説明

運転支援装置

【課題】複数の車両を連係させて逆走事故を未然に防止できるようにする運転支援装置を提供すること。
【解決手段】運転支援装置100は、自車両又は他車両による逆走行為の存否を判定する逆走行為存否判定手段10と、逆走行為に起因する事故を回避するための運転支援内容を決定する運転支援内容決定手段11と、無線通信を介して運転支援内容決定手段11が決定した運転支援内容に関する情報を送受信する運転支援内容送受信手段12と、複数の車両で共用される運転支援内容に関する情報に基づいて運転を支援する運転支援手段13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援する運転支援装置に関し、特に、自車両及び他車両を連係させて逆走行為に起因する事故(以下、「逆走事故」とする。)を未然に防止する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両が逆走している場合に自車両の運転者に対してその旨を報知する運転支援装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、自車両が一方通行路を逆走してしまった場合に最適な退出方法を運転者に案内する運転支援装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2008−3801号公報
【特許文献2】特開2008−26118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の運転支援装置は何れも、逆走車両に搭載された装置であって、逆走車両である自車両に搭載された表示装置等を用いながら自車両単独で逆走事故の防止を図るのみであり、逆走車両の周りの車両がそれぞれ思い思いに回避行動を取ることを許容したままであるので、逆走事故の防止効果が十分でない。
【0005】
上述の点に鑑み、本発明は、複数の車両を連係させて逆走事故をより確実に防止できるようにする運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、第一の発明に係る運転支援装置は、自車両又は他車両による逆走行為の存否を判定する逆走行為存否判定手段と、逆走行為に起因する事故を回避するための運転支援内容を決定する運転支援内容決定手段と、無線通信を介して前記運転支援内容決定手段が決定した運転支援内容に関する情報を送受信する運転支援内容送受信手段と、複数の車両で共用される運転支援内容に関する情報に基づいて運転を支援する運転支援手段と、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述の手段により、本発明は、複数の車両を連係させて逆走事故をより確実に防止できるようにする運転支援装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例】
【0009】
図1は、本発明に係る運転支援装置の構成例を示すブロック図であり、運転支援装置100は、逆走事故を未然に防止するための運転支援を行う装置であって、制御部1を有し、逆走行為検知装置2及び測位装置3からの出力を受け、路車間通信装置4又は車車間通信装置5を介して情報を送受信しながら、警告装置6及び車両制御装置7に制御信号を出力する。
【0010】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータであって、例えば、逆走行為存否判定手段10、運転支援内容決定手段11、運転支援内容送受信手段12、及び運転支援手段13のそれぞれに対応するプログラムをROMに記憶しながら、各手段に対応する処理をCPUに実行させる。
【0011】
逆走行為検知装置2は、逆走行為を検知するための装置であって、例えば、自車両の前方を撮像する車載カメラ、自車両周辺にある物体との距離を測定する距離センサ(ミリ波レーダ、超音波センサ、又は画像センサ等である。)、操舵角センサ等を含む。
【0012】
測位装置3は、車両の位置を測定するための装置であり、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機によりGPS信号を受信し、受信した信号に基づいて車両位置(緯度、経度、高度)を測定する。
【0013】
路車間通信装置4は、道路に設置された送受信器と協働して自車両と通信センタ又は他車両との間における情報のやり取りを制御するための装置である。
【0014】
