説明

運搬用乗物の遮音方法及び装置

遮音方法は、(a)第1の密度を有する第1の媒質中に配置される実質周期的な少なくとも1つの構造体のアレイを含む、少なくとも1つの音波バリアであって、構造体が、第1の密度とは異なる第2の密度を有する第2の媒質から形成されており、第1の媒質及び第2の媒質のうちの一方が、縦波音波の伝播速度と、横波音波の伝播速度とを有する粘弾性媒質であり、縦波音波の伝播速度が横波音波の伝播速度の少なくとも約30倍であり、第1の媒質及び第2の媒質のうちの他方が粘弾性又は弾性媒質である、少なくとも1つの音波バリアを含む少なくとも1つの遮音装置を用意することと、(b)運搬用乗物の音響源領域と音響受信領域との間に遮音装置を介在させることとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2008年12月23日に出願された、米国仮出願第61/140,413号の優先権を主張し、その内容を本明細書に参考として組み込む。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、運搬用乗物(例えば、航空機、自動車、列車、及び船舶など)に有用な遮音方法に関し、別の態様では、乗物内の音波を減衰させる、又は遮音するのに使用する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
防音材料及び構造体には、運送業において重要な用途がある。例えば、一般的に、乗物の客室内の騒音レベルを下げることが望ましいと考えられる。交通騒音、風切り音、エンジン音、振動などの騒音、及び客室内から出る騒音は、各種吸音材又は音響反射材の使用により減衰させることができる。そのような材料として、例えば、天井材、トランクライナー、フードライナー、ダッシュマット、インテリアパネル、又は乗物室内の防音を高める敷物用及び他の装飾用若しくは機能性乗物外装材料を挙げることができる。
【0004】
遮音産業で使用されている従来の材料、例えば吸収体及び反射体は、通常、周波数選択的な音波制御を提供することなく、広い周波数範囲にわたって機能する。能動的雑音消去装置は周波数選択的な音波減衰を斟酌するが、この装置は、典型的には閉鎖空間内で最も有効であり、パワー及び制御を提供するために電子機器を包囲し及び装置を作動させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の吸音材(例えば、発泡体又は繊維材料)は、一般的に重量が比較的軽く、多孔質であり、吸音材の比較的広い表面積にわたって音波の振動エネルギを散逸するよう機能する。(例えば、2つの弾性基材の間に挟まれた空気層を含む)ヘルムホルツ共鳴器を吸音体として使用することもできる。しかし、通常、比較的低い可聴周波数で比較的良好な吸収特性を得るためには、どちらのタイプの吸収体にも比較的厚い構造が必要とされ(例えば、約500ヘルツ(Hz)未満の周波数に対して厚さが約50ミリメートル(mm))、そのような厚い構造は、制約された乗物空間での使用に対して問題となる場合がある。
【0006】
吸音体とは対照的に、従来の音波バリアは、材料による音波透過損失が、一般にその質量及び剛性の関数であるため比較的重く、気密性を有する傾向がある。いわゆる「質量則」(所定の周波数範囲内にて多くの従来の音波バリア材料に適用可能)は、材料の単位面積当たりの重量が2倍になると、材料を介した透過損失が6デシベル(dB)増大することを決定づける。単位面積当たりの重量は、より密度の高い材料を使用することにより、又はバリア厚を増大させることにより増大し得る。しかし、重量を追加するのは、多くの運搬用途で望ましくないものであり得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、発明人は、外形寸法が比較的小さく、かつ/又は重量が比較的軽い遮音装置を使用することにより、運搬用乗物において、比較的高いレベルで音波を減衰させるか、又は遮音する(音波透過を低減する、又は好ましくは消失させる)ことができる遮音方法が必要であると認識した。好ましくは、装置は、可聴音響周波数の比較的広い範囲にわたって少なくとも部分的に有効であってもよく、及び/又は比較的単純にかつ費用効率が高く製造することが可能である。
【0008】
簡潔に言えば、一態様では、本発明は、(a)第1の密度を有する第1の媒質中に配置される実質周期的な少なくとも1つの構造体のアレイを含む、少なくとも1つの音波バリアであって、その構造体が第1の密度とは異なる第2の密度を有する第2の媒質で形成されており、第1の媒質及び第2の媒質のうちの一方が、縦波音波の伝播速度と、横波音波の伝播速度とを有する粘弾性媒質であり、縦波音波の伝播速度が横波音波の伝播速度の少なくとも約30倍であり、第1の媒質及び第2の媒質のうちの他方は粘弾性又は弾性媒質である、少なくとも1つの遮音装置を用意することと、(b)運搬用乗物(例えば、航空機、自動車、列車、及び船舶など)の音響源領域(好ましくは、可聴音響周波数の音響源)と音響受信領域との間に遮音装置を介在させることとを含む、かかる方法を提供する。好ましくは、実質周期的な構造体のアレイは、第1の媒質と第2の媒質とを交互に重ねてなる層を備える多層構造体形状の一次元アレイである。遮音装置は、(下記に定義するような)少なくとも1つの高耐熱性材料を更に含むことが好ましい。
【0009】
所定の特性を有する粘弾性材料を選択し、それらを粘弾性材料又は弾性材料と組み合わせて空間的に周期的なアレイを形成することにより、フォノニック結晶構造のバンドギャップ又は少なくとも有意な透過損失(例えば20デシベル(dB)を超える)を、可聴範囲(即ち、20ヘルツ(Hz)〜20キロヘルツ(kHz)の範囲)の少なくとも一部において得ることができることが判明している。そのような音波バリア又はフォノニック結晶構造は、重量を比較的軽量かつ比較的小型にする(例えば、数センチメートル又はそれ未満程度の外形寸法を有するなど)ことができる。材料の選択、格子構造の種類、異なる材料の間隔等の設計パラメータを制御することにより、バンドキャップの周波数、ギャップの数、及びそれらの幅を調整することができ、又は最低でも、透過損失レベルを周波数の関数として調整することができる。
【0010】
