説明

過負荷防止装置及び鍛造クレーンの過負荷防止方法、並びに、鍛造クレーン。

【課題】鍛造を行うワークを吊下げる際に、鍛造に伴ってワークから作用する荷重が過負荷となり、また、ロープがたるみ過ぎないように、ロープの張力が適切となるように調整してワークを吊下げることを可能とする鍛造クレーンの過負荷防止装置及び過負荷防止方法、並びに鍛造クレーンを提供するものである。
【解決手段】ワークWから作用する負荷が予め設定された許容範囲内となるように、吊下げ手段20によって保持部30を介してワークWを吊下げる際に変化する吊下げ特性値の大きさを制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造装置に連動してワークの搬送を行う鍛造クレーンの過負荷防止装置、及び鍛造クレーンの過負荷防止方法、並びに、過負荷防止装置を備えた鍛造クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鍛造工場で使用される鍛造クレーンは、被鍛造物であるワークを搬送するとともに鍛造装置での鍛造時も保持し続け、鍛造時にワークを軸回りに回転させるといった回転動作を該鍛造装置と連動して行わせるものである。そして、このような鍛造装置と連動した鍛造クレーンの作業によって、ワークをプレスする鍛造処理を行ない、ワークを所定の形状に加工することができる。
【0003】
従来、この種の鍛造クレーンとして、特許文献1に示される技術が知られている。この特許文献1に示される鍛造クレーン用緩衝装置は、ワークを吊下げて上下移動させる吊下げ手段である巻上機構の上部滑車群を支持する緩衝ビームを、ばね装置及び緩衝用油圧シリンダ装置を介してトロリー上に支持するものであって、これらばね装置及び緩衝用油圧シリンダ装置によって、上部滑車群の衝撃荷重を吸収する。具体的には、緩衝用油圧シリンダの働きにより、機械的衝撃エネルギーを油圧に変換し、流体エネルギーとしてアキュムレータに蓄積することによって、油圧特有のソフトな緩衝効果をもたらし、ばね装置では達成できないような柔軟なばね常数を、アキュムレータの容量並びに油圧回路の圧力設定により容易に可能とし得るものである。
【特許文献1】特公昭45−24939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような鍛造クレーン用緩衝装置では、巻上装置の主巻ドラムの回転を調整して、ロープ巻上げ、又は繰出し(巻下げ)運転を行うものであるが、繰出速度が速い場合にはロープを繰出しすぎて、ワークを支持台上に降下させてしまうという問題があった。そして、一旦、ワークが支持台上に降下した場合には、これを吊り上げる作業を行わなければならず、鍛造作業の作業能率が低下するという問題があった。一方、繰出速度が遅い場合には、ロープの繰出しがプレスによるワークの変位に追い付かないことから、鍛造クレーン用緩衝装置に過負荷が発生するという問題があった。そして、このような過負荷は、先のばね装置及び緩衝用油圧シリンダ装置における許容値を超えて発生してしまうおそれがあった。
【0005】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、鍛造を行うワークを吊下げる際に、鍛造に伴ってワークから作用する荷重が過負荷となり、また、ロープがたるみ過ぎないように、ロープの張力が適切となるように調整してワークを吊下げることを可能とする鍛造クレーンの過負荷防止装置及び過負荷防止方法、並びに鍛造クレーンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。本発明は、ワークを保持する保持部と、該保持部をロープ及び該ロープを繰出すドラムにより上下移動可能に吊下げる吊下げ手段と、該吊下げ手段を支持する支持部とを備える鍛造クレーンに設けられる過負荷防止装置であって、前記ワークから作用する負荷が予め設定された許容範囲内となるように、前記吊下げ手段によって前記保持部を介して前記ワークを吊下げる際に変化する吊下げ特性値の大きさを制限する制限手段を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、ワークを保持する保持部と、該保持部をロープ及び該ロープを繰出すドラムにより上下移動可能に吊下げる吊下げ手段と、該吊下げ手段を支持する支持部とを備える鍛造クレーンにおいて、前記ワークから作用する負荷が予め設定された許容範囲内となるように、前記吊下げ手段によって保持部を介してワークを吊下げる際に変化する吊下げ特性値の大きさを制限することを特徴とする。
【0008】
この構成及び方法では、保持部でワークを保持し、これを吊下げ手段によって吊下げながら鍛造を行う際に、ワークの変位によってワークから保持部を介して作用する負荷が変動し、これに応じて吊下げ手段における吊下げ特性値が変化することとなる。ここで、制限手段がワークから作用する荷重を予め設定された許容範囲内とするように吊下げ特性値を制限することで、吊下げ手段に保持部を介して過負荷が生じてしまうことなく、また、吊下げるロープがたるんでしまうことなく、ロープを適切な張力として、ワークを吊下げることができる。
【0009】
また、上記の過負荷防止装置において、前記制限手段を、前記吊下げ手段での吊下げ特性値を検出する検出手段と、該検出手段で検出された前記吊下げ特性値が前記ワークから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否か監視を行う監視手段と、該監視手段による監視結果に基づいて吊下げ手段の駆動を制御する制御手段と、から構成することがより好ましい。
【0010】
この構成では、制限手段の検出手段にて吊下げ手段での吊下げ特性値を検出し、監視手段にて該検出手段で検出された吊下げ特性値がワークから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否か監視している。そして、制御手段にて、監視手段による監視結果に基づいて吊下げ手段の駆動を制御するようにすることで、ワークから作用する荷重を予め設定された許容範囲内とするように吊下げ特性値を制限して、吊下げ手段によってロープを適切な張力としてワークを吊下げることができる。
