説明

道路反射鏡の結露防止方法および道路反射鏡

【課題】 ヒータその他の鏡面加温手段を有することを特徴とする結露防止機能付きの道路反射鏡において、鏡面加温手段に対する通電時間を必要最小限に抑制し、太陽光発電パネルおよびバッテリの小容量化、低コスト化、メンテナンスフリー化を図る。
【解決手段】 道路反射鏡に露点計または外気温センサS1と、鏡面温度センサS3とを取り付ける。検出された露点と鏡面温度とを比較し、または、検出された外気温と鏡面温度とを比較し、鏡面温度が露点または外気温から予測される露点を下回らない最小限の範囲で鏡面加温手段Eに通電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昼間における太陽光発電パネルによる発電電力をバッテリその他の蓄電素子に蓄え、蓄えた電力によって夜間にヒータその他の鏡面加温手段を駆動することによって結露を防止するようにしてなる道路反射鏡の結露防止方法および道路反射鏡の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の急カーブ箇所やT字交差箇所には、鏡面による反射影像によって安全確認をすることができるように道路反射鏡が設置されている。この道路反射鏡に関しては、気象条件によって結露や、結露が氷結して形成される着霜によって反射影像が不鮮明または結像不能となり、安全確認機能が一時的に損なわれる現象が発生することが旧来より問題視され、多様な結露防止策が提案されている(下記先行技術文献欄の特許文献1ないし6参照)。
【0003】
結露の発生には、結露発生対象物の物理的または化学的表面性状や熱伝導率の大小、風の有無、周辺建築物の状況等の周辺環境等も関連する複雑な問題があるが、基本的には、鏡面が周辺の自然空気の露点以下に低下することによって発生する。具体的には、道路反射鏡の鏡面に接触した空気が急速に露点以下に冷やされ、飽和状態となった水蒸気が微細な水滴となって鏡面に露出することによって結露が発生するのである。
【0004】
道路反射鏡における結露発生が、上記のような発生メカニズムに基づくものであることから、結露の防止対策としては、結露が発生しやすい時間帯における鏡面の温度を露点以上の温度に維持するという基本的な結露防止対策を考えることができる。
【0005】
鏡面温度を露点以上に維持するという上記の考え方を実現するための最も端的かつ一般的な結露防止方法としては、鏡面の裏面側にヒータを添設し、このヒータを昼間に太陽光発電パネルによって充電しておいたバッテリによって駆動する方法が知られている(特許文献2参照)。
【0006】
当社においても、従来、鏡面温度を露点以上に維持するという考え方に基づいて試作研究を進めているところであるが、当社の結露防止方法の幾つかは、いずれも当社独自の発想に基づくものである。例えば、結露が発生するような気象条件下においては、温度の異なる空気が層状に滞在することに着目し、相対的に高温となる鏡面より上空位置の空気を電動ファンを用いて鏡面の裏面側に供給することによって鏡面温度を露点以上に維持することができる(特許文献5参照)。
【0007】
また、道路反射鏡の鏡面と裏蓋との間に気密性の高い略閉じられた空間が形成されているという一般的な条件を前提として、結露が発生するような気象条件下においては、その気密空間内の温度低下が、明け方に向かっての外気温の刻時的低下に遅れて生じることに着目し、電動ファンを用いて気密空間内の空気を撹拌し、鏡面温度を気密空間内の温度と同等に、つまり外気温より高く保つという方法によって鏡面温度を露点以上に維持することができる(特許文献6参照)。
【0008】
参考に供した上記従来の道路反射鏡の結露防止方法においては、当社の従来技術を含めていずれも、太陽光発電パネルによって昼間に発電した電気をバッテリ等の蓄電素子に蓄電し、蓄電した電気を利用して夜間にヒータ等の鏡面加温手段を駆動するという基本的な充放電サイクルが採用されている。
【0009】
上記のような結露防止方法およびその方法の使用する結露防止装置については、この結露防止装置および結露防止機能が、道路反射鏡の付帯機能または付帯装置であることによって、次のような問題が指摘されている。
