説明

道路標示装置および道路標示装置の設置構造

【課題】発光ダイオードと、この発光ダイオードからの光をライン状に成形して外部へ射出する投光光学系とを備えた道路標示装置において、路側線等の道路標示や道路の境界などを標示させる光のラインの長さを調整可能な道路標示装置を提供する。
【解決手段】支柱Sに取り付けられた道路標示装置1に内蔵された投光光学系の光射出方向が、道路上に対して鉛直面内において傾斜しており、投光光学系が、道路上に光射出方向に沿った前後方向に延びるライン状の光を投光部21から照射して、投光部21からの光L2によりラインKを描画するものであり、投光光学系の光射出方向の鉛直面内における傾斜角度を調整する傾斜角度調節機構を有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停止線などの道路標示又は路側線や中央線などの道路の境界を光の照射によって表す道路標示装置と、道路標示装置の設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路上に設けられた停止線や、道路の境界を表す路側線等の道路標示は、照射された光を光源方向へ向けて反射させる再帰反射性を有するガラスビーズなどを含有することで、ヘッドライトを点灯させて走行する車両などからの視認性を良好にしている。
【0003】
一方、前記のガラスビーズによる視認性の向上は、光源を持たない歩行者などに対しては比較的効果が低く、また降雪時に雪に埋もれてしまった場合には全く効果がなくなるため、この視認性を確保するために、種々の発明が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、路肩と車道とを識別するために路面に表示されている車道外側線を照明する車道外側線照明装置であって、道路側部の構造物に設置される筐体と、この筐体内に配設され前記車道外側線を照明する照明ユニットと、この照明ユニットを回動可能に保持する保持部材とを備え、前記照明ユニットを車輌の走行方向に沿って並設された多数の発光ダイオードで構成したことを特徴とする車道外側線照明装置、が開示されている。この車道外側線照明装置は、発光ダイオードから出た光を集光し略平行な光線に変換して車道外側線に導く光学素子を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−260401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記略平行な光線について、照射範囲の長手方向の大きさの調整が困難であり、広範囲の車道外側線を照明する場合は、多数の車道外側線照明装置を長手方向に沿って直列的に設置する必要があるという問題点がある。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、路側線等の道路標示や道路の境界などを標示させる光のラインの長さを調整可能な道路標示装置を提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る道路標示装置は、発光ダイオードと、この発光ダイオードからの光をライン状に成形して外部へ射出する投光光学系とを備えた道路標示装置であって、前記投光光学系の光射出方向が、道路上又は道路の境界上に対して鉛直面内において傾斜しており、前記投光光学系が、前記道路上又は道路の境界上に前記光射出方向に沿った前後方向に延びるライン状の光を照射してラインを描画するものであり、前記投光光学系の光射出方向の鉛直面内における傾斜角度を調整する傾斜角度調節機構を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る道路標示装置によれば、投光光学系の光射出方向が、道路上又は道路の境界上に対して鉛直面内において傾斜しており、道路上又は道路の境界上に前記光射出方向に沿った前後方向に延びるライン状の光を照射してラインを描画するので、前記光のラインによって、停止線などの道路上の道路標示や、路側線や中央線など道路の境界の位置を効率良く標示させることができ、夜間や積雪時における視認性を向上させることができる。
【0010】
