説明

道路曲率推定システム

第1のカルマンフィルタ(52、52.1)を使用するプロセッサ(26)が、ホスト車両状態を、速度(U)およびヨーレート(ω)から推定し、この後者は、速度(U)が閾値よりも大きい場合にはヨーレートセンサ(16)からとし、小さい場合には、操舵角センサおよび速度(U)からとすることができる。道路曲率パラメータ(C、C)は、ホスト車両軌跡のカーブフィットから、または状態変数が複数のホスト状態変数(72、72)に応答性のある、第2のカルマンフィルタ(54、54.1)から推定される。カルマンフィルタ(52、52.1、54、54.1)には、適応スライドウィンドを組み入れることができる。最も可能性の高い道路種類の曲率は、異なる道路種類のモデルを使用する相互作用多重モデル(IMM)アルゴリズムによって推定される。道路曲率融合サブシステム(96)は、ホスト車両状態、車両位置(86)に応答性のあるマップデータベース(88)、またはレーダーシステム(14)によるターゲット車両(36)の計測値のいずれかを使用する、複数の道路曲率推定器(42.1、42.2、42.N)からの道路曲率推定値を融合させる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施態様の説明
図1を参照すると、ホスト車両12に組み込まれた、予測衝突検知システム10は、ホスト車両12の外部の物体を検知するためのレーダーシステム14、およびホスト車両12の動きを検知するための、ヨーレートセンサ16、例えばジャイロセンサおよび速度センサ18を含む、1組のセンサを備える。ヨーレートセンサ16および速度センサ18によって、それぞれ、ホスト車両12のヨーレートおよび速度の計測値が得られる。レーダーシステム14、例えばドップラー(Doppler)レーダーシステムは、アンテナ20およびレーダープロセッサ22を備え、このレーダープロセッサ22は、アンテナ20が送信して、その視野にある物体によって反射される、RF信号を生成する。レーダープロセッサ22は、アンテナ20で受信される、関連する反射RF信号を復調して、アンテナ20が送信するRF信号によって照射される1つまたは複数の物体に応答する信号を検出する。例えば、レーダーシステム14によって、ホスト車両12固定座標における、ターゲット距離、距離変化率および方位角(azimuth angle)の計測値が得られる。
【0002】
図2を参照すると、アンテナ20は、RFエネルギーのレーダービーム23を生成し、このレーダービームは、ビーム制御要素24に応答して、方位角範囲、例えば±γ、例えば±50°の全体にわたって電子的または機械的に走査されるとともに、このレーダービームの距離範囲は、ホスト車両12から、例えば約100メートルであり、この距離は、標的をホスト車両12との予期される衝突から十分に前もって検出することを可能にするほど、十分に遠く、それによって、予期される衝突を回避するか、またはその結果としての損傷もしくは傷害を軽減するように、ホスト車両12が危険緩和の可能性のある行動をとることを可能にするように適合されている。レーダープロセッサ22、ヨーレートセンサ16、および速度センサ18は動作可能に信号プロセッサ26に接続されており、この信号プロセッサは、関連する予測衝突検知アルゴリズムによって動作して、物体、例えばターゲット車両36(図3に図示)との衝突の可能性が高いかどうかを判定するとともに、そうであれば、それに応じてとるべき行動、例えば、関連する警報システム28または安全システム30(例えば、前方エアバッグシステム)を起動させること、または車両制御システム32(例えば、関連するブレーキシステムまたは操陀システム)を使用して回避行動をとり、それによって予期される衝突を回避するか、またはその結果を軽減するなどの、1種または2種以上の行動も決定する。
【0003】
図3を参照すると、ホスト車両12が、直線または曲線の複数レーン道路34に沿って移動しているのが示されているとともに、ターゲット車両36が、ホスト車両12に向かって反対方向に移動しているのが示されている。一般に、道路34上に適合する任意の数のターゲット車両36が存在して、それぞれがホスト車両12と同一方向または反対方向に移動している可能性がある。これらのターゲット車両36は、ホストレーン38内にあるか、またはホストレーン38に隣接するか、またはそれから離隔されているが概してそれに平行な、近傍(neighboring)レーン40内にあってもよい。分析の目的で、ホスト車両12は、そのレーン38の中心線41に沿って、レーン内ふらつきなしに安定して移動するとともに、すべての平行レーン38、40の道路曲率は同一であると仮定する。道路曲率は小さいものと仮定し、それによってホスト車両12のヘディング(heading)角と、検出可能なターゲット車両36があればそのヘディング角との差は、15°未満となる。
【0004】
図4を参照すると、予測衝突検知システム10は、その中にある速度センサ18およびヨーレートセンサ16それぞれからのホスト車両12の速度Uおよびヨーレートωの計測値、ならびにホスト車両12に装着されたレーダーシステム14からの、すべてのターゲット車両36に対するターゲット距離r、距離変化率
【数1】

、および方位角ηの計測値に加えて、これらすべての計測値の対応する誤差共分散マトリックスを使用して、ホスト固定座標系において各サンプリング時に、好ましくは誤差をできる限り少なくして、各ターゲットの2次元位置、速度および加速度
【数2】

を推定する。
【0005】
予測衝突検知システム10は、1)ホスト車両運動センサ類、すなわちヨーレートセンサ16および速度センサ18からの計測値を使用して道路34の曲率を推定する、道路曲率推定サブシステム42;2)レーダービーム23によって照射されてレーダープロセッサ22によって検出されるターゲットの状態を推定する、非拘束ターゲット状態推定サブシステム44;3)ターゲットは、それぞれの可能性のあるレーン38、40に対して、ホストレーン38内または近傍レーン40内のいずれかで、道路上に拘束されていると仮定して、ターゲットに対する拘束状態を推定する、拘束ターゲット状態推定サブシステム46;4)ターゲット状態の最良推定が、非拘束ターゲット状態であるか、または拘束条件の1つによって拘束されたターゲット状態であるかを判定する、ターゲット状態決定サブシステム48;および5)非拘束ターゲット状態推定を、ターゲット状態決定サブシステム48によって識別される適当な拘束を融合させ、それによって融合ターゲット状態を生成するターゲット状態融合サブシステム50を含む。ターゲット状態の最良推定―非拘束ターゲット状態または融合ターゲット状態のいずれか―は、次いで、決定サブシステムまたは制御サブシステムによって使用されて、ホスト車両12がターゲットと衝突する危険があるかどうかが判定され、そうである場合には、その結果を軽減するのに最良の行動が何であるかを判定して、例えば、警報システム28、安全システム30、または車両制御システム32、あるいはそれらの組合せのいずれかの行動によって、それを実行させる。可能な場合には、道路34の幾何学的構造をターゲットの動力学に対する拘束として使用することにより、ターゲット状態のより正確な推定が得られ、これによって、それに応答する行動の信頼性が向上する。
【0006】
図5を参照すると、ホスト車両12の観点での、ターゲットの状態、すなわち動力学的状態変数を検出する方法500を示してあり、そのステップは、例えば、信号プロセッサ26によってステップ(502)、(504)において実行され、道路34に対するホスト車両12の速度Uおよびヨーレートωが、それぞれ、速度センサ18およびヨーレートセンサ16から読み取られる。次いで、ステップ(506)において、道路34の曲率パラメータおよび関連するその共分散が、第1のカルマンフィルタ52および第2のカルマンフィルタ54を用いて推定され、これらのフィルタは、ホスト車両12の状態(すなわち、ホスト車両12の動力学的状態変数)および関連するその共分散をそれぞれ推定し、次いで、道路34の曲率パラメータおよび関連するその共分散をそれぞれ推定し、ここで道路34の曲率パラメータおよび関連するその共分散は、続いて拘束ターゲット状態推定サブシステム46によって使用されて、予期されるターゲット車両36の可能性のある位置についての関連する拘束条件を生成する。
【0007】
正確に設計されて構築された道路34は、曲率を含む1組のパラメータによって記述することができ、道路34の区間の曲率は次式で定義される:
【数3】

ここで、Rは区間の半径である。一般に、平坦な道路34の部分に対して、曲率変化は、道路34に沿った距離lの関数として、いわゆるクロソイド(clothoid)モデルによって、次式のように記述することができる:
【数4】

ここで、C=1/Aであり、Aはクロソイドパラメータと呼ばれる。
図6を参照すると、ヘディング方向を定義する、ヘディング角θは次式で定義される:
【数5】

式(2)を式(3)に代入すると、次式が得られる。
【数6】

【0008】
図6を参照すると、道路34の式、すなわちx−y座標における道路方程式は、次式で与えられる。
【数7】

ヘディング角θが15°の範囲であること、すなわち|θ|<15°を仮定すると、式(5)および式(6)は、次のように近似される。
【数8】

【0009】
したがって、道路34は、曲率係数(またはパラメータ):CおよびCにおける、増分道路方程式によってモデル化される。この増分道路方程式は、次のような広範囲の道路形状を説明する:(1)直線道路34:C=0およびC=0、2)円形道路34:C=0、および3)ヘディング角θの変化が15°より小さい、任意の形状を有する一般道路34:C>0。
道路曲率パラメータC、Cは、ホスト車両12は、道路34の中心線41または関連するホストレーン38に沿って移動するという仮定に基づいて、ホスト車両12内の運動センサ(ヨーレートセンサ16および速度センサ18)からのデータを用いて推定される。
【0010】
道路曲率パラメータC、Cは、利用可能なホスト車両12運動センサからのホスト車両12のヨーレートωおよび速度Uの計測値に応答して、
【数9】

のデータから計算することができる。しかしながら、一般的に、それぞれヨーレートセンサ16および速度センサ18からのヨーレートωおよび速度Uの計測値はノイズが多い。第1のカルマンフィルタ52によって実現されるホスト状態フィルタは、ヨーレートωおよび速度Uの関連するノイズの多い計測値から、
【数10】

の推定値を生成するのに有益であり、その後に、第2のカルマンフィルタ54によって実現される曲率フィルタを使用して、曲率パラメータC、Cの平滑化された推定値が生成される。ホスト状態フィルタに対するホスト車両12の運動力学は、所定の組の動力学方程式(この場合には一定速度)に従い、これらは次のように与えられる。
【数11】

また、ここでTはサンプリング周期であり、上添え字(-)は、フィルタがホストフィルタであることを指示するために使用され、Uおよびωは、ホスト車両12の速度およびヨーレートの計測値である。第1のカルマンフィルタ52は、図4に示すように、ホスト状態
【数12】

およびその誤差共分散
【数13】

を推定するために実現される。
【0011】
第1のカルマンフィルタ52、すなわちホスト状態フィルタ、からのホスト状態の推定値は、次いで、第2のカルマンフィルタ54、すなわち曲率係数(またはパラメータ)フィルタ、に入力される、合成計測値を生成するのに使用され、ここで、関連するカルマンフィルタ52、54は、以下の付録においてより詳細に説明するカルマンフィルタのフィルタリングプロセスに従って動作する。道路曲率パラメータC、Cと、ホスト状態変数
【数14】

との関係は、以下のように導かれる。
【0012】
式(4)から、道路曲率の半径Rは、図7に示すように、一般に、道路に沿った距離lの関数、R(l)として表わされる。式(4)の両辺を微分すると次式を得る。
【数15】