【0010】
結露防止機能付き道路反射鏡について指摘される問題としては、結露防止機能を備えない道路反射鏡に対して大幅なコスト高となることが挙げられる。
【0011】
コスト高の問題は、特定の素子に起因するものではなく、結露を防止するための機能上必要とされる、太陽光発電パネル、蓄電素子、鏡面加温手段、充放電制御回路等のコストが累積的に原因することによって惹起される問題である。したがって、この問題は、特定の素子に対する手当てによって解決することができる問題ではなく、その解決のためには、結露防止機能を奏するための上記のすべての構成部材について、コストを抑えるための小型化ないし小容量化を達成する必要がある。
【0012】
結露防止機能付きの道路反射鏡について指摘される別の問題としては、主に道路周辺景観の観点からの問題がある。
【0013】
道路管理主体または都市計画主体の思わくにかかわらず、今日における道路周辺景観は煩雑化の一途を辿り、ドライバーに不要の運転疲労を強いる状況となっている。道路周辺景観の簡素化の要請は、道路反射鏡についても例外ではない。道路反射鏡の理想的な設置形態は、鏡面のみで存在することである。これは、できるだけドライバーの視野を遮らないでドライバーに必要な反射影像を提供するという道路反射鏡本来の要請による。しかし、鏡面のみを設置することができないことから、実際には必要最小限の支持ポール1本を用いたシンプルな外観の設置形態が採られている。この点に関し、従来の結露防止機能付き道路反射鏡における太陽光発電パネルが道路周辺景観を煩雑化させるという問題がある。
【0014】
この問題を解決するには、太陽光発電パネルのサイズを目立たないサイズに抑えることが必要である。そして、太陽光発電パネルのサイズを抑えたいという要請は、最終的には、鏡面加温手段に対する消費電力の削減、および通電時間の最小限管理に対する要請となる。
【0015】
従来の結露防止機能付きの道路反射鏡における通電時間の管理方法としては、日照センサによる昼夜判別による夜間連続通電方法、温度センサによる特定の設定温度の検出による設定温度以下連続通電方法、湿度センサによる特定の設定湿度の検出による設定湿度以上連続通電方法が代表的である。
【0016】
しかし、上記のような従来の通電管理方法においては、鏡面結露の発生とは直接的な因果関係に立たない昼夜の別、特定の温度、特定の湿度を通電条件としていることにより、換言すれば、結露が発生するおそれがないか、または、おそれがない状態に至っているにもかかわらず、鏡面加温手段によって無駄な電力が大量に消費されることとなり、この無駄な電力に基づいて蓄電素子の容量や太陽光発電パネルのサイズが決定されるという矛盾があった。
【0017】
なお、この問題に対しては、道路反射鏡の鏡面とは別に、その鏡面より早期に結露が発生しやすい環境においた結露検出用の鏡面を設置し、検出用の鏡面の結露を検出して道路反射鏡の結露を予測し、道路反射鏡のヒータに通電するとともに、検出用の鏡面の結露を道路反射鏡のヒータと同じ能力を有するヒータによって除去し、その除去完了をもって道路反射鏡の結露が除去されたことを検出し、通電を停止することによって消費電力の無駄を抑える方法が、従前より本願の発明者らによって提案されていた(特許文献7参照)。しかし、この方法では、鏡面加温手段の消費電力を大幅に削減することには成功したが、結露予測システム等の構成の複雑さ等の問題があり、利害得失合い半ばという面があった。
【0018】
さらに、結露防止機能付きの道路反射鏡については、耐用期間の観点からの問題が指摘されている。道路反射鏡自体の耐用期間としては、略10年のノーメンテナンス耐用期間が望まれるところであるが、この耐用期間が、道路反射鏡に結露防止機能を付加することによって大幅に短縮するという問題があるのである。この問題は、結露防止機能付き道路反射鏡のコスト高の問題と並んで、結露防止機能付きの道路反射鏡の普及を促進する上において、業界としては何としても解決したい深刻な問題である。
【0019】