フォノニック結晶構造は、音響バンドギャップを受動的であるが周波数選択的に生成することができる。音響産業で使用される殆どの常の音波吸収体とは異なり、フォノニック結晶は、透過モードにて音波を制御する。バンドギャップの周波数の範囲内では、構造を介した入射音波の透過は本質的に存在しない可能性がある。バンドギャップは常に絶対(即ち、音波透過が存在しない)なわけではないが、音波透過損失は多くの場合、20デシベル(dB)程度以上であり得る。音響産業では、3dBのオーダーの減衰は有意であると見なされることから、20+dBは透過の非常に有意な損失であり、音響出力の100パーセント低減に接近する。
【0011】
フォノニック結晶構造は音源と受信体との間に配置されて、選択された周波数のみに構造を通過させる。したがって受信体は、フィルターを通された、望ましくない周波数は遮断されている音波を聴く。フォノニック結晶構造を適切に構成することにより、透過された周波数を受信体に集めることができ、又は望ましくない周波数を反射して音源に戻すことができる(周波数選択ミラーと極めて類似)。現在の音響材料とは異なり、フォノニック結晶構造は、音波を減衰させ又は反射するのみでなく、実際に管理するよう使用することができる。
【0012】
驚くべきことに、そのような音波バリア又はフォノニック結晶構造を含む遮音装置は比較的薄く、重量が比較的軽いにもかかわらず、運搬用乗物に実装された場合に、約300Hzより上の周波数において、約20dBを超える音波透過損失をもたらすことができる。一般に上記の質量則に従う従来の運搬用乗物の防音体とは対照的に、本発明の方法で使用する遮音装置は、約150Hz以上の周波数において、質量則から予測されるものを約3〜4dBほど超える透過損失をもたらすことができる。この装置は、外気温で、更には外界よりはるかに低いか、又は高い温度で効果的であり得る(例えば、約−80℃〜約+150℃の温度範囲については、約23℃の室温と比べて性能が数dBしか低下しない)。更に、少なくとも1つの高耐熱性(下記に定義するような、好ましくは耐炎性、より好ましくは火炎伝播抵抗性及び火炎透過抵抗性、最も好ましくは溶け落ち抵抗性)材料を更に含む遮音装置は、難燃性が主要な懸案事項である運搬用途(例えば、航空及び鉄道)に使用でき、それでもなお、効果的な遮音を可能にする。
【0013】
したがって、少なくとも一部の実施形態では、本発明の方法は、運搬用乗物において、外形寸法が比較的小さく、かつ/又は重量が比較的軽い遮音装置を利用しながらも、可聴音響周波数で(驚くべきことに、約1000ヘルツ未満の可聴周波数においてでさえ)少なくとも部分的に効果的であり得る遮音方法に対する、上記の必要性を満たすことができる。本発明の遮音方法を使用して、重量の低減、厚さの低減、及び/又は高耐熱性が重要であり得る、様々な異なる乗物環境で遮音を実施することができる。例えば、そのような使用には、航空機(例えば、機体のまわり及び客室パネルでの遮音用)、自動車(例えば、床板、ダッシュボード、ホイールウェル、及び天井)などの室内又は室外いずれかの(又は両方の)乗物部品に遮音装置を配置することを含むことができる。
【0014】
別の態様では、本発明はまた、(a)第1の密度を有する第1の媒質中に配置される実質周期的な少なくとも1つの構造体のアレイを含む、少なくとも1つの音波バリアであって、その構造体が、第1の密度とは異なる第2の密度を有する第2の媒質で形成されており、第1の媒質及び第2の媒質のうちの一方が、縦波音波の伝播速度と、横波音波の伝播速度とを有する粘弾性媒質であり、縦波音波の伝播速度が横波音波の伝播速度の少なくとも約30倍であり、第1の媒質及び第2の媒質のうちの他方が粘弾性又は弾性媒質である、少なくとも1つの音波バリアと、(b)少なくとも1つの高耐熱性(下記に定義するような、好ましくは耐炎性、より好ましくは火炎伝播抵抗性及び火炎透過抵抗性、最も好ましくは溶け落ち抵抗性)材料とを含む遮音装置を提供する。好ましくは、実質周期的な構造体のアレイは、第1の媒質と第2の媒質とを交互に重ねてなる交互層を備える多層構造体形状の一次元アレイである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のこれら並びにその他の特徴、態様及び利益は、次の説明、添付した請求項及び添付図面でよりよく理解されるであろう。
【図1】実施例2及び実施例3に記載した本発明の方法の実施形態に関する透過損失(dB)対周波数(Hz)のプロット。
【図2】実施例4及び実施例5に記載した本発明の方法の実施形態に関する(測定値及び理論(質量則)値の)透過損失(dB)対周波数(Hz)のプロット。
【図3】実施例4に記載した本発明の方法の実施形態に関する(2つの異なる温度での)透過損失(dB)対周波数(Hz)のプロット。
【図4】実施例5に記載した本発明の方法の実施形態に関する(2つの異なる温度での)透過損失(dB)対周波数(Hz)のプロット。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
本特許出願で使用される場合:
「高耐熱性材料」とは、最大で少なくとも約500℃までの温度で、溶融しない、流動しない、分解しない、あるいは形状が実質的に変化しない材料を意味する。
【0017】
「耐炎性材料」とは、(Appendix FのPart I〜Part 25を引用する)14 C.F.R.Part 25,Sections 25.853(a)及び25.855(d)に記載された連邦航空局の可燃性要件を満たす材料を意味し、そのテキストは、参考として本明細書に組み込むものとする。
【0018】
「火炎伝播抵抗性材料」とは、(Appendix FのPart VI〜Part 25を引用する)14 C.F.R.Part 25,Sections 25.856(a)に記載された連邦航空局の可燃性要件を満たす材料を意味し、そのテキストは、参考として本明細書に組み込むものとする。
【0019】
「火炎透過抵抗性材料」とは、(Appendix FのPart VII〜Part 25を引用する)14 C.F.R.Part 25,Sections 25.856(b)に記載された連邦航空局の可燃性要件を満たす材料を意味し、そのテキストは、参考として本明細書に組み込むものとする。
【0020】
