説明

遅延希薄噴射用噴射器

【課題】遅延希薄噴射用の燃料噴射器を提供する。
【解決手段】燃料噴射器(10)は、外側胴体(30)と、先細部分(401)を含み、その中に先細環状通路(50)を画成する先細管状胴体(40)であって、当該先細管状胴体(40)は前記外側胴体(30)の内側に配置されて、前記外側胴体(30)の内面と当該先細管状胴体(40)の外面との間に外側環状通路(60)を画成しており、また前記環状通路(50、60)の各々が、そのそれぞれの入口に流体(70)を受け取って、該流体をそのそれぞれの出口へ向けて流れるように導くようになっている、当該先細管状胴体(40)と、少なくとも前記先細管状胴体(40)の前記先細部分(401)を通って、前記先細管状胴体(40)の円周方向の湾曲に対して実質的に接線方向に前記先細環状通路(50)へ燃料(101)を供給する燃料管路(100)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本書で開示する内容は、予混合噴射器を持つ燃焼器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タービン・エンジン、特にガスタービン・エンジンにおいては、ガスの様な燃料及び圧縮空気が燃焼器に供給され、そこで燃焼が生じる。この燃焼から発生された高温流体が移行部材を通ってタービンに導かれて、動力及び/又は電気を発生させる。一般に、圧縮空気は圧縮機から燃焼器へ供給されて、そのヘッドエンドへ向かって上流へ進み、該ヘッドエンドで他の燃料と混合される。
【0003】
燃料/空気混合物が燃焼したとき、窒素酸化物(NOx)のような或る汚染物質が生成される。NOxは一般に望ましくないので、NOxの生成及び排出を少なくするための努力が近年なされている。場合によっては、このような努力は空気及び燃料のより完全な混合を行うことに向けられている。このような及び/又は他の場合には、遅延希薄噴射(late lean injection ;LLI)も採用されている。
【0004】
LLIの目的は、燃焼器内の燃料及び空気の滞留時間を短くすることによってNOxの形成を低減することである。これを達成するには、燃料及び空気の一部分を、主燃焼域から下流の軸方向位置において燃焼器の中に噴射する。このやり方では、LLI燃料及び空気は燃焼するが、その他の場合に起こり得るほど遠くまで燃焼器中を進行しない。このような場合、充分な燃料及び空気の混合が生じる限り、LLI燃料及び空気は一般に、他の場合に生じるほど多量のNOxを形成しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6513329号
【発明の概要】
【0006】
本発明の一面によれば、燃料噴射器を提供し、該燃料噴射器は、(1)外側胴体と、(2)先細部分を含み、その中に先細環状通路を画成する先細管状胴体であって、当該先細管状胴体は前記外側胴体の内側に配置されて、前記外側胴体の内面と当該先細管状胴体の外面との間に外側環状通路を画成しており、また前記環状通路の各々が、そのそれぞれの入口に流体を受け取って、該流体をそのそれぞれの出口へ向けて流れるように導くようになっている、先細管状胴体と、(3)少なくとも前記先細管状胴体の前記先細部分を通って、前記先細管状胴体の円周方向の湾曲に対して実質的に接線方向に前記先細環状通路へ燃料を供給する燃料管路と、を含む。
【0007】
本発明の別の面によれば、燃料噴射器を提供し、該燃料噴射器は、(1)外側胴体と、(2)前記外側胴体の長さと同様であるか又はそれよりも長い長さを持つ先細管状胴体であって、当該先細管状胴体は、先細部分を含み、その中に先細環状通路を画成し、且つ前記外側胴体の内側に配置されて、前記外側胴体の内面と当該先細管状胴体の外面との間に外側環状通路を画成しており、また前記環状通路の各々が、そのそれぞれの入口に流体を受け取って、該流体をそのそれぞれの出口へ向けて流れるように導くようになっている、先細管状胴体と、(3)少なくとも前記先細管状胴体の前記先細部分を通って、前記先細管状胴体の円周方向の湾曲に対して実質的に接線方向に前記先細環状通路へ燃料を供給する燃料管路と、を含む。
【0008】
本発明の更に別の面によれば、遅延希薄噴射(LLI)燃焼器を提供し、該遅延希薄噴射(LLI)燃焼器は、主流体流を発生する燃焼が生じる上流区域からの主流体流が進行する通路を画成するライナーと、前記上流区域より下流で前記ライナーに結合された燃料噴射器とを含む。前記燃料噴射器は、(1)外側胴体と、(2)先細部分を含み、その中に先細環状通路を画成する先細管状胴体であって、当該先細管状胴体は前記外側胴体内に配置されて、前記外側胴体の内面と当該先細管状胴体の外面との間に外側環状通路を画成しており、また前記環状通路の各々が、そのそれぞれの入口に流体を受け取って、前記ライナーの内側に配置されたそのそれぞれの出口へ向けて該流体を流れるように導くようになっている、先細管状胴体と、(3)少なくとも前記先細管状胴体の前記先細部分を通って、前記先細管状胴体の円周方向の湾曲に対して実質的に接線方向に前記先細環状通路へ燃料を供給する燃料管路と、を含む。
