説明

遠心分離装置及び汚泥脱水方法

【課題】高分子凝集剤と無機凝集剤を脱水助剤として添加して汚泥を脱水するにおいて、汚泥中に無機凝集剤を均一に分散させて脱水効率を高める
【解決手段】中空の円筒部を有し、遠心力の作用により汚泥を脱水汚泥と分離液とに分離する回転ボウルと、回転ボウル内に配置され、回転ボウルと相対的な差速をもって回転するスクリューコンベアと、回転ボウル内に汚泥を供給する手段と、回転ボウル内に供給される汚泥に第1の凝集剤を添加する第1の凝集剤添加手段と、前記回転ボウルに形成されている脱水汚泥の排出口に向けてスクリューコンベアが移送している汚泥に第2の凝集剤を添加する第2の凝集剤添加手段と、を含む遠心分離装置であって、前記第2の凝集剤添加手段は、一部又は全部が回転ボウル内の汚泥中に浸漬される添加用部材を含んでおり、汚泥中に浸漬された位置に第2の凝集剤の吐出口を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離装置及び汚泥脱水方法に関し、特に、凝集剤を脱水助剤として添加して汚泥を脱水する遠心分離装置及び汚泥脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば上下水、産業排水、し尿などの水処理過程で発生する汚泥は、デカンタと称される遠心分離装置によって脱水処理される。
【0003】
デカンタは、ケーシングと、ケーシング内で水平軸回りに回転するボウルと、ボウル内に収容されたスクリューコンベアと、ケーシング外に配置された駆動モータを備えている。そして、回転するボウル内に汚泥を供給し、遠心力の作用を利用して汚泥から水分を分離する。このとき、ギアボックス等の差速発生装置を用いてスクリューコンベアを回転させることにより、脱水汚泥をボウルの円錐部に形成されている排出口まで移送して排出する。一方、汚泥から分離された水分(分離液)は、ボウルの他端に形成されている分離液排出口から排出される(例えば、特許文献1−3参照)。
【0004】
特許文献1−3は、高分子凝集剤と無機凝集剤の2種類を添加することによって脱水率を高める方法(いわゆる2液薬注方式)を開示している。従来における脱水汚泥の含水率は80%程度であったのに比べ、この2液薬注方式によれば70%程度にまで含水率を低くすることが可能である。しかしながら、特許文献1−3に開示されている汚泥脱水方法及びデカンタは、円錐部(すなわち、ビーチ部)にある濃縮汚泥(すなわち、脱水途中の汚泥)の上面に無機凝集剤を噴射供給しているので、濃縮汚泥中に無機凝集剤が均一に分散されず、濃縮汚泥と無機凝集剤とが十分に反応しない場合がある。特許文献1のデカンタは、無機凝集剤の分散性を高めるための撹拌羽根を設けてはいるが、特に、汚泥の深層部にまで無機凝集剤を均一に分散させることはできない。特許文献1の撹拌羽根は、濃縮汚泥と無機凝集剤の反応性を高めるための対策として十分でない。
【0005】
デカンタの脱水能力を高めることは、結果としてデカンタの小型化及び省電力化につながる。特に、省電力化を実現できればCO排出量の低減に寄与することとなるので、ユーザーの期待は大きい。さらに、脱水汚泥の含水率を数パーセントでも低くできれば、その後に行われる汚泥最終処分の費用や労力を大幅削減できることにもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2540198号公報
【特許文献2】特開2010−264417号公報
【特許文献3】特開2010−264419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、第1の凝集剤と第2の凝集剤を脱水助剤として添加して汚泥を脱水する2液薬注方式の遠心分離装置及び汚泥脱水方法において、汚泥中に第2の凝集剤を均一に分散させて脱水効率を高めることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の遠心分離装置は、中空の円筒部を有し、遠心力の作用により汚泥を脱水汚泥と分離液とに分離する回転ボウルと、回転ボウル内に配置され、回転ボウルと相対的な差速をもって回転するスクリューコンベアと、回転ボウル内に汚泥を供給する手段と、回転ボウル内に供給される汚泥に第1の凝集剤を添加する第1の凝集剤添加手段と、前記回転ボウルに形成された脱水汚泥の排出口に向けてスクリューコンベアが移送している汚泥に第2の凝集剤を添加する第2の凝集剤添加手段と、を含む遠心分離装置であって、前記第2の凝集剤添加手段は、一部又は全部が回転ボウル内の汚泥中に浸漬される添加用部材を含んでおり、汚泥中に浸漬された位置に第2の凝集剤の吐出口を配置していることを特徴とする。
