説明

運搬車両

【課題】車体に対する吸音ダクトの取付け、取外しが容易となり、作業性が向上すると共に、取外し状態における保管上も有利となるダクト装置の取付け構造を有する運搬車両を提供する。
【解決手段】運搬車両の車体1に搭載するエンジンのラジエータへの空気を導入する開口部を支持枠24により分割する。支持枠24により分割された開口部の区域にそれぞれ吸音ダクト17a,17bを取付ける。吸音ダクト17a,17bは、複数の空気通路の内壁に吸音材を貼り付けて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプトラック等の運搬車両に係り、特に大型のダンプトラックに適用する場合に好適な吸音用ダクト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラックにおいては、特許文献1に示すように、車体の前部にラジエータを搭載し、このラジエータの前部にこれを保護するラジエータガードが設置される。このようなラジエータガードは全体として一体に構成されたカバーからなるものである。このカバーに特許文献2に示すような吸音ダクトを用いてラジエータファンの吸音機能を持たせたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2575307号公報
【特許文献2】特開2003−129847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、ラジエータの前部にラジエータガードとしてのカバーを設けたものにおいて、このカバーとして、特許文献2に示すような格子状をなす複数の通路の内壁に吸音材を貼り付けた吸音ダクトを取付けたものにおいて、ダンプトラックの保守点検、あるいは輸送のために分解、組立する場合、吸音ダクトは取外したり、取付けたりする必要がある。しかしながら、大型のダンプトラックになると、エンジン容量が大きく、冷却空気を吸入するための吸気口の開口面積も広い。このため、吸音ダクトの自重も数百kgにも及ぶ大型のものとなるので、車体への取付け、取外しが容易ではなくなる上、保管のためにも広いスペースが必要になるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、車体に対する吸音ダクトの取付け、取外しが容易となり、作業性が向上すると共に、取外し状態での保管の面でも有利となるダクト装置の取付け構造を有する運搬車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の運搬車両は、
運搬車両の車体に搭載するエンジンのラジエータへ空気を導入する開口部を分割する支持枠と、
前記支持枠により分割された開口部の各区域に、開口部周囲の枠と前記支持枠に、周辺部に設けた取付片をボルトにより固定してそれぞれ取付けられ、複数の空気通路の内壁に吸音材を貼り付けた複数の吸音ダクトとを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の運搬車両は、請求項1に記載の運搬車両において、
前記支持枠の下端を車体のメインフレームに固定し、上端を歩行用のデッキに固定して前記開口部を左右に2分割したことを特徴とする。
【0008】
請求項3の運搬車両は、請求項1または2に記載の運搬車両において、
前記支持枠はラジエータへの空気通路を有することを特徴とする。
【0009】
請求項4の運搬車両は、請求項3に記載の運搬車両において、
前記空気通路の内壁に吸音材を貼り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、吸音ダクトを複数に分割したので、開口部に1つの吸音ダクトを設ける場合に比較して1個の吸音ダクトの重量およびサイズが約半分以下となる。このため、吸音ダクトの取扱いが容易となり、作業性が向上し、車体に対して吸音ダクトを容易に取付け、取外すことが可能となる。また、吸音ダクトを取外した状態においては吸音ダクトの占有面積が狭くなり、重ねて保管することにより、保管スペースが狭くてすみ、保管が容易となる。また、吸音ダクトの周囲が、開口部の周辺に設けた枠部のみならず、支持枠にもボルトによって固定されるため、取付け強度が向上する。
【0011】
請求項2の発明によれば、開口部を左右に2分割する構成としたので、片側の吸音ダクトを取外すことにより、作業員が通過可能なラジエータへの通路を構成することができ、開口部全面を開口することなく、ラジエータの保守点検が可能となり、ラジエータの保守点検作業が容易となる。
