遠隔操作装置
【課題】滑らかな操作対象の駆動をすることができ、長期の使用により主動側ピニオンギヤと主動側ラックギヤとの噛合が解除されることが抑制され、耐久性の高い遠隔操作装置を提供する。
【解決手段】従動側ピニオンギヤ41と、従動側ラックギヤ42と、インナーケーブル31と、操作レバー25と、主動側ピニオンギヤ21と、主動側ラックギヤ22とを備え、主動側ラックギヤ22にはインナーケーブル31の他端が接続され、操作レバーの旋回操作による主動側ラックギヤ22の直線運動がインナーケーブル31を介して、従動側ラックギヤ42に伝達される遠隔操作装置1であって、突出部Pを有し、直線運動を規制する規制部材29を有し、主動側ラックギヤ22には、主動側ラックギヤ22の往復直線運動に伴って、突出部Pと遊嵌して移動する往路G1と突出部Pと係合する非連続な係合凹部C1、C2、C3が形成された復路G2とを有する操作用溝Gを有することを特徴とする。
【解決手段】従動側ピニオンギヤ41と、従動側ラックギヤ42と、インナーケーブル31と、操作レバー25と、主動側ピニオンギヤ21と、主動側ラックギヤ22とを備え、主動側ラックギヤ22にはインナーケーブル31の他端が接続され、操作レバーの旋回操作による主動側ラックギヤ22の直線運動がインナーケーブル31を介して、従動側ラックギヤ42に伝達される遠隔操作装置1であって、突出部Pを有し、直線運動を規制する規制部材29を有し、主動側ラックギヤ22には、主動側ラックギヤ22の往復直線運動に伴って、突出部Pと遊嵌して移動する往路G1と突出部Pと係合する非連続な係合凹部C1、C2、C3が形成された復路G2とを有する操作用溝Gを有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばテーブルに備え付けられたガスコンロの操作装置など、コントロールケーブルを介して操作レバーの操作による力を滑らかに伝送して、操作レバーから離れた位置にあるガスコックなどの操作対象を駆動する遠隔操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔操作装置は、操作部の操作に基づく操作力を遠隔に位置する被操作部に対して伝達することができ、焼肉店のガス器具付テーブルの操作装置等として広く用いられ、火加減の調整を容易にするために、点火位置から閉止位置までの間の火力を調整できるようにすることが望まれている。また、テーブルについては、テーブル台の下のスペースや配置の自由度のために、操作レバーをスライドさせて火力を調整することが望まれている。
【0003】
このような遠隔操作装置としては、例えば、特許文献1では、図10(a)及び(b)に示すコントロールボックス100内で、主動ラック101と噛合し、操作レバー102が形成された扇状ギヤ103が、図10(a)中上下方向に偏心移動自在とされて、クリックプレート104の係合凹部105と該操作レバー102の凸部106とが係合するガスコック(図示せず)の遠隔操作装置が提案されている。
【0004】
この遠隔操作装置は、ガスコックを連結するコック開閉軸にコック操作ボックス(図示せず)を取付け、該コック操作ボックスは互いに噛合するピニオン及び従動ラック(ともに図示せず)を収納し、従動ラックの一端に操作ワイヤーのインナーワイヤー107の一端を連結し、一方前記コック操作ボックスより離隔して設置したコントロールボックス100にギヤ機構部108を収納し、前記インナーワイヤー107の他端をギヤ機構部108の主動ラック101の一端に連結すると共に、該主動ラック101に扇状ギヤ103を噛合したロースターにおけるガスコックの遠隔操作装置において、前記扇状ギヤ103はその遠心方向に操作レバー102を延出形成し、図10(a)の状態から図10(b)の状態に前後方(図10(a)及び(b)中の上下方向)にスライド自在となしたスライドベース109に立設した筒軸110に回転自在に装着して、かつ操作レバー102の長さ方向へ偏心軸111を、筒軸110内の前後方に長い軸孔112内で偏心移動自在(図10(a)及び(b)参照)となし、また、弓状のクリックプレート104の一端を枢着して揺動自在となし、前記クリックプレート104の係合凹部105に前記操作レバー102の下面に設けた凸部106を係脱自在となしたことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2608514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記遠隔操作装置では、操作側のピニオンギヤとして用いられる扇状ギヤ103が火力調節のためのクリックプレート104との係合のために図10(a)の状態から図10(b)の状態まで下方に偏心移動するので、火力調節のためのラックギア(主動ラック101)の移動が前記偏心移動のために不規則となり、所望の火力への調節が難しい。また、このような偏心移動は、偏心軸111と前記扇状ギヤ103との磨耗を長期の使用により生じやすく、前記磨耗が生じた場合には、前記扇状ギヤ103と前記主動ラック101との噛合が解除されてしまう恐れがある。
【0007】
さらに、点火や火力調節時に、毎回偏心軸111が筒軸110内の前後方に長い軸孔112を移動して、筒軸110の内壁に偏心軸111が衝突するため、偏心軸111が破損しやすいという問題がある。
【0008】
