説明

遊星歯車減速装置内へのグリース供給機構、遊星歯車減速装置、及び画像形成装置

【課題】簡単にして確実、かつ遊星歯車減速装置の高精度な回転特性を劣化させることなくグリースの供給を行い、ギヤ摩耗なくし、従来に比べて飛躍的な高耐久性を獲得できる、遊星歯車減速装置内へのグリース供給機構を提供する。
【解決手段】グリース補給手段130が有するグリース溜まり部132とグリース返し部133を遊星歯車減速装置110のハウジング111内に設ける。扇状部材131の短い側の円弧状部分であるグリース返し部133をモータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部の上流側に近接して設け、グリース溜まり部132を遊星歯車114の入力側の面に対向させて配置する。そして、遊星歯車114と固定内歯歯車112との噛み合い部から飛散したグリースを、グリース溜まり部132で受け、グリース返し部133を介して、モータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部の入力側のモータギヤ部127の周面に滴下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車減速装置内へのグリース供給機構、このグリース供給機構を備えた遊星歯車減速装置、及びこれらを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯車を用いた各種伝動装置の噛み合い部の円滑な動作や耐久性を高めるために、潤滑剤を供給する多様な潤滑剤供給機構が知れれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ハイポイドギヤ装置等の噛み合い部に糸状体を介して潤滑油を、供給する給油装置の構成が開示されいる。また、特許文献2、3には、ギヤボックスに潤滑油を充満させ、ポンプによる圧力、噛み合い部の回転による遠心力等によりギヤボックス内の潤滑油を噛み合い部に供給する構成が開示されいる。また、特許文献4には、歯車の外周に溝を環状に形成し、溝内に潤滑油を充填し、その上から含油リングを嵌め込んで相手方のローラチェーンが含油リングを押圧することにより潤滑油を噛み合い部に供給する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したいずれの構成もオイルの様な流動性潤滑油の使用である。そのため、例えば、特許文献1の構成は、金属とプラスチック(SUSとPOM)に最適な潤滑剤としての高粘性体であるグリースが選択される場合には、毛細管現象を応用することが出来ないので適用できない。また、特許文献2、3の構成は、グリースなどの高粘性体では一旦回転が開始されると、噛み合い部からグリースが押し出され、噛み合い部へのグリースの十分な量の供給ができなくなり、経時的な潤滑効果は期待出来ない。したがって、特許文献1の構成と同様に、金属とプラスチック(SUSとPOM)に最適な潤滑剤としてのグリースが選択される場合には、適用できない。
【0005】
また、特許文献4の構成は、グリースなどの高粘性体にいついても適用可能ではあるが、歯車の外周に溝を環状に形成し、溝内に潤滑油を充填して、その上から含油リングを嵌め込み、相手方のローラチェーンで押圧するので、外力が歯車の出力軸に作用してしまう。外力が出力軸に作用すると、出力軸に大きなトルク変動が生じるため、出力軸の回転精度が0.2%P−Pの高精度を狙う様な場合には適用することができない。また、いずれの構成もグリース供給装置が大掛かりなものとなってしまう。
【0006】
したがって、上述した例の構成は、例えば、画像形成装置のMFP機(MultiFunction Printer機)やPP機(production printing機)の感光体ドラム等の減速装置に用いる、小型の遊星歯車減速装置に高粘度グリースを供給して長寿命化する構成としては適用できなかった。
【0007】
そこで、従来の高精度な回転精度が要求される、画像形成装置のMFP機やPP機の感光体ドラム等の減速装置に用いる、小型の遊星歯車減速装置では、組み立て時に遊星歯車減速装置内にグリースを充填していた。これは、次の理由による。
【0008】
例えば、感光体ドラム等に用いる、2段構成の遊星歯車減速装置の歯車列において、歯形部の摩耗をきたす部位は、初段、つまり1段目の2000〜2500rpmの高速で回転するφ6程度の金属製のモータ軸に形成された太陽歯車と樹脂製遊星歯車である。樹脂製遊星歯車は、太陽歯車に噛み合い、かつ固定内歯歯車に噛み合いながら公転する。一般に、樹脂同士の噛み合い駆動より、金属と樹脂の噛み合いによる駆動の方が摩耗量は大きいため、これを軽減するためにグリースを充填した運転が行われる。
【0009】
近年のMFP機やPP機では、従来機に比べてプリントボリュームに加え、プリントスピードも高速であるために寿命を延ばすための工夫が必要となってきた。PP機にあっては、従来機に比べて一桁多いプリントボリュームに加え、プリントスピードもより高速であり、1万時間以上の耐久性確保が要求されている。また、近年のMFP機に対する高速化、大量プリントの要求の高まりから、近い将来、現在のPP機に要求されている耐久性確保が、MFP機に要求されるようになると思われる。
【0010】
しかし、画像形成装置の稼動を開始して暫く時間が経過すると、噛み合う歯面から、両サイドにグリースが押し出されて、噛み合い部でグリースの空隙が生じてしまい、潤滑し続ける効果が大きく減少してしまう。そこで従来は、メンテナンス作業員が定期メンテナンス時等に、遊星歯車減速装置に設けた、グリース補給孔から注入針を使って、空隙が生じた部分にグリースを注入して補給して対処することが多かった。しかし、空隙が生じた部分へのグリースの補充作業が適切でなかったり遅れてしまうと、金属と樹脂の噛み合い部分で磨耗が進んでしまい、遊星歯車減速装置の耐久性が低くなってしまうことがあった。
【0011】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、簡単にして確実、かつ遊星歯車減速装置の高精度な回転特性を劣化させることなくグリースの供給を行い、ギヤ摩耗なくし、従来に比べて飛躍的な高耐久性を獲得できる、遊星歯車減速装置内へのグリース供給機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも、ハウジングに固定された固定内歯歯車と、太陽歯車と、前記固定内歯歯車と前記太陽歯車とに噛み合う複数の遊星歯車と、複数の前記遊星歯車を回動自在に支持すると共に、前記ハウジングに回動自在に支持されたキャリアと、を有する遊星歯車減速装置内にグリースを供給するグリース供給機構において、前記遊星歯車の側面に対向し、前記ハウジング内に飛散したグリースを回収するグリース溜まり部と、前記太陽歯車と前記遊星歯車との噛み合い部近傍に位置し、前記グリース溜まり部が回収したグリースを、前記太陽歯車の前記遊星歯車との噛み合い部近傍に滴下するグリース返し部と、を有するグリース補給手段を備えていることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のグリース供給機構において、グリース補給手段が有するグリース溜まり部及びグリース返し部は、太陽歯車の回転軸を中心に上方に開くように形成された扇状部材を構成する部分であり、前記グリース返し部は、前記太陽歯車の周面に近接する部分を、前記グリース溜まり部は該太陽歯車の周面から離れた部分を構成しており、前記グリース溜まり部及び前記グリース返し部は、前記太陽歯車及び前記遊星歯車の回転に対して静止状態を維持するように、該太陽歯車から離れた側で遊星歯車減速装置のハウジングに固定されていることを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のグリース供給機構において、
グリース溜まり部及びグリース返し部は、振動可能に構成されていることを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一に記載のグリース供給機構において、グリース補給手段が有するグリース溜まり部及びグリース返し部は、高熱伝達率材料からなり、前記グリース補給手段の前記グリース溜まり部から延出して形成された部分が、同時に遊星歯車減速装置のハウジング内に組み込まれるモータ軸を備えた、駆動モータの一部に接触して取り付けられることを特徴とするものである。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一に記載のグリース供給機構において、グリース補給手段が有するグリース溜まり部及びグリース返し部の、遊星歯車が設けられている側の面には、太陽歯車の回転軸方向に向かう複数の凹溝が形成されるとともに、平滑処理がされていることを特徴とするものである。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一に記載のグリース供給機構において、グリース溜まり部のグリース移動方向の上流側に接続する、補給グリース収容部を有しており、前記補給グリース収容部を加圧することで、該補給グリース収容部からグリース溜まり部に補給グリースを移動させるように構成されていることを特徴とするものである。
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のグリース供給機構において、補給グリース収容部を加圧して、強制的に補給グリースをグリース溜まり部に移動させる加圧手段を備え、グリースを供給する遊星歯車減速装置を備えた装置の稼動状況に応じて、所定のタイミングで前記遊星歯車減速装置を備えた装置の制御部から送信される信号に基づいて、前記加圧手段を動作させ、補給グリース収容部からグリース溜まり部に補給グリースを移動させることを特徴とするものである。
