説明

遠心分離式オイルフィルタ

【課題】噴射ノズルからの噴射オイルがハウジングの底部に溜まるオイル液面に直接衝突することを抑制してオイル中の気泡の発生を抑制することができる遠心分離式オイルフィルタを提供する。
【解決手段】本フィルタ1Aは、オイル流入口6及びオイル流出口7が形成されたハウジング4と、前記ハウジング内で回転自在に支持される容器状の遠心ロータ11と、前記オイル流入口から前記ハウジング内に流入されるオイルを前記遠心ロータ内に導入するオイル導入部10と、前記遠心ロータに設けられ且つ該遠心ロータ内に導入されたオイルを外部に噴射する噴射ノズル19と、前記噴射ノズルからの噴射オイルが前記ハウジングの底部に溜まるオイル液面に直接衝突することを抑制するバッフルプレート20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離式オイルフィルタに関し、さらに詳しくは、噴射ノズルからの噴射オイルがハウジングの底部に溜まるオイル液面に直接衝突することを抑制してオイル中の気泡の発生を抑制することができる遠心分離式オイルフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遠心分離式オイルフィルタとして、例えば、図8に示すように、オイル流入口106及びオイル流出口107が形成されたハウジング104と、このハウジング104内で回転自在に支持される容器状の遠心ロータ111と、オイル流入口106からハウジング104内に流入されるオイルを遠心ロータ111内に導入するオイル導入部110と、遠心ロータ111の下部に設けられ且つ遠心ロータ111内に導入されたオイルを外部に噴射する噴射ノズル119と、を備えてなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、この遠心分離式オイルフィルタ101では、噴射ノズル119からの噴射オイルの噴射力(噴射反力)により遠心ロータ111が回転されて、この遠心ロータ111内のオイル中に含まれるスラッジ等の異物Sが遠心分離されるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−66805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の遠心分離式オイルフィルタ101では、ハウジング104の底部の上方が開放状態となっているため、ハウジング104の底部に溜まるオイル量が多い場合に、噴射ノズル119からの噴射オイルがオイル液面に直接衝突し、その衝突の際にオイル中に空気を巻き込んで気泡Bを生じさせてしまう。その結果、その気泡によりオイルの寿命低下、エンジン潤滑不良及び作動油圧の低下といった不具合を招いてしまう恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、噴射ノズルからの噴射オイルがハウジングの底部に溜まるオイル液面に直接衝突することを抑制してオイル中の気泡の発生を抑制することができる遠心分離式オイルフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.オイル流入口及びオイル流出口が形成されたハウジングと、
前記ハウジング内で回転自在に支持される容器状の遠心ロータと、
前記オイル流入口から前記ハウジング内に流入されるオイルを前記遠心ロータ内に導入するオイル導入部と、
前記遠心ロータに設けられ且つ該遠心ロータ内に導入されたオイルを外部に噴射する噴射ノズルと、
前記噴射ノズルからの噴射オイルが前記ハウジングの底部に溜まるオイル液面に直接衝突することを抑制するバッフルプレートと、を備えることを特徴とする遠心分離式オイルフィルタ。
2.前記バッフルプレートには、オイル通過用の通過孔及び該通過孔を覆う覆い部が設けられている上記1.記載の遠心分離式オイルフィルタ。
3.前記バッフルプレートには、その半径方向に沿って複数の前記通過孔が形成されており、複数の該通過孔の孔面積は、該バッフルプレートの遠心方向に向かって大きくなっている上記2.記載の遠心分離式オイルフィルタ。
4.前記バッフルプレートは、下方に向かって縮径する円錐状に形成されており、該バッフルプレートには、その中心部にオイル通過用の中心孔が形成されている上記1.記載の遠心分離式オイルフィルタ。
5.前記バッフルプレートの上面には、該バッフルプレート上のオイルを案内する螺旋状の案内壁が設けられている上記4.記載の遠心分離式オイルフィルタ。