車車間通信装置5は、他車両に搭載された送受信器と協働して自車両と他車両との間における情報のやり取りを制御するための装置である。
【0015】
警告装置6は、自車両の運転者に警告を発するための装置であり、例えば、車載スピーカ、車載モニタ、ブザー等である。
【0016】
車両制御装置7は、自車両の動きを強制的に制御するための装置であり、例えば、スロットル開度を制御するためのスロットルアクチュエータ、ブレーキ圧を制御するためのブレーキアクチュエータ、又は、操舵角を制御するためのステアリングアクチュエータ等である。
【0017】
次に、制御部1が有する各種手段について説明する。
【0018】
逆走行為存否判定手段10は、自車両周辺で逆走行為が発生しているか否かを判定するための手段であり、例えば、逆走行為検知装置2である車載カメラが撮像し且つ認識した道路標示の形状(例えば、向きである。)に基づいて自車両が逆走行為を行っているか否かを判定する。
【0019】
また、逆走行為存否判定手段10は、逆走行為検知装置2である距離センサの出力に基づいて自車両が走行する車線と同じ車線を走行する他車両が進行方向の反対方向から接近していることを検知することで他車両が逆走行為を行っているか否かを判定するようにしてもよい。
【0020】
更に、逆走行為存否判定手段10は、測位装置3が検出する自車両の位置情報(緯度、経度、高度)とROM等に記憶された道路情報データベースにおける道路情報(例えば、高速道路への進入路や一方通行路に関する情報である。)とに基づいて自車両が逆走行為を行っているか否かを判定してもよく、自車両の位置と道路情報と操舵角センサの出力とに基づいて自車両が一方通行路に進入し逆走行為を開始したか否かを判定するようにしてもよい。
【0021】
運転支援内容決定手段11は、自車両又は他車両による逆走行為に起因する事故を回避するための運転支援内容を決定するための手段であり、例えば、逆走する自車両を路肩側(正常に走行する(順走する)他車両から見た道路の左側)に誘導しながら、一方で、順走する他車両を全て路肩の反対側(それら他車両から見た道路の右側)に誘導するといった運転支援内容を決定する。
【0022】
また、運転支援内容決定手段11は、逆走する他車両を中央分離帯側(順走する自車両から見た道路の右側)に誘導しながら、一方で、順走する自車両及び他車両を全て路肩側(その自車両から見た道路の左側)に誘導するといった運転支援内容を決定するようにしてもよい。
【0023】
なお、運転支援内容決定手段11は、逆走車両の走行速度、走行位置、逆走車両とその逆走車両に接近する他車両との間の距離等に基づいて最適な運転支援内容を決定するものとする。
【0024】
また、運転支援内容決定手段11は、他車両の運転支援内容決定手段11A(明確化のため、他車両の構成要素には接尾符号“A”を付すこととする。)が決定した、同じ逆走車両に対する運転支援内容に関する情報(以下、「運転支援内容情報」とする。)を既に受信している場合には、運転支援内容の決定を省略するようにしてもよい。相反する運転支援内容情報を生成しないようにするためである。
【0025】
運転支援内容送受信手段12は、自車両の運転支援内容決定手段11が決定した運転支援内容を他車両が受信し、且つ、他車両の運転支援内容決定手段11Aが決定した運転支援内容を自車両が受信できるようにする手段であり、例えば、路車間通信装置4又は車車間通信装置5を通じて運転支援内容情報をやり取りする。
【0026】
運転支援手段13は、逆走事故を防止するための運転支援を実行するための手段であり、例えば、運転支援内容決定手段11が決定した運転支援内容であって、複数の車両で共用される運転支援内容に従って、警告装置6に制御信号を送信し、その運転支援内容情報を警告装置6から出力させるようにする。
【0027】
また、運転支援手段13は、その運転支援内容に従って、車両制御装置7に制御信号を送信し、その運転支援内容に沿った運転を実現させるようにする。
【0028】
次に、図2を参照しながら、自車両の運転支援装置100が逆走行為を検知した場合に、逆走事故を防止するための運転支援を実行する処理(以下、「一次運転支援処理」とする。)について説明する。なお、図2は、一次運転支援処理の流れを示すフローチャートであり、運転支援装置100は、この一次運転支援処理を所定周期で繰り返し実行するものとする。
【0029】
最初に、制御部1は、逆走行為存否判定手段10により、車載カメラ、距離センサ、又は測位装置3等の出力に基づいて、自車両又は他車両による逆走行為が発生したか否かを判定する(ステップS1)。
【0030】
