説明

道路構造

【課題】現場での施工が容易であり、しかも地震等によってもバリアを生じにくくして災害時の避難、救急や防災活動を可能にする道路構造を提供する。
【解決手段】盛土により或いは地山を掘削して路床16を形成したのち、路床上にプレキャスト板17を設置し、透水性のコンクリートブロック18を敷き詰める。プレキャスト板17は剛性の大なるFRP製で、上面を開放した長いプレート状をなし、内部が格子状のリブ19により仕切られて矩形状をなす多数のブロック嵌合部21を形成している。コンクリートブロック18は四側面が段状をなし、ブロック嵌合部21に嵌め込んだとき、ブロック18間に隙間23を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園や広場、道路等を構成する現場での施工が容易な道路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
舗装道路には大別すると、アスファルト舗装道路とコンクリート舗装道路がある。前者のアスファルト舗装道路の構造は、図1に示すように盛土又は地山を掘削して転圧し、或いは突き固めた路床1と、路床上に形成され、クラッシャラン、鉄鋼スラグ、砂等を敷設して転圧した下層路盤2及び砕石、砂利等を敷設して転圧した上層路盤3と、該路盤上に形成され、アスファルト混合物を敷設して転圧した基層4及びアスファルトを敷設して転圧した表層5よりなっている。
【0003】
後者のコンクリート舗装道路の構造は、図2に示すように、図1に示すアスファルト舗装道路の構造において、アスファルト基層4及び表層5に代えてコンクリート盤6を設けたもので、コンクリート盤6は上層路盤3上に型枠を設置したのちコンクリートを打ち込んで形成される。コンクリート盤6は、上層路盤3上に薄いアスファルト混合物の層を敷設したのち、その上に形成されることもある。
【0004】
上述する道路構造は、主として車道に用いられている。道路構造としては、このほか主として歩道用のものや、公園や広場などの歩道専用のものであるが、路床上にインターロッキングブロックと称されるコンクリートブロック塊やコンクリートパネル(以下、単にコンクリートブロックという)を敷き詰めた構造のものも知られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述する従来の舗装道路は、現場で施工するのに多くの工程を有し、期間も長くかかっていた。また地震時には、舗装道路ではアスファルトにヒビが入って通行の弊害や、道路の歪みや陥没などの浮き沈みが発生することもあり、これにより生ずるバリアで救急活動や防災活動の妨げとなったり、車椅子の被災者が避難場所に移動するのに妨げとなることがあり、そのために破壊されたアスファルト舗装道路を修復してライフラインの早期の復旧を必要とし、被災救急費用以外に舗装道路修復費用もかかり、余分なコストがかかって、需要者や自治体の負担も大きかった。また、降雨時において従来の舗装道路では、路面上を雨水が流れて水たまりを形成し、歩行を妨げることもあった。また、路面上を流れる雨水は道路に隣接する側溝にしか保留することができず、大量の降雨時には側溝の排水許容量を超えて溢れ、洪水を起こすことも、近年ではみられる。
【0006】
一方、コンクリートブロックを敷き詰めた構造のものにおいては、施工は容易であるが、車両、ことに重量のある車両が走行するときや地震時に、コンクリートブロックが浮き沈みしてバリアができ、上記と同様の問題を生じる他、車両の走行や上述の浮き沈み現象による人工的、自然的且つ経過年数によって個々のコンクリートブロックにヒビ割れが生じることがあった。また、降雨時にコンクリートブロック間に流入した雨水がコンクリートブロック下の地面を掘削または地盤を緩ませるなどしてコンクリートブロックに浮き沈みを発生させ、さらに、コンクリートブロック間の隙間に雑草が生い茂って景観を損ねたり、雑草でコンクリートブロックが押し上げられることによりバリアができることがあり、上記と同様の余分なコストがかかって、需要者や自治体の負担も大きかった。また、降雨時においてコンクリートブロックは、雨水が地下に浸透する過程で雨水が飽和状態になると、コンクリートブロックの路面上を雨水が流れて水たまりを形成し、歩行を妨げることもあった。
【0007】
本発明は、現場での施工が容易であり、しかも地震等によってもバリアを生じにくくして災害時の避難、救急や防災活動を可能にする他、車両重量や浮き沈み現象による人工的、自然的な破壊を防ぎ、耐用年数も従来より伸びる道路構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係わる発明は、内部に連続形成又は断続ないし部分的に形成したリブにより複数のブロック嵌合部を有して上面を開放し、盛土又は掘削した地山により形成される路床或いは該路床上に敷設される路盤上に設置されるプレート状の1ないし複数のプレキャスト板と、該プレキャスト板のブロック嵌合部に1ないし複数並べて嵌着される板状のブロックよりなることを特徴とする。
【0009】
本発明で用いるプレキャスト板は、例えばコンクリート製、鋳鋼鉄製、FRP製、硬質樹脂製などで、リブはブロックと同じ高さに形成されるか、或いはブロックより低く形成される。
【0010】