6.前記バッフルプレートには、隣接する前記案内壁のうちの外周側の案内壁の近傍にオイル通過用の通過孔が形成されている上記5.記載の遠心分離式オイルフィルタ。
【発明の効果】
【0007】
本発明の遠心分離式オイルフィルタによると、オイル導入部によってオイル流入口からハウジング内に流入されるオイルが遠心ロータ内に導入され、噴射ノズルによって遠心ロータ内に導入されたオイルが外部に噴射され、その噴射オイルの噴射力により遠心ロータが回転され、遠心ロータ内のオイル中に含まれるスラッジ等の異物が遠心分離される。また、噴射ノズルからの噴射オイルはバッフルプレートに衝突してからハウジングの底部に落下されオイル流出口からハウジングの外部に排出される。このように、バッフルプレートにより噴射ノズルからの噴射オイルがハウジングの底部に溜まるオイル液面に直接衝突することを抑制するようにしたので、オイル中の気泡の発生を抑制することができる。その結果、気泡によるオイルの寿命低下、エンジン潤滑不良及び作動油圧の低下といった不具合を防ぐことができる。
また、前記バッフルプレートに、オイル通過用の通過孔及び該通過孔を覆う覆い部が設けられている場合は、噴射ノズルからの噴射オイルの一部は、覆い部に衝突されてその勢いが弱められると共に、通過孔を介してハウジングの底部に迅速に落下されるので、バッフルプレート上でのオイルの溜まりを抑制できる。
また、前記バッフルプレートには、その半径方向に沿って複数の前記通過孔が形成されており、複数の該通過孔の孔面積が、該バッフルプレートの遠心方向に向かって大きくなっている場合は、エンジン高回転時等に噴射ノズルから勢いよくバッフルプレートの外周側まで拡散して噴射されるオイルが、比較的孔面積の大きな通過孔を介してハウジングの底部に迅速に落下されるので、エンジン高回転時等に潤滑経路で大量のオイルを循環させたい場合に好適に対応できる。
また、前記バッフルプレートが、下方に向かって縮径する円錐状に形成されており、該バッフルプレートには、その中心部にオイル通過用の中心孔が形成されている場合は、バッフルプレートに衝突したオイルがバッフルプレート上を外周側から中心側に向かって時間をかけて流れてから中心孔を介してハウジングの底部に落下されるので、バッフルプレート上を流れるオイル中に含まれる気泡が自然脱泡され、オイル中の気泡の発生をより確実に抑制できる。
また、前記バッフルプレートの上面に、該バッフルプレート上のオイルを案内する螺旋状の案内壁が設けられている場合は、バッフルプレートに衝突したオイルがバッフルプレート上を案内壁により案内され螺旋状に更に時間をかけて流れるので、オイル中に含まれる気泡の自然脱泡率を高めることができる。
さらに、前記バッフルプレートに、隣接する前記案内壁のうちの外周側の案内壁の近傍にオイル通過用の通過孔が形成されている場合は、エンジン高回転時等に噴射ノズルからの噴射オイル量が比較的多いときに、バッフルプレート上を螺旋状に流れるオイルが通過孔を介してハウジングの底部に迅速に落下されるので、エンジン高回転時等に潤滑経路で大量のオイルを循環させたい場合に好適に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
1.遠心分離式オイルフィルタ
本実施形態1.に係る遠心分離式オイルフィルタは、以下に述べるハウジング、遠心ロータ、オイル導入部、噴射ノズル及びバッフルプレートを備える。
【0009】
上記「ハウジング」は、オイル流入口及びオイル流出口が形成されている限り、その構造、大きさ、材質等は特に問わない。このハウジングは、例えば、下方を開放してなる有底筒状の上ケースと、この上ケースに着脱自在に取り付けられ且つ上記オイル流入口及びオイル流出口が形成された下ケースと、を有することができる。
【0010】
上記「遠心ロータ」は、上記ハウジング内で回転自在に支持され容器状である限り、その構造、大きさ、材質等は特に問わない。この遠心ロータは、例えば、下方を開放してなる有底筒状のロータ本体と、このロータ本体の下部に着脱自在に取り付けられ且つ後述する噴射ノズルが設けられる蓋体と、を有していることができる。
【0011】
上記「オイル導入部」は、上記オイル流入口からハウジング内に流入されるオイルを遠心ロータ内に導入する限り、その構造、オイル導入形態等は特に問わない。このオイル導入部は、例えば、ハウジングの底部中央側から上方に延び且つ上記遠心ロータを回転自在に支持する中空軸状に形成されていることができる。この中空軸状のオイル導入部は、例えば、その下端側が上記オイル流入口に連なっており、その外周側に遠心ロータの導入口に連なる連通口が形成されていることができる。