また、投光光学系の光射出方向が、道路上又は道路の境界上に対して鉛直面内において傾斜しており、道路上又は道路の境界上に前記光射出方向に沿った前後方向に延びるライン状の光を照射するとともに、傾斜角度調節機構により傾斜角度を調整することにより、光のラインが形成される位置を光射出方向に沿った前後方向で調整できる。そしてこの調整によって、光のラインの形成位置と投光光学系との距離を変化させて、形成される光のラインの長さを調整することができる。
【0011】
また、前記道路標示装置に支柱取付部を設け、この支柱取付部を介して立設する支柱の側面に取り付け可能に形成すれば、新たに設置場所を設けることなく、道路に立設された既存の視線誘導標などの支柱を利用して、その側面へ取り付けできるので、その設置を容易にすることができる。
【0012】
また、本発明に係る道路標示装置の設置構造によれば、道路の境界に沿って間隔をあけて立設された複数の支柱の側面に、前記支柱取付部を介して前記道路標示装置をそれぞれ取り付けると共に、前記各道路標示装置によって各支柱間にライン状の光を照射してラインを描画させるので、道路の境界に沿って立置された既設の視線誘導標等の各支柱を利用して前記道路標示装置を容易に設置できる。そして、前記各支柱間に前記光のラインを描画させるので、道路の境界を明確に標示させて、車両の運転手や歩行者などに、その道路の線形を正確に把握させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る道路標示装置及び道路標示装置の設置構造によれば、形成される光のラインの長さを調整して、停止線や区画線等の道路標示又は路側線や中央線などの道路の境界などを標示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示す平面図(イ)、正面図(ロ)及び側面図(ハ)。
【図2】図1におけるA−A断面図。
【図3】図1におけるB−B断面図。
【図4】本発明の道路標示装置を支柱の側面に取り付けた状態を示す図であり、(イ)は投光部からの光を手前側へ照射させた状況を示す図、(ロ)は(イ)よりも前方へ光を照射させた状況を示す図。
【図5】本発明に係る道路標示装置の設置構造の一実施形態を示す図。
【図6】変形実施形態に係る道路標示装置を模式的に示す断面図。
【図7】変形実施形態に係る道路標示装置の結像領域を示す模式図。
【図8】各結像領域におけるライン状の光の照射態様を示す図。
【図9】変形実施形態に係る道路標示装置の設置構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を図面に基づき具体的に説明する。
図面において、1は道路標示装置である。道路標示装置1は、箱形状に形成された本体部2を備え、本体部2の前面には投光部21が形成されている。また道路標示装置1には、支柱取付部5が前記本体部2の後方に配置されて設けられており、この支柱取付部5は支持部3を介して本体部2に取り付けられている。
【0016】
図2は図1のA−A断面図であり、図3は図1のB−B断面図である。
本体部2は、中空の箱形形状に形成されて前方が開口するケース22と、この開口を塞ぐ透光性の保護カバー23とを備えており、ケース22内に内装する発光ダイオード25の発する光を前記保護カバー23を透過させて前方へ射出させるように設けられている。
【0017】
前記ケース22内に内装される発光ダイオード25は、その発する光の向きを前方の保護カバー23へ向けて取り付けられており、本実施形態においては5個の発光ダイオード25が上下一列に列設されてそれぞれ設けられている。
【0018】
更に、前記ケース22内には投光光学系である集光レンズ24が内装されている。この集光レンズ24は、保護カバー23と各発光ダイオード25との間に配置されており、具体的には保護カバー23の後方近傍に配置されている。また、前記集光レンズ24は、後方に配置された各発光ダイオード25から放射状に発せられる光L1を集光して、前方に配置された保護カバー23より光L2として射出する。
【0019】
具体的には、集光レンズ24は放射状に発せられる光L1を、上下方向より左右方向へより強く集光させるように設けられており、詳細には集光レンズ24は前記光L1を左右方向へ集光させ、上下方向へ集光させないシリンドリカルレンズであり、より詳細には集光レンズ24は略平板形状の外形に形成されて光L1を上記のように集光させるシリンドリカルフレネルレンズ(リニアフレネルレンズ)である。なお、このシリンドリカルフレネルレンズは、その溝の方向が上下方向の延びるように設けられている。
