説明

運転支援システム、車載装置、コンピュータ・プログラムおよび情報記録媒体

【課題】必要性を考慮して情報を報知することにより、乗員に対して情報報知の煩わしさを軽減する。
【解決手段】ナビゲーション装置21は、送受信器22によって受信した提供データと、自車両の走行状態の検出結果とに基づいて、乗員への情報報知の必要性を判断する。乗員への情報報知の必要性は、非優先道路を走行する車両との衝突可能性を判断することにより行われる。そして、ナビゲーション装置21は、情報報知の必要性がありと判断された場合に、提供データに基づいて、ディスプレイ25およびスピーカ26を介して乗員への情報報知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援システム、車載装置、コンピュータ・プログラムおよび情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、交通安全の観点から、路車間通信を通じて他車両の情報を得ることで、非優先道路と優先道路との交差点における他車両との衝突可能性を報知する技術が知られている。例えば、特許文献1には、自車両が優先道路を走行するシーンにおいて、非優先道路を走行する車両の存在を道路側システムが検出し、当該情報を優先道路を走行する車両に提供するシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−11607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された手法によれば、優先道路を走行する車両に対して道路側システムから情報が提供されると、車載装置は乗員に対してその情報を一律に報知するため、乗員にとって必要の無いシーンでも情報が報知されることがあり、乗員が煩わしさを感じる可能性があった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、必要性を考慮して情報を報知することにより、乗員に対して情報報知の煩わしさを軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、本発明は、車載装置において、道路側システムから送信されるデータデータと、自車両の走行状態とに基づいて、乗員への情報報知の必要性を判断する。そして、情報報知の必要性がありと判断された場合に、道路側システムから受信したデータに基づいて、乗員への情報報知が行われる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、非優先道路の車両に対して自車両との衝突可能性を判断することができ、これに応じて、乗員への情報の報知の必要性を判断することができる。そして、情報報知の必要性がありと判断された場合に乗員への情報報知を行うことにより、乗員にとって必要性がある場合に情報が報知されることとなり、不必要なシーンに情報報知がなされることの煩わしさを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態にかかる運転支援システムを模式的に示す説明図
【図2】第1の実施形態にかかる運転支援システムの構成を示すブロック図
【図3】ナビゲーション装置21の構成を示すブロック図
【図4】第1の実施形態にかかる車載装置20による運転支援の処理手順を示すフローチャート
【図5】第2の実施形態にかかる車載装置20による運転支援の処理手順を示すフローチャート
【図6】非優先道路の状況を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態にかかる運転支援システムを模式的に示す説明図であり、図2は、運転支援システムの構成を示すブロック図である。この運転支援システムは、道路上に設けられる道路側システム10と、車両Cに搭載される車載装置20とで構成される。この運転支援システムでは、車載装置20が道路側システム10から情報を得ることにより、走行支援の一環として所定の情報提供が行われる。本実施形態では、運転支援システムとして、出会い頭衝突防止支援システムについて説明する。出会い頭衝突防止支援は、非優先道路と優先道路との交差点(以下、単に「交差点」という)について、優先道路を走行する車両に、非優先道路の交通状況に関する情報を提供することにより行われる。
【0010】
道路側システム10は、非優先道路の交通状況などに関する情報を、優先道路を走行する車両Cpに送信する機能を担っている。道路側システム10は、感知器11、情報中継装置12、中央装置13、光ビーコン14とを主体に構成されている。道路側システム10において、感知器11および光ビーコン14と情報中継装置12とは双方向に通信可能に構成されており、情報中継装置12と中央装置13とは双方向に通信可能に構成されている。
【0011】
