説明

遠隔操作用マーキング装置

【課題】マーキング部の位置決めを的確に行う上で有利な遠隔操作用マーキング装置を提供する。
【解決手段】遠隔操作用マーキング装置200は、被マーキング位置にマーキングを行うマーキング部12と、作業車両110で支持されマーキング部12を移動させるマーキング部用移動機構14とを備える。マーキング部用移動機構14は、遠隔操作によってガイド部材20を旋回させる旋回機構18と、直線状に延在するガイドロッド2002と、マーキング部12を支持すると共に、ガイドロッド2002にその延在方向に沿って移動可能に支持された移動体22と、移動体22をガイドロッド2002に沿って移動させる移動体用移動機構24とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、作業現場などの地表面などに遠隔制御によってマークを形成するなど、無人で遠隔操作により所望位置にマーキングする技術に関し、特に、危険地帯などでの測量により位置決めされた被マーキング位置に人により行われていたマーキングを無人で行う場合に適用して有効な技術である。
【背景技術】
【0002】
建築、土木の分野では、例えば、地盤掘削などに際しては、掘削位置が分かるように、予め掘削位置にマーキングを行っている。掘削位置は、測量により精度高く位置決めを行う。位置決めデータに基づき、人手を介して、所望掘削位置に塗料などのマーキング材でマーキングを行っている。
かかるマーキング作業においては、場合によっては人の出入りが危険な場所での作業も想定される。例えば、火山活動後の火山周辺域の早急な復旧、あるいは火山周辺域の2次災害を防止するための緊急工事などの場合がある。雲仙普賢岳の災害復旧工事は、まさにその例である。さらには、土石流の危険がある場合に、下流域を保護するために、築堤を早急に行うなどの場合も考えられる。
かかる危険地域の災害復旧などが安全に、且つ円滑に行えるように、かかる作業の無人化システムが、本出願人により積極的に検討され、提案されている。安全な場所から、工事に必要な作業機械を遠隔操作することで、作業の無人化を積極的に進めるものである。
このように無人化が積極的に進められる中、高精度を要求される前記マーキング作業は、依然として人手を介して行うものであった。
【0003】
そこで、本出願人は、測量分野におけるかかるマーキング作業の無人で行うマーキング方法について既に提案している(特許文献1参照)。
このマーキング方法では、遠隔操作可能な作業車両に、被マーキング位置にマーキングを行うマーキング部と、マーキング部を水平面内に沿って移動させ、かつ、鉛直方向に移動させるマーキング部用移動機構とを設ける。
そして、マーキングすべき位置がマーキング部の移動範囲に入るように作業車両を遠隔制御したのち、マーキング部用移動機構を遠隔操作してマーキング部をマーキングすべき位置に正確に位置決めしてマーキングを行うようしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−295949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、マーキング部用移動機構が矩形枠を構成する2軸テーブルに支持されていることから、マーキング部の移動範囲が矩形枠の内側の範囲に限定される。
したがって、マーキングすべき被マーキング位置の直近に、矩形枠と干渉する構造物や障害物が存在すると、マーキング部を被マーキング位置に的確に位置決めすることが困難となる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、マーキング部の位置決めを的確に行う上で有利な遠隔操作用マーキング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被マーキング位置にマーキングを行うマーキング部と、遠隔操作される作業車両で支持され前記マーキング部を移動させるマーキング部用移動機構とを備える遠隔操作用マーキング装置であって、前記マーキング部用移動機構は、前記直線状に延在するガイド部材と、遠隔操作によって前記ガイド部材を旋回させる旋回機構と、前記マーキング部を支持すると共に、前記ガイド部材に該ガイド部材の延在方向に沿って移動可能に支持された移動体と、遠隔操作によって前記移動体を前記ガイド部材に沿って移動させる移動体用移動機構とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、遠隔操作により旋回機構でガイド部材を旋回させ、移動体用移動機構でマーキング部を支持する移動体をガイド部材に沿って移動させるようにした。