そこで、本発明はかかる問題点に鑑みて、滑らかな操作対象の駆動をすることができ、長期の使用により主動側ピニオンギヤと主動側ラックギヤとの噛合が解除されることが抑制され、耐久性の高い遠隔操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の遠隔操作装置は、操作対象と連結した従動側ピニオンギヤと、前記従動側ピニオンギヤと噛合した従動側ラックギヤと、前記従動側ラックギヤに一端が接続されたインナーケーブルと、前記操作対象を操作するために操作される操作レバーと、前記操作レバーと連結した主動側ピニオンギヤと、前記主動側ピニオンギヤと噛合する主動側ラックギヤとを備え、前記主動側ラックギヤには前記インナーケーブルの他端が接続され、前記操作レバーの旋回操作による前記主動側ラックギヤの直線運動が前記インナーケーブルを介して、前記従動側ラックギヤに伝達される遠隔操作装置であって、突出部を有し、前記直線運動を規制する規制部材を有し、前記主動側ラックギヤには、前記主動側ラックギヤの往復直線運動に伴って、前記突出部と遊嵌して移動する往路と前記突出部と係合する非連続な係合凹部が形成された復路とを有する操作用溝を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記往路又は前記復路は、操作により、前記主動側ラックギヤに対する前記突出部の移動した軌跡が円弧状となるように構成され、前記突出部の移動により前記規制部材が直線的な移動が可能となる規制部材収容部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、主動側ラックギヤに操作用溝を設け、点火時は当該操作用溝の往路に突出部が遊嵌することにより、滑らかな操作対象の駆動をすることができ、長期の使用により主動側ピニオンギヤと主動側ラックギヤとの噛合が解除されることを抑制することができる。また、規制部材の円滑な移動をすることができるので、操作レバーなどの円滑な操作をすることができる。また、操作用溝の復路において、突出部が非連続な係合凹部と係合することにより、操作レバーの操作時にクリック感を得ることができるので、実際に火の強さが目視により確認できない場合であっても、クリック感だけに頼って火力等の調整をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る遠隔操作装置の全体図である。
【図2】本発明の遠隔操作装置に用いられる操作部の分解時の部分断面図である。
【図3】本発明の遠隔操作装置に用いられる規制部材の他の態様の一例を示す概念図である。
【図4】本発明の遠隔操作装置に用いられる主動側ラックギヤの一実施形態における上面図である。
【図5】本発明の遠隔操作装置に用いられる主動側ラックギヤの一実施形態における下面図である。
【図6】本発明の遠隔操作装置に用いられる主動側ラックギヤの他の実施形態における上面図である。
【図7】図4におけるX−X線断面図である。
【図8】図4におけるY−Y線断面図である。
【図9a】本発明の遠隔操作装置の作用を説明するための概略図である。
【図9b】本発明の遠隔操作装置の作用を説明するための概略図である。
【図9c】本発明の遠隔操作装置の作用を説明するための概略図である。
【図9d】本発明の遠隔操作装置の作用を説明するための概略図である。
【図9e】本発明の遠隔操作装置の作用を説明するための概略図である。
【図9f】本発明の遠隔操作装置の作用を説明するための概略図である。
【図10】(a)及び(b)は、従来の遠隔操作装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照し、本発明の遠隔操作装置を詳細に説明する。なお、本発明の遠隔操作装置を、テーブルの中央部に設置されたガス調理装置(例えばロースター)の着火及び消火を含めた火加減をテーブルの側縁部における操作部によって操作するものについて説明するが、この遠隔操作装置の用途としては、特に限定されるものではなく、例えばIHクッキングヒータやホットプレートなどの調理装置や家電製品、車載装置等についても広く適用可能である。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る遠隔操作装置の全体図である。図1に示すように、本発明の遠隔操作装置1は、図示しないテーブル天板の下面における側縁部等に設置された実際に操作が行われる操作部2と、操作部2に入力された操作力を伝達するコントロールケーブル3と、操作部2にコントロールケーブル3を介して接続され、操作部2からの操作力により、図示しないガスコックなどの操作対象が駆動され、遠隔操作される被操作部4とから構成されている。後述するが、遠隔操作装置1は、操作部2の操作レバー25の旋回操作により、当該旋回操作に連動してコントロールケーブル3のインナーケーブル31が押し引き操作され、インナーケーブル31の操作に連動して被操作部4が操作されることにより、着火、火力の調整、消火の操作が行われる。
【0015】
被操作部4は、図1に示すように、図示しないガスコック等の操作対象とその軸心において連結した従動側ピニオンギヤ41と、従動側ピニオンギヤ41と噛合した従動側ラックギヤ42とを備えている。従動側ピニオンギヤ41及び従動側ラックギヤ42は、従動側ケーシング43内に収容されている。従動側ピニオンギヤ41は、従動側ケーシング43内に回転可能に配置され、従動側ラックギヤ42は、従動側ケーシング43内で往復動可能にガイドされている。従動側ラックギヤ42には、インナーケーブル31の一端が接続され、従動側ラックギヤ42に形成された従動側ケーブルエンド固定部44においてインナーケーブル31のケーブルエンドが固定されている。操作部2の操作によってインナーケーブル31が押し引き操作されることにより、従動側ラックギヤ42が図1中左右方向に往復直線運動し、従動側ラックギヤ42に噛合う従動側ピニオンギヤ41が回転して、操作対象であるガスコックを操作する。なお、図示は省略するが、被操作部4には、火花を発生させてガスコックからのガスに着火させる着火スイッチが設けられており、例えば、従動側ピニオンギヤ41の回転に連動して着火スイッチを作動させ、ガスコックの開放時に、バーナーを点火させることができる。
【0016】