また、請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のグリース供給機構において、補給グリース収容部から、補給グリースをグリース溜まり部に移動させる加圧手段を備え、グリースを供給する遊星歯車減速装置を備えた装置の定期的に交換される、いずれかの交換体の交換時に、前記交換体の一部に設けた連動部と機械的に連動して、前記加圧手段を動作させ、補給グリース収容部からグリース溜まり部に補給グリースを移動させることを特徴とするものである。
また、請求項9に記載の発明は、請求項7に記載のグリース供給機構において、グリースを供給する遊星歯車減速装置を備えた装置が画像形成装置であって、前記加圧手段は、前記画像形成装置のプリント用紙枚数又は稼働時間に応じて、所定のタイミングで画像形成装置の制御部から送信される信号に基づいて動作し、グリースを移動させることを特徴とするものである。
また、請求項10に記載の発明は、請求項8に記載のグリース供給機構において、グリースを供給する遊星歯車減速装置を備えた装置が画像形成装置であって、前記加圧手段は、画像形成装置の感光体ドラムの交換時、又はトナーカートリッジの交換時、又はこれらが一体化されたプロセスカートリッジ等の交換時に、これら交換体の一部に設けた連動部と機械的に連動して、前記加圧手段を動作させ、補給グリース収容部からグリース溜まり部に補給グリースを移動させることを特徴とするものである。
また、請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10のいずれか一に記載のグリース供給機構において、太陽歯車は、モータ軸上に形成されたモータギヤであることを特徴とするものである。
また、請求項12に記載の遊星歯車減速装置の発明は、グリース供給機構として、請求項1乃至11のいずれか一に記載のグリース供給機構を用いることを特徴とするものである。
また、請求項13に記載の画像形成装置の発明は、グリース供給機構として、請求項1乃至11のいずれか一に記載のグリース供給機構、又は請求項12に記載の遊星歯車減速装置を備えたことを特徴とするものである。
本発明は、遊星歯車と固定内歯歯車が噛み合うことで押し出され、遊星歯車減速装置のハウジング内に飛散したグリースを、公転する遊星歯車の入力側側面に対向するグリース溜まり部で受け回収できる。そして、グリース溜まり部で回収したグリースを、太陽歯車と遊星歯車の噛み合い部近傍に配置したグリース返し部に導き、再度、太陽歯車の遊星歯車との噛み合い部近傍の歯面に戻せる。このように、飛散したグリースを太陽歯車の遊星歯車との噛み合い部近傍の歯面に戻すことで、噛み合い部でのグリースの枯渇を防止し、潤滑を継続して行うことでギヤの磨耗をなくすことができる。また、遊星歯車減速装置のハウジング内にグリース溜まり部とグリース返し部を有するグリース補給手段を設けるだけの簡単な構成であり、太陽歯車に接触しない。そのため、遊星歯車減速装置の高精度な回転特性を劣化させることもない。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、遊星歯車減速装置のハウジング内にグリース溜まり部とグリース返し部を有するグリース補給手段を設けるだけの構成で、噛み合い部でのグリースの枯渇を防止し、潤滑を継続して行うことで各ギヤの磨耗をなくすことができる。また、遊星歯車減速装置の高精度な回転特性を劣化させることもない。よって、簡単にして確実、かつ遊星歯車減速装置の高精度な回転特性を劣化させることなくグリースの供給を行い、各ギヤの摩耗をなくし、従来に比べて飛躍的な高耐久性を獲得できる、遊星歯車減速装置内へのグリース供給機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の全体構成の説明図。
【図2】実施例1に係る遊星歯車減速装置、及びグリース供給機構のモータ軸に平行な断面図。
【図3】実施例1に係るグリース供給機構に備えるグリース補給手段を、遊星歯車と太陽歯車の噛み合い部側からの平面図。
【図4】実施例2に係るグリース供給機構のグリース補給手段の平面図。
【図5】実施例3に係る遊星歯車減速装置、及びグリース供給機構のモータ軸に平行な断面図。
【図6】実施例4に係るグリース供給機構のグリース補給手段の外観図。
【図7】実施例5に係る遊星歯車減速装置、及びグリース供給機構のモータ軸に平行な断面図。
【図8】実施例6に係る遊星歯車減速装置、及びグリース供給機構のモータ軸に平行な断面図、及び制御手段の説明図。
【図9】実施例6に係るグリース供給機構の加圧手段の模式図、及びカム位相の説明図。
【図10】実施例7に係るグリース供給機構の加圧手段の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を、電写真方式の画像形成装置であるカラー対応のMFP機(以下、複合機という。)であるに適用した実施形態の例について、実施例を挙げ、図を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成の説明図である。図2は、実施例1に係る遊星歯車減速装置、及びグリース供給機構のモータ軸に平行な断面図、図3は、実施例1に係るグリース供給機構に備えるグリース補給手段を、遊星歯車と太陽歯車の噛み合い部側からの観た平面図である。図4は、実施例2に係るグリース供給機構のグリース補給手段の平面図、図5は、実施例3に係る遊星歯車減速装置、及びグリース供給機構のモータ軸に平行な断面図、図6は、実施例4に係るグリース供給機構のグリース補給手段の外観図である。図7は、実施例5に係る遊星歯車減速装置、及びグリース供給機構のモータ軸に平行な断面図、図8は、実施例6に係る遊星歯車減速装置、及びグリース供給機構のモータ軸に平行な断面図、及び制御手段の説明図である。図9は、実施例6に係るグリース供給機構の加圧手段の模式図、及びカム位相の説明図、図10は、実施例7に係るグリース供給機構の加圧手段の説明図である。
【0016】
まず、この複写機の基本的な構成から説明する。この複写機は、図1に示すように、画像形成装置本体であり画像を作像する作像部100と、この作像部100を載置する給紙テーブル200と、作像部100上に取り付けられたスキャナ300と、このスキャナ300上に取り付けられた原稿自動搬送装置(ADF)400とから主として構成されている。
【0017】
スキャナ300では、原稿照明用光源やミラーなどを搭載した第一走行体303と、複数の反射ミラーを搭載した第二走行体304とが往復移動するのに伴って、コンタクトガラス301上に載置された図示しない原稿の読取り走査が行われる。第二走行体304から送り出される走査光は、結像レンズ305によってその後方に設置されている読取りセンサ306の結像面に集光せしめられた後、読取りセンサ306によって画像信号として読込まれる。
【0018】
作像部100には、潜像担持体としてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色のトナーに対応した感光体ドラム40Y、40M、40C、40Bkが設けられている。各感光体ドラム40の周囲には現像装置70、帯電装置85、感光体クリーニング装置86等の電子写真プロセスを実行する各手段が配置され、これによって画像形成ユニット38(Y,M,C,Bk)が形成されている。また、各画像形成ユニット38は、プリンタ本体に脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。各画像形成ユニット38は4つ並列に設けられており、タンデム型画像形成部20を形成している。ここで、各画像形成ユニット38の構成は使用するトナーの色が異なるのみで、その構成・動作は、同一でああるので以下の説明では、符号Y、M、C、Bkは適宜、省略して説明する。
【0019】
また、各画像形成ユニット38は、ケーシング41を有している。ケーシング41に形成された感光体ドラム40の回転軸の片側の軸孔からは、感光体ドラム40の回転軸の先端が外部に出るように設けられている。また、この画像形成ユニット38の装着時には、感光体ドラム40の回転軸の先端に形成された外歯ギヤ122(不図示)が、詳しくは後述する遊星歯車減速装置110の出力軸部材121の内歯ギヤ123(不図示)に噛み合うこととなる。そして、感光体ドラム40は、感光体ドラム40の回転軸の外歯ギヤ122と、遊星歯車減速装置110の出力軸部材121の内歯ギヤ123が噛み合うことで、遊星歯車減速装置110の入力側に接続された駆動モータ125(不図示)により回転駆動されることとなる。
【0020】
そして、各画像形成ユニット38の現像装置70においては、それぞれ上記4色のトナーを含んだ現像剤が用いられる。現像装置70は、現像剤担持体である現像ローラ71が現像剤を担持、搬送して、感光体ドラム40との対向位置において、感光体ドラム40上の潜像を現像する。
【0021】
タンデム型画像形成部20の上部には、画像情報に基づいて感光体ドラム40をレーザ光又はLED光により露光して潜像を形成する露光装置31が設けられている。
【0022】
また、タンデム型画像形成部20の感光体ドラム40と対向する下方位置には、無端状のベルト部材からなる中間転写ベルト15が配置されている。中間転写ベルト15は支持ローラ34、支持ローラ35及び二次転写バックアップローラ36によって支持されている。中間転写ベルト15を介して感光体ドラム40と相対する隣接位置には、感光体ドラム40上に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト15に転写する一次転写装置62が配置されている。
【0023】