「溶け落ち抵抗性材料」とは、(Appendix FのPart I〜Part 25を引用する)14 C.F.R.Part 25,Sections 25.853(a)及び25.855(d)に記載された連邦航空局の可燃性要件、並びに(Appendix FのPart VI〜Part 25及びPart VII〜Part 25をそれぞれ引用する)14 C.F.R.Part 25,Sections 25.856(a)(火炎伝播)及び25.856(b)(火炎透過)に記載された連邦航空局の可燃性要件を満たす材料を意味し、そのテキストは、参考として本明細書に組み込むものとする。
【0021】
音波バリア材料
上記に引用した本発明の方法で使用される音波バリアの粘弾性構成成分として好適な材料は、(好ましくは少なくとも周波数の可聴帯域内で)横波音波の伝播速度の少なくとも30倍(好ましくは少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも75倍、最も好ましくは少なくとも100倍)である縦波音波の伝播速度を有する粘弾性固体及び液体を含む。有用な粘弾性固体及び液体は、周囲温度(例えば、約20℃)で、約5×10パスカル(Pa)以下の定常剪断プラトー弾性率(G)を有するものを含み、この定常剪断プラトー弾性率が、好ましくは材料のガラス転移温度(T)より約30ケルビン度(−243℃)〜約100ケルビン度(−173℃)高い温度範囲にわたって存在する。好ましくは、音波バリア中の粘弾性材料の少なくとも1つは、周囲温度(例えば、約20℃)で、約1×10Pa以下(より好ましくは、約1×10Pa以下)の定常剪断プラトー弾性率を有する。
【0022】
そのような粘弾性材料の例としては、エラストマー(例えば、熱可塑性エラストマーを含む)、粘弾性液体等、及びそれらの組み合わせ(好ましくは少なくともいくつかの用途のために、エラストマー及びそれらの組み合わせ)を含む様々な形態のゴム状ポリマー組成物(例えば、軽度に架橋した又は半結晶性ポリマーを含む)が挙げられる。有用なエラストマーとしては、両方とも無機及び有機ポリマーであるホモポリマー及びコポリマー(ブロック、グラフト及びランダムコポリマーを含む)の両方、並びにそれらの組み合わせ、並びに線状又は分岐状のポリマー、及び/又は相互侵入若しくは半相互侵入ネットワークの形態若しくは他の複合形態のポリマー(例えば、スターポリマー)が挙げられる。有用な粘弾性液体としては、ポリマー溶融物、溶液、及びゲル(ヒドロゲルを含む)が挙げられる。
【0023】
好ましい粘弾性固体としては、シリコーンゴム(好ましくは、約20A〜約70A、より好ましくは約30A〜約50Aのデュロメータ硬度を有する)、(メタ)アクリレート(アクリレート及び/又はメタクリレート)ポリマー(好ましくは、イソオクチルアクリレート(IOA)とアクリル酸(AA)とのコポリマー)、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー、ブロックコポリマー(好ましくは、スチレン、エチレン及びブチレンを含む)、セルロース系ポリマー(好ましくは、コルク)、有機ポリマー(好ましくは、ポリウレタン)とポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマー(好ましくは、シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー)とのブレンド、ネオプレン、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい粘弾性液体としては、鉱油変性ブロックコポリマー、ヒドロゲル、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
それらの粘弾性固体及び液体は、公知の方法により調製することができる。多くは、商業的に入手可能である。
【0025】
上記に引用した本発明の音波バリアの弾性構成成分として使用するのに好適な材料は、本質的に全部の弾性材料を含む。しかしながら、好ましい弾性材料は、少なくとも毎秒約2000メートル(m/s)の縦波音速を有するものを含む。
【0026】
弾性固体の有用なクラスとしては、金属(及びそれらの合金)、ガラス状ポリマー(例えば、硬化型エポキシ樹脂)、複合材料(例えば、ポリマーマトリックス中にガラス繊維、金属繊維、又は炭素繊維(あるいはフレーク又は粉末などの別の粒子形態)が入ったもの)など、及びそれらの組み合わせが挙げられる。弾性固体の好ましいクラスとしては、金属、金属合金、ガラス状ポリマー、及びそれらの組み合わせ(より好ましくは、銅、アルミニウム、エポキシ樹脂、銅合金、アルミニウム合金、及びそれらの組み合わせ、更により好ましくは銅、アルミニウム、銅合金、アルミニウム合金、及びそれらの組み合わせ、なおより好ましくは、アルミニウム、アルミニウム合金、及びそれらの組み合わせ、最も好ましくは、アルミニウム)が挙げられる。
【0027】
そのような弾性材料は、公知の方法により調製し又は得ることができる。多くは、商業的に入手可能である。
【0028】
所望であれば、本発明の方法の音波バリアは、場合により他の構成成分材料を含んでもよい。例えば、音波バリアは、2つ以上の粘弾性材料(その横波音波の伝播速度の少なくとも30倍である縦波音波の伝播速度を有さない、1つ以上の粘弾性材料を含むが、但し音波バリア中の粘弾性材料の少なくとも1つがこの基準を満たすことを条件とする)及び/又は2つ以上の上述した弾性材料を含むことができる。音波バリアは、場合により1つ以上の非粘性流体を含んでもよい。
【0029】
音波バリアの作製
本発明の方法で使用する音波バリアは、第1の密度を有する第1の媒質中に配置される実質周期的な(一次元、二次元又は三次元の)構造体のアレイを含み、前記構造体は、上述したように、第1の密度とは異なる第2の密度を有する第2の媒質から形成されている。そのようなアレイは、第1の媒質として、上述した粘弾性材料又は上述した弾性材料(又は、弾性材料の代わりとして第2の異なる粘弾性材料)のいずれかと、第2の媒質としてその2つのうちの他方とを使用することにより形成されてもよい。
【0030】
