説明

遊水池装置

【課題】全体の高さを向上可能としつつ施工性を向上した遊水池装置を提供する。
【解決手段】互いに隣接するブロック列16間、および、ブロック列16と外枠部の第1端部ブロック35との間の上端部にそれぞれ頂版スラブ18を橋架するとともに、頂版スラブ18よりも下方にて、互いに隣接するブロック列16間、および、ブロック列16と外枠部の第1端部ブロック35との間に中間スラブ19を橋架することで、ブロック列16により外枠部17をブロック列16の列方向に支持するとともに、頂版スラブ18と中間スラブ19とが梁状となってブロック列16に交差する方向に外枠部を上下二箇所で支持する。外枠部の厚みを必要以上に大きくすることなく水平土圧に対する強度を向上できるから、プレキャスト遊水池の全体の重量を軽量化でき、施工性を向上できるとともに、全体の高さを高くしても重量が大きくなることを抑制できるので、全体の高さを向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状体を並列に複数配設した複数の柱状体列の互いに隣接する上端部に頂版部をそれぞれ橋架した遊水池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば遊水池本体を地下に配置し大量の雨水を一時的に貯溜するとともに、その上面を人工基盤として利用する遊水池装置がある。
【0003】
このような遊水池装置において、空隙貯留型のプラスチック系遊水池が増加してきている中、プレキャストコンクリートなどのコンクリートにより形成される空間貯留型のプレキャスト遊水池は、維持管理が容易である点、あるいは鉄筋コンクリートの耐久性などにより、高い評価を受けている。
【0004】
そして、このようなプレキャスト遊水池としては、端部ブロックで囲まれた外枠部内に、板状の底版部を下端部に備えた柱状体を並列に複数配設して柱状体列を形成し、互いに隣接する柱状体列間にて、それぞれの柱状体の上端部に形成した載置部に板状の頂版部を橋架するとともに、互いに隣接する柱状体列の底版部間を現場打ちコンクリートにて連結したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−90913号公報(第2−3頁、図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、遊水池装置は、近年大型化してきており、特に都市部においては、土地不足からその施設高さが深くなる傾向にある。
【0006】
しかしながら、上述のようなプレキャスト遊水池では、施設高さが高くなると、水平土圧に対する耐久性を確保するために端部ブロックの壁厚が厚くなり、全体の重量が大きくなってしまい、重量的な制限から所定高さ以上のものを施工して製作することが容易でないという問題点を有している。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、全体の高さを向上可能としつつ施工性を向上した遊水池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の遊水池装置は、地盤上に柱状体を並列に複数配設した複数の柱状体列と、これら柱状体列の外周を囲む外枠部と、互いに隣接する前記柱状体列間、および、前記柱状体列と前記外枠部との間の上端部にそれぞれ橋架された頂版部と、これら頂版部の下方の所定位置にて、互いに隣接する前記柱状体列間、および、前記柱状体列と前記外枠部との間にそれぞれ橋架された分割床版部とを具備したものである。
【0009】
そして、地盤上に柱状体を並列に複数配設して複数の柱状体列を形成し、互いに隣接する柱状体列間、および、これら柱状体列と柱状体列の外周を囲む外枠部との間の上端部にそれぞれ頂版部を橋架するとともに、これら頂版部よりも下方にて、互いに隣接する柱状体列間、および、柱状体列と外枠部との間に分割床版部を橋架することで、柱状体列により外枠部を柱状体列の列方向に支持するとともに、頂版部と分割床版部とが梁状となって柱状体列に交差する方向に外枠部を上下二箇所で支持するので、外枠部の厚みを必要以上に大きくすることなく水平土圧に対する強度を向上できるから、全体の重量を軽量化することが可能となり、施工性が向上するとともに、全体の高さを高くしても重量が大きくなることが抑制され、全体の高さを向上可能となる。