ここで、
【数16】

、すなわちホスト車両12のヨーレートであり、
【数17】

、すなわちホスト車両12の速度であることに注目して、式(2)のクロソイドモデルを式(12)に代入すると、次式が得られる。
【数18】

【0013】
クロソイドパラメータCは、l=0における曲率Cの値、または次式で与えられる。
【数19】

式(14)の両辺の微分をとると次式を得る。
【数20】

の定義を使用して、式(2)から、Cは、ホスト状態によって次のように表わすことができる。
【数21】

【0014】
曲率推定値
【数22】

を生成する、第2のカルマンフィルタ54、すなわち曲率フィルタのためのシステム方程式は、以下のように与えられる。
【数23】

Δtは第2のカルマンフィルタ54の更新時間周期であり、計測値ベクトル
【数24】

の要素の値は、曲率フィルタの状態変数―すなわち、クロソイドパラメータC、C―の対応する値によって与えられる。
【0015】
計測値、
【数25】

は、推定状態
【数26】

から以下のように変換され、
【数27】

関連する計測値の共分散は、次式で与えられる。
【数28】

【0016】
ここで理解すべきことは、道路34の曲率パラメータを推定するための、その他のシステムおよび方法は、上述したものに対する道路曲率推定サブシステム42に代入できることである。例えば、道路の曲率パラメータは、関連する運動センサからの速度Uとヨーレートωの計測値に基づく上述のシステムの代わりに、またはそれと合わせて、視覚システムによって道路34の画像から推定することもできる。さらに、理解すべきことは、ヨーレートは、様々な方法で、または様々な手段を用いて、例えば、それに限定はされないが、ヨージャイロセンサ、操舵角センサ、微分ホイール速度センサ、またはGPS式センサ、それらの組合せ、またはそれらからの計測値の関数(例えば、とりわけ、操舵角速度の関数)を使用して、計測または特定することができることである。
【0017】
再び図5を参照すると、ステップ(508)において、ターゲット距離r、距離変化率
【数29】

の計測値、および方位角ηの計測値がレーダープロセッサ22から読み取られて、拡張カルマンフィルタ56、すなわち主フィルタへの入力として使用され、このフィルタは、ステップ(510)において、非拘束ターゲット状態―すなわち、ターゲットの動力学状態変数―の推定値を生成し、この推定値は、ホスト車両12と一緒に移動する、ホスト車両12の局所座標系(すなわち、ホスト固定座標系)における相対値である。ステップ(512)において、非拘束ターゲット状態、すなわちターゲット速度および加速度は、図3に示すように、現在時刻における、ホスト車両12に固定された絶対座標系の絶対座標に変換され、それによって、拘束ターゲット状態の推定値を生成するために、以下に記述する関連する拘束方程式に使用されるときに、道路拘束式がその中で導出され、それに対して関連する曲率パラメータが一定であると仮定される、絶対座標系に整合させられる。絶対座標系は、現在時刻における空間内の移動座標系を重ね合わせ、それによって、ステップ(512)における変換は、速度および加速度に関係する補正項―ホスト車両12の運動を説明する―を、xおよびy方向の両方で、対応するターゲット推定値に加算することによって実現される。
【0018】
拡張カルマンフィルタ56からの出力の、ステップ(512)における座標変換の結果は、次いで、ホスト車両12に対するターゲット車両36のxおよびy位置にそれぞれ対応して、以下の部分に区画され、ここで上添え字1は、ターゲット車両36の非拘束状態を意味する。
【数30】

【0019】
再び図5を参照すると、ステップ(506)、(512)に続き、以下により詳細に説明するステップ(514)からステップ(524)において、ターゲット車両36の起こり得る軌跡に対して様々な拘束を適用して試験することによって、ターゲット車両36が起こり得る拘束の1つに従って移動している可能性が高いかどうかが判定される。例えば、拘束は、ホストレーン38、および起こり得る近傍レーン40を含む1組のレーンからのものであると仮定して、起こり得る拘束条件の1つに従って移動している可能性の高いターゲット車両36は、ホストレーン38または可能性のある近傍レーン40の1つのいずれかの上を移動している可能性が高いということになる。ステップ(524)において、ターゲット車両36はホストレーン38または可能性のある近傍レーン40の1つの上を移動しているとの仮説が、それぞれの可能性のあるレーンについて試験される。この仮説が可能性のあるレーンの1つに対して満足されない場合には、ステップ526において、ターゲットの状態は、非拘束ターゲット状態であると仮定され、次いで、これが後続の予測衝突検知分析およびそれに応答する制御に使用される。そうでない場合には、ステップ(524)から、ステップ(528)において、ターゲット状態は、ターゲット状態融合サブシステム50によって、非拘束ターゲット状態と、ステップ(524)において最も可能性が高いものとして特定された関連する拘束の状態との、融合として計算される。
【0020】
ターゲットが拘束条件によって拘束されているかどうか、およびそうである場合には、最も可能性の高い拘束条件は何かを判定するための、ステップ(514)からステップ(524)までのプロセスについて考察する前に、非拘束ターゲット状態を拘束状態と融合させるプロセスを、最初に、ホスト車両12と同じレーンを移動するターゲット車両36の場合に対して説明する。ホスト車両12はそのレーン38の中心線に沿ってレーン内をふらつきなしに安定して移動すること、およびすべての平行レーン38、40の道路曲率は同一であるとの仮定に従うとともに、絶対座標系は現在時刻においてホスト車両12上に固定されていると仮定して、これらの拘束条件がy方向に適用されて、y方向状態変数がx方向状態変数の関数である道路方程式から導出される。
【0021】
ターゲット車両36は、ホスト車両12と同一レーンを移動していると仮定するとともに、推定係数(またはパラメータ)を有する道路拘束条件を使用して、ステップ(514)において、拘束状態変数は、横動力学変数について次のように与えられる。
【数31】

【0022】
ステップ(528)において、一方はメインフィルタから、他方は道路拘束条件からの、2つのy座標推定値が、次のように融合される。
【数32】

最後に、ターゲット状態の構成推定値(composed estimate)は、以下のようになる。
【数33】

【0023】
次いで、ステップ(530)において、ターゲット車両36がステップ(514)からステップ(524)までにホストレーン38を走行していると判定される場合には、この構成推定値は、ターゲット状態の推定値として出力されることになる。
ターゲットが拘束条件によって拘束されている可能性が高いかどうか、そうであるならば、最も可能性の高い拘束条件は何かを判定するために、ステップ(514)からステップ(524)までのプロセスに戻って;ターゲットは同一の道路34を追従するという仮定に従って、ターゲット車両36が特定のレーンを走行していると分かっている場合には、そのレーンの推定道路パラメータを、ターゲット動力学を推定する主フィルタにおける拘束として使用するのが望ましいことになる。しかしながら、ターゲット車両36が現在そのレーンにいるかという知識は、特に、ターゲットが曲線道路34を移動しているときに、通常は入手不能である。道路方程式(8)は、ホスト中心座標系においてホストレーン38に対してのみであるので、拘束フィルタリングには、ターゲットがどのレーンにいるかを知ることが必要であり、異なるレーンに対しては異なる拘束方程式が必要となる。
【0024】
これらの平行レーン間の道路曲率パラメータの差異を無視して、すなわち、各レーンの曲率は同一であると仮定して、任意のレーンに対する道路方程式は、次のように書くことができる。
【数34】

ここで、Bはレーンの幅、mは記述しようとするレーンを表わす(m=0はホストレーン80に対応、m=1は右近傍レーン40に対応、m=−1は左近傍レーンに対応する、など)。ターゲットレーン位置の事前知識なしに、多重拘束システム(いわゆる多重モデルシステムに類似する)を形成する多重拘束条件のそれぞれが試験されて、拘束条件のいずれかが活性であれば、そのどれが活性であるかが判定される。多重拘束(MC)システムは、有限の数Nの拘束の1つを受ける。任意の時間において、1つの拘束条件だけが有効であり得る。そのようなシステムは、ハイブリッドと呼ばれる―すなわちそれらは連続(ノイズ)状態変数に加えて、不連続の数の拘束条件の両方を有する。
【0025】
この問題の解決を容易にするために、以下の定義およびモデリング仮定が行われる。
拘束方程式:
【数35】

ここで、
【数36】

は、tで終了するサンプリング周期中に有効な、時間tにおける拘束条件を表わす。
拘束条件:可能性のあるN拘束条件の中で
【数37】

【数38】

:拘束条件
【数39】

を使用する時間tにおける状態推定
【数40】

:拘束条件
【数41】

下における時間tにおける共分散マトリックス
【数42】

:ターゲットが時間tk−1において拘束条件jに従っている確率
【0026】
拘束ジャンププロセス(jump process):は以下の既知の移行確率を備えるマルコフ連鎖である
【数43】

マルコフ連鎖を―2つ以上の可能性のある拘束状態を有するシステムに対して―実現するために、それぞれの走査時間において、ターゲットが拘束状態iから状態jに移行する確率pijがあることを仮定する。これらの確率は、前もって分かっていると仮定し、以下に示す確率移行マトリックスで表わすことができる。
【数44】

【数45】

が正しい(
【数46】

が有効である)旧確率は、
【数47】

ここで、Zは旧情報であり、正しい拘束は、仮定されたNの可能性のある拘束条件の中にあるので、
【数48】

【0027】
拘束ターゲット状態推定サブシステム46は、ターゲット状態が可能性のある拘束状態に対応するかどうかを判定し、そうである場合には、最も可能性の高い拘束状態の特定を行う。
多重拘束(MC)推定アルゴリズムは、各拘束に関連する尤度(likelihood)関数および確率の計算とともに、非拘束状態推定
【数49】

を計測値として使用して、Nの拘束条件状態推定値(constraint-conditioned state estimates)を組み合わせて更新する。多重拘束(MC)推定アルゴリズムの一態様において、拘束状態推定出力は、すべての拘束条件状態推定値の複合組合せである。この拘束状態推定が正当である場合,すなわち拘束状態推定が、非拘束状態推定に対応する、例えば一致する、場合には、ターゲット状態は、拘束および非拘束の状態推定を融合することによって与えられ、そうでない場合には、ターゲット状態は非拘束状態推定によって与えられる。多重拘束(MC)推定アルゴリズムのこの態様は、以下のステップを含む。
【0028】
1.多重拘束からの状態変数の推定:ステップ(514)において、多重レーン道路方程式(34)を使用して式(25)の第1行を置換して、多重拘束状態推定値は次式で与えられる。
【数50】

ここで、
【数51】

であり、Bはレーンの幅である。言い換えると、拘束状態推定値は、ターゲット車両36が位置する可能性のある、それぞれの可能性のあるレーンの中心線のy位置に対応、例えば、一致する。
【0029】
関連する共分散は次式で与えられる。
【数52】

ここで、
【数53】

は式(27)および式(28)によって与えられ、
【数54】

は式(24)から、
【数55】

は曲率フィルタから得られる。
【0030】
2.拘束条件更新:ステップ(516)において、拘束条j=1,...Nのそれぞれに対して、拘束尤度関数に加えて、有効な拘束を条件とする、状態推定値および共分散が更新される。拘束jに対応する更新状態推定値および共分散は、計測値
【数56】

を用いて、次式のように得られる。
【数57】

【0031】
3.尤度計算:ステップ(518)において、拘束j=1,...Nのそれぞれに対して、拘束条件状態推定のまわりの計測値のガウス分布を仮定して、拘束jに対応する尤度関数が、非拘束ターゲット状態推定の値
【数58】

において、次式のように求められ、
【数59】

ここで、ガウス分布N(;,)は平均値
【数60】

および関連する共分散
【数61】

を有する。
【0032】
4.拘束確率方程式:ステップ(520)において、更新拘束確率は、拘束j=1,...Nのそれぞれに対して、次式にように計算され、
【数62】