中間転写ベルト15の下方には、中間転写ベルト15表面に重ね合わせて形成されたトナー像を、給紙テーブル200の給紙カセット44から搬送されてくるシートPに一括転写する二次転写装置19が配置されている。二次転写装置19は、二次転写ローラ23と、この二次転写ローラ23を中間転写ベルト15に接離可能に支持する接離機構(不図示)とを備えている。二次転写装置19は中間転写ベルト15を介して二次転写バックアップローラ36に二次転写ローラ23を押し当て、中間転写ベルト15上のトナー像をシートPに転写する。
【0024】
中間転写ベルト15の表面に残留するトナーを取り除くために中間転写ベルトクリーニングユニット90が設けられている。中間転写ベルトクリーニングユニット90は、例えばファーブラシやウレタンゴムで形成されたクリーニングブレードを中間転写ベルト15に当接させて、中間転写ベルト15に付着している二次転写残トナーを掻き取る。
【0025】
二次転写装置19に隣接するように定着装置60が設けられており、定着装置60はシートP上の画像を定着する。定着装置60は、内部に熱源としてのヒータが組み込まれた加熱ローラ66と、この加熱ローラ66に押し当てられる加圧ローラ67とから主として構成されている。
【0026】
二次転写装置19及び定着装置60の下方には、シートPを反転する反転装置28が配置されている。反転装置28は、シートPの両面に画像を記録すべくシートPを反転させる。
【0027】
次に、上記構成の画像形成装置の動作について説明する。図2の原稿自動搬送装置400の原稿台30上に原稿をセットするか、または、原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス301上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。この状態で、操作パネル上のスタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス301上へと移動した後、また、コンタクトガラス301上に原稿をセットしたときは直ちにスキャナ300が駆動し、第一走行体303および第二走行体304を走行させる。そして、第一走行体303で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光を受け、これを第二走行体304に向けて反射し、第二走行体304のミラーで反射光を更に反射して結像レンズ305を通して読取りセンサ306に入射させ、読取りセンサ306で原稿内容を読取る。
【0028】
また、操作パネル上のスタートスイッチを押すことによって、駆動モータ(不図示)を駆動させて支持ローラ34、支持ローラ35、二次転写バックアップローラ36の1つを回転駆動し、他の2つの支持ローラを従動回転させ、これによって中間転写ベルト15を回動させる。同時に、各画像形成ユニット38において、帯電装置85によって感光体ドラム40を一様に帯電し、次いでスキャナ300の読取り内容に応じて露光装置31からレーザやLED等による書込み光を照射して帯電した各感光体ドラム40上に静電潜像を形成する。静電潜像が形成された感光体ドラム40に現像装置70からトナーを供給し、静電潜像を可視像化し、各感光体ドラム40上にそれぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の単色画像を形成する。単色画像を順次一次転写装置62によって中間転写ベルト15上に重なるように一次転写し、中間転写ベルト15上に合成カラー画像を形成する。画像転写後の感光体ドラム40の表面は、感光体クリーニング装置86によって残留トナーを除去し、除電装置(不図示)で除電して再度の画像形成に備える。
【0029】
操作パネル上のスタートスイッチを押すことにより、また給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つが選択されて回転し、ペーパーバンク43に多段に設けられた給紙カセット44の1つからシートPを繰り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に挿入し、搬送ローラ対47で搬送して作像部100内の給紙路48に導き、レジストローラ対49に突き当てて停止させる。次に、中間転写ベルト15上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ対49を回転し、中間転写ベルト15と二次転写装置19との間にシートPを送り込み、二次転写装置19で転写してシートP上にカラー画像を転写する。
【0030】
二次転写ローラ23を通過した未定着トナー像を担持したシートPを、定着装置60へ搬送し、定着装置60で熱と圧力とを加えて転写画像を定着する。画像定着後のシートPは、切換爪55で切り換えて排出ローラ対56によって排出し、排紙トレイ57上にスタックするか、又は切換爪55で切り換えて反転装置28に導入し、ここでシートPを反転して再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録し、その後、排出ローラ対56で排紙トレイ57上に排出する。このとき、画像転写後の中間転写ベルト15上に残留する残留トナーを中間転写ベルトクリーニングユニット90で除去し、タンデム型画像形成部20による再度の画像形成に備える。
【0031】
次に、本発明の特徴部である、遊星歯車減速装置に用いるグリース供給機構について、実施例を挙げ、図を用いて説明する。ここで、各画像形成ユニット38に対応する遊星歯車減速装置に用いるグリース供給機構の構成は、対応する各画像形成ユニット38で使用するトナーの色が異なるのみで、その構成・動作は、同一でああるので以下の説明では、符号Y、M、C、Bkは適宜、省略して説明する。
【0032】
(実施例1)
本実施形態の遊星歯車減速装置に用いるグリース供給機構の、第1の実施例である、実施例1から説明する。本実施例のグリース供給機構は、主に、遊星歯車減速装置のハウジング内に設けるグリース補給手段から構成されている。ここで、図3は、実施例1に係るグリース供給機構に備えるグリース補給手段を、遊星歯車と太陽歯車の噛み合い部側からの平面図であるが、理解し易いように、遊星歯車の1つが最も高い位置にある場合の遊星歯車と固定内歯歯車の態様を破線で記載している。
【0033】
まず、本実施例のグリース供給機構105でグリースを供給する遊星歯車減速装置110について説明する。本実施例の遊星歯車減速装置110は、上述したように、各画像形成ユニット38に設けられる感光体ドラム40を回転させる駆動力を、駆動モータ125の回転駆動力を減速して伝達するものである。画像形成ユニット38の装着時には、感光体ドラム40の回転軸の一端に設けられた外歯ギヤ122(不図示)に、出力軸部材121の内歯ギヤ123が噛み合うことで、駆動モータ125の回転駆動力を減速して伝達する。
【0034】
図2、3に示すように、この遊星歯車減速装置110は、2段構成の減速機構の歯車列で構成されており、駆動モータ125の軸方向に、駆動モータ125に近い側の1段目の減速部と、離れた側の2段目の減速部とを直列配置されている。この遊星歯車減速装置110は、ハウジング111と、入力側、すなわち駆動モータ125側のエンドプレート129と、出力側、すなわち感光体ドラム40側のエンドプレート124とで外周が形成されている。そして、駆動モータ125がエンドプレート129に形成された入力軸孔からモータ軸127を挿入するようにして接続されている。挿入されるモータ軸127には、太陽歯車として機能するモータギヤ部が、挿入された際の先端部から、エンドプレート129の出力軸側の位置まで溝状に歯形が形成され、エンドプレート129の出力軸側の位置からはモータ軸部128となる。
【0035】
太陽歯車として機能するモータギヤ部の溝状の歯形は、モータ軸127の軸心と、ねじり角をもって形成されている。そして、そのねじり方向は駆動モータ125が回転駆動された際に、詳しくは後述する、グリース供給機構105のグリース補給手段130から供給されたグリースが、駆動モータ125側から遊星歯車との噛み合い部側へ移動するように形成されている。また、公転する遊星歯車が形成する入力側の面と、エンドプレート129の出力側の面との間は離間しており、この離間した空間に後述するグリース供給機構105のグリース補給手段130が設けられることとなる。
【0036】
そして、1段目の減速部には、1段目の太陽歯車として機能するモータ軸127上に形成されたモータギヤ部113と、このモータギヤ部113の回りに等分配置されて噛み合う3個の1段目の遊星歯車114を有している。そして、1段目の遊星歯車114を回転自在に支持するキャリアピン116が固定されている1段目のキャリア115も有している。また、2段目の減速部には、1段目の出力軸でもあるキャリア115に、1段目のモータギヤ部113と同軸上で形成された2段目の太陽歯車117と、2段目の太陽歯車117の回りに等分配置されて噛み合う3個の2段目の遊星歯車118を有している。そして、2段目の遊星歯車118を回転自在に支持するキャリアピン119が固定されている2段目のキャリア120も有している。また、遊星歯車減速装置110のハウジング111に固定されている固定内歯歯車112は、1段目の遊星歯車114と2段目の遊星歯車118の両方と噛み合わせる軸方向の長さとしている。また、固定内歯歯車112は、1段目の遊星歯車114と噛み合う部分と2段目の遊星歯車118が噛み合う部分とを同じに構成した一体物として形成している。
【0037】
ここで、1段目のキャリア115に設けられた2段目の太陽歯車117については、1段目のキャリア115に出力軸を設けて。別部品で製作した2段目の太陽歯車117を圧入などで固定するようにしてもよい。また、固定内歯歯車112については、1段目の遊星歯車114が噛み合う部分と2段目の遊星歯車118が噛み合う部分の歯数などの歯車諸元を異ならせる場合は、1段目の遊星歯車114が噛み合う部分と2段目の遊星歯車118が噛み合う部分とを別体で構成してもよい。
