運転妨害システム
【課題】可能な限り安全な手法により、異常な運転者が、自発的に運転操作を止めるように促す運転妨害システムを提供する。また、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる運転妨害システムを提供する。
【解決手段】異常検知器12が、運転者が盗難者及び飲酒者である等の異常を検知したとき、ヘッドランプ類駆動回路18は、夜間にヘッドランプ類20の明るさを消灯に至るまで徐々に絞る。これにより、定常的に視界を遮ることができ、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。また、ヘッドランプ類駆動回路18は、夜間にヘッドランプ類20の明るさを徐々に絞るため、異常な運転者に対して自発的に運転操作を止めるように促しつつ、路肩に停車する等、運転者が対応するための余裕を確保し、安全に停車させることが可能となる。
【解決手段】異常検知器12が、運転者が盗難者及び飲酒者である等の異常を検知したとき、ヘッドランプ類駆動回路18は、夜間にヘッドランプ類20の明るさを消灯に至るまで徐々に絞る。これにより、定常的に視界を遮ることができ、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。また、ヘッドランプ類駆動回路18は、夜間にヘッドランプ類20の明るさを徐々に絞るため、異常な運転者に対して自発的に運転操作を止めるように促しつつ、路肩に停車する等、運転者が対応するための余裕を確保し、安全に停車させることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は運転妨害システムに関し、特に、運転者が盗難者や飲酒者であるような異常な場合に運転者による車両の運転を妨害する運転妨害システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、盗難された車両の奪回を支援するシステムが提案されている。例えば、特許文献1では、システムが車両の盗難を検知した場合に、ヘッドライトの点滅や晴天時にワイパーを動作させる等の奪回支援処理を実行することにより、周囲に異常を知らせる技術が提案されている。
【特許文献1】特開2006−264471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の技術のように車両が盗難者に運転されて走行している場合に、ヘッドライトを点滅させ、晴天時にワイパーを動作させることは、当該車両及び当該車両周囲の交通の安全面において問題がある。そのため、このような運転妨害システムにおいては、可能な限り安全な手法によって自発的に運転者が運転操作を止めるように促すシステムが望ましい。
【0004】
また、上記の技術のように晴天時にワイパーを動作させるだけでは、周囲に異常を知らせるだけで、視界の遮蔽効果が少ないため、盗難者に車両の運転を自発的に止めさせるまでには至らない場合がある。晴天時にワイパーを動作させるだけでは、ワイパーの隙間を縫って視野を確保することが可能であるため、運転を抑止する効果が少ない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可能な限り安全な手法により、異常な運転者が、自発的に運転操作を止めるように促す運転妨害システムを提供することにある。
【0006】
また、本発明の目的は、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる運転妨害システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両を運転する運転者の異常を検知する異常検知手段と、車両の車速を検知する車速検知手段と、運転者による車両の運転を妨害する運転妨害手段と、を備え、運転妨害手段は、異常検知手段が運転者の異常を検知したときであって、車速検知手段が車両の走行状態を検知しているときは、運転者による車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害する、運転妨害システムである。
【0008】
この構成によれば、運転妨害手段は、異常検知手段が運転者の異常を検知したときであって、車速検知手段が車両の走行状態を検知しているときは、運転者による車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害するため、異常な運転者に対して自発的に運転操作を止めるように促しつつ、路肩に停車する等、運転者が対応するための余裕を確保し、安全に停車させることが可能となる。
【0009】
この場合、運転妨害手段は、夜間に車両外の照明の明るさを徐々に暗くすることにより車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害するものとできる。
【0010】
あるいは、運転妨害手段は、夜間に車両内を徐々に明るくすることにより車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害するものとできる。
【0011】
あるいは、運転妨害手段は、車両のボンネットの開度を徐々に大きくすることにより車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害するものとできる。
【0012】
あるいは、運転妨害手段は、車両の車窓の透過率を徐々に小さくすることにより車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害するものとできる。
【0013】
これらの構成によれば、運転妨害手段は、定常的に視界を遮ることができ、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。
【0014】
一方、本発明は、車両を運転する運転者の異常を検知する異常検知手段と、車両の車窓を拭くワイパーと、車両の車窓にウォッシャー液を噴射するウォッシャー液噴射手段と、を備え、ウォッシャー液噴射手段は、車窓におけるワイパーが位置している部位よりもワイパーが位置していない部位に対する噴射量が多くなるようにウォッシャー液を噴射する、運転妨害システムである。
【0015】
この構成によれば、ウォッシャー液噴射手段は、車窓におけるワイパーが位置している部位よりもワイパーが位置していない部位に対する噴射量が多くなるようにウォッシャー液を噴射するため、常に車窓からの視界はワイパーかウォッシャー液により遮られることになり、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の運転妨害システムによれば、異常な運転者に対して自発的に運転操作を止めるように促しつつ、路肩に停車する等、運転者が対応するための余裕を確保し、安全に停車させることが可能となる。
【0017】
また本発明の運転妨害システムによれば、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る運転妨害システムについて添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、第1実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。本実施形態の運転妨害システムは、自動車に内蔵され、盗難者や飲酒状態の運転者に対し自発的に車両を停止させて運転操作を止めることを促すように構成されている。図1に示すように本実施形態の運転妨害システム10aは、異常検知器(センサ)12、車速センサ14、コンライトシステム16、ヘッドランプ類駆動回路18及びヘッドランプ類20を備えている。
【0020】
異常検知器12は、車両を運転する運転者の異常を検知するためのものである。異常検知器12は、具体的には、運転者が盗難者等の車両の正当な所有者ではないことを検知し、あるいは運転者が飲酒状態にあることを検知する。異常検知器12は、特許請求の範囲に記載の異常検知手段として機能する。
【0021】
運転者が盗難者等の車両の正当な所有者でないことを検知するために、異常検知器12は、電子的なキーの照合システムによって専用のキー以外ではエンジンの始動ができないようにするイモビライザーや、運転者の指紋、虹彩、網膜、声紋あるいは手や指の静脈を照合することによって運転者が車両の正当な所有者であるか否かを検知する生体認証等の機能を有している。
【0022】
また異常検知器12は、アルコール検知センサとしての機能も有する。アルコール検知センサとしては、半導体を用いたもの、燃料電池を用いたもの、赤外線を用いたものを適用することができる。
【0023】
半導体を用いたアルコール検知センサは、半導体の中にもともと流れている電子の量が、車室内の空気中のアルコールにより吸収され、変化する特性を利用する。この原理のアルコール検知センサでは、半導体内の電子の量が変化することにより、センサ内の電気抵抗も変化するため、その電気抵抗の強さから車室内の空気中のアルコールの有無や運転者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
【0024】
燃料電池を用いたアルコール検知センサは、車室内の空気中のアルコールから電子を作り出すことのできる燃料電池の特性を利用する。この原理のアルコール検知センサでは、アルコールにより作り出された電子の多さが電気の流れの強さになるため、その電流の強さから、車室内の空気中のアルコールの有無や運転者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