【0009】
前記添加用部材は、例えばスクリューコンベアの螺旋状のスクリュー羽根が兼用することができる。このようにスクリュー羽根を利用すれば、添加用部材としての新たな部材の追加を省略し、部品点数の増加を抑えることができる利点がある。或いは、前記添加用部材は、スクリューコンベアに固定配置され、スクリューコンベアと一体的に回転するディスク部材,ノズル部材,ブリッジ部材とすることもできる。ディスク部材とブリッジ部材には、汚泥の移送を妨げることによって汚泥の流れを不連続とする作用があるので、第2の凝集剤の分散効果が高まるという利点がある。
【0010】
さらに、第2の凝集剤は、スクリューコンベアの汚泥搬送方向,汚泥搬送方向とは反対の方向,又はスクリューコンベアの円周方向の中から選択される1以上の方向に向けて添加することができる。いずれの方向及び組み合わせた方向とするかは、例えば処理する汚泥と第2の凝集剤との反応性に応じて決定することができる。
【0011】
さらに、第2の凝集剤の分散を促進させて脱水効率を高めるために、添加用部材よりも脱水汚泥の排出口側に位置するスクリュー羽根のピッチを狭くしたり、羽根の先端と回転ボウル内周面との間のクリアランスを部分的に大きくしたりすることができる。さらに、第1の凝集剤を添加する前に、第3の凝集剤を汚泥に添加するようにしてもよい。なお、第2の凝集剤は、添加用部材の汚泥中に浸漬した吐出口から添加するだけでなく、添加用部材の汚泥に浸漬していない部分にも吐出口を形成して添加するようにしてもよく、及び/又は、従来のスクリューコンベアの胴部から添加することも併せて行うようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の汚泥脱水方法は、中空の円筒部を有する回転ボウル内に汚泥を供給すると共に、回転ボウルを回転させて遠心力の作用により汚泥を脱水汚泥と分離液とに分離し、回転ボウル内に配置されたスクリューコンベアを回転ボウルとは相対的な差速をもって回転させることによって脱水汚泥を回転ボウルに形成されている脱水汚泥の排出口から排出する汚泥脱水方法において、回転ボウル内に供給される汚泥に第1の凝集剤を添加した後、前記回転ボウルに形成された脱水汚泥の排出口に向けてスクリューコンベアが移送している汚泥に第2の凝集剤を添加するにあたり、第2の凝集剤は、汚泥中に浸漬された添加用部材の吐出口から供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、遠心分離装置を用いて2液薬注方式で汚泥を脱水するにあたり、汚泥に第1の凝集剤を添加した後、回転ボウルに形成された脱水汚泥の排出口に向けてスクリューコンベアが移送している汚泥に第2の凝集剤を添加する。このとき第2の凝集剤は、汚泥中に浸漬された添加用部材の吐出口から供給することにより、回転ボウル内にある濃縮された汚泥に第2の凝集剤を均一に分散させることができる。その結果、濃縮汚泥と第2の凝集剤を十分に反応させることができ、低含水率の脱水汚泥を安定して得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に従う遠心分離装置を示す。
【図2】上記遠心分離装置の部分断面図である。
【図3】上記遠心分離装置のスクリュー羽根の変形例である。
【図4】上記遠心分離装置に第3の凝集剤を添加する変形例である。
【図5】本発明の第2実施形態に従う遠心分離装置の部分断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に従う遠心分離装置の部分断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に従う遠心分離装置の部分断面図である。
【図8】本発明の第5実施形態に従う遠心分離装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態による遠心分離装置について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、以下に説明する実施形態によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。