感知器11は、非優先道路に設けられており、非優先道路内の交通状況を所定周期で検出する。感知器11は、非優先道路において、交差点から所定距離範囲を検出範囲Daとして、交通状況を検出する(交通検出手段)。感知器11は、例えば、可視光カメラ、赤外線カメラなどで構成されている。感知器11は、情報を検出するたびに、検出した情報を情報中継装置12に送信する。
【0012】
情報中継装置12は、感知器11から送信された情報を中央装置13に送信する。また、情報中継装置12は、中央装置13から送信される提供データを光ビーコン14に登録する。中央装置13から送信される提供データには、後述するように、検出範囲Da内の交通状況に関する情報(以下「交通情報」という)と、交差点に関する道路線形情報とが含まれる。
【0013】
中央装置13は、情報中継装置12を介して送信される感知器11の検出情報に基づいて、検出範囲Da内の交通状況を監視しており、これにより、交通情報の作成・更新を随時行う。交通情報には、例えば、検出範囲Da内に存在する車両Caの「台数」、各車両Caの「位置」・「車速」・「加減速度」・「検出時刻」・「種別」といった情報が含まれている。
【0014】
また、中央装置13は、交差点に関する道路線形情報を保持している。道路線形情報には、例えば、交差点の「位置」、優先道路と非優先道路との「接続角度」、非優先道路における「停止線位置」、非優先道路の「車線数」・「幅員」、優先道路および非優先道路に関する「ノード」・「リンク」・「ノード間距離」・「ノード接続角」、光ビーコン14から交差点までの「道程距離」、光ビーコン14位置における規制速度の指標となる「実勢速度」といった情報が含まれている。
【0015】
そして、中央装置13は、交通情報と、道路線形情報とに基づいて、提供データを作成し、この提供データを情報中継装置12に送信する(作成手段)。なお、中央装置13は、情報中継装置12に提供データを送信する場合、常に道路線形情報を送信する必要はなく、一度道路線形情報を送信してしまえば、この情報が更新されない限り、交通情報のみを提供データとして送信し、道路線形情報の送信を省略すことができる。
【0016】
光ビーコン14は、優先道路に設けられており、情報中継装置12からの登録情報(提供データ)に基づいて、ダウンリンク情報を生成し、優先道路を走行する車両Cpからのアップリンク要求に応じて、その車両Cpにダウンリンク情報(提供データを含む情報)を送信する(送信手段)。光ビーコン14は、近赤外線を通信媒体とする光学式車両感知器である。近赤外線は指向性が高いため、車線幅に対応する通信エリアDbを確保することができる。そのため、光ビーコンの通信エリアDbが隣接する車線を走行する車両と干渉するといった事態を抑制することができる。
【0017】
車載装置20は、道路側システム10からの提供情報を取得したり、この取得した情報に基づいて乗員(典型的には、ドライバー)に所定の情報を報知したりする機能を担っている。本実施形態の車載装置20は、ナビゲーション装置21を主体に構成されており、このナビゲーション装置21の詳細については後述する。ナビゲーション装置21には、送受信器22、GPSアンテナ23、ジャイロセンサ24、ディスプレイ25およびスピーカ26が接続されている。
【0018】
送受信器22は、道路側システム10の光ビーコン14から送信されるビーコン光(ダウンリンク情報)を受信して、ダウンリンク情報(提供データ)をナビゲーション装置21へと出力する。送受信器22としては、例えば、光ビーコン、電波ビーコン、FM多重に対応する3メディアVICS(Vehicle Information and Communication System)装置などを用いることができる。GPSアンテナ23は、GPS(Global Positioning System)衛星から送信される信号(GPS情報)を受信し、GPS情報をナビゲーション装置21へと出力する。ジャイロセンサ24は、車両Cの進行方位情報を検出するセンサであり、この進行方位情報をナビゲーション装置21へと出力する。ディスプレイ25は、例えば、液晶ディスプレイで構成されており、ナビゲーション装置21によって制御されて、種々の情報を表示する。スピーカ26は、ナビゲーション装置21によって制御されて、種々の情報を出力する。また、ナビゲーション装置21には、CAN(Controller Area Network)等の車内LAN(Local Area Network)が接続されており、ナビゲーション装置21は、CANを通じて、車両Cに搭載される各種のコントローラ(図示せず)と通信可能に構成されている。ナビゲーション装置21は、CANを通じて、車速、アクセル開度、ブレーキ状態などの自車両の走行状態に関する情報を取得することができる。
【0019】