【0012】
上記「噴射ノズル」は、上記遠心ロータに設けられ且つ遠心ロータ内に導入されたオイルを外部に噴射する限り、その構造、大きさ、個数等は特に問わない。この噴射ノズルから噴射されるオイルの噴射力により遠心ロータが回転されるようになっている。この噴射ノズルは、例えば、遠心ロータの接線方向且つ水平に対して下方に傾斜する方向に指向していることができる。
【0013】
上記「バッフルプレート」は、上記噴射ノズルからの噴射オイルがハウジングの底部に溜まるオイル液面に直接衝突することを抑制する限り、その構造、大きさ、材質等は特に問わない。このバッフルプレートは、通常、上記ハウジングの底部に溜まるオイル液面の上方を覆うようにハウジング内に設けられている。また、このバッフルプレートの形状としては、例えば、円盤状、円錐状、異形状等を挙げることができる。さらに、このバッフルプレートの材質としては、例えば、鉄、アルミニウム等の金属、樹脂等を挙げることができる。
【0014】
上記バッフルプレートには、例えば、オイル通過用の通過孔及び該通過孔を覆う覆い部が設けられていることができる(図3参照)。
上記覆い部は、例えば、通過孔の上方を覆っていてもよいが、バッルフプレート上のオイルをより迅速に落下させ得るといった観点から、覆い部が通過孔の下方を覆っていることが好ましい。この場合、噴射ノズルからの噴射オイルの一部は、通過孔を通過してから覆い部に衝突してその勢いが弱められハウジングの底部に迅速に落下される。
上記通過孔の大きさ、形状、個数等は特に問わないが、上記通過孔は、例えば、バッフルプレートの半径方向に沿って複数形成されており、複数の通過孔の孔面積が、バッフルプレートの遠心方向に向かって大きくなっていることができる。
【0015】
ここで、上記通過孔及び覆い部は、例えば、バッフルプレートに形成された略コ字状の切込みの内側部位を下方又は上方に折り曲げて形成されていることができる。これにより、通過孔及び覆い部をより容易に作成することができる。
【0016】
上記バッフルプレートは、例えば、下方に向かって縮径する円錐状に形成されており、このバッフルプレートには、その中心部にオイル通過用の中心孔が形成されていることができる(図4及び7参照)。
上述の形態の場合、例えば、上記バッフルプレートの上面には、バッフルプレート上のオイルを案内する螺旋状の案内壁が設けられていることができる(図5参照)。この場合、例えば、上記バッフルプレートには、隣接する案内壁のうちの外周側の案内壁の近傍にオイル通過用の通過孔が形成されていることができる(図6参照)。
【実施例】
【0017】
以下、図面を用いて実施例1及び2により本発明を具体的に説明する。
【0018】
(実施例1)
(1)遠心分離式オイルフィルタの構成
本実施例1に係る遠心分離式オイルフィルタ1A(以下、単に「フィルタ1A」とも略記する。)は、図1に示すように、金属製の上ケース2及び下ケース3からなるハウジング4を備えている。この上ケース2は、下方を開放した有底筒状をなしている。また、下ケース3は、上方を開放した有底筒状をなしており、その底部中央側にはオイル流入口6が形成されており、その外周側にはオイル流出口7が形成されている。そして、上ケース2の下端部が下ケース3の上端部にOリング8を介して嵌合されている。
【0019】
上記下ケース3の底部中央側には、上方に延びる中空軸状のオイル導入部10が設けられている。このオイル導入部10には、容器状の遠心ロータ11が軸心回りに回転自在に支持されている。また、このオイル導入部10は、その下端側が上記オイル流入口6に連なっており、その上端外周側に遠心ロータ11の導入口12に連なる連通口13が形成されている。従って、このオイル導入部10によって、オイル流入口6からハウジング4内に流入されるオイルが遠心ロータ11内に導入されるようになっている。また、このオイル導入部10の上端小径部10aは、上ケース2の上端部に螺合されるボルト15の中心穴15aに螺合又は嵌合されている。
【0020】
上記遠心ロータ11は、金属製のロータ本体17及び蓋体18からなっている。このロータ本体17は、下方を開放した有底筒状をなしている。また、このロータ本体17の下端部は、オイル導入部10の段差部10bに支持されており、遠心ロータ11が上下方向に位置決めされている。また、この蓋体18は、ロータ本体17の下部に着脱自在に取り付けられている。また、この蓋体18には、その円周方向に沿って所定間隔(例えば、180度間隔)で複数(例えば、2つ)の下方に向かって隆起する隆起部18aが設けられており、各隆起部18aには噴射ノズル19が設けられている。