【0020】
また、本体部2の左右の外側面には、外方へ突出する突部26がそれぞれ1個ずつ合計2個形成されている。これは後述する支持部3への取り付けに用いられる。
【0021】
支柱取付部5は、前記本体部2の後方に配置され、道路標示装置1を立設する支柱の側面へ取り付けるために設けられている。この支柱取付部5は、前方に配置された前板部51と、後方に配置された後板部55とを、2本のボルト・ナットNで取り付けて構成されている。そして立設する支柱の外側面を、これら前板部51と後板部55とで挟み、更に前記ボルト・ナットNを締め込むことで、支柱の外側面へ前記前板部51と後板部55とを狭着させて、支柱へ支柱取付部5を取り付けるように設けている。
【0022】
支柱取付部5の前板部51は、前面が平面となされ、後面には後方へ開口するボルト溝53が左右両端に至る全長に亘って形成されている。このボルト溝53は、前板部51の後面より突出する2本の突条52の間に形成されており、その開口幅が奥部より幅狭に設けられている。具体的には、上方に配置された突条52の後端は下方へ向かって折曲され、下方に配置された突条52の後端は上方へ向かって折曲されて、各突条52間に形成されたボルト溝53の開口幅を幅狭に形成させている。
【0023】
前記ボルト溝53は、その内部に前記ボルト・ナットNのボルト頭部を収納可能な大きさに形成されると共に、前記ボルト溝53の開口幅は前記ボルト・ナットNのボルト雄ねじ部を挿通可能な大きさに形成されている。そして、前記ボルト・ナットNの2本のボルトは、前記ボルト溝53の内部にそのボルト頭部を収納させ、そのボルト雄ねじ部をボルト溝53の開口より後方へ突出させて、前記前板部51にそれぞれ取り付けられている。
【0024】
支柱取付部5の後板部55は、後方へ突出する略半円周形状の曲板形状に形成された巻回板部56と、この巻回板部56の左右の両縁より外側方向へそれぞれ延設される平板形状の平板部57とを備える形状に形成されている。また、平板部57には前方から後方へ貫通する円形の貫通穴58が形成されており、この貫通穴58は各平板部57にそれぞれ1個ずつ合計2個形成されている。そして、各貫通穴58には、前記前板部51より突出するボルト・ナットNのボルト雄ねじ部をそれぞれ挿通され、これにボルト・ナットNのナットが各平板部57の後方より締結されて、前記前板部51と後板部55とが取り付けられている。
【0025】
前記支柱取付部5の後板部55の巻回板部56は、その内側面の形状が、道路標示装置1を取り付ける支柱の外側面に対応した形状に形成されている。そして、前板部51と後板部55との間に支柱を挟み込み、巻回板部56の内側面を支柱の外側面へ当接させて、前記ボルト・ナットNをそれぞれ締め込むことで、支柱取付部5が支柱の側面に強固に固定され、ボルト・ナットNの締結を解くことで容易に取り外すことができる。
【0026】
上記のように支柱取付部5を設けることで、道路標示装置1を円形断面の支柱のあらゆる位置に取り付けることができるので、その取り付け位置の高さや方向を自在に調整できる。
【0027】
支持部3は、平板形状の取付板部31と、この取付板部31の左右の両縁から前方へそれぞれ延設される合計2個の支持板部32とを備えた、断面コの字形状に形成されている。そして前記取付板部31の後面と、前記支柱取付部5の前板部51の前面とを当接させて、支持部3と支柱取付部5とをねじ止め(図示せず)によって固定させている。
【0028】
前記各支持板部32には、左右に貫通する円形の貫通穴33がそれぞれ形成されており、この各貫通穴33は、前記本体部2に形成された2個の突部26に対応する位置と大きさに形成されている。そして、前記各支持板部32が前記本体部2の左右の側面を挟み込むと共に、前記各貫通穴33に前記各突部26が挿通されて、前記本体部2が支持部3に取り付けられている。本体部2は、2個の突部26を介して支持部3に軸支されており、各支持板部32間で上下に回動可能に取り付けられている。このように本体部2に形成された2個の突部26と支持部3に設けられて前記突部26が挿通する貫通孔33により、集光レンズ24の光射出方向の鉛直面内における傾斜角度を調節する傾斜角度調節機構が構成される。
【0029】