ここで、拘束jが有効である移行の後の確率
【数63】

は次式
【数64】

で与えられ、正規化定数は以下で与えられる。
【数65】

【0033】
5.全体状態推定および共分散:ステップ(522)において、最新拘束条件状態推定値および共分散は、以下の式で与えられる。
【数66】

【0034】
上記のアルゴリズムにおける、ステップ(522)からの推定器の出力は、次いで、式(29)および式(30)によって記述される融合プロセスにおいて、非拘束推定値として使用され、式(33)の結果の代わりに、式(52)の結果が式(32)において使用される。
ターゲット車両36が道路34に追従していないか、またはレーンを変更しているときに、ターゲット動力学状態変数に道路拘束を課すると、結果として不正確な推定が得られて、それは関連する非拘束推定値を使用するよりも悪くなることがある。しかしながら、ノイズ関連推定誤差によって、正しい道路拘束が不適正に見えることがある。したがって、拘束が適正である場合、例えばターゲット車両36が特定のレーンを追従している場合には、それらの拘束を有効に維持し、それらが不適正な場合、例えばターゲット車両36がそのレーンから逸脱する場合に、それらを迅速に取り除くことのできる手段を組み込むのが有益である。非拘束ターゲット状態推定は、独立のターゲット状態推定値を提供することから、道路拘束妥当性確認(road constraint validation)において有用な役割を果たす。
【0035】
1つの手法は、非拘束ターゲット状態推定は道路拘束法的式を満足するという仮説、またはそれと同意義で、拘束推定値および非拘束推定値はそれぞれ同一のターゲットに対応するという仮説を検定するものである。最適検定には、時間tまでの履歴における、すべての利用可能なターゲット状態推定値を使用することが必要となり、一般的に実際的ではない。実際的な一手法は、最新の状態推定値だけに基づいて検定が実施される、順次仮説検定(sequential hypothesis testing)である。上記において使用した表記によれば、拘束および非拘束のターゲット状態推定値(y方向のみ)の差は、
【数67】

のように、
【数68】

の推定値として表わされ、ここで
【数69】

は真のターゲット状態であり、
【数70】

は、道路34(またはレーン)に沿って移動するターゲットの真の状態である。ステップ(524)において、「同一ターゲット」仮説が検証される、すなわち
【数71】

【0036】
主フィルタ誤差
【数72】

は、拘束からの誤差
【数73】

と独立であると仮定する。差
【数74】

の共分散は、仮説Hの下で、次式で与えられる。
【数75】

【0037】
推定誤差はガウス分布すると仮定して、H対Hの検定は、以下のとおりである。
次の場合にHを採択
【数76】

閾値は次のように選択され、
【数77】

ここでαは所定の誤差許容値である。ここで留意すべきことは、上記のガウス誤差仮定に基づいて、
【数78】

は、n自由度のカイ二乗分布を有することである。この閾値の選択は、重要な設計因子であり、特定の応用要求に基づくべきである。道路車両衝突予測において、ホストレーン38内のターゲットは、衝突コースにあるとみなされ、近傍レーン40の1つにおけるターゲットよりもより危険であると考えられる。
【0038】
したがって、拘束フィルタリングは正確なターゲット状態推定値を提供することができるので、ホストレーン38内のターゲットに対する高い閾値(低い誤差許容値)を有するのが望ましく、それに対して、そのようなターゲットの「レーン変更」操作はホスト車両12に脅威を与えない。他方で、近傍レーン40内のターゲットは、通常、追い越し車両とみなされる。拘束フィルタリングは、誤警報率をさらに低減することができるが、そのようなターゲットの(ホストレーン38への)「レーン変更」操作は、ホスト車両12に対して現実の脅威を与えることになる。したがって、誤警報率がすでに十分に低い場合には、近傍レーン内のターゲットに対しては、低い閾値(高い誤差許容値)を与えるのが望ましい。
【0039】
上記の分析に基づいて、仮説検定方式は、異なるレーンにおけるターゲットに対して異なる閾値を効率よく使用して、多重拘束フィルタリングアルゴリズムが、ターゲットが現在、存在する可能性の高いレーンについての知識を提供する。道路34上にN個の可能性のあるレーンがあり、各レーンは拘束方程式で記述されると仮定して、ターゲットに対する最高の確率
【数79】

を有する拘束方程式は、時間t(現在時間)において、ターゲットが存在する可能性の最も高いレーンに対応する。この最も可能性の高いレーンをlで表わすと、次のようになる。
【数80】

【0040】
非拘束状態推定値とl拘束状態推定値(y方向のみ)との差は、
【数81】

で表わされ、これは
【数82】

の推定値であり、ここで
【数83】

は真のターゲット状態であり、
【数84】

は、レーンlに沿って移動するターゲットの真の状態である。
【0041】
次いで、「同一ターゲット」仮説に対する検定は以下のようになる。
【数85】

拘束推定誤差は次式で与えられる。
【数86】

【0042】
推定誤差は、独立したガウス分布であることを仮定すると、H対Hの検定は次のようになる。
次の場合にHを採択
【数87】

ここで、
【数88】

であり、閾値は次のようになり、
【数89】

ここで、
【数90】

である。
【0043】
そのようなレーン適応仮説検定方式は、ターゲット車両36がその現在レーンを逸脱するときに、ターゲット状態推定出力を非拘束推定に迅速に切り換えることを可能とし、同時に、ホストレーン38におけるターゲットの推定精度が拘束フィルタリングによって実質的に改善される。
多重拘束(MC)推定アルゴリズムの別の態様において、仮説検定に使用される拘束状態推定値は、すべての拘束ターゲット状態推定値の複合組合せではなく、別個の拘束ターゲット状態推定値の、最も可能性の高いものである(すなわち、「勝者がすべて取る」戦略による)。この最も可能性の高い拘束状態推定値が適正である場合、すなわち、最も可能性の高い状態推定値が、非拘束状態推定に対応する、例えば一致する、場合には、ターゲット状態は、最も可能性の高い拘束状態推定値と非拘束状態推定値とを融合させることによって与えられ、そうでない場合には、ターゲット状態は、非拘束状態推定によって与えられる。
【0044】
多重拘束(MC)推定アルゴリズムのさらに別の態様においては、仮説検定は、拘束状態推定値のそれぞれに対して行われる。いずれの仮説も採択されない場合には、ターゲット状態は非拘束状態推定によって与えられる。仮説の1つが合格すると、ターゲット状態は、対応する拘束状態推定と非拘束状態推定を融合させることによって与えられる。2つ以上の仮説が採択される場合には、最も可能性の高い拘束状態は、複数の手法からの結果に投票することによって、または異なる関連する閾値で、仮説検定を繰り返すことによって、特定される。
【0045】
一般に、拘束の数(すなわち、道路レーンの数)は、それに関連するパラメータ、例えば、道路のレーンの幅がそうであるように、時間に対して変化することが可能であり、ホスト車両12の環境における変化を吸収する。例えば、一回の移動において、ホスト車両12は、1レーン道路、対向交通を含む2レーン道路、中央進路変更レーンを含む3レーン道路、2レーンの対向交通を含む4レーン道路、または多重レーン分割フリーウエイを走行する可能性がある。
【0046】
拘束および非拘束のフィルタリングを使用する道路車両の追跡シミュレーションを、4つのシナリオに対して実施した。全てのシナリオにおいて、ホスト車両12は、15.5m/secで移動しており、ターゲット車両は同一の道路34上を15.5m/secで接近している。ターゲットの初期位置は、x方向にホストから125メートル離れており、すべてのレーンに対するレーン幅は、3.6メートルであると仮定した。車両速度センサの計測値分散は、0.02m/sであり、ジャイロスコープヨーレート計測値の分散は、0.0063rad/sであった。レーダー距離、距離変化率、および方位角の計測値の分散は、それぞれ、0.5m、1m/s、および1.5°であった。次いで、シミュレーション結果が、関連するトラッキングフィルタの100回のモンテカルロ実行から生成された。
【0047】
第1のシナリオにおいて、ホスト車両12およびターゲット車両36は、直線道路34(C=0およびC=0)上を移動しており、ターゲット車両36は、同一レーン内をホスト車両に向かって移動していた。図8a〜dは、非拘束フィルタリング方式および拘束フィルタリング方式のターゲット状態推定および道路曲率推定の結果を示し、図9a、bは、非拘束フィルタリング方式および拘束のフィルタリング方式の、ターゲット車両36の平均の横位置、横速度および横加速度のRMS誤差を示す。拘束フィルタリングからの推定誤差は、実質的に低減された。48回のレーダー走査前に、ターゲット車両36がホスト車両12から65メートルより遠く離れているときには、拘束フィルタリングによって、ターゲット横速度推定における40パーセントを超える誤差の低減、および横加速度推定における60パーセントを超える誤差の低減が得られた。ターゲット車両36が、ホスト車両12から65メートル未満の距離にあるときには、これは衝突予測に対してより適切な状態であり、50パーセントを超える横位置推定誤差、ならびに90パーセントを超える横速度および横加速度の推定誤差が、拘束フィルタリングによって低減された。
【0048】
第2のシナリオにおいては、ホスト車両12およびターゲット車両36は、曲線道路34(C=−10−5およびC=−3×10−5)上を移動し、ターゲット車両36は、同一レーン内をホスト車両に向かって移動していた。図10a〜dは、非拘束フィルタリング方式および拘束フィルタリング方式の、ターゲット状態推定および曲率推定の結果を示し、図11a、bは、非拘束および拘束フィルタリング方式のターゲット車両36の平均の横位置、横速度および横加速度のRMS誤差を示す。ターゲット車両36がホスト車両12から65メートル未満の距離にある場合には、約48回のレーダー走査後に、拘束フィルタリングからの推定誤差は実質的に低減された。ターゲット車両36がホスト車両12から約100メートルの距離にある場合には、20回のレーダー走査前に、推定誤差は、拘束フィルタリングおよび非拘束フィルタリングについて同じであった。
【0049】
ホスト車両12から100メートルから65メートルの間の距離に位置するターゲット車両36に対して、拘束フィルタリングによって、横速度および横加速度の推定の誤差における約30パーセントの低減が得られ、ターゲット車両36がホスト車両12から65メートル未満の距離にある場合には、拘束フィルタリングによって、横位置推定誤差における50パーセントを超える誤差、および横速度および横加速度推定誤差における90パーセントを超える誤差が低減された。ターゲット車両36が遠く離れていた場合に、拘束フィルタリングに対する改善が行われないのは、道路曲率パラメータの推定誤差から生じたものであり、これが、ホスト車両12とターゲット車両36の間の距離に比例する拘束誤差を生じさせた。このことは、曲線道路34の場合においてより明白であり、曲線道路においては、曲率推定誤差がより大きく、それが遠方のターゲット車両36のレーン位置曖昧さを増大させる。
【0050】
第3のシナリオにおいては、ホスト車両12およびターゲット車両36は、直線道路(C=0およびC=0)上を移動しており、ターゲット車両36は、最初に、左近傍レーン内を接近中である。t=2.2秒(レーダー走査55回)において、ターゲット車両36は、そのレーンから逸脱し始め、ホストレーン38に向かって進路変更し、これによってt=4秒(レーダー走査100回)において衝突が発生した。図12a〜dは、ターゲット状態推定結果ならびに非拘束フィルタリング方式および拘束フィルタリング方式の横位置および横速度のRMS誤差を示している。拘束妥当性仮説検定(式(70))のための誤差許容レベルは、ホストレーン38に対してα≒1、すべての近傍レーン40に対してα=0.5を選択した。
【0051】
妥当性確認なしの拘束フィルタリングは、ターゲット車両36が進路変更する前には実質的により低い推定誤差を生成するが、ターゲット車両36がそのレーン(左近傍レーン)から針路変更を始めた後は、関連するターゲット状態推定結果は正しくなく、そのRMS誤差は、非拘束フィルタリングのそれよりもはるかに大きくなり、これは、ターゲット車両36がそのレーンから逸脱し始めた後には不適正になる、道路拘束が、迅速に解除されなかったことを意味している。他方、妥当性確認による拘束フィルタリングの性能は、非拘束フィルタリングのそれと実質的に近く、ターゲット車両36が進路変更して離れる前には、わずかに低い推定誤差を生成するとともに、ターゲット車両36がそのレーンから逸脱し始めた後には、非拘束フィルタリングと同じである、ターゲット状態推定およびRMS誤差を示し、道路拘束が迅速に解除されたことを意味している。
【0052】
第4のシナリオは、第3のシナリオと類似しており、唯一の差は、車両が、直線道路ではなく、曲線道路34(C=−10−5、C=−3×10−5)上にあったことである。ターゲット車両36は、t=2.2秒において逸脱し始め、t=4秒において衝突を生じている。図13a〜dは、拘束フィルタリング方式および非拘束フィルタリング方式の、ターゲット状態推定結果ならびに横位置および横速度のRMS誤差を示す。誤差許容レベルは、第3のシナリオにおける場合と同じであり、結果および知見も、第3のシナリオのものと類似していた。道路拘束は、ターゲット車両36がそのレーンから逸脱し始めた後に、提案の拘束妥当性確認によって、迅速に取り除かれた。全般的に、ターゲット車両36横方向動力学の推定精度がレーダーの角度分解能が低いことによって制限されることが多いことを考慮すると、ターゲット車両36横方向動力学の推定精度における、拘束フィルタリングによる全体的改善は、実体のあるものであった。
【0053】
したがって、直線および曲線の道路34の両方における道路車両追跡のシミュレーション結果は、ターゲット車両36がホストレーン38内にある場合に、予測衝突検知システム10が、ターゲット車両36横動力学における推定誤差を実質的に低減できることを示している。ターゲット車両36が、近傍レーンからホストレーン38に入る操作をすると、予測衝突検知システム10は、この操作を迅速に検出して、道路拘束を解除して、そうでなければ誤った拘束結果を回避する。レーダー角度解像度が低いと、横方向動力学推定が悪くなることが多いということを考慮すると、予測衝突検知システム10は、ターゲット車両38横方向動力学の推定精度を実質的に改善しており、これは早期で確実な道路車両衝突予測に対して有益である。
【0054】
図14を参照すると、別の態様によれば、予測衝突検知システム10は、1つまたは2つ以上の操舵輪60の操舵角δを表わすか、またはそれに応答性のある測度を提供する、操舵角センサ58をさらに含む。例えば、図15を参照すると、特定の操舵輪60、例えば一方の前輪の操舵角δは、車両12の縦方向軸62と操舵輪60のヘディング方向64との間の角度であり、このヘディング方向64は、操舵輪60が回転する方向である。旋回状態において、操舵角δで操舵されている操舵輪60に応答して、操舵輪60は回転時に横方向スリップを発生し、これによって、関連するスリップ角αだけヘディング方向64と異なる、結果としての走行方向66を生じる。関連するタイヤと道路との間の作用によって、スリップ角αに応じた、例えば比例する、横向きのコーンリング力Fが発生し、このコーナリング力が車両12を旋回させ、このコーナリング力は、次式
【数91】