【0009】
これらの及び他の利点及び特徴は、図面を参照した以下の説明からより一層明らかになろう。
【0010】
発明と見なされる内容は「特許請求の範囲」に具体的に指摘して明瞭に記載している。本発明の前述の及び他の特徴及び利点は、添付の図面を参照した以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、燃料噴射器の斜視図である。
【図2】図2は、別の実施形態による燃料噴射器の斜視図である。
【図3】図3は、図1又は図2の燃料噴射器の軸に沿って見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について、例として図面を参照して、利点及び特徴と共に詳しく説明する。
【0013】
図1〜図3について説明すると、燃料及び空気が燃焼器内で、より詳しく述べると、遅延希薄噴射(LLI)燃焼器内で、混合する程度を増大させるために、燃料噴射器10が設けられており、この燃料噴射器10は燃焼器ライナー20に流体結合される。燃焼器ライナー20は、それに沿って主流体流が上流区域25(これは、LLI燃焼器の場合、燃焼域とすることができる)から進行する内部21を画成するように形成される。
【0014】
燃料噴射器10は、環状内面31及び環状外面32を持つ外側胴体30と、環状内面41及び環状外面42を持つ先細管状胴体40と、燃料管路100とを含む。先細管状胴体40は先細部分401を含み、該先細部分401は、その第1の端からその第2の端まで断面積が減少していて、その中に先細環状通路50を画成するように形成される。先細管状胴体40は外側胴体30の内側に配置され、このような場合、先細管状胴体40及び外側胴体30は協働して、外側胴体30の内面31と先細管状胴体40の外面42との間に外側環状通路60を画成する。
【0015】
先細環状通路50及び外側環状通路60の両方は、そのそれぞれの入口81及び80に、圧縮機から抽出された圧縮空気のような流体70を受け取って、該流体70をそのそれぞれの出口91及び90へ向けて流れるように導く。入口81及び80は実質的に互いと同一平面上にあるようにするか、さもなければ燃焼器ライナー20を通る主流体流に対して実質的に同様な半径方向位置に配置することができる。
【0016】
外側環状通路60の出口90は、主流体流の中へ所定の深さまで燃焼器ライナー20に貫入する。先細環状通路50の出口91は、出口90の主流体流の中へ少なくとも所定の深さまで燃焼器ライナー20に貫入する。場合によっては、出口91は、燃焼器ライナー20を通る主流体流の中へより更に延在する。すなわち、先細管状胴体40は、外側環状胴体30の長さL2 に等しいか又はそれよりも長い長さL1 を持つことができる。
【0017】
燃料管路100は、少なくとも先細管状胴体40の先細部分401を通って先細環状通路50へ燃料101(例えば、天然ガス、合成ガス及び油の内の一種以上)を供給する。燃料101は、図3に示されているように、先細管状胴体40の円周方向の湾曲に対して実質的に接線方向に供給される。実質的に接線方向に供給されることによって、燃料101及び流体70は互いと混合する。この混合は、少なくとも部分的に燃料101と流体70との間に生じる剪断力に因るものであり、その結果として先細環状通路50内に燃料101及び流体70のサイクロン状の流れが生じる。サイクロン状の流れの圧力が先細管状胴体40の先細の構成によって維持される。
【0018】
先細環状通路50が外側環状通路60よりも長い場合、流体70及び燃料101の混合物は、外側環状通路60からの流体70の噴射の比較的高い半径方向位置と比べて、燃焼器ライナー20の比較的低い半径方向位置で主流体流の中へ噴射することができる。このような場合、外側環状通路60から噴射される流体70は、流体70/燃料101の混合物と燃料噴射器10より下流の燃焼器ライナー20の内面との間に介在配置された障壁層として作用することができる。この障壁層は、燃焼器ライナー20の内面を高温の流体から遮蔽することができ、また、場合によっては、燃焼器ライナー20と流体連通関係に配置された移行部材(TP)の中まで下流へ延在することができる。
【0019】
燃料管路100の末端102は、先細管状胴体40の内面41と同一平面上にあるようにして、内面41が末端102で実質的に滑らかにさえなるようにすることができる。
【0020】