【0025】
赤外線を用いたアルコール検知センサは、赤外線が、車室内の空気中のアルコールにより吸収されることによる特性を利用する。この原理のアルコール検知センサでは、アルコールにより吸収された赤外線を、光検出器で電気信号に変換し、電気信号をマイクロプロセッサーで解析することにより、車室内の空気中のアルコールの有無や運転者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
【0026】
なお、業務用車両におけるアルコール検知センサとしては、運転者の呼気中や血液中のアルコール濃度を直接測定するものとしても良い。
【0027】
車速センサ14は、車両の車速を測定するもので、既存のセンサを用いることができる。なお、本実施形態における車速センサ14としては、必ずしも車両の正確な車速を検知する必要はなく、車両が走行状態であるか否かを検知することができれば良い。例えば、車速センサ14として、シフトレバーがパーキングの状態であるか否かを検知することにより、車両が走行状態であるか否かを検知するものであっても良い。車速センサ14は、特許請求の範囲に記載の車速検知手段として機能する。
【0028】
コンライトシステム(自動点灯システム)16は、車両外の明るさに応じてヘッドライト等を自動的に点灯させるためのものであるが、本実施形態においてはコンライトシステム16における車両外の明るさを検知する機能が用いられる。
【0029】
ヘッドランプ類駆動回路18は、異常検知器12、車速センサ14及びコンライトシステム16からの情報に基づき、ヘッドランプやフォグランプ等のヘッドランプ類20の明るさを制御するためのものである。ヘッドランプ類駆動回路18及びヘッドランプ類20は、特許請求の範囲に記載の運転妨害手段として機能する。
【0030】
次に、図2及び3を参照して、本実施形態の運転妨害システムの動作について説明する。本実施形態の運転妨害システム10aは、運転者がエンジンを始動しようと状態から動作を開始する。
【0031】
図2に示すように、まず、コンライトシステム16が外界の明るさを取得する(S101)。コンライトシステム16が夜間(外部がヘッドランプ類20の点灯が必要な明るさ)であることを検知した場合は(S102)、車速センサ14により車速が取得される(S103)。車速センサ14が、車速が0km/hより大きいことを検知したときは(S104)、異常検知器12による異常検知が行われる(S105)。
【0032】
異常検知器12が、運転者が盗難者等の車両の正当な所有者でないことや、運転者が飲酒状態にある等の異常を検知したときは(S106)、ヘッドランプ類駆動回路18はヘッドランプ類20の明るさを徐々に絞っていき、最終的には消灯する(S107)。この場合のヘッドランプ類20の明るさは、例えば、図3に示すように、制御を開始した時刻T=0から消灯時刻であるT=T1に至る時間の経過に比例してヘッドランプ類20の明るさ出力を低下させるようにする。T1は、統計等により得られたヘッドランプ類20の明るさが減少し始めて、運転者が路肩等に安全に車両を停車させることが可能な時間とすることができる。
【0033】
なお、コンライトシステム16が夜間であることを検知しなかった場合(S102)、車速センサ14が、車速が0km/hより大きいことを検知しなかった場合(S104)、及び異常検知器12がドライバーの異常を検知しなかった場合(S106)は、ステップS107におけるヘッドランプ類20の制御は行われない。
【0034】
本実施形態によれば、ヘッドランプ類駆動回路18は、夜間にヘッドランプ類20の明るさを絞るため、上述の特許文献1のようにヘッドライトを点滅させ、晴天時にワイパーを動作させること等に比べて、定常的に視界を遮ることができ、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、ヘッドランプ類駆動回路18は、夜間にヘッドランプ類20の明るさを消灯に至るまで徐々に絞るため、異常な運転者に対して自発的に運転操作を止めるように促しつつ、路肩に停車する等、運転者が対応するための余裕を確保し、安全に停車させることが可能となる。したがって、本実施形態によれば、異常な運転者に対して運転抑止効果がある。
【0036】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。本実施形態では、車両のボンネットの開度を徐々に大きくすることにより車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害する点が上記第1実施形態と異なっている。図4に示すように、本実施形態の運転妨害システム10bは、第1実施形態と同様の異常検知器12及び車速センサ14に加えて、車速対開度テーブル22、ボンネット開度アクチュエータ24、油圧ダンパー26及びボンネット28を備えている。
【0037】
車速対開度テーブル22は、車速に対応したボンネットの開度が対応付けて記憶されているものである。
【0038】
ボンネット開度アクチュエータ24は、異常検知器12が運転者の異常を検知したときに、車速対開度テーブル22に記憶されている車速センサ14から得られた車速に対応した開度でボンネット28が開くように、油圧ダンパー26とボンネット28とを制御するためのものである。
【0039】
油圧ダンパー26は、ボンネット開度アクチュエータ24により制御された油圧力により、ボンネット28に対して開く方向への押出力あるいは閉じる方向への吸引力を与えるためのものである。
【0040】
ボンネット28は、車両前部に配置されたエンジンルームのエンジンフードであり、開放を禁止するボンネットロックが備えられている。
【0041】
車速対開度テーブル22、ボンネット開度アクチュエータ24、油圧ダンパー26及びボンネット28は、特許請求の範囲に記載の運転妨害手段として機能する。
【0042】
次に、図5〜7を参照して、本実施形態の運転妨害システムの動作について説明する。本実施形態の運転妨害システム10bは、運転者がエンジンを始動しようと状態から動作を開始する。
【0043】
まず、異常検知器12による異常検知が行われる(S201)。異常検知器12が、運転者が盗難者等の車両の正当な所有者でないことや、運転者が飲酒状態にある等の異常を検知したときは(S202)、車速センサ14により車速が取得される(S203)。車速センサ14が、車速が0km/hより大きいことを検知したときは(S204)、ボンネット開度アクチュエータ24は、ボンネット28のボンネットロックを外し、ボンネット28が開放可能なようにする(S205)。
【0044】
ボンネット開度アクチュエータ24は、車速センサ14により取得された車速に基づき、車速対開度テーブルに記憶された車速に対応するボンネット28の開度を決定する(S206)。図6(a)〜(e)は、車速とボンネットの開度との関係を示す図である。図6において矢印で示す車速V0〜V4は、V0<V1<V2<V3<V4である。
【0045】
ボンネット28は、油圧ダンパー26によって、図6(a)〜(e)中において実線で示す開度まで開放される(S206)。車速が速いほど前方からの風圧は大きくなるため、図6(a)〜(e)に示すように、車速が遅いほど油圧ダンパー26によるボンネット28の初期の開度は大きく、車速が速いほど油圧ダンパー26によるボンネット28の初期の開度は小さくされる。なお、車速がV0=0km/hの場合は、ボンネットロックのアンロックとボンネットの開放とは行われない。図6(b)〜(e)のいずれの場合においても、最終的にボンネット28は風圧により図中破線で示す開度まで開放される。すなわち、油圧ダンパー26によるボンネット28の開放はあくまでも視界を遮るためのトリガーであって、最終的なボンネット28の全開は車両前方からの風圧を利用して行われる。
【0046】
ボンネット28の開放は可能な限り徐々に実施される。図7に示すように、油圧ダンパー26は、ボンネット開度アクチュエータ24が時刻T=0においてボンネット28の開放を決定したときはボンネット28を押上げる方向に油圧力を働かせ、時刻T=T1において図6の実線で示す角度までボンネット28が開いたときはボンネット28を引き下げる方向に油圧力を働かせ、時刻T=T2において図6の破線で示す角度までボンネット28が開くまでに至る。なお、時刻T=0から時刻T=T1までの時間、及び時刻T=T1から時刻T=T2までの時間は、統計等により得られたボンネット28が開き始めてから、運転者が路肩等に安全に車両を停車させることが可能な時間とすることができる。
【0047】
本実施形態によれば、ボンネット開度アクチュエータ24が、徐々にボンネット28が開くようにボンネット28の開度を制御するため、上述の特許文献1のようにヘッドライトを点滅させ、晴天時にワイパーを動作させること等に比べて、定常的に視界を遮ることができ、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、最終的なボンネット28の全開は車両前方からの風圧を利用して行われるため、最低限の電力でボンネット28の開放が行われることになり、燃費の向上に繋がる。また、上記のシステムであることを運転者が知ることにより、速度超過を抑止することができるとともに、飲酒運転抑止効果を奏する。したがって、本実施形態によれば、異常な運転者に対して運転抑止効果がある。