【0038】
この遊星歯車減速装置110の駆動モータ125の回転は次のように伝達される。まず、駆動モータ125が駆動されると、1段目の太陽歯車として機能するモータ軸127上に形成されたモータギヤ部113が回転する。このモータギヤ部113の回転が1段目の遊星歯車114に伝達され、1段目の遊星歯車114は自転するとともに、固定内歯歯車112と噛み合い、それに沿って公転する。この1段目の遊星歯車114の公転によって1段目のキャリア120が回転し、駆動モータ125の回転が減速されて1段目の出力軸でもある2段目の太陽歯車117から2段目の遊星歯車118に伝達される。
【0039】
2段目の遊星歯車118は自転するとともに、遊星歯車減速装置110のハウジング111に固定されている固定内歯歯車112に沿って公転する。
この2段目の遊星歯車118の公転により、2段目の遊星歯車118を回転自在に支持するキャリアピン119が固定されている2段目のキャリア120が回転し、1段目の出力軸でもある2段目の太陽歯車117の回転が減速される。この減速された回転が、2段目の出力軸である出力軸部材121に伝達される。
【0040】
そして、出力軸部材121の内歯ギヤ123と感光体ドラム40の回転軸の一端に設けられた外歯ギヤ122とが噛み合うことで感光体ドラム40に伝達される。このように、駆動モータ125の回転駆動力が、各減速部で減速して伝達されるので、大きな減速比を得ることができる。また、大きな減速比を得ることができるので、駆動モータ125の負荷トルクが軽くなり、モータの小型化が可能となる。
【0041】
また、本実施例の遊星歯車減速装置110も、感光体ドラム40の駆動に用いる従来の構成と同様に、1段目の各遊星歯車を樹脂製、1段目の太陽歯車であるモータギヤ部113を金属製としている。そして、樹脂同士の噛み合い駆動より、金属と樹脂の噛み合いによる駆動の方が摩耗量は大きいため、これを軽減するためにグリースを各噛み合い部に供給する必要がある。しかし、上述したように、従来のメンテナンス作業員が定期メンテナンス時等に行なう、遊星歯車減速装置内に生じたグリースの空隙に、グリースを注入して補給する対処では、噛み合い部での磨耗が進み遊星歯車減速装置の耐久性が低くなってしまうことがある。そこで、本実施例の遊星歯車減速装置110では、次のようなグリース供給機構105を設けることとした。
【0042】
図2、3に示すように、本実施例のグリース供給機構105では、グリース補給手段130を、遊星歯車減速装置110のハウジング111内の公転する遊星歯車114の入力側の側面と、エンドプレート129との間に取り付ける。このグリース補給手段130は、図3に示すように、主に、板状部材を折り曲げ加工した扇状部材131に形成された、グリース返し部133とグリース溜まり部132とからなる。この扇状部材131は、遊星歯車減速装置110に取り付けた際に、モータギヤ部127の軸心を中心として、鉛直上方に立てた扇をモータギヤ部113の軸心を通る鉛直な平面を対称平面として左右約45度づつ広げたような形状をしている。つまり、モータギヤ部113を中心としたXY座標を想定した際の第1象限と第2象限に位置することとなる。そして、グリース返し部133は扇状部材131の短い側の円弧状部分であり、取り付けられた際に、モータギヤ部113と約30度の傾斜を持ってその先端部が近接するように出力側に折り曲げられ、グリース溜まり部132は他の大部分を占めている。
【0043】
また、扇状部材131の長い側の円弧状部分は、ハウジング111の外周部にネジ止めを行なうために、ハウジング111の外周面に沿って帯状に入力側へ折り曲げられ、その帯状の部分の両端をネジ134でハウジング111に2点で固定されることとなる。そして、取り付け時にハウジング内に位置することとなるグリース溜まり部132とグリース返し部133の円弧状部分を結ぶ直線部分の端部は帯状に出力側に折り曲げられ、サイドガイド135を形成している。
【0044】
このように折り曲げ加工された扇状部材131は、遊星歯車減速装置110のハウジング111の上部に設けたスリットからハウジング内に差し込まれ、上述した扇状部材131の長い側の帯状部分で、ハウジング111の外周にネジ134で固定される。ネジ134でハウジング111の外周に固定されることで、グリース返し部133とグリース溜まり部132が形成された扇状部材131は、太陽歯車であるモータギア部113及び遊星歯車114の回転とは同軸回転しない構成となっている。そして、固定された扇状部材131は、短い側の円弧状部分であるグリース返し部133は、モータギヤ部113の外周と所定の離間距離を保ち、その先端がモータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部に近接する位置となる。このグリース返し部133の端部の位置は、モータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部の入力側の端部ぎりぎりのところをめがけて設定されている。また、グリース溜まり部132は、遊星歯車の入力側の側面から上方に向かって離れるように配置され、モータギヤ部113の軸心に垂直な平面に対して、図2の図中に示すように約10度の角度で取り付けられることとなる。また、扇状部材131をハウジング111に固定しているのは、太陽歯車であるモータギア部117及び遊星歯車114と同時に回転する構造にしてしまうと、遠心力でグリースは外周へ移動することになり、モータギヤ部113へ供給することができないためである。
【0045】
このようにグリース補給手段130を構成して、遊星歯車114と固定内歯歯車112との噛み合い部から押し出され飛散したグリースを、一端、遊星歯車114の入力側の側面に対向して設けたグリース溜まり部132に滞るように保持し堆積させる。その後、堆積したグリースは長時間をかけて、遊星歯車減速装置110の稼動時の微少振動と重力により徐々に下方へ移動してグリース返し部133に到達する。そして、グリース返し部133に移動したグリースは、グリース返し部133を介して、モータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部の入力側の端部ぎりぎり、モータギヤ部127の周面に移動(滴下)することとなる。このモータギヤ部127に移動したグリースが、遊星歯車114との噛み合い部に供給されて噛み合い部の潤滑を継続することとなる。また、遊星歯車減速装置110の組立時に、グリース溜まり部132にグリースをたっぷりと塗布しておくとより効果的である。
【0046】
(実施例2)
次に、本実施形態の遊星歯車減速装置110に用いるグリース供給機構105の、第2の実施例である、実施例2について説明する。本実施例と上述した実施例1とは、本実施例のグリース供給機構105が備えるグリース補給手段130が、振動可能に設けられていることに関する点のみので、実施例1と共通する構成・動作については適宜省略して説明する。
【0047】
上述した実施例1のグリース供給機構105でも、グリース溜まり部132上に堆積したグリースは長時間をかけて、遊星歯車減速装置110の稼動時の微少振動と重力により徐々に下方へ移動してグリース返し部133に到達する。しかし、遊星歯車減速装置110の稼動時の微少振動による移動効果を有効に利用することは困難であった。そこで、本実施例では次のようにグリース供給機構105を構成した。
【0048】
本実施例のグリース供給機構105が備えるグリース補給手段130は、実施例1と同様に、主に、板状部材を折り曲げ加工した扇状部材131に形成された、グリース返し部133とグリース溜まり部132からなる。しかし、このグリース補給手段130を振動可能に設けるために、扇状部材131に形成されたグリース溜まり部132の形状と、遊星歯車減速装置110のハウジング111への固定方法が、実施例1と異なる。次に図4を用いて説明する。
【0049】
図4に示すように、本実施例のグリース溜まり部132が形成された扇状部材131は、長い方の円弧部分の中央、つまり、グリース溜まり部132の上部の中央から、その先端部分が入力側に折り曲げられた幅Wの突出部139aを有している。そして、この突出部139aだけを遊星歯車減速装置110のハウジング111の上部に設けたスリットに差し込み、ハウジング111の外周にネジ134を用いて1点で固定されることとなる。また、グリース溜まり部132の円弧状の上部の端部は、この扇状部材131を遊星歯車減速装置110のハウジング111に取り付けた際に、ハウジング111の内周に接触しないように、ハウジング111の内周と所定の離間距離を保てるように形成されている。さらに、突出部139aとグリース溜まり部132の接続箇所は、突出部139aの幅Wを維持するスリットを、グリース溜まり部132に切り込むように形成している。
【0050】
このようにグリース溜まり部132にスリットを設け、突出部139aの長さを長くして、振動効果を増している。そして、グリース溜まり部132及びグリース返し部133は、駆動モータ125を含めた遊星歯車減速装置110の稼動時の共振周波数で共振状態になるように、突出部139aの幅Wで調整するようにしている。さらに、図4に示しているように、グリース溜まり部の入力側の面には、質量体139bを固定して振動振幅が大きくなるようににしている。このように、グリース溜まり部132及びグリース返し部133を、駆動モータ125を含めた遊星歯車減速装置110の稼動時の微小振動に共振させ、この加振振動を利用して、グリースは時間をかけて徐々にモータギヤ方向に落ちてくるようにした。そして、モータギヤ部127に押し出すようにして滴下し供給することで磨耗の進行を防止できる。
【0051】