【0011】
また、上記の過負荷防止装置において、前記検出手段に、ロープの張力を前記吊下げ特性値として検出する荷重計を有し、前記監視手段にて、前記荷重計で検出されたロープの張力が前記基準値を超えるか否かを監視することがより好ましい。
【0012】
また、上記の過負荷防止方法において、ロープの張力を前記吊下げ特性値として検出するとともに、検出された前記ロープの張力が、前記ワークから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否かを監視し、該監視結果に基づいて吊下げ手段の駆動を制御することがより好ましい。
【0013】
この構成及び方法では、検出手段の荷重計でロープの張力を吊下げ特性値として検出し、監視手段ではロープの張力がワークから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否か監視を行っている。そして、制御手段では、監視手段によるロープの張力の監視結果に基づいて吊下げ手段を制御することで、吊下げ手段によってロープを適切な張力としてワークを吊下げることができる。
【0014】
また、上記の過負荷防止装置において、前記吊下げ手段の前記ロープを支持する滑車を弾性的に支持する支持ばねを備え、前記検出手段は、前記支持ばねの変位を吊下げ特性値として検出するばね変位計を有し、前記監視手段は、前記ばね変位計で検出された支持ばねの変位が前記基準値を超えるか否かを監視することがより好ましい。
【0015】
また、上記の過負荷防止方法において、前記ロープを支持する滑車を弾性的に支持する支持ばねの変位を吊下げ特性値として検出するとともに、検出された前記支持ばねの変位が、前記ワークから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否かを監視し、該監視結果に基づいて前記吊下げ手段の駆動を制御することがより好ましい。
【0016】
この構成及び方法では、検出手段のばね変位計でロープの滑車を支持する支持ばねの変位を吊下げ特性値として検出し、監視手段では支持ばねの変位がワークに作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否か監視を行っている。そして、制御手段では、監視手段による支持ばねの変位の監視結果に基づいて吊下げ手段を制御することで、吊下げ手段によってロープを適切な張力としてワークを吊下げることができる。
【0017】
また、上記の過負荷防止装置において、前記検出手段は、前記吊下げ手段の前記ドラムを回転させるモータによるトルクを前記吊下げ特性値として検出し、前記監視手段は、前記検出手段で検出された前記トルクが前記基準値を超えるか否かを監視することが好ましい。
【0018】
また、上記の過負荷防止方法において、前記吊下げ手段の前記ドラムを回転させるモータによるトルクを前記吊下げ特性値として検出するとともに、検出された前記トルクが、前記ワークから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否かを監視し、該監視結果に基づき、前記吊下げ手段の駆動を制御することがより好ましい。
【0019】
この構成及び方法では、検出手段で吊下げ手段のモータによるトルクを吊下げ特性値として検出し、監視手段ではモータのトルクがワークに作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否か監視を行っている。そして、制御手段では、監視手段によるモータのトルクの監視結果に基づいて吊下げ手段を制御することで、吊下げ手段によってロープを適切な張力としてワークを吊下げることができる。
【0020】
また、上記の過負荷防止装置において、前記検出手段は、前記吊下げ手段の前記ロープの繰出速度を前記吊下げ特性値として検出するロープ速度センサを有し、前記監視手段は、前記ロープ速度センサで検出された前記繰出し速度が、前記基準値を超えるか否かを監視することが好ましい。
【0021】
また、上記の過負荷防止方法において、前記吊下げ手段の前記ロープの繰出速度を前記吊下げ特性値として検出するとともに、検出された前記ロープの繰出速度が、前記ワークから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否かを監視し、該監視結果に基づき、前記吊下げ手段の駆動を制御することがより好ましい。
【0022】
この構成及び方法では、検出手段のロープ速度センサでロープの繰出し速度を吊下げ特性値として検出し、監視手段ではロープの繰出し速度がワークに作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否か監視を行っている。そして、制御手段では、監視手段によるロープの繰出し速度の監視結果に基づいて吊下げ手段を制御することで、吊下げ手段によってロープを適切な張力としてワークを吊下げることができる。
【0023】
また、上記の過負荷防止装置において、前記制限手段は、前記吊下げ特性値として前記吊下げ手段の前記ロープの張力が、前記ワークから作用する負荷の許容範囲と対応するように設定された基準値以下となるまで前記ロープの繰り出しを停止させるとともに、該基準値よりも大きくなると前記ロープの繰出しを許容するブレーキであることが好ましい。
【0024】
また、上記の過負荷防止方法において、前記吊下げ特性値として前記吊下げ手段の前記ロープの張力が、前記ワークから作用する負荷の許容範囲と対応するように設定された基準値以下となるまで前記ロープの繰り出しを停止させるとともに、該基準値よりも大きくなったらと前記ロープの繰出しを許容するブレーキ制御を行うことがより好ましい。
【0025】