したがって、マーキング部の周囲に構造物や障害物に干渉する部材や構造が配置されていないため、マーキングすべき被マーキング位置の直近に構造物や障害物が存在したとしても、マーキング部を被マーキング位置に的確に位置決めする上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の遠隔操作用マーキング装置が適用されるマーキングシステムの全体構成を示す説明図である。
【図2】遠隔操作用マーキング装置200の平面図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】マーキング部12の構成を示す正面図である。
【図5】図3のBB線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の遠隔操作用マーキング装置が適用されるマーキングシステムの全体構成を示す説明図、図2は遠隔操作用マーキング装置200の平面図、図3は図2のA矢視図である。
マーキングシステム10は、図1に示すように、作業車両100、本発明に係る遠隔操作用マーキング装置200、ターゲット300、測量部400、遠隔制御部500などを備えて構成されている。
【0010】
作業車両100は、遠隔制御によって走行移動可能に構成された走行体110と、走行体110に移動可能に支持されたアーム120a(作業用部材)とを有している。
アーム120aは、遠隔操作用マーキング装置200を移動可能に支持する支持部120として構成されている。
走行体110には、作業機械用無線機130とマーキング装置用無線機140が搭載されている。
【0011】
作業機械用無線機130は、遠隔制御部500から送信される作業機械制御信号S1を受信して回路の機械制御部に入力する。
機械制御部は、作業機械制御信号S1に基づいて走行体110の移動方向や移動距離を制御するとともに、アーム120aの移動方向や移動距離を制御するように構成されている。
【0012】
また、マーキング装置用無線機140は、遠隔制御部500から送信されるマーキング装置用制御信号S2を受信してマーキング装置用制御部600(図示省略)に入力する。
マーキング装置用制御部600はマーキング装置用制御信号S2に基づいて遠隔操作用マーキング装置200の動作を制御するように構成されている。
【0013】
遠隔操作用マーキング装置200は、被マーキング位置に、例えば作業現場の地表面や、壊れた構造物の表面に、あるいはその他作業現場で種々の作業のために必要な箇所に対して塗料などでマークを形成するように構成され、作業車両100のアーム120aに取着されている。
そして、遠隔操作用マーキング装置200には測量用のターゲット300が固定されており、測量部400によってターゲット300の位置座標が測量されるようになっている。
より詳細には、ターゲット300は、後述するマーキング部12の頂部に固定されている。
ターゲット300は、例えば、入射する光をその光と同じ方向に反射するプリズムなどから構成される測量キューブから構成されている。
【0014】
測量部400は、トータルステーション410、パソコン420、データ通信用無線機430を有して構成されている。トータルステーション410は、そのトータルステーション410の設置されている位置座標を基準座標として上記ターゲット300の測距および測角を行い、ターゲット300の位置座標を示す第1座標データを計算して出力するように構成されている。
トータルステーション410としては、例えば、作業者Pが所定位置に設置後、ターゲット300を自動的に追尾して測距、測角を行う自動追尾式のものを使用すればよい。
【0015】
パソコン420は、トータルステーション410から出力された第1座標デー夕を通信可能な形式のデータに変換してデータ通信用無線機430に入力するように構成されている。データ通信用無線機430は、入力された第1座標データをデータ信号S3として遠隔制御部500に送信するように構成されている。
【0016】
なお、測量部400は、ターゲット300の測距、測角が可能な範囲であれば、作業現場、すなわち作業機械が位置している危険性がある場所から十分離れた場所に設置することができる。
【0017】