上記耐用期間短縮の問題およびは、専ら蓄電素子の耐用期間に帰着する問題である。現在使用されている蓄電素子の主流は、鉛シール電池に代表される化学電池である。この鉛系の化学電池の耐用期間は、使用状況によっても異なるが、鏡面加温手段のヒータのような重い負荷を長時間連続駆動するような用途においては、3〜4年である。つまり、結露防止機能付き道路反射鏡を10年間使用するには、使用期間の途中で少なくとも1〜2回の電池交換が必要とされることになる。これは、道路管理者においても供給業者においても大きな負担とならざるを得ない。なお、技術問題としては、鉛シール電池以外の化学電池も使用可能であるが、必要とされる蓄電容量とコストとの経済的理由によって使用が躊躇されているのが現実である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平7−229113号公報
【特許文献2】特開平11−217806号公報
【特許文献3】特許第3628364号公報
【特許文献4】特許第3634630号公報
【特許文献5】特開2002−105915号公報
【特許文献6】特許第4382870号公報
【特許文献7】特開平8−209637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上記従来の結露防止機能付きの道路反射鏡における問題点の分析の結果、すべての問題点か最終的に鏡面加温手段の駆動に要する電力の削減の問題に帰着するとともに、この問題を解決することによって結露防止機能付きの道路反射鏡に対する要望事項も概ね同時に解決されることになるという結論に基づき、鏡面加温手段の対する通電の条件として、結露の発生と直接的な因果関係を有する条件を採用することにより、鏡面加温手段の消費電力を極力抑えることを直接的な課題とし、これによって結果的に結露防止機能付きの道路反射鏡のコスト削減、外観の簡素化および所定期間のメンテナンスフリー化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するための本発明は、次のような構成を採用する。
【0023】
(解決手段1)
本発明の道路反射鏡の結露防止方法は、太陽光発電パネルと蓄電素子と鏡面を加温する鏡面加温手段とを備え、太陽光発電パネルによって昼間に発電した電気を蓄電素子に蓄電するとともに、蓄電素子に蓄電した電気を夜間に鏡面加温手段に通電して鏡面結露を防止するようにしてなる道路反射鏡の結露防止方法において、道路反射鏡に露点計と鏡面温度を検出する鏡面温度センサとを取り付けて露点と鏡面温度とを検出し、検出された鏡面温度が検出された露点を下回らない範囲で鏡面加温手段に通電することによって、鏡面温度を露点の変化に沿って追随制御することを特徴とする。
【0024】
上記道路反射鏡の結露防止方法においては、蓄電素子から鏡面加温手段への電力は、鏡面温度センサによって検出された鏡面温度が露点計によって検出された露点を下回らないことを条件として、かつ、露点の変化に沿って追随するように供給される。この結果、鏡面加温手段に対する電力供給を、鏡面温度が露点に近い温度であって、しかも露点を下回らない必要最小限に制限することができる。
【0025】
なお、上記構成は、安価で安定性の高いデジタル式露点計の普及を背景とするものである。また、本結露防止方法においては、鏡面温度と露点とができるだけ接近するように追随制御することが鏡面加温手段の消費電力を削減する上でより効果的であるが、本発明の目的との関係においては、厳密な追随制御は必要ではなく、簡易な比較制御で足りる。
【0026】
(解決手段2)
本発明の道路反射鏡の結露防止方法は、太陽光発電パネルと蓄電素子と鏡面を加温する鏡面加温手段とを備え、太陽光発電パネルによって昼間に発電した電気を蓄電素子に蓄電するとともに、蓄電素子に蓄電した電気を夜間に鏡面加温手段に通電して鏡面結露を防止するようにしてなる道路反射鏡の結露防止方法において、道路反射鏡に外気温センサと鏡面温度を検出する鏡面温度センサとを取り付けて外気温と鏡面温度とを検出し、検出された鏡面温度が検出された外気温を上回らず、かつ鏡面に結露を生じさせないための所定の安全温度幅を超えて下回らない範囲で鏡面加温手段に通電することによって、鏡面温度を外気温の変化に沿って追随制御することを特徴とする。