また、詳しくは後述するが、グリース補給手段130の扇状部材131に伝熱を行わせてグリースの粘性を下げ、移動がしやすくなるような構成も可能である。そこで、本実施例では、伝熱した熱がこの質量体139bに吸熱されて温度が下がらないようにするため、両者間に空気層を介在するように点接触で固定し、放熱を防いでいる。また、本実施例では、遊星歯車減速装置110のハウジング111の外周にネジ134で固定される突出部139aを扇状部材131の一部分が突出したものとしたが、これに限定されるものではなく、厚さの異なる板状部材を介して固定してもよい。
【0052】
(実施例3)
次に、本実施形態の遊星歯車減速装置110に用いるグリース供給機構105の、第3の実施例である、実施例3について説明する。本実施例と、上述した実施例1、2とは次の点のみが異なるなる。本実施例のグリース供給機構105が備えるグリース補給手段130が有するグリース溜まり部132及びグリース返し部133が高熱伝達率材料からなり、これらに駆動モータ125の熱を伝熱させる構成を有することに関する点である。したがって、実施例1、2と共通する構成・動作については適宜省略して説明する。
【0053】
従来の画像形成装置に用いる遊星歯車減速装置へのグリース供給機構では、冬季運転時又は早朝運転が長期に渡る場合は、グリースの粘度が高まるので供給が停止する場合があった。そのため、本実施例のグリース供給機構105では、グリース補給手段130が有するグリース溜まり部132及びグリース返し部133が形成された扇状部材131に高熱伝導性材料を用いて駆動モータ125の熱を伝熱する。そして、駆動モータ125から伝熱された熱を効率良くグリースの存在する位置に誘導し軟化させて流動性を上げる構成とした。次に本実施例の構成を図5を用いて説明する。また、本実施例は、上述した実施例1、2のいずれにも適用可能であるが、実施例1の構成に適用した場合について説明する。
【0054】
上述したように、冬季運転時又は早朝運転が長期に渡る場合には、遊星歯車減速装置110及びグリース供給機構105は、その温度が低下し稼動を開始しても短時間では温度が上昇しない。しかし、例えば、駆動モータ125のステータ部126の外周は、短時間で室温以上に温度上昇し、35〜45℃に達する。そこで、図5に示すように、本実施例のグリース供給機構105が備えるグリース補給手段130では、扇状部材131の遊星歯車減速装置110のハウジング111にネジ134で固定するための帯状の部分のネジ止め部分から、延長する伝熱部136を設けている。そして、この伝熱部136を、駆動モータ125のステータ部126に接続して、駆動モータ125の熱を扇状部材131に伝熱する構成としている。
【0055】
そして、グリース溜まり部132及びグリース返し部133が形成された扇状部材131を、高熱伝達率材料である、銅、又は銅合金材料(熱伝達率403[w/mk])、あるいは黒鉛系材料と金属の複合化材料(熱伝達率630[w/mk])を選択使用して加工する。
【0056】
また、伝熱部136と駆動モータ125のステータ部126との接触面には、シリコーンペーストなどを塗布し、空気層の介在をなくして熱伝達率を向上させる。また、伝熱部136と駆動モータ125のステータ部126との接触面の反対側の面には、保温部材137を設けて伝播熱が放射しないようにしている。この保温部材137としては、例えば保温用のフェルトパットを重ねるか、発泡スチロールなどで覆うなどして、伝播熱が放射しないよう工夫する。
【0057】
駆動モータ125のステータ部126の熱は、短時間で伝熱部136を介して扇状部材131に伝熱され、扇状部材131上に形成されたグリース溜まり部132及びグリース返し部133が昇温する。そして、昇温したグリース溜まり部132及びグリース返し部133上に堆積したグリースを軟化させることにより、流動性が増して下方向に移動しやすくなる。そして極めてゆっくりした速度でモータギヤに滴下されることとなる。
【0058】
したがって、低温環境下での画層形成装置の起動後であっても、モータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部へのグリース供給を行いやすくなった。これにより磨耗の進行を防止し、耐久寿命を延ばすことが可能となる。
【0059】
(実施例4)
次に、本実施形態の遊星歯車減速装置110に用いるグリース供給機構105の、第4の実施例である、実施例4について説明する。本実施例と、上述した実施例1乃至3とは次の点のみが異なるなる。本実施例のグリース供給機構105が備えるグリース補給手段130が有するグリース溜まり部132及びグリース返し部133に溝が形成されていることに関する点である。したがって、実施例1乃至3と共通する構成・動作については適宜省略して説明する。
【0060】
流動性の上がったグリースであっても、グリース溜まり部132及びグリース返し部133のグリース移動面に進行方向に向かって凹凸があったり、グリースの移動する軌跡が蛇行してしまったりすると、所望するグリースの移動量が確保できないと考えられる。そこで、本実施例のグリース供給機構105では、図6に示すように、グリース溜まり部132及びグリース返し部133に、ハウジング111に取り付けた際に、モータギヤ部113の軸心に向かうような溝をグリースと接触する面に多数本形成した。ここで、図6では、溝の態様が分かりやすいように、誇張して記載している。また、本実施例は、上述した実施例1乃至3のいずれにも適用可能であるが、実施例3の構成に適用した場合について説明する。
【0061】
この溝は、加熱や振動等により流動性の上がったグリースがグリース返し部133にスムースに移動していくよう設けた、僅かな深さと巾の溝である。この溝を形成することで、グリースが移動する道が形成され、グリースが効率良く最短の経路で移動するようにできる。この形成する溝の具体的な例としては、エッチング法により深さ40〜50μmに加工している。
【0062】
また、グリースに接触する面は溝の底部、側面も含めてバフ加工による鏡面仕上げを行うか、使用するグリースの種類に応じて、数μm厚のテフロン(登録商標)膜等のコーティング加工を行なうと、より好適である。このようにグリースに接触する面に平滑化処理を施すことで、グリースは引っ掛かりなくスムースに移動できる。したがって、モータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部への安定したグリース供給を行なうことができる。また、遊星歯車減速装置110の組立時には、この溝を形成した部分にグリースをたっぷりと補充しておくと長期に亘りグリース供給が行なえるので、より好適である。
【0063】
(実施例5)
次に、本実施形態の遊星歯車減速装置110に用いるグリース供給機構105の、第5の実施例である、実施例5について説明する。本実施例と、上述した実施例1乃至4とは次の点のみが異なるなる。本実施例のグリース供給機構105は、補給グリース収容部140を有しており、この補給グリース収容部140からグリース補給手段130が有するグリース溜まり部132にグリースを移動できることに関する点である。したがって、実施例1乃至4と共通する構成・動作については適宜省略して説明する。また、本実施例は、上述した実施例1乃至4のいずれにも適用可能であるが、実施例3の構成に適用した場合について説明する。
【0064】
上述した実施例1乃至4の構成だけでは、遊星歯車減速装置110内で飛散したグリースが、グリース溜まり部132及びグリース返し部133に還流しない箇所に滞留し、グリース溜まり部132で回収できるグリースが減少することが考えられる。グリース溜まり部132で回収できるグリースが減少してしまうと、遊星歯車減速装置110ののモータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部への長期間に亘る、安定的なグリースの供給が難しくなってしまう。
【0065】
そこで、本実施例のグリース供給機構105では、グリース溜まり部132におけるグリース移動方向の上流側へ接続する補給グリース収容部140を設け、この補給グリース収容部140内に充填したグリースを一定の時間毎のタイミングで、グリース溜まり部132の上流側へ押し出す構成とした。
【0066】
具体的には、図7に示すように、本実施例では遊星歯車減速装置110の外部に、補給グリース収容部140を設けている。この補給グリース収容部140は、グリース収容槽141と、このグリース収容槽141から押し出されたグリースをグリース溜まり部132の上流側へ導くパイプ142と、グリース収容槽141を収容する収容ケース143とを有している。また、この収容ケース143を複合機内の筐体に固定するブラケット144と、収容ケース143に取り付けられた空気弁145も有している。
【0067】
グリース収容槽141はチューブのような可変形性の材料からなるボトル状の部材であり、取り付け時にはグリースが充填された状態となっている。また、このグリース収容槽141は、長手方向の一端側に設けられた唯一の開口に、ネジ込み式のパイプ142が封をするようにして接続されており、外部から加圧されると、内部に充填したグリースが、パイプ142に押し出される構造となっている。
【0068】
パイプ142は、上述したように、その一端側が、グリース収容槽141の開口を封をするようにしてネジ込まれている。また、他端側が遊星歯車減速装置110のハウジング111に設けられた孔から、グリース溜まり部132の上部、すなわちグリース移動方向の上流側に近接する位置まで挿入されて固定されている。そして、グリース収容槽141から押し出されたグリースを、グリース溜まり部132の上部に導く。
【0069】
収容ケース143は、グリース収容槽141を包むように収容するとともに、上方から加圧された際には、直接又は空気圧により、グリース収容槽141を加圧できるように、屈曲性の弾性材料(ウレタンチューブ)からなり、小径の空気弁145を有する。また、空気弁145を除き、その内部に収容するグリース収容槽141と形成する空間を、略閉空間とできるようにグリース収容槽141を包みこんでいる。つまり、グリース収容槽141のパイプ142を接続する側の面と、その面に接触する収容ケース143の接触面の間から気体が容易に流出入しないように構成している。
