアを基礎にした検出方法は、特に患者の呼吸が弱い場合、呼吸モニタリングを特に含む別のシステムからの信号を単に受容するより正確ではないかも知れない。
【0058】
(算出間隔−代替のSVV算出)
上記では、SVV値が各呼吸周期について推定されると仮定した。これは必ずしも必要ではない。むしろ、1つの呼吸周期より大きい算出間隔に亘って(モニタリングセッションの全体時間に亘ってでさえ)、単一のSVV値を算出するために、上記に記載された同じ方法論および等式を用いることが可能であり得る。これは、勿論、周期−周期SVV傾向を示さないが、各モニタリングセッションについてより正確な結果、そしてそれ故、より長い期間(セッション−セッションまたは日−日のような)の傾向のより良好な指標を提供し得る。しかし、常に、「極度」の間隔に亘って算出することは必要ではない。むしろ、SVV値は、1(上記に記載された場合)から上方の範囲にわたるnで任意のn周期時間について算出され得る。
【0059】
例えば、算出時間が1つの呼吸周期より大きいと仮定する。例示のために、図5に示される3つすべての呼吸周期が、単一の組み合わされた算出間隔を構成すると仮定する。この場合でさえ、算出されたstd(P(k))値(曲線上の「点」)のセットstd(P(k、i))、実際は、なお多い値が存在する。これらの標準偏差値は、それら自身標準偏差および平均(極値間の中央点)を有している。1つより多い呼吸周期に亘る算出間隔のために有用な本発明の代替の実施形態によれば、SVVは、従って、以下のように推定される:
SVV=C・100・std(std(P(k、i))/mean(std(P(k、i)) (等式10)
ここで、Cは、実験的に決定されたスケーリング定数である。本発明の1つの試験では、本発明者らは、この算出間隔に含まれる呼吸周期の数にかかわらず、Cが約2.7であることを決定した;通常の実験方法を用いて、本発明の任意の所定の履行においてCを決定し得る。
【0060】
この代替の複数周期の方法は、任意のstd(P)max値またはstd(P)min値を決定するためのシステムを必要としない。結果として、算出間隔に亘ってstd(P(k))値の内挿する近似関数を決定することは、なお有利ではない。
【0061】
(必要に応じた平滑化、再サンプリングおよびフィルター処理)
図6を参照して、そこでは、心臓または血行力学値Xの測定値X(k)のシークエンスが点としてプロットされている。上記に記載の本発明の実施形態では、X(k)は、std(P(k))で、心臓周期あたり1つの測定値である。しかし、ここで説明される必要に応じたデジタル前処理はまた、収縮期圧力または拍動圧のような任意のその他の心臓または血行力学値、またはドップラー超音波走査から得られる血液速度測定のような非圧力関連パラメーターにさえに適用可能である。
【0062】
これら測定値は、良好に規定されたプロフィールにきちんと納まることはほとんどない。なぜなら、基礎となるパラメーターは、ノイズのみならず、一定でない心拍数、異なる呼吸パターンなどのような元来の不規則性によって影響されるからである。多くの場合、この測定システムは、それ自身、信頼性のない測定値を警告、識別および排除可能であり得る。例えば、信号強度が所定の最小値未満に低下するならば、このような時間の間に測定されたパラメーターの値は、タグを付けられるか、または排除され得る。その他の場合には、信頼性のない値は、さらなる分析なしに検出不能であり得る。図6では、例えば、X(p)とマークされた測定点は、それは合理的に信頼性がないと推定され得る、明らかなパターンからかなり逸脱している。
【0063】
上記のように、逸脱した値を識別する1つの方法は、測定された点が、患者集団について実施されたコントロール研究、または同じ患者で測定された単に確認されたプロフィールから得られた、1つ以上の予め記憶されたテンプレートと比較されるパターン一致を用いることによる。任意の公知の様式で測定された、このテンプレート(単数または複数)から、特定の閾値量だけ逸脱する任意の点は、次いで排除され得る。
【0064】
本発明の好ましい実施形態では、各算出間隔について、任意の公知の測定基準、すなわち、任意の公知の意味で、最小2乗などに従って、測定点に最良に一致する間隔プロフィールを生成するように、近似関数(これは、1つより多い部分関数の連結または組み合わせであり得る)が生成される。例えば、スプライン関数(2つの例:Bスプライン関数およびBezier曲線)、減少構成要素フーリエ表示などのような多項式関数が、迅速に算出され得て、適切な近似関数を生成する。図6では、第1の呼吸間隔に対する近似関数は標識されたX(t)である。
【0065】
示された例では、算出間隔は呼吸周期である。その他の間隔が、目的のパラメーターに依存して選択され得、そして上記呼吸サイクルに関連する必要は全くない。それを行う場合でさえ、測定間隔が単一周期、または複数の単一周期の全体である必要はなく、これは、一般に、目的のパラメーターが呼吸によって影響される場合、大部分が意味あるものであるが、そしてまた一般に算出を単純にする。