でモデル化でき、ここで、関連する比例定数Cα―コーナリング剛性とも呼ばれる―は、α=0におけるスリップ角αに対するコーナリング力Fの勾配として定義される。
【0055】
一般に、2つの横方向に偏移させた操舵輪60を有する車両12に対して、異なる操舵輪60―すなわち旋回に対して内側および外側―の関連する操舵角δは異なることになる。しかしながら、図16aを参照すると、比較的高い縦速度で走行中の車両12に対して、回転半径Rは、車両12のホイールベースLよりも実質的に大きく、この場合には、異なる操舵輪60の関連するスリップ角αは比較的小さく、その結果、内側および外側の操舵輪60に対する、スリップ角の間の差は無視できるものと仮定することができる。したがって、コーナリング挙動を説明する目的で、車両12は、それぞれが車両12の関連する前輪同士または後輪同士の合成物に対応する、1つの前輪63および1つの後輪65を備える2輪車(bicycle)モデルと呼ばれるもので表わすことができ、このモデルでは、車両の前部または後部における異なる操舵輪60は、関連する操舵角αで操舵される単一の操舵輪60としてモデル化される。2輪車モデル68の各車輪―前輪63および後輪65―は、実際の車両12のすべての(例えば両方の)対応する車輪がそうであるように、関連するスリップ角αに対して同一の横力を発生すると仮定される。
【0056】
回転半径Rを有する曲線経路に追従する縦速度Uの車両12に対して、横力の合計、すなわちコーナリング力Fは、以下のように、車両12の質量Mと、結果として生じる求心加速度との積に等しくなる。
【数92】

ここで、FyfおよびFyrは、それぞれ前輪63および後輪65における横力である。重心CGまわりの車両12のヨー回転加速度は無視できるものと仮定して、前部横力および後部横力によって生じるモーメントの合計はゼロに等しく、その結果として、
【数93】

となり、ここで、bおよびcは、それぞれ重心CGから前輪63および後輪65への距離である。
【0057】
次いで、後輪65における横力Fyrは、式(74)を式(73)に代入することによって以下のように与えられる。
【数94】

ここで、bおよびcは、それぞれ重心CGから前輪63および後輪65への距離であり、Wは、後輪65によって支えられる車両12の重量である。したがって、後輪65における横力Fyrは、後輪65によって支えられる車両質量の部分(W/g)と、後輪65における横加速度との積で与えられる。
【0058】
同様に、前輪63における横力Fyfは、以下のように、前輪63によって支えられる車両質量の部分(W/g)と、前輪63における横加速度の積によって与えられる。
【数95】

ここでWは、前輪63によって支えられる車両12の重量である。
それぞれ前輪63および後輪65における横力Fyf、Fyrが与えられると、関連するスリップ角α、αが、式(72)、(75)および(76)から次のように得られる。
【数96】

【0059】
図16bに示す幾何学形状から、操舵角δは次式で与えられる。
【数97】

式(79)に、式(77)、(78)からαおよびαを代入すると次式が得られる。
【数98】

これは、次式のようにも表わされる。
【数99】

ここで、
δ=前輪における操舵角(ラジアン)
L=ホイールベース(m)
R=回転半径(m)
U=縦速度(m/sec)
g=重力加速度定数=9.81m/sec
=フロントアクスル上の荷重(kg)
=リアアクスル上の荷重(kg)
αf=フロントタイヤのコーナリング剛性(kg/rad)
αr=リアタイヤのコーナリング剛性(kg/rad)
K=アンダーステア勾配(rad/g)
=横加速度(g)
【0060】
式(80)および式(81)は、操舵角δと横加速度a=U/(gR)との関係を記述する。係数K=[W/Cαf−W/Cαr]―これは操舵角αの横加速度aに対する感度を表わすとともに、アンダーステア勾配とも呼ばれる―は2つの項からなり、各項は、車輪上の荷重W、W(前部または後部)と、関連するタイヤの対応するコーナリング剛性Cαf、Cαrとの比である。アンダーステア勾配Kの値に応じて、車両12のコーナリング挙動は、Kがゼロか、ゼロよりも大きいか、またはゼロ未満であるかどうかに応じて、ニュートラルステア、アンダーステア、またはオーバーステアのいずれかに分類される。
【0061】
ニュートラルステアを示す車両12に対して、
【数100】

したがって、一定半径旋回に対して、縦速度が変化するときに操舵角δに変化はない。
アンダーステアを示す車両12に対して、
【数101】

したがって、一定半径旋回に対して、縦速度Uが増大すると、アンダーステア勾配Kと横加速度aの積に比例して、操舵角αを増大させる必要がある。
【0062】
オーバーステアを示す車両12に対して、
【数102】

したがって、一定半径旋回に対して、縦速度Uが増加すると、アンダーステア勾配Kと横加速度ayとの積に比例して、操舵角αを減少させる必要があることになる。
操舵角αで操舵される車両12は、ヨーレートωを発生し、このヨーレートは、縦速度Uおよび回転半径Rと次式で関係づけられる。
【数103】

【0063】
式(79)から回転半径Rについて解くとともに、式(83)に代入すると、ヨーレートωと操舵角δとの間に次の関係を得る。
【数104】

これを使用して、例えば車両12はニュートラルステア挙動を示すと仮定して、関連する誤差分散間の関係を求めることができる。例えば、ニュートラルステアの場合、K=0であり、したがって式(84)は、
【数105】

【0064】
ωの誤差分散は次式で与えられる。
【数106】

縦速度Uおよび操舵角αが独立であると仮定すると、
【数107】

【0065】
ニュートラルステア条件に対して、式(85)から、
【数108】

これから、式(87)に代入すると次式となり、
【数109】

ここで、σおよびσδは、縦速度Uおよび操舵角δの誤差分散である。
【0066】
一定回転半径Rに対して、式(2)から、C=Cであり、式(13)、(88)から、ニュートラルステア条件に対して、
【数110】

これから、曲率誤差分散
【数111】

と、操舵角誤差分散
【数112】

との関係は、次式で与えられる。
【数113】

【0067】
操舵角センサ58は、様々な方法で実現することができ、それに限定はされないが、操舵シャフトの回転、またはステアリングボックスへの入力、例えばラックピニオンステアリングボックスのピニオンを計測するように適合された、角度位置センサ―例えば、シャフトエンコーダ、回転ポテンショメータまたは回転トランスフォーマー/シンクロ―;あるいはラックピニオンステアリングボックスのラックの位置を計測するように適合された、リニア位置センサが挙げられる。操舵角センサ58は、別の車両制御システム、例えば道路追従制御システムまたはサスペンション制御システムと共有することもできる。操舵角センサ58は、ヨーレートセンサ16を補完するために使用することができるとともに、車両操作に関する独立の情報を有益に提供することができる。さらに、それぞれがヨー角の測度を生成するために使用される場合に、ジャイロスコープヨーレートセンサ16は、操舵角センサ58よりも車両操作に対してより正確かつ感度が高いのにもかかわらず、操舵角δ計測誤差は、関連するヨーレートω計測誤差が車両速度に関係するジャイロスコープヨーレートセンサ16と比較して、縦速度Uとは実質的に独立である。
【0068】
操舵角δ計測値に関連する曲率誤差分散は、その下では一方の計測が他方よりもより正確である条件を識別するために、ヨーレートωに関連するものと比較することができる。ジャイロスコープヨーレートセンサ16で計測されたヨーレートωの誤差分散は以下のように与えられる。
【数114】

ここで、ωは真のヨーレート、ωはヨーレート計測値、bはドリフトを含むジャイロバイアス、bは平均ジャイロバイアスである。
【0069】
ヨーレートωの曲率誤差分散
【数115】