【0027】
上記道路反射鏡の結露防止方法を解決手段1に記載の方法との違いの観点から説明すると、解決手段1においては、鏡面温度を露点に沿って追随制御しているが、本結露防止方法においては、鏡面温度を外気温の変化に沿って追随制御することが特徴となる。また、外気温に対する追随の態様については、鏡面温度が検出された外気温を上回らず、かつ鏡面に結露を生じさせないための所定の安全温度幅を超えて下回らない範囲において鏡面加温手段に通電することが特徴となる。この結果、鏡面加温手段に対する通電時間は、鏡面温度が、外気温以下の一定範囲に設定される安全温度幅内、つまり、鏡面結露を生じさせない最小限の範囲に制限される。
【0028】
(解決手段3)
本発明の道路反射鏡の結露防止方法は、上記解決手段1または解決手段2に記載の結露防止方法を基本発明として、各発明における所定の安全温度幅が、鏡面に結露が発生した気象条件下における外気温の観測データに基づいて結露を生じさせないと見込まれる一定の温度幅、または結露を生じさせないと見込まれる一定の温度比率として設定することを特徴とする。
【0029】
上記結露防止方法は、結露が発生する気象条件に共通点が見られることに着目し、過去の結露発生気象条件の下における外気温の変化と露点の観測データに基づく統計結果としての結露を生じさせないと見込まれる一定の温度幅を外気温対する固定値の安全温度幅として、または外気温に対する一定の比率による安全温度幅として設定することによって、結露が生じないという統計に基づきながら、外気温より低い安全温度幅内の鏡面温度で鏡面加温手段を駆動することで事実上結露を防止することができるので、鏡面加温手段の消費電力量をより削減することが可能である。なお、この安全温度幅は、そのときの外気温と、その外気温から過去のデータに基づいて予測される露点との間の温度であって、露点を超える範囲の温度幅であるということができる。
【0030】
上記本発明の道路反射鏡の結露防止方法を具体的な道路反射鏡に適用したものが本発明の道路反射鏡である(下記解決手段4ないし7)。
【0031】
(解決手段4)
本発明の道路反射鏡は、太陽光発電パネルと、太陽光発電パネルによって充電する蓄電素子と、蓄電素子によって駆動する鏡面加温手段と、露点計と、鏡面温度を検出する鏡面温度センサと、充放電コントローラとを備え、この際の鏡面加温手段が、いずれも鏡面と鏡面裏蓋との間に形成した気密空間の内部に設置される前記蓄電素子と充放電コントローラと気密空間内の空気を撹拌する電動ファンとによって構成され、充放電コントローラは、鏡面温度センサによって検出された鏡面温度が露点計によって検出された露点を下回らない範囲で鏡面加温手段に通電すること特徴とする道路反射鏡である。
【0032】
上記構成にかかる道路反射鏡においては、その鏡面加温手段が、蓄電素子と充放電コントローラと気密空間内の空気を撹拌する電動ファンとによって構成され、これらが鏡面と鏡面裏蓋との間に形成した気密空間の内部に設置されることが特徴的である。すなわち、上記道路反射鏡においては、ヒータ等の発熱専用の電気素子は使用されておらず、気密空間内に設置される蓄電素子と充放電コントローラと電動ファンのモータの動作発熱全体が電動ファンによって撹拌されることによって鏡面の加温用に利用されるのである。また、充放電コントローラによる鏡面加温手段に対する通電制御は、露点を下回らない範囲、つまり、結露を発生させないための必要最小限の範囲内に制限されることによって、ヒータを有しないことと相俟って極端な低消費電力を実現することができる。
【0033】
(解決手段5)
本発明の道路反射鏡は、太陽光発電パネルと、太陽光発電パネルによって充電する蓄電素子と、蓄電素子によって駆動する鏡面加温手段と、外気温センサと、鏡面温度を検出する鏡面温度センサと、充放電コントローラとを備え、鏡面加温手段が、いずれも鏡面と鏡面裏蓋との間に形成した気密空間の内部に設置される前記蓄電素子と充放電コントローラと気密空間内の空気を撹拌する電動ファンとによって構成され、充放電コントローラによる鏡面加温手段に対する通電制御は、鏡面温度センサによって検出された鏡面温度が外気温センサによって検出された外気温を上回らず、かつ鏡面に結露を生じさせないための所定の安全温度幅を超えて下回らない範囲で鏡面加温手段に通電する道路反射鏡である。