ブロックは好ましくはコンクリート製、または、インターロッキングブロックであるが、桝状の枠にアスファルトを充填したものであってもよい。そしてその平面形状は、好ましくは長方形又は正方形の矩形状をなすが、四角形以外の多角形、円形或いは楕円形であってもよい。また、ブロックは廃材などのリサイクル材とセメント等の混合によって形成されたものでもよく、特にガラス質は、酸性雨を中和する働きがあることが業界の研究で知られていることから、廃材ガラスを混合した廃材使用のブロックも好ましい。
【0011】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、ブロックが透水性または保水性で、下面が上面より面積が小さく、ブロック内又はブロック間に水が溜まる隙間が形成できるようにしたことを特徴とする。
【0012】
本発明の下面が上面より面積の小さなブロックとしては、ブロックが例えば平面視で矩形である場合、少なくともその一側面が段状、テーパ状、曲面状をなすもの、下面に凹溝を有するもの、複数の脚部を有するもの等を例示することができる。
【0013】
請求項3に係わる発明は、請求項2に係わる発明において、プレキャスト板が少なくとも一か所に前記隙間に溜まる水を側溝に排出するための排水口を有することを特徴とする。
【0014】
本発明における排水口は、プレキャスト板に形成され、内外に通ずる開口であってもよいし、該開口に例えば格子状のグレーチングを取付けたり、多孔質のポーラス材を装着したものであってもよい。また、プレキャスト板の中央の底部に排水口を設け、多孔質のポーラス材等を装着して、水を地下に緩やかに浸透させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係わる発明の道路構造によると、盛土又は地山を掘削した路床或いは地盤上に1ないし複数のプレキャスト板を設置し、ブロック嵌合部にブロックを並べて嵌め込むだけで施工することができ、省力化と施工期間の短縮化を図ることができ、施工コストを低減させることができること、ブロックの1ないし複数はプレキャスト板のリブに保持されるためガタ付きがなく、またリブをブロックの周りを取囲むようにしてエンドレスに形成し、かつその高さをブロックの高さと同じにすれば、ブロック間に隙間をなくすことができること、その上を重量のある車両が通行したり、地震により地盤が歪むようなことがあっても、プレキャスト板上に置かれたブロックの破壊が起きにくく、かつ連なったブロック面が凸凹になりにくく滑らかになり、バリアを生じにくくするため、歩行時の躓きが生じにくくなる。また車両、ことに車椅子による移動を可能とし、路床上にブロックを敷き詰めた従来の道路構造に比べ、災害時の救急活動や防災活動、更には車椅子の被災者が避難場所へ避難するのが可能となること、ブロック間の隙間より雑草が生えて景観を損ねたり、雑草でブロックが押し上げられるようなことがないこと、降雨時にコンクリートブロック間に流入した雨水がコンクリートブロック下の地面を掘削して地盤を緩め、道路表面を凸凹にするようなことを防ぐことができること、などの効果を奏する。
【0016】
請求項2に係わる発明によると、ブロックは透水性があるため、路面に溜まる水を吸収して路面に水溜りができにくいうえ、保水が可能であり、しかもプレキャスト板上には、保水したブロックと、ブロックの形状で有する下部の段状、テーパ状、曲面状の隙間に適量の水を溜めることができるため、常時路面を冷却する効果を有し、ブロックとプレキャスト板の相乗効果によってヒートアイランド現象の緩和に寄与することができる。
【0017】
請求項3に係わる発明によると、ブロックを透水してプレキャスト板上に溜まる水はリブが断続的或いは部分的に形成される場合、リブ間を通って排水口より排水され、またリブがブロックの周りにエンドレスに形成される場合、水はリブの高さまでプレキャスト板上に溜まるが、水位がリブの高さを越えると、水がリブを越え、隣の格子桝状のブロック嵌合部から更に隣のブロック嵌合部へと次々に流入したのち排水口より排出される。こうして路面上に水が溢れて水溜りができるのを防ぐことができる。また、プレキャスト板内で水を保留した後、水が側溝に排水される構造であるため、側溝とプレキャスト板による水の排水又は貯水許容量が増し、洪水を防止する効果も上がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面により説明する。
図3は、車道11と、歩道12と、車道11と歩道12を仕切る縁石13と、歩道脇に設置される側溝14よりなる道路を示すもので、歩道12の道路構造は、図4に示すように路床16と、該路床上に設置されるプレキャスト板17と、該プレキャスト板17に装填されるコンクリートブロック18よりなり、プレキャスト板17は例えばコンクリート製又は剛性の大なるFRP製で、上面を開放した長いプレート状をなし、内部が(プレキャスト板17端部の側壁より高さの低い)格子状のリブ19により仕切られて矩形状をなす多数のブロック嵌合部21を形成している(図5参照)。そして側溝側の側壁下部には側溝14に通ずる開口した排水口22が形成されている。また,プレキャスト板17は,同一形状のプレキャスト板を1ないし複数連結した構造であってもよい。図3に示す20は溝蓋である。
【0019】
コンクリートブロック18は透水性で図6に示すように、四側面がそれぞれ段状をなして上下面とも矩形状をなすか、下面が上面より面積が小さくなっている。そして段状をなす各側面の下部の高さhは、前記リブ19と同じ高さで、下部より突出する上部の突出量dはリブ幅の1/2となっている。
【0020】
