説明

運転監視システム、運転監視方法、及びプログラム

【課題】風力発電装置において、風向風速計等の計測センサーの故障時にも、風車を停止することなく、安全な運転を行い、交換/修理までの間の発電ロスを防止する。
【解決手段】同一サイト内に存在する複数の風力発電装置の各々に装着された計測センサーが、各風力発電装置の周辺環境の状況を計測する。遠隔監視装置が、各風力発電装置を監視し、各風力発電装置の運転状況及び周辺環境に関するデータを収集する。遠隔監視装置が、各風力発電装置のうち、ある風力発電装置の計測センサーの異常発生を検知した場合、計測センサーに異常が発生した風力発電装置に対して、風力発電装置の周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された周辺環境に関するデータを通知する。各風力発電装置が、計測センサーに異常が発生した状態でも、遠隔監視装置から通知された周辺環境に関するデータを利用して運転を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転監視システムに関し、特に風力発電装置の運転監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置において、風車の風向風速計等の周辺環境の計測センサーは、風車1つにつき1、2個装着されているが、風車1つに装着されている計測センサーが全て故障すると、風向風速を計測できなくなり、その風車の風受け面を風向きに合わせて(アップウインド型の風車ならばアップウインド方向に)旋回させることができなくなるため、想定以上の荷重が風車にかかる恐れがあった。
【0003】
また、風車の風向風速計等の周辺環境の計測センサーが故障しているにもかかわらず、何らかの原因で故障信号(異常を通知する信号)を発信できない場合にも、上記の場合と同様に、風車の風受け面を風向きに合わせて旋回させることができなくなるため、想定以上の荷重が風車にかかる恐れがあった。
【0004】
更に、風向風速計以外にも、外気温度計等の周辺環境の計測センサーが故障した場合、外気温度と風車本体(ナセル:機械室)の内部温度との差に基づいて、風車本体(ナセル)内部温度の異常を監視できなくなるため、風車の運転を停止しなければならなくなる恐れや、内部温度異常に基づく故障(異常停止)が発生する恐れがあった。
【0005】
そのため、計測センサーが故障した場合、直ちに計測センサーを交換/修理(メンテナンス)する必要がある。しかし、計測センサーを交換/修理する場合、対象となる全ての計測センサーの交換/修理が完了するまで風車を停止させねばならなくなる。風車を停止してから全ての計測センサーの交換/修理が完了するまでの間、その風力発電装置において発電することができなくなるため、売電収入が低下する要因となっていた。
【0006】
なお、関連する技術として、特許文献1(米国特許出願公開第2002/0029097号明細書)にウインドファームコントロールシステムが開示されている。この関連技術では、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)システムを実現し、周辺の風車の遠隔監視データを相互に利用して、風力発電装置の運転制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0029097号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ある風車の計測センサーが故障した場合、その風車の周辺/近傍(同一サイト内)にある風車の計測センサーの計測結果(観測データ)を利用する運転監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る運転監視システムは、同一サイト内に存在し、装着された計測センサーにより周辺環境の状況を計測する複数の風力発電装置と、複数の風力発電装置の各々を監視し、各風力発電装置の運転状況及び周辺環境に関するデータを収集する遠隔監視装置とを含む。遠隔監視装置は、複数の風力発電装置のうち少なくとも1つの風力発電装置の計測センサーの異常発生を検知した場合、計測センサーに異常が発生した風力発電装置に対して、複数の風力発電装置のうち風力発電装置の周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された周辺環境に関するデータを通知する。各風力発電装置は、計測センサーに異常が発生した状態でも、遠隔監視装置から通知された周辺環境に関するデータを利用して運転を継続する。
【0010】
本発明に係る遠隔監視装置は、複数の風力発電装置の各々を監視する手段と、各風力発電装置は、同一サイト内に存在し、各々に装着された計測センサーにより周辺環境の状況を計測しており、各風力発電装置から、各風力発電装置の運転状況及び周辺環境に関するデータを収集する手段と、複数の風力発電装置のうち少なくとも1つの風力発電装置の計測センサーの異常発生を検知した場合、計測センサーに異常が発生した風力発電装置に対して、複数の風力発電装置のうち風力発電装置の周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された周辺環境に関するデータを通知する手段とを具備する。
【0011】