【0034】
上記構成にかかる道路反射鏡は、解決手段4に記載の発明における露点計に代えて外気温センサを用いるとともに、鏡面加温手段に対する通電制御の基準を外気温センサによって検出される外気温とし、鏡面温度が基準となる外気温以下の一定の安全温度範囲内におさまるように通電制御されるのである。道路反射鏡のその他の構成部分および省電力作用は、解決手段4に記載の道路反射鏡に準じる。
【0035】
(解決手段6)
本発明の道路反射鏡は、上記解決手段4または解決手段5に記載の発明を基本発明として、前記鏡面加温手段の構成部材として、ヒータまたは蓄熱素子と組み合わせてなるヒータを備えることを特徴とする。
【0036】
上記構成にかかる道路反射鏡におけるヒータは、解決手段4または解決手段5に記載の鏡面加温手段のみによっては、能力不足となる場合の補助として用いることができるので、いわば、寒冷地仕様の結露防止機能付きの道路反射鏡に適合する。また、蓄熱素子と組み合わせてなるヒータを備える場合は、太陽光発電パネルの能力が蓄電素子に充電してなお余剰がある場合において、さらにヒータに通電してその熱を蓄熱素子に熱エネルギーとして蓄え、鏡面加温用途に有効に活用することができる。
【0037】
本発明の道路反射鏡は、上記解決手段4ないし解決手段6に記載のいずれかの発明を基本発明として、その構成に含まれる蓄電素子が、電気二重層コンデンサであることを特徴とする。
【0038】
上記構成にかかる道路反射鏡における電気二重層コンデンサは、鉛系のバッテリと比較して、蓄電容量に対して外形が大きく、しかもコスト高である。したがって、通常は、道路反射鏡に搭載することが困難な素子であるが、本発明の道路反射鏡においては、極端な低消費電力化が実現することができることにより搭載可能となるのである。電気二重層コンデンサは、化学変化を伴う電気化学素子ではなく、化学変化を伴わない電気物理素子であるため、電気的定格内で使用する限り鉛系バッテリに比べて格段に長寿命である。これによって結露防止機能付きの道路反射鏡のノーメンテナンス耐用期間を飛躍的に延長することができることとなる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の道路反射鏡の結露防止方法は、道路反射鏡に露点計または外気温センサと、鏡面温度を検出する鏡面温度センサとを取り付けて露点または外気温と鏡面温度とを検出し、検出された鏡面温度が検出された露点または外気温を下回らない範囲で鏡面加温手段に通電することによって、鏡面温度を露点の変化または外気温の変化に沿って追随制御する手段の採択によって、鏡面加温手段に対する通電を、鏡面の結露発生を防止する上での必要最小限の範囲に抑制することができるので、鏡面加温手段に電力を供給するための太陽光発電パネル、夜間に使用する電力を蓄えるための蓄電素子および鏡面加温手段のいずれについても、その小型化、小容量化が実現される。この結果として結露防止機能付きの道路反射鏡のコストが削減され、その普及に大きく貢献することができる。
【0040】
また、上記本発明の結露防止方法を具体化してなる本発明の道路反射鏡は、低消費電力であることにより実現される電装部材の小型化、小容量化により、道路周辺景観を害さない簡素な外観のものとして実施することができるとともに、同様に、低消費電力であることにより採用可能となる蓄電素子としての電気二重層コンデンサを搭載するものは、鉛系蓄電素子の短い耐用期間に起因して結露防止機能付きの道路反射鏡の耐用期間が短縮されるという問題を略完全に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の道路反射鏡の実施の形態を示す断面図である。
【図2】上記実施の形態における要部の分解斜視図である。
【図3】上記実施の形態における電気系統の構成を示す模式図である。