【0010】
請求項2記載の遊水池装置は、請求項1記載の遊水池装置において、各柱状体列の柱状体間に一つ置きに形成され、前記各柱状体列間および前記柱状体列と外枠部との間をそれぞれ連通する複数の通水孔を具備し、分割床版部の少なくとも一部が、前記各通水孔の間に位置する前記柱状体にて前記各柱状体列間および前記柱状体列と前記外枠部との間に橋架されているものである。
【0011】
そして、各柱状体列の柱状体間に一つ置きに形成した複数の通水孔間の柱状体にて各柱状体列間、および、柱状体列と外枠部との間に分割床版部の少なくとも一部を橋架することで、通水孔を避けて分割床版部の少なくとも一部を配設し、通水孔の通水性を確保する。
【0012】
請求項3記載の遊水池装置は、請求項1または2記載の遊水池装置において、柱状体が、地盤上に配設される底版部を下端部に備え、外枠部が、地盤上に配設される外枠底版部を下端部に備え、前記底版部が、柱状体列の列方向に沿って互いに連結され、現場打ちコンクリートにより形成され、互いに隣接する前記各柱状体列の前記柱状体の底版部間、および、前記柱状体列の底版部と前記外枠部の外枠底版部との間を一体的に連結する連結部を具備したものである。
【0013】
そして、柱状体の下端部の底版部を柱状体列の列方向に沿って互いに連結するとともに、互いに隣接する柱状体列の柱状体の底版部間、および、柱状体列の柱状体の底版部と外枠部の下端部の外枠底版部との間を、現場打ちコンクリートにより形成した連結部で一体的に連結することで、底版部および外枠底板部と連結部とによりべた基礎が形成されるので、耐震性が向上するとともに、軟弱地盤などに対する不同沈下などをも抑制可能となる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の遊水池装置によれば、地盤上に柱状体を並列に複数配設して複数の柱状体列を形成し、互いに隣接する柱状体列間、および、これら柱状体列と柱状体列の外周を囲む外枠部との間の上端部にそれぞれ頂版部を橋架するとともに、これら頂版部よりも下方にて、互いに隣接する柱状体列間、および、柱状体列と外枠部との間に分割床版部を橋架することで、柱状体列により外枠部を柱状体列の列方向に支持するとともに、頂版部と分割床版部とが梁状となって柱状体列に交差する方向に外枠部を上下二箇所で支持するので、外枠部の厚みを必要以上に大きくすることなく水平土圧に対する強度を向上できるから、全体の重量を軽量化でき、施工性を向上できるとともに、全体の高さを高くしても重量が大きくなることが抑制されるので、全体の高さを向上できる。
【0015】
請求項2記載の遊水池装置によれば、請求項1記載の遊水池装置の効果に加えて、各柱状体列の柱状体間に一つ置きに形成した複数の通水孔間の柱状体にて各柱状体列間、および、柱状体列と外枠部との間に分割床版部の少なくとも一部を橋架することで、通水孔を避けて分割床版部の少なくとも一部を配設し、通水孔の通水性を確保できる。
【0016】
請求項3記載の遊水池装置によれば、請求項1または2記載の遊水池装置の効果に加えて、柱状体の下端部の底版部を柱状体列の列方向に沿って互いに連結するとともに、互いに隣接する柱状体列の柱状体の底版部間、および、柱状体列の柱状体の底版部と外枠部の下端部の外枠底版部との間を、現場打ちコンクリートにより形成した連結部で一体的に連結することで、底版部および外枠底板部と連結部とによりべた基礎が形成されるので、耐震性を向上できるとともに、軟弱地盤などに対する不同沈下などをも抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態の遊水池装置の構成を図1ないし図6を参照して説明する。
【0018】
図1ないし図4において、1は遊水池装置であり、この遊水池装置1は、平面視で四角形状に形成され雨水などを一時的に溜める遊水池本体としてのプレキャスト遊水池2と、このプレキャスト遊水池2に雨水を流入させる流入口3と、プレキャスト遊水池2の管理用の管理孔4,5,6,7,8,9と、プレキャスト遊水池2内に一時的に溜められた雨水などから空気を抜くエア抜き孔10とを有し、地下に埋設されて上部に盛り土11が施され、この盛り土11の上部が適宜施設として利用されるものである。