【0012】
請求項3の発明によれば、支持枠にラジエータへの空気通路を設けたので、支持枠がラジエータへの空気の量を減らすことなく吸音ダクトを開口部に取付けることができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、支持枠に空気通路に吸音材を設けたので、支持枠においても吸音効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の運搬車両の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】図1の運搬車両の前部を示す正面図である。
【図3】図2の運搬車両において、吸音ダクトを取外した状態を示す吸音ダクト取付け部の正面図である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれ本実施の形態の支持枠の正面図、側面図である。
【図5】本実施の形態の支持枠のメインフレームに対する取付け構造を示す正面図である。
【図6】本実施の形態の支持枠のデッキに対する取付け構造を示す側面断面図である。
【図7】本実施の形態の吸音ダクトの構成を示す正面図である。
【図8】本実施の形態における片側の吸音ダクトを取外した状態を示す吸音ダクト取付け部の正面図である。
【図9】本実施の形態の吸音ダクトのデッキに対する取付け構造を示す側面断面図である。
【図10】本発明の支持枠の他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の運搬車両の一実施の形態を示す側面図、図2はその前部を示す正面図である。この実施の形態の運搬車両はダンプトラックであり、このダンプトラックは頑丈なフレーム構造をなし、前輪2および後輪3を有する車体1と、車体1上に搭載された荷台としてのベッセル4とキャビン5とを備える。ベッセル4は、例えば砕石物や石炭等の重い荷物を多量に積載するため、全長が10〜13mにも及ぶ大型の容器として構成され、前側上部にキャビン5を上側から覆う庇部4aが一体に設けられている。ベッセル4は車体1の後部の軸6を中心として油圧シリンダ7により起伏される。
【0016】
この車体1上におけるキャビン5の下側には原動機としてのエンジンとエンジンにより駆動される発電機や油圧ポンプ(いずれも図示せず)が搭載される。また、エンジン等の前方にはラジエータ20(図3参照)が搭載される。なおラジエータの設置部分には他の熱交換器である空調用、作動油用、燃料用等他の熱交換器も設置される場合がある。8は電力制御装置として備えた制御盤であり、これはこのダンプトラックの電力制御を行うものである。制御盤8は、発電機で発生させた電力により後輪3駆動用電動モータ等を作動させるものである。
【0017】
図2に示すように、車体1のメインフレーム1a上の左右に縦フレーム10,11を固着し、左側縦フレーム10上に前記キャビン5を設置する。また、メインフレーム1aにおけるキャビン5の右側に前記制御盤8を設置する。右側の縦フレーム11上には電気制動で発生する逆起電力を消費する抵抗器12を設置する。13はオペレータや保守員等が歩行するために縦フレーム10,11の上部および縦フレーム10,11の間に設けたデッキ、14はその外側に立設した手摺である。これらのデッキ13や手摺14はキャビン5の周囲や制御盤8の前部等に左右の縦フレーム10,11に支持させて取付けられる。15はデッキ13上に昇降するために縦フレーム10,11に取付けた梯子、16はエンジンに吸入する空気中の塵埃を除去するエアークリーナーである。17a,17bは本発明により支持枠24の左右に分割して設けた吸音ダクトである。
【0018】
図3は吸音ダクト17a,17bを取外した吸音ダクト17a,17bの取付け部の状態を示す。図3に示すように、ラジエータ20へ空気を導入する開口部18は支持枠24により2つの区域18a,18bに分割される。開口部18の周辺には、吸音ダクト17a,17bを取付けるため、メインフレーム1a、縦フレーム10,11およびデッキ13にそれぞれシートスクリュ19を溶接する、これらのシートスクリュ19はそれぞれ吸音ダクト17a,17bを取付けるためのねじ孔19aを有する。
【0019】
