説明

遠心管ラック

遠心管ラックは、異なる径の種類の遠心管のうちの一つをぴったりと受け入れるような大きさの複数の収容部を含む。ラックは、例えば、成形ポリエチレンや、トウモロコシを主材とした樹脂又はジャガイモを主材とした樹脂のような有機樹脂を含む生分解性の肥料化可能な材料の一種からなる。ラックは、その上面に画成された凹部の格子を含み、この凹部は、ラックに剛性を、各収容部に柔軟性を加えるため、収容部の間に延び、収容部を連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペットチップを貯蔵するためのピペットチップラックに関する。
【背景技術】
【0002】
ピペットと、ピペットチップ及びチューブは、化学、生物医学又は生物工学的試験で、無菌状態で別々の量の試験液を分配し、輸送するために広く使用されている。数十年前には、ピペットはガラス製の個々の分配器であった。そして、各使用後にピペットを洗浄し、減菌した。しかし、以降、試験液を輸送及び貯蔵するためのプラスチック製のピペットチップ及びチューブの出現で、広い使用が起こっている。
【0003】
たくさんの数のピペットチップ及びチューブが使用されているため、これらのチップ及びチューブは、通常、ラックで販売されている。ラックは、チップや遠心管を受け入れるための収容部の行列を有する長方形状のトレイであるのがよい。ラックは、手動で、又は、ラック全体に同時に載せることのできる自動積載機により、載せられる。異なるラックは、異なる直径のピペットチップ及びチューブを受け入れるための異なる大きさの収容部を有する。例えば、標準的な15mlチューブは、約1.75cmの直径、及び約11.85cmの長さを有する。スタイロフォーム(登録商標)の良好な耐衝撃性及び断熱性のため、このような15mlチューブは一般的にスタイロフォームのラックに収容されている。
【0004】
しかしながら、スタイロフォームのラックの一つの欠点は、スタイロフォームが、分解するのにとても長い時間がかかり、めったにリサイクルされないことである。このため、アメリカの多くの都市は、フードサービスと関連してスタイロフォームの使用を禁止している。したがって、例えば、15mmチューブに好適に使用され、環境に優しいチューブラックを提供することが望まれる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、遠心管のラックに関する。ラックは、多様の異なる直径の遠心管のうち一つをぴったりと受け入れる大きさの複数の収容部を含むのがよいが、さらなる実施形態では、変形例として様々な大きさのピペットチップを貯蔵してもよい。ラックは、例えば、成形ポリプロピレン、又は、例えば、トウモロコシを主材とする樹脂又はじゃがいもを主材とする樹脂のような有機樹脂を含む、生物分解性の堆肥化可能な材料の一種で構成されるのがよい。他の材料が考慮される。ラックは、さらに、ラックの上面に画成された凹部の格子を含み、凹部は収容部の間に延び、収容部を連結する。凹部は、ラックに剛性を、個々の収容部に或る程度の柔軟性を与える。
【0006】
収容部の深さと間隔は、チューブ内に貯蔵された流体への熱の最適な流れ及び流体からの熱の最適な流れを促進する。かくして、チューブのより長い部分が、チューブの周りの大気に直接、曝される。さらに、ラックの肉厚は小さく、例えば厚さ0.02インチであり、かくして、無視してよいほどの熱障壁を提供する。かくして、収容部内に配置されたチューブの部分でさえも、効率的に熱をチューブ内の流体へ伝え、或いはチューブ内の流体から放熱することができる。
【0007】
ラックは、頂部から底部までわずかに外向きに先細るラックの外周の周りに側壁を含む。これにより、収容部の格子とともに、多数のラックが、互いに積み重ねられることを可能にする。ラックは、水平方向に隣接したラックと互いに連結する連結タブを含むのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態によるラックの平面図である。
【図2】図1のラックの断面図である。
【図3】本発明の実施形態によるラックの平面図である。
【図4】図3のラックの断面図である。
【図5】図3のラックの側面図である。
【図6】図3のラックの端面図である。
【図7】本発明の実施形態による一対の積み重なったラックの底面図である。
【図8】本発明の実施形態による一対の積み重なったラックの断面図である。
【図9】本発明の実施形態による3つの積み重なったラックの断面図である。
【図10】本発明の実施形態によるラックの斜視図である。
【図11】図10のラックの拡大部分斜視図である。
【図12】遠心管を保持する本発明の実施形態によるラックの斜視図である。
【図13】ラックを連結するための連結タブを図示する、本発明の実施形態によるラックの斜視図である。