【0019】
なお、以下、便宜的に、図3および図4に示す左右方向を左右方向とし、図3および図4に示す下側を前側、上側を後側として説明する。
【0020】
プレキャスト遊水池2は、内部に鉄筋などの鋼材を埋設したプレキャストコンクリート製の柱状体としての中間ブロック15を左右方向に連続して複数有し前後方向に互いに並列に配設された複数の柱状体列としてのブロック列16と、これらブロック列16の外周を囲む平面視四角形枠状の外枠部17と、互いに隣接するブロック列16の上端部間、および、前後端に位置したブロック列16と外枠部17との間にそれぞれ橋架されたプレキャストコンクリート製の頂版部としての頂版スラブ18と、この頂版スラブ18の下方にて、互いに隣接するブロック列16の上端部間、および、前後端に位置したブロック列16と外枠部17との間にそれぞれ橋架されたプレキャストコンクリート製の分割床版部としての中間スラブ19とを備えている。
【0021】
そして、ブロック列16を構成する各中間ブロック15は、敷地24上に配設される底版部としてのフーチング部25と、このフーチング部25から上方に突設された柱状体本体としてのブロック本体26と、このブロック本体26の上端部に形成され頂版スラブ18が載置される載置部27と、ブロック本体26の上下方向の略中心域に形成され中間スラブ19が載置される中間載置部28とを有している。
【0022】
ここで、敷地24は、例えば平滑に形成された地盤24a上に、基礎砕石層24bと、基礎コンクリート層24cと、薄い敷きモルタル層24dとを順次設けることにより、多層状に形成されている。
【0023】
また、フーチング部25は、平面視四角形状に形成され、ブロック列16の列方向である左右方向に連続的に配設され、図示しないPC鋼棒などにより互いに連結されているとともに、互いに隣接するブロック列16の各フーチング部25は前後方向に互いに離間されている。
【0024】
そして、これら離間された前後方向のフーチング部25間には、プレキャスト遊水池2の左右両側に亘って連続する連結部31が図示しない配筋にコンクリートを現場打ちして形成され、これら連結部31により、フーチング部25全体が前後方向に一体的に連結されている。
【0025】
さらに、ブロック本体26は、フーチング部25から上方に略垂直に突設され、前後方向に壁状に形成されている。また、このブロック本体26の載置部27よりも下側の位置は、図2に示すように、右側、あるいは左側に突設された幅広部32となっている。
【0026】
そして、ブロック列16は、図1ないし図4に示すように、一対の中間ブロック15の幅広部32を互いに左右に突き合わせてこれら対をなす中間ブロック15を多数配設することで、各対をなす中間ブロック15間にて幅広部32の下方に通水孔33を形成している。したがって、通水孔33は、各ブロック列16の中間ブロック15間に一つ置きに形成されている。
【0027】
なお、互いに突き合わせられた幅広部32同士は、図示しないPC鋼棒などにより互いに連結されている。
【0028】
また、載置部27は、ブロック本体26の幅広部32の上部全体にて前後方向に突設され、頂版スラブ18の前後端部が嵌合する位置決め用の嵌合凹部34,34が切り欠き形成されている。
【0029】
さらに、中間載置部28は、載置部27と同様に、ブロック本体26の前後方向に突設され、上面に中間スラブ19の前後端部が載置される。
【0030】
一方、外枠部17は、図3および図4に示すように、プレキャスト遊水池2の前後端部に、ブロック列16に並列に左右方向に沿ってそれぞれ設けられた第1端部ブロック35,35と、ブロック列16の左右両側部に、ブロック列16に直交する方向に前後方向に沿ってそれぞれ設けられた第2端部ブロック36,36とにより、平面視で四角形枠状に形成されている。
【0031】