【0049】
加えて、本実施形態によれば、ボンネット開度アクチュエータ24が、徐々にボンネット28が開くようにボンネット28の開度を制御するため、急な視野妨害とならず、異常な運転者に対して自発的に運転操作を止めるように促しつつ、路肩に停車する等、運転者が対応するための余裕を確保し、安全に停車させることが可能となる。
【0050】
以下、本発明の第3実施形態について説明する。図8は、本発明の第3実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。本実施形態では、車両のフロントガラス(ウインドシールド)に備えられた電子暗幕の透過率を徐々に小さくすることにより車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害する点が上記第1実施形態と異なっている。図8に示すように、本実施形態の運転妨害システム10cは、第1実施形態と同様の異常検知器12及び車速センサ14に加えて、アクチュエーション判断部30、シフト位置センサ32、ディスプレイ制御部34、フロントガラス36及び電子暗幕38を備えている。
【0051】
アクチュエーション判断部30は、異常検知器12からの情報に基づき、ディスプレイ制御部34の動作を開始するか否かを判断するためのものである。
【0052】
シフト位置センサ32は、車両のシフトレバーのシフト位置がパーキング状態であるか否かを検知するためのものである。
【0053】
ディスプレイ制御部34は、フロントガラス36に備えられた電子暗幕38の透過率を車速センサ14及びシフト位置センサ32からの情報に基づき制御するためのものである。
【0054】
電子暗幕38は、フロントガラス36の透過率を図10に示すようなほぼ透過率100%の透明な状態から図11に示すようなほぼ透過率0%の黒塗りの状態に変化させるためのものである。電子暗幕38に使用するデバイスは、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、シースルーの電子ペーパー等のフロントガラス36の曲面に貼付又は直接に蒸着することができるディスプレイを適用することができる。
【0055】
アクチュエーション判断部30、ディスプレイ制御部34、フロントガラス36及び電子暗幕38は、特許請求の範囲に記載の運転妨害手段として機能する。
【0056】
次に、図9、12及び13を参照して、本実施形態の運転妨害システムの動作について説明する。本実施形態の運転妨害システム10cは、運転者がエンジンを始動しようと状態から動作を開始する。
【0057】
本実施形態では、運転しようとする者が車両のドアを開けた時点では、電子暗幕38は図11に示すようなほぼ透過率0%の黒塗りの状態となっている。図9に示すように、シフト位置センサ32が、シフト位置がパーキング状態であることを検知しているときに、異常検知器12による運転者の異常検知を行う(S301)。異常検知器12が、運転者が盗難者等の車両の正当な所有者でないことや、運転者が飲酒状態にある等の異常を検知したときは(S302)、アクチュエーション判断部30はディスプレイ制御部34を起動させ、ディスプレイ制御部34は電子暗幕38を図11に示すようなほぼ透過率0%の黒塗りの状態のまま保持し(S303)、車両の運転を開始できないようにする。
【0058】
異常検知器12が運転者の異常を検知しないときは(S302)、アクチュエーション判断部30はディスプレイ制御部34を起動させ、ディスプレイ制御部34は電子暗幕38を図10に示すようなほぼ透過率100%のクリア状態(通常のガラスの状態)にし、運転者は運転を開始できる(S304)。車速センサ14は車速を取得し(S305)、車両移動中(車速0km/hよりも大きい)に、異常検知器12は異常検知を定期的あるいは不定期で行う(S306)。
【0059】
もし、異常検知器12が運転者の異常を検知したときは(S307)、ディスプレイ制御部34は電子暗幕38を図12(a)〜(h)及び図13に示すように透過率100%のクリア状態から透過率を徐々に下げていくように制御し(S308)、最終的にはほぼ透過率0%の黒塗りの状態とする(S309)。なお、図13に示すように、時刻T=0から時刻T=T1までの時間は、統計等により得られた電子暗幕38の透過率が低下し始めてから、運転者が路肩等に安全に車両を停車させることが可能な時間とすることができる。
【0060】
この動作は、シフト位置センサ32が、シフト位置がパーキング状態であることを検知するまで継続される(S310)。一度、電子暗幕38が黒塗りの状態となった場合、ディスプレイ制御部34は電子暗幕38をその状態のまま維持する。もし、異常検知器12が、運転者が飲酒状態であることを検知した場合、再度行われたアルコール検知で運転者が飲酒状態であることを検知しなかった場合は、ディスプレイ制御部34は電子暗幕38を図10に示すようなほぼ透過率100%のクリア状態にし(S301,S302,S304)、運転者に正常な視界を提供して、運転を実施することができるようにする。
【0061】
本実施形態によれば、ディスプレイ制御部34は電子暗幕38の透過率を徐々に低下させるため、上述の特許文献1のようにヘッドライトを点滅させ、晴天時にワイパーを動作させること等に比べて、定常的に視界を遮ることができ、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、電子暗幕38が黒塗り状態であれば運転を開始することができないため、運転開始を抑制することができる。また、本実施形態によれば、停車時には電子暗幕38は黒塗り状態であるため、電子暗幕38にプライバシーガラスとしての機能を果たさせることができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、走行中に電子暗幕38が急に黒塗り状態になるのではなく、徐々に黒塗りの状態にするため、運転者が安全な場所に駐停車できる時間を確保し、事故に陥る危険性を排除することができる。
【0064】
以下、本発明の第4実施形態について説明する。図14は、本発明の第4実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。図14に示すように、本実施形態の運転妨害システム10dは、上記第1実施形態の運転妨害システム10aに加えて、グラフィックメータ類40、ルームランプ42及びナビゲーションディスプレイ44を備え、これらも特許請求の範囲に記載の運転妨害手段として機能する。ヘッドランプ類駆動回路18は、ヘッドランプ類20の明るさが徐々に暗くされるのに対応してグラフィックメータ類40、ルームランプ42及びナビゲーションディスプレイ44の輝度を徐々に強くし、車内が徐々に明るくなるようにされる。
【0065】
本実施形態によれば、ヘッドランプ類駆動回路18は、夜間にヘッドランプ類20の明るさを絞り、かつ車内の明るさを明るくするため、上述の特許文献1のようにヘッドライトを点滅させ、晴天時にワイパーを動作させること等に比べて、定常的に視界を遮ることができ、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、ヘッドランプ類駆動回路18は、夜間にヘッドランプ類20の明るさを消灯に至るまで徐々に絞り、かつ車内の明るさを徐々に明るくするため、異常な運転者に対して自発的に運転操作を止めるように促しつつ、路肩に停車する等、運転者が対応するための余裕を確保し、安全に停車させることが可能となる。したがって、本実施形態によれば、異常な運転者に対して運転抑止効果がある。
【0067】
以下、本発明の第5実施形態について説明する。図15は、本発明の第5実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。本実施形態では、ワイパー動作とウォッシャー液噴射を対応して行うことにより、異常な運転者の運転を妨害する。図15に示すように、本実施形態の運転妨害システム10eは、上記第1実施形態と同様の異常検知器12に加え、雨粒センサ46、ウォッシャー液残量センサ48、冷却水残量センサ50、ワイパー&ウォッシャー調停部52、タンク切替部54、ウォッシャー液タンク56、エンジン冷却水タンク58、ウォッシャー60及びワイパー62を備えている。
【0068】
雨粒センサ46は、車外の雨量を検知して晴天時であるか否かを判断するためのものである。ウォッシャー液残量センサ48はウォッシャー液タンク56の残量を検知し、冷却水残量センサ50はエンジン冷却水タンク58の残量を検知するためのものである。
【0069】
ワイパー&ウォッシャー調停部52は、雨粒センサ46、ウォッシャー液残量センサ48及び冷却水残量センサ50からの情報に基づき、ワイパー62の動作に対応したタイミングでウォッシャー60を動作させるためのものである。
【0070】
タンク切替部54は、ウォッシャー液タンク56の残量がなくなった場合に、ウォッシャー60に供給する液をエンジン冷却水タンク58からの冷却水に切替えるためのものである。なお、本実施形態では、ウォッシャー液タンク56のウォッシャー液及びエンジン冷却水タンク58の冷却水は、不透明のものであることが好ましい。
【0071】