【図14】連結タブを図示する、本発明の実施形態によるラックの平面図である。
【図15】図14のラックの断面図である。
【図16】連結タブの拡大部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
今、概して遠心管のラックに関する本発明の実施形態を、図1乃至16を参照して説明する。本発明を、多くの異なる形で具体化してもよく、以下、ここに記載される実施形態に限定されると解釈するべきではないことは理解される。むしろ、これらの実施形態は、この開示は詳細で完璧であり、当業者に十分に発明の実施形態を伝えるように提供される。実際、本発明は、添付の請求の範囲に記載された発明の範囲と精神に含まれる、これらの実施形態の代替、修正、均等を含むことを意図している。さらに、本発明の実施形態の以下の詳細な説明中に、本発明の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細を記載する。しかし、本発明をこのような特定の詳細事項なしに、実施してもよいことは当業者に明らかになるだろう。
【0010】
図1乃至6を参照して、多数の遠心管102を保持するラック100が示されている。実施形態において、ラック100は、15ml遠心管をぴったりと受け入れるよう寸法決めされた多数の収容部104を含むとよい。しかし、ラック100に収容されるチューブの大きさ及び収容力は、他の実施形態では変わってもよいことは理解される。さらに、さらなる実施形態では、ラック100は、異なる大きさのピペットチップを収容してもよい。実施形態では、ラック100は、約5.75インチの長さ、4.5インチの幅、及び1.5インチの深さを有するのがよい。これらの各寸法は、他の実施形態では、これらの寸法より上下に変わってもよい。例えば、他の寸法が図に示されている。収容部104は、上面112から下方に実質的にラック100の全深さ延びる。
【0011】
実施形態において、ラック100は、成形ポリプロピレン、又は、例えばトウモロコシを主材とする樹脂又はじゃがいもを主材とする樹脂のような有機樹脂を含む多様な生物分解性の堆肥化可能な材料の一種で形成されてもよい。ラック100は、さらなる実施形態では、多様な他の有機由来の分子で形成されてもよい。ラック100は、さらに、他の炭化水素分子の組み合わせで形成されてもよい。これらの材料は、容易にリサイクルすることができるという利点を有し、かくして、一般的なスタイロフォームのラックに比べて利点を提供する。ラック100は、例えば、射出成形など多様な既知の工程により形成される。さらに、ラックを形成する材料は、その構造を維持して崩壊せず、このことは時間が経過すると崩壊するスタイロフォームに比べてさらに優位である。上記の材料の使用のさらなる利点は、ラック100及びその中のチューブ102を、液体浴に沈めてもよいことである。通常のラックでは、スタイロフォームの浮力がこのことを妨げる。
【0012】
ラック100は、さらに、ラック内に画成された凹部106の格子を含み、凹部106は収容部104の間を延び、かつ、収容部を連結する。凹部106は、水平に(すなわち、第1の端108と第2の端110との間に延びる)及び/又は対角に(すなわち、水平な凹部に対して斜角で)向けられるのがよい。凹部106は、ラック100に剛性を加える。
【0013】
例えば、図3、図6及び図11に見られるように、実施形態では、凹部106は、ラック106の上面112で開口し、各収容部104を連結する。凹部106は、より狭い直径先細りになって、各収容部104の底面、又はその近傍で終わる。かくして、実施形態では、収容部104は閉じた円筒ではなく、むしろ、凹部106で交差される。他の実施形態におけるよりも多少はあるかもしれないが、少なくとも収容部のうち大部分は、収容部の周囲の4箇所で凹部106によって交差されている。かくして、凹部は全体として構造上の剛性をラック100に加えるとともに、凹部106は個々の収容部104に幾分かの柔軟性を加える。
【0014】
収容部の深さ及び間隔は、チューブ102内に貯蔵された流体への又は流体からの最適な熱流を促進するために設けられている。例えば、ラックの深さは、一般的なスタイロフォームのラックよりも小さい。かくして、チューブのより長い部分が、チューブの周りの大気に直接、曝されることとなる。さらに、ラックの肉厚が小さく、例えば厚さ0.2インチであり、かくして、無視してよいほどの熱障壁を提供する。この厚さは他の実施形態では変わってもよい。かくして、チューブの収容部に着座された部分は、熱をチューブ内の流体へ又はチューブ内の流体から熱を十分に伝達することができる。例えば、チューブ102付きのラック100が冷却ユニット内に置かれると、チューブ内の流体の温度は、急速に、かつ、チューブの長さに沿って一様に減少する。これは、本来の断熱材であるスタイロフォームにまさる利点である。