【0070】
ブラケット144は、上述した収容ケース143を保持するとともに、収容ケース143が上方から加圧された際にも、収容ケース143の底面が移動しないだけの強度をもって、複合機本体の筐体ないに固定されている。
【0071】
空気弁145は、上述したように収容ケース143に設けられており、収容ケース143が上方から加圧された際には、収容ケース143内の圧力が高まるように、「閉」の状態になる。また、収容ケース143の上方からの加圧が解除された際には、収容ケース143内に外部の気体が流れ込むように「開」の状態となってエアーを取り込み初期位置に復帰する。
【0072】
このような部材で構成された補給グリース収容部140は、上方からブラケット144側へ加圧された際に、グリース収容槽141及び収容ケース143が変形するとともに、空気弁145が「閉」の状態であるので、収容ケース143内の圧力が高くなる。そして、グリース収容槽141は、直接又は加圧された収容ケース143内んお圧力により、変形してグリース収容槽141内からグリースが、パイプ142を介して、グリース溜まり部132の上部に押し出される。また、加圧が解除された際には、収容ケース143は、空気弁145が「開」の状態であるので、外部から気体が流れ込み加圧前の形状に戻る。
しかし、収容ケース143とグリース収容槽141との間に生じた空隙には、「開」の状態の空気弁145から気体が流入して、大気圧になっている。したがって、収容ケース143とグリース収容槽141との空隙には負圧は生じず、グリース収容槽141の復元性が非常に高くない限り、パイプ142内に充填されたグリースが、加圧された際に押し出されたグリース量近く、グリース収容槽141にすい戻されることはない。このように補給グリース収容部140は、チューブに入ったペーストを、その外部を加圧変形させて押し出すと同様に構成されている。
【0073】
また、補給グリース収容部140に収納されるグリースの容量は、その全ての容量が遊星歯車減速装置110内に移動しても、遊星歯車減速装置110内での各ギヤ回転に異常を来たさない量に設定されている。そして、複写機のメンテナンス時にサービスマンが、この補給グリース収容部140の上部を一押しすることで、少量のグリースを遊星歯車減速装置110内に設けられたグリース溜まり部132の上部に供給できる出来る極めて簡単な構造である。したがって、複写機のメンテナンス時にサービスマンが、収容ケース143の上面を下方へ押し下げるという簡単な補給作業を行なうだけで、長期間に亘る、安定的なグリース供給を可能にできる。
【0074】
(実施例6)
次に、本実施形態の遊星歯車減速装置110に用いるグリース供給機構105の、第6の実施例である、実施例6について説明する。本実施例と、上述した実施例5とは次の点のみが異なるなる。本実施例のグリース供給機構105は、補給グリース収容部140を強制的に加圧して、補給グリース収容部140内を加圧する加圧手段150を備えている点である。したがって、実施例1乃至5と共通する構成・動作については適宜省略して説明する。
【0075】
本実施例の遊星歯車減速装置110に用いるグリース供給機構105では、長期間に亘る、安定的なグリース供給を可能にするのに、サービスマンが意図的に行う補給作業を不要とした。次に、本実施例の具体的な構成の例を、図8、9を用いて説明する。
【0076】
本実施例では、図8に示すように、強制的に加圧して、補給グリース収容部140内を加圧する加圧手段150を設けている。この加圧手段150は、主に、補給グリース収容部140のグリース収容槽141及び収容ケース143を1回転毎に加圧するカム157と、このカム157の回転軸であり、本体装置の筐体に回転自在に支持されたカム回転軸158とを有している。また、カム回転軸158の一端部に取り付けられたプーリ156と、カム157の回転駆動源であり、本体装置の筐体に保持された小型のモータであるアクチュエータ153と、このアクチュエータ153のアクチュエータ軸154の回転駆動力をプーリ156に伝達するカム駆動ベルト155とを有している。
【0077】
また、複写機本体に備えられた制御部(不図示)からの運転時間や、プリント枚数の信号に基づきアクチュエータ153の回転駆動を制御する、CPU161とメモリー162を有したカム駆動制御部160を備えている。また、このカム駆動制御部160からの信号に基づきアクチュエータ153を駆動させる、カム157の回転数を検知するカム回転検知センサ159が接続されたコントローラ171とモータドライバー172を有したアクチュエータ駆動回路170を備えている。ここで、本実施例では、複写機本体に備えられた制御部とは別に、カム駆動制御部160を備える構成としたが、複写機本体に備えられた制御部で制御を兼ねる構成でもよい。
【0078】
次に、加圧手段150の動作について説明する。カム駆動制御部160は、複写機本体に備えられた制御部と相互に通信を行い、複写機の動作時間や、プリント枚数等の情報の信号を複写機本体の制御部から受け取る。そして、受取った情報に基づきアクチュエータ駆動回路170に動作信号を送信して、アクチュエータ153の回転駆動を制御する。ここで、カム駆動制御部160が有するメモリー162では、複写機の動作時間や、プリント枚数等の動作の累積値をカウントしているので、所定の回数や時間になったらCPUからアクチュエータ153を、モータドライバー172によって動作させる。本実施例では複写機本体の画像形成動作の累積時間が200〜250時間の動作あるいは、プリント枚数が10,000〜15,000枚のプリント動作のインターバルで動作させるように設定している。また、アクチュエータ153を駆動させた際のカム157の回転を確認するためのカム回転検知センサ159の信号をコントローラ171から受け取り、メモリー162に累積積算するとともに、複写機本体の制御部に送信する。ここで、カム回転検知センサ159の方式は、カム157に接触する板バネ式接点でON/OFFをカウントする方式で、回転数を確認することが出来る。頻繁な回転を行うのではないのでこの構成で信頼性は十分である。
【0079】
カム駆動制御部160からの制御により、モータドライバー172によって、アクチュエータ153が回転駆動されると、アクチュエータ軸154の回転が、カム駆動ベルト155を介してプーリ156に減速されて伝達される。プーリ156に伝達された回転駆動力により、プーリ156の回転軸でもあるカム回転軸158が回転し、カム157が回転して、1回転毎に、補給グリース収容部140のグリース収容槽141及び収容ケース143を加圧することとなる。そして、加圧された収容ケース143からは、グリースがパイプ142を介して、グリース溜まり部132の上部に押し出される。
【0080】
このように、本実施例では、一定時間経過する毎、又は一定プリント枚数毎に強制的にグリースを補給グリース収容部140からグリース溜まり部132に移動させることができる。したがって、さらに安定した状態で、モータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部へグリース供給を行なうことができる。また、カム駆動制御部160でCPU161により積算されている、稼働時間情報又はプリント枚数情報により確実な供給タイミングを設定することができるので、確実にモータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部の潤滑を行うことが出来る。
【0081】
また、図9(a)、(b)に示すように、本実施例では加圧手段150を、各色に対応する感光体ドラム40Y、M、C、Bk毎に設けるのではなく、1つのアクチュエータ153の回転駆動力を各色に対応するグリース供給機構105Y、M、C、Bkで共用している。つまり、各感光体ドラム40のドラム駆動に用いるの遊星歯車減速装置110に加圧手段150を付与するのは、スペース的に大型化を招くし、コスト的なアップになる。そこで、1個のアクチュエータ153で共用したカム回転軸158に取り付けた各色に対応するカム157Y、M、C、Bkを回転させるように構成している。
【0082】
図9(b)に示すように、カム157Y、M、C、Bkの、加圧上死点になる位相は少しずつずらして1回転で全色の加圧が完了するように均等に分割している。このようにすることで、カム回転軸158を回転させる軸トルクは小さくなり、モータトルクを小さくすることが出来るので小型モータであるアクチュエータ153を1個を配置すればよく、モータドライバー172等の回路コストも含めて大幅な低コスト化が図れる。
【0083】
(実施例7)
次に、本実施形態の遊星歯車減速装置110に用いるグリース供給機構105の、第7の実施例である、実施例7について説明する。本実施例と、上述した実施例6とは次の点のみが異なるなる。本実施例のグリース供給機構105は、複合機の定期的に交換される、いずれかの交換体の交換時に、交換体の一部に設けた連動部と機械的に連動して、加圧手段180を動作さる点である。したがって、実施例1乃至6と共通する構成・動作については適宜省略して説明する。
【0084】
一般に電写真方式の画像形成装置では、感光体ドラム40は、プリント枚数にほぼ比例して劣化が進行するため、複合機の稼動時間の代用特性ととらえることができる。したがって、感光体ドラム40の交換時に、感光体ドラム40の交換動作に連動させて補給グリース収容部140からグリース溜まり部132にグリースを移動させることで、ギヤ部の磨耗を防ぎ、耐久性を向上することができる。また、トナーカートリッジも同様な考えで、トナーが無くなった時の交換動作に連動させて、補給グリース収容部140からグリース溜まり部132にグリースを移動させることが可能である。当然、感光体ドラム40と現像装置70及びトナーとが一体となったプロセスカートリッジの交換に連動させてもよい。