本発明に係る風力発電装置は、装着された計測センサーにより周辺環境の状況を計測する手段と、計測センサーに異常が発生した場合、自機と同一サイト内に存在する複数の風力発電装置の各々を監視して各風力発電装置の運転状況及び周辺環境に関するデータを収集する遠隔監視装置から、自機の周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された周辺環境に関するデータを取得する手段と、計測センサーに異常が発生した状態でも、遠隔監視装置から通知された周辺環境に関するデータを利用して運転を継続する手段とを具備する。
【0012】
本発明に係る運転監視方法では、同一サイト内に存在する複数の風力発電装置の各々に装着された計測センサーが、各風力発電装置の周辺環境の状況を計測する。また、遠隔監視装置が、各風力発電装置を監視し、各風力発電装置の運転状況及び周辺環境に関するデータを収集する。また、遠隔監視装置が、複数の風力発電装置のうち少なくとも1つの風力発電装置の計測センサーの異常発生を検知した場合、計測センサーに異常が発生した風力発電装置に対して、複数の風力発電装置のうち風力発電装置の周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された周辺環境に関するデータを通知する。また、各風力発電装置が、計測センサーに異常が発生した状態でも、遠隔監視装置から通知された周辺環境に関するデータを利用して運転を継続する。
【0013】
本発明に係るプログラムは、複数の風力発電装置の各々を監視するステップと、各風力発電装置は、同一サイト内に存在し、各々に装着された計測センサーにより周辺環境の状況を計測しており、各風力発電装置から、各風力発電装置の運転状況及び周辺環境に関するデータを収集するステップと、複数の風力発電装置のうち少なくとも1つの風力発電装置の計測センサーの異常発生を検知した場合、計測センサーに異常が発生した風力発電装置に対して、複数の風力発電装置のうち風力発電装置の周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された周辺環境に関するデータを通知するステップとを遠隔監視装置に実行させるためのプログラムである。なお、本発明に係るプログラムは、記憶装置や記憶媒体に格納することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
周辺環境の計測センサーの故障時に、風車を停止することなく、安全な運転ができ、交換/修理が完了するまでの間の発電の機会/電力の損失(ロス)を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る運転監視システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る風力発電装置の構成例の詳細を説明するための図である。
【図3】本発明に係る遠隔監視装置及び管理端末の構成例の詳細を説明するための図である。
【図4】本発明に係る運転監視システムの実施例を説明するための図である。
【図5】本発明に係る運転監視システムの実施例における処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
なお、本発明に係る運転監視システムは、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)システムを実現する。
【0017】
[システム構成]
図1に示すように、本発明に係る運転監視システムは、風力発電装置10(10−i、i=1〜n:nは台数)と、遠隔監視装置(RTU:Remote Terminal Unit)20と、管理端末(HMI:Human Machine Interface)30を含む。
【0018】
風力発電装置10(10−i、i=1〜n)は、ウインドファーム等に設置されており、風力エネルギーを電気エネルギーに変換する。なお、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)は、平地に限らず、山間部や洋上にも設置されることがある。
【0019】
遠隔監視装置20は、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の近くのウインドファーム事務所や風力現地事務所等に設置されており、監視対象となる同一サイト(敷地、用地)内の風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々を監視する。
【0020】
管理端末30は、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)から離れた場所にある運転監視センター等に設置されており、インターネット等を介して、遠隔監視装置20との通信を行う。すなわち、管理端末30は、遠隔監視装置20を介して、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々の運転状況を監視し、制御指示等を行う。なお、管理端末30は、インターネット等を介して、複数の遠隔監視装置20との通信を行うことが可能である。
【0021】
[風力発電装置の構成]
風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々は、計測センサー11と、風車12と、風車本体(ナセル)13と、発電制御盤14を備える。