ナビゲーション装置21は、自車両の位置、自車両周辺の地図または目的地までの経路といったナビゲーション情報をドライバーに提供するとともに、道路側システム10側からの提供データに応じた情報をドライバーに報知する。ナビゲーション装置21は、図3に示すように、記憶装置21a、通信コントロールユニット21e、CAN通信コントロールユニット21c、HMIコントロールユニット21dおよびメインコントロールユニット21eで構成されている。個々のコントロールユニット21b〜21eは、それぞれを単独のマイクロコンピュータで構成してもよい、単一のマイクロコンピュータによって個々の機能が実現されてもよい。
【0020】
記憶装置21aは、ナビゲーション装置21で実行される各種のアプリケーションソフトウェアと、地図データや、マップマッチング、ルートガイダンスなどに用いる道路データ、地図上に表示させるアイコンデータなど、ナビゲーションに必要となるナビゲーションデータとを格納している。記憶装置21aとしては、例えば、着脱自在な記憶媒体である光ディスクや、固定的に設置されるHD(Hard Disk)装置などを用いることができる。なお、記憶装置21aとして、フラッシュメモリといった半導体メモリを搭載した各種リムーバブルメディアなどを用いるようにしてもよい。
【0021】
通信コントロールユニット21bは、道路側システム10の光ビーコン14と、メインコントロールユニット21eとの間の通信を制御するコントロールユニットである。CAN通信コントロールユニット21cは、車両に搭載される他のコントロールユニットとメインコントロールユニット21eとの間の通信を制御するコントロールユニットである。HMIコントロールユニット21dは、メインコントロールユニット21eからの情報に基づいて、ディスプレイ25を制御することにより、当該ディスプレイ25に所定の情報を表示したり、スピーカ26を介して所定の情報を出力したりする。
【0022】
メインコントロールユニット21eは、ナビゲーション装置21を統括的に制御する機能を担っており、記憶装置21aに格納されているアプリケーションソフトウェアを実行し各種の処理を行う。メインコントロールユニット21eは、これを機能的に捉えた場合、処理部21eaと、衝突判断部21ebと、予測部21ecとを有している。
【0023】
処理部21eaは、GPS情報に基づいてGPS航法(衛星航法)による位置計測を行い絶対位置(緯度、経度)情報を求めたり、CAN通信より得られる車速情報およびジャイロセンサ24からの進行方位情報に基づいて自律航法による車両の相対位置を求めたりする。そして、処理部21eaは、絶対位置(緯度、経度)情報と、自律航法により求めた相対位置情報とから、車両の現在位置を算出する。処理部21eaは、現在位置に基づいて、対応する地図データ、道路データなど、ナビゲーションに必要となる各種データを記憶装置21aから読み出す。また、処理部21eaは、ドライバーから指定される目的地と、現在位置情報とを用いて、現在位置から目的地へと至る走行経路を探索し、探索した走行経路の経路案内を行う(ルートガイダンス)。
【0024】
また、処理部21eaは、ディスプレイ25に表示させる表示画像を生成する。例えば、処理部21eaは、記憶装置21aから読み出した現在位置に対応する地図データおよび道路データなどに基づいて、自車両周辺の地図を表示画像として生成し、これをディスプレイ25に表示させる。また、処理部21eaは、探索された走行経路が存在する場合には、地図上に走行経路を重畳した表示画像を生成し、これをディスプレイ25に表示させる。
【0025】
また、本実施形態の特徴の一つとして、処理部21eaは、道路側システム10の光ビーコン14から送信されるダウンリンク情報、すなわち、提供データに基づいて、非優先道路側の車両Caとの出会い頭衝突に対する注意喚起を促す情報(以下「注意喚起情報」という)を、ディスプレイ25およびスピーカ26を介してドライバーに報知する。この場合、処理部21eaは、衝突判断部21ebの判断結果、あるいは、予測部21ecの予測結果を参照し、乗員への情報報知の必要性を判断し、必要に応じて、注意喚起情報をドライバーに報知する。
【0026】
衝突判断部21ebは、光ビーコン14から送信される提供データと、CANを通じて取得される自車両Cpの走行状態とに基づいて、非優先道路の車両Caとの衝突可能性を判断する。
【0027】
予測部21ecは、光ビーコン14から送信される提供データに基づいて、非優先道路の車両Caの挙動を予測する。なお、予測部21ecの詳細については、第2の実施形態において後述する。
【0028】