【0021】
上記噴射ノズル19は、遠心ロータ11の接線方向且つ水平に対して下方に傾斜する方向に指向している。そして、この噴射ノズル19から噴射されるオイルの噴射力により遠心ロータ11が回転されるようになっている。
【0022】
上記下ケース3内には、金属製で円盤状のバッフルプレート20が下ケース3の底部に溜まるオイル液面の上方を覆うように設けられている。このバッフルプレート20には、図2及び3に示すように、オイル通過用の複数の通過孔21及び各通過孔21の下方を覆う覆い部22が設けられている。これら通過孔21及び覆い部22は、バッフルプレート20に形成された略コ字状の切込み27の内側部位を下方に折り曲げて同時に形成されている。また、上記通過孔21は、バッフルプレート20の半径方向及び円周方向に沿って複数形成されている。これらバッフルプレート20の半径方向に沿って形成される複数の通過孔21は、その孔面積がバッフルプレート20の遠心方向に向かって大きくなっている。さらに、このバッフルプレート20の中心部には、オイル通過用の中心孔23が形成されている。
【0023】
(2)遠心分離式オイルフィルタの作用
次に、上記構成のフィルタ1Aの作用について説明する。
図1中に実線矢印で示すように、オイル流入口6からハウジング4内に流入されるオイルは、オイル導入部10内を通って連通口13及び導入口12を介して遠心ロータ11内に導入される。そのオイルの導入により遠心ロータ11内のオイル圧力が高まり、噴射ノズル19から遠心ロータ11の接線方向に向かってオイルが噴射される。すると、その噴射オイルの噴射力により遠心ロータ11が所定方向(図1中に破線矢印で示す。)に回転され、その回転により遠心ロータ11内のオイル中に含まれるスラッジ等の異物Sが遠心分離され遠心ロータ11の内面で捕捉される。
なお、遠心ロータ11の内面で捕捉された異物Sは、ハウジング4及び遠心ロータ11を分解してロータ本体17及び蓋体18の内面を清掃することにより除去される。
【0024】
上記噴射ノズル19からの噴射オイルの一部は、バッフルプレート20に衝突してから通過孔21及び中心孔23を介して下ケース3の底部に落下されオイル流出口7からハウジング4の外部に排出される。また、図3中に実線矢印で示すように、噴射ノズル19からの噴射オイルの一部は、通過孔を通過して覆い部22に衝突してその勢いが弱められてから下ケース3の底部に落下されオイル流出口7からハウジング4の外部に排出される。
なお、オイル流出口7からハウジング4の外部に排出されたオイルは、オイル管25(図1参照)を介して図示しないエンジンのオイルパンに回収される。
【0025】
(3)実施例1の効果
以上より、本実施例1のフィルタ1Aでは、下ケース3の底部内にバッフルプレート20を設けたので、このバッフルプレート20により噴射ノズル19からの噴射オイルがハウジング4の底部に溜まるオイル液面に直接衝突することを抑制でき、オイル中の気泡の発生を抑制することができる。その結果、気泡によるオイルの寿命低下、エンジン潤滑不良及び作動油圧の低下といった不具合を防ぐことができる。
【0026】
また、本実施例1では、バッフルプレート20に、オイル通過用の通過孔21及び通過孔21の下方を覆う覆い部22を設けたので、噴射ノズル19からの噴射オイルの一部を通過孔21を通過させ覆い部22に衝突させてその勢いを弱めてから下ケース3の底部に迅速に落下させることができ、バッフルプレート20上でのオイルの溜まりを抑制することができる。
【0027】
また、本実施例1では、バッフルプレート20に、その半径方向に沿って複数の通過孔21を形成し、これら複数の通過孔21の孔面積をバッフルプレート20の遠心方向に向かって大きくなるようにしたので、エンジン高回転時等に噴射ノズル19から勢いよくバッフルプレート20の外周側まで拡散して噴射されるオイルが、比較的孔面積の大きな通過孔21を介して下ケース3の底部に迅速に落下される。これにより、エンジン高回転時等に潤滑経路で大量のオイルを循環させたい場合に好適に対応することができる。
【0028】
さらに、本実施例1では、バッフルプレート20に形成された略コ字状の切込み27の内側部位を下方に折り曲げて通過孔21及び覆い部22を同時に形成するようにしたので、通過孔21及び覆い部22をより容易に作成することができる。