【0022】
計測センサー11は、風力発電装置1台につき1、2個装着されている。なお、計測センサー11は、風力発電装置の周辺環境の状況を計測できれば良く、実際には、風力発電装置の近傍に設置されていても良い。計測センサー11は、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々の周辺環境の状況を計測し、計測結果を、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々の周辺環境に関するデータとして出力する。周辺環境の状況の例として、風況(風向、風速等)や外気温度等が考えられる。但し、実際には、これらの例に限定されない。また、計測センサー11は、故障等の異常が発生した場合、異常発生を通知するためのデータ(異常通知)を出力する。
【0023】
風車12は、風力で回転し、その回転運動を風車本体(ナセル)13に伝える。すなわち、風車12は、風力を回転エネルギーに変換する。
【0024】
風車本体(ナセル)13は、風車12の回転運動に応じて電気を起こす。すなわち、風車本体(ナセル)13は、回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。風車本体(ナセル)13は、風力発電装置のタワーの先端に設けられている。ここでは、風車本体(ナセル)13は、風力発電装置の「首」(ヘッド)に該当する。
【0025】
発電制御盤14は、風力発電装置の内部で基本的な運転制御を行い、発生した電気や、周辺環境に関するデータを、外部に出力する。発電制御盤14は、風力発電装置のタワーの根元に設けられている。
【0026】
[風力発電装置、遠隔監視装置、及び管理端末の構成の詳細]
図2及び図3を参照して、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)、遠隔監視装置20、及び管理端末30の構成の詳細について説明する。
【0027】
[計測センサーの構成]
計測センサー11は、風向風速計111と、外気温度計112と、内部温度計113を備える。
【0028】
風向風速計111は、風況(風向、風速等)を計測する。外気温度計112は、当該装置の外気温度を計測する。内部温度計113は、風車本体(ナセル)13の内部温度を計測する。
【0029】
[風車の構成]
風車12は、翼(ブレード)121と、回転部(ロータ)122と、ピッチ角制御装置123を備える。
【0030】
翼(ブレード)121は、風車12の羽根に該当し、風を受ける風受け面を形成する。回転部(ロータ)122は、翼が受けた風力に応じて回転する。具体的には、風が翼(ブレード)121を押して(風の力:トルク)、回転部(ロータ)122が回転することで、回転部(ロータ)122に繋がっている風車本体(ナセル)13の発電機(タービン)が回転して電気が生まれる。ここで、「出力(発電力)=トルク×回転数」の関係がある。トルクと発電機(タービン)が取り出す電力がつり合うと、同じ速度で回転する。トルクが優ると回転数が上がり、小さいと回転数が下がる。例えば、発電機(タービン)は、風速3m/秒位で発電を開始する(カットイン)。風速13m/秒位で定格出力に到達する。風速25m/秒以上で安全のために停止する(カットアウト)。ピッチ角制御装置123は、回転部(ロータ)122の回転数に応じて翼(ブレード)121の角度を変え(翼のピッチ制御を行い)、回転部(ロータ)122の回転を調整して、出力を制御する。
【0031】
[風車本体(ナセル)の構成]
風車本体(ナセル)13は、増速機131と、発電機(タービン)132と、ヨー制御装置133を備える。
【0032】
増速機131は、風車12のロータの低速回転を高速にして発電機(タービン)132に伝える。発電機(タービン)132は、増速機131から伝えられた回転を基に電気を発生させる。ヨー制御装置133は、回転部(ロータ)122を風向に合わせるため、風車本体(ナセル)13を回転させ、風向に応じて首を振る制御(ヨー制御)を行う。
【0033】
[発電制御盤の構成]
発電制御盤14は、電力供給部141と、通信処理部142と、内部制御部143を備える。
【0034】
電力供給部141は、送電線(電力ケーブル等)を介して変圧器等に電力を供給(送電)する。通信処理部142は、通信回線(ネットワークケーブル等)を介して遠隔監視装置20と通信する。内部制御部143は、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の内部(計測センサー11、風車12、風車本体(ナセル)13)の制御を行う。例えば、内部制御部143は、計測センサー11から出力されたデータ(各種計測結果、及び異常通知等)を取得して遠隔監視装置20に送信する。また、内部制御部143は、遠隔監視装置20からの通知/指示/要求に応じて処理を行うことも可能である。また、内部制御部143は、風向風速計111の計測結果に応じて、風車12の翼(ブレード)121のピッチ制御や、風車本体(ナセル)13のヨー制御を行う。また、内部制御部143は、外気温度計112及び内部温度計113の計測結果に応じて、風車12の回転部(ロータ)122の回転を停止させる。
【0035】
[遠隔監視装置の構成]