本実施形態の歩道12の施工は、従前のように盛土により或いは地山を掘削して路床16を形成したのち、プレキャスト板17を設置し、該プレキャスト板17のブロック嵌合部21にコンクリートブロック18を縦及び横方向に並べて嵌め込む。ブロック嵌合部21の長さ及び幅は、いずれもコンクリートブロック18の長さ及び幅の整数倍となっており、しかもリブ19は上述するように、ブロック18の段状をなす下部の高さと同じで、リブ幅は上部の突出量dの1/2であるため、ブロック18はブロック嵌合部21に隙間なく縦横に嵌め込まれ、しかもリブ19を覆い、隣接するブロック嵌合部21に嵌め込まれるブロック18とも隙間が形成されることがないようにしてある。ブロック嵌合部21に嵌め込まれたコンクリートブロック18間には、図4に示すようにブロック下部に隙間23が形成されるが、この隙間はリブ幅と同じ幅のdで、ブロック18の前後左右に形成されるため、ブロック18を嵌め込んだブロック嵌合部21は水路となる幅dの隙間が縦横に形成されるようになる。
【0021】
本実施形態の歩道の道路構造は以上のように構成され、歩道12に降り注ぐ雨水のうち、コンクリートブロック18を透過した雨水は、コンクリートブロック18内で保水を保つとともに、隙間23に溜められる。溜まった雨水は、水位がリブ19に達すると、コンクリートブロック18を透水して該リブ19を越え、隣、更には次のブロック嵌合部21に流入する。そして側溝脇のブロック嵌合部21に達すると、該嵌合部21の排水口22より側溝14に排水される。
【0022】
本実施形態の道路構造によると、路床上にプレキャスト板17を設置し、ブロック嵌合部21にコンクリートブロック18を並べて嵌め込むだけで施工することができること、地震で路床16が歪むことがあっても、個々の大きさに成形されたプレキャスト板17同士を、鉄板やボルトを使用して頑固に連結させることにより撓むことを防止でき、仮に撓みが発生したとしてもその撓みは緩やかで、個々のブロック間に段差ができるようなことはなく、歩行者が躓いたり、車椅子による移動の障害となることがないこと、緊急時には救急車や消防車を走行させて救急活動や防災活動を行うことも可能であること、コンクリートブロック間より雑草が生えることがなく、雑草により景観を損ねたり、コンクリートブロック18が押し上げられて表面が凸凹になることがないこと、降雨時にコンクリートブロック間に流入した雨水がコンクリートブロック下の地面を掘削して地盤を緩め、道路表面を凸凹にするようなことがないこと、降雨時には水がブロックを浸透することにより路面に水溜りができにくいこと、ブロック間の隙間に溜まった水やブロック18に溜まり保水される水が路面を冷却する効果を有し、ヒートアイランド現象を緩和させることができること、水の貯留はリブ19の高さまで達すると、排水口22より排水されるようになり、路面に溢れて水溜りができることがないこと等の効果を奏する。
【0023】
本実施形態の道路構造は、歩道12に関するものであるが、車道11も同様に構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の道路構造は、歩道及び車道のいずれにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】アスファルト舗装の道路構造の断面図。
【図2】コンクリート舗装の道路構造の断面図。
【図3】道路の斜視図。
【図4】本発明に係わる歩道の道路構造の断面図。
【図5】プレキャスト板の平面図。
【図6】コンクリートブロックの斜視図。
【符号の説明】
【0026】
11・・車道
12・・歩道
13・・縁石
14・・側溝
16・・路床
17・・プレキャスト板
18・・コンクリートブロック
19・・リブ
20・・溝蓋
21・・ブロック嵌合部
22・・排水口
23・・隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に連続形成又は断続ないし部分的に形成したリブにより複数のブロック嵌合部を有して上面を開放し、盛土又は掘削した地山により形成される路床或いは該路床上に敷設される路盤上に設置されるプレート状の1ないし複数のプレキャスト板と、該プレキャスト板のブロック嵌合部に1ないし複数並べて嵌着される板状のブロックよりなることを特徴とする道路構造。
【請求項2】
ブロックが透水性または保水性で、下面が上面より面積が小さく、ブロック内又はブロック間に水が溜まる隙間が形成できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の道路構造。
【請求項3】
プレキャスト板が少なくとも一か所に前記隙間に溜まる水を排出するための排水口を有することを特徴とする請求項2記載の道路構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−303208(P2007−303208A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133979(P2006−133979)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【出願人】(505312338)株式会社カムイネット (6)
【出願人】(506161681)株式会社ヤマムラ (1)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】