各第1端部ブロック35は、図1ないし図4に示すように、ブロック列16と同様の形状を有している。すなわち、各第1端部ブロック35は、それぞれ外枠柱状体としての断面L字状の外枠ブロック41を左右方向に連続して配設することで形成され、各外枠ブロック41は、敷地24上に配設される外枠底版部としての外枠フーチング部42と、この外枠フーチング部42から上方に突設された外枠柱状体本体としての外枠ブロック本体43と、この外枠ブロック本体43の上端部に形成され頂版スラブ18が載置される外枠載置部44と、外枠ブロック本体43の上下方向の略中心域に形成され中間スラブ19が載置される外枠中間載置部45とを有している。
【0032】
そして、外枠フーチング部42は、平面視四角形状に形成され、左右方向に連続的に配設され、図示しないPC鋼棒などにより互いに連結されているとともに、隣接するブロック列16のフーチング部25と前後方向に互いに離間され、これら離間されたフーチング部25と外枠フーチング部42との間は、連結部31により一体的に連結されている。このため、フーチング部25、外枠フーチング部42および連結部31により、べた基礎となる底部46が形成されている。
【0033】
さらに、外枠ブロック本体43は、プレキャスト遊水池2の前後の盛り土から土圧を受ける部分であり、ブロック本体26と略等しい高さ寸法を有し、ブロック本体26よりも厚みが大きく形成されている。また、これら外枠ブロック本体43は、外枠フーチング部42から上方に略垂直に突設され、前後方向に壁状に形成され、左右方向に隣接する外枠ブロック本体43同士は、略隙間なく連続している。そして、これら外枠ブロック本体43は、プレキャスト遊水池2の外側に位置する面が若干傾斜状に形成され、下側から上側へと漸次厚みが小さくなるように形成されている。
【0034】
また、外枠載置部44は、外枠ブロック本体43の上端部にてプレキャスト遊水池2の前後方向中心側、すなわち隣接するブロック列16側に突設され、頂版スラブ18の前端部、あるいは後端部が嵌合する位置決め用の外枠嵌合凹部47が切り欠き形成されている。
【0035】
さらに、外枠中間載置部45は、外枠載置部44と同様に、プレキャスト遊水池2の前後方向中心側、すなわち隣接するブロック列16側に突設され、上面に中間スラブ19の前後端部が載置される。
【0036】
そして、第2端部ブロック36は、プレキャスト遊水池2の左右両側全体に沿って連続した壁状の部材であり、ブロック本体26よりも若干大きい高さ寸法を有し、第1端部ブロック35の外枠ブロック本体43の厚みと略等しい厚みに形成されている。また、これら第2端部ブロック36は、プレキャスト遊水池2の外側に位置する面が若干傾斜状に形成されて下側から上側へと漸次厚みが小さくなるように形成され、敷地24上に配設されている。
【0037】
また、頂版スラブ18は、平面視四角形状のプレキャストコンクリート板体であり、ブロック列16の間隔、あるいはブロック列16と外枠部17の第1端部ブロック35との間隔と略等しい長手寸法と、フーチング部25と略等しい短手寸法とを有し、隣接するブロック列16間、および、前後端に位置したブロック列16と外枠部17の第1端部ブロック35との間に、長手方向が前後方向となるように橋架され、プレキャスト遊水池2の梁となる。
【0038】
さらに、これら頂版スラブ18は、四隅に図示しない孔部がそれぞれ設けられ、これら孔部に、載置部27の嵌合凹部34および外枠載置部44の外枠嵌合凹部47のそれぞれの上面に突設された図示しないPC鋼棒などが挿入されて締結されることで中間ブロック15および外枠ブロック41に連結固定されている。
【0039】
そして、これら頂版スラブ18の上面は、橋架状態で左右方向に連続するとともに、前後方向に中間ブロック15の上部で若干離間され、この離間部48に図示しない充填材が充填されることで略水平な面を形成し、第2端部ブロック36の上端部と略面一となっており、プレキャスト遊水池2の上面全体を覆っている。
【0040】
また、中間スラブ19は、頂版スラブ18と略等しい長手寸法と、これら頂版スラブ18よりも若干小さい短手寸法とを有する平面視四角形状のプレキャストコンクリート板体であり、隣接するブロック列16間、および、前後端に位置したブロック列16と外枠部17の第1端部ブロック35との間に、長手方向が前後方向となるように橋架されるとともに隣接する中間載置部28に左右方向に跨るように載置されて略水平な面を形成し、プレキャスト遊水池2の梁および保守管理用の足場となるものである。すなわち、これら中間スラブ19は、通水孔33を避けた位置にそれぞれ配設され、互いに隣接するブロック列16間を連結している。