遠隔監視装置20は、周辺環境データ収集部21と、運転状況管理部22と、アラーム報知部23を備える。
【0036】
周辺環境データ収集部21は、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々の周辺環境に関するデータを収集する。
【0037】
運転状況管理部22は、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々の運転状況を一括管理する。運転状況管理部22は、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々の運転状況に関するデータを蓄積していても良い。また、運転状況管理部22は、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々の周辺環境や運転状況に関するデータの変化に応じて、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々に対して、何らかの通知/指示/要求を行うことも可能である。なお、運転状況管理部22は、アラーム報知部23が計測センサー11の異常を検知した場合、自動的に(自律制御で)、計測センサー11に異常が発生した風力発電装置10(10−i、i=1〜n)を特定し、その風力発電装置10(10−i、i=1〜n)に対して、周辺の風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の計測センサー11により計測された周辺環境に関するデータを送信することも可能である。
【0038】
アラーム報知部23は、計測センサー11の異常を検知した場合、異常発生を報知するためのアラーム(警告)を発生する。例えば、アラーム報知部23は、計測センサー11から異常を知らせる通知を受信した場合、計測センサー11から一定時間継続して計測結果の通知がない場合、或いは、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々の周辺環境に関するデータの中に異常なデータを発見した場合に、計測センサー11に異常が発生したと判断する。なお、アラーム報知部23は、アラームと共に/アラームとして、どの計測センサー11が故障したか特定できるように、計測センサー11に異常が発生した風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の識別情報(対象を特定するための情報)、及び/又は、その計測センサー11の識別情報を出力するようにすると好適である。
【0039】
[管理端末の構成]
管理端末30は、アラーム検知部31と、総合制御部32と、管理者操作部33を備える。
【0040】
アラーム検知部31は、遠隔監視装置20からのアラームを検知し、アラームを検知した旨を総合制御部32に通知する。ここでは、アラーム検知部31は、遠隔監視装置20からのアラームを検知した場合、アラームの送信元の遠隔監視装置20の識別情報と、計測センサー11に異常が発生した風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の識別情報、及び/又は、その計測センサー11の識別情報を抽出し、総合制御部32に通知する。
【0041】
総合制御部32は、遠隔監視装置20を介して、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々の運転を制御する。例えば、総合制御部32は、遠隔監視装置20を介して、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々に通知/指示/要求を送信する。なお、総合制御部32は、複数の遠隔監視装置20を介して、これらの遠隔監視装置20の各々が監視する全ての風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の運転を制御することも可能である。また、総合制御部32は、アラーム検知部31からのアラーム検知の通知に応じて、どの風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の計測センサー11に異常が発生したか把握/認識する。このとき、総合制御部32は、アラームの送信元の遠隔監視装置20に対して、計測センサー11に異常が発生した風力発電装置10(10−i、i=1〜n)に、周辺の風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の計測センサー11により計測された周辺環境に関するデータを送信する旨の指示/要求を行うようにしても良い。また、総合制御部32は、異常が発生した計測センサー11の識別情報を、管理者操作部33に通知しても良い。なお、管理者操作部33は、計測センサー11の即時交換/修理(メンテナンス)が困難である場合、計測センサー11の交換/修理が可能な時期を算出し、その時期を管理者操作部33に通知する。或いは、その時期に、異常が発生した計測センサー11の識別情報と、その計測センサー11を交換/修理すべき旨を、管理者操作部33に通知する。
【0042】
