説明

過電圧保護回路

【課題】
従来の過電圧保護回路は、ダイナミッククランプ電圧の設定値によっては回路が誤動作を生じる場合があった。
【解決手段】
本発明にかかる過電圧保護回路は、第1の電源101と出力端子106との間に接続される出力トランジスタ109と、出力端子106に接続される負荷112と、前記第1の電源101と出力端子106との間の電圧差を制限するダイナミッククランプ回路111と、ダイナミッククランプ回路111と出力端子106との間に電気的に接続され、基準電圧103と出力端子106の電圧との比較結果に基づいて導通状態が決定されるクランプ切換スイッチ110とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電圧保護回路に関し、特にL負荷を駆動する出力段のMOSトランジスタの過電圧保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車電装用のパワースイッチでは、サージ破壊耐圧向上の要求が大きくなっている。自動車電装用のパワースイッチの出力段には、例えば、ソレノイド等のインダクタンス(L)負荷、あるいはワイヤーハーネスのインダクタンス成分が接続される。パワースイッチの出力段にL負荷が接続された場合、ターンオフ時に逆起電力が発生して、出力端子に負電圧サージが加わる。この負電圧サージの電圧がパワースイッチの出力段のトランジスタの破壊耐圧を超える場合、出力段トランジスタがブレークダウンして、ブレークダウン電流が流れる。このブレークダウン電流によって、出力段トランジスタが劣化する問題がある。そのため、パワースイッチは、一般的に過電圧保護回路(例えば、ダイナミッククランプ回路)を用いて出力段トランジスタの過電圧保護を行う。この過電圧保護回路の一例(従来例1)を図2に示す。
【0003】
図2に示す従来例1にかかる過電圧保護回路500は、出力MOSトランジスタ508のドレインが第1の電源(例えば、バッテリー電圧:Vbat)501に接続され、ソースが負荷509を介して第2の電源502に接続されている。出力MOSトランジスタ508と負荷509との間の接続点には出力端子505が接続されている。出力MOSトランジスタ508のゲートには、ゲート抵抗506の一方の端子が接続されている。ゲート抵抗506の他方の端子には第1の制御信号503が入力されている。
【0004】
また、ゲート抵抗506の他方の端子と出力端子505との間にはゲート電荷放電回路507が接続されている。ゲート電荷放電回路507は、1つのMOSトランジスタを使用しており、MOSトランジスタのドレインがゲート抵抗506に接続され、ソースが出力端子505に接続されており、ゲートには第2の制御信号504が入力されている。出力MOSトランジスタ508のゲートと第1の電源501との間には、ダイナミッククランプ回路510が接続されている。ダイナミッククランプ回路510は、ツェナーダイオード511とダイオード512とが直列に接続されている。
【0005】
過電圧保護回路500は、第1の制御信号503によって、出力MOSトランジスタ508を導通、あるいは非導通状態に制御する。ここで、出力MOSトランジスタ508が非導通状態である場合、第2の制御信号504はゲート電荷放電回路507を導通状態として、ゲートの電荷を負荷側に放電する。つまり、第1の制御信号503と第2の制御信号504とは、互いに逆相となる信号である。
【0006】
また、出力MOSトランジスタ508がターンオフし、負荷509がL成分を伴う場合、出力端子には、図3に示すような逆起電力が発生する。過電圧保護回路500は、このような逆起電力が発生した場合、ダイナミッククランプ回路510を動作させることで、出力MOSトランジスタ508を保護する。
【0007】
この保護動作について説明する。逆起電力が発生し、出力端子505に負電圧が発生すると、ゲート電荷放電回路507が導通状態であるために、出力MOSトランジスタ508のゲートの電圧も負電圧となる。この負電圧の値と第1の電源501との電圧差が、設定されたダイナミッククランプ電圧よりも大きくなると、ダイナミッククランプ回路が動作し、出力MOSトランジスタ508のドレイン−ゲート間は、ダイナミッククランプ電圧に制限される。このとき、出力MOSトランジスタ508は導通状態となっている。従って、出力MOSトランジスタ508のドレイン−ソース間の電圧はダイナミッククランプ電圧と出力MOSトランジスタ508の閾値電圧を足した値となる。これによって、出力MOSトランジスタ508のチャネル抵抗を利用して負荷509に電流を流しながら、出力MOSトランジスタ508のソース−ドレイン間の電圧を抑制することで、素子の過電圧保護を行う。