結果として得られる構造すなわちフォノニック結晶は、巨視的な構造であり得る(例えば、センチメートル又はミリメートル又はそれ未満のオーダーの大きさ尺度を有する)。所望であれば、フォノニック結晶は、空間的に周期的な格子の形態をとってもよく、その格子位置に均一な大きさ及び均一な形状を有する内包物を含み、内包物の間でマトリックスを形成する材料で包囲される。そのような構造の設計パラメータとしては、格子の種類(例えば、四角形、三角形等)、格子位置間の間隔(格子定数)、単位セルの構成及び形状(例えば内包物で占められる単位セルの部分面積−いわゆる「充填率(fill factor)」fとしても公知)、内包物及びマトリックス材料の物理的特性(例えば密度、ポアソン比、弾性率等)、内包物の形状(例えば棒形、球形、中空棒形、四角形柱等)等が挙げられる。そのような設計パラメータを制御することにより、結果として得られるバンドギャップの周波数、ギャップの数、及びそれらの幅を調整することができ、又は最低でも、透過損失のレベルを周波数の関数として調整することができる。
【0031】
好ましくは、実質周期的な構造体のアレイは、第1の媒質と第2の媒質とを交互に重ねてなる交互層を含む多層構造体形状の一次元アレイである(また所望であれば、1つ以上の層形状である、上述した場合による1つ以上の構成成分を更に含み、例えば第1の(A)媒質及び第2の(B)媒質、並びに2種の追加の構成成分C及びDから、「ABCD」構造体、「ACDB」構造体、「ACBD」構造体等を形成することができる)。多層構造体の層の合計数は、使用する特定の材料、層の厚さ、及び特定の音響用途の必要条件に応じて幅広い範囲で変更し得る。
【0032】
例えば、多層構造体の層の合計数は、2層のような少数から、数百層以上のような多数までの範囲にわたり得る。層の厚さも、幅広く変動し得る(例えば、所望の周波に応じて)が、好ましくはセンチメートル以下のオーダーにある(より好ましくは、ミリメートル以下のオーダー、最も好ましくは、約10mm以下である)。そのような層の厚さ及び層の数は、センチメートル以下(好ましくは約100mm以下、より好ましくは約50mm以下、更により好ましくは約10mm以下、最も好ましくは約5mm以下)のオーダーの寸法を有するフォノニック結晶構造を提供することができる。所望であれば、構造の組み立て前に層を(例えば、界面活性剤組成物又はイソプロパノールを使用して)洗浄してもよく、また場合により1種以上の結合剤(例えば接着剤、又は機械的締結具)を使用してもよい(但し、所望の音響及び/又は難燃性特性との有意な干渉が存在しないことを条件とする)。
【0033】
多層構造体の好ましい実施形態は、約0.75mm〜約1.25mmの層の厚さを有する弾粘性材料(好ましくはシリコーンゴム、アクリレートポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、又はそれらの組み合わせ)と、約0.025mm〜約1mmの層の厚さを有する弾性材料(好ましくはアルミニウム、エポキシ樹脂、アルミニウム合金、又はそれらの組み合わせ)との約3個〜約10個(より好ましくは約3個〜約5個)の交互層を含む。これは、約1mm〜約10mm(より好ましくは約2mm〜約4mm、最も好ましくは約2mm〜約3mm)のオーダーの好ましい寸法を有するフォノニック結晶構造を提供することができる。
【0034】
高耐熱性材料
本発明の方法で利用される遮音装置に使用する適切な高耐熱性材料としては、セラミック紙(例えば、Thermal Ceramics,Inc.(Augusta,GA)からKAOWOOL Paperとして、及びLydall,Inc.(Rochester,NH)から商品名LYTHERM Paperで市販されているアルミノケイ酸塩セラミック繊維紙、更には3M Company(St.Paul,MN)から3M NEXTEL Flame Shield AL−1として入手可能な、ポリイミドフィルムに封入されたセラミック繊維紙)、セラミック繊維織物(例えば、3M Company(St.Paul,MNから)商品名NEXTEL 312 AF−10 Aerospace Fabricで市販されている布地)、ガラス繊維織物(例えば、Ametek(Wilmington,DE)から商品名SILTEMP Silica Fabric Type 84CHで市販されている布地)、セラミック不織スクリム(例えば、3M Company(St.Paul,MN)から商品名NEXTEL 312 Ceramic Fibersで市販されている酸化セラミック繊維でできたスクリム)、及びガラス繊維不織スクリムが挙げられる。そのような材料は、公知の方法で製造することができる。適切な高耐熱性材料として、米国特許第6,670,291号(Tompkinsら)に記載のものが含まれ、この特許の明細書は、参考として本明細書に組み込むものとする。
【0035】
好ましい高耐熱性材料として、耐炎性材料(例えば、アルミノケイ酸塩セラミック繊維紙及びSガラス紙)がある。より好ましい高耐熱性材料は、火炎伝播抵抗性であり、かつ火炎透過抵抗性でもある。最も好ましい高耐熱性材料として、溶け落ち抵抗性材料(例えば、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能な3M NEXTEL Flame Stopping Dot Paperなどのセラミック紙、3M Companyから3M NEXTEL Flame Stopping Coated Paperとして入手可能なバーミキュウライトコーティングされたセラミック紙、及びDuPont(Richmond,VA)から入手可能なNOMEX Type 418 Paper)がある。
【0036】
遮音装置の作製及び使用
本発明の方法で使用するのに適した遮音装置としては、(a)少なくとも1つの上記の音波バリアと、(b)所望により(しかし、好ましくは)、少なくとも1つの高耐熱性材料とを含む遮音装置が挙げられる。遮音装置の音波バリアの実質周期的な構造体のアレイは、第1の媒質及び第2の媒質を重ねてなる層を含む多層構造の形態の一次元アレイであるのが好ましい。
【0037】
所望であれば、遮音装置は、1つ以上の高耐熱性材料層を含むことができる。使用する場合、(例えば、シートの形態の)高耐熱性材料は、音波バリアの最外面の1つ以上に(好ましくは、多層音波バリア構造の最外層として)あてがわれるのが好ましい。更に、運搬用乗物の部品に従来から含まれる他の材料及び/又は層を遮音装置内に含むことができる。
【0038】