管理者操作部33は、管理者(運転者)に、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々の運転状況や周辺環境に関するデータ等の各種情報を通知し、管理者からの操作を受け付け、総合制御部32の制御内容に関する設定情報を作成/更新し、遠隔監視装置20を介して、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々に通知/指示/要求を送信する。
【0043】
<ハードウェアの例示>
以下に、本発明に係る運転監視システムの各装置の具体的なハードウェアの例について説明する。
【0044】
風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の各々の例として、風車と風力原動機が一体となった風力発電機等を想定している。なお、風車を使用しない風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の例として、振動板に風を受け、圧電素子により電力を得るものも考えられる。
【0045】
計測センサー11の例として、風向風速計や外気温度計等の周辺環境の計測センサーを想定している。更に、計測センサー11は、タイマー(timer)機能やGPS(Global Positioning System)機能を持ち、時刻(時間帯、年月日、曜日、季節)、当該センサーの緯度経度、方角(方位)、日照量(光度、光量)、気圧、湿度、音量、音圧、電界強度(電波の強さ)、消費電力、周囲の遮蔽物の有無、震度、地磁気、電磁波、放射線、大気濃度(COx、NOx等)等の環境情報を取得するものでも良い。
【0046】
風車12の例として、水平軸のプロペラ型を想定している。他にも、風車12の例として、水平軸の多翼型、セイルウイング型、或いは、垂直軸のダリウス型、ジャイロミル型、サボニウス型、又はその併用型、更に、直線翼垂直軸型、スクリューマグナス風車(マグナス効果を利用)も考えられる。
【0047】
遠隔監視装置20及び管理端末30の例として、PC(パソコン)、アプライアンス(appliance)、ワークステーション、メインフレーム、スーパーコンピュータ等の計算機を想定している。なお、携帯電話機、スマートフォン、スマートブック等の携帯端末も計算機の一種である。
【0048】
図示しないが、上記のような計算機は、プログラムに基づいて駆動し所定の処理を実行するプロセッサと、当該プログラムや各種データを記憶するメモリと、ネットワークとの通信に用いられるインターフェース(I/F:interface)によって実現される。
【0049】
上記のプロセッサの例として、CPU(Central Processing Unit)、ネットワークプロセッサ(NP:Network Processor)、マイクロプロセッサ(microprocessor)、マイクロコントローラ、或いは、専用の機能を有する半導体集積回路(IC:Integrated Circuit)等が考えられる。
【0050】
上記のメモリの例として、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリ等の半導体記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置、又は、DVD(Digital Versatile Disk)等のリムーバブルディスクや、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等の記憶媒体(メディア)等が考えられる。また、バッファ(buffer)やレジスタ(register)でも良い。或いは、DAS(Direct Attached Storage)、FC−SAN(Fibre Channel − Storage Area Network)、NAS(Network Attached Storage)、IP−SAN(IP − Storage Area Network)等を用いたストレージ装置でも良い。
【0051】
なお、上記のプロセッサ及び上記のメモリは、一体化していても良い。例えば、近年では、マイコン等の1チップ化が進んでいる。従って、電子機器等に搭載される1チップマイコンが、上記のプロセッサ及び上記のメモリを備えている事例が考えられる。
【0052】
上記のインターフェースの例として、ネットワーク通信に対応した基板(マザーボード、I/Oボード)やチップ等の半導体集積回路、NIC(Network Interface Card)等のネットワークアダプタや同様の拡張カード、アンテナ等の通信装置、接続口(コネクタ)等の通信ポート等が考えられる。
【0053】
また、ネットワークの例として、インターネット、LAN(Local Area Network)、無線LAN(Wireless LAN)、WAN(Wide Area Network)、バックボーン(Backbone)、ケーブルテレビ(CATV)回線、固定電話網、携帯電話網、WiMAX(IEEE 802.16a)、3G(3rd Generation)、専用線(lease line)、IrDA(Infrared Data Association)、Bluetooth(登録商標)、シリアル通信回線、データバス等が考えられる。
【0054】
なお、遠隔監視装置20及び管理端末30内の各部(内部構成)は、モジュール(module)、コンポーネント(component)、或いは専用デバイス、又はこれらの起動(呼出)プログラムでも良い。また、遠隔監視装置20及び管理端末30内の各部(内部構成)は、それぞれ独立した計算機等でも良い。