この構成及び方法では、制限手段であるブレーキは、吊下げ特性値であるロープの張力がワークから作用する負荷の許容範囲と対応するように設定された基準値以下となるまでは、すなわちロープの張力が適切な状態では前記ロープの繰り出しを停止させてワークを吊下げることができる。一方、ロープの張力が基準値よりも大きくなると、ブレーキは、ロープの繰り出しを許容することで、この場合においてもロープの張力が適切な状態とすることができる。
【0026】
また、本発明の鍛造クレーンは、上記の過負荷防止装置を備えることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、上記の過負荷防止装置を備えることにより、吊下げ手段に保持部を介して過負荷が生じてしまうことなく、また、吊下げるロープがたるんでしまうことなく、ロープを適切な張力として、ワークを吊下げて、鍛造装置によってワークの鍛造を行わせることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の過負荷防止装置及び過負荷防止方法では、ワークから作用する荷重を予め設定された許容範囲内とするように吊下げ特性値を制限することで、吊下げ手段に保持部を介して過負荷が生じてしまうことなく、また、吊下げるロープがたるんでしまうことなく、ロープを適切な張力として、ワークを吊下げることができる。
また、本発明の鍛造クレーンでは、上記の過負荷防止装置を備えることで、吊下げ手段に保持部を介して過負荷が生じてしまうことなく、また、吊下げるロープがたるんでしまうことなく、ロープを適切な張力として、ワークを吊下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(第1の実施形態)
本発明の第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。図1において、符号100で示すものはワークWの鍛造処理を行う鍛造装置、符号101で示すものは、鍛造装100と連動してワークWの吊下げ作業を行う鍛造クレーンであり、該鍛造クレーン101には、本願発明に係わる過負荷防止装置102Aが組み込まれている。
【0030】
鍛造装置100は、鍛造時にワークWをその上面に載置する支持台1と、該支持台1の上方位置に配置され該支持台1との間に配置されたワークWに圧力を加えるプレス2と、該プレス2を昇降するシリンダ3と、を具備するものであって、後述する鍛造クレーン101のターニング装置30で、ワークWを回転させながら、ワークWの鍛造作業を行うものである。
【0031】
次に、鍛造クレーン101について説明する。符号10で示すものは支持部であって、上方に設置されたレール11上と、該レール11上を車輪12aによって走行する2組の走行ガータ12と、各走行ガータ12上でレール11の延設方向と直交する方向となる紙面奥行き方向に移動可能なトロリー13とから構成されている。
これら走行ガータ12上の各トロリー13には、ワークWを吊下げるための吊下げ手段20が設けられている。この吊下げ手段20は、ターニング装置30(後述する)を支持する吊具21と、該吊具21を吊下げるロープ22と、該ロープ22が巻回され支持されている複数の滑車23A、23Bと、該滑車23を経たロープ22を巻回するドラム24と、該ドラム24を回転させるモータ駆動部25と、を有する。そして、吊下げ手段20では、該モータ駆動部25により、ドラム24に対してロープ22を巻上げ、又はドラム24からロープ22を繰出すことが可能となっている。また、滑車23Aは、支持ばね26Aを介してトロリー13に支持されている。同様に、滑車23Bは、支持ばね26Bを介して吊具21を支持している。そして、この支持ばね26A、26BによってワークWから鍛造クレーン101に加わる衝撃荷重を吸収する。
【0032】
前記吊下げ手段20の各吊具21には、フック21Aを介して、ワークWの保持部となるターニング装置30が吊下げられている。これらターニング装置30は、ワークWの軸部W1を保持するベルト31と、該ベルト31を回転させることによって軸部W1とともにワークWを軸回りに回転させる回転装置32とから構成される。
【0033】
次に、本実施形態に係わる過負荷防止装置102Aについて図2を参照して説明する。この過負荷防止装置102Aは、ワークWから作用する負荷が予め設定された許容範囲内となるように、吊下げ手段20によってターニング装置30を介してワークWを吊下げる際に変化する吊下げ特性値の大きさを制限する過負荷防止方法が適用されたものである。具体的には、この過負荷防止装置102Aは、吊下げ手段20での吊下げ特性値としてロープ22に作用する張力を検出する検出手段40Aと、該検出手段40Aで検出されたロープ22の張力がワークWから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否か監視する監視手段41Aと、監視手段41Aによる監視結果に基づいて吊下げ手段20の駆動を制御する制御手段42Aとを有する制限手段103Aにより構成される。
【0034】
上記検出手段40A、監視手段41A、制御手段42Aの具体的構成について説明する。
図2において、符号50はロープ22を巻回する滑車23に設けられて、該ロープ22の張力を検出する荷重計である。
符号51は、鍛造クレーン101の吊下げ手段20に作用する荷重が、許容範囲内となるように予めロープ22の張力の基準値を予め設定する基準値設定部であり、また、符号52は、基準値設定部51の基準値から荷重計50の計測値を減算し、基準値に対する計測したロープ22の張力の差分を求める張力減算部である。
【0035】
符号53は、前記張力減算部52の減算結果を、予め設定しておいた演算式に基づき比例積分することにより、上記差分がゼロとなるように、モータ駆動部25によって繰出されるロープ22の目標繰出速度を計算する目標繰出速度演算部である。