【0066】
一旦、近似関数が算出されると、本発明の好ましい実施形態は、算出間隔あたりの値をローパスフィルタ処理する。デジタルローパスフィルタの理論および履行は周知である。サンプリングされた値のいくつかのセットが、入力として、それらの特定の重み付けされた線形または有理関数を算出するアルゴリズムに用いられ、変換されたフィルター処理された拍出量値のセットを生成する。代表的なデジタルフィルターは、一般に、サンプル間で一定の「距離」をとると仮定されるが、大部分のそのようなフィルターはまた、固定された係数を有する。
【0067】
しかし、本発明のこの局面によれば、このローパスフィルタへの入力値は、近似関数をサンプリングすることによって−おそらく(必ずしもそうではないが)実際の測定値が得られた速度よりなお高い速度で−得られる。図6では、これらサンプリング点は、近似曲線X(t)上で白丸によって示されている。近似曲線X(t)のサンプリング点は、次いで、デジタルローパスフィルタに入力され、このカットオフ周波数は、任意の公知の様式で選択され得、そして推定されるべき血行力学または心臓パラメーターの、および測定値X(k)の既知の性質に依存し得る。一旦、所望のカットオフ周波数が決定されるならば、適切なローパスフィルタの係数が任意の公知の様式で決定され得る。
【0068】
この手順は、たとえ、例えば、変化する心拍数のため、実際の測定された値が均一に間隔を置かれていないかも知れなくとも、これらサンプル点の均一なスペーシングを可能にすることに注目のこと。さらに、呼吸周期(ここでは、算出間隔として選択される)3に対するサンプリング速度は、周期1および2に対するそれより大きいことに留意すること。各所定の算出間隔に対するサンプリング速度を選択する1つの方法は、上記算出間隔に存在する実際の測定値と同じ数の近似曲線X(t)の間隔を置いたサンプルを選択することである。これは必ずしも必要ではないが、むしろこのサンプリング速度は、例えば、Nyquist基準を満足するよう、所望のように選択され得、そして用いられるデジタルローパスフィルタのタイプについてエイリアジング効果を低減する。
【0069】
本発明者らによる試験は、(近似関数を経由する)平滑化、再サンプリング(すなわち、アナログ−デジタル変換のために実施されたサンプリング後にあるサンプリング)、および調節可能係数のローパスフィルタ処理のこれら工程が、本発明のノイズを拒否し、そしてより信頼性のあるSVV値を生成する能力を改善することを示した。上記で述べたように、この手順はまた、SVV以外のその他の推定されたパラメーターについて用いられ得る。
【0070】
(システム構成要素)
図7は、本発明に従って、圧力を感知し、そしてSVVを算出するための上記の方法を履行するシステムの主要な構成要素を示す。本発明は、現存する患者モニタリングデバイス内に含められ得るか、または専用のモニターとして履行され得る。上記に述べられたように、圧力、または圧力に比例する特定のその他の入力信号が、2つの方法:侵襲的および非侵襲的のいずれか、または、実際に、両方で感知され得る。単に、本発明の最も一般的な履行であることが予期されるので、このシステムは、圧力に転換される特定のその他の入力信号に対向して動脈血圧を測定するとして説明される。
【0071】
図7は、簡潔さのために両方のタイプの圧力感知を示し:本発明の大部分の実際の適用では、いずれか1つ、またはいくつかの改変例が代表的には履行される。本発明の侵襲的適用では、従来の圧力センサー100が、カテーテル110上に取り付けられ、これは、ヒトまたは動物患者の身体の部分130の動脈120中に挿入される。このような動脈は、上行大動脈、または肺動脈であり得るか、または、侵襲性のレベルを低減するために、この動脈120は、大腿動脈、橈骨動脈または上腕動脈のような末梢であり得る。本発明の非侵襲的適用では、光容積脈波血圧プローブのような、従来の圧力センサー200が、任意の従来様式、例えば、指230の周りのカフまたは患者の手首上に取り付けられたトランスデューサを用いて外部に取り付けられる。図3は、両方のタイプを概略的に示す。
【0072】
センサー100、200からの信号は、任意の公知のコネクターを経由して、処理システム300への入力として通過され、このシステムは、1つ以上のプロセッサーおよびメモリ301のようなその他の支援ハードウェア、および通常信号を処理し、そしてコードを実行するシステムソフトウェア(図示せず)を含む。本発明は、改変された標準的なパーソナルコンピューターを用いて履行され得るか、またはそれは、より大きな専用のモニタリングシステム中に取り込まれ得る。本発明では、処理システム300はまた、必要に応じて、増幅、フィルター処理、レンジングなどのような通常の信号処理タスクを実施する条件付け回路302を含み得るか、またはそれに連結される。