遠隔制御部500は、情報処理装置510、表示部520、キーボード530、第1無線機540、第2無線機550、第3無線機560、作業車両用操作リモコン部570、マーキング装置指令用リモコン部580、監視モニタ590などを備えて構成されている。情報処理装置510は、出力装置としての表示部520と、入力装置としてのキーボード530と、第3無線機560とに接続されている。
【0018】
また、情報処理装置510の内部記憶装置(図示省略)には、マークを形成するべき被マーキング位置、例えば作業現場の地表面の位置座標を示す第2座標データ510Aが格納されている。
【0019】
第1無線機540は作業機械用無線機130に無線通信可能に構成され、作業機械制御信号S1を送信するように構成されている。
第2無線機550はマーキング装置用無線機140と無線通信可能に構成され、マーキング装置用制御信号S2を送信するように構成されている。
第3無線機560はデータ通信用無線機430と無線通信可能に構成され、データ通信用無線機430から送信された第1座標データを示すデータ信号S3を受信して第1座標データを情報処理装置510に入力するように構成されている。
【0020】
したがって、第1、第2無線機540、550は、作業車両100に搭載されている作業機械用無線機130とマーキング装置用無線機140と通信可能な範囲に設ければよく、遠隔制御部500を危険性のある作業現場から十分離れた位置に設置することができる。
【0021】
作業車両用操作リモコン部570は、これが操作されることで走行体110の移動方向、移動距離、アーム120aの移動などを制御する作業機械制御信号を生成して第1無線機540に入力するように構成されている。
マーキング装置指令用リモコン部580は、これが操作されることで遠隔操作用マーキング装置200の動作を制御するマーキング装置用制御信号を生成して第2無線機550に入力するように構成されている。
【0022】
監視モニタ590は、テレビカメラ(図示省略)によって撮影されている作業車両100の撮影画像を表示するように構成され、監視モニタ590の画像を見ながら作業車両用操作リモコン部570を操作するようになっている。
【0023】
次に、遠隔操作用マーキング装置200の構成について詳細に説明する。
図2,図3に示すように、遠隔操作用マーキング装置200は、被マーキング位置にマーキングを行うマーキング部12と、マーキング部12を移動させるマーキング部用移動機構14とを含んで構成されている。
【0024】
図4はマーキング部12の構成を示す正面図である。
図3,図4に示すように、マーキング部12は被マーキング位置にマーキングを行うものである。
マーキング部12は、2本のガイド軸1202と、ボールねじ1204と、第3のモータ1206と、連結部1208と、連結ロッド1210と、筒体1212と、液容器1214と、噴射ノズル1216とを含んで構成されている。
【0025】
2本のガイド軸1202は、互いに間隔をおいて平行して設けられ、各ガイド軸1202の上端および下端は、上連結板1218および下連結板1220で連結されている。また、各ガイド軸1202の下連結板1220寄りの箇所は中間板1222で連結されている。
ボールねじ1204は、2本のガイド軸1202の間に各ガイド軸1202と平行して配置され、ボールねじ1204の上端が上連結板1218に回転可能に支持され、下端寄りの箇所が、中間板1222に回転可能に支持されている。
第3のモータ1206は下連結板1220に取着され、第3のモータ1206の駆動軸はボールねじ1204の下端に連結されている。
連結部1208は、軸受を介して2本のガイド軸1202に移動可能に支持されボールねじ1204に螺合している。
したがって、第3のモータ1206が正逆回転してボールねじ1204が回転すると、連結部1208を除くマーキング部12の部分が連結部1208に対して上下方向に移動することになる。
本実施の形態では、2本のガイド軸1202と、ボールねじ1204と、第3のモータ1206と、連結部1208とによって特許請求の範囲の上下移動機構が構成されている。
【0026】
連結ロッド1210は、第3のモータ1206の周囲に間隔をおいて複数設けられ、下連結板1220の下面に取着されている。
液容器1214は、マーキング用の塗料(液体)を収容するものであり、筒体1212に収容されている。
噴射ノズル1216は、液容器1214から供給される塗料を後述するコンプレッサーから供給される圧縮空気の作用により噴射口から噴射する。