【0015】
さらに、収容部は、チューブ内の流体への熱の流入及び流体からの熱の流出を促進する、チューブ102間に間隔を許容する。これは、チューブが互いに非常に近接して収容されていたスタイロフォームのラックにまさる利点である。他の実施形態におけるよりも多少はあるが、本実施形態では収容部はチューブ間に0.1インチ乃至0.25インチの間隔を許容する。この間隔は、また、チューブを把持してラック100から取り出すことを容易にする。チューブ100を、在来のスタイロフォームラックにおけるのと同じ間隔で、互いに隔てられてもよいことが理解できる。このような実施形態では、収容部の間隔に関してここに記載した利点を無効にするだろう。
【0016】
例えば、図5に示すように、本発明の材料の使用は、ラック100への刻印も可能とする。かくして、ロット番号、標語、ブランド、その他文字や記号をラック100に設けてもよい。これは、典型的に印刷を載せることができないスタイロフォームにまさるさらなる利点である。
【0017】
今、上記の図1乃至図6、及び、さらに、図7乃至図10を参照して、ラック100は、上面112からわずかに外向きに先細る側壁120を含む。これは、収容部の格子とともに、多数のラックを互いに積み重ねられるのを可能とする。本実施形態では、10個のラックを、約5インチ乃至6インチの高さに積み重ねるのがよい。また、チューブ102を載せた2つ又はそれ以上のラックが互いに積み重ねられるように、ラック100の底面を形成することも考えられる。
【0018】
今、図13乃至16を参照して、ラック100は、さらに、射出成形工程又は他の工程中に成形された連結タブ130を備えてもよい。図14乃至図16に最もよく見られるように、タブ130により、隣接するラックを互いに連結させる。特に図16を参照して、このタブは、第1のラックの側面120の雄タブ130aが、第2のラックの側面120の雌タブ130bと噛み合うように形成されるのがよい。各ラックは、各側面120に、1つ、2つ、3つ、又は4つのタブを含んでもよい。本実施形態では、第1の側面が一つの雄タブを含み、反対の側面は雌タブを含む。代わりに、第1の組は雄タブのみを含み、第2の組は雌タブのみを含む2組のラックがあってもよい。
【0019】
図10乃至12に例が見られるように、タブ130を、省いてもよい。タブ130を含む、又は省く実施形態では、さらに、側壁120に形成された切除された切欠き140を含んでもよい。切欠き140は、ラック100の把持及び輸送を容易にする。さらに、ロボットの指又はトレイが、ラック100の対向側面に形成された切欠き140内で、ラック100の下にフィットすることで、ラック100のロボットによる自動化された取扱い及び輸送を可能にする。このようなロボットによる自動取扱いは、在来のスタイロフォームのラックでは不可能であった。さらに、各チューブの間の間隔が、ラック内における各チューブ102の自動取扱い及び輸送を容易にする。
【0020】
先の本発明の詳細な説明は、図示及び記載の目的で存在する。網羅的であること、及び本発明を開示した正確な形態に限定することは意図していない。上記の教示した知見のもとで、多数の修正及び変形が可能である。記載した実施形態は、それにより、他の当業者が、特定の用途に合うように考慮された様々な実施形態で、様々な修正を加えて、最良の利用ができるように、本発明の原理およびその実際の適用の最良の説明をするために選択した。本発明の範囲は、添付された請求の範囲によって定められるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の収容部と、
前記複数の収容部の間に延び、これらを連結する複数の凹部と、を備えるチューブ保持ラックであって、
前記ラックは、一以上の生分解性の材料で形成されている、ラック。
【請求項2】
請求項1記載のラックにおいて、ラックを他のラックと横並びに添える連結タブをさらに含むラック。
【請求項3】
請求項1記載のラックにおいて、前記収容部は、ラックが他のラックの上に、及び/又は、下に重ね合わせる行列状に設けられているラック。
【請求項4】
請求項1記載のラックにおいて、前記収容部は、15mlの遠心管をぴったりと受け入れるように設けられているラック。
【請求項5】
請求項1記載のラックにおいて、前記ラックは堆肥化可能な材料で形成されるラック。
【請求項6】
請求項1記載のラックにおいて、前記ラックは成形プロピレン及び有機樹脂の一つで形成されるラック。
【請求項7】
請求項6記載のラックにおいて、前記ラックはトウモロコシを主材とする又はジャガイモを主材とする樹脂の一つで形成されるラック。
【請求項8】