逆走行為が発生していないと判定した場合(ステップS1のNO)、制御部1は、逆走事故の発生を防止するための運転支援を行うことなく、この一次運転支援処理を終了させる。逆走事故が発生するおそれがないからである。
【0031】
逆走行為が発生していると判定した場合(ステップS1のYES)、制御部1は、他車両が過去の所定期間内に生成し且つ発信した同じ逆走車両に関する運転支援内容情報(以下、「一次運転支援内容情報」とする。)を既に受信しているか否かを確認する(ステップS2)。
【0032】
一次運転支援内容情報を既に受信している場合(ステップS2のYES)、制御部1は、新たな運転支援内容情報を生成することなく、この一次運転支援処理を終了させる。同じ逆走車両に関する複数の運転支援内容情報が複数の車両間でやり取りされ、それら複数の運転支援内容情報の間で矛盾が生じるのを防止するためである。
【0033】
一次運転支援内容情報を未だ受信していない場合(ステップS2のNO)、制御部1は、運転支援内容決定手段11により、その逆走車両が自車両である場合には、自車両の走行速度、反対方向から自車両に接近する他車両との間の距離等に基づいて最適な運転支援内容を決定し、また、その逆走車両が他車両である場合には、その他車両の走行速度、その他車両との間の距離等に基づいて最適な運転支援内容を決定する(ステップS3)。
【0034】
例えば、片側二車線の道路における左側の車線(順走する他車両から見た左側の走行車線である。)を自車両が逆走している場合、制御部1は、自車両を減速させながらその道路の左側にある路肩(順走する他車両から見た左側の路肩である。)に誘導し且つ他車両を減速させながら右側の車線(順走する他車両から見た右側の追い越し車線である。)に誘導する内容の運転支援内容情報を生成する。
【0035】
また、片側二車線の道路における右側の車線を自車両が逆走している場合であって、自車両と他車両との間の距離が所定の閾値未満の場合、制御部1は、自車両を減速させながらその道路の右側にある路肩(中央分離帯付近の路肩)に誘導し且つ他車両を減速させながら左側の車線に誘導する内容の運転支援内容情報を生成するようにしてもよい。
【0036】
その後、制御部1は、運転支援内容送受信手段12により、道路脇に設置された路車間通信設備、又は、反対方向から接近する他車両に搭載された対応する車車間通信装置5Aに向けて、その生成した運転支援内容を一次運転支援内容情報として発信する(ステップS4)。
【0037】
その後、制御部1は、運転支援手段13により、自身が生成した運転支援内容情報に基づいて、後述の逆走事故防止運転支援処理を実行する(ステップS5)。
【0038】
次に、図3を参照しながら、他車両の運転支援装置100Aが逆走行為を検知した場合に、その逆走行為に関する運転支援内容情報を受信した自車両の運転支援装置100が逆走事故を防止するための運転支援を実行する処理(以下、「二次運転支援処理」とする。)について説明する。なお、図3は、二次運転支援処理の流れを示すフローチャートであり、運転支援装置100は、上述の一次運転支援処理と共に、この二次運転支援処理を所定周期で繰り返し実行するものとする。
【0039】
最初に、制御部1は、一次運転支援内容情報を受信したか否かを判定する(ステップS10)。
【0040】
一次運転支援内容情報を受信しない場合(ステップS10のNO)、制御部1は、逆走事故の発生を未然に防止するための運転支援を行うことなく、この二次運転支援処理を終了させる。逆走事故が発生するおそれがないからである。
【0041】
一次運転支援内容情報を受信した場合(ステップS10のYES)、制御部1は、運転支援手段13により、他車両の運転支援装置100Aが生成したその一次運転支援内容情報に基づいて、後述の逆走事故防止運転支援処理を実行する(ステップS11)。
【0042】
また、制御部1は、同じ逆走車両に関連する一次運転支援内容情報であって内容の異なる一次運転支援内容情報を受信した場合には、最も早期に受信した一次運転支援内容情報を採用し、他の一次運転支援内容情報を破棄するようにする。逆走車両を含む複数の車両のそれぞれが共通の一次運転支援内容情報に基づく連係の取れた逆走事故運転支援処理(後述)を実行できるようにするためである。
【0043】
次に、図4を参照しながら、運転支援手段13による逆走事故防止運転支援処理について説明する。なお、図4は、逆走事故防止運転支援処理の流れを示すフローチャートである。
【0044】
最初に、運転支援手段13は、警告装置6に制御信号を送信し、逆走行為が発生した旨を示すテキストメッセージを車載モニタに表示させ、且つ、逆走行為が発生した旨を示す音声メッセージを車載スピーカから音声出力させる(ステップS20)。