【0041】
さらに、これら中間スラブ19は、四隅に図示しない孔部がそれぞれ設けられ、これら孔部に、中間載置部28および外枠中間載置部45のそれぞれの上面に突設された図示しないPC鋼棒などが挿入されて締結されることで中間ブロック15および外枠ブロック41に連結固定されている。
【0042】
この結果、プレキャスト遊水池2の内部には、中間スラブ19と底部46との間の下段と、中間スラブ19と頂版スラブ18との間の上段とが形成されている。
【0043】
また、管理孔6,7の右側方に位置する中間スラブ19,19は、他の中間スラブ19よりも若干左右に幅広に形成され、これら中間スラブ19,19上には、落下防止用の手摺51が設けられている。さらに、これら中間スラブ19,19と、これら中間スラブ19,19の右側方の中間スラブ19,19との間には、分割床版部としてのプレキャストコンクリート製の四角形板体である中間スラブ52,52が配設され、これら中間スラブ52,52の左右両側の前後端がそれぞれ中間載置部28に載置されてこれら中間スラブ52,52がブロック列16間に橋架されている。すなわち、これら中間スラブ52,52は、通水孔33を横断するように配設されている。
【0044】
また、プレキャスト遊水池2の右側から二列目の中間スラブ19には、中間スラブ52,52の前方と後方とに位置してそれぞれ落下防止用の手摺54がそれぞれ設けられている。さらに、これら中間スラブ19とプレキャスト遊水池2の最も右側に位置する中間スラブ19との間には、分割床版部としての中間スラブ56がそれぞれ配設され、これら中間スラブ56の左右両側の前後端がそれぞれ中間載置部28に載置されてこれら中間スラブ56がブロック列16間に橋架されている。すなわち、これら中間スラブ56は、通水孔33を横断するように配設されている。
【0045】
そして、これら中間スラブ56の前後間には、グレーチング蓋57がそれぞれボルト締めにより連結され、これら中間スラブ56を互いに連結している。
【0046】
一方、流入口3は、例えば左側の第2端部ブロック36の前側の下部に穿設された孔部からプレキャスト遊水池2の外方へと突出し、雨水などがプレキャスト遊水池2内へと流入するする管部である。すなわち、流入口3は、プレキャスト遊水池2内の下段に連通している。
【0047】
また、管理孔4は、掃除管理用のものであり、例えばプレキャスト遊水池2の左前側、すなわち流入口3の上方にて、頂版スラブ18に穿設されている。この管理孔4の上部には、図示しないマンホールが設置される。
【0048】
同様に、管理孔5は、掃除管理用のものであり、例えばプレキャスト遊水池2の右後側寄りの中間スラブ19の間の位置にて頂版スラブ18に穿設され、図5に示すように、上部にマンホール61が設置されている。さらに、この管理孔5の下方には、プレキャスト遊水池2に一時的に溜められた雨水に含まれる泥などの夾雑物を溜める凹状の泥溜部62が連結部31に設けられている。
【0049】
また、管理孔6,7は、ポンプ管理用のものであり、管理孔5の後方にて頂版スラブ18の上部に穿設され、上部にマンホール63,64が設置されている。さらに、これら管理孔6,7の下方には、プレキャスト遊水池2(図3)内に溜まった雨水などを外部に排出するポンプ66,67を収容した凹状のポンプピット68,69が連結部31にそれぞれ設けられ、これらポンプピット68,69の上方には、これらポンプピット68,69全体の上部を覆って夾雑物除去用のスクリーン71,72がそれぞれ着脱可能に配設されている。
【0050】
そして、管理孔7内には、ポンプ67に連結された配管74が下方から挿入され、この配管74には流量を調整する弁体75が設けられ、また、この弁体75の下流側である上部からはポンプ66に連結された分岐管76が分岐され、この分岐管76には、流量を調整する弁体77が設けられている。そして、配管74の上端部は、マンホール64内にて右側に屈曲され、排出側である先端がマンホール64の外部へと突出し、予め埋設された図示しない流出路に接続されている。