被操作部4に操作部2の操作力を伝達するコントロールケーブル3は、操作部2からガスコックが設けられる被操作部4の位置まで、テーブル天板の下面などに配索される。コントロールケーブル3は、操作部2からの操作力を押し引き操作により被操作部4に伝達するインナーケーブル31と、インナーケーブル31が挿通されるアウターケーシング32とから構成されている。インナーケーブル31は、上述したように、一端が被操作部4の従動側ラックギヤ42の従動側ケーブルエンド固定部44に固定され、他端が操作部2の主動側ラックギヤ22の主動側ケーブルエンド固定部24に固定され、操作部2からの操作力を被操作部4に伝達する。
【0017】
操作部2は、図1及び図2に示すように、ガスコック等の操作対象を遠隔操作するために操作される操作レバー25と、操作レバー25に連結され、操作レバー25の旋回操作に伴って回動する主動側ピニオンギヤ21と、主動側ピニオンギヤ21と噛合する主動側ラックギヤ22とを備えている。図1及び図2に示すように、操作レバー25は、ネジS等の公知の固着手段により、主動側ピニオンギヤ21に連結され、操作レバー25の操作が、主動側ピニオンギヤ21及び主動側ラックギヤ22と連動するように構成されている。なお、操作レバー25と主動側ピニオンギヤ21の間の連結には、ネジSや接着剤等による固着だけでなく、操作レバー25と主動側ピニオンギヤ21とを一体に成形することにより連結することが含まれることはいうまでもない。
【0018】
図1及び図2に示すように、主動側ピニオンギヤ21、主動側ラックギヤ22、操作レバー25は主動側ケーシング23に収容される。主動側ピニオンギヤ21は、主動側ケーシング23内に回転可能に配設され、主動側ラックギヤ22は、主動側ケーシング23内で往復動可能にガイドされている。主動側ピニオンギヤ21は、図1では扇状の形状を呈したギヤであり、主動側ラックギヤ22の往復直線運動する範囲で主動側ラックギヤ22と噛合うように、部分的に歯が形成されているが、主動側ピニオンギヤ21の形状は、扇状に限定されるものではなく、その全周に歯が形成された円形のピニオンギヤであってもよく、主動側ラックギヤ22を往復動させることができるものであれば、その形状は特に限定されるものではない。
【0019】
また、主動側ラックギヤ22は、図1に示すように、主動側ラックギヤ22が往復動する摺動路に沿って主動側ケーシング23の底面から突出して形成されたガイド突条26にガイドされている。ガイド突条26を設けることにより、主動側ラックギヤ22をスムーズに摺動させることができる。また、図1に示すように、主動側ケーシング23の摺動路の端部(被操作部4側端部)には、ストッパ突起27が形成され、主動側ラックギヤ22の被操作部4側への過剰な移動を制限し、主動側ラックギヤ22及び従動側ラックギヤ42の移動量を制限している。なお、主動側ケーシング23の底面から突出するガイド突条26に代えて、主動側ラックギヤ22から主動側ケーシング23の底面側に向かって突条を突出させ、主動側ケーシング23の底部に主動側ラックギヤ22から突出する突条をガイドするガイド溝を形成してもよい。また、ストッパ突起27は、主動側ケーシング23の摺動路の被操作部4側だけでなく、被操作部4側端部と対向する側の端部(図1中左側の端部)にも設けてもよい。なお、図2に示すように、主動側ケーシング23の上部は、主動側ケーシング23に収容される部材の脱落を防止するために、閉止用の蓋23cにより閉止され、ネジSや接着剤等、公知の固着手段により蓋23cが主動側ケーシング23に固定され、その後テーブルに固定される。
【0020】
また、図1及び図2に示すように、主動側ピニオンギヤ21が取り付けられる主動側ケーシング23の筒軸23aの周囲に、ねじりバネ28を設け、その一端を主動側ケーシング23の適所に固定し、他端を主動側ピニオンギヤ21に固定することにより、主動側ピニオンギヤ21を、図1における矢印Aで示す、操作レバー25の初期位置方向(消火位置方向)に付勢するように構成することができる。主動側ピニオンギヤ21が、ねじりバネ28により初期位置方向に付勢されることにより、後述するように、ガス等の点火途中で操作レバー25を止めたとしても、ねじりバネ28の付勢力により操作レバー25が自動で初期位置に戻り、ガス漏れ等の心配がない安全装置として機能する。
【0021】
主動側ケーシング23には、後述する主動側ラックギヤ22の操作用溝Gと係わり合う突出部P(図2参照)を有する、主動側ラックギヤ22の直線運動を規制する規制部材29がさらに収容される。主動側ケーシング23には、主動側ラックギヤ22の往復動方向に略垂直な方向に形成された規制部材収容部23bが形成されている。規制部材29は、規制部材29の突出部Pが操作用溝Gに沿った相対移動することで、規制部材収容部23b内で往復直線運動が可能となっている。図1及び図2においては、規制部材29は、規制部材収容部23b内にガイドされて移動するブロック体29aと、ブロック体29aから主動側ラックギヤ22の上面に対して平行に伸び、かつ主動側ラックギヤ22の軸方向に沿って垂直に伸びる、その自由端側に突出部Pが形成された突片としての板バネ29bとから構成されている。
【0022】
図1及び図2においては、規制部材29は、突出部Pが設けられた突片として、板バネ29bを用いているが、操作用溝Gと突出部Pとが係脱可能に、主動側ラックギヤ22の操作用溝Gが形成された面に対して上下動でき、操作用溝Gの経路に沿って突出部Pが移動できるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、図3に示す概念図の如く、ブロック体29aから伸びる突片と主動側ラックギヤ22の上面又は下面に対して垂直方向に伸びる軸部材29dとの間に、コイルバネ29e等の弾性部材を介在させ、軸部材29dを主動側ラックギヤ22の上面又は下面に向かって付勢することによっても板バネ29bと同様の効果を得ることができる。なお、板バネ29bとブロック体29aとは、図2に示すように、ネジSや接着剤等の公知の固着手段により2つの部材を固定してもよいし、ブロック体29a及びブロック体29aから伸びる突片(板バネ29b)を一体に成形しても構わない。
【0023】