【0055】
また、遠隔監視装置20及び管理端末30は、端末やサーバに限らず、中継機器や周辺機器でも良い。また、遠隔監視装置20及び管理端末30は、計算機等に搭載される拡張ボードや、物理マシン上に構築された仮想マシン(VM:Virtual Machine)でも良い。また、遠隔監視装置20及び管理端末30は、車両や船舶、航空機等の移動体に搭載されていても良い。
【0056】
管理者操作部33の例として、KVM(キーボード・ビデオ・マウス)、コンソール(console)、キーパッド(keypad)、タッチパネル(touch panel)、タブレット(tablet)、各種の情報伝達媒体の読取装置、LCD(液晶ディスプレイ)やPDP(プラズマディスプレイ)、有機ELディスプレイ(organic electroluminescence display)等の表示装置、或いは、外部の計算機又は入出力装置と通信するためのインターフェース等が考えられる。
【0057】
但し、実際には、これらの例に限定されない。
【0058】
<実施例>
図4及び図5を参照して、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0059】
図4に示すように、本実施例では、風力発電装置10(10−i、i=1〜n)の例として、風力発電装置10−1と、風力発電装置10−2と、風力発電装置10−3を示す。
【0060】
風力発電装置10−1、風力発電装置10−2、及び風力発電装置10−3の各々は、同一サイト内に存在する。遠隔監視装置20は、風力発電装置10−1、風力発電装置10−2、及び風力発電装置10−3を監視対象としており、事前設定等に基づいて、風力発電装置10−1、風力発電装置10−2、及び風力発電装置10−3の各々が近傍(同一サイト内)に存在することを把握/認識している。
【0061】
[処理の流れ]
図5を参照して、本実施例における処理の流れについて説明する。
【0062】
(1)ステップS101
風力発電装置10−1、風力発電装置10−2、及び風力発電装置10−3の各々は、計測センサー11を利用して、風況(風向、風速等)や外気温度に関する周辺環境の状況を計測する。
【0063】
(2)ステップS102
遠隔監視装置20は、風力発電装置10−1、風力発電装置10−2、及び風力発電装置10−3の各々の計測センサー11により得られた周辺環境に関するデータを収集している。なお、実際には、遠隔監視装置20は、定期的に、風力発電装置10−1、風力発電装置10−2、及び風力発電装置10−3から、各々の計測センサー11により得られた周辺環境に関するデータを読み出すようにしても良い。或いは、風力発電装置10−1、風力発電装置10−2、及び風力発電装置10−3の各々が、定期的に、各々の計測センサー11により得られた周辺環境に関するデータを遠隔監視装置20に通知・送信するようにしても良い。
【0064】
(3)ステップS103
ここで、風力発電装置10−2の計測センサー11が故障したとする。すなわち、風力発電装置10−2の計測センサー11に異常が発生する。
【0065】
(4)ステップS104
遠隔監視装置20は、風力発電装置10−2の計測センサー11の異常発生を検知する。
【0066】
(5)ステップS105
遠隔監視装置20は、風力発電装置10−2の周辺の風力発電装置(風力発電装置10−1又は風力発電装置10−3)の計測センサー11から得られた周辺環境に関するデータを、風力発電装置10−2に通知することを決定する。
【0067】
このとき、遠隔監視装置20は、自動的に、周辺の風力発電装置(風力発電装置10−1又は風力発電装置10−3)の計測センサー11から得られた周辺環境に関するデータを、風力発電装置10−2に通知することを決定するようにしても良い。
【0068】
或いは、遠隔監視装置20は、管理端末30に風力発電装置10−2の計測センサー11の異常発生を通知し、管理端末30からの制御に応じて、周辺の風力発電装置(風力発電装置10−1又は風力発電装置10−3)の計測センサー11から得られた周辺環境に関するデータを、風力発電装置10−2に通知することを決定するようにしても良い。
【0069】
(6)ステップS106
遠隔監視装置20は、風力発電装置10−2の周辺の風力発電装置(風力発電装置10−1又は風力発電装置10−3)の計測センサー11から得られた周辺環境に関するデータを、風力発電装置10−2に通知する。
【0070】
なお、実際には、遠隔監視装置20は、複数の風力発電装置(風力発電装置10−1及び風力発電装置10−3)の各々の計測センサー11から得られた周辺環境に関するデータの平均値を算出し、その平均値を風力発電装置10−2に通知するようにしても良い。
【0071】
(7)ステップS107
風力発電装置10−2は、自機の計測センサー11から得られた周辺環境に関するデータの代わりに、遠隔監視装置20から通知された周辺環境に関するデータを利用して、自機の風車12の旋回/回転等を制御する。
【0072】
<本発明の効果>
本来、計測センサーは、故障等の異常が発生した場合でも、風力発電装置の運転を停止することなく交換可能であるが、従来は風況(風向、風速等)や外気温度等が計測できなくなるため、結局、風力発電装置の運転を停止することになっていた。