【0051】
また、管理孔8,9は、図3ないし図6に示すように、それぞれプレキャスト遊水池2の右後側および左前側の位置にてそれぞれ頂版スラブ18に穿設され、上部にマンホール81,82がそれぞれ設置されている。これらマンホール81,82の下部には、管理孔8,9内を通して梯子部83,84が中間スラブ19,56の上部まで設けられ、この梯子部83近傍の中間スラブ19,19には、プレキャスト遊水池2の底部46との間を昇降可能とするステップ86,87がそれぞれ設けられている。
【0052】
そして、管理孔4の右側方の連結部31には、プレキャスト遊水池2内に流入した雨水などを導く導水溝88が右側方へと延設され、この導水溝88は、管理孔5,6,7の前側から後方へと屈曲され、連結部31およびフーチング部25と交差してプレキャスト遊水池2内の後部まで連続して形成されている。
【0053】
次に、上記一実施の形態の施工方法を説明する。
【0054】
まず、プレキャスト遊水池2の設置場所の地面を掘削して、地盤24aを略平滑に形成し、この地盤24a上に基礎砕石層24bを造設し、この基礎砕石層24bの上部に、現場打ちコンクリートにて基礎コンクリート層24cを設け、この基礎コンクリート層24cの上部を敷きモルタル層24dにより均す。
【0055】
このとき、泥溜部62およびポンプピット68,69に対応する位置を予め凹状に形成しておく。
【0056】
次に、敷地24の周縁部に、外枠ブロック41を外枠フーチング部42が内方に位置するように配置し、これら外枠ブロック41をそれぞれ左右方向にPC鋼棒などで連結してモルタルなどで結合し、第1端部ブロック35をそれぞれ形成するとともに、第2端部ブロック36を前後方向に形成してこれら端部ブロック35,36を四隅で連結して平面視四角形状の外枠部17を形成し、敷地24の周縁部を閉止する。
【0057】
なお、この外枠部17の第2端部ブロック36には、流入口3を形成する。
【0058】
また、この外枠部17の形成作業と併行してあるいは終了後に、この外枠部17より内側に位置する敷地24の中間部に、複数の中間ブロック15を前後左右方向に、互いに所定の等間隔にて、すなわち碁盤目状に配置して、互いに平行に設置固定する。このとき、前後左右にそれぞれ隣接する中間ブロック15が、プレキャスト遊水池2の外枠部17の左右方向および前後方向に沿って直線状となるように配設する。
【0059】
次いで、この中間ブロック15を、フーチング部25および外枠フーチング部42などの位置でブロック列16毎に左右方向にPC鋼棒およびモルタルなどにより連結するとともに、前後に隣接するブロック列16のフーチング部25間に現場打ちコンクリート打ちで連結部31を形成して、プレキャスト遊水池2の底部46を形成する。
【0060】
このとき、泥溜部62、ポンプピット68,69および導水溝88を同時に形成する。
【0061】
さらに、前後に隣接する中間ブロック15の載置部27間、および、中間ブロック15の載置部27と外枠ブロック41の外枠載置部44との間に、頂版スラブ18を順次橋架するとともに、前後に隣接する中間ブロック15の中間載置部28間、および、中間ブロック15の載置部27と外枠ブロック41の外枠中間載置部45との間に、中間スラブ19,52,56を橋架する。
【0062】
このとき、載置部27および外枠載置部44では、図示しないPC鋼棒などを突出して頂版スラブ18の四隅に設けた図示しない孔部などに挿通して締結し、離間部48にはモルタルなどを充填して、プレキャスト遊水池2の上面を略面一に形成する。
【0063】
同様に、中間載置部28および外枠中間載置部45でも、図示しないPC鋼棒などを突出して中間スラブ19の四隅に設けた図示しない孔部などに挿通して締結し、中間ブロック15および外枠ブロック41と一体的とする。
【0064】
さらに、中間スラブ52,52を、中間スラブ19と同様にして中間載置部28に連結固定するとともに、中間スラブ56を、中間スラブ19と同様に中間載置部28および外枠中間載置部45に連結固定子、これら中間スラブ56間に、グレーチング蓋57をボルト締めにより連結する。
【0065】