突出部Pの形状は、操作用溝Gに対して係脱可能な形状であれば、特に限定されないが、図2に示すように、板バネ29bの自由端近傍から、下方に突出して操作用溝Gから抜け出し易いように半球状に構成され、操作用溝Gの深さよりも、突出部Pの突出高さが小さいことが好ましい。
【0024】
また、後述するように、ブロック体29aから主動側ラックギヤ22に向かって伸び、その先端に、主動側ラックギヤ22の下面に形成されたガイド溝G3にガイドされるガイド突起P2を有するガイドアーム29cを形成することにより、主動側ラックギヤ22を下方からガイドすることもできる。なお、図1及び図2においては、ブロック体29aの上方に板バネ29bが形成されている態様が図示されているが、板バネ29bをブロック体29aの下方に形成し、主動側ラックギヤ22の操作用溝Gを下方に形成する態様(図2に示す主動側ラックギヤ22及び規制部材29を天地逆転させた態様)が本発明に含まれることはいうまでもない。
【0025】
つぎに、本発明に用いられる主動側ラックギヤ22の構成を説明する。図4に示すように、主動側ラックギヤ22の上面には、主動側ラックギヤの往復直線運動に伴った主動側ラックギヤ22と規制部材29との係わりにより、着火操作、火力調整、消火操作等の操作を行なうための操作用溝Gが形成されている。操作用溝Gには、図1及び図2に示す、主動側ラックギヤ22の直線運動を規制する規制部材29から突出する突出部Pが嵌まり込むように構成されている。操作用溝Gは、図4に示すように、規制部材29の突出部Pが遊嵌して移動する往路G1と、突出部Pと係合する非連続な係合凹部C1、C2、C3が形成された二点鎖線で示す復路G2とから構成されている。往路G1と復路G2とは、主動側ラックギヤ22上で、別々の経路として形成され、全体として一つのループ状に形成されている。本実施の形態においては、往路G1は着火操作用の通路であり、復路G2は、火力調整、消火操作用の通路である。
【0026】
図4における円形の破線は、消火時から着火、強火、中火、弱火を経て、再び消火されるまでの突出部Pの軌跡を示したものである。往路G1は、初期位置(消火位置)A1から往路第一位置(点火途中位置)A2、往路第二位置(乗り上げ位置)A3を経由して、往路復路折り返し位置(点火位置)A4までの経路をいい、復路G2は、往路復路折り返し位置(点火位置)A4から、復路初期位置(強火位置)A5、復路第一位置(中火位置)A6、復路第二位置(弱火位置)A7を経由して、初期位置A1までの経路をいうものである。
【0027】
往路G1は、往路G1と復路G2との折り返し位置である往路復路折り返し位置(点火位置)A4の直前まで、規制部材29の突出部Pが遊嵌した状態で移動できる、連続して形成された溝の形状を呈している。往路G1は、主動側ラックギヤ22の軸方向における一方端から他方端に伸びる連続した溝であれば、直線状であっても、曲線状であっても、折れ線状であってもよいが、図4に示すように、主動側ラックギヤ22に対する突出部Pの移動する軌跡が円弧状となるように形成することにより、突出部Pが往路G1の溝に沿ってガイドされながら、円滑に往路G1内を移動することができる。また、往路G1を円弧状に形成することにより、復路G2を直線状に形成することができるので、後述するように突出部Pが係合凹部C1〜C3に係脱するときに、突出部Pが復路G2の経路からそれ難くすることができ、突出部Pを確実に係合凹部C1〜C3に係合させることができる。また、突出部Pが円滑に往路G1内を移動することができるため、主動側ピニオンギヤ21の軸部や主動側ラックギヤ22に無理な力が加わらないため、主動側ピニオンギヤ21の軸部に磨耗が生じ難く、長期の使用により主動側ピニオンギヤ21及び主動側ラックギヤ22の噛合が解除されることを抑制することができる。なお、操作用溝G及びガイド溝G3とは、図4及び図5に示す態様においては、主動側ラックギヤ22の表裏各面の対向位置に設けられているが、各溝を角度や主動側ラックギヤ22の軸方向における位置をずらして形成することも可能である。
【0028】
復路G2は、図4に示すように、突出部Pが、主動側ラックギヤ22の軸方向に沿って非連続に形成された複数の係合凹部C1、C2、C3と係合することにより、主動側ラックギヤ22の軸方向における位置を多段階で調整できるだけでなく、操作レバー25の操作時に、突出部Pが係合凹部C1、C2、C3に係合するときに、クリック感を得ることができるので、実際に火の強さが目視により確認できない場合であっても、クリック感だけに頼って火力等の調整をすることができる。復路G2は、往路G1と別経路に形成され、復路G2の経路の途中において、非連続の複数の係合凹部が設けられていれば、直線状であっても、曲線状であっても、折れ線状に係合凹部が配置された折れ線状の経路であってもよいが、図4に示すように、復路G2、すなわち係合凹部C1、C2、C3を結んだ線が直線状とすることにより、主動側ラックギヤ22の移動方向と、係合凹部C1、C2、C3を結んだ線が同方向となるため、復路G2を突出部Pが移動する際の、主動側ラックギヤ22の動きを円滑にすることができる。なお、「非連続な係合凹部」とは、復路G2における溝自体が連続しているか、非連続かにかかわらず、突出部Pが係合凹部C1、C2、C3に係合する箇所が、復路G2の経路において間隔をおいて配置されていればよいという意味であり、係合凹部同士が、突出部Pが嵌まり込まない程度に細い幅の溝でつながっているものや、係合凹部C1、C2、C3の深さよりも深さの浅い溝が図4中A5の位置からA1の位置にかけて形成され、係合凹部C1、C2、C3において、突出部Pが係合するもの等が含まれることはいうまでもない。
【0029】