【0016】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に従う遠心分離装置について、横型のデカンタを一例に挙げて説明する。本実施形態に従うデカンタ1は、図1に示すように、脱水汚泥出口21と分離液出口22のそれぞれが下方に形成されているケーシング2と、ケーシング2内に配置された回転筒状体をなすボウル3と、ボウル3内で分離された汚泥の搬送手段であるスクリューコンベア4を備えている。ボウル3は、ケーシング2に取付けられたベアリング等の軸受機構23によって支持され、さらにスクリューコンベア4はコンベアベアリング(不図示)によって支持され、ボウル3とスクリューコンベア4のそれぞれが独立して水平軸周りに回転可能となっている。
【0017】
そして、駆動機構である駆動モータ24の動力が回転ベルト24aを介してボウル3側のプーリー24bに伝達されることによって、ボウル3が所定の回転速度で回転し、さらに差速発生機構であるギアボックス25及びスプラインシャフト26を通じてスクリューコンベア4に動力が伝達され、ボウル3とスクリューコンベア4が相対的な差速をもって回転するように構成されている。
【0018】
ギアボックス25には、バックドライブモータ27と称される駆動モータが回転ベルト27a及びプーリー27bを介して連結されている。バックドライブモータ27は、モータの回転シャフトを回転ベルト27aが回転するときのトルクを利用して、スクリューコンベア4がボウル3よりも遅く回転するようにブレーキをかけるためのものである。ブレーキをかけることによってモータ27に発生する回生電力は、駆動モータ24に供給し、これにより装置全体の消費電力を抑えるようにしている。但し、バックドライブモータ27は必ずしも設けなくともよい。
【0019】
デカンタ1は、汚泥及び凝集剤をボウル3内に供給するための供給ノズル5をさらに備えている。供給ノズル5は、例えば3重管構造であり、内側から順に汚泥,第1の凝集剤としての高分子凝集剤,及び第2の凝集剤としての無機凝集剤の流路が割り当てられている。供給ノズル5から吐出される汚泥,高分子凝集剤及び無機凝集剤をボウル3内に供給する構成については後述する。なお、好ましい一例として、第1の凝集剤に高分子凝集剤,第2の凝集剤に無機凝集剤を用いる構成を以下に説明するが、第1の凝集剤に無機凝集剤,第2の凝集剤に高分子凝集剤を用いる構成であってもよい。さらに、第2の凝集剤も、無機に限定されることはない。
【0020】
汚泥は、ポンプ61等の移送手段を通じて汚泥タンク6から供給される。ポンプ6の吐出側の配管は、3重管構造を有する供給ノズル5の汚泥用流路に接続されている。処理する汚泥は、上下水、産業排水、し尿などの水処理過程で発生する汚泥であり、95〜99.5%程度の含水率である。
【0021】
高分子凝集剤は、ポンプ62等の移送手段を通じてタンク63から供給される。ポンプ62の吐出側の配管は、3重管構造を有する供給ノズル5の高分子凝集剤用の流路に接続されている。高分子凝集剤は、供給ノズル5から吐出されて汚泥に添加される。従って、本実施形態においては、ポンプ62等の移送手段及び供給ノズルが第1の凝集剤添加手段を構成する。高分子凝集剤は、両性ポリマー,アニオン性ポリマー又はカチオン性ポリマーのいずれか、或いはそれらの組み合わせを用いることができる。高分子凝集剤の一例としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート,ジメチルアミノエチルアクリレート,ポリビニルアミジンなどを挙げることができる。
【0022】
また、無機凝集剤は、ポンプ64等の移送手段を通じてタンク65から供給される。ポンプ64の吐出側の配管は、3重管構造を有する供給ノズル5の無機凝集剤用の流路に接続されている。無機凝集剤は、供給ノズル5から吐出され、そして一部又は全部が汚泥中に浸漬されている添加用部材(後述する)を通じて汚泥に添加される。従って、本実施形態においては、ポンプ64等の移送手段,供給ノズル5及び添加用部材が第2の凝集剤添加手段を構成する。無機凝集剤としては、例えばポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)、PACなど選択される凝集剤の1種以上を用いることができる。その中でも、ポリ鉄が好ましい。無機凝集剤以外にも、例えば多孔質性の天然鉱物や灰などを利用した凝集剤を用いることができ、無機に限定されることがない。
【0023】
ボウル3の胴部は、一端側が円錐部31に形成され、他端側が円筒部32に形成されている。そして、他端側の開口部は、フロントハブ33と称される平面が円形の部材によって塞がれている。フロントハブ33と円筒部32は、ボウル3内に供給される汚泥が滞留するプール部を形成する。フロントハブ33には分離液排出口34が形成されており、汚泥を連続的にボウル3内に供給することによって分離液を排出口34からオーバーフローさせる。
【0024】