図4は、第1の実施形態にかかる車載装置20による運転支援の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、ナビゲーション装置21のメインコントロールユニット21eによって実行される。ここで、運転支援システムにおいて、道路側システム10の光ビーコン14は第1のダウンリンク情報を送信し続けており、これを優先道路を走行する車両(自車両)Cpの車載装置20が受信すると、車載装置20は、光ビーコン14側へ車両ID情報を含むアップリンク情報の送信を行う。このアップリンク情報を光ビーコン14が受信すると、光ビーコン14は、当該車両ID情報を有している車載装置20に対して第2のダウンリンク情報の送信を開始する。この第2のダウンリンク情報には、提供データに相当する、交通情報および道路線形情報などが含まれている。これにより、光ビーコン14と、車両Cpの車載装置20との間において必要な通信が行われる。
【0029】
まず、ステップ10(S10)において、メインコントロールユニット21eによって、第2のダウンリンク情報である提供データが読み込まれる。
【0030】
ステップ11(S11)において、衝突判断部21ebは、提供データに基づいて、対象車両、すなわち、非優先道路を走行する車両Caが存在するか否かを判定する。ステップ11において肯定判定された場合、すなわち、対象車両Caが存在する場合には、ステップ12(S12)に進む。一方、このステップ11において否定判定された場合、すなわち、対象車両Caが存在しない場合には、本ルーチンを終了する。
【0031】
ステップ12において、衝突判断部21ebは、現在の自車両Cpの車速が、道路線形情報に含まれる実勢速度よりも大きいか否かを判断する。例えば、交差点の直前でカーブの曲率が急に大きくなる等のシチュエーションでは、実勢速度と、減速目標速度との乖離が大きい場合、交差点情報を報知することで、ドライバーにカーブの手前での減速を促すことが好ましい。このステップ12において、肯定判定された場合、すなわち、車速が実勢速度よりも大きい場合には、後述するステップ18(S18)に進む。一方、ステップ12において否定判定された場合、すなわち、車速が実勢速度以下の場合には、ステップ13(S13)に進む。
【0032】
ステップ13において、衝突判断部21ebは、「T2−T1<Tx」の条件を具備するか否かを判断する。ここで、T1は、非優先道路を走行する車両Caが交差点に到達するまので予想時間であり、衝突判断部21ebは、提供データである交通情報および道路線形情報に基づいて予想時間T1を演算する。例えば、衝突判断部21ebは、当該車両Caの位置および車速と、交差点位置とに基づいて、予想時間T1を演算する。なお、非優先道路を走行する車両Caが複数存在する場合、衝突判断部21ebは、個々の車両について予想時間T1をそれぞれ予想する。一方、T2は、自車両Cpが交差点に到達するまので予想時間であり、衝突判断部21ebは、道路線形情報および自車両の走行状態に基づいて予想時間T2を演算する。例えば、衝突判断部21ebは、現在の自車両の車速と、交差点までの残り距離とに基づいて、予想時間T2を演算する。交差点までの残り距離は、道路上の光ビーコン14を通過したタイミングを始点として走行距離の演算を開始し、道路線形情報に含まれる「道程距離」から演算した走行距離を減算することにより求めることができる。
【0033】
一方、Txは、予め設定された定数であり、自車両Cpの予測時間T2が、非優先道路側の車両の予測時間よりも十分に小さいか否かを切り分けるための値である。すなわち、上記の条件式を具備する場合には、非優先道路を走行する車両Caが交差点へ到達する以前に、自車両Cpが交差点を通過していることが判断される。一方で、上記の条件式を具備しない場合には、非優先道路を走行する車両Caが、自車両Cpよりも交差点へ先に到着していることが判断される。
【0034】
このステップ13において肯定判断された場合、すなわち、上記の条件式を具備する場合には、本ルーチンを終了する。一方、ステップ13において否定判定された場合、すなわち、上記の条件式を具備しない場合には、ステップ14(S14)に進む。
【0035】
ステップ14以降の処理では、ある時間後において自車両Cpの車速が十分に減速されているか否かを判定する減速判定が行われる。まず、衝突判断部21ebは、減速判定を行う前提として、現在の車速Vをベースに、車載装置20の処理時間Tpおよび運転者の反応時間Tdを考慮して、交差点までの到達時間TIMを演算する。具体的には、交差点到達時間TIMは、下式により算出される。
【0036】
(数式1)
VCT=V/3.6
LMT=Lc−VCT×(Tp+Td)
TIM=LMT/VCT
ここで、Lcは、道路線形情報に含まれる道程距離である。
【0037】
ステップ15(S15)において、衝突判断部21ebは、交差点到達時間TIMが、予め設定した時間Ta(例えば、3sec)以下であるか否かを判断する。このステップ15において否定判定された場合、すなわち、交差点到達時間TIMが時間Taよりも大きい場合には、ステップ16(S16)に進み、交差点到達時間TIMを時間Taで更新した上で(ステップ16)、ステップ17(S17)の処理に進む。一方、ステップ15において肯定判定された場合、すなわち、交差点到達時間TIMが時間Ta以下の場合には、ステップ17に進む。