また、往路G1及び復路G2における突出部Pの移動をさらに円滑にするために、図5に示すように、往路G1及び復路G2を主動側ラックギヤ22の下面側に投影した経路に沿って連続してループ状に形成されたガイド溝G3を、主動側ラックギヤ22の下面に設けることができる。このように、往路G1及び復路G2に沿って移動する突出部Pの移動の軌跡に対応する経路に連続してガイド溝G3を設け、当該ガイド溝G3に遊嵌されるガイド突起P2が、ガイド溝G3に沿って図5中のB1からB2、B3、B4、B5、B6、B7を経由してループ状に移動することにより、ガイド突起P2に連動する突出部Pが間接的にガイド溝G3に案内され、主動側ラックギヤ22の上面側を移動する突出部Pが操作用溝Gに沿って確実に案内される。したがって、係合凹部C1、C2、C3が、復路G2において非連続に形成されていても、突出部Pを確実に係合凹部C1、C2、C3に係合させることができる。なお、図5におけるB1〜B7はそれぞれ、図4におけるA1〜A7の位置に対応するものである。
【0030】
このようにガイド溝G3を形成し、ガイド突起P2をガイド溝G3に沿って移動させることにより、操作用溝Gの形状を様々な形状とすることが可能であり、例えば図6に示すように、往路G1を直線状とし、復路G2を円弧状(二点鎖線で示す)とすることも可能である。
【0031】
また、図4に示す往路G1の連続した溝の終端位置である往路第二位置A3では、往路復路折り返し位置A4にある係合凹部C1に向かって往路G1の溝の底面が高くなるように傾斜した傾斜部22a(図7参照)が形成されている。また、図7に示すように、傾斜部22aと係合凹部C1との間には、板バネ29bが上方に向かって撓み、突出部Pが往路G1に形成された溝から乗り上げる乗り上げ部R1が形成されている。板バネ29bの突出部Pが往路G1の溝に遊嵌された状態から、主動側ラックギヤ22の直線運動に伴って、乗り上げ部R1において乗り上がり、さらに主動側ラックギヤ22が移動すると、係合凹部C1に嵌まり込むことにより、着火操作時にクリック感を得ることができ、着火操作が行なわれたことを操作時に確認することができる。同様に、図8に示すように、係合凹部C1と係合凹部C2との間、係合凹部C2と係合凹部C3との間、係合凹部C3と往路G1の溝との間に乗り上げ部R2、R3、R4をそれぞれ設けることにより、強火から中火への操作、中火から弱火への操作、これらの逆の操作、及び弱火から消火への操作時等、操作レバー25の操作時にクリック感を得ることができる。また、図8に示すように、それぞれの係合凹部C1、C2、C3と乗り上げ部R2、R3、R4との境界部において、傾斜部22bを形成することにより、突出部Pを容易に乗り上げ部R2、R3、R4に乗り上げさせることができ、操作レバー25の操作を軽くすることができる。なお、傾斜部22bは、突出部Pの復路G2からの脱落を防止するために、主動側ラックギヤ22の往復動の方向に沿ってのみ、設けることが好ましい。
【0032】
次に、本発明の遠隔操作装置1の作用について、図9(a)〜(f)を用いて説明する。
【0033】
まず、図9(a)は、操作レバー25が消火位置に位置しており、主動側ラックギヤ22は、操作レバー25及び主動側ピニオンギヤ21により、図9中右側に移動する。したがって、主動側ラックギヤ22に固定されたインナーケーブル31は、被操作部4側に押し操作されきった状態であり、被操作部4側の従動側ラックギヤ42を介して従動側ピニオンギヤ41が回転するため、ガスコックが閉じられた状態である。このとき、図9(a)に示されるように、主動側ラックギヤ22の往路G1に遊嵌される規制部材29の突出部Pは、往路G1の初期位置A1に位置している(図4参照)。
【0034】
次に、図9(b)に示すように、点火操作をするために、操作レバー25を点火方向となる反時計回りに旋回させると、操作レバー25に連結された主動側ピニオンギヤ21も反時計回りに回転する。主動側ピニオンギヤ21の回転により、主動側ピニオンギヤ21と噛合う主動側ラックギヤ22が図9(b)中左方向に移動し、インナーケーブル31が引き操作される。インナーケーブル31が引き操作されることにより、被操作部4において、従動側ラックギヤ42、従動側ピニオンギヤ41が駆動され、従動側ピニオンギヤ41に連結されたガスコックがわずかに開放された状態である。このとき、図9(b)に示されるように、主動側ラックギヤ22の往路G1を規制部材29の突出部Pは遊嵌してガイドされ、規制部材29は、規制部材収容部23b内を図9(b)中上方に直線移動することにより、主動側ラックギヤ22の移動に抵抗を与えず、ガスコック等の操作対象を滑らかに駆動することができる。このとき、突出部Pは、図4に示す往路中間位置(点火途中位置)A2に位置している。
【0035】
なお、図9(b)に示す操作レバー25の位置で操作を中断すると、操作レバー25を初期位置に戻す機構がない場合、ガスコックが開いた状態が維持されるため、ガスが漏れたままの状態が維持されてしまう。操作途中で操作をやめたり、誤って操作レバー25にぶつかったりして操作レバー25が図9(b)のような状態になってしまった場合に、このガスが漏れた状態を防止するために、前述したように、主動側ピニオンギヤ21の軸回りにねじりバネ28を設けることにより、ガス漏れを防ぐことができる。すなわち、主動側ピニオンギヤ21の軸回りに、ねじりバネ28を設け、主動側ピニオンギヤ21を、操作レバー25が初期位置A1方向に旋回されるように付勢することにより、操作レバー25が初期位置A1方向に移動しようとする。突出部Pは往路G1で遊嵌されているので、主動側ラックギヤ22は図9(b)中、右方向、左方向のどちらの方向にも自由に移動できるようになっている。したがって、ねじりバネ28の付勢力により、主動側ピニオンギヤ21が時計回りに回転し、操作レバー25は初期位置に戻る。主動側ピニオンギヤ21が時計回りに回転することにより、主動側ラックギヤ22は、図9(b)の状態から図9(a)の状態まで戻り、従動側ラックギヤ42、従動側ピニオンギヤ41が、ガスコックが閉じる方向に駆動され、ガスコックが自動的に閉じられる安全装置として機能する。
【0036】