【0029】
(実施例2)
次に、実施例2に係る遠心分離式オイルフィルタ(以下、単に「フィルタ」とも略記する。)について説明する。なお、本実施例2に係るフィルタにおいて、上記実施例1のフィルタ1Aと略同じ構成部位には同符合を付けて詳説を省略し、両者の相違点であるバッフルプレートについて主に説明する。
【0030】
本実施例2に係るフィルタ1Bでは、図4に示すように、下方に向かって縮径する円錐状のバッフルプレート30が下ケース3の底部に溜まるオイル液面の上方を覆うように下ケース3内に設けられている。このバッフルプレート30には、図5及び6に示すように、その中心部にオイル通過用の中心孔31が形成されている。また、このバッフルプレート30の上面には、バッフルプレート30上のオイルを案内する螺旋状の案内壁32が設けられている。さらに、このバッフルプレート30には、隣接する案内壁32のうちの外周側の案内壁32の近傍にオイル通過用の通過孔33が形成されている。
【0031】
(2)遠心分離式オイルフィルタの作用
次に、上記構成のフィルタ1Bの作用について説明する。
図4に示すように、噴射ノズル19からの噴射オイルの一部は、バッフルプレート30に衝突してからバッフルプレート30上を案内壁32により案内され螺旋状に流れてから中心孔31を介して下ケース3の底部に落下されオイル流出口7からハウジング4の外部に排出される。また、エンジン高回転時等に噴射ノズル19からの噴射オイル量が比較的多いときには、図6中に実線矢印で示すように、バッフルプレート30上を螺旋状に流れるオイルが通過孔33を介して下ケース3の底部に迅速に落下されオイル流出口7からハウジング4の外部に排出される。
【0032】
(3)実施例2の効果
以上より、本実施例2のフィルタ1Bでは、上記実施例1のフィルタ1Aと略同様の作用・効果を発揮できることに加えて、円錐状のバッフルプレート30の上面に、オイルを案内する螺旋状の案内壁32を設けたので、バッフルプレート30に衝突したオイルがバッフルプレート30上を案内壁32により案内され螺旋状に時間をかけて流れるので、バッフルプレート30上を流れるオイル中に含まれる気泡が自然脱泡され、オイル中の気泡の発生をより確実に抑制できる。
【0033】
さらに、上記実施例2では、バッフルプレート30に、隣接する案内壁32のうちの外周側の案内壁32の近傍にオイル通過用の通過孔33を形成したので、エンジン高回転時等に噴射ノズル19からの噴射オイル量が比較的多いときに、バッフルプレート30上を螺旋状に流れるオイルが通過孔33を介してハウジング4の底部に迅速に落下されるので、エンジン高回転時等に潤滑経路で大量のオイルを循環させたい場合に好適に対応することができる。
【0034】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例1及び2では、下ケース3の底部内に1枚のバッフルプレート20,30を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、噴射オイルの噴射軌跡に沿って複数枚の分割バッフルプレートを設けるようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施例1及び2では、遠心分離される異物Sを遠心ロータ11の内面で捕捉するようにしたが、これに限定されず、例えば、遠心ロータ11内に異物捕捉用の内筒や濾材等を設けるようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施例1では、通過孔21の下方を覆う覆い部22を例示したが、これに限定されず、例えば、図3中に仮想線で示すように、通過孔21の上方を覆う覆い部22としてもよい。
【0037】
また、上記実施例1では、バッフルプレート20に形成された略コ字状の切込み27の内側部位を折り曲げて覆い部22を形成するようにしたが、これに限定されず、例えば、バッフルプレート20とは別体の覆い部材をバッフルプレート20に後付けするようにしてもよい。
【0038】
また、上記実施例1では、円盤状のバッフルプレート20を例示したが、これに限定されず、例えば、下方に向かって縮径する円錐状のバッフルプレート20としてもよい。
【0039】