この状態で、左右方向に並設された中間ブロック15間に通水孔33がそれぞれ形成されるとともに、前後方向に並設されたブロック列16間に遊水池空間が構成される。
【0066】
また、頂版スラブ18の所定位置に穿設された管理孔4の上部に図示しないマンホールを設置する。同様に、頂版スラブ18の所定位置にそれぞれ穿設された管理孔5,6,7,8,9の上部に、それぞれマンホール61,63,64,81,82を設置し、マンホール81,82内には梯子部83,84を設けるとともに、ポンプピット68,69にポンプ66,67およびスクリーン71,72を配設し、ポンプ66,67に、弁体77を設けた分岐管76と弁体75を設けた配管74とをそれぞれ連結し、これら分岐管76と配管74とを互いに接続して、配管74の上端部を管理孔7に挿通し、マンホール64から外方へと突出させ、予め埋設された流出路に接続する。
【0067】
同時に、中間スラブ19にそれぞれ手摺51,54およびステップ86,87などを配設する。
【0068】
そして、上記遊水池装置1を盛り土11により埋め戻し、この盛り土11の上部を適宜施設として使用可能とする。
【0069】
次に、上記一実施の形態の作用を説明する。
【0070】
流入口3から流入した雨水などの水は、通水孔33などを介してブロック列16間に一時的に貯溜され、導水溝88により泥溜部62へと導かれて泥などがこの泥溜部62に溜められた後、スクリーン71,72を通過してポンプピット68,69内に流入する。
【0071】
これらポンプピット68,69に流入した水は、ポンプ66,67の動作によりそれぞれ分岐管76および配管74へと吸い上げられ、弁体77,75を介して合流した後、流出路を経由して外部へと放出される。
【0072】
上述したように、上記一実施の形態では、互いに隣接するブロック列16間、および、これらブロック列16と外枠部17の第1端部ブロック35との間の上端部にそれぞれ頂版スラブ18をそれぞれ橋架するとともに、これら頂版スラブ18よりも下方にて、互いに隣接するブロック列16間、および、これらブロック列16と外枠部17の第1端部ブロック35との間に中間スラブ19,52,56をそれぞれ橋架する構成とした。
【0073】
このため、ブロック列16により外枠部17の第2端部ブロック36がブロック列16の列方向に支持されるとともに、頂版スラブ18と中間スラブ19,52,56とが梁状となってブロック列16に交差する方向に外枠部17の第1端部ブロック35が上下二箇所で支持される。
【0074】
この結果、外枠部17の各端部ブロック35,36の厚みを必要以上に大きくすることなく水平土圧からの断面力を軽減して土圧に対する強度を向上できるから、全体の軽量化により、クレーンなどによる施工範囲を拡大できるなど、施工性を向上できるとともに、プレキャスト遊水池2の全体の高さを大きくして製作しても重量が必要以上に大きくならないので、重量制限により従来製作できなかった高さのプレキャスト遊水池2を製作可能となり、プレキャスト遊水池2の高さを向上可能となる。
【0075】
そして、施工性が向上することにより、遊水池装置1の設置に際して、工期を短縮でき、施工および製作のコストを低減できる。
【0076】
また、プレキャスト遊水池2の高さを向上できることで、大型化に際して土地不足から高さを要求される都市部での施工にも容易に対応できる。
【0077】
各ブロック列16の中間ブロック15間に一つ置きに通水孔33を形成し、これら通水孔33の間の中間ブロック15にて各ブロック列16間、および、ブロック列16と外枠部17の第1端部ブロック35との間に中間スラブ19を橋架することで、これら中間スラブ19が通水孔33を避けて配設されるので、通水孔33の通水性を確保できる。
【0078】
そして、中間ブロック15の下端部のフーチング部25をブロック列16の列方向に沿って互いに連結するとともに、互いに隣接するブロック列16の中間ブロック15のフーチング部25間、および、これらフーチング部25と外枠部17の第1端部ブロック35の外枠ブロック41の下端部の外枠フーチング部42との間を、現場打ちコンクリートにより形成した連結部31で一体的に連結することで、フーチング部25および外枠フーチング部42と連結部31とによりべた基礎となる底部46が形成されるので、プレキャスト遊水池2の耐震性を向上できるとともに、軟弱地盤などに対する不同沈下などをも抑制できる。