筒体1212は、連結ロッド1210を介して下連結板1220に取着されている。
筒体1212は、液容器1214および噴射ノズル1216を内部に収容し、噴射ノズル1216から塗料が噴射される方向に軸心を合致させている。より詳細には、筒体1212の軸心と噴射ノズル1216の軸心とが合致している。
筒体1212の内径は例えば100mmであり、筒体1212の下端が地面に接地した状態で噴射ノズル1216から塗料が噴射されると、地面のうち筒体1212の内側の領域に塗料が付着し、したがって、筒体1212の内径と同じ寸法の直径のマークが地面に形成される。
なお、本実施の形態では、筒体1212は、液容器1214および噴射ノズル1216を収容する上部筒体1212Aと、上部筒体1212と同軸上で上部筒体1212の下部に接続された下部筒体1212とで構成されている。
したがって、上部筒体1212の内径と下部筒体1212の内径とは同一である必要はなく、下部筒体1212の内径を地面に形成すべきマークの直径と同じ寸法で形成すればよい。
また、下部筒体1212の下端外周には、下部筒体1212の下端が地面に接地したことを検出し検出結果をマーキング装置用制御部600に供給する検出スイッチ1224が設けられている。
【0027】
本実施の形態では、マーキング部12は、噴射ノズル1216が常時鉛直下方を向くようにマーキング部12を保持するユニバーサル機構32を介して後述する移動体22に支持されている。
すなわち、マーキング部12の連結部1208と、マーキング部用移動機構14の移動体22とがユニバーサル機構32を介して連結されている。
図5は図3のBB線断面図である。
図5に示すように、ユニバーサル機構32は、矩形状の板体3202と、板体3202の対向する2辺から同一の方向に起立する一対の支持片3204とを有し平面視コ字状を呈している。
板体3202の中央は、第1の軸線X回りに揺動可能となるように第1の支軸3202Aを介して移動体22に支持されている。
連結部1208は、平面視第1の軸線Xと直交する第2の軸線Y軸回りに揺動可能となるように第2の支軸3204Aを介して一対の支持片3204に支持されている。
したがって、アーム120aに取着されたマーキング部用移動機構14の地表面に対する姿勢に拘らず、マーキング部12は自重で常に鉛直方向に姿勢を維持することができる。
マーキング装置用制御部600は、第3のモータ1206を制御することにより、マーキング部12を上下方向に移動させる。
【0028】
また、遠隔操作用マーキング装置200は、コンプレッサ26と、電磁弁28とをさらに備えている。
コンプレッサ26は、後述するフレーム16内に収容されており、空気供給路30を介して噴射ノズル1216に圧縮空気を供給する。
電磁弁28は空気供給路30に設けられ、コンプレッサ26から噴射ノズル1216への圧縮空気の供給を制御するものである。
電磁弁28は、マーキング装置用制御部600によって開閉制御され、電磁弁28が開状態とされることにより、噴射ノズル1216に圧縮空気が供給され、これにより噴射ノズル1216の噴射口から塗料が噴射される。
【0029】
次に、図2を参照してマーキング部用移動機構14について説明する。
マーキング部用移動機構14は、作業車両110で支持されマーキング部12を移動させるものである。
マーキング部用移動機構とを備える遠隔操作用マーキング装置であって、フレーム16と、旋回機構18と、ガイド部材20と、移動体22と、移動体用移動機構24とを備えている。
【0030】
フレーム16は、矩形枠状に形成された下枠1602と、下枠1602の四隅から立設された4本の支柱1604と、これら4本の支柱1604の上端を接続する矩形枠状に形成された上枠1606と、4本の支柱1604の中間部を接続する矩形枠状に形成された中間枠1608と、中間枠1608の内側の矩形状の空間を塞ぐように中間枠1608に取着された矩形状の支持板1610とを備えている。
フレーム16は、不図示の取付金具を介してアーム120aの先部に取着されており、言い換えると、マーキング部用移動機構14はアーム120aの先部で支持されている。
【0031】
旋回機構18は、遠隔操作によってガイド部材20を旋回させるものであり、旋回機構18は、ベース1802と、旋回軸1804と、ブラケット1806と、ギア部1808と、第1のモータ1810とを含んで構成されている。
ベース1802は、矩形板状を呈し金具を介して支持板1610に固定されている。
旋回軸1804は、ベース1802の上面に突設されている。