本体部2と、支持部3と、支柱取付部5とを上記のように設けた本実施形態の道路標示装置1は、立設する支柱Sの側面のあらゆる位置に支柱取付部5を介して取り付け可能であり、また、支持部3に軸支された本体部2を上下に回動させて、前面に設けた投光部21から射出される光の向きを上下方向に調整可能に設けている。つまり、傾斜角度調節機構によって、集光レンズ24の光射出方向の鉛直面内における傾斜角度が調整可能とされている。
【0030】
図4は図1の道路標示装置を支柱の側面に取り付けた状態を示す図であり、(イ)は投光部21からの光を手前側へ照射させた状況を示し、(ロ)は(イ)よりも前方へ光を照射させた状況を示している。
【0031】
本図において、支柱Sに取り付けられた道路標示装置1は、投光部21を前方斜め下方向へ向け、投光部21から射出される光L2を道路上へ投射するように設けられている。つまり、集光レンズ24の光射出方向が、道路上に対して鉛直面内において傾斜している。また、投光部21から射出される光L2は、本体部2に内装された集光レンズ24によって左右方向へ集光されているため、前後に長い光のラインKを支柱Sの前方の道路上に描くように射出される。つまり、集光レンズ24が、道路上に光射出方向に沿った前後方向に延びるライン状の光を照射してラインを描画する。そして、支持部3に取り付けられた本体部2を傾斜角度調節機構により回動させることによって、投光部21からの光L2の向きを上下へ調整できる。つまり、集光レンズ24の光射出方向の鉛直面内における傾斜角度を調節することができる。具体的には、図4(イ)のように支柱S近くに光のラインKを形成させることができ、図4(ロ)のようにより前方へ遠い位置に光のラインKを形成させることもできる。
【0032】
このように道路標示装置1を設置させることで、道路脇に立設させた支柱Sより道路上に設けられた車両の停止線上に重なるように光のラインKを形成させれば、夜間における停止線の視認性を向上でき、また積雪時における停止線の視認性を確保できる。また、光のラインKの形成位置は車両停止線上に限るものではなく、道路の区画線や、駐車場の駐車位置の区画線に重なるように設けてもよく、区画線等が形成されていない道路の境界などを示すように設けてもよく、その他の道路上又は道路の境界上に設けてもよい。
【0033】
本体部2に内装された集光レンズ24は、発光ダイオード25の発する光L1を上下方向へは集光させないので、前方斜め下方へ向けられた投光部21から発せられる光L2は上下方向へは放射状に射出される。
【0034】
このため、支持部3に取り付けられた本体部2を回動させて、投光部21からの光L2をより手前側へ照射させるほど、投光部21と路面との距離が小さくなって光のラインKの前後の長さが短くなり、光L2をより前方の遠い位置へ射出させるほど、光のラインKの前後の長さが長くなる。
【0035】
図4の、投光部21からの光L2を前方へ遠い位置へ射出した(ロ)において形成された光のラインKは、その前後の長さT2がより手前側へ射出した(イ)において形成された光のラインKの前後の長さT1より長く形成される。これは投光部21と光のラインKとの距離が、(イ)よりも(ロ)の方が大きいためである。
【0036】
このように、本体部2の回動によって、光のラインKの前後の長さを調整できるので、道路標示装置1の設置数を必要以上に増やすことなく、適切な道路標示を行うことができる。
【0037】
本実施形態の道路標示装置1は、支持部3に対して本体部2を回動させることで、道路上に描く光のラインKの前後の長さを調整しているが、支柱Sにおける道路標示装置1の上下の取付位置を調整することで、投光部21と道路上との距離を調整させて、道路上に描く光のラインKの前後の長さを調整させることも可能である。
【0038】
図5は本発明に係る道路標示装置の設置構造の実施の一形態を示す図である。
本図において、手前側の道路Rと奥側の歩道Hとを区画するように、縁石Eが列設されており、この縁石E上には、支柱Sの上端に固定された視線誘導標Dが縁石Eに沿って複数列設されている。
【0039】
本実施形態において、視線誘導標Dの設置のために立設された各支柱Sの側面に、それぞれ道路標示装置1が取り付けられて設けられている。なお、本実施形態の道路標示装置の設置構造に用いられる道路標示装置1は、図1〜図4に示した実施形態のものと同一である。
【0040】