は、以下に説明する式(97)によって与えられる。式(91)および式(97)を等式化し、式(94)から
【数116】

を代入することによって、操舵角δ計測値に関連する曲率誤差分散は、ヨーレートω計測値に関連する曲率誤差分散と、以下の条件において等しくなる。
【数117】

【0070】
式(95)は、スイッチング曲線―例えば、図17に示すように、
【数118】

、bm=2.5926、L=3.2メートルである―を定義しており、このスイッチング曲線は、一態様において、道路曲率パラメータを求める場合に、操舵角δまたはヨーレートωのいずれを使用するかを決定するのに使用することができる。例えば、図18を参照すると、ステップ(502)において、車両12の縦速度Uは速度センサ18から読み取られる。次いで、ステップ(1802)において、縦速度Uが速度閾値Uよりも大きい場合には、道路曲率パラメータはヨーレートωを用いて求められ、ここで速度閾値Uパラメータは式(95)によって与えられ、図17に操舵角δ計測値の誤差分散
【数119】

の関数として示してあり、その後者は所与の操舵角センサ58に対して一定であると仮定される。より詳細には、ステップ(1802)から、車両12のヨーレートωが、ヨーレートセンサ16から読み取られ、ステップ(506)において、道路曲率パラメータC、Cが、(U,ω)から上述のように推定される。
【0071】
そうではなく、ステップ(1802)から、車両12の縦速度Uが速度閾値Uよりも小さい場合には、ステップ(1804)において、操舵角δが操舵角センサ58から読み取られ、次いで、ステップ(1806)において、道路曲率パラメータC、Cが(U,ω)から推定され、ここで第1のカルマンフィルタ52(ホスト状態フィルタ)へのヨーレートω計測値入力は、式(84)を用いて操舵角δおよび縦速度Uから求めることができる。縦速度Uが速度閾値Uに等しい場合には、ステップ(506)およびステップ(1806)からの道路曲率パラメータC、Cの推定値は、同一の誤差分散を有することになり、いずれの推定値でも使用することができる。
【0072】
道路曲率推定サブシステム42の関連する第2のカルマンフィルタ54、すなわち曲率フィルタ、によって使用される道路曲率パラメータCおよびCの誤差分散および共分散は、一般に、1/Uの量に依存し、ここでUは車両12の縦速度である。Uがガウスの確率変数である場合に、1/Uの厳密な平均および分散に対する解析解は現在、知られていない。その代わりに、Uの分散
【数120】

は、実質的にほとんどの場合に、実質的にUよりも小さいので、Uは非確率(non-random)変数と仮定することができる。
【0073】
したがって、道路曲率パラメータCおよびCの分散および共分散の様々な項目は以下のように導くことができる。
【数121】

【0074】
【数122】

【0075】
【数123】

【0076】
図19を参照すると、道路曲率推定サブシステム42は、様々な方法で具現化することができる。一般に、道路曲率推定サブシステム42は、ホスト状態フィルタ52.1および曲率フィルタ54.1を備え、ホスト状態フィルタ52.1は車両速度および車両ヨーに応答する測度を処理して、ホスト車両12の対応するホスト状態
【数124】

を求める。例えば、速度センサ18は、車両12の縦速度
【数125】

を車両速度の測度として提供し、ヨーレートセンサ16または操舵角センサ58のいずれか、または両方は、ヨーレート
【数126】

または操舵角
【数127】

のいずれか、または両方を車両ヨーの測度として提供し、ここで計測値のサンプルkは、対応するサンプリング時間における、サンプリングデータシステムによって提供される。例えば、やはり図4に示してある一態様において、車両ヨーの測度は、ヨーレートセンサ16からのヨーレート
【数128】

によって与えられ、ここでヨーレート
【数129】

および縦速度
【数130】

は、ホスト状態フィルタ52.1の第1のカルマンフィルタ52に直接、入力される。
【0077】
別の態様においては、車両ヨーの測度は、図18に示して上記において説明したプロセスに従って、縦速度
【数131】

の絶対値に応じて、ヨーレートセンサ16からのヨーレート
【数132】

または操舵角センサ58からの操舵角
【数133】

のいずれかによって与えられる。車両12の縦速度Uが、速度閾値Uより小さい場合には、ヨーレートプロセッサ68―例えば、信号プロセッサ26内に具現化される―は、第1のカルマンフィルタ52への入力のための、ヨーレート
【数134】

を、例えば式(85)および縦速度
【数135】

を使用して、操舵角
【数136】

から計算する。
【0078】
そうではなく、車両の12の縦速度Uが速度閾値U以上の場合には、ヨーレートセンサ16からのヨーレート
【数137】

が第1のカルマンフィルタ52に入力される。さらに別の態様においては、操舵角センサ58およびヨーレートプロセッサ68が、ヨーレートセンサ16の便益なしに、使用される。さらに別の態様においては、操舵角センサ58からの操舵角
【数138】

が第1のカルマンフィルタ52に直接、入力される。さらに別の態様においては、車両12の縦速度Uが、速度閾値Uよりも小さい場合には、操舵角58センサ58からの操舵角
【数139】

は、第1のカルマンフィルタ52に直接、入力され、この第1のカルマンフィルタは、操舵角
【数140】

を関連する状態変数として使用するように適合されている。また、車両12の縦速度Uが速度閾値U以上である場合には、ヨーレートセンサ16からのヨーレート
【数141】

は第1のカルマンフィルタ52に入力され、この第1のカルマンフィルタは、ヨーレート
【数142】

を関連する状態変数として使用するように適合されている。
【0079】
一般に、ホスト状態フィルタ52.1の関連する状態および分散の出力は、曲率推定器70によって処理されて、道路曲率パラメータC、Cの推定値およびそれに関連する誤差共分散が得られる。一般に、曲率推定器70は、第1の曲率プロセッサ72を含み、この第1の曲率プロセッサ72は、ホスト状態フィルタ52.1の関連する状態および共分散出力を、道路曲率パラメータC、C、または道路曲率推定サブシステム42の出力として直接、使用されるか、または曲率フィルタ54.1の第2のカルマンフィルタ54に入力される、その他の関係する形態―計測値ベクトル
【数143】

およびその関連する共分散マトリックス
【数144】

を含む―に変換し、その第2のカルマンフィルタの出力は、道路曲率推定サブシステム42の出力として使用されるか、またはそれは、第2の曲率プロセッサ74を使用して、道路曲率パラメータC、Cおよびその関連する共分散に変換される。例えば、第1の曲率プロセッサ72および第2の曲率プロセッサ74ならびに曲率推定器70のホスト状態フィルタ52.1は、信号プロセッサ26内に具現することができる。
【0080】
第1の態様によれば、曲率推定器70は、第1の曲率プロセッサ72および第2のカルマンフィルタ54を備え、第1の曲率プロセッサ72は、例えば式(21)に従って、計測値ベクトル
【数145】

として第2のカルマンフィルタ54へ入力するために、ホスト状態
【数146】

から道路曲率パラメータC、Cを計算する。同様に、第1の曲率プロセッサ72は、例えば、式(21)、(22)に従って、ホスト状態ベクトルの共分散
【数147】

から計測値ベクトルの関連する共分散
【数148】

を計算する。
【0081】
関連する第2のカルマンフィルタ54を図20に示してあり、付録において参照する、関連するベクトルおよびマトリックスは次式によって与えられ、
【数149】

ここで、q=6×10−7、Tはサンプリング時間間隔であり、関連するRマトリックスの分散および共分散要素は、式(97)、(102)、(109)によって与えられる。次いで、道路曲率推定サブシステム42の出力は、第2のカルマンフィルタ54の出力によって与えられる。また、曲率推定器70の第1の態様を図4に示してあり、第1の曲率プロセッサ72の動作は、その第1のカルマンフィルタ52と第2のカルマンフィルタ54の間の相互接続において暗黙的である。
【0082】
曲率推定器70の第2の態様は、第1の態様の修正形態であり、この場合には、第2のカルマンフィルタ54は、関連するフィルタリングプロセスにおいてスライドウィンドを組み入れるように適合されている。スライドウィンドの長さは、ウィンドプロセスによる過剰な遅延を避けるように適合されており、例えば、一態様においては、約5サンプルを含む。関連する第2のカルマンフィルタ54の関連するベクトルおよびマトリックス―付録において参照される―は次式で与えられ、
【数150】

ここでLはスライドウィンドの長さ、
【数151】

であり、またq=2×10−7である。関連するRマトリックスの分散および共分散は、式(97)、(102)、(109)によって与えられる。
【0083】
曲率推定器70の第3の態様は、第2の態様の修正形態であり、スライドウィンドの長さLは適応性である。例えば、ウィンド長さは、例えば以下の規則
【数152】

に従って、道路曲率パラメータC、Cに応答性を有するように適合させることができる。このルールによって、道路の直線部分に対応して、CおよびCの両方が比較的小さい場合に、より大きいウィンド長さ―例えば、25サンプルの大きさ―が与えられる。ウィンド長さLは、道路の曲線部または移行部に対応して、CまたはCのいずれかが大きい場合に、小さくなる。さらに、急激な車両の操作に対応するために、ウィンド長さLの後続の増加を1ステップ当たり1サンプルに限定することにより、操作が終了するときに、先行サンプルが曲率推定器70からの出力に悪影響を与えないようにして、ウィンド長さLを急激に減少させることができる。ウィンド長さLが変化すると、第2のカルマンフィルタ54内の関連するF、Q、およびRのマトリックスも変更される。
【0084】
第4の態様によれば、曲率推定器70は、第1の曲率プロセッサ72、第2のカルマンフィルタ54、および第2の曲率プロセッサ74を含み、第1の曲率プロセッサ72は、第2のカルマンフィルタ54に計測値ベクトル
【数153】

として入力するために、ホスト状態
【数154】

から道路曲率パラメータCおよび
【数155】

を計算し、第2の曲率プロセッサ74は、第2のカルマンフィルタ54の出力を、曲率推定器70の曲率推定値としてCおよび
【数156】

に変換する。関連する第2のカルマンフィルタ54を図21に示してあり、付録において参照されている、関連するベクトルおよびマトリックスは、次式で与えられ、
【数157】

ここでq=0.01、Tはサンプリング時間間隔であり、関連するRマトリックスの分散要素および共分散要素は、式(97)、(106)、(112)によって与えられる。
【0085】
曲率推定器70の第5の態様は、第4の態様の修正形態であり、この場合には第2のカルマンフィルタ54は、関連するフィルタリングプロセスにスライドウィンドを組み入れるように適合されている。スライドウィンドの長さは、ウィンドプロセスによって生じる過剰な遅延を避けるように適合されており、例えば、一態様においては、約5サンプルを含む。関連する第2のカルマンフィルタ54の関連するベクトルおよびマトリックス―付録において参照―は、次式によって与えられ、
【数158】

ここで、Lはスライドウィンド長さであり、
【数159】

であって、q=4×10−4である。関連するRマトリックスの分散および共分散は、式(97)、(106)、(112)によって与えられる。
【0086】
曲率推定器70の第6の態様は、第5の態様の修正形態であり、スライドウィンドの長さLは適応性である。例えば、ウィンド長さは、例えば、式(117)の規則に従って、道路曲率パラメータC、Cに応答性を有するように適合させることができる。この規則によって、CおよびCの両方が、例えば、道路の直線区間に対応して、比較的小さい場合に、より大きなウィンド長さL―例えば、25サンプルの大きさ―が得られる。ウィンド長さLは、道路の曲線部または移行部に対応してCまたはCのいずれかが大きい場合に、小さくなる―例えば、1サンプルの大きさになる。さらに、急激な車両の操作に対応するために、ウィンド長さLの後続の増加を1ステップ当たり1サンプルに限定することにより、操作が終了するときに先行サンプルが曲率推定器70からの出力に悪影響を与えないようにして、ウィンド長さLを急激に減少させることができる。ウィンド長さLが変化すると、第2のカルマンフィルタ54内の関連するF、Q、およびRのマトリックスも変更される。
【0087】
第7の態様によれば、曲率推定器70は第1の曲率プロセッサ72を含み、この第1の曲率プロセッサは、第2のカルマンフィルタ54を使用することなく、道路曲率推定サブシステム42の出力として、ホスト状態
【数160】