【図4】上記実施の形態における通電制御の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を引用しながら本発明の道路反射鏡の結露防止方法、およびその結露防止方法を具体的に適用した道路反射鏡の実施の形態を併せて説明する。
【0043】
本発明の結露防止方法を具体的に実施するための道路反射鏡は、太陽光発電パネルSPと反射鏡本体MUとからなる(図1)。反射鏡本体MUは、支持ポール1に取付けブラケット1A,1Bを用いて組み付けられる。また、支持ポール1には、小型の太陽光発電パネルSPが取り付けられる。
【0044】
太陽光発電パネルSPは、裏面側に支持ポール1の上端部にはめ込むキャップ1C付きのステー1Dを備え、支持ポール1の上端部に方向調節自在かつ仰角調節自在に取り付けられている。なお、太陽光発電パネルSPの仰角については、固定として差し支えない。
【0045】
取付けブラケット1A,1Bは、支持ポール1の上下任意位置を把持して締め付け固定する取付けブラケット1Aと、反射鏡本体MUの裏蓋21Aに固定する取付けブラケット1Bとの組合せからなる。これは、業界標準といえる構成の取付け金具であり、このタイプの取付けブラケット1A,1Bを利用することによって、反射鏡本体MUの上下位置と上下角を設置場所の条件に応じて簡単に設定することができる。
【0046】
反射鏡本体MUは、樹脂製または金属製の凸面鏡状の一般的な鏡面10と、鏡面裏蓋21Aと、鏡面10への直射光を遮るための庇状のフード11とからなる。鏡面裏蓋21Aは、鏡面10との間に外気を遮断した適度の容量の気密空間Rが形成されるように、奥行深くデザインされている。この鏡面裏蓋21Aについては、必要に応じてその内側面や外側面全体に断熱材を添設することができる。
【0047】
反射鏡本体MUの気密空間Rの内部には、本発明の結露防止方法に使用される 太陽光発電パネルSP以外の電装部材Eが組み込まれている。電装部材Eは、充放電コントローラ22Aと露点計の露点演算回路22Bとを搭載した統合制御基板22と、蓄熱素子24と熱結合した面状のヒータ23と、電動ファン25と、蓄電素子としての電気二重層コンデンサ26とを主要部材としてなる。
【0048】
鏡面10から前方に突出するフード11の裏面には、露点計のセンシング素子である外気温センサS1と湿度センサS2とが併設されている。また、鏡面10の裏面には、鏡面温度センサS3が取り付けられている。この鏡面温度センサS3は鏡面10と熱結合されている。一方、外気温センサS1は、断熱材を介してフード11から熱的に切り離された取付け状態である。また、この外気温センサS1は、露点計から独立した外気温センサS1としても利用される。
【0049】
これらの電装部材Eは、通風性を確保するために鏡面裏蓋21Aの内側面にスペーサナット2N…を介して順次にスタックする形態で取り付けられている。されている。ただし、電気二重層コンデンサ26は、外形が大きいことにより独立に設置してある(図1,図2)。
【0050】
ここで、本発明においては、太陽光発電パネルSPを除くこれらの電装部材E全体が反射鏡本体MUの鏡面10を加温するための鏡面加温手段を構成するのであるということを特に注記する。本発明には、電装部材E中にヒータ23を含まない構成も含まれるが、電装部材Eがヒータ23を含まない場合においても電装部材Eが鏡面加温手段を構成することは同様である。
【0051】
本発明の道路反射鏡における電気系統は、次のようである(図3)。太陽光発電パネルSPと電動ファン25とヒータ23と電気二重層コンデンサ26とは、いずれも統合制御基板22を介して接続されている。統合制御基板22に搭載された充放電コントローラ22Aには、外気温センサS1と鏡面温度センサS3からの検出信号が入力されている。また、統合制御基板22に搭載された露点演算回路22Bには、外気温センサS1と湿度センサS2からの検出信号が入力され、その検出信号に基づいて露点T4が算出される。また、算出された露点情報は、充放電コントローラ22Aに入力されている。すなわち、充放電コントローラ22Aには、外気温T1と鏡面温度T3と露点T4とが入力されている。