次に、図9(b)の状態からさらに、操作レバー25を旋回させると、図9(c)に示されるように、操作レバー25が点火位置まで移動し、操作レバー25の旋回に伴い、主動側ピニオンギヤ21及び主動側ラックギヤ22が連動し、インナーケーブル31をさらに引き操作する。当該インナーケーブル31の引き操作により、被操作部4側のガスコックがさらに開き、図示しない着火スイッチによりバーナーが着火される。このとき、図4においては、A2〜A4まで突出部Pは移動し、図4におけるA2〜A3までは滑らかに操作対象を駆動することができるとともに、図4におけるA3〜A4に移動するときに、突出部Pが係合凹部C1に嵌まり込み、クリック感を得ることができる。
【0037】
図9(c)において、バーナーが点火されると、図9(d)に示すように、手動又はねじりバネ28の付勢力により、操作レバー25はわずかに時計回りに旋回し、強火位置で保持される。すなわち、図4で示される係合凹部C1内において、A4〜A5に移動し、ねじりバネ28で付勢される場合であっても、係合凹部C1の端縁において、突出部Pが係合され、A5の状態で保持され、強火の状態を維持する。また、操作対象のガスコックが、安定な強火状態とするために点火後に、点火の際のコック開閉軸の回動方向と逆方向の若干の戻りが必要な場合には、係合凹部C1が突出部Pと遊嵌可能なサイズであり、被操作部にラック&ピニオン機構を用いていることによるギヤのガタにより、ガスコックが若干の戻りをすることができるので、ガスを安定した強火の状態に維持することができる。
【0038】
図9(d)の強火の状態から、火力を弱める場合は、操作レバー25を時計回りに旋回させ、主動側ピニオンギヤ21を時計回りに回転させる。すると、主動側ラックギヤ22が図9(d)中、右方向に移動して、被操作部4のガスコックの開放度を小さくし、火力を弱め、中火状態とすることができる(図9(e)参照)。このとき、主動側ラックギヤ22が右側に直線運動しようとするとき、図4に示すA5の位置において、突出部Pには主動側ラックギヤ22の係合凹部C1の端縁から、突出部Pを図9(d)中、紙面手前方向に移動させる力が加わり、突出部Pが図9(d)中、紙面手前方向に持ち上がり、乗り上げ部R2に乗り上がるとともに、主動側ラックギヤ22が図9(d)中、右方向に移動し、突出部Pは図4におけるA6まで移動し、次の係合凹部C2に係合して、操作時のクリック感を得ることができる(図9(e)参照)。
【0039】
同様に、中火から弱火にする場合は、図9(e)の状態から、さらに操作レバー25を時計回りに旋回させることにより、突出部Pが図4におけるA6から乗り上げ部R3を経由してA7まで移動し、弱火状態とすることができ、同様に操作時のクリック感を得ることができる(図9(f)参照)。
【0040】
また、弱火から消火したいときには、同様に図9(f)の状態から、さらに操作レバー25を時計回りに旋回させることにより、突出部Pが図4におけるA7から乗り上げ部R4を経由してA1まで移動し、消火することができる(図9(a)参照)。
【0041】
上記のように、本発明によると、点火直前まで、すなわち、突出部Pが往路G1を移動する間は、クリック感を得ることなく円滑に突出部Pが往路G1を移動することができ、操作対象であるガスコック等を滑らかに操作することができ、長期の使用により主動側ピニオンギヤ21と主動側ラックギヤ22との噛合が解除されることを抑制することができる。一方、復路G2においては、非連続の係合凹部C1、C2、C3に突出部Pが係合することによるクリック感を得ることができ、直接火の状態を目視することなく、火力の調整等を容易にすることが可能である。
【0042】
なお、図9により示した例は、消火時から点火し、強火から中火、中火から弱火、弱火から消火という例をあげて説明したが、中火から強火、弱火から中火等の図9とは逆の操作時においても同様に、クリック感を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 遠隔操作装置
2 操作部
21 主動側ピニオンギヤ
22 主動側ラックギヤ
22a、22b 傾斜部
23 主動側ケーシング
23a 筒軸
23b 規制部材収容部
23c 蓋
24 主動側ケーブルエンド固定部
25 操作レバー
26 ガイド突条
27 ストッパ突起
28 ねじりバネ
29 規制部材
29a ブロック体
29b 板バネ
29c ガイドアーム
29d 軸部材
29e コイルバネ
3 コントロールケーブル
31 インナーケーブル
32 アウターケーシング
4 被操作部
41 従動側ピニオンギヤ
42 従動側ラックギヤ
43 従動側ケーシング
44 従動側ケーブルエンド固定部
A1 初期位置(消火位置)
A2 往路第一位置(点火途中位置)
A3 往路第二位置(乗り上げ位置)
A4 往路復路折り返し位置(点火位置)
A5 復路初期位置(強火位置)
A6 復路第一位置(中火位置)
A7 復路第二位置(弱火位置)
C1、C2、C3 係合凹部
G 操作用溝
G1 往路
G2 復路
G3 ガイド溝
P 突出部
P2 ガイド突起
R1、R2、R3、R4 乗り上げ部
S ネジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばテーブルに備え付けられたガスコンロの操作装置など、コントロールケーブルを介して操作レバーの操作による力を滑らかに伝送して、操作レバーから離れた位置にあるガスコックなどの操作対象を駆動する遠隔操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔操作装置は、操作部の操作に基づく操作力を遠隔に位置する被操作部に対して伝達することができ、焼肉店のガス器具付テーブルの操作装置等として広く用いられ、火加減の調整を容易にするために、点火位置から閉止位置までの間の火力を調整できるようにすることが望まれている。また、テーブルについては、テーブル台の下のスペースや配置の自由度のために、操作レバーをスライドさせて火力を調整することが望まれている。
【0003】