【0073】
条件付けられ、感知された入力圧力信号P(t)は、次いで、従来のアナログ−デジタルコンバーターADC304によってデジタル形態に転換され、これは、クロック回路305を有するか、またはそれから時間参照をとる。良好に理解されるように、このADC304のサンプリング周波数は、圧力信号のエイリアジングを避けるように、Nyquist基準に対して選択されるべきであり;この手順は、デジタル信号処理の技術分野では非常に周知である。ADC304からの出力は、個別の圧力信号P(k)であり、その値は、従来のメモリ回路(図示せず)中に記憶され得る。
【0074】
信号前処理モジュール306が、好ましくは、慣用的に含められ、運動アーチファクト拒絶、パルスビート検出(必要であれば)のため、悪い拍動の拒絶のため、など、全般的(間隔−間隔に対して)ノイズ除去のためのデジタルフィルター処理のような公知の前処理を提供する。このモジュールはまた、全体に、または部分的にハードウェアで実施され得る。上記で述べたように、公知の回路が含められ得、例えば、信号強度が低すぎ、しかも送達された測定値に信頼性がないことを示す。従って、このモジュール306はまた、このADC304の前で、機能的に、全体的または部分的に配置され得る。
【0075】
値P(k)は、心臓周期のような算出間隔に亘りP(k)の標準偏差を算出するためのコンピューターが実行可能なコードを含むソウトウェアモジュール310に(通常、それによりメモリからアクセスされる)渡され、これは、心拍数を検出するか、または少なくとも心臓周期の開始の信号を送る任意の公知のデバイスまたはソフトウェアルーチン315によってトリガーされ得る。中程度の技量のプログラマーでさえ、このソフトウェアモジュール310を設計する方法を知っている。
【0076】
上記が好ましいと説明されるが、必要に応じて、近似関数を生成する工程(図6中のX(t)および関連する論議を参照のこと)、この生成された関数をサンプリングする工程、そして次にこのサンプリングされた値をローパスフィルタ処理する工程がある。ソフトウェアモジュール312、313、314が含められ、これらの機能を実施し、そして公知の技法を用いてプログラムされ得る。勿論、これらモジュールの任意またはすべては、単一本体のコードに組み合わせられ得:これらは、明瞭さのために別個に示されている。また、近似関数のための基礎として用いられる測定値または算出値がstd(P(k))でないならば、このモジュール310は、必要に応じて、置換されるか、再プログラムされるか、または省略され、適切な値を提供する。
【0077】
これらstd(P(k))値は、代表的にはメモリ301中に記憶されるが、次いで、各所定の算出/測定間隔について、最大、最小std(P(t))値であるstd(P)maxおよびstd(P)minを検出するため、および平均std(P(t))値であるmean(std(P(k))を算出するためのコンピューター実行可能なコードを含むソフトウェアモジュール320に渡され、これは、上記に記載のように、人工呼吸器のような呼吸デバイス325によってトリガーされ得るか、またはソフトウェアモジュールによって検出され得る。再び、中程度の技量のプログラマーでさえ、上記の説明が与えられれば、ソフトウェアモジュール320を設計する方法を知っている。また、上記に記載したように、上記算出間隔が1より多い呼吸周期に亘り拡大するよう選択されるならば、このモジュール320が省略され得るか、または少なくとも呼ばれないように、最大および最小std(P(t))値、std(P)maxおよびstd(P)minを算出することは必ずしも必要ではない。
【0078】
これら値std(P)max、std(P)minおよびmean(std(P(k))は、次いで、SVV算出モジュール330に渡され、これは、等式8または9に従って、選択された間隔についてSVVの推定値を算出する。複数周期間隔が設定されるならば、このSVV算出モジュール320は、モジュール310によって提供される上記std(P(k))値に対して直接操作し得、等式10に従って、SVVの推定値を算出する。
【0079】
図7に示されるように、任意またはすべてのソフトウェアモジュール306、310、312〜314、320、および330は、単一の推定ソフトウェア構成要素370内のルーチンとして単に実行され得、これは、勿論、所望により、処理システム300のその他のソフトウェア構成要素と組み合わせられ得る。
【0080】