一方、ボウル3の円錐部31は、スクリューコンベア4によって移送される濃縮汚泥(すなわち、脱水途中の汚泥)がプール部から離脱するビーチ部を形成しており、ビーチ部の先端側に脱水汚泥の排出口35が形成されている。ビーチ部は、その傾斜面で濃縮汚泥をスリップさせスクリュー羽根41の圧搾力を大きく汚泥に作用させる役割と、プール部の有効容積を大きくして汚泥滞留時間を増加させる機能がある。低動力や高脱水型のデカンタ1においては、中央付近で傾斜角度が変わる2段構造のビーチ部となっている。図1のビーチ部のように先端側の傾斜角の方を急にすることには、スクリュー羽根41の圧搾力と汚泥滞留時間を更に増加させる作用がある。但し、先端側の傾斜角の方を緩やかにすることもでき、必ずしも2段構造としなくともよい。さらに、本実施形態は、円錐部31を有さず、円筒部32のみで構成されるボウル3にも適用可能である。
【0025】
汚泥を搬送・圧搾するスクリュー羽根41は、スクリューコンベア4の胴部42の外周面に螺旋状に形成されている。スクリューコンベア4の胴部42は、内部に不図示の空洞(バッファ部)を有し、バッファ部内まで供給ノズル5の先端が延設されている。そして、供給ノズル5からの汚泥がバッファ部に供給されると、胴部42の中央部付近に形成されているショートコーン43を介して遠心力の作用によってボウル3内に汚泥が供給されるようになっている。高分子凝集剤と無機凝集剤も、汚泥とは別経路でスクリューコンベア4のバッファ部内に供給され、遠心力の作用によってボウル3内に供給される。
【0026】
続いて、高分子凝集剤と無機凝集剤をボウル3内の汚泥に添加する構成について、図2を参照しながら後述する。図2は、ボウル3とスクリューコンベア4の部分断面図を示している。前述したように、供給ノズル5は3重管構造となっており、汚泥は中央の配管の先端から吐出される。そして、スクリューコンベア4の空洞(バッファ部)には、有底筒状の汚泥受け部44が、供給ノズル5の先端にある汚泥吐出口と対向する位置に配置されている。汚泥受け部44の側面には、スクリューコンベア4の外周面まで連通する汚泥流通口44aが形成されている。ショートコーン43は、分離液の排出口34側に向かって拡径する台形状の断面を有し、汚泥受け部44の全周を囲うように配置されている。ショートコーン43は、遠心力の作用によって汚泥流通口44aから排出される汚泥をその内周面に沿って排出口34側に向かう流れとし、プール部にある汚泥に撹乱が発生するのを抑えながら新たな汚泥をボウル3内へ供給する。
【0027】
さらに汚泥受け部44の開口部側には、断面L字状の環状部材45が離間して配置されており、この環状部材45と汚泥受け部44との隙間によって高分子凝集剤の流通路45aが形成されている。流通路45の入口は、供給ノズル5から吐出される高分子凝集剤の進行経路上に配置されている。一方、流通路45aの出口は、ショートコーン43の内側領域に連通しており、ここで高分子凝集剤が汚泥に添加される。すなわち、ショートコーン43を通じて新たにボウル3内に供給される汚泥に高分子凝集剤を添加する構成である。但し、高分子凝集剤については、ショートコーン43の部分で添加する構成に限定されることはなく、汚泥の流路に直接添加するライン添加方式としてもよく、或いは装置外に設置した混合槽で添加する混合槽方式としてもよい。ライン添加方式の場合、ラインミキサーを追加することもできる。
【0028】
本実施形態のスクリューコンベア4は、無機凝集剤を汚泥に添加するための添加用部材を兼ねており、ビーチ部に位置するスクリュー羽根41の一部が空洞となっている。この空洞は無機凝集剤の流通路46であり、スクリュー羽根41の表面に複数形成されている排出孔46aと連通している。無機凝集剤の排出孔46aは、ビーチ部にある濃縮汚泥に浸漬しているスクリュー羽根41に形成されている。排出孔46aは、図2に示すようにスクリュー羽根41の両面に形成することができる。但し、必ずしも両面に形成しなくともよく、汚泥の搬送方向側、又はその反対側のどちらか一面に形成するようにしてもよい。どちら側に形成するか、或いは両面に形成するかについては、汚泥と高分子凝集剤の反応性などを考慮して決めることができる。さらに、排出孔46aは、図2に示すようにスクリュー羽根46aの0°と180°の2つの位相に配列する構成のみならず、一つの位相にのみ配列するようにしてもよい。或いは、スクリュー羽根41の径方向に沿って放射線状(例えば、90°間隔)に配置するようにしてもよい。
【0029】