【0008】
しかしながら、過電圧保護回路500には、第1の電源501にダンプサージと呼ばれるサージが加わる場合がある。ダンプサージは、バッテリー端子がオルタネータの発電中に外れた場合に、第1の電源501に正電圧として印加されるサージである。このダンプサージを図4に示す。このサージ電圧がダイナミッククランプ電圧よりも大きい場合、出力MOSトランジスタ508が導通状態となる。これによって、出力MOSトランジスタ508に大電流が流れ、熱破壊を起こす可能性がある。ダンプサージ電圧がダイナミッククランプ電圧よりも大きい場合の、第1の電源501と出力MOSトランジスタ508のゲート電圧との関係及びその場合に出力MOSトランジスタ508に流れる電流を図5に示す。図5において、斜線で示す領域で、出力MOSトランジスタ508のゲート電圧が上昇している。また、その区間で大電流が、出力MOSトランジスタ508に流れている。
【0009】
上記問題を解決するためには、ダイナミッククランプ電圧の設定条件が以下の条件を満たす必要がある。
(1)出力MOSトランジスタの耐圧>ダイナミッククランプ電圧>ダンプサージ電圧
(2)ダンプサージ電圧>絶対最大定格
【0010】
しかしながら、ダンプサージ電圧と出力MOSトランジスタの耐圧との差が無い場合、ダイナミッククランプ回路510のバラツキにより、適切なダイナミッククランプ電圧の設定が困難である問題がある。これらの電圧の関係を図6に示す。そこで、特許文献1に上記(1)の制限を受けない過電圧保護回路(従来例2)が開示されている。従来例2にかかる過電圧保護回路600を図7に示す。
【0011】
図7に示すように、過電圧保護回路600は、過電圧保護回路500に対して、ダイナミッククランプ回路510と第1の電源501との間に制御スイッチ601が接続さている。また、制御スイッチ601を制御するサージ検出回路602が、制御スイッチ601のゲートと第1の電源501との間に接続されている。ここで、サージ検出回路602は、ダイナミッククランプ電圧よりも高いダンプサージ電圧を検出する回路である。また、制御スイッチ601は、サージ検出回路602がダイナミッククランプ電圧より高いダンプサージ電圧を検出した場合に非導通状態となるスイッチである。
【0012】
過電圧保護回路600は、負電圧サージに対しては、過電圧保護回路500と実質的に同様の動作をする。また、ダンプサージが印加された場合は、サージ検出回路602がダンプサージ電圧を検出して、制御スイッチ601を非導通状態とすることで、ダイナミッククランプ回路510が動作しないようにする。
【0013】
これによって、ダイナミッククランプ電圧よりも高いダンプサージ電圧が第1の電源501に印加された場合、ダイナミッククランプ回路510を無効にできるため、出力MOSトランジスタ508が導通状態となることはない。つまり、出力MOSトランジスタ508に大電流が流れることがなく、出力MOSトランジスタ508の熱破壊を防ぐことが可能である。ここで、出力MOSトランジスタ508の破壊耐圧はダンプサージ電圧よりも高く設計されているため、出力MOSトランジスタ508が破壊することはない。
【0014】
また、サージ検出回路602が、ダイナミッククランプ電圧よりも高いダンプサージ電圧を検出して、ダイナミッククランプ回路510を無効にするため、上記(1)の制限を受けることなくダイナミッククランプ電圧を設定することが可能である。
【0015】
しかしながら、過電圧保護回路600によっても、絶対最大定格とダイナミッククランプ電圧との差がない場合、回路動作に不具合が生じる問題がある。例えば、ダイナミッククランプ電圧が低い側にばらついた場合、サージ検出電圧が実際のダイナミッククランプ電圧よりも高くなり、絶対最大定格よりも小さなダンプサージ電圧であるにもかかわらずダイナミッククランプ回路510が動作してしまい、回路がダンプサージによって破壊される可能性がある。また、サージ検出回路602のための論理回路が必要になるため回路の素子数が増大する問題があった。
【特許文献1】特開2005−109162号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来の過電圧保護回路は、ダイナミッククランプ電圧の設定値によっては回路が誤動作を生じる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明にかかる過電圧保護回路は、第1の電源と出力端子との間に接続される出力トランジスタと、前記出力端子に接続される負荷と、前記第1の電源と前記出力端子との間の電圧差を制限するダイナミッククランプ回路と、前記ダイナミッククランプ回路と前記出力端子との間に電気的に接続され、基準電圧と前記出力端子の電圧との比較結果に基づいて導通状態が決定されるクランプ切換スイッチとを有するものである。