【0052】
充放電コントローラ22Aには、そのときの外気温T1に基づいて、外気温T1以下の一定の安全温度幅TWを設定する設定機能が搭載されている(図4)。この設定機能は、簡単な減算回路または乗算回路によって、例えば、外気温T1−5℃の定温度幅、または、外気温T1×0.8の定温度率によって演算される。この定温度幅、または定温度率は、露点演算回路22Bによる露点T4とは無関係に、放射冷却が発生した気象条件下における過去の統計データから結露を発生させる危険がないと見込まれる範囲において充放電コントローラ22Aに予め人為的に設定される温度幅である。
【0053】
上記形態の道路反射鏡は、太陽光発電パネルSPによって昼間に発電した電気を蓄電素子である電気二重層コンデンサ26に蓄電するとともに、蓄電素子に蓄電した電気を夜間に電装部材E全体から構成される鏡面加温手段に通電して鏡面結露を防止するように機能する。
【0054】
すなわち、昼間における充放電コントローラ22Aは、太陽光発電パネルSPの電力を電気二重層コンデンサ26に供給し、さらに電気二重層コンデンサ26の充電完了を検出して、余剰電力をヒータ23に通電し、蓄熱素子24に熱エネルギを蓄えるように機能する。
【0055】
充放電コントローラ22Aは、太陽光発電パネルSPの起電力の喪失よって、日没時A1を検出する。日没時A1を条件に充放電コントローラ22Aは、外気温T1に基づいてそのときの安全温度幅TWを算出するとともに、そのときの鏡面温度T3が外気温T1以上であるか、外気温T1以下であっても安全温度幅TW内であるときには、鏡面加温手段に対する電力供給は行わず、電気二重層コンデンサ26に蓄えられた電力を温存する。
【0056】
日没時A1以後、放射冷却が発生した場合には、日没時A1まで外気温T1に同化していた鏡面温度T3が急速に降下する(図4点線)。ここで、充放電コントローラ22Aは、鏡面温度T3が、算出された安全温度幅TWの下限にまで下降すると同時に鏡面加温手段の電動ファン25に通電を開始する。電動ファン25の作動によって反射鏡本体MUの気密空間Rの内部の空気が撹拌され、充放電コントローラ22A自体の発熱を含め、電装部材E全体からの、本実施の形態においては、特に蓄熱素子24からの発熱が気密空間Rの内部容量に従って平準化され、気密空間Rを形成している鏡面10の鏡面温度T3を上昇させる。充放電コントローラ22Aは、鏡面温度T3が安全温度幅TWの上限である外気温T1に到達すると同時に電動ファン25に対する通電を停止する(図4のK1区間)。以後、充放電コントローラ22Aは、太陽光発電パネルSPの発電作用を検出するまで、つまり夜明けまでこの動作を反復するのである(図4のK2…区間)。
【0057】
電動ファン25ひいては鏡面加温手段に対する上記のような通電制御によって、鏡面結露のおそれがないにもかかわらす鏡面加温手段が一晩中駆動されるという無駄が省かれるのであり、これによって、鏡面加温手段の画期的な省エネルギ動作が実現するのである。
【0058】
なお、上記動作説明は、外気温T1と安全温度幅TWの組合せによって鏡面加温手段、特に電動ファン25を駆動する形態に関するが、露点計を備える場合には、安全温度幅TWに代えて、外気温T1と露点T4との組合せによって鏡面加温手段を駆動することもできる。この場合における充放電コントローラ22Aは、
外気温T1を上限とし、露点T4を下限とする温度帯内で電動ファン25を通電制御することになる。
【符号の説明】
【0059】
SP 太陽光発電パネル
MU 反射鏡本体
S1 外気温センサ
S2 湿度センサ
S3 鏡面温度センサ
T1 外気温
T3 鏡面温度
T4 露点
R 気密空間
E 鏡面加温手段である電装部材
10 鏡面
21A 鏡面裏蓋
22 統合制御基板
22A 充放電コントローラ
23 ヒータ
24 蓄熱素子
25 電動ファン
26 蓄電素子である電気二重層コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電パネルと蓄電素子と鏡面を加温する鏡面加温手段とを備え、太陽光発電パネルによって昼間に発電した電気を蓄電素子に蓄電するとともに、蓄電素子に蓄電した電気を夜間に鏡面加温手段に通電して鏡面結露を防止するようにしてなる道路反射鏡の結露防止方法において、