から道路曲率パラメータC、Cを計算する。
第8の態様によれば、曲率推定器70は、第1の曲率プロセッサ72を含み、この第1の曲率プロセッサは、ホスト状態フィルタ52.1からのホスト状態
【数161】

の軌跡のカーブフィットによって、クロソイドモデルの道路曲率パラメータC、Cを求める。ホスト車両12の位置、速度および加速度の各成分は、以下のように計算される。
【数162】

【0088】
次いで、クロソイドモデルおよび式(8)から、以下を得る。
【数163】

式(122)から(129)までを使用して、x、yおよびそれらの微分を求めた後に、式(129)から(131)を使用して、カーブフィットによって道路曲線パラメータC、Cについて解を求め、この場合に、サンプリングデータポイント―例えば、一態様においては12サンプルポイント―を使用してカーブフィットに使用するための関連するカーブの平滑さを向上させる。
【0089】
曲率推定器70の第9の態様は、第8の態様の修正形態であり、ここでスライドウィンドの長さLは適応性である。例えば、ウィンド長さは、例えば、以下の式に従って、道路曲率パラメータC、Cに応答するように適合させることができる。
【数164】

この規則によって、CおよびCの両方が、例えば、道路の直線区間に対応して、比較的小さい場合に、より大きなウィンド長さL―例えば、25サンプルの大きさ―が得られる。ウィンド長さLは、道路の曲線部または移行部に対応してCまたはCのいずれかが大きい場合に、小さくなる―例えば2サンプルの大きさになる。さらに、急激な車両の操作に対応するために、ウィンド長さLの後続の増加を1ステップ当たり1サンプルに限定することにより、操作が終了するときに、先行サンプルが曲率推定器70からの出力に悪影響を与えないようにして、ウィンド長さLを急激に減少させることができる。
【0090】
道路曲率推定サブシステム42の上記の第1から第9の態様は、道路曲率のクロソイドモデルに基づいており、この場合に、道路曲率Cは、道路に沿った経路長に対して線形に変化することが特徴であるとともに、(例えば、直線、円形または概して曲線の)異なる種類の道路が、クロソイド道路曲率パラメータC、Cの異なる値によって表わされる。クロソイドモデルは、直線(C=C=0)および円形(C=0)の道路区間に対して、より単純な形態に帰する。道路曲率推定サブシステム42の異なる態様を異なる条件下で使用することができる。例えば、ヨーレートセンサ16のサンプリング速度が比較的小さい、予測衝突検知システム10の一態様において、曲率推定器70の第7の態様は、ホスト車両12の縦速度Uが閾値、例えば約11m/secよりも大きい場合に使用され、曲率推定器70の第9の態様は、より高速において使用される。平均予測誤差と平均予測距離の比は、曲率推定器70の様々な態様を比較、評価するのに使用することができる。
【0091】
一般に、高速型道路は、それぞれが異なる道路モデルで表わされる、異なる種類の相互接続道路区間の集合としてモデル化することができる。例えば、図22は、直線経路―C=0で表わされる―を有する直線の第1の道路区間76が、3次式経路―クロソイドモデルC=C+Cxで表わされる―を有する曲線第2道路区間78に接続され、さらに2次曲線経路―C=Cで表わされる―を有する第3の道路区間80に接続されているのを示す。
図23を参照すると、道路曲率推定サブシステム42の第10の態様によれば、異なる種類の道路が、単一の包括的クロソイドモデルを使用するのではなく、異なるモデルで表わされ、それによって、少ない自由度のために、クロソイドモデルの1つまたは2つ以上の係数を拘束することで得られる、少ない自由度を有するモデルによって特徴づけられる道路区間に対して、推定精度の向上が得られる。例えば、直線道路区間76に対して、クロソイドモデルは、y=0の経路式に対応して、C=0−>C=C=0となり、2次曲線道路区間80に対しては、クロソイドモデルは、経路方程式
【数165】

に対応して、C=Cとなる。したがって、道路は、多重モデルシステム82によって表わされ、この場合には、特定の道路区間は、有限の数rのモデルの1つによって特徴づけられる。例えば、図23において、多重モデルシステム82には、r=3モデルが組み込まれて、それぞれのモデルは、別個の対応する曲率推定器70.1、70.2、70.3内に具現される。
【0092】
各曲率推定器70.1、70.2、70.3は、全体的に、図19に示すように構築されており、ホスト状態フィルタ52.1の出力を処理するように適合されている。図23では、曲率推定器70.1、70.2、70.3のすべてに対して共通のホスト状態フィルタ52.1を示してあるが、異なる曲率推定器70.1、70.2、70.3は、対応するホスト状態フィルタ52.1の異なる態様を利用することもでき、例えば、ホスト状態フィルタ52.1の一態様ではヨーレートセンサ16のみが使用され、別の態様では、ヨーレートセンサ16と操舵角センサ58とが使用される。例えば、第1の曲率推定器70.1には、直線道路モデルが組み込まれ、第2の曲率推定器70.2には、円形アークまたは2次曲線道路モデルが組み込まれ、第3の曲率推定器70.3には、一般高速型道路に適したクロソイド道路モデルが組み込まれる。
【0093】
より詳細には、直線道路モデルは、以下の特徴がある。
【数166】

円形アークまたは2次曲線道路モデルは、以下の特徴がある。
【数167】

ここで、Tはサンプリング周期、
【数168】

は推定ホスト速度であり、q=0.0005である。
【0094】
クロソイド道路モデルは以下の特徴があり、
【数169】

ここで、Tはサンプリング周期であり、
【数170】

は推定ホスト速度であり、q=0.0025である。
多重モデルシステム82は、連続(ノイズ)不確定性ならびに不連続(「モデル」または「モード」)不確定性の両方を有し、そのためにハイブリッドシステムと呼ばれる。多重モデルシステム82は、ベース状態モデル、モード状態、およびモードジャンププロセスによって特徴づけられると仮定される。
【0095】
ベース状態モデルは以下のように特徴づけられると仮定される。
【数171】

ここで、M(k)は、kで終了するサンプリング周期中に有効である、時間kにおけるモードを表わす。
モード状態、またはモードは、r個の可能性のあるモードの1つと仮定され、
【数172】

ここで、システムの構造および/または関連するノイズ成分の統計は、以下のように、異なるモードに対して異なる可能性がある。
【数173】

1つのモードから別のモードへの移行を支配する、モードジャンププロセスは、以下のように、既知の移行確率を有するマルコフ連鎖によって特徴づけられると仮定される。
【数174】

【0096】
曲率推定器70.1、70.2、70.3は並列に動作し、そこからの出力は、曲率プロセッサ84―これは、例えば、信号プロセッサ26内に具現することができる―と動作可能に結合されており、この曲率プロセッサは、相互作用(interacting)多重モデルアルゴリズム2400(IMM)に従って、道路曲率の単一の推定値と関連する共分散とを生成する。一般に、相互作用多重モデルアルゴリズム2400は、中程度の計算複雑性を伴う操作(maneuvering)ターゲットまたは非操作(non-maneuvering)ターゲットの一方または両方を追跡するのに有用であり、ここで操作は、基礎となるマルコフ連鎖によって支配されるターゲット状態モデルのスイッチングとしてモデル化される。異なる状態モデルは、異なる構造を有することが可能であり、異なる状態モデルの関連するプロセスノイズの統計は、異なるものとすることができる。相互作用多重モデルアルゴリズム2400は、完全ベイズフィルタ(exact Bayesian filter)と同様に動作するが、必要とする計算能力は実質的に少ない。各モデルは、相互作用多重モデルアルゴリズムに従って、曲率プロセッサ84によって処理される、対応するフィルタを有する。
【0097】
図24を参照すると、相互作用多重モデルアルゴリズム2400は、ステップ(2402)において、各モード条件フィルタ(mode conditioned filter)の現在サイクルにおける初期化と共に開始され、モード条件推定値と先行サイクルの共分散とが、混合確率を用いて混合される。各フィルタは、各サイクルの開始において、混合推定値を使用し、混合は、モデル間のスイッチングの確率によって求められる。各モデル、すなわちj=1,...,rに対してのフィルタjの初期推定値および共分散は、次式で与えられる。
【数175】

【0098】
次いで、ステップ(2404)において、モード条件状態は、各モデル、すなわちj=1,...,rに対して、j番モードM(k)にマッチングされたカルマンフィルタによって伝播されて、時間kにおける状態
【数176】

および共分散
【数177】

を得る。
次いで、ステップ(2406)において、それぞれのモードに対する、伝播されたモード条件推定値および共分散が結合されて、以下が得られる。
【数178】

【0099】
次いで、ステップ(2408)において、r個の並列フィルタのそれぞれに対して、状態推定値および共分散が計算され、有効なモードに条件づけされ、かつ対応するモード尤度関数に条件づけされる。j番目モード、M(k)にマッチングされたカルマンフィルタは、計測値z(k)を使用して、状態
【数179】

および共分散
【数180】

を与え、それによってフィルタjに対応する尤度関数が次式で得られる。
【数181】

【0100】
次いで、ステップ(2410)において、モデル確率μ(k)は、各モード、すなわちj=1,...,rに対して並列に更新されて、各モデルが正しいことの尤度が得られる。混合確率は、(i,j=1,...,r)に対する(i,j)のすべての組合せについて、以下のように計算される。
【数182】

次いで、モード確率が、各モード、すなわちj=1,...,rに対して、以下のように更新される。
【数183】

【0101】
次いで、ステップ(2412)において、全体状態推定値および共分散―相互作用多重モデルアルゴリズム2400の出力―が、モデル条件状態推定値と共分散を以下のように結合して計算される。
【数184】

【0102】
関連する3つのモード条件カルマンフィルタのそれぞれに対して、相互作用多重モデルアルゴリズム2400曲率フィルタへの入力として使用される、計測値およびそのノイズ共分散は、次式で与えられ、
【数185】

ここで、
【数186】

はホストフィルタからの状態誤差共分散マトリックスであり、JCXは次式で与えられるヤコビアンマトリックスである。
【数187】

【0103】
マルコフモデルは、各走査時間において、ターゲットがモード状態iから状態jに移行する確率pijがあると仮定することによって、実現される。これらの確率は、事前に既知であり、例えば、以下のようなモデル確率移行マトリックスとして表わすことができると仮定される。
【数188】

【0104】
図1および図25を参照すると、道路曲率推定サブシステム42’の別の態様によれば、予測衝突検知システム10は、信号プロセッサ26に動作可能に結合された、車両ナビゲーションシステム86および関連するマップシステム88をさらに含む。例えば、車両ナビゲーションシステム86はGPSナビゲーションシステムを含み、このGPSナビゲーションシステムは、少なくとも、道路面上の現在車両位置を指示する2次曲線車両位置測度
【数189】

例えば、関連する誤差共分散
【数190】

を有する、
【数191】

を提供し、ここで、xおよびyは車両の世界絶対座標、例えば、世界測地システムWGS(world geodetic system)の緯度と経度である。車両ナビゲーションシステム86は、また、標高および時間情報、および/または計測値の関連する速度を提供することもできる。
【0105】
車両位置測度
【数192】

は、マップシステム88と一緒に使用されて、ホスト車両12に対する道路の位置および曲率座標を特定し、ここでマップシステム88には、絶対座標系におけるディジタルマップデータベースと、ホスト車両12がその上に位置する道路の―世界絶対座標における―車両位置測度
【数193】