【0073】
例えば、従来であれば、風力発電装置は、風向風速計が故障した場合には、風向風速を計測できなくなり、風車の風受け面を風向きに合わせて(アップウインド型の風車ならばアップウインド方向に)旋回させることができなくなり、運転を停止することになっていた。
【0074】
また、従来であれば、風力発電装置は、外気温度計が故障した場合には、外気温度と風車本体(ナセル)の内部温度との差に基づいて、風車本体(ナセル)の内部に発生した温度異常を監視できなくなり、運転を停止することになっていた。
【0075】
しかし、本願発明では、風力発電装置は、遠隔監視装置から、自機の周辺(同一サイト内)の風力発電装置における周辺環境に関するデータを受信し、受信したデータを自機の周辺環境に関するデータとして利用することで、計測センサーが故障してから交換/修理が完了するまでの間も、運転を停止せずに継続することが可能となる。
【0076】
<本発明の特徴>
以上のように、本発明に係る運転監視システムでは、同一サイト内に存在する複数の風力発電装置の各々に装着された計測センサーが、各風力発電装置の周辺環境の状況を計測する。また、遠隔監視装置が、各風力発電装置を監視し、各風力発電装置の運転状況及び周辺環境に関するデータを収集する。また、遠隔監視装置が、各風力発電装置のうち、ある風力発電装置の計測センサーの異常発生を検知した場合、計測センサーに異常が発生した風力発電装置に対して、風力発電装置の周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された周辺環境に関するデータを通知する。また、各風力発電装置が、計測センサーに異常が発生した状態でも、遠隔監視装置から通知された周辺環境に関するデータを利用して運転を継続する。
【0077】
これにより、風力発電装置において、風向風速計等の計測センサーの故障時にも、風車を停止することなく、安全な運転を行い、交換/修理までの間の発電ロスを防止することができる。
【0078】
<備考>
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、実際には、上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
10(−i、i=1〜n)… 風力発電装置
11… 計測センサー
111… 風向風速計
112… 外気温度計
113… 内部温度計
12… 風車
121… 翼(ブレード)
122… 回転部(ロータ)
123… ピッチ角制御装置
13… 風車本体(ナセル)
131… 増速機
132… 発電機(タービン)
133… ヨー制御装置
14… 発電制御盤
141… 電力供給部
142… 通信処理部
143… 内部制御部
20… 遠隔監視装置(RTU)
21… 周辺環境データ収集部
22… 運転状況管理部
23… アラーム報知部
30… 管理端末(HMI)
31… アラーム検知部
32… 総合制御部
33… 管理者操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一サイト内に存在し、装着された計測センサーにより周辺環境の状況を計測する複数の風力発電装置と、
前記複数の風力発電装置の各々を監視し、前記各風力発電装置の運転状況及び周辺環境に関するデータを収集する遠隔監視装置と
を含み、
前記遠隔監視装置は、前記複数の風力発電装置のうち少なくとも1つの風力発電装置の計測センサーの異常発生を検知した場合、前記計測センサーに異常が発生した風力発電装置に対して、前記複数の風力発電装置のうち該風力発電装置の周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された周辺環境に関するデータを通知し、
前記各風力発電装置は、前記計測センサーに異常が発生した状態でも、前記遠隔監視装置から通知された周辺環境に関するデータを利用して運転を継続する
運転監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の運転監視システムであって、
前記各風力発電装置は、
前記計測センサーにより風向風速を計測する手段と、
前記計測センサーに異常が発生した場合、前記遠隔監視装置から、周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された風向風速に関するデータを取得する手段と、
前記取得された風向風速に関するデータを基に、風車の翼のピッチ角の制御、及びナセルのヨー制御を行う手段と
を具備する
運転監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の運転監視システムであって、
前記各風力発電装置は、
前記計測センサーにより外気温度を計測する手段と、
前記計測センサーに異常が発生した場合、前記遠隔監視装置から、周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された外気温度に関するデータを取得する手段と、
前記取得された外気温度に関するデータを基に、外気温度とナセルの内部温度との差に基づいて、前記ナセルの内部温度の異常を監視し、風車の運転を継続する
手段と
を具備する