例えば、装置は、(例えば、高耐熱性材料を音波バリアに貼り付けるのに使用できる)1つ以上の接着剤組成物又は接着剤フィルム、1つ以上のスクリム(例えば、高分子織布)、1つ以上の撥水性コーティング、1つ以上の発泡性添加剤又は発泡性コーティング、及び(所望により金属被覆可能な)1つ以上のポリマーフィルム、その他、難燃剤、帯電防止剤、かび防止剤などを更に含むことができる。いずれの場合にも、音波バリアの実質的な周期性及び音響特性が許容できないほど乱れない、又は変わらないことを条件として、そのような他の材料及び/又は層を音波バリアの外面に貼り付けることができるか、又は音波バリア自体がそのような材料及び/又は層を含むことができる。ケーシングのない遮音装置が望ましい場合、更なる材料及び/又は層が、装置の吸湿及び保湿特性をあまり高めないように選択されるのが好ましい。
【0039】
遮音装置は、運搬用乗物の音響源領域(好ましくは、可聴音響周波数の音響源)と音響受信領域(好ましくは、可聴音響周波数の受信部)との間にその装置を挿入又は配置することにより、本発明の遮音方法で使用することができる。有用な音響源としては、交通騒音、風切り音、エンジン音等(好ましくは騒音又は可聴成分を有する他の音波、より好ましくは騒音又は約500Hz〜約1500Hzの範囲内の周波数成分を有する他の音波)が挙げられる。
【0040】
遮音装置は、乗物の音響源領域(例えば、エンジン室、駆動系、ホイール、エクステリアパネルなど)から乗物の受信領域(例えば、防火壁、フロアパン、ドアパネル、天井、他の内装品など)に進む音波を大幅に減衰させることができる。装置は、装置の音波バリアの主要面が、音響源領域から受信領域に進む音波を遮断し、それによって減衰させるように音響源領域と受信領域との間に配置することができる。
【0041】
当業者ならば、かかる装置をそのように配置できるさまざまな方法を熟知しているであろう。音波が(装置の音波バリアの主要面に対して)垂直に入射することが好ましいが、(ランダムな向きの)音場入射条件でも、適度な効果で音響を減衰させることができる(例えば、一次元の多層音波バリアを利用する場合、垂直入射条件に比べて透過が約5dB以下だけ増える)。所望であれは、(例えば、音波バリアがヘルムホルツ共鳴器型吸収体として機能できるように、音波バリアを(例えば、床又はパネルなどの)基材に対して配置することにより)遮音装置の音波バリアを吸音体として使用することができる。遮音装置は、基本的に、装置の音波バリアの実質的な周期性、又はその音響特性を許容できないほど乱すことがないか、又は変えることがない、任意で公知の、又は今後開発される方法(例えば、接着剤、機械式留め具、密着嵌合、及び/又は同様なものの使用)によって、運搬用乗物部品に直接的又は間接的に取り付けるか、又はその部品の内部に懸架することができる。
【0042】
本発明の遮音方法及び装置は、可聴範囲の比較的大きい部分にわたり透過損失を達成するよう使用することができる(好ましい実施形態では、約800Hz〜約1500Hzの範囲にわたって約20dB以上の透過損失をもたらし、より好ましい実施形態では、約500Hz〜約1500Hzの範囲にわたって約20dB以上の透過損失をもたらし、更により好ましい実施形態では、約250Hz〜約1500Hzの範囲にわたって約20dB以上の透過損失をもたらし、最も好ましい実施形態では、約500Hz〜約1500Hzの範囲の少なくとも一部にわたって実質全部の透過損失をもたらす)。それらの透過損失は、フォノニック結晶構造の寸法を、センチメートル以下のオーダー(好ましくは約20cm以下、より好ましくはミリメートル以下のオーダー、最も好ましくは約1〜約3mmのオーダー)に維持しながら達成することができる。
【0043】
1つ以上の上述した音波バリアに加え、遮音装置は、場合により、1つ以上の従来の又は今後開発される遮音材(例えば、従来の吸収体、バリア等)を更に含むことができる。所望であれば、それらの従来の遮音材は、例えば装置の周波数有効範囲を拡大するように層状にしてもよい。
【実施例】
【0044】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。実施例における部、百分率、比等は全て、特に記載しない限り、重量基準である。使用される溶媒及びその他の試薬は、特に記載しない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company,(St.Louis,MO)より入手した。
【0045】
試験方法
透過損失測定
Bruel & Kjaer Impedance Tube System Type 4206(100mm管、Bruel & Kjaer Sound & Vibration Measurement A/S,Denmark)を使用して透過損失測定を行った。4マイクロホン伝達関数試験法を使用して、周波数範囲50Hz〜1.6kHzで透過損失を測定した。
【0046】
手短には、管システムは、内径100mmのソース管、ホルダー管及び受容管から構成されていた。各試験サンプルを、音源と受容管との間に配置されたホルダー管の内部に2つのゴム製Oリングとともに据え付けた。ソース管の端部に取り付けられたラウドスピーカ(インピーダンス4オーム(Ω)、直径80mm)を音波平面波発生器として使用した。Type 4187の4つの0.64cm(1/4インチ)コンデンサマイクロホンを使用して、試験サンプルの両側の音圧レベルを測定した(2つはソース管内に、2つは受容管内に置いた)。ソース管内の2つのマイクロホンを使用して、入射及び反射された平面波を測定した。受容管内に配置された他の2つのマイクロホンを使用して、吸収及び透過された部分を測定した。
【0047】
4つのマイクロホン位置で音圧を測定し、4チャンネルデジタル周波数分析器を「Measurement of Transmission Loss of Materials Using a Standing Wave Tube」,INTER−NOISE 2006,3〜6 December 2006,Honolulu,Hawaii,USAとしてOlivieri,O.、Bolton,J.S.、及びYoo,T.によって書かれた手順書に従って使用して、複素伝達関数を計算することにより、試験サンプルの透過損失を求めた。PULSEバージョン11データ獲得及び解析ソフトウェア(Bruel & Kjaer)を使用した。
【0048】
各構造に対して試験サンプルを用意した。全試験サンプルは、直径99.54mmの精密ダイを用いて切断した。各試験サンプルに関して、透過損失測定を3回繰り返した。各構造に対して得られる透過損失を、3つの測定値の算術平均として計算した。
【0049】