次に、図16〜20を参照して、本実施形態の運転妨害システムの動作について説明する。本実施形態の運転妨害システム10eは、運転者がエンジンを始動しようと状態から動作を開始する。
【0072】
まず、異常検知器12による運転者の異常検知を行う(S401)。異常検知器12が、運転者が盗難者等の車両の正当な所有者でないことや、運転者が飲酒状態にある等の異常を検知したときは(S402)、ワイパー&ウォッシャー調停部52は、雨滴センサ46により晴天時であることを確認した後、ワイパー62を動作させる(S403)。ワイパー&ウォッシャー調停部52は、ウォッシャー液残量センサ48によりウォッシャー液の残量を確認する(S404)。ワイパー&ウォッシャー調停部52は、ウォッシャー液の残量がある場合は、ワイパー62の動作に合わせたタイミングでウォッシャー60からウォッシャー液を噴射させる。
【0073】
図17は、ワイパーブレードとウォッシャー液噴出口の配置を示す図である。図17に示すように、この例では、ウインドシールド64に対して、2本のワイパーブレード62a,62bと、2つのウォッシャー60a,60bが配置されている。このような配置の場合、例えば、図18(a)に示すようにワイパーブレード62a,62bが下がっているときは、両方のウォッシャー60a,60bからウォッシャー液を噴射させ、図18(b)に示すようにワイパーブレード62a,62bがウインドシールド64を遮るように上がっているときは、片方のウォッシャー60aからウォッシャー液を噴射させ、図18(c)に示すようにワイパーブレード62a,62bが上がりきってウインドシールド64を遮らなくなったときは、また両方のウォッシャー60a,60bからウォッシャー液を噴射させるようにすることができる。このようにすることにより、少ない噴射量で効果的に運転者の視界を妨げることができる。
【0074】
あるいは、図19(a)に示すようにワイパーブレード62a,62bが下がっているときは、両方のウォッシャー60a,60bから同じ噴射量でウォッシャー液を噴射させ、図19(b)に示すようにワイパーブレード62a,62bがウインドシールド64を遮るように上がっているときは、片方のウォッシャー60aからの噴射量を少なくし、図19(c)に示すようにワイパーブレード62a,62bが上がりきってウインドシールド64を遮る度合いが少なくなったときは、片方のウォッシャー60bからの噴射量を少なくするようにもできる。このようにそれぞれのウォッシャー60a,60bからの噴射量を変動させることによっても、少ない噴射量で効果的に運転者の視界を妨げることができる。
【0075】
図20(a)〜(c)に示すような、ワイパーブレード60aが一本のみ備えられている場合は、図20(a)に示すようにワイパーブレード60aが右側にあるときは、右側のウォッシャー60bからの噴射量を少なくし、図20(b)に示すようにワイパーブレード60aが中央にあるときは、両方のウォッシャー60a,60bから同じ噴射量でウォッシャー液を噴射させ、図20(c)に示すようにワイパーブレード60aが左側にあるときは、左側のウォッシャー60aからの噴射量を少なくするようにもできる。このように、ワイパーブレード60aが一本のみ備えられている場合でも、それぞれのウォッシャー60a,60bからの噴射量を変動させることによっても、少ない噴射量で効果的に運転者の視界を妨げることができる。
【0076】
図16に戻り、ウォッシャー液の残量がなくなった場合は(S405)、タンク切替部54は、ウォッシャー60に供給する液をエンジン冷却水タンク58からの冷却水に切替え(S407)、エンジン冷却水がなくなるまで同様の動作が行われる(S407,S408)。
【0077】
なお、本実施形態においては、雨滴センサ46が晴天時であると検知しなかった場合は、上記動作は行われない。また、本実施形態においても、上記第1〜4実施形態のように車速センサ14を備え、車速センサ14が、車両が走行状態であることを検知したときは、ウォッシャー60からのウォッシャー液の噴射量を徐々に多くすることにより、異常な運転者に対して自発的に運転操作を止めるように促しつつ、路肩に停車する等、運転者が対応するための余裕を確保し、安全に停車させることが可能となる。
【0078】
本実施形態によれば、ウォッシャー60は、車窓におけるワイパー62が位置している部位よりもワイパー62が位置していない部位に対する噴射量が多くなるようにウォッシャー液を噴射するため、常にウインドシールド64からの視界はワイパー62かウォッシャー液により遮られることになり、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。特に、晴天時であっても、より効果的に運転者の視界を妨げることができるため、運転者に運転の中止を促すことができる。
【0079】
また、本実施形態においては、ウォッシャー液の残量がなくなった場合は、タンク切替部54は、ウォッシャー60に供給する液をエンジン冷却水タンク58からの冷却水に切替えるため、エンジンのオーバーヒートの恐れにより、運転者に自発的に運転の中止を促すことができる。
【0080】
さらに上記機能を運転者が知ることで、運転継続を抑止する効果が得られる。
【0081】
加えて、ウォッシャー60の動作タイミング、噴射量を制御することによりウォッシャー液を節約することができる。
【0082】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】第1実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る運転妨害システムの動作を示すフロー図である。
【図3】ランプの明るさ出力の変化を示すグラフ図である。
【図4】第2実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。
【図5】第2実施形態に係る運転妨害システムの動作を示すフロー図である。
【図6】(a)〜(e)は、車速とボンネットの開度との関係を示す図である。
【図7】油圧ダンパー力の変化を示すグラフ図である。
【図8】第3実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。
【図9】第3実施形態に係る運転妨害システムの動作を示すフロー図である。
【図10】通常状態の電子暗幕を示す図である。
【図11】暗幕状態の電子暗幕を示す図である。
【図12】(a)〜(h)は、電子暗幕の透過率の変化を示す図である。
【図13】光の透過率の変化を示すグラフ図である。
【図14】第4実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。
【図15】第5実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。
【図16】第5実施形態に係る運転妨害システムの動作を示すフロー図である。
【図17】ワイパーブレードとウォッシャー液噴出口の配置を示す図である。
【図18】(a)〜(c)は、2本のワイパーブレードの動作とウッシャー液の噴射時期との関係を示す図である。
【図19】(a)〜(c)は、2本のワイパーブレードの動作とウッシャー液の噴射量との関係を示す図である。
【図20】(a)〜(c)は、1本のワイパーブレードの動作とウッシャー液の噴射量との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
10a,10b,10c,10d,10e…運転妨害システム、12…異常検知器、14…車速センサ、16…コンライトシステム、18…ヘッドランプ類駆動回路、20…ヘッドランプ類、22…車速対開度テーブル、24…ボンネット開度アクチュエータ、26…油圧ダンパー、28…ボンネット、30…アクチュエーション判断部、32…シフト位置センサ、34…ディスプレイ制御部、36…フロントガラス、38…電子暗幕、40…グラフィックメータ類、42…ルームランプ、44…ナビゲーションディスプレイ、46…雨粒センサ、48…ウォッシャー液残量センサ、50…冷却水残量センサ、52…ワイパー&ウォッシャー調停部、54…タンク切替部、56…ウォッシャー液タンク、58…エンジン冷却水タンク、60,60a,60b…ウォッシャー、62,62a,62b…ワイパー、64…ウインドシールド。
【技術分野】
【0001】
本発明は運転妨害システムに関し、特に、運転者が盗難者や飲酒者であるような異常な場合に運転者による車両の運転を妨害する運転妨害システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、盗難された車両の奪回を支援するシステムが提案されている。例えば、特許文献1では、システムが車両の盗難を検知した場合に、ヘッドライトの点滅や晴天時にワイパーを動作させる等の奪回支援処理を実行することにより、周囲に異常を知らせる技術が提案されている。
【特許文献1】特開2006−264471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の技術のように車両が盗難者に運転されて走行している場合に、ヘッドライトを点滅させ、晴天時にワイパーを動作させることは、当該車両及び当該車両周囲の交通の安全面において問題がある。そのため、このような運転妨害システムにおいては、可能な限り安全な手法によって自発的に運転者が運転操作を止めるように促すシステムが望ましい。
【0004】