ブラケット1806は、矩形板状の下板1806Aと、下板1806Aの対向する2辺から立設された矩形板状の第1,第2の側板1806B,1806Cと、2つの側板1806B,1806Cの上辺を接続する矩形板状の上板1808とを備える。
下板1806Aは、軸受を介して旋回軸1804に回転可能に結合されている。
ギア部1808は、第1の側板1806Bに設けられ、平面視した状態で上板1808および下板1806Aの外側で円弧状に延在している。
第1のモータ1810は、ベース1802に取着され、第1のモータ1810の駆動軸に設けられた駆動ギア1810Aがギア部1808に噛合している。
したがって、第1のモータ1810が正逆回転することにより、ブラケット1806が旋回軸1804を中心に旋回する。
【0032】
ガイド部材20は、直線状に延在し上下に間隔をおいて互いに平行する2本のガイドロッド2002で構成され、ガイドロッド2002はブラケット1806に固定されている。したがって、ガイドロッド2002はブラケット1806と共に旋回される。
各ガイドロッド2002は、上下に間隔をおいて平行して配置され、第1の側板1806Bから第2の側板1806Cを貫通してブラケット1806からフレーム16の外側に延在し、第1,第2の側板1806B,1806Cに移動不能に固定されている。
各ガイドロッド2002のブラケット1806と反対側の先端部は連結具2004によって連結されている。
本実施の形態では、各ガイドロッド2002の長さの半分以上(例えば2/3以上)の部分がフレーム16の外側に位置している。
【0033】
移動体22は、前述したユニバーサル機構32を介してマーキング部12の連結部1208を支持するものである。
移動体22は、軸受2202を介して各ガイドロッド2002に連結され、ガイドロッド2002に沿って移動可能に支持されている。
移動体用移動機構24は、移動体22をガイドロッド2002に沿って移動させるものである。
移動体用移動機構24は、ラック2402と、第2のモータ2404とを含んで構成される。
ラック2402は、2つのガイドロッド2002の間でガイドロッド2002と平行に延在し、一端が移動体22に連結されており、ラック2402の中間部は第1,第2の側板1806B,1806Cに設けられたガイド部(不図示)によりラック2402の延在方向に移動可能に支持されている。
第2のモータ2404は、ブラケット1806に支持され、第2のモータ2404の駆動軸に設けられたピニオンギア2404Aがラック2402に噛合している。
第2のモータ2404が正逆回転することでラック2402と共に移動体22がガイドロッド2002に沿って移動する。
【0034】
マーキング装置用制御部600は、第1,第2のモータ1810、2404を制御することにより、図2に示すように、マーキング部12を、マーキング部用移動機構14により旋回軸1804を中心として旋回させると共に、移動体22と共にガイドロッド2002に沿って移動させる。
すなわち、マーキング部12の移動範囲は、旋回機構18によって旋回可能な角度と、移動体用移動機構24によって移動される移動体22の移動可能な移動距離とによって決定されることになる。
【0035】
次に上述のように構成されたマーキングシステム10の動作について説明する。
なお、初期状態では、マーキング部12は、筒体1212の下端が地表面から離間した状態にあり、したがって、検出スイッチ1224はオフ(非検出状態)となっている。
【0036】
図1に示すように、ターゲット300の測距、測角は、測量部400のトータルスステーション410によって行なわれ、ターゲット300の位置座標を示す第1座標データがデータ通信用無線機430に入力される。
データ通信用無線機430は、入力された第1座標データをデータ信号S3として遠隔制御部500に送信する。
【0037】
第3無線機560でデータ信号S3が受信され、データ信号S3で示された第1座標データが情報処理装置510に入力される。
情報処理装置510は、入力された第1座標データと、内部記憶装置に格納されている第2座標データ510A(マークを形成するべき被マーキング位置である作業現場の地表面の位置座標を示す)とを比較してその誤差を計算して表示部520に表示させる。
【0038】
作業者は、表示部520に表示された上記誤差に基づいて作業車両用操作リモコン部570を操作し、前述したマーキング部12の移動範囲内に被マーキング部が入るまで、監視モニタ590で画像確認しながら、遠隔操作により走行体110およびアーム120aを誘導制御する。