レオロジー測定
商用のARES動的レオメータ(TA Instruments of New Castle,Delawareから入手可能)で、材料の試験サンプルに対して、伸長モードで線形等温周波数掃引による動的機械分析(DMA)試験を行うことにより、レオロジー特性(例えば、定常剪断プラトー弾性率)を求めた。次いで、(22.7℃の室温とした)選択した基準温度での動的マスター曲線を得るために、時間−温度重ね合わせの原理を使用して、得られたデータをシフトした。動的マスター曲線をシフトするのに使用した水平移動因子をチェックしたところ、この水平移動因子が、Williams−Landel−Ferry(WLF)型に従うことが認められた。最終的に、Ninomiya−Ferry(NF)手順を使用して、得られた動的マスター曲線を室温(22.7℃)での定常線形伸長弾性率マスター曲線に変換した。ゴム引張係数プラトーの値を定常線形伸長弾性率マスター曲線から求め、材料の定常剪断プラトー弾性率についてはゴム伸長弾性率プラトー値の1/3とみなした。(例えば、Viscoelastic Properties of Polymers,2nd Edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York(1980)の中の、John D.Ferryによるレオロジーデータ解析技術に関する考察を参照のこと)。
【0050】
連邦航空規則による断熱材/遮音材火炎伝播試験(FAR 25.856−1)
輻射パネル試験を用いて、輻射熱源及び火炎の両方に曝露した場合の本発明の遮音装置の可燃性及び火炎伝播特性を求めた。(Appendix FのPart VI〜Part 25を引用する)14 C.F.R.Part 25,Sections 25.856(a)で連邦航空局により示された方法に従って試験を行ったが、そのテキストは、参考として本明細書に組み込むものとする。試験方法の全詳細は、米国運輸省、連邦航空局(FAA)、Advisory Circular AC No:25.856−1(6/24/05に記録;www.fire.tc.faa.gov)で入手可能である。
【0051】
材料
シリコーンゴム1番:McMaster−Carr Inc.(Elmhurst,IL)から入手可能な商品番号86915K24、デュロメータ硬度40A、厚さ0.8mm、アクリル接着剤の裏当て付き、基本的に上記のように定めた室温22.7℃で定常剪断プラトー弾性率4.3×10Pa
シリコーンゴム2番:McMaster−Carr,Inc.,Elmhurst,ILから入手可能な商品番号86915K14、デュロメータ硬度40A、厚さ0.8mm、接着剤の裏当てなし
アルミニウム:アルミニウム箔、厚さ0.03mm、ブランド名Reynolds Wrap(商標)で市販、Alcoa Corp.,Pittsburgh,PAから入手可能
高耐熱性材料:3M(商標)Nextel(商標)Flame Shield AL−1、ポリイミドフィルムに封入されたセラミック繊維紙を含む火炎バリア、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能
接着剤1番:3M(商標)Scotch−Weld(商標)7246−2B/A FST2要素構造エポキシ樹脂接着剤、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能
接着剤2番:Dow Corning(商標)Q2−7406高温用シリコーン感圧接着剤(PSA)、ポリジメチルシロキサンゴム及び樹脂、55%固体、Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能
(実施例1)
下記の表1に示すように、上記の材料を積層することで5層構造体を構築した。最初に、シリコーン1番層及びアルミニウム層を、シリコーン1番の2枚の各シート(それぞれ寸法は0.8mm×305mm×305mm)に接合された接着剤裏当てを使用して互いに貼り合わせた。シリコーンシートを、間に挟むアルミニウムシート(寸法は0.03mm×305mm×305mm)に貼り合わせて3層構造体を形成した。
【0052】
3層構造体の裏側(可燃性試験時に火炎の反対側に配置される側)に接着剤1番をコーティングした。接着剤1番の要素A、Bを1:1の比率で混合し、木製のスティックを使用して、(コーティング厚が1mm未満になるように)得られた接着剤混合物を構造体の裏側に均一に分散させた。結果としてコーティングされた裏側を高耐熱性材料シートに接着した。
【0053】
構造体の表側(可燃性試験時に火炎に当てられる側)に接着剤混合物をコーティングし、これを基本的に上記と同様に別の高耐熱性材料シートに接着した。これにより、最外層として高耐熱性材料を有する5層構造体が形成された。5層構造体に4kgの重しをかけたまま一晩置き、次いで、可燃性試験を行うために、最終寸法の203mm×203mm(8インチ×8インチ)に切り揃えた。
【0054】
上記のFAR 25.856(a)試験手順に従って、得られた構造体の可燃性を試験した。構造体は試験に合格した(それによって、関連するFAA規則の必要条件を満たした)。
【0055】
(実施例2及び3)
実施例2の場合、下記の表1に示す上記の材料を積層することにより、5層構造体を構築した。最初に、トルエン中の10重量パーセント(%)の過酸化ベンゾイルを接着剤2番と混合して、過酸化物濃度が(接着剤固体を基準として)1.5重量%となるよう接着剤/触媒溶液を調製した。#48マイヤーバー(湿らせたフィルム厚さが0.109mm(4.3ミル))を使用して、接着剤/触媒溶液を2枚のシリコーン2番シート(それぞれ寸法は0.8mm×305mm×305mm)に塗布することによって、シリコーン2番層とアルミニウム層とを互いに貼り合わせた。溶媒を飛ばすために、結果としてコーティングされたシリコーンシートを60℃で10分間加熱した。次いで、コーティングされたシリコーンシートを、間に挟むアルミニウムシート(寸法は0.03mm×305mm×305mm)に貼り付け、得られた3層構造体を100℃で加熱して接着剤を硬化させた。
【0056】