符号54は、繰出速度減算部57(後述する)を経て、前記目標繰出速度演算部53で演算したロープの目標繰出速度となるようにモータ駆動部25を制御するモータ制御系である。
符号55は、ロープ22を巻回するドラム24に設けられたエンコーダ56の出力に基づきロープ22の繰出速度を検出する繰出速度検出手段である。
符号57は、繰出速度検出手段55で検出された実際のロープ22の繰出速度と、目標繰出速度演算部53で演算されたロープ22の目標繰出速度との差から、該ロープ22の繰出速度が繰出目標速度となるようにフィードバック制御するための繰出速度減算部である。
【0036】
なお、上述した荷重計50によって検出手段40Aが構成される。また、基準値設定部51、張力減算部52によって監視手段41Aが構成される。また、目標繰出速度演算部53、繰出速度減算部57、モータ制御系54、繰出速度検出手段55によって、制御手段42Aが構成される。
また、この制御手段42Aでは、ドラム24に設けられたエンコーダ56の出力からロープ22の繰出速度を検出するようにしたが、該エンコーダ56の出力に基づきドラム24からのロープ22の繰出量を算出し、該ロープ22の繰出量に基づき、先のロープ22の張力が、基準値の範囲内に収まるようにフィードバック制御しても良い。この場合、符号53では、ロープ22の目標繰出速度ではなく、該ロープ22の目標繰出量を計算する。
【0037】
以上のように構成された鍛造装置100、鍛造クレーン101、過負荷防止装置102Aの作用を説明する。
保持部であるターニング装置30でワークWを保持し、これを吊下げ手段20によって吊下げながら鍛造装置100により鍛造を行う。すると、支持部1上のワークWがプレス2によってプレスされて変形することで、軸部W1が変位する。これによりワークWの軸部W1からターニング装置30を介して作用する負荷が変動し、これに応じて吊下げ手段20におけるロープ22の張力(吊下げ特性値)が変化することとなる。
ここで、制限手段103では、張力減算部52にて計算した荷重計50で検出されたロープ22の張力と、基準値設定部51に許容値として設定した基準値との差に基づき、目標繰出速度演算部53にて、ロープ22の目標繰出速度を算出する。そして、この目標繰出速度に一致するように、モータ制御系54、繰出速度検出手段55、繰出速度減算部57での処理を繰り返すことによって、ロープ22の張力が、基準値設定部51で設定された基準値の範囲内に収まるように、モータ駆動部25のモータ回転速度をフィードバック制御する。これによって張力目標値と対応する荷重よりも大きい荷重でワークWからの負荷がかからないようにしている。また、このような制御は、荷重計50から検出値が入力される毎に繰り返し行われるものであり、荷重計50からの検出値が変化すると、これに応じて目標繰出速度が再計算され、当該再計算された目標繰出速度となるように、モータ駆動部25が制御されることとなる。
【0038】
すなわち、制限手段103の検出手段40Aとして、ロープ22の張力を検出する荷重計50を用いることによって、検出した張力を吊下げ特性値として、ワークWに作用する荷重が許容範囲か否かという監視を行い、ワークWから作用する荷重を予め設定された許容範囲内とするようにロープ22の張力(吊下げ特性値)を制限することで、吊下げ手段20にターニング装置30を介して過負荷が生じてしまうことなく、また、ワークWを吊下げるロープ22がたるんでしまうことなく、ロープ22を適切な張力でワークWを吊下げることができる。
【0039】
以上説明したような第1実施形態に示される過負荷防止装置102Aによれば、制限手段103がワークWから作用する荷重を予め設定された許容範囲内とするようにロープ22の張力(吊下げ特性値)を制限することで、吊下げ手段20にターニング装置30を介して過負荷が生じず、また、ワークWを吊下げるロープ22がたるんでしまうことなく、ロープ22を適切な張力でワークWを吊下げることが可能となる。
【0040】
なお、本実施形態では、ロープ22の張力を吊下げ特性値としたことから、検出手段40Aに、ロープ22の張力を検出する荷重計50を使用するようにしたが、ロープ22の張力に代えて、支持ばね26A、26Bの変位を吊下げ特性値としても、支持ばね26A、26Bの変位とロープ22の張力とは比例関係にあるから、同様の制御を行うことができる。この場合、該荷重計50に代えて、支持ばね26A、26Bの変位を検出するばね変位計を使用するとともに、基準値設定部51にて、鍛造クレーン101の吊下げ手段20に作用する荷重が許容範囲内となるように支持ばね26A、26Bの変位量の基準値を予め設定する。また、張力減算部52に代えて変位量減算部として、当該変位量減算部にて、支持ばね26A、26Bの変位を検出するばね変位計の検出値と、基準値設定部51で設定した基準値との差を演算する。そして、その演算結果に基づき、目標繰出速度演算部53にて、予め設定しておいた演算式に基づき比例積分することにより、モータ駆動部25によって繰出されるロープ22の目標繰出速度を計算し、同様の制御を行うことができる。
【0041】
(第2の実施形態)
本発明の第2実施形態について図3を参照して説明する。第2実施形態に係わる過負荷防止装置102Bが、第1実施形態に係わる過負荷防止装置102Aと異なるのは、制限手段103Bの具体的構成である。
本実施形態に係わる制限手段103Bは、第1実施形態と同様に、吊下げ手段20にて吊下げ特性値を検出する検出手段40Bと、該検出手段40Bで検出された吊下げ特性値がワークWから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否か監視を行う監視手段41Bと、該監視手段41Bによる監視結果に基づいて吊下げ手段20の駆動を制御する制御手段42Bと、から構成されているが、これらは、全て吊下げ手段20のモータ駆動部25を制御するモータ制御系60に含まれる。このモータ制御系60は、モータ駆動部25から発生した回転駆動力をドラム24に伝達する回転力伝達経路の途中に、トルクリミッタ61が設けられてなるものである。