を、上記の道路曲率およびターゲット状態推定に使用された座標系における、ホスト絶対座標に変換するためのアルゴリズムとが組み込まれている。したがって、マップシステム88は、以下の変換を行い、
【数194】

ここで、(x,y)は、車両ナビゲーションシステム86からの車両位置測度
【数195】

の世界絶対座標であり、
【数196】

は、[x,y]に最も近い道路の中心の座標を包含するベクトルであり、
【数197】

は、ベクトル
【数198】

における道路中心点座標に対応する曲率パラメータを包含する配列である。
【0106】
したがって、
【数199】

は、道路の中心上のポイントを表わし、
【数200】

は、そのポイントにおける道路の曲率パラメータを表わす。
【数201】

の誤差共分散は、
【数202】

であり、
【数203】

の誤差共分散は、関連するマップデータにおけるノイズまたは誤差を表わす
【数204】

によって与えられる。マップシステム88は、道路位置座標および関連する曲率パラメータ情報の両方を記憶するか、またはその情報が必要なときに、記憶された道路中心の位置座標から曲率パラメータを計算することができる。車両ナビゲーションシステム86からのホスト車両12位置と、ホストフィルタ52.1から、または車両ナビゲーションシステム86から、あるいはその両方からの情報に基づくホスト車両12のヘディングが与えられると、世界絶対座標は、並進(translation)と回転の組合せによって、ホスト車両絶対座標に変換することができる。
【0107】
より詳細には、車両位置測度
【数205】

が与えられると、一態様においては、マップシステム88は、関連するマップデータベースを使用して、以下の選択基準
【数206】

を満足する関連するマップデータベース内の道路を発見することによって、ホスト車両12が存在する可能性が最も高い道路を特定し、ここで、Tは選択閾値、
【数207】

は、車両位置測度
【数208】

に最も近い道路上の点である。2つ以上の道路が選択基準を満足する場合には、別の道路曲率推定システム42によって推定された曲率
【数209】

とマップシステム88のマップデータベースから予期される道路それぞれの曲率
【数210】

とを比較することによって、最も可能性の高い道路が選択されるとともに、車両位置測度
【数211】

にもっと近い点の曲率
【数212】

が、他方の曲率推定システム42からの推定曲率
【数213】

に最も近い、マープデータベースからの道路が、マップデータベースからの最も可能性の高い道路として選択され、その最も近い点における関連する曲率は、以下のように与えられる。
【数214】

【0108】
図25を参照すると、車両ナビゲーションシステム86からのホスト車両12の位置に最も近い道路上の点の、マップシステム88からの曲率
【数215】

は、対応する曲率フィルタ54.1’の関連するカルマンフィルタ54’に対する計測値として使用され、この計測値は、対応するマップベース道路曲率推定値
【数216】

および関連する共分散
【数217】

を生成するのに使用される。
【0109】
図26を参照すると、道路曲率推定サブシステム42’’の別の態様によれば、正常な運転条件下では、ターゲット車両26は道路34に追従すると仮定されるとの前提に基づいて、―レーダーセンサ14によって計測される―ターゲット車両36の関連する軌跡
【数218】

を使用して、道路34の道路曲率の推定値を求めることができる。t番目のターゲットの運動学は、以下に示す一定加速度運動力学方程式によって与えられると仮定し、これは補助フィルタ90.1の拡張カルマンフィルタ9内に具現化され、
【数219】

ここで、Tはサンプリング周期、上添え字(・)は特定のターゲットを表わし、上添え字(・)は、フィルタが補助であることを示すのに使用される。
【0110】
関連する計測関数
【数220】

は非線形であり、次式で与えられる。
【数221】

拡張カルマンフィルタ90は、関連するヤコビアンマトリックスを使用して、非線形計測関数
【数222】

の線型化を行い、ターゲット状態
【数223】

の推定値、およびそれに関連する誤差共分散
【数224】

をもたらし、これらは、関連する計測プロセッサ92によって変換され、それによって計測入力
【数225】

および関連する誤差共分散
【数226】

を、関連する曲率フィルタ94.1の関連するカルマンフィルタ94に供給する。計測入力
【数227】

および関連する誤差共分散
【数228】

は次式で与えられる。
【数229】

【0111】
関連する曲率フィルタ94.1の関連するカルマンフィルタ94のシステム方程式は、次式
【数230】

で与えられ、関連する計測マトリックス
【数231】

は以下のように与えられる。
【数232】

【0112】
道路曲率推定サブシステム42’’の補助フィルタ92.1および曲率フィルタ94.1は、付録に従って動作する。
図27を参照すると、別の態様によれば、予測衝突検知システム10.1は、複数の道路曲率推定サブシステム42.1、42.2、...、42.Nを含み、これらのそれぞれは、上述した道路曲率推定サブシステム42、42’または42’’の様々な態様のいずれか1つに従って、例えば、図4、19、23、25、26に示すように動作する。例えば、一態様においては、予測衝突検知システム10.1には、第1の道路曲率推定サブシステム42.1および第2の道路曲率推定サブシステム42.2が組み込まれており、第1の道路曲率推定サブシステム42.1は、ホスト車両計測値に応答する道路曲率推定サブシステム42であり、第2の道路曲率推定サブシステム42.2は、車両ナビゲーションシステム86および関連するマップシステム88からの計測値に応答する道路曲率推定サブシステム42’である。
【0113】
第1の道路曲率推定サブシステム42.1から、道路34に沿って現在位置から距離lにおける、曲率推定値および関連する誤差共分散は、それぞれ
【数233】

で与えられ、ここでRC0、RC1およびRは、それぞれC、CおよびCの誤差共分散である。
第2の道路曲率推定サブシステム42.2から、対応する曲率推定は、C(l)で与えられ、対応する誤差分散はRで与えられ、ここでRは一般に一定のスカラーである。
【0114】
曲率推定値と関連する誤差共分散は、道路曲率融合サブシステム96によって、例えば、以下のように結合される。
【数234】

ここで、GおよびGは重みであり、次式で与えられる。
【数235】

【0115】
融合曲率C(l)および関連する誤差共分散R(l)は、例えばホスト車両12またはターゲット車両36の位置の推定を改善するため、あるいは衝突予測のために、その他のプロセスが使用することができる。例えば、図27の態様において、融合曲率C(l)および関連する誤差共分散R(l)は、拘束ターゲット状態を推定するために、拘束ターゲット状態推定サブシステム46に入力され、ここで拘束ターゲット状態推定サブシステム46および関連する非拘束ターゲット状態推定サブシステム44、ターゲット状態決定サブシステム48、ならびにターゲット状態融合サブシステム50は、図4に示す態様に従って動作する。
【0116】
上記の詳細な説明においては、特定の態様について詳細に説明するとともに、添付の図面に示したが、本開示の全体的教示に照らせば、これらの詳細に対して様々な修正形態および変更形態を創案できることを、当業者は理解するであろう。したがって、開示した特定の配設は説明のためだけのものであり、本発明の範囲に対して限定的なものではなく、本発明の範囲には、本明細書の記述から導出可能なすべてのクレーム、およびそれらすべての均等物の全範囲が与えられるべきである。
【0117】
付録―カルマンフィルタリングの説明
カルマンフィルタは、1組のノイズの多い計測値から、ノイズにさらされる運動系の状態および関連する共分散を推定するために使用される。
運動系は次式で定義される。
【数236】

ここで、
【数237】

はシステム状態ベクトル、Fは、システムマトリックスであり、
【数238】

は、各状態変数に対応するノイズ変数の関連するベクトルであり、各ノイズ変数は、平均値0と、関連する分散ベクトルRの対応する要素によって与えられる分散Qとを有する。
【0118】
関連するシステム計測値の運動状態は次のよう与えられる。
【数239】

ここで、
【数240】

はシステム計測値ベクトル、Hは計測マトリックスであり、
【数241】

は各計測変数に対応するノイズ変数の関連するベクトルであり、各ノイズ変数は、平均値0と、関連する分散ベクトルRの対応する要素によって与えられる分散とを有する。関連する共分散マトリックスRの要素の値は、関連する動作条件を代表する組に対して、関連するシステムを代表する計測値を分析することにより、事前に求めることができる。関連する共分散マトリックスQの要素の値は、モデリング誤差を説明する。一般に、関連するマトリックスF、Q、H、Rは時間と共に変化することができる。
【0119】
時間kにおける計測値
【数242】