道路反射鏡に露点計と鏡面温度を検出する鏡面温度センサとを取り付けて露点と鏡面温度とを検出し、検出された鏡面温度が検出された露点を下回らない範囲で前記鏡面加温手段に通電することによって、鏡面温度を露点の変化に沿って追随制御することを特徴とする道路反射鏡の結露防止方法。
【請求項2】
太陽光発電パネルと蓄電素子と鏡面を加温する鏡面加温手段とを備え、太陽光発電パネルによって昼間に発電した電気を蓄電素子に蓄電するとともに、蓄電素子に蓄電した電気を夜間に鏡面加温手段に通電して鏡面結露を防止するようにしてなる道路反射鏡の結露防止方法において、
道路反射鏡に外気温センサと鏡面温度を検出する鏡面温度センサとを取り付けて外気温と鏡面温度とを検出し、検出された鏡面温度が検出された外気温を上回らず、かつ鏡面に結露を生じさせないための所定の安全温度幅を超えて下回らない範囲で前記鏡面加温手段に通電することによって、鏡面温度を外気温の変化に沿って追随制御することを特徴とする道路反射鏡の結露防止方法。
【請求項3】
前記所定の安全温度幅が、鏡面に結露が発生した気象条件下における外気温と露点の観測データに基づいて結露を生じさせないと見込まれる一定の温度幅、または結露を生じさせないと見込まれる一定の温度比率として設定することを特徴とする請求項2に記載の道路反射鏡の結露防止方法。
【請求項4】
太陽光発電パネルと、該太陽光発電パネルによって充電する蓄電素子と、該蓄電素子によって駆動する鏡面加温手段と、露点計と、鏡面温度を検出する鏡面温度センサと、充放電コントローラと備え、
前記鏡面加温手段が、いずれも鏡面と鏡面裏蓋との間に形成した気密空間の内部に設置される前記蓄電素子と前記充放電コントローラと前記気密空間内の空気を撹拌する電動ファンとによって構成され、
前記充放電コントローラは、前記鏡面温度センサによって検出された鏡面温度が前記露点計によって検出された露点を下回らない範囲で前記鏡面加温手段に通電すること特徴とする道路反射鏡。
【請求項5】
太陽光発電パネルと、該太陽光発電パネルによって充電する蓄電素子と、該蓄電素子によって駆動する鏡面加温手段と、外気温センサと、鏡面温度を検出する鏡面温度センサと、充放電コントローラとを備え、
前記鏡面加温手段が、いずれも鏡面と鏡面裏蓋との間に形成した気密空間の内部に設置される前記蓄電素子と前記充放電コントローラと前記気密空間内の空気を撹拌する電動ファンとによって構成され、
前記充放電コントローラは、前記鏡面温度センサによって検出された鏡面温度が前記外気温センサによって検出された外気温を上回らず、かつ鏡面に結露を生じさせないための所定の安全温度幅を超えて下回らない範囲で前記鏡面加温手段に通電することを特徴とする道路反射鏡。
【請求項6】
前記鏡面加温手段の構成部材として、ヒータまたは蓄熱素子と組み合わせてなるヒータを備えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の道路反射鏡。
【請求項7】
前記蓄電素子が、電気二重層コンデンサであることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の道路反射鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−127354(P2011−127354A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287658(P2009−287658)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【特許番号】特許第4571706号(P4571706)
【特許公報発行日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(597069741)株式会社ブイオーシーダイレクト (16)
【Fターム(参考)】