【0085】
そこで、本実施例の遊星歯車減速装置110に用いるグリース供給機構105では、長期間に亘る、安定的なグリース供給を可能にするのに、サービスマンが意図的に行う補給作業を機械的な加圧手段180を備えることで不要とした。次に、本実施例の具体的な構成の例として、交換体が感光体ドラム40を収納したドラムユニット181である場合の例を、図10(a)、(b)を用いて説明する。
【0086】
本実施例では、図10(a)、(b)に示すように、交換体であるドラムユニット181の交換に機械的に連動して補給グリース収容部140内を加圧する加圧手段180を設けている。この加圧手段180は、主に、補給グリース収容部140側の部材と、感光体ドラム40を収納したドラムユニット181側の部材から構成される。補給グリース収容部140側には、収容ケース143の短手方向に架渡された回転軸に支持され、収容ケース143上面で上下動して収容ケース143を加圧する、感光体ドラム40に近い側の加圧コロA146と、感光体ドラム40から離れた側の加圧コロB147を有している。そして、加圧コロA146の回転軸の両端を上方に押圧するバネの対であるバネ部材A148と、加圧コロB147の回転軸の両端を上方に押圧するバネの対であるバネ部材B149を有している。さらに、加圧コロA146と加圧コロB147の回転軸を、それぞれ上下方向にガイドするガイド部材の対(不図示)も有している。また、ドラムユニット181側には、ドラムホルダー182の遊星歯車減速装置110側の側板の上部から、遊星歯車減速装置110側へ水平に伸ばされたアーム183と、アーム183の先端部下面に取り付けられた押圧部材184を有している。
【0087】
ここで、図10(a)は、ドラムユニット181の複写機本体への装着時に、押圧部材184が、収容ケース143上に設けられた感光体ドラム40に近い側の加圧コロA146を、下方へ押し下げる際の態様を図示している。また、図10(b)は、ドラムユニット181の複写機本体への装着時に、押圧部材184が、収容ケース143上に設けられた感光体ドラム40から離れた側の加圧コロB147を、下方へ押し下げる際の態様を図示している。
【0088】
図10(a)、(b)に示すように、ドラムユニット181の複写機本体への装着時に、まず、押圧部材184が加圧コロA146を下方へ押し下げ、押し下げられた加圧コロA146が補給グリース収容部140の収容ケース143及びグリース収容槽141を加圧する。すると、収容ケース143及びグリース収容槽141は変形し、グリース収容槽141内のグリースは、加圧されてパイプ142を介してグリース溜まり部132の上部に押し出される。さらにドラムユニット181が装着方向に移動すると、その移動にともない、押圧部材184は加圧コロA146上を通りすぎ、加圧コロA146は通常の高さまでバネ部材A148の押圧力により移動して収容ケース143への加圧は解除される。そして、さらにドラムユニット181が装着方向に移動すると、今度は、押圧部材184は加圧コロB147を下方へ押し下げ、押し下げられた加圧コロB147が補給グリース収容部140の収容ケース143及びグリース収容槽141を加圧する。すると、収容ケース143及びグリース収容槽141は変形し、再度、グリース収容槽141内のグリースは加圧されてパイプ142を介してグリース溜まり部132の上部に押し出される。
【0089】
このような、補給グリース収容部140のグリース収容槽141内のグリースへの加圧が、ドラムユニット181の交換時、つまり、古いドラムユニット181の取り外し時と、新しいドラムユニット181の装着時に行なわれることとなる。また、本実施例では加圧コロの個数を2個としたが、これに限定されるものではなく、グリースの押し出しに必要な容量や、グリースの粘度によって決定する。
【0090】
このように、本実施例では、一定時間経過する毎、又は一定プリント枚数毎に、人的に行われる交換動作に連動して、グリースを補給グリース収容部140からグリース溜まり部132に移動させることができる。また、この加圧手段150は、簡単な機械的動作で行われるので、装置の大型化、高コスト化をすることもない。したがって、さらに安定した状態で、モータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部へグリース供給を行なうことができる。
【0091】
以上、本実施形態の遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105では、次のような作用・効果を奏することができる。遊星歯車114と固定内歯歯車112が噛み合うことで押し出され、遊星歯車減速装置110のハウジング111内に飛散したグリースを、公転する遊星歯車114の入力側側面に対向するグリース溜まり部132で受け回収できる。そして、グリース溜まり部132で回収したグリースを、太陽歯車であるモータギヤ部113と遊星歯車114の噛み合い部近傍に配置したグリース返し部133に導き、再度、モータギヤ部113の遊星歯車114との噛み合い部の上流側端部ぎりぎりの位置に戻せる。このように、飛散したグリースをモータギヤ部113の遊星歯車114との噛み合い部の上流側端部ぎりぎりの位置に戻すことで、噛み合い部でのグリースの枯渇を防止し、潤滑を継続して行うことでギヤ磨耗をなくすことができる。また、遊星歯車減速装置110のハウジング111内にグリース溜まり部132とグリース返し部133を有するグリース補給手段130を設けるだけの簡単な構成であり、モータギヤ部113に接触しない。そのため、遊星歯車減速装置110の高精度な回転特性を劣化させることもない。よって、簡単にして確実、かつ遊星歯車減速装置110の高精度な回転特性を劣化させることなくグリースの供給を行い、ギヤの摩耗をなくし、従来に比べて飛躍的な高耐久性を獲得できる、遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105を提供できる。
また、本実施形態の遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105では、次のような作用・効果を奏することができる。重力の作用に加え、扇状部材131を駆動モータ125を含めた遊星歯車減速装置110の稼動時の微小振動に共振させ、この加振振動も利用でき、徐々に下側方向に移動してモータギヤ部127に押し出すようにして滴下し供給することで磨耗の進行を防止できる。よって、ギヤの摩耗をなくし、従来に比べて飛躍的な高耐久性を獲得できる、遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105を提供できる。
また、本実施形態の遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105では、次のような作用・効果を奏することができる。駆動モータ125を含めた遊星歯車減速装置110の稼動時の微小振動と重力の作用によるグリースの移動効果に加え、駆動モータ125の発熱をグリース溜り部132やグリース返し部133に伝熱させ、短時間で、グリースの粘度を下げて流動性を上げれる。短時間で、グリースの粘度を下げて流動性を上げれるので、低温環境下での画層形成装置の起動後であっても、モータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部へのグリース供給を行いやすくなった。これにより磨耗の進行を防止し、耐久寿命を延ばすことが可能となった。よって、低温環境下であっても、ギヤの摩耗をなくし、従来に比べて飛躍的な高耐久性を獲得できる、遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105を提供できる。
また、本実施形態の遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105では、グリースが形成した溝に誘導され、モータギヤ部113上の供給すべき位置に向けた移動効率が向上する。さらに、グリース補給手段130が有するグリース溜まり部132及びグリース返し部133の移動面の平滑化処理により、グリースが途中で引っ掛かってしまう移動障害もなく、安定的なグリースの移動が可能となる。したがって、モータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部への安定したグリース供給を行なうことができる。よって、ギヤの摩耗をなくし、従来に比べて飛躍的な高耐久性を獲得できる、遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105を提供できる。
また、本実施形態の遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105では、複写機のメンテナンス時にサービスマンが、収容ケース143の上面を下方へ押し下げるという簡単な補給作業を行なうだけで、長期間に亘る、安定的なグリース供給を可能にできる。よって、長期間に亘り、ギヤの摩耗をなくし、従来に比べて飛躍的な高耐久性を獲得できる、遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105を提供できる。