実質的に接線方向は、先細環状通路50及び外側環状通路60を通る流体の流れの支配的な方向に対して横断する向きにすることができる。実施形態によっては、実質的に接線方向は、先細環状通路50及び外側環状通路60を通る流体の流れの支配的な方向に対して実質的に直角の向きにする。他の実施形態では、燃料管路100の方向は、燃料101が、先細環状通路50及び外側環状通路60を通る流体の流れの支配的な方向に対して上向き傾斜で又は下向き傾斜で先細環状通路50に入るように定めることができる。
【0021】
燃料管路100は、外側胴体30の外部から外側環状通路60を通り、次いで先細管状胴体40を通って延在する配管で形成することができ、また複数の個別の燃料管路110、111及び112を含むことができる。これらの個別の燃料管路の数は、2つ、3つ又はそれより多くして、各々の管路は一定の又は不規則な間隔で分離することができる。個別の燃料管路110、111及び112は、互いに対して横断方向に配向し、また同一平面上に又は互いからづらして配置することができる。個別の燃料管路110、111及び112はまた、実質的に真っ直ぐで且つ先細環状通路50への燃料供給方向と一致させることができる。
【0022】
以上、本発明を限られた数の実施形態のみに関連して詳しく説明したが、本発明がこのような開示した実施形態に制限されるものではないことを理解されたい。むしろ、本発明は、これまで説明していないが本発明の精神及び範囲に相応する任意の数の変形、変更、置換又は等価な構成を取り入れるように修正することができる。また、本発明の様々な実施形態を説明したが、本発明の様々な面が説明した実施形態の幾つかのみを含み得ることを理解されたい。従って、本発明は上記の説明によって制限されるものと考えるべきではなく、「特許請求の範囲」の項に記載の範囲によって制限されるに過ぎない。
【符号の説明】
【0023】
10 燃料噴射器
20 燃焼器ライナー
21 内部
25 上流区域
30 外側胴体
31 環状内面
32 環状外面
40 先細管状胴体
41 環状内面
42 環状外面
50 先細環状通路
60 外側環状通路
70 流体
80 入口
81 入口
90 出口
91 出口
100 燃料管路
101 燃料
102 末端
110、111、112 個別の燃料管路
401 先細部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側胴体(30)と、
先細部分(401)を含み、その中に先細環状通路(50)を画成する先細管状胴体(40)であって、当該先細管状胴体(40)は前記外側胴体(30)の内側に配置されて、前記外側胴体(30)の内面と当該先細管状胴体(40)の外面との間に外側環状通路(60)を画成しており、また前記環状通路(50、60)の各々が、そのそれぞれの入口に流体(70)を受け取って、該流体をそのそれぞれの出口へ向けて流れるように導くようになっている、先細管状胴体(40)と、
少なくとも前記先細管状胴体(40)の前記先細部分(401)を通って、前記先細管状胴体(40)の円周方向の湾曲に対して実質的に接線方向に前記先細環状通路(50)へ燃料(101)を供給する燃料管路(100)と、
を有する燃料噴射器(10)。
【請求項2】
前記流体(70)は圧縮空気を有している、請求項1記載の燃料噴射器(10)。
【請求項3】
前記燃料(101)は、少なくとも天然ガス、合成ガス及び油の内の一種以上を有している、請求項1記載の燃料噴射器(10)。
【請求項4】
前記燃料(101)及び前記流体(70)は、前記先細環状通路(50)内でサイクロン状に流れる混合物を形成する、請求項1記載の燃料噴射器(10)。
【請求項5】
前記燃料管路(100)の末端(102)は前記先細管状胴体(40)の内面(41)と同一平面上にある、請求項1記載の燃料噴射器(10)。
【請求項6】
前記実質的に接線方向は、前記環状通路(50、60)を通る流体の流れの支配的な方向に対して横断する向きである、請求項1記載の燃料噴射器(10)。
【請求項7】
前記実質的に接線方向は、前記環状通路(50、60)を通る流体の流れの支配的な方向に対して実質的に直角の向きである、請求項1記載の燃料噴射器(10)。
【請求項8】
前記燃料管路(100)は複数の個別の燃料管路(110、111、112)を有している、請求項1記載の燃料噴射器(10)。
【請求項9】
前記複数の個別の燃料管路は実質的に一定の間隔で互いから分離されている、請求項8記載の燃料噴射器(10)。
【請求項10】
前記複数の個別の燃料管路の各々は、互いに対して横断方向に配向されている、請求項8記載の燃料噴射器(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−242123(P2011−242123A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105756(P2011−105756)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】