【0079】
しかも、中間ブロック15、頂版スラブ18、中間スラブ19および外枠ブロック41などをそれぞれプレキャストコンクリート製とすることにより、プレキャスト遊水池2の施工がより容易となり、工期をより短縮でき、施工および製作のコストを、より抑制できる。
【0080】
なお、上記一実施の形態において、フーチング部25および外枠フーチング部42を中間ブロック15および外枠ブロック41と別体のプレキャストコンクリート板体としたり、フーチング部25および外枠フーチング部42を現場打ちコンクリートにより形成したりすることも可能である。
【0081】
また、中間スラブ19,52,56は、底部46と頂版スラブ18との間の位置にて、二段以上設ける構成とすることも可能である。
【0082】
さらに、各種管理孔、エア抜き孔、ポンプピット、泥溜部などの個数および配設位置は任意に設定できる。この場合には、これらの個数および配設位置に対応して、中間スラブ、マンホールおよびステップなどを適宜設けることができる。
【0083】
またさらに、柱状体としては、中間ブロック15以外でも、例えばU字状のカルバート体など、任意のものを選択することが可能となる。
【0084】
そして、上記遊水池装置1の各部の形状の細部は、上記構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施の形態の遊水池装置を示す縦断面図である。
【図2】同上遊水池装置を示す横断面図である。
【図3】同上遊水池装置の内部構造を示す平面図である。
【図4】同上遊水池装置を示す平面図である。
【図5】同上遊水池装置を示す図3のA−A断面図である。
【図6】同上遊水池装置を示す図3のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 遊水池装置
15 柱状体としての中間ブロック
16 柱状体列としてのブロック列
17 外枠部
18 頂版部としての頂版スラブ
19,52,56 分割床版部としての中間スラブ
24a 地盤
25 底版部としてのフーチング部
31 連結部
33 通水孔
42 外枠底版部としての外枠フーチング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤上に柱状体を並列に複数配設した複数の柱状体列と、
これら柱状体列の外周を囲む外枠部と、
互いに隣接する前記柱状体列間、および、前記柱状体列と前記外枠部との間の上端部にそれぞれ橋架された頂版部と、
これら頂版部の下方の所定位置にて、互いに隣接する前記柱状体列間、および、前記柱状体列と前記外枠部との間にそれぞれ橋架された分割床版部と
を具備したことを特徴とした遊水池装置。
【請求項2】
各柱状体列の柱状体間に一つ置きに形成され、前記各柱状体列間および前記柱状体列と外枠部との間をそれぞれ連通する複数の通水孔を具備し、
分割床版部の少なくとも一部は、前記各通水孔の間に位置する前記柱状体にて前記各柱状体列間および前記柱状体列と前記外枠部との間に橋架されている
ことを特徴とした請求項1記載の遊水池装置。
【請求項3】
柱状体は、地盤上に配設される底版部を下端部に備え、
外枠部は、地盤上に配設される外枠底版部を下端部に備え、
前記底版部は、柱状体列の列方向に沿って互いに連結され、
現場打ちコンクリートにより形成され、互いに隣接する前記各柱状体列の前記柱状体の底版部間、および、前記柱状体列の底版部と前記外枠部の外枠底版部との間を一体的に連結する連結部を具備した
ことを特徴とした請求項1または2記載の遊水池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−23687(P2007−23687A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210076(P2005−210076)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(391034499)鶴見コンクリート株式会社 (15)
【Fターム(参考)】