【0039】
被マーキング位置がマーキング部12の移動範囲内に入った時点で、走行体110およびアーム120aを停止させる。
その状態で、マーキング装置指令用リモコン部580を操作することにより、マーキング部用移動機構14を遠隔制御して、マーキング部12を被マーキング位置まで移動させる。
すなわち、作業者は、表示部520に表示される、ターゲット300の第1座標データと、被マーキング位置に対応する第2座標データ510Aとの誤差に基づいて、この誤差がなくなるようにマーキング部用移動機構14を遠隔制御する。
これにより、被マーキング位置にマーキング部127のノズル1216の噴射口を向けた状態で位置合わせがなされる。
【0040】
次に、マーキング装置指令用リモコン部580を操作することにより、マーキング部12を遠隔制御して、被マーキング部に対してマーキングを行う。
このようなマーキング部12の遠隔制御も、マーキング装置用無線機140が、遠隔制御部500から送信されるマーキング装置用制御信号S2を受信してマーキング装置用制御部600に入力することでなされる。
なお、ノズル1216の噴射口からの塗料の噴射の実行は、検出スイッチ1224の検出結果に基づいて自動的に行う第1のモードと、遠隔制御により手動で行う第2のモードとの2つのモードが選択可能となっている。
(1)第1のモード:
作業者は、マーキング装置指令用リモコン部580の操作(マーキング部12の下降を指令する操作)を行う。これにより、マーキング装置用制御部600は、第3のモータ1206を制御してマーキング部12を下降させる。
マーキング装置用制御部600は、マーキング装置用制御部600により、第3のモータ1206を制御してマーキング部12を下降させる。
検出スイッチ1224によって筒体1212が接地面に接地したことが検出されると、マーキング装置用制御部600は、第3のモータ1206を停止すると共に、電磁弁28を一定時間開状態とすることにより、ノズル1216の噴射口から下方に向けて塗料が噴射され、被マーキング位置である地表面に塗料が付着することでマークが形成される。
(2)第2のモード:
作業者は、マーキング装置指令用リモコン部580の操作(マーキング部12の下降を指令する操作)を行う。これにより、マーキング装置用制御部600は、第3のモータ1206を制御してマーキング部12を下降させる。
マーキング装置用制御部600は、検出スイッチ1224によって筒体1212が接地面に接地したことが検出されると、第3のモータ1206を停止させる。
作業者は、監視モニタ590の表示内容から筒体1212が接地面に接地したことを確認したならば、マーキング装置指令用リモコン部580の操作(電磁弁28の開閉動作を指令する操作)を行う。これにより、マーキング装置用制御部600は、電磁弁28を一定時間開状態とすることにより、ノズル1216の噴射口から下方に向けて塗料が噴射され、被マーキング位置である地表面に塗料が付着することでマークが形成される。
なお、第1,第2のモードの何れの場合にも、マーキング終了後、作業者は、マーキング装置指令用リモコン部580の操作(マーキング部12の上昇を指令する操作)を行う。これによりマーキング装置用制御部600は、第3のモータ1206を制御してマーキング部12を上昇させ、筒体1212が接地面から離間した状態に復帰される。
このようにして、マークを形成すべき被マーキング位置の近傍に人が立ち入ることなく、遠隔操作によってマークの形成を行うことができる。
【0041】
本実施の形態によれば、遠隔操作により旋回機構18でガイド部材20を旋回させ、移動体用移動機構24でマーキング部12を支持する移動体22をガイド部材20に沿って移動させるようにした。
したがって、マーキング部12の周囲に構造物や障害物に干渉する部材や構造が配置されていないため、マーキングすべき被マーキング位置の直近に、構造物や障害物が存在したとしても、マーキング部12を被マーキング位置に的確に位置決めする上で有利となる。
そのため、人の立ち入りが危険な場所におけるマーキングを遠隔操作により無人で安全に行うことができることは無論のこと構造物や障害物が存在してもマーキングを正確に行うことができる。
【0042】