【0038】
ステップ17(S17)において、衝突判断部21ebは、ある時間TIM後の速度Vtimについて、現在の速度V0(すなわち、VTC)からの減速幅が予め設定した減速幅Vaよりも小さく(V0−Vtim<Va)、かつ、実勢速度Vlowから所定速度(例えば、20km/h)低下した速度よりも大きいか否かを判断する。このステップ18において肯定判定された場合、すなわち、ある時間TIM後において自車両Cpの減速が十分に行われていない場合には、ステップ18(S18)に進む。一方、ステップ17において否定判定された場合、すなわち、ある時間TIM後において自車両Cpの減速が十分に行われている場合には、本ルーチンの抜ける。
【0039】
ステップ18において、処理部21eaは、ディスプレイ25およびスピーカ26を介して注意喚起情報をドライバーに報知する。なお、注意喚起情報としては、非優先道路から交差点に進入する車両Caに対する注意を喚起するものであれば足りるが、提供データ(交通情報)に基づいて非優先道路の状況を反映した情報を注意喚起情報としてもよい。
【0040】
このようの本実施形態において、運転支援システムは、非優先道路と優先道路との交差点における、非優先道路の交通状況に関する情報を、優先道路を走行する車両に送信する道路側システム10と、道路側システム10から受信した情報に応じて、乗員に情報を報知する車載装置20とを有している。この車載装置20は、ナビゲーション装置21を主体に構成されており、かかるナビゲーション装置21は、送受信器22によって受信した提供データと、自車両の走行状態の検出結果とに基づいて、乗員への情報報知の必要性を判断する。乗員への情報報知の必要性は、例えば、ステップ13からステップ17の処理を通じて、非優先道路を走行する車両との衝突可能性を判断することにより行われる。そして、ナビゲーション装置21は、情報報知の必要性がありと判断された場合に、提供データに基づいて、ディスプレイ25およびスピーカ26を介して乗員への情報報知を行う。
【0041】
かかる構成によれば、送受信器22によって受信した提供データと、自車両の走行状態の検出結果とを考慮することで、非優先道路からの車両Caに対して衝突する可能性があるシーンを判断することができるので、これに応じて、乗員への情報の報知の必要性を判断することができる。これにより、情報報知の必要性がありと判断された場合に乗員への情報報知を行うことにより、乗員にとって必要性がある場合に情報が報知されることとなるので、不必要なシーンに情報報知がなされることの煩わしさを軽減することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、ナビゲーション装置21は、受信した提供データを参照することにより、非優先道路に存在する車両Caの有無、当該車両Caの速度および位置に基づいて、乗員への情報報知の必要性を判断する。かかる構成によれば、より精度の高い衝突可能性を判断することができるので、ドライバーへの報知の必要性を有効に判断することができる。
【0043】
さらに、本実施形態によれば、ナビゲーション装置21は、さらに自車両の走行状態を考慮して、乗員への情報報知の必要性を判断する。かかる構成によれば、ドライバーの運転挙動を加味することができるので、より精度の高い衝突可能性を判断することができ、ドライバーへの報知の必要性を有効に判断することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態にかかる運転支援システムを説明する。この第2の実施形態にかかる運転支援システムが、第1の実施形態のそれと相違する点は、車載装置20による運転支援の処理内容である。なお、運転支援システムのシステム構成は、第1の実施形態と共通であり、以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明を行う。
【0045】
図5は、第2の実施形態にかかる車載装置20による運転支援の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、ナビゲーション装置21のメインコントロールユニット21eによって実行される。
【0046】
まず、ステップ20(S20)において、メインコントロールユニット21eによって、第2のダウンリンク情報である提供データが読み込まれる。
【0047】
ステップ21(S21)において、予測部21ecは、提供データに基づいて、対象車両、すなわち、非優先道路を走行する車両Caが存在するか否かを判定する。ステップ21において肯定判定された場合、すなわち、対象車両Caが存在する場合には、ステップ22(S22)に進む。一方、このステップ21において否定判定された場合、すなわち、対象車両Caが存在しない場合には、本ルーチンを終了する。
【0048】