また、上記の技術のように晴天時にワイパーを動作させるだけでは、周囲に異常を知らせるだけで、視界の遮蔽効果が少ないため、盗難者に車両の運転を自発的に止めさせるまでには至らない場合がある。晴天時にワイパーを動作させるだけでは、ワイパーの隙間を縫って視野を確保することが可能であるため、運転を抑止する効果が少ない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可能な限り安全な手法により、異常な運転者が、自発的に運転操作を止めるように促す運転妨害システムを提供することにある。
【0006】
また、本発明の目的は、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる運転妨害システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両を運転する運転者の異常を検知する異常検知手段と、車両の車速を検知する車速検知手段と、運転者による車両の運転を妨害する運転妨害手段と、を備え、運転妨害手段は、異常検知手段が運転者の異常を検知したときであって、車速検知手段が車両の走行状態を検知しているときは、運転者による車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害する、運転妨害システムである。
【0008】
この構成によれば、運転妨害手段は、異常検知手段が運転者の異常を検知したときであって、車速検知手段が車両の走行状態を検知しているときは、運転者による車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害するため、異常な運転者に対して自発的に運転操作を止めるように促しつつ、路肩に停車する等、運転者が対応するための余裕を確保し、安全に停車させることが可能となる。
【0009】
この場合、運転妨害手段は、夜間に車両外の照明の明るさを徐々に暗くすることにより車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害するものとできる。
【0010】
あるいは、運転妨害手段は、夜間に車両内を徐々に明るくすることにより車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害するものとできる。
【0011】
あるいは、運転妨害手段は、車両のボンネットの開度を徐々に大きくすることにより車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害するものとできる。
【0012】
あるいは、運転妨害手段は、車両の車窓の透過率を徐々に小さくすることにより車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害するものとできる。
【0013】
これらの構成によれば、運転妨害手段は、定常的に視界を遮ることができ、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。
【0014】
一方、本発明は、車両を運転する運転者の異常を検知する異常検知手段と、車両の車窓を拭くワイパーと、車両の車窓にウォッシャー液を噴射するウォッシャー液噴射手段と、を備え、ウォッシャー液噴射手段は、車窓におけるワイパーが位置している部位よりもワイパーが位置していない部位に対する噴射量が多くなるようにウォッシャー液を噴射する、運転妨害システムである。
【0015】
この構成によれば、ウォッシャー液噴射手段は、車窓におけるワイパーが位置している部位よりもワイパーが位置していない部位に対する噴射量が多くなるようにウォッシャー液を噴射するため、常に車窓からの視界はワイパーかウォッシャー液により遮られることになり、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の運転妨害システムによれば、異常な運転者に対して自発的に運転操作を止めるように促しつつ、路肩に停車する等、運転者が対応するための余裕を確保し、安全に停車させることが可能となる。
【0017】
また本発明の運転妨害システムによれば、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る運転妨害システムについて添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、第1実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。本実施形態の運転妨害システムは、自動車に内蔵され、盗難者や飲酒状態の運転者に対し自発的に車両を停止させて運転操作を止めることを促すように構成されている。図1に示すように本実施形態の運転妨害システム10aは、異常検知器(センサ)12、車速センサ14、コンライトシステム16、ヘッドランプ類駆動回路18及びヘッドランプ類20を備えている。
【0020】
異常検知器12は、車両を運転する運転者の異常を検知するためのものである。異常検知器12は、具体的には、運転者が盗難者等の車両の正当な所有者ではないことを検知し、あるいは運転者が飲酒状態にあることを検知する。異常検知器12は、特許請求の範囲に記載の異常検知手段として機能する。
【0021】
運転者が盗難者等の車両の正当な所有者でないことを検知するために、異常検知器12は、電子的なキーの照合システムによって専用のキー以外ではエンジンの始動ができないようにするイモビライザーや、運転者の指紋、虹彩、網膜、声紋あるいは手や指の静脈を照合することによって運転者が車両の正当な所有者であるか否かを検知する生体認証等の機能を有している。
【0022】
また異常検知器12は、アルコール検知センサとしての機能も有する。アルコール検知センサとしては、半導体を用いたもの、燃料電池を用いたもの、赤外線を用いたものを適用することができる。
【0023】
半導体を用いたアルコール検知センサは、半導体の中にもともと流れている電子の量が、車室内の空気中のアルコールにより吸収され、変化する特性を利用する。この原理のアルコール検知センサでは、半導体内の電子の量が変化することにより、センサ内の電気抵抗も変化するため、その電気抵抗の強さから車室内の空気中のアルコールの有無や運転者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
【0024】
燃料電池を用いたアルコール検知センサは、車室内の空気中のアルコールから電子を作り出すことのできる燃料電池の特性を利用する。この原理のアルコール検知センサでは、アルコールにより作り出された電子の多さが電気の流れの強さになるため、その電流の強さから、車室内の空気中のアルコールの有無や運転者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
【0025】
赤外線を用いたアルコール検知センサは、赤外線が、車室内の空気中のアルコールにより吸収されることによる特性を利用する。この原理のアルコール検知センサでは、アルコールにより吸収された赤外線を、光検出器で電気信号に変換し、電気信号をマイクロプロセッサーで解析することにより、車室内の空気中のアルコールの有無や運転者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
【0026】
なお、業務用車両におけるアルコール検知センサとしては、運転者の呼気中や血液中のアルコール濃度を直接測定するものとしても良い。
【0027】
車速センサ14は、車両の車速を測定するもので、既存のセンサを用いることができる。なお、本実施形態における車速センサ14としては、必ずしも車両の正確な車速を検知する必要はなく、車両が走行状態であるか否かを検知することができれば良い。例えば、車速センサ14として、シフトレバーがパーキングの状態であるか否かを検知することにより、車両が走行状態であるか否かを検知するものであっても良い。車速センサ14は、特許請求の範囲に記載の車速検知手段として機能する。
【0028】
コンライトシステム(自動点灯システム)16は、車両外の明るさに応じてヘッドライト等を自動的に点灯させるためのものであるが、本実施形態においてはコンライトシステム16における車両外の明るさを検知する機能が用いられる。
【0029】
ヘッドランプ類駆動回路18は、異常検知器12、車速センサ14及びコンライトシステム16からの情報に基づき、ヘッドランプやフォグランプ等のヘッドランプ類20の明るさを制御するためのものである。ヘッドランプ類駆動回路18及びヘッドランプ類20は、特許請求の範囲に記載の運転妨害手段として機能する。
【0030】
次に、図2及び3を参照して、本実施形態の運転妨害システムの動作について説明する。本実施形態の運転妨害システム10aは、運転者がエンジンを始動しようと状態から動作を開始する。
【0031】
図2に示すように、まず、コンライトシステム16が外界の明るさを取得する(S101)。コンライトシステム16が夜間(外部がヘッドランプ類20の点灯が必要な明るさ)であることを検知した場合は(S102)、車速センサ14により車速が取得される(S103)。車速センサ14が、車速が0km/hより大きいことを検知したときは(S104)、異常検知器12による異常検知が行われる(S105)。
【0032】