スクリュー羽根41内に形成されている流通路46は、スクリューコンベア4の内洞にまで連通しており、流通路46の入口を挟んで左右に起立壁46bが設けられている。起立壁46bは、スクリューコンベア4の内胴に全周に亘って形成され、供給ノズル5からの無機凝集剤を流通路46内に供給するためのチャンバーを構成している。さらに、供給ノズル5からの無機凝集剤がチャンバー内に供給されるように、流通路46を含むチャンバーの内側領域は、供給ノズル5から吐出される無機凝集剤の進行経路上に配置されている。従って、供給ノズル5から吐出された無機凝集剤は、添加用部材であるスクリュー羽根41の流通路46に供給され、回転するスクリューコンベア4の遠心力の作用によって表面の排出孔46aから汚泥に添加される。すなわち、本実施形態においては、スクリュー羽根41、供給ノズル5及びポンプ64等の移送手段が第2の凝集剤添加手段を構成している。
【0030】
(作用)
続いて、本実施形態に従うデカンタ1を用いて汚泥を脱水処理する動作について説明する。上述した構成のデカンタ1においては、ボウル3とスクリューコンベア4をそれぞれ所定の回転速度で回転させながら、汚泥をボウル3内に供給する。一例として、1000〜2100Gの遠心力が汚泥に付与されるようにボウル3を回転させ、数min−1〜数十min−1の差速をもってスクリューコンベア4を回転させるようにする。汚泥の供給量は、一例として2〜22m/hとすることができる。
【0031】
汚泥を供給する一方で、各移送手段を稼働させて高分子凝集剤と無機凝集剤をボウル3内に供給する。高分子凝集剤と無機凝集剤の添加量は、添加する凝集剤の種類、汚泥の性状や反応性などに基づいて調整することができる。
【0032】
高分子凝集剤は、前述したように、ショートコーン43の部分で汚泥に添加される。汚泥に高分子凝集剤を添加すると、荷電中和と架橋作用によって汚泥粒子がフロック化される。高分子凝集剤が添加された汚泥は、回転するボウル3によって遠心力が付与され、ボウル3のプール部に全周に亘って貯留された状態となり、さらには汚泥粒子と水分の比重差によって汚泥粒子がボウル3の内周面に沈降した状態となる。そして、沈降した汚泥粒子は、回転するスクリューコンベア4のスクリュー羽根41によって脱水汚泥の排出口35に向かって移送されていき、ビーチ部に上陸することによって脱水される。
【0033】
無機凝集剤は、スクリュー羽根41によって移送されている濃縮汚泥(脱水途中の汚泥)に分散供給される。高分子凝集剤の後に無機凝集剤を添加すると、汚泥粒子のフロックに内包された水分を出す疎水作用が得られる。そして、ビーチ部の傾斜によって増加するスクリュー羽根41の圧搾力と相まって高い脱水作用が得られる。その結果、ボウル3から排出される脱水汚泥は、含水率が約70%にまで脱水される。一方、分離された水分は、他端側の分離液排出口35を介してボウル3から排出される。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、汚泥に浸漬しているスクリュー羽根41に無機凝集剤の排出孔46aを複数配置し、これら排出孔46aを通じて汚泥に無機凝集剤を添加する構成としたことにより、ビーチ部にある濃縮汚泥に対して無機凝集剤を均一に分散供給することが可能となる。すなわち、含水率がある程度低下した濃縮汚泥に対して液状の無機凝集剤を局部的に添加しても、全体には分散しない。そのため、無機凝集剤を汚泥上面に添加する従来方法は、ボウル3の内周面側にある深層汚泥にまで無機凝集剤が行き渡らないという不具合が生じる。しかしながら、本実施形態のように構成すれば、深層汚泥にまで無機凝集剤を行き渡らせることが可能であり、無機凝集剤の疎水作用とスクリュー羽根の圧搾作用とが相まって高い脱水作用が実現できるのである。なお、無機凝集剤は、添加用部材の汚泥中に浸漬した排出孔46aから添加するだけでなく、添加用部材の汚泥に浸漬していない部分にも排出孔46aを形成して添加するようにしてもよく、及び/又は、従来のスクリューコンベア4の胴部42から添加することも併せて行うようにしてもよい。
【0035】
さらに本実施形態によれば、添加用部材をスクリュー羽根が兼用する構成としたことにより、添加用部材としての新たな部材の追加を省略し、部品点数の増加を抑えることができる利点がある。
【0036】
本実施形態においては、無機凝集剤の分散をさらに促進させて脱水効率を高めるために、スクリュー羽根41を変形させることができる。図3に一例を示すように、ビーチ部にあるスクリュー羽根41のピッチ(L1)をプール部のピッチよりも狭くしたり、スクリュー羽根41の先端とボウル3の内周面との間のクリアランス(L2)を部分的に大きくしたりすることができる。ビーチ部の羽根41のピッチ(L1)を狭く設定することによって、ビーチ部にある濃縮汚泥の搬送が不連続となり、無機凝集剤の分散をさらに促進させることが可能となる。