ステップ22において、予測部21ecは、現在の対象車両Caの位置を算出する。この処理では、提供データに含まれる全ての対象車両Caを処理対象として、その車両位置が算出される。なお、最初にステップ22の処理を行う場合、各対象車両Caの位置は、提供データをそのまま用いることができる。
【0049】
そして、ステップ23(S23)において、予測部21ecは、各対象車両Caについて、交差点への到達時間を予測する。例えば、図6に示すように、交差点に最も近い位置に存在する対象車両Ca1について、予測部21ecは、その車両Ca1の速度、位置、加減速度に基づいて、対象車両Ca1の車両挙動を予測する。そして、予測部21ecは、予測された車両挙動に基づいて、停止線までの到達予想時間と、停止線から交差道路に合流するまでの時間をそれぞれ算出し、これらの時間を合算することにより、車両Ca1に関する交差点到達予想時間を算出する。
【0050】
また、図6に示すように、対象車両Ca1の次に交差点に近い位置に存在する対象車両Ca2について、予測部21ecは、交差点到達予想時間を算出する。ただし、対象車両Ca2の場合、その前方に存在する対象車両Ca1とは異なり、交差点到達予想時間は、前方に存在する対象車両Ca1の存在に左右されることが考えられる。そこで、予測部21ecは、対象車両Ca1との車頭時間を車間距離(L2−L1)で除算し、この除算値が予め登録された値よりも大きな値の場合には、対象車両Ca2の交差点到達予想時間は前方の対象車両Ca1に影響されないと判断する。この場合、予測部21ecは、上述した対象車両Ca1のように、対象車両Ca2に関する交差点到達予想時間を算出する。
【0051】
一方、予測部21ecは、上述した除算値が予め登録された値以下の場合には、対象車両Ca2の交差点到達予想時間は前方の対象車両Ca1に影響されると判断する。この場合、予測部21ecは、対象車両Ca1について予測された車両挙動を考慮しながら、対象車両Ca2の速度、位置、加減速度に基づいて、対象車両Ca2の車両挙動を予測する。そして、予測部b21ecは、予測された車両挙動に基づいて、停止線までの到達予想時間と、停止線から交差道路に合流するまでの時間をそれぞれ算出し、これらの時間を合算することにより、車両Ca2に関する交差点到達予想時間を算出する。
【0052】
また、予測部21ecは、2台目の対象車両Ca2の以降にも対象車両Caが存在する場合には、その対象車両Caについて交差点到達予想時間を算出する。この場合、予測部21ecは、上述したように、交差点到達予想時間を演算する対象車両Caの前方に存在する対象車両Caの影響を考慮した上で、その交差点到達予想時間を演算する。
【0053】
ステップ24(S24)において、予測部21ecは、現在の自車両Cpの位置を算出する。現在の自車両Cpの位置は、交差点までの残り距離として演算可能である。交差点までの残り距離は、道路上の光ビーコン14を通過したタイミングを始点として走行距離の演算を行い、道路線形情報に含まれる「道程距離」から演算した走行距離を減算することにより求めることができる。
【0054】
ステップ25(S25)において、予測部21ecは、現在の自車両Cpの位置に基づいて、交差点への到達時間を予測する。例えば、予測部21ecは、現在の自車両Cpの車速と、交差点までの残り距離とに基づいて、交差点到達時間を演算する。
【0055】
ステップ26(S26)において、衝突判断部21ebは、予測部21ecの予測結果を参照して、対象車両Caとの衝突可能性があるか否かを判断する。具体的には、衝突判断部21ebは、対象車両Caの交差点到達時間が、自車両Cpの交差点到達時間よりも小さい場合、すなわち、対象車両Caが自車両Cpよりも交差点に先に到着している場合には、衝突可能性があると判断する。このステップ26において否定判定された場合、すなわち、衝突可能性がない場合には、ステップ27(S27)に進む。一方、ステップ26において肯定判定された場合、すなわち、衝突可能性がある場合には、ステップ28(S28)に進む。
【0056】
ステップ27において、予測部21ecは、予め設定された所定時間Nに応じた待機処理を行い、再度、ステップ23以降の処理において、対象車両Caおよび自車両Cpの現在(時間N経過後)の位置および交差点到達時間をそれぞれ演算する。時間N経過後の位置などは、従前の処理で演算された車両挙動を参照することができる。すなわち、本フローチャートの処理によれば、ステップ26の処理で衝突可能性がありと判断されるまで、周期的に、対象車両および自車両の交差点到達時間が予測され、この予測結果に応じて、衝突可能性が判断されることとなる。
【0057】
ステップ28において、衝突判断部21ebは、第1の実施形態のステップ14以降の処理に示すように、ある時間後において自車両の車速が十分に減速されているか否かを判定する減速判定を行う。まず、衝突判断部21ebは、減速判定を行う前提として、現在の車速Vをベースに、車載装置20の処理時間Tpおよび運転者の反応時間Tdを考慮して、数式1に示すように、交差点までの到達時間TIMを演算する。この場合、衝突判断部21ebは、交差点到達時間TIMが、予め設定した時間Ta(例えば、3sec)よりも大きい場合には、交差点到達時間TIMを時間Taで更新する。