図4(A)、(B)はそれぞれこの支持枠24の正面図、側面図である。この支持枠24は横断面形状が矩形をなし、吸音ダクト17a、17bの一辺を固定するため、支持枠24の前面に複数のシートスクリュ25を上下に間隔を持たせて溶接してなる。各シートスクリュ25は左右にそれぞれねじ孔25aを有する。支持枠24の下端にはメインフレーム1aに支持枠24を取付けるための取付板26を溶接する。また、支持枠24の上端にはデッキ13に支持枠24を取付けるための取付板32を溶接する。48は支持枠24の左右両側に溶接した空気侵入防止板である。この空気浸入防止板48は、支持枠24のシートスウクリュ25と同じ突出幅で設けられ、後述の吸音ダクト17a,17bの取付片45(図7参照)を当接して固定した状態において、上下に隣接するシートスクリュ25,25間の隙間から開口部18内に空気が入ることを防止するものである。
【0020】
図5は支持枠24の下端をメインフレーム1aに取付ける構造を示す。図5に示すように、メインフレーム1aの前面には前方に突出するブラケット27をボルト28により固定し、支持枠24に溶接した取付板26およびブラケット27にそれぞれ設けたボルト挿通孔26a,27aにボルト29を挿通し、このボルト29をブラケット27の裏面に設けたナット30に螺合し締結することにより、支持枠24の下端をメインフレーム1aに固定する。なお、取付板26に設けるボルト挿通孔26aは、支持枠24の前後位置を調整可能とするため、図4(B)に示すように前後に長い長孔としている。
【0021】
図6は支持枠24の上端をデッキ13に取付ける構造を示す。図6に示すように、デッキ13に設けられたシートスクリュ19と取付板32との間にシム33と防振ゴム34とを挟持すると共に、取付板32と押え板35との間に防振ゴム36を介在させる。また、防振ゴム34,36に設けた穴と取付板32に設けた穴32aに筒状のスペーサ37を挿着する。そして押え板35のボルト挿通孔35aとスペーサ37とシム33のボルト挿通孔33aにボルト38を挿通してシートスクリュ19のねじ孔19aに螺合し締結することにより、支持枠24の上端をデッキ13に固定する。ここで、シム33は支持枠24の前面への突出量調整のために設けられる。また、防振ゴム34,36は、ダンプトラックの稼働時におけるデッキ13の振動数や振幅がメインフレーム1aと異なる(デッキ13の方がメインフレーム1aより振動し易い。)ため、デッキ13の振動によって支持枠24に無理が力がかからないように緩和するものである。
【0022】
図7は吸音ダクト17a,17bの構成を一方の吸音ダクト17aで代表させて示す図である。図7に示すように、吸音ダクト17aは互いに固着された縦横の鉄板40,41により格子状に画成された複数の空気通路42を形成し、各空気通路42を構成する鉄板40,41の内壁にウレタン樹脂製の発泡材等でなる吸音材43を貼り付けてなるものである。吸音ダクト17aの周囲の3辺には吸音ダクト17aを開口部18のシートスウクリュ19に取付けるための取付片44を設ける。また、吸音ダクト17aの他の1辺には吸音ダクト17aを支持枠24のシートスウクリュ25に取付けるための取付片45を設ける。これらの取付片44,45にはボルト挿通孔44a,45aを設ける。44b,45bは取付板44,45の板面と吸音ダクト17aの外面との間に溶接したリブである。他方の吸音ダクト17bは吸音ダクト17aと対称形に構成される。
【0023】
図8に示すように、この吸音ダクト17aは3辺をメインフレーム1a、縦フレーム10およびデッキ13にそれぞれ溶接したシートスクリュ19に当て、取付け片44のボルト挿通孔44aにボルト46を挿通してねじ孔19aに螺合して固定する。吸音ダクト17aの取付片45はボルト挿通孔45aに挿通するボルト47をシートスウクリュ25のねじ孔25aに螺合し締結することにより固定する。
【0024】
図9はボルト46によりデッキ13に取付片44を固定する構造を示す。このボルト46による固定構造は、図6に示した支持枠24の上端の取付板32のデッキ13への取付け構造と同様に防振ゴム34,36やシム33を用いたものである。メインフレーム1aや左右の縦フレーム10,11に設けたシートスクリュ19に対する取付片44の取付けも同様の構造で行なわれる。他方の吸音ダクト17bも同様の構造で開口部18に取付ける。
【0025】