【0037】
また、スクリュー羽根41の先端とボウル3の内周面との間のクリアランス(L2)を部分的に大きくすると、その部分における汚泥の搬送速度が遅くなる。その結果、ビーチ部の長さ方向における汚泥搬送速度が不連続なものとなり、これによりビーチ部にある濃縮汚泥への無機凝集剤の分散をさらに促進させることが可能となる。なお、ピッチ(L1)とクリアランス(L2)の両方を変えなくともよく、どちらか一方を変えることもできる。
【0038】
図1のデカンタ1は、高分子凝集剤の後に無機凝集剤を添加する構成であるが、さらに脱水効率を高めるために、高分子凝集剤を添加する前にも無機凝集剤を添加するようにしてもよい。一例として図4に示すように、供給ノズル5に無機凝集剤の供給路51を接続することによって、高分子凝集剤を添加する前に、第3の凝集剤として無機凝集剤を添加する構成とすることができる。既述したように、ビーチ部にある濃縮汚泥に添加する無機凝集剤は、高分子凝集剤によってフロックとなった汚泥に内包されている水分を排出する疎水作用を発揮する。一方、高分子凝集剤よりも前に無機凝集剤を添加すると、汚泥中のアニオン物質を荷電中和する中和作用を発揮し、その後に添加される高分子凝集剤の凝集効果を高めることができる。無機凝集剤の前添加を併用することで、無機凝集剤による燐や硫化水素中の硫黄の固定化も促進する。
【0039】
なお、供給ノズル5は、三重管構造でなくともよく、汚泥用のノズル,高分子凝集剤用のノズル及び無機凝集剤用のノズルを別々に設けるようにしてもよい。また、高分子凝集剤の供給方法として必ずしもショートコーン43を利用しなくともよく、混合槽方式,ライン添加方式、フィードゾーン注入方式、フロックチューブ方式といった公知の方法で添加するようにしてもよい。
【0040】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態に従う遠心分離装置について、横型のデカンタを一例に挙げて説明する。本実施形態のデカンタ1は、図5に示すように、無機凝集剤の添加用部材として新たにディスク部材7を設けたことが、スクリュー羽根41が添加用部材を兼用する第1実施形態とは異なる。その他の構成については、第1実施形態と同じにすることができる。そのため、同一の構成については、同じ符号を付すことによって詳しい説明を省略する。
【0041】
添加用部材であるディスク部材7は、円盤状の部材であり、スクリューコンベア4の胴部42の外周に、回転軸と同心円上となるように配置されている。ディスク部材7も、第1実施形態のスクリュー羽根41と同様に内部が空洞となっており、無機凝集剤の流通路7aを形成している。そして、ディスク部材7の表面のうち、ビーチ部にある濃縮汚泥に浸漬している部分に複数の排出孔7bが形成されている。排出孔7bは、図5に示すようにディスク部材7の先端及び両面に形成することができる。但し、必ずしも先端及び両面に形成しなくともよく、汚泥と高分子凝集剤の反応性などを考慮して排出孔7bの位置を決めることができる。さらに、排出孔7bは、図5に示すようにディスク部材7の0°と180°の2つの位相に配列する構成のみならず、一つの位相にのみ配列するようにしてもよい。或いは、ディスク部材7の径方向に沿って放射線状(例えば、90°間隔)に配置するようにしてもよい。
【0042】
上記構成を有する第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態のディスク部材7は、スクリューコンベア4の胴部42に全周に亘って形成されているので、汚泥はディスク部材7の先端とボウル3の内周面との間のクリアランスの部分を通過せざるを得ない。このように、ディスク部材7には、汚泥の流れを規制して撹乱を生じさせ、汚泥と無機凝集剤との撹拌作用を高めることができる利点がある。
【0043】
(第3実施形態)
続いて、本発明の第3実施形態に従う遠心分離装置について、横型のデカンタを一例に挙げて説明する。本実施形態のデカンタ1は、図6に示すように、ディスク部材7に代えてノズル部材8を設けたことが第2実施形態とは異なる。その他の構成については、第1,第2実施形態と同じにすることができる。そのため、同一の構成については、同じ符号を付すことによって詳しい説明を省略する。
【0044】