【0042】
このトルクリミッタ61には、鍛造クレーン101の吊下げ手段20に作用する荷重の許容値に対応して発生させるモータ駆動部25のモータのトルクを上限値として求めておき、当該上限値が基準値として設定されている。
そして、モータ制御系60では、通常時は、自ら演算したトルク指令値をモータ駆動部25に出力することで、作用する負荷に応じてモータ駆動部25から出力されるトルク変化させてロープ22によりワークWを支持することができる。一方、モータ制御系60では、自ら演算したトルク指令値を吊下げ特性値としてトルクリミッタ61で監視しており、許容値以上の負荷がかかろうとして設定された上限値以上のトルク指令値が演算されると、モータ指令値を上記上限値に制限してモータ駆動部25に出力する。
すなわち、モータ制御系60は、検出手段40Bとして自ら演算したトルク指令値を吊下げ特性値として取得し、トルクリミッタ61を監視手段41Bとして、トルク指令値が上限値(基準値)に達していないか監視し、制御手段42Bとして当該監視結果に基づいてモータ駆動部25を駆動するトルク指令値を出力するものである。
【0043】
また、符号62は、ドラム24に設けられたエンコーダであり、吊下げ手段20のモータ駆動部25によって回転するドラム24の回転速度を検出している。
また、符号64は、回転速度設定部65で設定された設定速度(=0)に基づき、エンコーダ62で検出されたドラム24の回転速度と回転速度設定部65にて設定された設定速度(=0)との差を計算する回転速度減算部64である。
【0044】
以上のように構成された鍛造装置100、鍛造クレーン101、過負荷防止装置102Bの作用を説明する。
ターニング装置30でワークWを保持し、これを吊下げ手段20によって吊下げながら鍛造装置100により鍛造を行う際に、ワークWの変位によってワークWからターニング装置30を介して作用する負荷が変動し、負荷の変動に応じてロープ22は繰り出され、あるいは、弛もうとする。ここで、回転速度減算部64では、エンコーダ62で検出されて入力されたドラム回転速度と、回転速度設定部65にて設定された設定速度(=0)との差を計算して、モータ制御系60に出力する。そして、モータ制御系60では、設定速度と検出されたドラム回転速度との差が0となるようにモータ駆動部25にトルクを出力させるべく、モータ駆動部25に出力するトルク指令値(吊下げ特性値)を演算する。ここで、モータ制御系60では、トルクリミッタ61によって自ら演算したトルク指令値が予め設定した上限値(基準値)に達していないか監視し、上限値に達していない場合には、当該トルク指令値に対応したトルクをモータ駆動部25に出力させる。そして、モータ駆動部25によって出力されたトルクと、ワークWから作用する負荷との関係によって、ドラム24は静止し、あるいはいずれかの方向に回転し、その回転速度がエンコーダ62で検出され、再び回転速度減算部64に入力される。すなわち、モータ制御系60では、ドラム回転速度が回転速度設定65で設定された設定速度(=0)となり、ワークWが所定位置で吊下げられるようにフィードバック制御が行われる。一方で、モータ制御系60は、トルクリミッタ61によってトルク指令値の監視を行い、トルク指令値が上限値より大きい場合には、演算結果に係らず上限値とするトルク指令値をモータ駆動部25に出力する。これにより、ドラム24の回転によってロープ22に過剰な張力が作用しないようにすることができる。
【0045】
以上説明したような第2実施形態に示される過負荷防止装置102Bによれば、制限手段103Bの制御手段42において、鍛造クレーン101の吊下げ手段20に作用する荷重の許容値と対応するモータのトルクを上限値(基準値)として求めておき、モータ制御系60にこれを上限値とするトルクリミッタ61を監視手段41Bとして設置している。そして、通常時はモータ制御系60により作用する負荷に応じたトルク指令値(吊下げ特性値)を演算してモータ駆動部25を駆動させてワークWを支持するとともに、許容値以上の負荷がかかろうとすると、トルクリミッタ61によって上限値より大きいトルクが発生することが制限されることとなる。これにより過負荷が生じてしまうことなく、また、ワークWを吊下げるロープ22がたるんでしまうことなく、ロープ22を適切な張力としてワークWを吊下げることができる。
【0046】
(第3の実施形態)
本発明の第3実施形態について図4を参照して説明する。第3実施形態に係わる過負荷防止装置102Cが、上記実施形態に係わる過負荷防止装置102A、102Bと異なるのは、制限手段の具体的構成である。
【0047】
第3実施形態に係わる過負荷防止装置102Cの制限手段103Cは、第1実施形態と同様に、吊下げ手段20での吊下げ特性値を検出する検出手段40Cと、該検出手段40Cで検出された吊下げ特性値がワークWから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否か監視を行う監視手段41Cと、該監視手段41Cによる監視結果に基づいて吊下げ手段20の駆動を制御する制御手段42Cと、から構成されているが、本実施形態の制限手段103Cでは、鍛造装置100のプレス2の圧下速度、ロープ22の繰出速度、該ロープ22にかかる荷重に基づき、吊下げ手段20におけるロープ22の基準となる繰出速度を算出し、その基準となる繰出速度の範囲内になるように該ロープ22の繰出制御を行うようにした点に特徴を有している。
【0048】
図4において、符号70で示すものは鍛造装置100のプレス2の圧下速度を検出するプレス速度検出センサである。なお、このプレス速度検出センサ70は、鍛造装置100のプレス作業を監視するために該鍛造装置100のプレス2に設けられた外部センサであって、該プレス速度検出センサ70の検出データが、本実施形態に係わる制限手段103Cに取り込まれる。
【0049】
符号71は、ロープ22を巻回する滑車23に設けられて該ロープ22の荷重を検出する荷重計である。