支柱Sに取り付けられた各道路標示装置1は、その投光部21を前方斜め下方向へ向け、列設された隣りの支柱Sとの間における縁石E上に、光のラインKをそれぞれ形成するように設けられている。
【0041】
上記のように、各道路標示装置1を設けることで、夜間や積雪時においても光のラインKが明確に視認されて道路Rの境界と線形とが把握できるので、道路Rを走行する車両が縁石Eへ接触するような事故の発生が抑制でき、また歩道Hを通行する歩行者などが縁石Eへ蹴躓くなどの事故の発生が抑制できる。
【0042】
また、各道路標示装置1を支柱Sの側面へ取り付けできるので、道路標示装置1の設置のために新たに支柱Sを設けることなく、視線誘導標Dなど他の交通安全施設を設置するために道路近傍に設けられた支柱Sを用いて道路標示装置1を設置させることができる。
【0043】
本実施形態の道路標示装置の設置構造では、1本の支柱Sに1個の道路標示装置1を取り付けているが、これに限るものではなく、1本の支柱Sに複数の道路標示装置1を取り付けてもよい。
【0044】
この場合、道路標示装置1を、道路Rの車両進行方向側と、その反対側とにそれぞれ取り付けて、支柱Sの両側に光のラインKをそれぞれ形成させることもできるが、走行する車両が支柱Sへ接触するなどの事故の発生を想定した場合、道路標示装置1を車両に対向する側とは反対側の側面へ取り付けることで、道路標示装置1へ車両が直接接触するような状況の発生を低減できるので好ましい。また、このように道路標示装置1を設置することで、投光部21からの光が車両の進行方向へ向けて照射されるので、この光が走行する車両の運転手の目に直接入るような状況が生じにくくなされ、道路標示装置1からの光によって車両の運転手の目がくらむような問題の発生が抑制できる。
【0045】
また、本実施形態の道路標示装置の設置構造では、各道路標示装置1を視線誘導標Dを設置するための支柱Sを利用して設置しているが、これに限るものではなく、他の交通安全施設を設置するための支柱Sに取り付けて設置させても良い。
【0046】
また、本実施形態の道路標示装置の設置構造では、道路Rと歩道Hとの境界に各道路標示装置1を設けているが、これに限るものではなく、路側帯とその外側との境界に各道路標示装置1を設けてもよく、その他の道路の境界に設けても良い。
【0047】
また、図1〜図4に示す道路標示装置1において、前記投光部21の外周に沿うように形成させたひさしを本体部2の前方へ突出させて設ければ、投光部21への着雪や雨滴の付着を抑制できるので、光のラインKを効率良く形成できる。
【0048】
また、投光光学系が、発光ダイオードからの光を屈折させて略平行光(平行光又はこの平行光から若干広がる光又は若干狭まる光を含む。)にする集光レンズと、当該集光レンズの光射出側前方に設けられて、当該集光レンズにより集光された光を上下方向に拡げる光学素子(例えば、シリンドリカルレンズ又はレンチキュラーレンズ)とを有するものであっても良い。このようなものであれば、集光レンズの焦点距離によりラインの幅を調整することができるとともに、シリンドリカルレンズの焦点距離によりラインの長さを調整することができる。このように構成すると、前記実施形態のように傾斜角度調節機構によりラインの幅、長さを調節できるだけでなく、投光光学系のレンズによりラインの形状を調節できる。
【0049】
さらに、投光光学系が、図6に示すように、発光ダイオード25からの光を屈折させて、所定位置において前記発光ダイオード25の光軸方向からみた発光形状の像を拡大して結像させる第1屈折要素71と、当該第1屈折要素71から出た光を上下方向に拡げて、前記発光ダイオード25の光軸方向から見た発光形状の像をライン状に変形する第2屈折要素72とを有するものであっても良い。
【0050】
第1屈折要素71は例えばフレネルレンズ(結像レンズ)であり、このフレネルレンズ71と発光ダイオード25との距離は図示しない位置調節機構により、道路上において像を結ぶように調節される。なお、位置調節機構としては、例えば発光ダイオード25を支持する支持部材8を前後方向、上下方向及び左右方向に位置調節するものが考えられる。第2屈折要素72はレンチキュラーレンズであり、フレネルレンズ71の光軸方向の前方に設けられている。その形状は、細い半円筒形状のかまぼこ型レンズを上下方向に多数並べてあるものである。このように上下方向にかまぼこ型レンズが並べてあるので、発光ダイオード25から射出され、道路上に結像される発光ダイオード25の像は上下方向に伸長された状態となる。なお、第2屈折要素72はシリンドリカルレンズであっても良く、詳細にはシリンドリカルフレネルレンズ(リニアフレネルレンズ)である。