添加用部材であるノズル部材8は、例えば断面が円形の配管であり(断面図参照)、スクリューコンベア4の胴部42から径方向に延びるように配置されている。ノズル部材8は、0°と180°の2つの位相に配列する構成のみならず、一つの位相にのみ配列するようにしてもよい。或いは、スクリューコンベア4の径方向に沿って放射線状(例えば、90°間隔)に配置するようにしてもよい。このノズル部材8も、第2実施形態のディスク部材7と同様に、その内部の空洞が無機凝集剤の流通路8aを形成している。そして、濃縮汚泥に浸漬している部分に複数の排出孔8bが形成されている。排出孔8bは、図6に示すようにノズル部材8の先端及び両面に形成することができる。但し、必ずしも先端及び両面に形成しなくともよく、汚泥と高分子凝集剤の反応性などを考慮して排出孔の位置を決めることができる。このような構成を有する第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
(第4実施形態)
続いて、本発明の第4実施形態に従う遠心分離装置について、横型のデカンタを一例に挙げて説明する。本実施形態のデカンタ1は、図7に示すように、ディスク部材7に代えてブリッジ部材9を設けたことが第2実施形態とは異なる。その他の構成については、第1,第2実施形態と同じにすることができる。そのため、同一の構成については、同じ符号を付すことによって詳しい説明を省略する。
【0046】
添加用部材であるブリッジ部材9は、板状の部材であり、スクリュー羽根41の間に跨るようにスクリューコンベア4の長さ方向に配置されている。ブリッジ部材9は、一枚に限らず、複数枚のブリッジ部材9を胴部42から放射線状(例えば、90°間隔)に配置することもできる。このブリッジ部材9も、第2実施形態のディスク部材7と同様に、その内部の空洞が無機凝集剤の流通路9aを形成している。そして、濃縮汚泥に浸漬している部分に複数の排出孔9bが形成されている。排出孔9bは、図7に示すようにブリッジ部材9の先端及び両面に形成することができる。従って、本実施形態のブリッジ部材9は、第1及び第2実施形態とは異なり、無機凝集剤を周方向と径方向に向けて排出する構成である。但し、必ずしも先端及び両面に形成しなくともよく、汚泥と高分子凝集剤の反応性などを考慮して排出孔の位置を決めることができる。
【0047】
上記の構成を有する第4実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態のブリッジ部材9も、ディスク部材7と同様に汚泥の流れを規制して撹乱を生じさせる作用があり、これにより汚泥と無機凝集剤との撹拌作用を高めることができる。
【0048】
以上の通り、第1〜第4実施形態に従うデカンタ1は、濃縮汚泥に浸漬している添加用部材の表面に形成された排出孔を通じて無機凝集剤を添加する構成を採用したことにより、含水率がある程度低下している濃縮汚泥に対しても無機凝集剤を均一に添加することが可能である。添加用部材はビーチ部に配置するのが好ましいが、必ずしもビーチ部に配置しなくともよく、例えばショートコーン43から脱水汚泥の排出口35までの間の任意の位置に配置するようにしてもよい。さらに、ボウル3の長手方向に複数の添加用部材を配置してもよい。さらにまた、第1〜第4実施形態に示した添加用部材を組み合わせるようにしてもよい。
【0049】
(第5実施形態)
最後に、本発明の第5実施形態に従う遠心分離装置について、横型のデカンタを一例に挙げて説明する。本実施形態のデカンタ1は、図8に示すように、供給ノズル5から吐出される無機凝集剤を、高分子凝集剤と同様の流通路を介してショートコーン43に供給する構成である。その他の第1実施形態と同一の構成については、同じ符号を付すことによって詳しい説明を省略する。
【0050】
本実施形態の構成によれば、ショートコーン43を通じて新たにボウル3内に供給される汚泥に対して高分子凝集剤と無機凝集剤を添加する構成である。このように構成すれば、添加用部材を新たに設置しなくともよく、簡易な構成で2液薬注方式の脱水処理を実現することが可能となる。なお、図8には、高分子凝集剤と無機凝集剤の流通路を別々にした構成を示しているが、高分子凝集剤と無機凝集剤の流通路を共通にしてもよい。
【0051】
以上、本発明を具体的な実施形態に則して詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。従って、本発明の範囲は、前述の実施形態及び添付図面に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0052】
1 デカンタ
2 ケーシング
3 ボウル
31 ビーチ部
32 プール部
4 スクリューコンベア
43 ショ−トコーン
45a 高分子凝集剤の流通路
46 無機凝集剤の流通路
46a 排出孔
5 供給ノズル
7 ディスク部材