運転監視システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の運転監視システムであって、
前記遠隔監視装置は、
前記計測センサーに異常が発生した風力発電装置の周辺に存在する複数の風力発電装置の計測センサーにより計測された周辺環境に関するデータの平均値を算出する手段と、
前記計測センサーに異常が発生した風力発電装置に対して、前記算出された平均値に基づくデータを、前記周辺環境に関するデータとして通知する手段と
を具備する
運転監視システム。
【請求項5】
複数の風力発電装置の各々を監視する手段と、
前記各風力発電装置は、同一サイト内に存在し、各々に装着された計測センサーにより周辺環境の状況を計測しており、前記各風力発電装置から、前記各風力発電装置の運転状況及び周辺環境に関するデータを収集する手段と、
前記複数の風力発電装置のうち少なくとも1つの風力発電装置の計測センサーの異常発生を検知した場合、前記計測センサーに異常が発生した風力発電装置に対して、前記複数の風力発電装置のうち該風力発電装置の周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された周辺環境に関するデータを通知する手段と
を具備する
遠隔監視装置。
【請求項6】
請求項5に記載の遠隔監視装置であって、
前記計測センサーに異常が発生した風力発電装置の周辺に存在する複数の風力発電装置の計測センサーにより計測された周辺環境に関するデータの平均値を算出する手段と、
前記計測センサーに異常が発生した風力発電装置に対して、前記算出された平均値に基づくデータを、前記周辺環境に関するデータとして通知する手段と
を更に具備する
遠隔監視装置。
【請求項7】
装着された計測センサーにより周辺環境の状況を計測する手段と、
前記計測センサーに異常が発生した場合、自機と同一サイト内に存在する複数の風力発電装置の各々を監視して前記各風力発電装置の運転状況及び周辺環境に関するデータを収集する遠隔監視装置から、自機の周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された周辺環境に関するデータを取得する手段と、
前記計測センサーに異常が発生した状態でも、前記遠隔監視装置から通知された周辺環境に関するデータを利用して運転を継続する手段と
を具備する
風力発電装置。
【請求項8】
請求項7に記載の風力発電装置であって、
前記計測センサーにより風向風速を計測する手段と、
前記計測センサーに異常が発生した場合、前記遠隔監視装置から、自機の周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された風向風速に関するデータを取得する手段と、
前記取得された風向風速に関するデータを基に、風車の翼のピッチ角の制御、及びナセルのヨー制御を行う手段と
を更に具備する
風力発電装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の風力発電装置であって、
前記計測センサーにより外気温度を計測する手段と、
前記計測センサーに異常が発生した場合、前記遠隔監視装置から、自機の周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された外気温度に関するデータを取得する手段と、
前記取得された外気温度に関するデータを基に、外気温度とナセルの内部温度との差に基づいて、前記ナセルの内部温度の異常を監視し、風車の運転を継続する
手段と
を更に具備する
風力発電装置。
【請求項10】
同一サイト内に存在する複数の風力発電装置の各々に装着された計測センサーが、前記各風力発電装置の周辺環境の状況を計測することと、
遠隔監視装置が、前記各風力発電装置を監視し、前記各風力発電装置の運転状況及び周辺環境に関するデータを収集することと、
前記遠隔監視装置が、前記複数の風力発電装置のうち少なくとも1つの風力発電装置の計測センサーの異常発生を検知した場合、前記計測センサーに異常が発生した風力発電装置に対して、前記複数の風力発電装置のうち該風力発電装置の周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された周辺環境に関するデータを通知することと、
前記各風力発電装置が、前記計測センサーに異常が発生した状態でも、前記遠隔監視装置から通知された周辺環境に関するデータを利用して運転を継続することと
を含む
運転監視方法。
【請求項11】
複数の風力発電装置の各々を監視するステップと、
前記各風力発電装置は、同一サイト内に存在し、各々に装着された計測センサーにより周辺環境の状況を計測しており、前記各風力発電装置から、前記各風力発電装置の運転状況及び周辺環境に関するデータを収集するステップと、
前記複数の風力発電装置のうち少なくとも1つの風力発電装置の計測センサーの異常発生を検知した場合、前記計測センサーに異常が発生した風力発電装置に対して、前記複数の風力発電装置のうち該風力発電装置の周辺に存在する他の風力発電装置の計測センサーにより計測された周辺環境に関するデータを通知するステップと
を遠隔監視装置に実行させるための
プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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