異常検知器12が、運転者が盗難者等の車両の正当な所有者でないことや、運転者が飲酒状態にある等の異常を検知したときは(S106)、ヘッドランプ類駆動回路18はヘッドランプ類20の明るさを徐々に絞っていき、最終的には消灯する(S107)。この場合のヘッドランプ類20の明るさは、例えば、図3に示すように、制御を開始した時刻T=0から消灯時刻であるT=T1に至る時間の経過に比例してヘッドランプ類20の明るさ出力を低下させるようにする。T1は、統計等により得られたヘッドランプ類20の明るさが減少し始めて、運転者が路肩等に安全に車両を停車させることが可能な時間とすることができる。
【0033】
なお、コンライトシステム16が夜間であることを検知しなかった場合(S102)、車速センサ14が、車速が0km/hより大きいことを検知しなかった場合(S104)、及び異常検知器12がドライバーの異常を検知しなかった場合(S106)は、ステップS107におけるヘッドランプ類20の制御は行われない。
【0034】
本実施形態によれば、ヘッドランプ類駆動回路18は、夜間にヘッドランプ類20の明るさを絞るため、上述の特許文献1のようにヘッドライトを点滅させ、晴天時にワイパーを動作させること等に比べて、定常的に視界を遮ることができ、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、ヘッドランプ類駆動回路18は、夜間にヘッドランプ類20の明るさを消灯に至るまで徐々に絞るため、異常な運転者に対して自発的に運転操作を止めるように促しつつ、路肩に停車する等、運転者が対応するための余裕を確保し、安全に停車させることが可能となる。したがって、本実施形態によれば、異常な運転者に対して運転抑止効果がある。
【0036】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。本実施形態では、車両のボンネットの開度を徐々に大きくすることにより車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害する点が上記第1実施形態と異なっている。図4に示すように、本実施形態の運転妨害システム10bは、第1実施形態と同様の異常検知器12及び車速センサ14に加えて、車速対開度テーブル22、ボンネット開度アクチュエータ24、油圧ダンパー26及びボンネット28を備えている。
【0037】
車速対開度テーブル22は、車速に対応したボンネットの開度が対応付けて記憶されているものである。
【0038】
ボンネット開度アクチュエータ24は、異常検知器12が運転者の異常を検知したときに、車速対開度テーブル22に記憶されている車速センサ14から得られた車速に対応した開度でボンネット28が開くように、油圧ダンパー26とボンネット28とを制御するためのものである。
【0039】
油圧ダンパー26は、ボンネット開度アクチュエータ24により制御された油圧力により、ボンネット28に対して開く方向への押出力あるいは閉じる方向への吸引力を与えるためのものである。
【0040】
ボンネット28は、車両前部に配置されたエンジンルームのエンジンフードであり、開放を禁止するボンネットロックが備えられている。
【0041】
車速対開度テーブル22、ボンネット開度アクチュエータ24、油圧ダンパー26及びボンネット28は、特許請求の範囲に記載の運転妨害手段として機能する。
【0042】
次に、図5〜7を参照して、本実施形態の運転妨害システムの動作について説明する。本実施形態の運転妨害システム10bは、運転者がエンジンを始動しようと状態から動作を開始する。
【0043】
まず、異常検知器12による異常検知が行われる(S201)。異常検知器12が、運転者が盗難者等の車両の正当な所有者でないことや、運転者が飲酒状態にある等の異常を検知したときは(S202)、車速センサ14により車速が取得される(S203)。車速センサ14が、車速が0km/hより大きいことを検知したときは(S204)、ボンネット開度アクチュエータ24は、ボンネット28のボンネットロックを外し、ボンネット28が開放可能なようにする(S205)。
【0044】
ボンネット開度アクチュエータ24は、車速センサ14により取得された車速に基づき、車速対開度テーブルに記憶された車速に対応するボンネット28の開度を決定する(S206)。図6(a)〜(e)は、車速とボンネットの開度との関係を示す図である。図6において矢印で示す車速V0〜V4は、V0<V1<V2<V3<V4である。
【0045】
ボンネット28は、油圧ダンパー26によって、図6(a)〜(e)中において実線で示す開度まで開放される(S206)。車速が速いほど前方からの風圧は大きくなるため、図6(a)〜(e)に示すように、車速が遅いほど油圧ダンパー26によるボンネット28の初期の開度は大きく、車速が速いほど油圧ダンパー26によるボンネット28の初期の開度は小さくされる。なお、車速がV0=0km/hの場合は、ボンネットロックのアンロックとボンネットの開放とは行われない。図6(b)〜(e)のいずれの場合においても、最終的にボンネット28は風圧により図中破線で示す開度まで開放される。すなわち、油圧ダンパー26によるボンネット28の開放はあくまでも視界を遮るためのトリガーであって、最終的なボンネット28の全開は車両前方からの風圧を利用して行われる。
【0046】
ボンネット28の開放は可能な限り徐々に実施される。図7に示すように、油圧ダンパー26は、ボンネット開度アクチュエータ24が時刻T=0においてボンネット28の開放を決定したときはボンネット28を押上げる方向に油圧力を働かせ、時刻T=T1において図6の実線で示す角度までボンネット28が開いたときはボンネット28を引き下げる方向に油圧力を働かせ、時刻T=T2において図6の破線で示す角度までボンネット28が開くまでに至る。なお、時刻T=0から時刻T=T1までの時間、及び時刻T=T1から時刻T=T2までの時間は、統計等により得られたボンネット28が開き始めてから、運転者が路肩等に安全に車両を停車させることが可能な時間とすることができる。
【0047】
本実施形態によれば、ボンネット開度アクチュエータ24が、徐々にボンネット28が開くようにボンネット28の開度を制御するため、上述の特許文献1のようにヘッドライトを点滅させ、晴天時にワイパーを動作させること等に比べて、定常的に視界を遮ることができ、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、最終的なボンネット28の全開は車両前方からの風圧を利用して行われるため、最低限の電力でボンネット28の開放が行われることになり、燃費の向上に繋がる。また、上記のシステムであることを運転者が知ることにより、速度超過を抑止することができるとともに、飲酒運転抑止効果を奏する。したがって、本実施形態によれば、異常な運転者に対して運転抑止効果がある。
【0049】
加えて、本実施形態によれば、ボンネット開度アクチュエータ24が、徐々にボンネット28が開くようにボンネット28の開度を制御するため、急な視野妨害とならず、異常な運転者に対して自発的に運転操作を止めるように促しつつ、路肩に停車する等、運転者が対応するための余裕を確保し、安全に停車させることが可能となる。
【0050】
以下、本発明の第3実施形態について説明する。図8は、本発明の第3実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。本実施形態では、車両のフロントガラス(ウインドシールド)に備えられた電子暗幕の透過率を徐々に小さくすることにより車両の運転が徐々に困難になるように車両の運転を妨害する点が上記第1実施形態と異なっている。図8に示すように、本実施形態の運転妨害システム10cは、第1実施形態と同様の異常検知器12及び車速センサ14に加えて、アクチュエーション判断部30、シフト位置センサ32、ディスプレイ制御部34、フロントガラス36及び電子暗幕38を備えている。
【0051】
アクチュエーション判断部30は、異常検知器12からの情報に基づき、ディスプレイ制御部34の動作を開始するか否かを判断するためのものである。
【0052】
シフト位置センサ32は、車両のシフトレバーのシフト位置がパーキング状態であるか否かを検知するためのものである。
【0053】
ディスプレイ制御部34は、フロントガラス36に備えられた電子暗幕38の透過率を車速センサ14及びシフト位置センサ32からの情報に基づき制御するためのものである。
【0054】
電子暗幕38は、フロントガラス36の透過率を図10に示すようなほぼ透過率100%の透明な状態から図11に示すようなほぼ透過率0%の黒塗りの状態に変化させるためのものである。電子暗幕38に使用するデバイスは、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、シースルーの電子ペーパー等のフロントガラス36の曲面に貼付又は直接に蒸着することができるディスプレイを適用することができる。
【0055】
アクチュエーション判断部30、ディスプレイ制御部34、フロントガラス36及び電子暗幕38は、特許請求の範囲に記載の運転妨害手段として機能する。
【0056】
次に、図9、12及び13を参照して、本実施形態の運転妨害システムの動作について説明する。本実施形態の運転妨害システム10cは、運転者がエンジンを始動しようと状態から動作を開始する。
【0057】