3層構造体の裏側(可燃性試験時に火炎と反対側に配置される側)に接着剤/触媒溶液をコーティングし、上記のように溶媒を除去した。高耐熱性材料シートの面を火炎(プロパントーチ)に素速く当て、次いで、黄色い湿気バリア紙を剥がすことで、高耐熱性材料シートの両側から黄色い湿気バリア紙を除去して、セラミック布をむき出しにした。むき出しのセラミック布を3層構造体のコーティングされた裏側に接着し、得られた4層構造体を100℃で10分間加熱して接着剤を硬化させた。
【0057】
構造体の表側(可燃性試験時に火炎に当てられる側)に接着剤/触媒溶液をコーティングし、上記のように触媒を除去した。次いで、上記のように行われる、別の高耐熱性材料シートの貼り付けの前に、得られた構造体を100℃で3分間加熱した。これにより、最外層として高耐熱性材料を有する5層構造体が得られた。次いで、可燃性試験を行うために、5層構造体を最終寸法の8インチ×8インチ(203mm×203mm)に切り揃えた。
【0058】
上記のFAR 25.856(a)試験手順に従って、得られた実施例2の構造体の可燃性を試験した。構造体は試験に合格した(それによって、関連するFAA規則の必要条件を満たした)。
【0059】
実施例3の場合、高耐熱性材料層(又はそれらに隣接する接着剤層)が3層構造体に追加されなかった(下記の表1を参照のこと)ことを除いて、基本的に実施例2を繰り返した。運搬用乗物の音響性能をシミュレーションするために、上記の手順に従って、実施例2、3の多層構造体の音波減衰特性又は音波透過損失特性を試験した。その結果を図1に示す。実施例2の多層構造体に高耐熱性材料があることで、その音響減衰特性が、高耐熱性材料を含まない実施例3の多層構造体と比べて大幅に変わることはなかった。
【0060】
(実施例4及び5)
実施例4の場合、高耐熱性材料層(又はそれらに隣接する接着剤層)が3層構造体に追加されなかった(下記の表1を参照のこと)ことを除いて、基本的に実施例1を繰り返した。実施例5の場合、基本的に実施例4で説明したのと同様に3層構造体を作製した。次いで、アクリル接着剤(3M Company(St.Paul,MN)から入手可能な、厚さ0.127mmの3M(商標)9472LE−LSEアクリル接着剤転写テープ)を使用して、構造体の最外層(シリコーン1番)の一方に(前述と同じ寸法の)アルミニウムシートを接着し、次いで、(前述と同じ寸法の)別のシリコーン1番シートを、シリコーン1番の接着剤裏当てを使用して、得られたアルミニウム層に接着することにより、構造体に変更を加えた。これにより、最外層としてシリコーン1番を有する5層構造体が得られた(下記の表1を参照のこと)。
【0061】
運搬用乗物の音響性能をシミュレーションするために、上記の手順に従って、実施例4、5の多層構造体の垂直入射透過損失を測定した。その結果を図2に示す。これらの実験に基づく透過損失をそれぞれ理論上の垂直入射質量則値と比較した。後者の値を式に従って計算した(例えば、R.F.Barron、「Industrial Noise Control and Acoustics,」Marcel Dekker,Inc.,New York(2003),p.112を参照のこと)。
【0062】
【数1】

【0063】
上式で、TLは垂直入射透過損失(dB)、log10は基底10の対数、πは約3.14の数学定数、Mは単位面積(kg/m)当たりの多層構造体質量、ρ及びcは、多層構造体を囲む空気中の、それぞれ密度(kg/m)及び音波の速度(m/s)、fは周波数(Hz)である。得られたTLの計算値も図2に示す。運搬用乗物の音響性能をシミュレーションするために、異なる温度条件で、すなわち、室温(約23℃)、及び低温(約−79℃)か、又は高温(約+100℃)のいずれかで、上記の手順に従って、実施例4、5の多層構造体の透過損失特性も試験した。低温試験の場合、2つのドライアイスプレート(固体二酸化炭素)間で構造体を冷却した。プレート間の温度を熱電対でチェックした(≒−79℃)。高温試験の場合、構造体をオーブン(Thermolyne Sybron Corporation,Dubuque,Iowa,USAから入手可能なThermolyne(商標)Type 1300 Furnace,Model # F−B1315M,Series 140)内で+150℃に加熱した。透過損失測定を行った直後の加熱した構造体の温度は約+100℃であった(赤外線(IR)サーモメータによる)。総計試験時間(ドライアイスプレート又はオーブンから構造体を取り出し、B&K Impedance Tube内に構造体を配置し、測定を行った時間)は約50秒であった。結果を図3及び図4に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含有される参照された記述内容は、その全体が、それぞれ個別に組み込まれているかのように、参照として組み込まれる。本発明に対する様々な予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって過度に限定されるものではなく、またかかる実施例及び実施形態は、一例として表されているだけであり、ただし、本発明の範囲は、以下のように本明細書に記載した「請求項」によってのみ限定されることを意図するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の密度を有する第1の媒質中に配置される実質周期的な少なくとも1つの構造体のアレイを含む少なくとも1つの音波バリアを含む、少なくとも1つの遮音装置を用意することであって、前記構造体が、前記第1の密度とは異なる第2の密度を有する第2の媒質から形成されており、前記第1の媒質及び前記第2の媒質のうちの一方が、縦波音波の伝播速度と、横波音波の伝播速度とを有する粘弾性媒質であり、前記縦波音波の伝播速度が前記横波音波の伝播速度の少なくとも30倍であり、前記第1の媒質及び前記第2の媒質のうちの他方が粘弾性又は弾性媒質である、少なくとも1つの遮音装置を用意することと、(b)運搬用乗物の音響源領域と音響受信領域との間に前記遮音装置を介在させることとを含む、方法。
【請求項2】