【0045】
その後、運転支援手段13は、一次運転支援内容情報に基づいて、取るべき措置(例えば、減速の実行、及び、路肩への進路変更等である。)を示すテキストメッセージを車載モニタに表示させ、且つ、その取るべき措置を示す音声メッセージを車載スピーカから音声出力させる(ステップS21)。
【0046】
その後、運転支援手段13は、減速が十分であるか否かを判定し(ステップS22)、減速が十分でない場合には(ステップS22のNO)、ブレーキアクチュエータを作動させて車両を強制的に減速させるようにする(ステップS23)。
【0047】
また、運転支援手段13は、スロットルアクチュエータを作動させてスロットル開度を強制的に低減させ、スロットル開度が所定値以上とならないように制限してもよい。
【0048】
また、運転支援手段13は、逆走車両が自車両である場合には、車載カメラや測位装置3の出力を参照しながら自車両を適切な位置(例えば、路肩である。)に強制的に停止させるようにしてもよい。
【0049】
更に、運転支援手段13は、逆走車両の運転者又は逆走車両に接近する他車両の運転者に対して逆走車両が進むべき方向を知らせるためにその方向に一致する側のウインカを点滅させるようにしてもよく、反対に、その逆走車両を回避しようとする他車両が進むべき方向をその他車両の運転者又は逆走車両の運転者に知らせるためにその方向に一致する側のウインカを点滅させるようにしてもよい。
【0050】
なお、運転支援手段13は、自車両が逆走車両を回避したことを確認できた場合に、その旨を示すメッセージを出力し、強制ブレーキやスロットル開度の制限を解除するようにする。
【0051】
以上の構成により、運転支援装置100は、逆走車両、及び、逆走車両周辺の他車両を統一的に運転支援することで、それらの車両が思い思いに逆走事故を回避するための行動を取るのを抑制し、複数の車両を連係させながら逆走事故を確実に防止することができる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0053】
例えば、上述の実施例において、運転支援装置100は、逆走事故を防止するために取るべき措置を示すテキストメッセージを車載モニタに表示させ、或いは、その取るべき措置を示す音声メッセージを車載スピーカから音声出力させて運転支援装置100が搭載された車両の運転者の運転を支援するが、車外スピーカを用いてその取るべき措置を報知しながら周辺を走行する車両の運転者の運転を支援するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る運転支援装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】一次運転支援処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】二次運転支援処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】逆走事故防止運転支援処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1 制御部
2 逆走行為検知装置
3 測位装置
4 路車間通信装置
5 車車間通信装置
6 警告装置
7 車両制御装置
10 逆走行為存否判定手段
11 運転支援内容決定手段
12 運転支援内容送受信手段
13 運転支援手段
100 運転支援装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両又は他車両による逆走行為の存否を判定する逆走行為存否判定手段と、
逆走行為に起因する事故を回避するための運転支援内容を決定する運転支援内容決定手段と、
無線通信を介して前記運転支援内容決定手段が決定した運転支援内容に関する情報を送受信する運転支援内容送受信手段と、
複数の車両で共用される運転支援内容に関する情報に基づいて運転を支援する運転支援手段と、
を備えることを特徴とする運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−128529(P2010−128529A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299209(P2008−299209)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】