請求項1記載のラックにおいて、前記複数の収容部は、互いに0.1インチ乃至0.25インチ間隔を隔てられているラック。
【請求項9】
請求項1記載のラックにおいて、前記複数の凹部は、ラックに構造上の剛性を、収容部に柔軟性を加えるラック。
【請求項10】
請求項1記載のラックにおいて、前記複数の凹部は、前記ラックの外側の縁に平行に形成されているラック。
【請求項11】
請求項1記載のラックにおいて、前記複数の凹部は、ラックの外側の縁に対して斜角に形成されているラック。
【請求項12】
請求項1記載のラックにおいて、前記複数の凹部は、前記複数の収容部のうちの一つの収容部を、当該収容部の周の4箇所で交差するラック。
【請求項13】
請求項1記載のラックにおいて、前記ラックは、概して長方形状の上面と、上面から下方に延びる4つの側壁とを含み、前記下方へ延びる側壁は、同様に形成された第2のラックの頂部の上部に積み重ねられるように、頂部から底部まで外に向かって先細りをなしているラック。
【請求項14】
請求項13記載のラックにおいて、前記下方へ延びる二以上の側壁に形成された切欠きをさらに含み、前記切欠きは、ラックの手動又は自動把持及び輸送の少なくとも一つを可能にするラック。
【請求項15】
チューブを保持するラックにおいて、該ラックは、上面と、前記上面から下方に延びる側壁とを含み、前記ラックは、
複数の収容部と、
前記複数の収容部の間に延び、これらの間を連結し、前記複数の収容部のうちの一の収容部と該収容部の周の4箇所で交差し、ラックに構造上の剛性を、収容部に柔軟性を加える複数の凹部と、を備えるラックであって、
前記ラックは、一以上の生分解性の材料で形成されるラック。
【請求項16】
請求項15記載のラックにおいて、前記収容部は、15ml遠心管をぴったりと受け入れるようになっているラック。
【請求項17】
請求項15記載のラックにおいて、前記ラックは、堆肥化可能な材料で形成されるラック。
【請求項18】
請求項15記載のラックにおいて、前記ラックは、成形プロピレン及び有機樹脂の一つで形成されるラック。
【請求項19】
請求項18記載のラックにおいて、前記ラックは、トウモロコシを主材とする又はジャガイモを主材とする樹脂の一つで形成されるラック。
【請求項20】
請求項15記載のラックにおいて、前記ラックは、概して長方形状の上面と、上面から下方に延びる4つの側壁とを含み、前記下方に延びる側壁は、同様に形成された第2のラックの頂部の上部に積み重ねられるように、頂部から底部まで外に向かって先細りをなしているラック。
【請求項21】
請求項20記載のラックであって、さらに、前記下方へ延びる二以上の側壁に形成された切欠きを含み、前記切欠きは、ラックの手動又は自動把持及び輸送の少なくとも一つを可能にするラック。
【請求項22】
チューブを保持するラックであって、上面と、該上面から下方に延びる側壁とを含み、前記ラックは、
15ml遠心管をぴったりと保持するような大きさの複数の収容部と、
前記複数の収容部の間に延び、これらを連結し、前記収容部の周囲の4箇所で前記複数の収容部のうちの一の収容部に交差し、前記ラックに構造上の剛性を、前記収容部に柔軟性を加える複数の凹部と、
前記ラックを他のラックと横並びに添える連結タブと、
前記下方へ延びる二以上の前記側壁に形成され、ラックの手動又は自動把持及び輸送の少なくとも一つを可能とする切欠きと、を備えるラックであって、
前記ラックは、一以上の生分解性の材料で形成されるラック。
【請求項23】
請求項22記載のラックにおいて、前記ラックは、成形されたプロピレン及び有機樹脂の一つで形成されるラック。
【請求項24】
請求項23記載のラックにおいて、前記ラックは、トウモロコシを主材とする又はジャガイモを主材とする樹脂の一つで形成されるラック。
【請求項25】
請求項22記載のラックにおいて、前記ラックは、前記下方へ延びる側壁は、同様に形成された第2のラックの頂部の上部に積み重ねられるように、頂部から底部まで外に向かって先細りをなしているラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15−16】
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【公表番号】特表2010−538924(P2010−538924A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524994(P2010−524994)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/076053
【国際公開番号】WO2009/036197
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(510069272)
【Fターム(参考)】