また、上記実施例2では、案内壁32を設けてなる円錐状のバッフルプレート30を備えるフィルタ1Bを例示したが、これに限定されず、例えば、図7に示すように、案内壁を設けていない円錐状のバッフルプレート40を備えるフィルタ1Cとしてもよい。この場合でも、バッフルプレート40に衝突したオイルがバッフルプレート40上を外周側から中心側に向かって時間をかけて流れてから中心孔41を介してハウジング4の底部に落下されるので、バッフルプレート40上を流れるオイル中に含まれる気泡が自然脱泡され、オイル中の気泡の発生をより確実に抑制できる。
【0040】
さらに、上記実施例2において、例えば、図6中に仮想線で示すように、バッフルプレート30の下側に、このバッフルプレート30と略同じ構成の他のバッフルプレート35を設けてなる2段構造としたり、バッフルプレート30の下側に上記バッフルプレート40(図7参照)を設けてなる2段構造としたりしてもよい。また、上記実施例1において、例えば、バッフルプレート20の下側に、上記バッフルプレート30又は上記バッフルプレート40を設けてなる2段構造としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
オイル中に含まれる異物を除去するフィルタとして広く利用される。特に、エンジンオイル中に含まれるスラッジ等の異物を除去するフィルタとして好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1に係る遠心分離式オイルフィルタの縦断面図である。
【図2】実施例1に係るバッフルプレートの平面図である。
【図3】図2のIII−III線断面拡大図である。
【図4】実施例2に係る遠心分離式オイルフィルタの要部縦断面図である。
【図5】実施例2に係るバッフルプレートの平面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面拡大図である。
【図7】その他の形態の遠心分離式オイルフィルタの要部縦断面図である。
【図8】従来の遠心分離式オイルフィルタの縦断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1A〜1C;遠心分離式オイルフィルタ、4;ハウジング、6;オイル流入口、7;オイル流出口、10;オイル導入部、11;遠心ロータ、19;噴射ノズル、20,30,40;バッフルプレート、21,33;通過孔、22;覆い部、23,31;中心孔、32;案内壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイル流入口及びオイル流出口が形成されたハウジングと、
前記ハウジング内で回転自在に支持される容器状の遠心ロータと、
前記オイル流入口から前記ハウジング内に流入されるオイルを前記遠心ロータ内に導入するオイル導入部と、
前記遠心ロータに設けられ且つ該遠心ロータ内に導入されたオイルを外部に噴射する噴射ノズルと、
前記噴射ノズルからの噴射オイルが前記ハウジングの底部に溜まるオイル液面に直接衝突することを抑制するバッフルプレートと、を備えることを特徴とする遠心分離式オイルフィルタ。
【請求項2】
前記バッフルプレートには、オイル通過用の通過孔及び該通過孔を覆う覆い部が設けられている請求項1記載の遠心分離式オイルフィルタ。
【請求項3】
前記バッフルプレートには、その半径方向に沿って複数の前記通過孔が形成されており、複数の該通過孔の孔面積は、該バッフルプレートの遠心方向に向かって大きくなっている請求項2記載の遠心分離式オイルフィルタ。
【請求項4】
前記バッフルプレートは、下方に向かって縮径する円錐状に形成されており、該バッフルプレートには、その中心部にオイル通過用の中心孔が形成されている請求項1記載の遠心分離式オイルフィルタ。
【請求項5】
前記バッフルプレートの上面には、該バッフルプレート上のオイルを案内する螺旋状の案内壁が設けられている請求項4記載の遠心分離式オイルフィルタ。
【請求項6】
前記バッフルプレートには、隣接する前記案内壁のうちの外周側の案内壁の近傍にオイル通過用の通過孔が形成されている請求項5記載の遠心分離式オイルフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−167812(P2009−167812A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3659(P2008−3659)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】