また本実施の形態では、マーキング部12は、噴射ノズル1216を内部に収容し塗料が噴射される方向に軸心を合致させた筒体1212が常時鉛直下方を向くように筒体1212を保持するユニバーサル機構32を介して移動体22に取着されており、マーキング部用移動機構14は、マーキング部12を上下に移動させる上下移動機構を備えている。
したがって、走行体110が平坦でない地表面上に位置している場合であっても、筒体1212の下端を地表面に接地させた状態で、地表面に対して鉛直方向に沿って噴射ノズル1216から塗料を噴射させることができるので、鮮明なマークを形成する上で有利となる。
【0043】
また、本実施の形態では、マーキング部12の頂部にターゲット300を設けたので、測量装置によってマーキング部12の位置を的確に追尾する上で有利となる。
【0044】
また、本実施の形態では、走行体110で支持されたアーム120a(作業用部材)を用いてマーキング部用移動機構14を支持したので、遠隔操作用マーキング装置200の作業車両100への取り付けを簡単に行う上で有利となる。
【0045】
また、本実施の形態では、ガイド部材20は上下に間隔をおいて互いに平行する2本のガイドロッド2002を含んで構成され、移動体用移動機構24は、2本のガイドロッド2002の間でガイドロッド2002と平行に延在し移動体に一端が取着されたラック2402と、ラック2402に噛合するピニオン2404Aと、ピニオン2404Aを回転駆動するモータ2404とを含んで構成されている。
したがって、移動体用移動機構24を簡単に構成できるので、コストダウンおよび軽量化を図る上で有利となる。
また、ラック2402が水平方向に延在していると、その全長にわたって塵埃が付着しやすいものの、塵埃の影響を受けにくいため、移動体用移動機構24の耐久性の向上を図る上でも有利となる。
【符号の説明】
【0046】
12……マーキング部、14……マーキング部用移動機構、18……旋回機構、20……ガイド部材、22……移動体、24……移動体用移動機構、110……作業車両、200……遠隔操作用マーキング装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被マーキング位置にマーキングを行うマーキング部と、
遠隔操作される作業車両で支持され前記マーキング部を移動させるマーキング部用移動機構とを備える遠隔操作用マーキング装置であって、
前記マーキング部用移動機構は、
前記直線状に延在するガイド部材と、
遠隔操作によって前記ガイド部材を旋回させる旋回機構と、
前記マーキング部を支持すると共に、前記ガイド部材に該ガイド部材の延在方向に沿って移動可能に支持された移動体と、
遠隔操作によって前記移動体を前記ガイド部材に沿って移動させる移動体用移動機構とを備える、
ことを特徴とする遠隔操作用マーキング装置。
【請求項2】
前記マーキング部は、塗料を噴出する噴射ノズルと、前記噴射ノズルを内部に収容し前記塗料が噴射される方向に軸心を合致させた筒体と、前記移動体に取着され前記筒体が常時鉛直下方を向くように前記筒体を保持するユニバーサル機構とを備え、
前記マーキング部用移動機構は、前記マーキング部を上下に移動させる上下移動機構を備える、
ことを特徴とする請求項1記載の遠隔操作用マーキング装置。
【請求項3】
前記マーキング部の頂部に、測量装置によって前記マーキング部の位置を追尾するためのターゲットが設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の遠隔操作用マーキング装置。
【請求項4】
前記作業車両は、走行体と、前記走行体で支持された作業用部材とを備え、
前記マーキング部用移動機構は前記作業用部材の先部で支持されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の遠隔操作用マーキング装置。
【請求項5】
前記ガイド部材は上下に間隔をおいて互いに平行する2本のガイドロッドを含んで構成され、
前記移動体用移動機構は、前記2本のガイドロッドの間で前記ガイドロッドと平行に延在し前記移動体に一端が取着されたラックと、前記作業車両側で支持され前記ラックに噛合するピニオンと、前記ピニオンを回転駆動するモータとを含んで構成され、
ことを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載のマーキング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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