符号72で示すものは、基準値として、モータ駆動部25におけるロープ22の目標繰出速度を演算する目標繰出速度演算部である。目標繰出速度演算部72では、入力されるプレス速度検出センサ70及び荷重計71の検出値に基づいて、目標繰出速度としてロープ22の繰出し速度の下限値と上限値とを設定している。具体的には、ロープ22の繰出し速度の下限値は、プレス速度検出センサ70で検出され入力されるプレス2による圧下速度の1/2に設定されている。ロープ22の繰出速度の下限値をプレス2の圧下速度の1/2とするのは、以下の理由からによる。すなわち、ワークWが支持台1上に支持された状態でプレス2によってプレスされると、その変形は、軸部W1の下側及び上側のそれぞれで発生するので、下側が変形することによる軸部W1の変位は、全体の変形量の1/2となる。このため、軸部W1を、ターニング装置30を介して支持するロープ22の繰出し速度としては、軸部W1の変位に追従させる必要があることから、プレス2の圧下速度(プレス速度)の1/2以上とする必要がある。そして、ロープ22の繰出速度(吊下げ特性値)を、下限値であるプレス2の圧下速度の1/2以上とすることで、鍛造クレーン101の吊下げ手段20に作用する負荷が許容値より大きくならないようにすることができる。
【0050】
一方、ロープ22の繰出速度の上限値は、ロープ22の繰出停止時における停止動作開始から停止動作完了までのロープ22の繰出距離(L)が、該ロープ22を含む系全体の変形量以下となる値に設定される。これにより、所定の繰出速度で繰出しているロープ22を停止させる際に、停止完了までに当該繰出速度と対応する繰出距離だけ繰出されても、負荷により弾性的に伸張しているロープ22や圧縮している支持ばね26が復元することにより相殺され、余計にロープ22が繰出されてロープ22が弛んでしまうのを防止することができる。
【0051】
この上限値設定の手順について図5を参照してより詳細に説明する。
すなわち、まずロープ22の減速距離(L)は、ロープ22の減速開始時の速度(V)と、ロープ22の減速が開始されて停止するまでの減速時間(Δt)とに基づき、式「減速距離(L)=(1/2)×V×Δt」から算出される(図5中に斜線で示される部分)。ここで、先の関係式中の減速時間(Δt)は、速度(V)から減速度(α)によって減速するとすれば、式「Δt=V/α」から求めることができる。なお、減速度(α)は、一定値としても良いし、所定の値に適時設定可能なものとしても良いが、本実施形態では一定値であるものとして説明する。
【0052】
一方、ロープ22の伸び量(E)は、負荷に対するロープ22や支持ばね26を含む系全体の剛性(A)を予め求めておけば、式「系全体の変形量(E)=荷重(G)/系全体の剛性(A)」から算出される。このため、上記のとおり減速開始から停止するまでのロープ22の繰り出しによってロープ22が弛まないようにするには、当該繰出量が負荷による系全体の復元量によって相殺されればよく、従って、式「減速距離 (L=V/2α) <系全体の変形量 (E=G/A)」に示す関係を満たせば良いこととなる。なお、支持ばね26を備えない構成とした場合には、基本的に負荷による変形はロープ22の伸張が主となるので、ロープ22の伸張のみに着目して上記条件を設定するものとしても良い。
【0053】
また、符号73で示すものは、吊下げ特性値となるロープ22の繰出速度を検出するロープ速度センサであり、符号74で示すものは、ロープ速度センサ73で検出されたロープ22の繰出速度が、目標繰出速度演算部72で演算されたロープ繰出速度の上限値と下限値との間にあるか否かを監視する繰出速度監視部である。
また、符号75で示すものは、目標繰出速度演算部72で演算したロープ22の目標繰出速度の範囲内にてモータ駆動部25を制御するモータ制御系である。
【0054】
そして、このモータ制御系75にてモータ駆動部25が駆動制御されるとともに、先のプレス速度検出センサ70及び荷重計71の検出値が変化した場合には、目標繰出速度演算部72での演算処理を再度、繰り返すことで、先のロープ22の目標繰出速度の上限値、下限値を変更する。
なお、上記ロープ速度センサ73によって検出手段40Cが構成される。また、繰出速度監視部74によって監視手段41Cが構成される。また、モータ制御系75によって制御手段42Cが構成される。
【0055】
以上のように構成された鍛造装置100、鍛造クレーン101、過負荷防止装置102Cの作用を説明する。
ターニング装置30でワークWを保持し、これを吊下げ手段20によって吊下げながら鍛造装置100により鍛造を行う際に、ワークWの変位によってワークWからターニング装置30を介して作用する負荷が変動することとなる。
そして、ロープ速度センサ73では、ワークWの変位に応じて繰出されるロープ22の速度が検出され、検出結果が順次繰出速度監視部74に入力される。
また、プレス速度検出センサ70では、鍛造装置100のプレス2の圧下速度が検出され、荷重計71では、ロープ22にかかる荷重が検出され、これらの検出結果が順次目標繰出速度演算部72に入力される。目標繰出速度演算部72では、これらプレス速度検出センサ70及び荷重計71の検出値に基づき、基準値としてドラム24からのロープ22の目標繰出速度となる上限値及び下限値を演算する。そして、繰出監視手段74では、入力されるロープ22の繰出速度が、目標繰出速度演算部72で演算された目標繰出速度の上限値と下限値との間にあるか否かを監視する。そして、モータ制御系75は、繰出速度監視部74の監視結果に基づき、ロープ22の繰出速度が目標繰出速度の上限値と下限値との間となるように、モータ駆動部25を駆動制御する。すなわち、ロープ22の繰出速度が下限値未満となった場合には、モータ制御系75は、モータ駆動部25の回転速度を上げることでロープ22の繰出速度を速くして下限値以上となるようにする。一方、ロープ22の繰出速度が上限値より大きくなった場合には、モータ制御系75は、モータ駆動部25の回転速度を下げることでロープ22の繰出速度を遅くして上限値以下となるようにする。