【0018】
本発明にかかる過電圧保護回路によれば、基準電圧と出力端子の電圧とを比較して、出力端子が負電圧になった場合は、クランプ切換スイッチが導通状態となり、ダイナミッククランプ回路を動作させる。これによって、絶対最大定格及びダンプサージ電圧がいかなる電圧であったとしても、出力端子に負電圧が発生しない場合には、クランプ切換スイッチは非導通状態であるため、ダイナミッククランプ回路は動作しない。
【0019】
従って、出力端子に負電圧が発生した場合には、ダイナミッククランプ回路が動作し、第1の電源と出力端子との間の電圧を適切なダイナミッククランプ電圧に制限するため、出力トランジスタを過電圧から保護することが可能である。また、ダンプサージが発生した場合に、ダイナミッククランプ回路が誤動作することはない。
【0020】
さらに、ダイナミッククランプ回路は出力端子に負電圧が発生しなければ動作しないために、ダイナミッククランプ電圧の設定値を絶対最大定格及びダンプサージ電圧の制限を受けることなく、任意に設定することが可能である。これによって、ダイナミッククランプ電圧の設定範囲が広くなり、容易に設定することが可能になる。
【0021】
また、ダイナミッククランプ回路及びクランプ切換スイッチは1つの素子にて実現可能であるため、回路面積を削減することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の過電圧保護回路によれは、ダイナミッククランプ電圧を任意に設定しつつ、回路の誤動作を防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施の形態1
実施の形態1にかかる過電圧保護回路100を図1に示す。図1に示すように、過電圧保護回路100は、ゲート電荷放電回路108、ゲート抵抗107、出力MOSトランジスタ109、クランプ切換スイッチ110、ダイナミッククランプ回路111、負荷112を有している。過電圧保護回路100の接続について詳細に説明する。
【0024】
出力MOSトランジスタ109の第1の端子(例えば、ドレイン)は第1の電源(例えば、バッテリー電源)101に接続されており、第2の端子(例えば、ソース)は負荷112を介して第2の電源(例えば、接地電位)102に接続されている。出力MOSトランジスタ109と負荷112との間の接続点には出力端子106が接続されている。また、出力MOSトランジスタ109の制御端子(例えば、ゲート)はゲート抵抗107の一端が接続されている。ゲート抵抗107の他の一端には、第1の制御信号104が入力され、さらにゲート抵抗107の他の一端と出力端子106との間にはゲート電荷放電回路108が接続されている。ゲート電荷放電回路108は、本実施の形態では、1つのMOSトランジスタである。ゲート電荷放電回路108のドレインは、ゲート抵抗107の他の一端に接続されており、ソースは出力端子106に接続されている。また、ゲート電荷放電回路108のゲートには、第2の制御信号105が入力されている。
【0025】
また、出力MOSトランジスタ109のゲートとバッテリー電源101との間にはクランプ切換スイッチ110とダイナミッククランプ回路111が直列に接続されている。本実施の形態では、クランプ切換スイッチ110は、1つのMOSトランジスタであり、ダイナミッククランプ回路111は、1つのツェナーダイオードである。
【0026】
クランプ切換スイッチ110は、ソースが出力トランジスタ109のゲートに接続され、ドレインがダイナミッククランプ回路111のアノードに接続されており、制御端子(例えば、ゲート)は基準電圧(例えば、接地電位)103に接続されている。さらに、本実施の形態では、クランプ切換スイッチ110の基板端子は、出力端子に接続されている。また、ダイナミッククランプ回路111のカソードは、バッテリー電源101に接続されている。
【0027】
クランプ切換スイッチ110は、2つの電圧の比較結果に基づいて、導通状態と非導通状態とが切り換わるスイッチである。例えば、接地電位と出力MOSトランジスタ109のゲート電圧とを比較して、2つの電圧の差がクランプ切換スイッチ110であるMOSトランジスタの閾値以上となった場合に導通状態となるスイッチである。