【0051】
このように構成することで、道路上に照射される光は、平行光ではなく、結像したものとなり、照射形状(光のライン)の輪郭がぼやけるといった不具合が生じることを防止することができ、道路上又は道路の境界上に輪郭のはっきりしたラインを描画することができる。
【0052】
ここで、投光光学系の光射出方向が道路上に対して鉛直面内で傾斜していることから、道路上に照射されるライン状の光のうち結像する部分は一部である(図7参照)。ここで結像領域に伴うラインの見え方を図8に示す。この図8において結像領域をラインの手前側とした場合、奥側のラインが太くなりぼやけてしまう。一方、結像領域をラインの中央とした場合及びラインの奥側とした場合、ライン全体としてほぼ同一の太さでラインの輪郭もはっきりしていることが分かる。つまり、このように発光ダイオードの像を道路上に結像させる場合には、その結像領域をラインの中央から奥側にすることが望ましい。
【0053】
なお、図8から分かるように、いずれの場合も、手前側の光量が多いにもかかわらず、奥側の光量が低下してしまいラインが薄くなっている様子が分かる。この問題を好適に解決するためには、図9に示すように、2つの道路標示装置1を対向配置して、各道路標示装置1からのラインを重ね合わせることで、ライン全体の光強度を均一化させることが考えられる。
【0054】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 道路標示装置
2 本体部
21 投光部
22 ケース
23 保護カバー
24 集光レンズ
25 発光ダイオード
26 突部
3 支持部
31 取付板部
32 支持板部
33 貫通穴
5 支柱取付部
51 前板部
52 突条
53 ボルト溝
55 後板部
56 巻回板部
57 平板部
58 貫通穴
N ボルト・ナット
D 視線誘導標
E 縁石
H 歩道
K 光のライン
R 道路
S 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードと、この発光ダイオードからの光をライン状に成形する投光光学系とを備えた道路標示装置であって、
前記投光光学系の光射出方向が、道路上又は道路の境界上に対して鉛直面内において傾斜しており、前記投光光学系が、前記道路上又は道路の境界上に前記光射出方向に沿った前後方向に延びるライン状の光を照射してラインを描画するものであり、
前記投光光学系の光射出方向の鉛直面内における傾斜角度を調整する傾斜角度調節機構を有する道路標示装置。
【請求項2】
立設する支柱の側面に取り付け可能な支柱取付部を有する請求項1記載の道路標示装置。
【請求項3】
道路標示装置の設置構造であって、
前記道路標示装置が、発光ダイオードと、この発光ダイオードからの光をライン状に成形して外部へ射出する投光光学系とを備え、前記投光光学系の光射出方向が、道路上又は道路の境界上に対して鉛直面内において傾斜しており、前記投光光学系が、前記道路上又は道路の境界上に前記光射出方向に沿って前後に延びるライン状の光を描画するものであり、前記投光光学系の光射出方向の鉛直面内における傾斜角度を調整する傾斜角度調節機構を有するとともに、立設する支柱の側面に取り付け可能な支柱取付部を備えており、
道路に沿って間隔をあけて立設された複数の支柱の側面に、前記支柱取付部を介して前記道路標示装置がそれぞれ取り付けられるとともに、
前記各道路標示装置によって前記各支柱間にライン状の光を照射してラインが描画されるようになされたことを特徴とする道路標示装置の設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255271(P2012−255271A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128086(P2011−128086)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【出願人】(508035355)パイフォトニクス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】