【0056】
そして、このような制御を繰り返すことで、ロープ22の繰出速度が下限値よりも遅くなり、ロープ22がワークWの変位に追従することができなくなってしまうことで、ロープ22に作用する張力が高くなって過負荷が生じてしまうことを防ぐことができる。また、ロープ22の繰出速度が上限値よりも速くなり、必要以上にロープ22が繰出されて弛んでしまうことが防ぐことができる。
なお、上述した上限値は、上記のように算出することに限定されず、プレス2の圧下速度(プレス速度)の1/2に、予め定めておいた既定値を加えた値としても良い。
【0057】
以上説明したような第3実施形態に示される過負荷防止装置102Cによれば、制限手段103CがワークWから作用する荷重を許容範囲(目標繰出速度演算部72で設定されるロープ22の繰出速度の上限値〜下限値の範囲)内とするようにロープ22の張力(吊下げ特性値)を制限することで、鍛造クレーン101の吊下げ手段20に過負荷が生じず、また、ワークWを吊下げる吊下げ手段20のロープ22がたるんでしまうことなく、ロープ22を適切な張力でワークWを吊下げることが可能となる。
【0058】
なお、第3実施形態では、鍛造装置100のプレス作業を監視するために該鍛造装置100のプレス2に設けられた外部センサを、プレス速度検出センサ70として使用したが、過負荷防止装置102Cに、先の外部センサとは異なる専用のプレス速度検出センサを設けても良い。
【0059】
(第4の実施形態)
本発明の第4実施形態について図6を参照して説明する。第4実施形態に係わる過負荷防止装置102Dが、上記実施形態に係わる過負荷防止装置102A〜102Cと異なるのは、前記吊下げ手段20のロープ22の張力が所定値より大きくなると該ロープ22の繰出しを許容するように、該ロープ22の繰出し制御する制限手段としてブレーキ80が設けられている点である。
【0060】
このブレーキ80は、モータ駆動部25のモータ、又は該モータとドラム24との間に設置するもので、鍛造クレーン101の吊下げ手段20に作用する荷重が許容値以上となり、ロープ22に作用する張力(吊下げ特性値)が対応する張力となると、内部の摩擦板(図示略)が滑り始めるようなブレーキ摩擦力を過負荷上限値(基準値)として予め設定しておくものである。
【0061】
そして、このような過負荷防止装置102Dでは、ターニング装置30でワークWを保持し、これを吊下げ手段20によって吊下げながら、鍛造装置100のプレス2にて鍛造を行う際に、ワークWの変位によってワークWからターニング装置30を介して作用する負荷が変動し、これに応じて吊下げ手段20におけるロープ22の張力(吊下げ特性値)が変化することとなる。このときブレーキ80では、通常時は、鍛造装置100のプレス力により生じる負荷に対応したブレーキ力を発生させ、当該負荷を支持する。一方、鍛造装置100のプレス力により生じる負荷が、過負荷上限値として設定した許容値を超えた場合、すなわちロープ22に作用する張力(吊下げ特性値)が、過負荷上限値を超えた場合には、内部の摩擦板(図示略)の滑りにより、ロープ22の繰出しが許容される。これによって鍛造クレーン101の吊下げ手段20に過負荷が生じず、また、ワークWを吊り下げる吊下げ手段20のロープ22が弛んでしまうことなく、ロープ22を適切な張力としてワークWを吊下げることが可能となる。
【0062】
以上説明したような第4実施形態に示される過負荷防止装置102Dによれば、ロープ22に作用する張力(吊下げ特性値)が、過負荷上限値を超えた場合には、内部の摩擦板(図示略)の滑りにより、ロープ22の繰出しが許容されるように設定したので、鍛造クレーン101の吊下げ手段20には許容値以上の負荷がかからないようすることができる。これにより、鍛造クレーン101の吊下げ手段20に過負荷が生じてしまうことなく、また、ワークWを吊下げるロープが弛んでしまうことなく、ロープを適切な張力でワークWを吊下げることができる。
【0063】
上記実施形態では、吊下げ手段20において、滑車23と、走行ガータ12上のトロリー13及び吊具21との間には支持ばね26A、26Bを設けたが、支持ばね26A、26Bは必須ではなく、適宜、省略しても良い。また、上記実施形態では、過負荷防止装置は、各吊下げ手段20と対応させて設けられるものとしたが、これに限るものではなく、対をなす吊下げ手段20を共通の過負荷防止装置で制御するものとしても良い。また、吊下げ手段20は、対をなして設けられるものとしたが、これに限るものではなく、ワークWの軸部W1の一方のみを吊下げ手段20で吊下げて過負荷防止装置で制御を行うものとしても良い。この場合には、ワークWの軸部W1の他方については、把持機構を備えたロボットによって把持して支持し、鍛造装置100のプレスに応じて回転させるようにするなどすれば良い。
【0064】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係わる鍛造装置、鍛造クレーンを示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る過負荷防止装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る過負荷防止装置を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る過負荷防止装置を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るロープの目標繰出速度の上限値を設定するための演算手順を示す図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る過負荷防止装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0066】
10 支持部
20 吊下げ手段
30 ターニング装置(保持部)
22 ロープ
25 モータ駆動部(モータ)