このように、この実施の形態のダクト装置は、吸音ダクトを複数の吸音ダクト17a,17bに分割したので、開口部18に1つの吸音ダクトを設ける場合に比較して1個の吸音ダクトあたりの吸音ダクトの重量およびサイズが約半分となる。例えば140tの自重のダンプトラックの場合、一例として各吸音ダクト17a,17bはそれぞれ約200kg程度となる。このように重量が低減しかつ広さが面積が約半分に減少するので、吸音ダクトの取扱いが容易となり、作業性が向上し、車体に対して吸音ダクトを容易に取付け、取外しが可能となる。
【0026】
また、吸音ダクト17a,17bを取外した状態において、吸音ダクト17a,17bの占有面積が狭くなり、重ねて保管することにより、保管スペースが狭くてすみ、保管が容易となる。また、吸音ダクト17a,17bの周囲が、開口部18の周辺に設けた枠部のみならず、支持枠24にもボルト47によって固定されるため、取付け強度が向上する。メインフレーム1aや左右の縦フレーム10,11に設けるシートスクリュ19に対する取付片44の取付けも同様の構造も行なわれる。
【0027】
また、この実施の形態においては、開口部18を支持枠24によって左右に2分割する構成としたので、図8に示すように、例えば片側の吸音ダクト17bを取外すことにより、作業員が通過可能なラジエータ20への通路を構成することができる。例えば140tの自重のダンプトラックの場合、開口部18の分割された各区域18a,18bの左右の幅は1m以上、高さは2m以上確保される。また、ラジエータ20と吸音ダクト17a,17bとの間には人が通過可能な空間が形成されている。したがって吸音ダクト17a,17bの双方を取外すことなく、片方を取外せばラジエータ20の保守点検が可能となるので、保守点検が容易となる。
【0028】
図10は開口部18を分割する支持枠の他の例を示す正面図であり、この例の支持枠24Aは、前後方向に貫通する空気通路50を形成したものである。このような空気通路50を形成すれば、支持枠24Aによる空気通路面積の減少を緩和することができる。
【0029】
また、この例の支持枠24Aは空気通路50形成部の内壁に吸音材51を設けており、このような吸音材51を設けることにより、支持枠24Aにおける吸音効果をあげることができる。
【0030】
以上本発明を実施の形態により説明したが、本発明は、上記実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。例えば支持枠は縦に設けるのではなく、横方向あるいは縦横に設けてもよく、分割する区画の数も3以上としてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1:車体、1a:メインフレーム、2:前輪、3:後輪、4:ベッセル、5:キャビン、6:軸、7:油圧シリンダ、8:制御盤、10,11:縦フレーム、12:抵抗器、13:デッキ、14:手摺、15:梯子、16:エアークリーナー、17a,17b:吸音ダクト、18:開口部、18a,18b:分割区域、19:シートスクリュ、24,24A:支持枠、27:ブラケット、28,29:ボルト、30:ナット、32:取付板、33:シム、34,36:防振ゴム、35:押え板、37:スペーサ、38:ボルト、40,41:鉄板、42:空気通路、43:吸音材、44,45:取付片、46,47:ボルト、50:空気通路、51:吸音材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車両の車体に搭載するエンジンのラジエータへ空気を導入する開口部を分割する支持枠と、
前記支持枠により分割された開口部の各区域に、開口部周囲の枠と前記支持枠に、周辺部に設けた取付片をボルトにより固定してそれぞれ取付けられ、複数の空気通路の内壁に吸音材を貼り付けた複数の吸音ダクトとを備えたことを特徴とする運搬車両。
【請求項2】
請求項1に記載の運搬車両において、
前記支持枠の下端を車体のメインフレームに固定し、上端を歩行用のデッキに固定して前記開口部を左右に2分割したことを特徴とする運搬車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の運搬車両において、
前記支持枠はラジエータへの空気通路を有することを特徴とする運搬車両。
【請求項4】
請求項3に記載の運搬車両において、
前記空気通路の内壁に吸音材を貼り付けたことを特徴とする運搬車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate