説明

道路橋の目地部における樋の取付け構造

【課題】道路橋用の伸縮装置の桁遊間で対面する側板間にゴム弾性を有する構成材料からなる排水樋を跨設する樋の取付け構造において、側板を固定ささせた後でその対面部に排水樋を取付けられるようにすること
【解決手段】樋が左右の側縁の外側に突出させた突出片とその間で樋の外側に長手方向に沿って突出させた摘み片を備え、左右の突出片間の幅を側板間の間隔以上の大きさに形成し、側板の対面側に突出片を係止させるための受け部を設け、樋を側板の間に下方から押し入れた後摘み片を利用して樋を引き下げて突出片を受け部に係止させられるようにした

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路橋用の伸縮装置の桁遊間で対面する側板間にゴム弾性を有する構成材料からなる排水樋を跨設する樋の取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の排水樋は、桁遊間に配置される伸縮装置の櫛歯と一体に形成された側板に取付けられるものであり、特許文献1では、遊間内で対面する側板の下端部外側(道路桁側)に樋の両側端部をボルト止めし、その状態で側板を目地凹部内で位置決めして固定した後、そのまま凹部内に埋設する取付け構造を開示している。
【0003】
しかしながら、この取付け構造では、伸縮装置を目地凹部内に設置する際に、互いに独立している双方の側板の下部に跨がって柔軟な排水樋を現場で取付けなければならず、取付け作業を迅速に行なえない不都合がある。
また、道路は、平坦な路面であっても雨水を側溝へ円滑に流下させるために、側溝側に向って1°程度の緩やかな下がり勾配をもたせてあり、伸縮装置はこの勾配に合わせて取付けられることになる。しかしながら、排水路の関係で道路の桁遊間の排水を路面の側縁側に流下させられない場所では、勾配を逆向きにしなければならないから、この排水樋の取付け構造を採用することができない不都合もある。
【特許文献1】特許第30216558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、道路橋用の伸縮装置の桁遊間で対面する側板間にゴム弾性を有する構成材料からなる排水樋を跨設する樋の取付け構造において、側板を固定させた後でその対面部に排水樋を取付けられるようにすることを課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を解決するための技術的手段は、(イ)樋が左右の側縁の外側に突出させた突出片とその間で外側に長手方向に突出させた摘み片を備え、(ロ)両突出片間の幅を側板間の間隔以上の大きさに形成し、(ハ)側板の対面側に突出片を係止させるための受け部を設け、(ニ)樋を側板の間に下方から押し入れた後摘み片を利用して樋を引き下げて突出片を受け部に係止させられるようにしたこと、である。
【0006】
ゴム弾性を有する構成材料で形成された樋は、そのゴム弾性を利用して左右の側縁を内側へ撓ませることができる。このように撓ませることによって、両側縁に外側へ開こうとする復元弾性力が働くことになる。
樋の突出片間の幅は側板間の間隔以上の大きさに形成されているから、樋の左右の側縁を内側へ撓ませて桁遊間の下部に臨ませ、そのまま樋を押し上げて行くと、樋はその復元弾性力によって左右の側縁の外側に突出させた突出片が側板を押圧し、その状態で上昇することになる。側板の対面側には突出片を固定するための受け部が設けられているから、この受け部を通過した段階で突出片は再び外側へ移動し、受け部上に臨むことになる。
【0007】
樋の外側には左右の突出片間において長手方向に沿って摘み片が突出されているから、これを把持して樋を引き下げると、突出片は確実に受け部に向って加工してこれに受け止められ、樋は側板を横方向から押圧しながら受け部に係止することになる。
したがって、排水樋は、桁遊間に伸縮装置の側板が固定された後であっても、その対面部に取付けることができる。
【0008】
樋を形成するゴム弾性を有する構成材料としては、天然ゴム、クロロプレン系合成ゴム、スチレン・ブタジェン系合成ゴムなどを好適に使用することができる。
樋は、最初から排水を受けるために断面U字形やV字形などに形成しておく他、シート状ないし帯状に形成して施工時に上記の形状に屈曲させられるものであってもよい。
【0009】
突出片や摘み片は、樋を成形する際に同時に成形することができ、これらの形態は、後述する固定構造に対応して設計することになる。
摘み片については、樋の幅の長さ、屈曲形状、可撓性などを勘案して、中心部の外側に一条だけ設けるのか、中心部の左右或いは突出片の基端部の近傍に一条ずつ設けるのか、さらには摘み片の先端部に膨出部を設けるのか、などについても適宜選択することになる。
【0010】
側板に設ける受け部は、樋の傾斜角を勘案して、側板の表面に全長にわたって溝を刻設し、或いは、側板の表面に所定の間隔で受け部を突設するなどして設けられる。後者の突設型の受け部を用いる場合には、突出片の上部又は受け部の下部を傾斜面で構成し、上昇する樋が円滑にこれを越えられるようにしておくことが望ましい。
【0011】
突出片と受け部とを接着剤を用いて係止させると、両者を固着一体化することができる。両者の接触面の形態は、接着機能を十分発揮させられるように設計しておくことが望ましい。
また、突出片の先端を下向きに屈曲させると共に受け部の上面に凹部を形成し、この凹部に突出片の屈曲先端部を嵌入させるいわゆる凹凸嵌合構造を採用しても、両者を一体的に固定することができる。
この凹凸嵌合面に接着剤を介在させれば、両者の固定効果を一層強力なものとすることができる。
道路橋の遊間に流下する雨水は側溝へ流下する雨水に比べて大幅に少ないから、樋上に大きな水の重さが加わることはない。したがって、樋の固定部にかかる荷重は、そのほとんどが樋自体の重さとなるから、樋が受け部によって支持される限り、突出片と受け部との係止構造は問わない。
【発明の効果】
【0012】
側板の対面部に排水樋を取付けられる結果、側板が固定された後に目地遊間を利用してその下側から排水樋を取付けられる利点がある。
また、側溝側へ下り勾配となっている路面に対して、遊間に流下する雨水を中央分離帯側へ導水しなければならない場合であっても、樋が側溝側への下り勾配に抗する逆勾配を持てるように受け部を配置しておくことによって逆勾配の導水を容易に行なえるから、目地凹部の寸法設計を変更しなくても対応させられる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、道路橋の桁遊間1の断面図、図2はその要部拡大図である。
遊間1で対面する床版2、2とその上の舗装層3、3とで形成される目地凹部5、5に伸縮装置10を取付ける状態を示している。
伸縮装置10を構成する櫛歯11、11を支持する側板12、12は、左右の床版2、2に下部を埋設させたコンクリートアンカー13、13、アンカーバー14、14、補強鉄筋15、15などからなる支持部材によって、床版2、2の端面に対面状に固定されている。
櫛歯11の下方には、バックアップ材17を位置せしめ、櫛歯11とバックアップ材17との間にシーリング材16を充填している。
【0014】
遊間1に臨ませて側板12、12間に跨設する樋20は、本実施形態ではクロロプレン系合成ゴムで形成してあって、その左右の側縁21、21に全長にわたって突出させた突出片22、22間の幅は、図3に示したように、側板12、12の間隔よりも大きい幅に形成し、使用時に両端縁を内側へ撓ませるようにしている。
樋20は、バックアップ材17の下に取付けるようにしてあり、側板12、12の外側に受け部としての金属製の突起24、24を突設させている。突起24、24は、側板12、12の下端縁と平行に略50cm間隔で溶接によって固着させてあり、その表面には接着剤25、25を塗布した状態となっている。
【0015】
樋20は、両側縁21、21を内側に撓ませ、側板12、12の下方から遊間1に臨ませ、その状態で上に向って押し込まれるが、樋の両側縁の上面23、23が図示したような傾斜面に形成してあって、突出片22は、この傾斜面を利用して突起24、24を乗り越えてその上に臨むことになる。
次いで、樋の外側に突出させている摘み片26を把持して樋20を下に引っ張ると、突出片22は、その下面は接着剤25を塗布した突起24上に重合され、両者は接着されることになる。
なお、符号27は、樋20と側板12との間をシールするためのシーリング材である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】道路橋の桁遊間の断面図
【図2】桁遊間の要部拡大図
【図3】樋の正面図
【符号の説明】
【0017】
1桁遊間、 2床版、 3道路の舗装層、 5目地凹部、 10伸縮装置、 11櫛歯、12側板、 13コンクリートアンカー、 14アンカーバー、 15補強鉄筋、 16櫛歯下部のシーリング材、 17バックアップ材、 20排水樋、 21樋両端部、22樋の突出片、 23突出片の上部傾斜面、 24受け部としての突起、 25接着剤、 26摘み片、 27樋のシーリング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路橋用の伸縮装置の桁遊間で対面する側板間にゴム弾性を有する構成材料からなる排水樋を跨設する樋の取付け構造において、樋が左右の側縁の外側に突出させた突出片とその間で外側に長手方向に突出させた摘み片を備え、両突出片間の幅を側板間の間隔以上の大きさに形成し、側板の対面側に突出片を係止させるための受け部を設け、樋を側板の間に下方から押し入れた後摘み片を利用して樋を引き下げて突出片を受け部に係止させられるようにした樋の取付け構造。
【請求項2】
突出片と受け部とを接着剤を用いて係止させる請求項1に記載の樋の取付け構造。
【請求項3】
突出片と受け部とを凹凸嵌合によって係止させる請求項1又は2に記載の樋の取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−150849(P2010−150849A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331926(P2008−331926)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(503177557)ボンドエンジニアリング株式会社 (8)
【Fターム(参考)】