と、状態
【数243】

の初期値および時間k−1における関連する共分散
【数244】

が与えられると、カルマンフィルタを使用して、時間kにおける関連する状態
【数245】

および関連する共分散
【数246】

が推定される。
フィルタリングプロセスにおける第1のステップは、時間kにおける状態
【数247】

および関連する共分散
【数248】

の推定値を、時間k−1の推定値に基づいて、以下ように計算することである。
【数249】

【0120】
次のステップは、時間kにおける、計測値
【数250】

および関連する共分散マトリックスSを、以下のように予測することである。
【数251】

次のステップは、状態ベクトル
【数252】

および関連する共分散
【数253】

を更新するために使用される、ゲインマトリックスGを以下のように計算することである。
【数254】

最後に、状態ベクトル
【数255】

および関連する共分散マトリックス
【数256】

が、時間kにおいて、関連する計測値
【数257】

に応答して、以下のように推定される。
【数258】

【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】予測衝突検知システムに関連するハードウエアを示すブロック図である。
【図2】予測衝突検知システムで使用されるレーダービームの到達範囲を示す図である。
【図3】予測衝突検知システムの動作を示すことを目的とするドライビングシナリオを示す図である。
【図4】予測衝突検知システムのハードウエアと関連する信号処理アルゴリズムを示すブロック図である。
【図5】予測衝突検知システムの関連する信号処理アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図6】道路の曲率パラメータを特定するために使用する幾何学形状を示す図である。
【図7】アークの幾何学形状を示す図である。
【図8a】直線道路に対するターゲット位置の推定の例を示す図である。
【図8b】直線道路に対する道路曲率パラメータの推定の例を示す図である。
【図8c】直線道路に対する横速度の推定の例を示す図である。
【図8d】直線道路に対する道路曲率パラメータの推定の例を示す図である。
【図9a】図8a〜8dに対応する、直線道路上の非拘束フィルタリングによるターゲット状態RMS誤差の例を示す図である。
【図9b】図8a〜8dに対応する、直線道路上の拘束フィルタリングによるターゲット状態RMS誤差の例を示す図である。
【図10a】曲線道路に対するターゲット位置の推定の例を示す図である。
【図10b】曲線道路に対する道路曲率パラメータの推定の例を示す図である。
【図10c】曲線道路に対する横速度の推定の例を示す図である。
【図10d】曲線道路に対する道路曲率パラメータの推定の例を示す図である。
【0122】
【図11a】図10a〜10dに対応する、曲線道路上の非拘束フィルタリングによるターゲット状態RMS誤差の例を示す図である。
【図11b】図10a〜10dに対応する、曲線道路上の拘束フィルタリングによるターゲット状態RMS誤差の例を示す図である。
【図12a】レーン変更を含む、直線道路に対するターゲット位置の推定の例を示す図である。
【図12b】レーン変更を含む、直線道路に対する道路曲率パラメータの推定の例を示す図である。
【図12c】レーン変更を含む、直線道路に対する横速度の推定の例を示す図である。
【図12d】レーン変更を含む、直線道路に対する道路曲率パラメータの推定の例を示す図である。
【図13a】レーン変更を含む、曲線道路に対するターゲット位置の推定の例を示す図である。
【図13b】レーン変更を含む、曲線道路に対する道路曲率パラメータの推定の例を示す図である。
【図13c】レーン変更を含む、曲線道路に対する横速度の推定の例を示す図である。
【図13d】レーン変更を含む、曲線道路に対する道路曲率パラメータの推定の例を示す図である。
【図14】予測衝突検知システムの別の態様に関連するハードウエアを示すブロック図である。
【図15】操舵された車輪を示すフリーボディ図である。
【図16a】旋回中の車両の2輪車モデルの幾何学形状を示す図である。
【図16b】図16aに示す操舵された車輪の幾何学形状を示す図である。
【図17】スイッチング曲線を示す図である。
【図18】図17に示すスイッチング曲線に関連するプロセスを示すフローチャートである。
【図19】ホスト車両状態推定値から道路曲率を推定するための、道路曲率推定サブシステムを示すブロック図である。
【図20】曲率推定器の第1の態様に関連する曲率フィルタを示す図である。
【0123】
【図21】曲率推定器の第4の態様に関連する曲率フィルタを示す図である。
【図22】様々な種類の道路と関連する道路モデルを示す図である。
【図23】道路曲率推定サブシステムの第10の態様を示すブロック図である。
【図24】相互作用多重モデルアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図25】関連するマップシステムからの車両位置および関連する道路曲率データに応答する曲率推定サブシステムを示すブロック図である。
【図26】道路上のターゲット車両のレーダー計測値に応答する、曲率推定サブシステムを示すブロック図である。
【図27】複数の道路曲率推定サブシステムおよび関連する道路曲率融合サブシステムを含む、予測衝突検知システムを示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.道路上の車両の縦速度を計測し、それに応答して縦速度の測度を生成するように適合された速度センサ;
b.前記車両のヨーレートを計測し、それに応答してヨーレートの第1の測度を生成するように適合されたヨーレートセンサ;
c.前記車両の少なくとも1つの操舵輪に関連する操舵角を計測し、それに応答して操舵角の第1の測度を生成するように適合された操舵角センサ;および
d.前記速度センサと、前記角速度センサと、前記操舵角センサとに動作可能に結合されたプロセッサ、
を含み、前記車両の前記縦速度が閾値よりも大きい場合には、前記プロセッサは、前記ヨーレートの第1の測度と、前記縦速度の測度とに応答して、前記道路の曲率を推定するように適合されており、前記車両の前記縦速度が閾値よりも小さい場合には、前記プロセッサは、前記道路の曲率に拘わらず、前記操舵角の測度と、前記縦速度の測度とに応答して、前記道路の少なくとも1つの曲率パラメータの推定値を生成するように適合されている、道路曲率推定システム。
【請求項2】
プロセッサが、少なくとも1つのカルマンフィルタを含み、該少なくとも1つのカルマンフィルタは、縦速度の測度並びに少なくとも次の一方:ヨーレートの第1の測度、および操舵角の測度と縦速度の測度とに応答するヨーレートの第2の測度に応答して、少なくとも1つの曲率パラメータの推定値を生成するように適合されており、前記少なくとも1つの曲率パラメータは、道路の曲率を表す、請求項1に記載の道路曲率推定システム。
【請求項3】
少なくとも1つのカルマンフィルタが、第1および第2のカルマンフィルタを含み、前記第1のカルマンフィルタは、縦速度の測度と、ヨーレートの第1または第2の測度とに応答して、ホスト状態の推定値を含む出力を生成するように適合されており、前記ホスト状態は、ヨーレート、ヨー加速度、縦速度および縦加速度を含み、前記第2のカルマンフィルタは、前記第1のカルマンフィルタからの前記出力に応答して、少なくとも1つの曲率パラメータの推定値を生成するように適合されている、請求項1に記載の道路曲率推定システム。
【請求項4】
プロセッサが、少なくとも1つのカルマンフィルタを含み、該少なくとも1つのカルマンフィルタは、縦速度の測度とヨーレートの第1または第2の測度とに応答して、車両の軌跡の推定値を含む出力を生成するように適合されており、前記プロセッサは、前記軌跡のカーブフィットから少なくとも1つの曲率パラメータの少なくとも1つの推定値を求めるように適合されている、請求項1に記載の道路曲率推定システム。
【請求項5】
カーブフィットが、スライドウィンドをまたいで行われる、請求項4に記載の道路曲率推定システム。
【請求項6】
スライドウィンドの長さが、少なくとも1つの曲率パラメータの少なくとも1つの推定値に応答するように適合されている、請求項5に記載の道路曲率推定システム。
【請求項7】
a.道路上の車両の縦速度を計測し、それに応答して縦速度の測度を生成するように適合された速度センサ;
b.前記車両のヨーレートの測度の供給源;および
c.前記速度センサと、前記ヨーレートの測度の前記供給源とに動作可能に結合されたプロセッサ、
を含み、前記プロセッサは少なくとも1つのカルマンフィルタを含み、該少なくとも1つのカルマンフィルタは、前記縦速度の測度と前記ヨーレートの測度とに応答して、少なくとも1つの曲率パラメータに関連する推定値を生成するように適合されており、前記少なくとも1つの曲率パラメータは、前記道路の曲率を表し、少なくとも1つの前記カルマンフィルタは、スライドウィンドを含む、道路曲率推定システム。
【請求項8】
スライドウィンドの長さが、少なくとも1つの曲率パラメータの少なくとも1つの推定値に応答するように適合されている、請求項7に記載の道路曲率推定システム。
【請求項9】
a.道路上の車両の縦速度を計測し、それに応答して縦速度の測度を生成するように適合された速度センサ;
b.前記車両のヨーレートの測度の供給源;および
c.前記速度センサと、前記ヨーレートの測度の前記供給源とに動作可能に結合されたプロセッサ、
を含み、前記プロセッサは、第1および第2のカルマンフィルタを含み、前記第1のカルマンフィルタは、前記縦速度の測度と前記ヨーレートの測度とに応答して、複数のホスト状態変数の推定値を含む出力を生成するように適合されており、前記複数のホスト状態変数は、ヨーレート、ヨー加速度、縦速度および縦加速度を含み、前記第2のカルマンフィルタは、複数の前記ホスト状態変数から計算される計測値に応答して、少なくとも1つの状態変数の推定値を生成するように適合されており、少なくとも1つの曲率パラメータは、前記第2のカルマンフィルタの少なくとも1つの状態変数から計算される、道路曲率推定システム。
【請求項10】
第2のカルマンフィルタの少なくとも1つの状態変数が、曲率の時間微分に関係する、請求項9に記載の道路曲率推定システム。
【請求項11】
a.道路上の車両の縦速度を計測し、それに応答して縦速度の測度を生成するように適合された速度センサ;
b.前記車両のヨーレートの測度の供給源;および
c.前記速度センサと、前記ヨーレートの測度の前記供給源とに動作可能に結合されたプロセッサ、
を含み、前記プロセッサは、対応する複数の異なる道路モデルに関連する複数の曲率推定器を含み、前記曲率推定器のそれぞれは、対応する前記異なる道路モデルの少なくとも1つの関連する曲率パラメータを推定するように適合されており、前記プロセッサは、前記異なる道路モデルの最も可能性の高いものを、最も可能性の高い道路モデルとして選択し、前記プロセッサは、前記最も可能性の高い道路モデルの前記少なくとも1つの曲率パラメータを、前記道路の曲率の推定値として出力する、道路曲率推定システム。
【請求項12】
プロセッサが、マルコフ連鎖を特徴とするモードジャンププロセスを組み入れた相互作用多重モデルアルゴリズムを含む、請求項11に記載の道路曲率推定システム。
【請求項13】
相互作用多重モデルアルゴリズムが、
a.モード条件フィルタ初期化プロセス;
b.モード条件状態伝播プロセス;
c.モード条件状態伝播と共分散伝播との組合せ;
d.モード条件更新プロセス;
e.確率評価および更新プロセス;および
f.状態推定値および共分散推定値を出力するプロセスを含む、請求項12に記載の道路曲率推定システム。
【請求項14】
複数の異なる道路モデルが、直線道路モデル、2次曲線道路モデル、およびクロソイド道路モデルから選択される、少なくとも2つの道路モデルを含む、請求項11に記載の道路曲率推定システム。
【請求項15】
a.道路上のホスト車両の縦速度の測度と前記ホスト車両のヨーレートの測度とに応答して、第1の組の少なくとも1つの第1の曲率パラメータを推定するように適合された、第1の道路曲率推定サブシステム、前記ホスト車両の位置の測度に応答するマップデータベースからの第2の組の少なくとも1つの第2の曲率パラメータの測度に応答して、前記第2の組の少なくとも1つの第2の曲率パラメータを推定するように適合された、第2の道路曲率推定サブシステム、前記道路上を移動するターゲット車両のレーダー計測値に応答して第3の組の少なくとも1つの第3の曲率パラメータを推定するように適合された、第3の道路曲率推定サブシステムから選択される、複数の道路曲率推定サブシステム;および
b.前記第1の組の少なくとも1つの第1の曲率パラメータ、前記第2の組の少なくとも1つの第2の曲率パラメータ、および前記第3の組の少なくとも1つの第3の曲率パラメータの内の、少なくとも2つを融合して、第4の組の少なくとも1つの第4の曲率パラメータを、前記道路の曲率の推定値として、生成するように適合されたプロセッサ、
を含む道路曲率推定システム。
【請求項16】
第2の道路曲率推定サブシステムが、
a.ホスト車両の位置の測度を提供するように適合された車両ナビゲーションシステム;
b.前記位置の測度に応答して第2の組の少なくとも1つの第2の曲率パラメータの測度を提供するように適合されたマップデータベース;および
c.前記第2の組の少なくとも1つの第2の道路曲率パラメータを推定するように適合されたカルマンフィルタ、
を含む、請求項15に記載の道路曲率推定システム。
【請求項17】
第3の道路曲率推定サブシステムが、
a.ターゲット車両の軌跡の測度を提供するように適合されたレーダーセンサ;
b.前記ターゲット車両の前記軌跡の測度に応答して、ターゲット状態ベクトルを提供するように適合された拡張カルマンフィルタ;および
c.前記ターゲット状態ベクトルに応答する第3の組の少なくとも1つの第3の曲率パラメータの測度に応答して、前記第3の組の少なくとも1つの第3の曲率パラメータの推定値を生成するように適合された、曲率フィルタ、
を含む、請求項15に記載の道路曲率推定システム。
【請求項18】
プロセッサが、第1の組の少なくとも1つの第1の曲率パラメータ、第2の組の少なくとも1つの第2の曲率パラメータ、および第3の組の少なくとも1つの第3の曲率パラメータの内の、少なくとも2つの重みづけ組合せから、少なくとも1つの第4の曲率パラメータを生成する、請求項15に記載の道路曲率推定システム。
【請求項19】
プロセッサが、第1の組の少なくとも1つの第1の曲率パラメータに関連する第1の誤差共分散、第2の組の少なくとも1つの第2の曲率パラメータに関連する第2の誤差共分散、および第3の組の少なくとも1つの第3の曲率パラメータに関連する第3の誤差共分散の内の、少なくとも2つの重みづけ組合せによる少なくとも1つの第4の曲率パラメータに関連する、誤差共分散を生成する、請求項15に記載の道路曲率推定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図12d】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図13d】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2007−516906(P2007−516906A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547495(P2006−547495)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/043695
【国際公開番号】WO2005/062984
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(399042247)オートモーティブ システムズ ラボラトリー インコーポレーテッド (28)
【Fターム(参考)】