【0028】
ダイナミッククランプ回路111は、アノード−カソード間の電圧差がダイオードの降伏電圧以上になった場合に、アノード−カソード間の電圧差を所定の電圧値(例えば、ダイナミッククランプ電圧)以下に制限する回路である。
【0029】
負荷112は、ソレノイド等のインダクタンス成分を有するL負荷、あるいは出力端子に接続されるワイヤーハーネスのインダクタンス成分である。
【0030】
過電圧保護回路100の動作について詳細に説明する。ここで、過電圧保護回路100は、出力MOSトランジスタ109が導通状態になり、負荷112によって出力端子106に電圧を発生する導通モードと、出力MOSトランジスタ109が非導通状態になるターンオフ時に出力端子106に負電圧サージが発生する負電圧サージモード、バッテリーの端子がオルタネータの発電中にはずれることによってバッテリー電源101に正電圧サージ(ダンプサージ)が発生するダンプサージモードとがある。この3つのモードに分けて過電圧保護回路100の動作を説明する。
【0031】
まず、導通モードでは、第1の制御信号104がHighレベルとなると、出力MOSトランジスタ109が導通状態となる。第1の制御信号104のHighレベル信号は、出力MOSトランジスタ109を低チャネル抵抗で導通状態とするため、例えばバッテリー電源を昇圧した電圧である。これによって、負荷112に電圧が発生して、出力端子106から電圧を出力する。また、この場合、ゲート電荷放電回路108は、第1の制御信号104とは逆相となる第2の制御信号105によって制御される。第2の制御信号105のLowレベルは、例えば接地電位である。第2の制御信号105がLowレベルであった場合、ゲート電荷放電回路108は非導通状態となる。
【0032】
ここで、導通モードの場合、クランプ切換スイッチ110のゲート電圧が接地電位であるため、出力MOSトランジスタ109のゲート電圧の値によらず、クランプ切換スイッチ110は非導通状態となる。従って、出力MOSトランジスタ109のゲートとダイナミッククランプ回路111とは、切断された状態であって、出力MOSトランジスタ109のゲートからバッテリー電源101側に電流は流れない。つまり、クランプ切換スイッチ110は、出力MOSトランジスタ109のゲートからバッテリー電源101への電流の逆流防止機能も有している。
【0033】
負電圧サージモードの動作について説明する。負電圧サージは、出力MOSトランジスタ109が非導通状態になるターンオフ時に発生する。この場合、第1の制御信号104は、Lowレベルであり、第2の制御信号105は、Highレベルである。ここで、第1の制御信号104のLowレベルは、例えば接地電位であって、第2の制御信号105のHighレベルは、バッテリー電源の電圧である。
【0034】
第2の制御信号105がHighレベルである場合、ゲート電荷放電回路108は導通状態である。従って、出力MOSトランジスタ109のゲート電荷は、ゲート抵抗107とゲート電荷放電回路108を介して放電される。ここで、出力MOSトランジスタ109が非導通状態となるため、負荷112のL成分が負電圧サージを発生させる。そのとき、クランプ切換スイッチ110は、ゲート抵抗107とゲート電荷放電回路108とを介して出力端子106と電気的に接続される。ここで、出力MOSトランジスタ109が非導通状態となるため、負荷112のL成分が負電圧サージを発生させる。
【0035】
この負電圧が発生すると、出力端子106の電圧が降下する。ここで、ゲート電荷放電回路108が導通状態である。このため、出力端子106の電圧と出力MOSトランジスタ109のゲートの電圧とは、実質的に同じ電圧となり、出力端子106の電圧降下に基づいて出力MOSトランジスタ109のゲートの電圧も降下する。クランプ切換スイッチ110のゲート電圧と出力MOSトランジスタ109のゲートとの電位差がクランプ切換スイッチ110の閾値を上回ると、クランプ切換スイッチ110は導通状態となる。その後、さらに出力MOSトランジスタ109のゲートの電圧が降下し、ダイナミッククランプ回路111の両端の電位差が、ダイナミッククランプ回路の降伏電圧以上になると、ダイナミッククランプ回路111の両端にダイナミッククランプ電圧が発生する。また、出力MOSトランジスタ109は導通状態となる。これによって、出力MOSトランジスタ109のドレイン−ゲート間電圧は、ダイナミッククランプ電圧によって制限される。さらに、出力MOSトランジスタ109のドレイン−ソース間の電圧は、ダイナミッククランプ電圧と出力MOSトランジスタ109の閾値電圧を足し合わせた電圧値によって制限される。