本実施形態では、運転しようとする者が車両のドアを開けた時点では、電子暗幕38は図11に示すようなほぼ透過率0%の黒塗りの状態となっている。図9に示すように、シフト位置センサ32が、シフト位置がパーキング状態であることを検知しているときに、異常検知器12による運転者の異常検知を行う(S301)。異常検知器12が、運転者が盗難者等の車両の正当な所有者でないことや、運転者が飲酒状態にある等の異常を検知したときは(S302)、アクチュエーション判断部30はディスプレイ制御部34を起動させ、ディスプレイ制御部34は電子暗幕38を図11に示すようなほぼ透過率0%の黒塗りの状態のまま保持し(S303)、車両の運転を開始できないようにする。
【0058】
異常検知器12が運転者の異常を検知しないときは(S302)、アクチュエーション判断部30はディスプレイ制御部34を起動させ、ディスプレイ制御部34は電子暗幕38を図10に示すようなほぼ透過率100%のクリア状態(通常のガラスの状態)にし、運転者は運転を開始できる(S304)。車速センサ14は車速を取得し(S305)、車両移動中(車速0km/hよりも大きい)に、異常検知器12は異常検知を定期的あるいは不定期で行う(S306)。
【0059】
もし、異常検知器12が運転者の異常を検知したときは(S307)、ディスプレイ制御部34は電子暗幕38を図12(a)〜(h)及び図13に示すように透過率100%のクリア状態から透過率を徐々に下げていくように制御し(S308)、最終的にはほぼ透過率0%の黒塗りの状態とする(S309)。なお、図13に示すように、時刻T=0から時刻T=T1までの時間は、統計等により得られた電子暗幕38の透過率が低下し始めてから、運転者が路肩等に安全に車両を停車させることが可能な時間とすることができる。
【0060】
この動作は、シフト位置センサ32が、シフト位置がパーキング状態であることを検知するまで継続される(S310)。一度、電子暗幕38が黒塗りの状態となった場合、ディスプレイ制御部34は電子暗幕38をその状態のまま維持する。もし、異常検知器12が、運転者が飲酒状態であることを検知した場合、再度行われたアルコール検知で運転者が飲酒状態であることを検知しなかった場合は、ディスプレイ制御部34は電子暗幕38を図10に示すようなほぼ透過率100%のクリア状態にし(S301,S302,S304)、運転者に正常な視界を提供して、運転を実施することができるようにする。
【0061】
本実施形態によれば、ディスプレイ制御部34は電子暗幕38の透過率を徐々に低下させるため、上述の特許文献1のようにヘッドライトを点滅させ、晴天時にワイパーを動作させること等に比べて、定常的に視界を遮ることができ、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、電子暗幕38が黒塗り状態であれば運転を開始することができないため、運転開始を抑制することができる。また、本実施形態によれば、停車時には電子暗幕38は黒塗り状態であるため、電子暗幕38にプライバシーガラスとしての機能を果たさせることができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、走行中に電子暗幕38が急に黒塗り状態になるのではなく、徐々に黒塗りの状態にするため、運転者が安全な場所に駐停車できる時間を確保し、事故に陥る危険性を排除することができる。
【0064】
以下、本発明の第4実施形態について説明する。図14は、本発明の第4実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。図14に示すように、本実施形態の運転妨害システム10dは、上記第1実施形態の運転妨害システム10aに加えて、グラフィックメータ類40、ルームランプ42及びナビゲーションディスプレイ44を備え、これらも特許請求の範囲に記載の運転妨害手段として機能する。ヘッドランプ類駆動回路18は、ヘッドランプ類20の明るさが徐々に暗くされるのに対応してグラフィックメータ類40、ルームランプ42及びナビゲーションディスプレイ44の輝度を徐々に強くし、車内が徐々に明るくなるようにされる。
【0065】
本実施形態によれば、ヘッドランプ類駆動回路18は、夜間にヘッドランプ類20の明るさを絞り、かつ車内の明るさを明るくするため、上述の特許文献1のようにヘッドライトを点滅させ、晴天時にワイパーを動作させること等に比べて、定常的に視界を遮ることができ、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、ヘッドランプ類駆動回路18は、夜間にヘッドランプ類20の明るさを消灯に至るまで徐々に絞り、かつ車内の明るさを徐々に明るくするため、異常な運転者に対して自発的に運転操作を止めるように促しつつ、路肩に停車する等、運転者が対応するための余裕を確保し、安全に停車させることが可能となる。したがって、本実施形態によれば、異常な運転者に対して運転抑止効果がある。
【0067】
以下、本発明の第5実施形態について説明する。図15は、本発明の第5実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。本実施形態では、ワイパー動作とウォッシャー液噴射を対応して行うことにより、異常な運転者の運転を妨害する。図15に示すように、本実施形態の運転妨害システム10eは、上記第1実施形態と同様の異常検知器12に加え、雨粒センサ46、ウォッシャー液残量センサ48、冷却水残量センサ50、ワイパー&ウォッシャー調停部52、タンク切替部54、ウォッシャー液タンク56、エンジン冷却水タンク58、ウォッシャー60及びワイパー62を備えている。
【0068】
雨粒センサ46は、車外の雨量を検知して晴天時であるか否かを判断するためのものである。ウォッシャー液残量センサ48はウォッシャー液タンク56の残量を検知し、冷却水残量センサ50はエンジン冷却水タンク58の残量を検知するためのものである。
【0069】
ワイパー&ウォッシャー調停部52は、雨粒センサ46、ウォッシャー液残量センサ48及び冷却水残量センサ50からの情報に基づき、ワイパー62の動作に対応したタイミングでウォッシャー60を動作させるためのものである。
【0070】
タンク切替部54は、ウォッシャー液タンク56の残量がなくなった場合に、ウォッシャー60に供給する液をエンジン冷却水タンク58からの冷却水に切替えるためのものである。なお、本実施形態では、ウォッシャー液タンク56のウォッシャー液及びエンジン冷却水タンク58の冷却水は、不透明のものであることが好ましい。
【0071】
次に、図16〜20を参照して、本実施形態の運転妨害システムの動作について説明する。本実施形態の運転妨害システム10eは、運転者がエンジンを始動しようと状態から動作を開始する。
【0072】
まず、異常検知器12による運転者の異常検知を行う(S401)。異常検知器12が、運転者が盗難者等の車両の正当な所有者でないことや、運転者が飲酒状態にある等の異常を検知したときは(S402)、ワイパー&ウォッシャー調停部52は、雨滴センサ46により晴天時であることを確認した後、ワイパー62を動作させる(S403)。ワイパー&ウォッシャー調停部52は、ウォッシャー液残量センサ48によりウォッシャー液の残量を確認する(S404)。ワイパー&ウォッシャー調停部52は、ウォッシャー液の残量がある場合は、ワイパー62の動作に合わせたタイミングでウォッシャー60からウォッシャー液を噴射させる。
【0073】
図17は、ワイパーブレードとウォッシャー液噴出口の配置を示す図である。図17に示すように、この例では、ウインドシールド64に対して、2本のワイパーブレード62a,62bと、2つのウォッシャー60a,60bが配置されている。このような配置の場合、例えば、図18(a)に示すようにワイパーブレード62a,62bが下がっているときは、両方のウォッシャー60a,60bからウォッシャー液を噴射させ、図18(b)に示すようにワイパーブレード62a,62bがウインドシールド64を遮るように上がっているときは、片方のウォッシャー60aからウォッシャー液を噴射させ、図18(c)に示すようにワイパーブレード62a,62bが上がりきってウインドシールド64を遮らなくなったときは、また両方のウォッシャー60a,60bからウォッシャー液を噴射させるようにすることができる。このようにすることにより、少ない噴射量で効果的に運転者の視界を妨げることができる。
【0074】
あるいは、図19(a)に示すようにワイパーブレード62a,62bが下がっているときは、両方のウォッシャー60a,60bから同じ噴射量でウォッシャー液を噴射させ、図19(b)に示すようにワイパーブレード62a,62bがウインドシールド64を遮るように上がっているときは、片方のウォッシャー60aからの噴射量を少なくし、図19(c)に示すようにワイパーブレード62a,62bが上がりきってウインドシールド64を遮る度合いが少なくなったときは、片方のウォッシャー60bからの噴射量を少なくするようにもできる。このようにそれぞれのウォッシャー60a,60bからの噴射量を変動させることによっても、少ない噴射量で効果的に運転者の視界を妨げることができる。
【0075】