また、本実施形態の遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105では、次のような作用・効果を奏することができる。グリースを自己循環させたり、粘性の低下で流動性を上げて供給することによる作用・効果に加え、一定時間経過する毎、又は一定プリント枚数毎に強制的にグリースを補給グリース収容部140からグリース溜まり部132に移動させることができる。したがって、さらに安定した状態で、モータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部へグリース供給を行なうことができる。よって、ギヤの摩耗をなくし、従来に比べて飛躍的な高耐久性を獲得できる、遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105を提供できる。また、カム駆動制御部160でCPU161により積算されている、稼働時間情報又はプリント枚数情報により確実な供給タイミングを設定することができるので、確実にモータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部の潤滑を行うことが出来る。よって、ギヤの摩耗をなくし、従来に比べて飛躍的な高耐久性を獲得できる、遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105を提供できる。
また、本実施形態の遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105では、次のような作用・効果を奏することができる。グリースを自己循環させたり、粘性の低下で流動性を上げて供給することによる作用・効果に加え、一定時間経過する毎、又は一定プリント枚数毎に、人的に行われる交換動作に連動して、グリースを補給グリース収容部140からグリース溜まり部132に移動させることができる。また、この加圧手段150は、簡単な機械的動作で行われるので、装置の大型化、高コスト化をすることもない。したがって、さらに安定した状態で、モータギヤ部113と遊星歯車114との噛み合い部へグリース供給を行なうことができる。よって、ギヤの摩耗をなくし、従来に比べて飛躍的な高耐久性を獲得できる、遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105を提供できる。また、環境的な負荷を極力排除した遊星歯車減速装置110内へのグリース供給機構105を提供することが出来る。
また、本実施形態の遊星歯車減速装置110では、上述したようなグリース供給機構105を備えることで、グリース供給機構105と同様な作用・効果を奏することができる。
また、本実施形態の画像形成装置である複合機では、上述したような遊星歯車減速装置110のグリース供給機構105、又は上述した遊星歯車減速装置110を備えることで、グリース供給機構105又は遊星歯車減速装置110と同様な作用・効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0092】
38 画像形成ユニット
40 感光体ドラム
60 定着装置
70 現像装置
100 作像部
105 グリース供給機構
110 遊星歯車減速装置
111 ハウジング
112 固定内歯歯車
113 モータギヤ部
114 遊星歯車
115 キャリア
124 エンドプレート
125 駆動モータ
127 モータ軸
130 グリース補給手段
131 扇状部材
132 グリース溜まり部
133 グリース返し部
136 伝熱部
139a 突出部
139b 質量体
140 補給グリース収容部
141 グリース収容槽
142 パイプ
143 収容ケース
144 ブラケット
145 空気弁
150 加圧手段
153 アクチュエータ
157 カム
180 加圧手段
181 ドラムユニット
182 ドラムホルダー
183 アーム
184 押圧部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【特許文献1】特開2005−248974号公報
【特許文献2】特開平10−202467号公報
【特許文献3】特開2001−208173号公報
【特許文献4】実公平06−013408号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ハウジングに固定された固定内歯歯車と、太陽歯車と、前記固定内歯歯車と前記太陽歯車とに噛み合う複数の遊星歯車と、複数の前記遊星歯車を回動自在に支持すると共に、前記ハウジングに回動自在に支持されたキャリアと、を有する遊星歯車減速装置内にグリースを供給するグリース供給機構において、
前記遊星歯車の側面に対向し、前記ハウジング内に飛散したグリースを回収するグリース溜まり部と、
前記太陽歯車と前記遊星歯車との噛み合い部近傍に位置し、前記グリース溜まり部が回収したグリースを、前記太陽歯車の前記遊星歯車との噛み合い部近傍に滴下するグリース返し部と、
を有するグリース補給手段を備えていることを特徴とするグリース供給機構。
【請求項2】
請求項1に記載のグリース供給機構において、
グリース補給手段が有するグリース溜まり部及びグリース返し部は、太陽歯車の回転軸を中心に上方に開くように形成された扇状部材を構成する部分であり、
前記グリース返し部は、前記太陽歯車の周面に近接する部分を、前記グリース溜まり部は該太陽歯車の周面から離れた部分を構成しており、
前記グリース溜まり部及び前記グリース返し部は、前記太陽歯車及び前記遊星歯車の回転に対して静止状態を維持するように、該太陽歯車から離れた側で遊星歯車減速装置のハウジングに固定されていることを特徴とするグリース供給機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のグリース供給機構において、
グリース溜まり部及びグリース返し部は、振動可能に構成されていることを特徴とするグリース供給機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一に記載のグリース供給機構において、
グリース補給手段が有するグリース溜まり部及びグリース返し部は、高熱伝達率材料からなり、
前記グリース補給手段の前記グリース溜まり部から延出して形成された部分が、同時に遊星歯車減速装置のハウジング内に組み込まれるモータ軸を備えた、駆動モータの一部に接触して取り付けられることを特徴とするグリース供給機構。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一に記載のグリース供給機構において、
グリース補給手段が有するグリース溜まり部及びグリース返し部の、遊星歯車が設けられている側の面には、太陽歯車の回転軸方向に向かう複数の凹溝が形成されるとともに、平滑処理がされていることを特徴とするグリース供給機構。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一に記載のグリース供給機構において、
グリース溜まり部のグリース移動方向の上流側に接続する、補給グリース収容部を有しており、
前記補給グリース収容部を加圧することで、該補給グリース収容部からグリース溜まり部に補給グリースを移動させるように構成されていることを特徴とするグリース供給機構。
【請求項7】
請求項6に記載のグリース供給機構において、
補給グリース収容部を加圧して、強制的に補給グリースをグリース溜まり部に移動させる加圧手段を備え、
グリースを供給する遊星歯車減速装置を備えた装置の稼動状況に応じて、所定のタイミングで前記遊星歯車減速装置を備えた装置の制御部から送信される信号に基づいて、前記加圧手段を動作させ、補給グリース収容部からグリース溜まり部に補給グリースを移動させることを特徴とするグリース供給機構。
【請求項8】
請求項6に記載のグリース供給機構において、
補給グリース収容部から、補給グリースをグリース溜まり部に移動させる加圧手段を備え、
グリースを供給する遊星歯車減速装置を備えた装置の定期的に交換される、いずれかの交換体の交換時に、前記交換体の一部に設けた連動部と機械的に連動して、前記加圧手段を動作させ、補給グリース収容部からグリース溜まり部に補給グリースを移動させることを特徴とするグリース供給機構。
【請求項9】
請求項7に記載のグリース供給機構において、
グリースを供給する遊星歯車減速装置を備えた装置が画像形成装置であって、
前記加圧手段は、前記画像形成装置のプリント用紙枚数又は稼働時間に応じて、所定のタイミングで画像形成装置の制御部から送信される信号に基づいて動作し、グリースを移動させることを特徴とするグリース供給機構。
【請求項10】
請求項8に記載のグリース供給機構において、
グリースを供給する遊星歯車減速装置を備えた装置が画像形成装置であって、
前記加圧手段は、画像形成装置の感光体ドラムの交換時、又はトナーカートリッジの交換時、又はこれらが一体化されたプロセスカートリッジ等の交換時に、これら交換体の一部に設けた連動部と機械的に連動して、前記加圧手段を動作させ、補給グリース収容部からグリース溜まり部に補給グリースを移動させることを特徴とするグリース供給機構。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一に記載のグリース供給機構において、
太陽歯車は、モータ軸上に形成されたモータギヤであることを特徴とするグリース供給機構。
【請求項12】
グリース供給機構として、請求項1乃至11のいずれか一に記載のグリース供給機構を用いることを特徴とする遊星歯車減速装置。
【請求項13】
グリース供給機構として、請求項1乃至11のいずれか一に記載のグリース供給機構、又は請求項12に記載の遊星歯車減速装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−62978(P2012−62978A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208595(P2010−208595)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】