【0058】
そして、衝突判断部21ebは、ある時間TIM後の速度Vtimについて、現在の速度V0(すなわち、VTC)からの減速幅が予め設定した減速幅Vaよりも小さく(V0−Vtim<Va)、かつ、実勢速度Vlowから所定速度(例えば、20km/h)低下した速度よりも大きいか否かを判断する。このステップ18において肯定判定された場合、すなわち、ある時間TIM後において自車両Cpの減速が十分に行われていない場合には、ステップ29(S29)に進む。一方、ステップ28において否定判定された場合、すなわち、ある時間TIM後において自車両Cpの減速が十分に行われている場合には、本ルーチンの抜ける。
【0059】
ステップ29において、処理部21eaは、ディスプレイ25およびスピーカ26を介して注意喚起情報をドライバーに報知する。なお、注意喚起情報としては、非優先道路から交差点に進入する車両Caに対する注意を喚起するものであれば足りるが、提供データ(交通情報)に基づいて非優先道路の状況を反映した情報を注意喚起情報としてもよい。
【0060】
このように本実施形態によれば、送受信器22によって受信した提供データと、自車両の走行状態の検出結果とを考慮することで、非優先道路からの車両Caに対して衝突する可能性があるシーンを判断することができるので、これに応じて、乗員への情報の報知の必要性を判断することができる。これにより、情報報知の必要性がありと判断された場合に乗員への情報報知を行うことにより、乗員にとって必要性がある場合に情報が報知されることとなるので、不必要なシーンに情報報知がなされることの煩わしさを軽減することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、受信した提供データに基づいて、非優先道路に存在する車両の走行挙動を予測し、この予測結果に基づいて、乗員への情報報知の必要性を判断している。光ビーコン14を利用した通信の場合、車載装置20は1回のみのデータ受信しか行えないという不都合がある。そこで、非優先道路を走行する車両Caの挙動を予測することにより、非優先道路からの車両Caに対して衝突する可能性があるシーンを有効に判断することができる。これにより、ドライバーへの報知の必要性を判定でき不必要なシーンに情報報知がなされることの煩わしさを軽減することができる。
【0062】
また、上述した実施形態の情報報知方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム自体も本発明の一部として機能する。当然ながらこのコンピュータ・プログラムを記録した記録媒体を、図1のような構成を有する車載装置に対して供給してもよい。この場合、このシステム中のコンピュータが、記録媒体に格納されたコンピュータ・プログラムを読み取り実行することによって、本発明の目的を達成することができる。コンピュータ・プログラム自体が本発明の新規な機能を実現するため、そのプログラムを記録した記録媒体も本発明を構成する。コンピュータ・プログラムを記録した記録媒体としては、例えば、CD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、メモリカード、光ディスク、DVD−ROM、DVD−RAM等が挙げられる。
【0063】
さらに、上述した各実施形態では、ナビゲーション装置が道路側システムからの情報提供を行うものであるが、車載装置は、ナビゲーション装置に関わらず、単に情報提供のみを行うコンピュータによって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…道路側システム
11…感知器
12…情報中継装置
13…中央装置
14…光ビーコン
20…車載装置
21…ナビゲーション装置
21a…記憶装置
21b…通信コントロールユニット
21c…CAN通信コントロールユニット
21d…HMIコントロールユニット
21e…メインコントロールユニット
22…送受信器
23…GPSアンテナ
24…ジャイロセンサ
25…ディスプレイ
26…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転支援システムにおいて、
非優先道路と優先道路との交差点における、非優先道路の交通状況に関する情報を、前記優先道路を走行する車両に送信する道路側システムと、
前記道路側システムから受信した情報に応じて、乗員に情報を報知する車載装置とを有し、
前記道路側システムは、
前記非優先道路における前記交差点から所定距離範囲内の交通状況を検出する交通検出手段と、