本発明は、さらに、本発明の方法を実行するために、コンピューターユニットまたは処理システム300中にロード可能なコンピュータープログラムに関する。さらに、本発明に従って、上記種々の算出を実施し、そして関連する方法の工程を実施するために用いられる、種々のソフトウェアモジュール310、312〜314、315(ソフトウェア中で実行される場合)、320、330、または一般に370はまた、本発明が異なる処理システムにロードされ、およびそれによって実行されることを可能にするためにコンピューター読み取り可能な媒体上のコンピューター実行可能な指令として記憶され得る。
【0081】
一旦、SVV(またはその他の心臓または血行力学)推定値が算出されると、それは、使用者が見ることができるモニターのような任意に所望の出力デバイス500に渡され、そして任意の選択されたフォーマットで、表示され、記憶され、または伝達される。入力デバイス400がまた、好ましくは含められ、使用者が、例えば、管理および患者特有の情報を入力し、ディスプレイを調節し、算出間隔を選択するなどを可能にする。使用者が上記算出間隔を変更することが可能とされるならば、対応する情報が、推定ソフトウェア構成要素370に利用可能とされなければならず、その結果、等式8もしくは9、または等式10いずれかに従ってSVVを算出するとき、それは、このSVV推定モジュールが、必要な入力値を選択するよう指令し得る。
【0082】
(試験結果)
std(P(k))値からSVVを算出するための2つの異なる、しかし関連する方法が上記で説明される−1つは、SVVが単一の呼吸周期に亘って算出され、そしてもう1つは、1より多い呼吸周期に亘る算出間隔について単一のSVV値を算出するために用いられ得る。本発明者らは、動物の大腿動脈および橈骨血圧データに対し本発明の両方のこれらの実施形態を試験した。このデータは、いくつかのブタ実験から収集され、これらは実験室で実施された。実験の間に、左心室容量でいくつかの変化(容量注入または容量抽出)が誘導された。末梢抵抗(血管拡張または血管収縮)の分散が同様に誘導された。本発明の両方の実施形態は、類似のSVV推定値を提供することが見出されたのみならず、これらの推定値が比較のための先行技術の方法を用いて得た推定値に対し優れていることが見出された。
【0083】
(試験結果)
std(P(k))値からSVVを算出するための2つの異なる、しかし関連する方法が上記で説明される−1つは、SVVが単一の呼吸周期に亘って算出され、そしてもう1つは、1より多い呼吸周期に亘る算出間隔について単一のSVV値を算出するために用いられ得る。本発明者らは、動物の大腿動脈および橈骨血圧データに対し本発明の両方のこれらの実施形態を試験した。このデータは、いくつかのブタ実験から収集され、これらは実験室で実施された。実験の間に、左心室容量でいくつかの変化(容量注入または容量抽出)が誘導された。末梢抵抗(血管拡張または血管収縮)の分散が同様に誘導された。本発明の両方の実施形態は、類似のSVV推定値を提供することが見出されたのみならず、これらの推定値が比較のための先行技術の方法を用いて得た推定値に対し優れていることが見出された。
【0084】
(さらなる出力)
上記で述べたように、本発明は、SVVのみならず、SVVから誘導され得る任意の心臓パラメーターを推定するために用いられ得る。本発明者らは、試験において、例えば、一定の人工呼吸速度および一定の一回呼吸量の機械的人工呼吸の間に、右心室端部拡張期容量(EDV)がSVVに反比例することを発見した。従って:
EDV=c/SVV
(等式11)
ここで、cは、一定であり得る較正係数である。本発明によって提供されるSVV推定値は、従って、EDV、血管充填の程度に比例することが知られている拍出フラクションまたはその他の値を推定するための間接方法として用いられ得る。
【0085】
等式11における較正係数cは、心室収縮性および心室伸展性(コンプライアンス)のようないくつかのパラメーターに依存する。一般に、cは、患者の血行力学状態に依存する。従って、再較正が、患者の血行力学状態が変化する毎に、または血行力学不安定の期間の間に実施されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−11218(P2012−11218A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−196457(P2011−196457)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【分割の表示】特願2007−521682(P2007−521682)の分割
【原出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(500218127)エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション (93)
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
【Fターム(参考)】