【0036】
この場合、出力MOSトランジスタ109は導通状態であるため、負荷の抵抗成分で決まる電流がドレイン−ソース間に流れる。つまり、出力MOSトランジスタ109の消費電力は、ダイナミッククランプ電圧×負荷の抵抗成分で決まる電流値となる。負荷の抵抗成分は、この消費電力によって、出力MOSトランジスタ109が熱破壊しないように設定されている。また、出力MOSトランジスタ109の閾値電圧をゲート抵抗107の抵抗値で割ることで求まる電流がダイナミッククランプ回路に流れる。この電流は、例えば数十μA程度である。
【0037】
次に、ダンプサージモードの動作について説明する。ダンプサージがバッテリー電源101に印加され、バッテリー電源101の電圧が上昇する。この場合、クランプ切換スイッチ110のゲート電圧は接地電位となっており、出力端子106は、正電圧であるため、クランプ切換スイッチ110は、非導通状態となる。つまり、出力MOSトランジスタ109のゲートとバッテリー電源101は切り離されるため、出力MOSトランジスタ109のゲート電圧は、バッテリー電源101の電圧変動の影響を受けることはない。つまり、出力MOSトランジスタ109は、非導通状態となる。
【0038】
これによって、出力MOSトランジスタ109は、非導通状態であって、ソース−ドレイン間の電圧がダンプサージ電圧となる。ここで、出力MOSトランジスタ109のドレイン−ゲート間の耐圧、及び、ドレイン−ソース間の耐圧は、一般的にダンプサージ電圧よりも高くなるように設計されているため、ダンプサージによって出力MOSトランジスタ109が破壊されることはない。
【0039】
上述の説明より、実施の形態1にかかる過電圧保護回路100によれば、負電圧モードの出力端子106の変化に基づいて、クランプ切換スイッチ110を導通状態とすることで、ダイナミッククランプ回路111を動作させて負電圧サージから出力MOSトランジスタ109を保護する。また、導通モードとダンプサージモードの場合には、出力端子106が負電圧を発生しないことから、クランプ切換スイッチ110は非導通状態となり、ダイナミッククランプ回路111を無効にする。つまり、過電圧保護回路100は、出力端子106の電圧が負電圧となった場合に、ダイナミッククランプ回路111による出力MOSトランジスタ109の保護を行い、その他のモードでは、ダイナミッククランプ回路を使わずに出力MOSトランジスタ109の耐圧によって破壊を防ぐ回路である。
【0040】
従来の過電圧保護回路600では、バッテリー電源をサージ検出回路602が監視し、サージ検出電圧が絶対最大定格以上であった場合に、制御スイッチ601を非導通状態とすることで、ダンプサージが印加された場合にダイナミッククランプ回路を無効にしていた。また、サージ検出回路は、バッテリー電源の電圧がダイナミッククランプ電圧の設定電圧値以下でダンプサージ電圧を検出する必要がある。従って、従来の過電圧保護回路600のサージ検出電圧値は、絶対最大定格以上であって、ダイナミッククランプ電圧の設定値以下にしなければならない制限があった。
【0041】
これに対して、実施の形態1にかかる過電圧保護回路100は、導通モードとダンプサージモードでは、クランプ切換スイッチ110は非導通状態であって、負電圧モードで発生する出力端子106の負電圧サージに基づいてクランプ切換スイッチ110を導通状態とする。従って、ダイナミッククランプ電圧の設定値は、絶対最大定格及びダンプサージ電圧の制限を受けることなく、出力MOSトランジスタ109の耐圧を考慮したダイナミッククランプ電圧値を任意に設定することが可能である。
【0042】
また、実施の形態1にかかる過電圧保護回路100のクランプ切換スイッチ110は接地電位と出力端子106の負電圧とを比較して、出力端子106が所定の負電圧を下回った場合にダイナミッククランプ回路を動作させている。そのため、導通モードとダンプサージモードにおいて誤動作することはない。
【0043】
さらに、従来の過電圧保護回路600では、サージ検出回路602を構成するために複数の素子を利用した回路が必要である。また、出力MOSトランジスタ508のゲートからバッテリー電源への逆流を防ぐためにダイナミッククランプ回路には2つのダイオードが必要であった。これに対して、実施の形態1にかかる過電圧保護回路100は、1つのトランジスタで負電圧の検出とスイッチを実現している。また、クランプ切換スイッチ110は導通モードとダンプサージモードとで非導通状態であるため、出力MOSトランジスタ109のゲートからバッテリー電源への電流の流出がないため、ダイナミッククランプ回路は1つのダイオードで構成することが可能である。従って、実施の形態1にかかる過電圧保護回路100は、従来の過電圧保護回路600よりも回路規模を削減することが可能である。