前記粘弾性媒質が、粘弾性固体、粘弾性液体及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粘弾性固体及び前記粘弾性液体が、ゴム状ポリマー組成物、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ゴム状ポリマー組成物が、エラストマー、粘弾性液体、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の媒質及び前記第2の媒質のうちの前記他方が弾性媒質である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記弾性媒質が、金属、金属合金、ガラス状ポリマー、複合材料、及びそれらの組み合わせから選択される弾性固体からなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記実質周期的な構造体のアレイが、前記第1の媒質と前記第2の媒質とを交互に重ねてなる層を含む多層構造体の形態の一次元アレイである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記多層構造体が、粘弾性媒質と弾性媒質とを交互に重ねてなる層を含み、前記粘弾性媒質がエラストマー及びそれらの組み合わせから選択され、かつ前記弾性媒質が金属、金属合金、ガラス状ポリマー、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粘弾性媒質が、シリコーンゴム、(メタ)アクリレートポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ブロックコポリマー、セルロース系ポリマー、有機ポリマーとポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマーとのブレンド、ネオプレン、及びそれらの組み合わせから選択され、かつ前記弾性媒質が、銅、アルミニウム、銅合金、アルミニウム合金、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記多層構造体が、0.75mm〜1.25mmの層厚さを有する粘弾性材料と、0.025〜1mmの層厚さを有する弾性材料とを3〜10個交互に重ねてなる層を含み、前記多層構造体が、1mm〜10mmの範囲内の寸法を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記多層構造体が、前記粘弾性材料と前記弾性材料とを3〜5個交互に重ねてなる層を含み、かつ前記粘弾性材料が、シリコーンゴム、アクリレートポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、及びそれらの組み合わせから選択され、前記弾性材料が、アルミニウム、エポキシ樹脂、アルミニウム合金、及びそれらの組み合わせから選択され、かつ前記多層構造体が、2mm〜4mmの範囲内の寸法を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記音波バリアが、800Hz〜1500Hzの範囲にわたって20dB以上の透過損失をもたらし、前記音波バリアの全寸法が20cm以下の大きさである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記音波バリアが、800Hz〜1500Hzの範囲にわたって20dB以上の透過損失をもたらし、前記音波バリアの全寸法が20cm以下の大きさである、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記遮音装置が、少なくとも1つの高耐熱性材料を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記高耐熱性材料は、火炎伝播抵抗性及び火炎透過抵抗性の両方か、又は溶け落ち抵抗性の材料である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)第1の密度を有する第1の媒質と、前記第1の密度とは異なる第2の密度を有する第2の媒質とを交互に重ねてなる層を含む多層構造体の形態の、一次元で実質周期的な少なくとも1つの構造体のアレイを含む少なくとも1つの音波バリアを含む、少なくとも1つの遮音装置を用意することであって、前記第1の媒質及び前記第2の媒質のうちの一方は、縦波音波の伝播速度及び横波音波の伝播速度を有する粘弾性媒質であり、前記縦波音波の伝播速度は、前記横波音波の伝播速度の少なくとも30倍であり、前記第1の媒質及び前記第2の媒質のうちの他方は、粘弾性又は弾性媒質である、少なくとも1つの遮音装置を用意することと、(b)航空機、列車、自動車、船舶、及びそれらの組み合わせから選択される運搬用乗物の音響源領域と音響受信領域との間に前記遮音装置を介在させることとを含む、方法。
【請求項17】
前記第1の媒質はシリコーンゴムであり、前記第2の媒質はアルミニウムであり、かつ/又は前記遮音装置は、少なくとも1つの高耐熱性材料を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(a)第1の密度を有する第1の媒質中に配置される実質周期的な少なくとも1つの構造体のアレイを含む、少なくとも1つの音波バリアであって、前記構造体が、前記第1の密度とは異なる第2の密度を有する第2の媒質から形成されており、前記第1の媒質及び前記第2の媒質のうちの一方が、縦波音波の伝播速度と、横波音波の伝播速度とを有する粘弾性媒質であり、前記縦波音波の伝播速度が前記横波音波の伝播速度の少なくとも約30倍であり、前記第1の媒質及び前記第2の媒質のうちの他方が粘弾性又は弾性媒質である、少なくとも1つの音波バリアと、(b)少なくとも1つの高耐熱性材料と、を含む遮音装置。
【請求項19】
前記実質周期的な構造体のアレイが、前記第1の媒質と前記第2の媒質とを交互に重ねてなる層を備える多層構造体の形態の一次元アレイである、請求項18に記載の遮音装置。
【請求項20】
前記高耐熱性材料が、火炎伝播抵抗性及び火炎透過抵抗性の両方か、又は溶け落ち抵抗性の材料である、請求項18に記載の遮音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−513622(P2012−513622A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543577(P2011−543577)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/068237
【国際公開番号】WO2010/075130
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】