このような遠隔操作装置としては、例えば、特許文献1では、図10(a)及び(b)に示すコントロールボックス100内で、主動ラック101と噛合し、操作レバー102が形成された扇状ギヤ103が、図10(a)中上下方向に偏心移動自在とされて、クリックプレート104の係合凹部105と該操作レバー102の凸部106とが係合するガスコック(図示せず)の遠隔操作装置が提案されている。
【0004】
この遠隔操作装置は、ガスコックを連結するコック開閉軸にコック操作ボックス(図示せず)を取付け、該コック操作ボックスは互いに噛合するピニオン及び従動ラック(ともに図示せず)を収納し、従動ラックの一端に操作ワイヤーのインナーワイヤー107の一端を連結し、一方前記コック操作ボックスより離隔して設置したコントロールボックス100にギヤ機構部108を収納し、前記インナーワイヤー107の他端をギヤ機構部108の主動ラック101の一端に連結すると共に、該主動ラック101に扇状ギヤ103を噛合したロースターにおけるガスコックの遠隔操作装置において、前記扇状ギヤ103はその遠心方向に操作レバー102を延出形成し、図10(a)の状態から図10(b)の状態に前後方(図10(a)及び(b)中の上下方向)にスライド自在となしたスライドベース109に立設した筒軸110に回転自在に装着して、かつ操作レバー102の長さ方向へ偏心軸111を、筒軸110内の前後方に長い軸孔112内で偏心移動自在(図10(a)及び(b)参照)となし、また、弓状のクリックプレート104の一端を枢着して揺動自在となし、前記クリックプレート104の係合凹部105に前記操作レバー102の下面に設けた凸部106を係脱自在となしたことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2608514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記遠隔操作装置では、操作側のピニオンギヤとして用いられる扇状ギヤ103が火力調節のためのクリックプレート104との係合のために図10(a)の状態から図10(b)の状態まで下方に偏心移動するので、火力調節のためのラックギア(主動ラック101)の移動が前記偏心移動のために不規則となり、所望の火力への調節が難しい。また、このような偏心移動は、偏心軸111と前記扇状ギヤ103との磨耗を長期の使用により生じやすく、前記磨耗が生じた場合には、前記扇状ギヤ103と前記主動ラック101との噛合が解除されてしまう恐れがある。
【0007】
さらに、点火や火力調節時に、毎回偏心軸111が筒軸110内の前後方に長い軸孔112を移動して、筒軸110の内壁に偏心軸111が衝突するため、偏心軸111が破損しやすいという問題がある。
【0008】
そこで、本発明はかかる問題点に鑑みて、滑らかな操作対象の駆動をすることができ、長期の使用により主動側ピニオンギヤと主動側ラックギヤとの噛合が解除されることが抑制され、耐久性の高い遠隔操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の遠隔操作装置は、操作対象と連結した従動側ピニオンギヤと、前記従動側ピニオンギヤと噛合した従動側ラックギヤと、前記従動側ラックギヤに一端が接続されたインナーケーブルと、前記操作対象を操作するために操作される操作レバーと、前記操作レバーと連結した主動側ピニオンギヤと、前記主動側ピニオンギヤと噛合する主動側ラックギヤとを備え、前記主動側ラックギヤには前記インナーケーブルの他端が接続され、前記操作レバーの旋回操作による前記主動側ラックギヤの直線運動が前記インナーケーブルを介して、前記従動側ラックギヤに伝達される遠隔操作装置であって、突出部を有し、前記直線運動を規制する規制部材を有し、前記主動側ラックギヤには、前記主動側ラックギヤの往復直線運動に伴って、前記突出部と遊嵌して移動する往路と前記突出部と係合する非連続な係合凹部が形成された復路とを有する操作用溝を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記往路又は前記復路は、操作により、前記主動側ラックギヤに対する前記突出部の移動した軌跡が円弧状となるように構成され、前記突出部の移動により前記規制部材が直線的な移動が可能となる規制部材収容部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、主動側ラックギヤに操作用溝を設け、点火時は当該操作用溝の往路に突出部が遊嵌することにより、滑らかな操作対象の駆動をすることができ、長期の使用により主動側ピニオンギヤと主動側ラックギヤとの噛合が解除されることを抑制することができる。また、規制部材の円滑な移動をすることができるので、操作レバーなどの円滑な操作をすることができる。また、操作用溝の復路において、突出部が非連続な係合凹部と係合することにより、操作レバーの操作時にクリック感を得ることができるので、実際に火の強さが目視により確認できない場合であっても、クリック感だけに頼って火力等の調整をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る遠隔操作装置の全体図である。
【図2】本発明の遠隔操作装置に用いられる操作部の分解時の部分断面図である。
【図3】本発明の遠隔操作装置に用いられる規制部材の他の態様の一例を示す概念図である。
【図4】本発明の遠隔操作装置に用いられる主動側ラックギヤの一実施形態における上面図である。
【図5】本発明の遠隔操作装置に用いられる主動側ラックギヤの一実施形態における下面図である。
【図6】本発明の遠隔操作装置に用いられる主動側ラックギヤの他の実施形態における上面図である。
【図7】図4におけるX−X線断面図である。
【図8】図4におけるY−Y線断面図である。
【図9a】本発明の遠隔操作装置の作用を説明するための概略図である。
【図9b】本発明の遠隔操作装置の作用を説明するための概略図である。
【図9c】本発明の遠隔操作装置の作用を説明するための概略図である。
【図9d】本発明の遠隔操作装置の作用を説明するための概略図である。
【図9e】本発明の遠隔操作装置の作用を説明するための概略図である。