前記交通検出手段によって検出された交通状況と、前記交差点に関する道路線形情報とに基づいて、車両側に提供するデータを作成する作成手段と、
前記作成手段によって作成されたデータを、前記優先道路を走行する車両に送信する送信手段とを有し、
前記車載装置は、
前記道路側システムの送信手段から送信されるデータを受信する受信手段と、
自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記受信手段によって受信したデータと、前記走行状態検出手段の検出結果とに基づいて、乗員への情報報知の必要性を判断する判断手段と、
前記判断手段によって情報報知の必要性がありと判断された場合に、前記受信手段によって受信したデータに基づいて、乗員への情報報知を行う報知手段とを有することを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
前記道路側システムを構成する前記送信手段は、近赤外線を通信媒体とする光学式車両感知器であることを特徴とする請求項1に記載された運転支援システム。
【請求項3】
前記車載装置を構成する前記受信手段は、前記光学式車両感知器に対応する、近赤外線を通信媒体とする受信器であることを特徴とする請求項2に記載された運転支援システム。
【請求項4】
前記判断手段は、前記受信手段によって受信したデータを参照することにより、非優先道路に存在する車両の有無、当該車両の速度および位置に基づいて、乗員への情報報知の必要性を判断することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された運転支援システム。
【請求項5】
前記判断手段は、前記走行状態検出手段の検出結果を参照することにより、さらに自車両の走行状態を考慮して、乗員への情報報知の必要性を判断することを特徴とする請求項4に記載された運転支援システム。
【請求項6】
前記判断手段は、前記受信手段によって受信したデータに基づいて、非優先道路に存在する車両の走行挙動を予測し、当該予測結果に基づいて、乗員への情報報知の必要性を判断することを特徴とする請求項4に記載された運転支援システム。
【請求項7】
非優先道路と優先道路との交差点における非優先道路の交通状況に関する情報を、前記優先道路を走行する自車両が、道路側に設けられた道路側システムから取得することにより、自車両の乗員に情報報知を行う車載装置において、
前記道路側システムから送信される、前記非優先道路における前記交差点から所定距離範囲内の交通状況に関する情報と前記交差点および前記非優先道路に関する情報とに基づいて作成されるデータを受信する受信手段と、
自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記受信手段によって受信したデータと、前記走行状態検出手段の検出結果とに基づいて、乗員への情報報知の必要性を判断する判断手段と、
前記判断手段によって情報提供の必要性がありと判断された場合に、前記受信手段によって受信したデータに基づいて、乗員への情報報知を行う報知手段とを有することを特徴とする車載装置。
【請求項8】
非優先道路と優先道路との交差点における非優先道路の交通状況に関する情報を、前記優先道路を走行する自車両が、道路側に設けられた道路側システムから取得することにより、自車両の乗員に情報報知を行う運転支援方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータ・プログラムにおいて、
前記道路側システムから送信される、前記非優先道路における前記交差点から所定距離範囲内の交通状況に関する情報と前記交差点および前記非優先道路に関する情報とに基づいて作成されるデータを受信するステップと、
自車両の走行状態を検出するステップと、
前記受信したデータと、前記検出された自車両の走行状態とに基づいて、乗員への情報報知の必要性を判断する判断手段と、
前記受信したデータに基づいて、乗員への情報提供の必要性を判断するステップと、
前記情報提供の必要性がありと判断された場合に、前記受信したデータに基づいて、乗員への情報報知を行うステップと
を有することを特徴とする運転支援方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータ・プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載されたコンピュータ・プログラムを記録した情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−22884(P2011−22884A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168584(P2009−168584)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】