8 ノズル部材
9 ブリッジ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の円筒部を有し、遠心力の作用により汚泥を脱水汚泥と分離液とに分離する回転ボウルと、回転ボウル内に配置され、回転ボウルと相対的な差速をもって回転するスクリューコンベアと、回転ボウル内に汚泥を供給する手段と、回転ボウル内に供給される汚泥に第1の凝集剤を添加する第1の凝集剤添加手段と、前記回転ボウルに形成されている脱水汚泥の排出口に向けてスクリューコンベアが移送している汚泥に第2の凝集剤を添加する第2の凝集剤添加手段と、を含む遠心分離装置であって、
前記第2の凝集剤添加手段は、一部又は全部が回転ボウル内の汚泥中に浸漬される添加用部材を含んでおり、汚泥中に浸漬された位置に第2の凝集剤の吐出口を配置していることを特徴とする遠心分離装置。
【請求項2】
前記添加用部材は、前記スクリューコンベアの螺旋状のスクリュー羽根が兼用しており、スクリュー羽根の表面に第2の凝集剤の吐出口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離装置。
【請求項3】
前記添加用部材は、スクリューコンベアの胴部に固定配置されると共に前記胴部と同心円上にあるディスク部材であり、このディスク部材の表面に第2の凝集剤の吐出口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離装置。
【請求項4】
前記添加用部材は、スクリューコンベアの胴部に固定配置されると共に前記胴部から延びるノズル部材であり、このノズル部材の表面に第2の凝集剤の吐出口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離装置。
【請求項5】
前記添加用部材は、スクリューコンベアの胴部に固定配置されると共に、一方の両辺がスクリューコンベアの長さ方向に延び、且つ、他方の両辺が径方向に延びる板状のブリッジ部材であり、このブリッジ部材の表面に第2の凝集剤の吐出口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離装置。
【請求項6】
前記添加用部材の吐出口は、スクリューコンベアの汚泥搬送方向,汚泥搬送方向とは反対の方向,又はスクリューコンベアの円周方向の中から選択される1以上の方向に第2の凝集剤を吐出するように配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の遠心分離装置。
【請求項7】
少なくとも添加用部材よりも脱水汚泥の排出口側に位置するスクリュー羽根のピッチを、他の領域のピッチよりも狭くしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の遠心分離装置。
【請求項8】
添加用部材よりも脱水汚泥の排出口側に位置するスクリュー羽根について、羽根の先端と回転ボウルとの間のクリアランスを部分的に大きくしていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の遠心分離装置。
【請求項9】
前記第1の凝集剤を添加する前に、汚泥に第3の凝集剤を添加する第3の凝集剤添加手段を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の遠心分離装置。
【請求項10】
中空の円筒部を有する回転ボウル内に汚泥を供給すると共に、回転ボウルを回転させて遠心力の作用により汚泥を脱水汚泥と分離液とに分離し、回転ボウル内に配置されたスクリューコンベアを回転ボウルとは相対的な差速をもって回転させることによって脱水汚泥を回転ボウルに形成されている脱水汚泥の排出口から排出する汚泥脱水方法において、
回転ボウル内に供給される汚泥に第1の凝集剤を添加した後、前記回転ボウルに形成された脱水汚泥の排出口に向けてスクリューコンベアが移送している汚泥に第2の凝集剤を添加するにあたり、第2の凝集剤は、汚泥中に浸漬された添加用部材の吐出口から供給することを特徴とする汚泥脱水方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−115814(P2012−115814A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270641(P2010−270641)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(591162022)巴工業株式会社 (32)
【Fターム(参考)】