40A〜40C 検出手段
41A〜41C 監視手段
42A〜42C 制御手段
72 荷重計
100 鍛造装置
101 鍛造クレーン
102A〜102D 過負荷防止装置
103A〜103C 制限手段
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持部と、該保持部をロープ及び該ロープを繰出すドラムにより上下移動可能に吊下げる吊下げ手段と、該吊下げ手段を支持する支持部とを備える鍛造クレーンに設けられる過負荷防止装置であって、
前記ワークから作用する負荷が予め設定された許容範囲内となるように、前記吊下げ手段によって前記保持部を介して前記ワークを吊下げる際に変化する吊下げ特性値の大きさを制限する制限手段を備えることを特徴とする過負荷防止装置。
【請求項2】
前記制限手段は、前記吊下げ手段での吊下げ特性値を検出する検出手段と、
該検出手段で検出された前記吊下げ特性値が前記ワークから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否か監視を行う監視手段と、
該監視手段による監視結果に基づいて吊下げ手段の駆動を制御する制御手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載の過負荷防止装置。
【請求項3】
前記検出手段は、ロープの張力を前記吊下げ特性値として検出する荷重計を有し、
前記監視手段は、前記荷重計で検出されたロープの張力が前記基準値を超えるか否かを監視することを特徴とする請求項2に記載の過負荷防止装置。
【請求項4】
前記吊下げ手段の前記ロープを支持する滑車を弾性的に支持する支持ばねを備え、
前記検出手段は、前記支持ばねの変位を吊下げ特性値として検出するばね変位計を有し、
前記監視手段は、前記ばね変位計で検出された支持ばねの変位が前記基準値を超えるか否かを監視することを特徴とする請求項2に記載の過負荷防止装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記吊下げ手段の前記ドラムを回転させるモータによるトルクを前記吊下げ特性値として検出し、
前記監視手段は、前記検出手段で検出された前記トルクが前記基準値を超えるか否かを監視することを特徴とする請求項2に記載の過負荷防止装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記吊下げ手段の前記ロープの繰出速度を前記吊下げ特性値として検出するロープ速度センサを有し、
前記監視手段は、前記ロープ速度センサで検出された前記繰出し速度が、前記基準値を超えるか否かを監視することを特徴とする請求項2に記載の過負荷防止装置。
【請求項7】
前記制限手段は、前記吊下げ特性値として前記吊下げ手段の前記ロープの張力が、前記ワークから作用する負荷の許容範囲と対応するように設定された基準値以下となるまで前記ロープの繰り出しを停止させるとともに、該基準値よりも大きくなると前記ロープの繰出しを許容するブレーキであることを特徴とする請求項1に記載の過負荷防止装置。
【請求項8】
ワークを保持する保持部と、該保持部をロープ及び該ロープを繰出すドラムにより上下移動可能に吊下げる吊下げ手段と、該吊下げ手段を支持する支持部とを備える鍛造クレーンにおいて、
前記ワークから作用する負荷が予め設定された許容範囲内となるように、前記吊下げ手段によって保持部を介してワークを吊下げる際に変化する吊下げ特性値の大きさを制限することを特徴とする鍛造クレーンの過負荷防止方法。
【請求項9】
ロープの張力を前記吊下げ特性値として検出するとともに、検出された前記ロープの張力が、前記ワークから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否かを監視し、該監視結果に基づいて吊下げ手段の駆動を制御することを特徴とする請求項8記載の鍛造クレーンの過負荷防止方法。
【請求項10】
前記ロープを支持する滑車を弾性的に支持する支持ばねの変位を吊下げ特性値として検出するとともに、検出された前記支持ばねの変位が、前記ワークから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否かを監視し、該監視結果に基づいて前記吊下げ手段の駆動を制御することを特徴とする請求項8記載の鍛造クレーンの過負荷防止方法。
【請求項11】
前記吊下げ手段の前記ドラムを回転させるモータによるトルクを前記吊下げ特性値として検出するとともに、検出された前記トルクが、前記ワークから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否かを監視し、該監視結果に基づき、前記吊下げ手段の駆動を制御することを特徴とする請求項8記載の鍛造クレーンの過負荷防止方法。
【請求項12】
前記吊下げ手段の前記ロープの繰出速度を前記吊下げ特性値として検出するとともに、検出された前記ロープの繰出速度が、前記ワークから作用する荷重の許容範囲と対応する基準値を超えるか否かを監視し、該監視結果に基づき、前記吊下げ手段の駆動を制御することを特徴とする請求項8記載の鍛造クレーンの過負荷防止方法。
【請求項13】
前記吊下げ特性値として前記吊下げ手段の前記ロープの張力が、前記ワークから作用する負荷の許容範囲と対応するように設定された基準値以下となるまで前記ロープの繰り出しを停止させるとともに、該基準値よりも大きくなったらと前記ロープの繰出しを許容するブレーキ制御を行うことを特徴とする請求項8記載の鍛造クレーンの過負荷防止方法。
【請求項14】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の過負荷防止装置を備えることを特徴とする鍛造クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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