【0044】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものでなく、適宜変更することが可能である。例えば、コンパレータを用いて、所定の電圧と出力端子の電圧とを比較し、出力端子の負電圧を検出することで、ダイナミッククランプ回路を有効にすることも可能である。また、バイポーラトランジスタに置き換えて、回路を構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施の形態1にかかる過電圧保護回路を示す図である。
【図2】従来例1にかかる過電圧保護回路を示す図である。
【図3】負電圧サージの電圧波形を示すグラフである。
【図4】ダンプサージの電圧波形を示すグラフである。
【図5】ダンプサージとダイナミッククランプ電圧の関係を示す図である。
【図6】絶対最大定格と出力MOSの耐圧とダンプサージ電圧との関係を示すグラフである。
【図7】従来例2にかかる過電圧保護回路を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
100 過電圧保護回路
101 第1の電源
102 第2の電源
103 基準電圧
104 第1の制御信号
105 第2の制御信号
106 出力端子
107 ゲート抵抗
108 ゲート電荷放電回路
109 出力MOSトランジスタ
110 クランプ切換スイッチ
111 ダイナミッククランプ回路
112 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源と出力端子との間に接続される出力トランジスタと、
前記出力端子に接続される負荷と、
前記第1の電源と前記出力端子との間の電圧差を制限するダイナミッククランプ回路と、
前記ダイナミッククランプ回路と前記出力端子との間に電気的に接続され、基準電圧と前記出力端子の電圧との比較結果に基づいて導通状態が決定されるクランプ切換スイッチとを有する過電圧保護回路。
【請求項2】
請求項1に記載の過電圧保護回路は、さらに前記出力トランジスタのゲート端子と前記出力端子との間にゲート抵抗とゲート電荷放電回路とが直列に接続され、前記ゲート電荷放電回路は、前記出力端子に負電圧が発生している場合に導通状態であることを特徴とする請求項1に記載の過電圧保護回路。
【請求項3】
前記クランプ切換スイッチは、前記出力端子の電圧が基準電圧よりも低くなった場合に導通状態となることを特徴とする請求項1又は2に記載の過電圧保護回路。
【請求項4】
前記クランプ切換スイッチは、1つのトランジスタであって、前記トランジスタのゲート端子には前記基準電圧が接続され、基板端子には前記出力端子が電気的に接続され、ドレイン端子には前記ダイナミッククランプ回路が接続され、ソース端子には前記出力トランジスタのゲート端子が接続されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の過電圧保護回路。
【請求項5】
前記ダイナミッククランプ回路は、カソードが前記第1の電源に接続され、アノードが前記クランプ切換スイッチに接続されているダイオードであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の過電圧保護回路。
【請求項6】
前記基準電圧は、接地電位であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の過電圧保護回路。
【請求項7】
前記出力トランジスタは、前記ゲート抵抗を介して入力される第1の制御信号によって制御されることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の過電圧保護回路。
【請求項8】
前記ゲート電荷放電回路は、前記第1の制御信号とは逆相となる第2の制御信号によって制御されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の過電圧保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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