図20(a)〜(c)に示すような、ワイパーブレード60aが一本のみ備えられている場合は、図20(a)に示すようにワイパーブレード60aが右側にあるときは、右側のウォッシャー60bからの噴射量を少なくし、図20(b)に示すようにワイパーブレード60aが中央にあるときは、両方のウォッシャー60a,60bから同じ噴射量でウォッシャー液を噴射させ、図20(c)に示すようにワイパーブレード60aが左側にあるときは、左側のウォッシャー60aからの噴射量を少なくするようにもできる。このように、ワイパーブレード60aが一本のみ備えられている場合でも、それぞれのウォッシャー60a,60bからの噴射量を変動させることによっても、少ない噴射量で効果的に運転者の視界を妨げることができる。
【0076】
図16に戻り、ウォッシャー液の残量がなくなった場合は(S405)、タンク切替部54は、ウォッシャー60に供給する液をエンジン冷却水タンク58からの冷却水に切替え(S407)、エンジン冷却水がなくなるまで同様の動作が行われる(S407,S408)。
【0077】
なお、本実施形態においては、雨滴センサ46が晴天時であると検知しなかった場合は、上記動作は行われない。また、本実施形態においても、上記第1〜4実施形態のように車速センサ14を備え、車速センサ14が、車両が走行状態であることを検知したときは、ウォッシャー60からのウォッシャー液の噴射量を徐々に多くすることにより、異常な運転者に対して自発的に運転操作を止めるように促しつつ、路肩に停車する等、運転者が対応するための余裕を確保し、安全に停車させることが可能となる。
【0078】
本実施形態によれば、ウォッシャー60は、車窓におけるワイパー62が位置している部位よりもワイパー62が位置していない部位に対する噴射量が多くなるようにウォッシャー液を噴射するため、常にウインドシールド64からの視界はワイパー62かウォッシャー液により遮られることになり、より確実に異常な運転者による車両の運転を妨害することができる。特に、晴天時であっても、より効果的に運転者の視界を妨げることができるため、運転者に運転の中止を促すことができる。
【0079】
また、本実施形態においては、ウォッシャー液の残量がなくなった場合は、タンク切替部54は、ウォッシャー60に供給する液をエンジン冷却水タンク58からの冷却水に切替えるため、エンジンのオーバーヒートの恐れにより、運転者に自発的に運転の中止を促すことができる。
【0080】
さらに上記機能を運転者が知ることで、運転継続を抑止する効果が得られる。
【0081】
加えて、ウォッシャー60の動作タイミング、噴射量を制御することによりウォッシャー液を節約することができる。
【0082】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】第1実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る運転妨害システムの動作を示すフロー図である。
【図3】ランプの明るさ出力の変化を示すグラフ図である。
【図4】第2実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。
【図5】第2実施形態に係る運転妨害システムの動作を示すフロー図である。
【図6】(a)〜(e)は、車速とボンネットの開度との関係を示す図である。
【図7】油圧ダンパー力の変化を示すグラフ図である。
【図8】第3実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。
【図9】第3実施形態に係る運転妨害システムの動作を示すフロー図である。
【図10】通常状態の電子暗幕を示す図である。
【図11】暗幕状態の電子暗幕を示す図である。
【図12】(a)〜(h)は、電子暗幕の透過率の変化を示す図である。
【図13】光の透過率の変化を示すグラフ図である。
【図14】第4実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。
【図15】第5実施形態に係る運転妨害システムの構成を示すブロック図である。
【図16】第5実施形態に係る運転妨害システムの動作を示すフロー図である。
【図17】ワイパーブレードとウォッシャー液噴出口の配置を示す図である。
【図18】(a)〜(c)は、2本のワイパーブレードの動作とウッシャー液の噴射時期との関係を示す図である。
【図19】(a)〜(c)は、2本のワイパーブレードの動作とウッシャー液の噴射量との関係を示す図である。
【図20】(a)〜(c)は、1本のワイパーブレードの動作とウッシャー液の噴射量との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
10a,10b,10c,10d,10e…運転妨害システム、12…異常検知器、14…車速センサ、16…コンライトシステム、18…ヘッドランプ類駆動回路、20…ヘッドランプ類、22…車速対開度テーブル、24…ボンネット開度アクチュエータ、26…油圧ダンパー、28…ボンネット、30…アクチュエーション判断部、32…シフト位置センサ、34…ディスプレイ制御部、36…フロントガラス、38…電子暗幕、40…グラフィックメータ類、42…ルームランプ、44…ナビゲーションディスプレイ、46…雨粒センサ、48…ウォッシャー液残量センサ、50…冷却水残量センサ、52…ワイパー&ウォッシャー調停部、54…タンク切替部、56…ウォッシャー液タンク、58…エンジン冷却水タンク、60,60a,60b…ウォッシャー、62,62a,62b…ワイパー、64…ウインドシールド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転する運転者の異常を検知する異常検知手段と、
前記車両の車速を検知する車速検知手段と、
前記運転者による前記車両の運転を妨害する運転妨害手段と、
を備え、
前記運転妨害手段は、前記異常検知手段が前記運転者の異常を検知したときであって、前記車速検知手段が前記車両の走行状態を検知しているときは、前記運転者による前記車両の運転が徐々に困難になるように前記車両の運転を妨害する、
運転妨害システム。
【請求項2】
前記運転妨害手段は、夜間に前記車両外の照明の明るさを徐々に暗くすることにより前記車両の運転が徐々に困難になるように前記車両の運転を妨害する、請求項1に記載の運転妨害システム。
【請求項3】
前記運転妨害手段は、夜間に前記車両内を徐々に明るくすることにより前記車両の運転が徐々に困難になるように前記車両の運転を妨害する、請求項1に記載の運転妨害システム。
【請求項4】
前記運転妨害手段は、前記車両のボンネットの開度を徐々に大きくすることにより前記車両の運転が徐々に困難になるように前記車両の運転を妨害する、請求項1に記載の運転妨害システム。
【請求項5】
前記運転妨害手段は、前記車両の車窓の透過率を徐々に小さくすることにより前記車両の運転が徐々に困難になるように前記車両の運転を妨害する、請求項1に記載の運転妨害システム。
【請求項6】
車両を運転する運転者の異常を検知する異常検知手段と、
前記車両の車窓を拭くワイパーと、
前記車両の車窓にウォッシャー液を噴射するウォッシャー液噴射手段と、
を備え、
前記ウォッシャー液噴射手段は、前記車窓における前記ワイパーが位置している部位よりも前記ワイパーが位置していない部位に対する噴射量が多くなるように前記ウォッシャー液を噴射する、
運転妨害システム。
【請求項1】
車両を運転する運転者の異常を検知する異常検知手段と、
前記車両の車速を検知する車速検知手段と、
前記運転者による前記車両の運転を妨害する運転妨害手段と、
を備え、
前記運転妨害手段は、前記異常検知手段が前記運転者の異常を検知したときであって、前記車速検知手段が前記車両の走行状態を検知しているときは、前記運転者による前記車両の運転が徐々に困難になるように前記車両の運転を妨害する、
運転妨害システム。
【請求項2】
前記運転妨害手段は、夜間に前記車両外の照明の明るさを徐々に暗くすることにより前記車両の運転が徐々に困難になるように前記車両の運転を妨害する、請求項1に記載の運転妨害システム。
【請求項3】
前記運転妨害手段は、夜間に前記車両内を徐々に明るくすることにより前記車両の運転が徐々に困難になるように前記車両の運転を妨害する、請求項1に記載の運転妨害システム。
【請求項4】
前記運転妨害手段は、前記車両のボンネットの開度を徐々に大きくすることにより前記車両の運転が徐々に困難になるように前記車両の運転を妨害する、請求項1に記載の運転妨害システム。
【請求項5】
前記運転妨害手段は、前記車両の車窓の透過率を徐々に小さくすることにより前記車両の運転が徐々に困難になるように前記車両の運転を妨害する、請求項1に記載の運転妨害システム。
【請求項6】
車両を運転する運転者の異常を検知する異常検知手段と、
前記車両の車窓を拭くワイパーと、
前記車両の車窓にウォッシャー液を噴射するウォッシャー液噴射手段と、
を備え、
前記ウォッシャー液噴射手段は、前記車窓における前記ワイパーが位置している部位よりも前記ワイパーが位置していない部位に対する噴射量が多くなるように前記ウォッシャー液を噴射する、
運転妨害システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図12】
【公開番号】特開2009−18624(P2009−18624A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181137(P2007−181137)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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