【図9f】本発明の遠隔操作装置の作用を説明するための概略図である。
【図10】(a)及び(b)は、従来の遠隔操作装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照し、本発明の遠隔操作装置を詳細に説明する。なお、本発明の遠隔操作装置を、テーブルの中央部に設置されたガス調理装置(例えばロースター)の着火及び消火を含めた火加減をテーブルの側縁部における操作部によって操作するものについて説明するが、この遠隔操作装置の用途としては、特に限定されるものではなく、例えばIHクッキングヒータやホットプレートなどの調理装置や家電製品、車載装置等についても広く適用可能である。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る遠隔操作装置の全体図である。図1に示すように、本発明の遠隔操作装置1は、図示しないテーブル天板の下面における側縁部等に設置された実際に操作が行われる操作部2と、操作部2に入力された操作力を伝達するコントロールケーブル3と、操作部2にコントロールケーブル3を介して接続され、操作部2からの操作力により、図示しないガスコックなどの操作対象が駆動され、遠隔操作される被操作部4とから構成されている。後述するが、遠隔操作装置1は、操作部2の操作レバー25の旋回操作により、当該旋回操作に連動してコントロールケーブル3のインナーケーブル31が押し引き操作され、インナーケーブル31の操作に連動して被操作部4が操作されることにより、着火、火力の調整、消火の操作が行われる。
【0015】
被操作部4は、図1に示すように、図示しないガスコック等の操作対象とその軸心において連結した従動側ピニオンギヤ41と、従動側ピニオンギヤ41と噛合した従動側ラックギヤ42とを備えている。従動側ピニオンギヤ41及び従動側ラックギヤ42は、従動側ケーシング43内に収容されている。従動側ピニオンギヤ41は、従動側ケーシング43内に回転可能に配置され、従動側ラックギヤ42は、従動側ケーシング43内で往復動可能にガイドされている。従動側ラックギヤ42には、インナーケーブル31の一端が接続され、従動側ラックギヤ42に形成された従動側ケーブルエンド固定部44においてインナーケーブル31のケーブルエンドが固定されている。操作部2の操作によってインナーケーブル31が押し引き操作されることにより、従動側ラックギヤ42が図1中左右方向に往復直線運動し、従動側ラックギヤ42に噛合う従動側ピニオンギヤ41が回転して、操作対象であるガスコックを操作する。なお、図示は省略するが、被操作部4には、火花を発生させてガスコックからのガスに着火させる着火スイッチが設けられており、例えば、従動側ピニオンギヤ41の回転に連動して着火スイッチを作動させ、ガスコックの開放時に、バーナーを点火させることができる。
【0016】
被操作部4に操作部2の操作力を伝達するコントロールケーブル3は、操作部2からガスコックが設けられる被操作部4の位置まで、テーブル天板の下面などに配索される。コントロールケーブル3は、操作部2からの操作力を押し引き操作により被操作部4に伝達するインナーケーブル31と、インナーケーブル31が挿通されるアウターケーシング32とから構成されている。インナーケーブル31は、上述したように、一端が被操作部4の従動側ラックギヤ42の従動側ケーブルエンド固定部44に固定され、他端が操作部2の主動側ラックギヤ22の主動側ケーブルエンド固定部24に固定され、操作部2からの操作力を被操作部4に伝達する。
【0017】
操作部2は、図1及び図2に示すように、ガスコック等の操作対象を遠隔操作するために操作される操作レバー25と、操作レバー25に連結され、操作レバー25の旋回操作に伴って回動する主動側ピニオンギヤ21と、主動側ピニオンギヤ21と噛合する主動側ラックギヤ22とを備えている。図1及び図2に示すように、操作レバー25は、ネジS等の公知の固着手段により、主動側ピニオンギヤ21に連結され、操作レバー25の操作が、主動側ピニオンギヤ21及び主動側ラックギヤ22と連動するように構成されている。なお、操作レバー25と主動側ピニオンギヤ21の間の連結には、ネジSや接着剤等による固着だけでなく、操作レバー25と主動側ピニオンギヤ21とを一体に成形することにより連結することが含まれることはいうまでもない。
【0018】
図1及び図2に示すように、主動側ピニオンギヤ21、主動側ラックギヤ22、操作レバー25は主動側ケーシング23に収容される。主動側ピニオンギヤ21は、主動側ケーシング23内に回転可能に配設され、主動側ラックギヤ22は、主動側ケーシング23内で往復動可能にガイドされている。主動側ピニオンギヤ21は、図1では扇状の形状を呈したギヤであり、主動側ラックギヤ22の往復直線運動する範囲で主動側ラックギヤ22と噛合うように、部分的に歯が形成されているが、主動側ピニオンギヤ21の形状は、扇状に限定されるものではなく、その全周に歯が形成された円形のピニオンギヤであってもよく、主動側ラックギヤ22を往復動させることができるものであれば、その形状は特に限定されるものではない。
【0019】
また、主動側ラックギヤ22は、図1に示すように、主動側ラックギヤ22が往復動する摺動路に沿って主動側ケーシング23の底面から突出して形成されたガイド突条26にガイドされている。ガイド突条26を設けることにより、主動側ラックギヤ22をスムーズに摺動させることができる。また、図1に示すように、主動側ケーシング23の摺動路の端部(被操作部4側端部)には、ストッパ突起27が形成され、主動側ラックギヤ22の被操作部4側への過剰な移動を制限し、主動側ラックギヤ22及び従動側ラックギヤ42の移動量を制限している。なお、主動側ケーシング23の底面から突出するガイド突条26に代えて、主動側ラックギヤ22から主動側ケーシング23の底面側に向かって突条を突出させ、主動側ケーシング23の底部に主動側ラックギヤ22から突出する突条をガイドするガイド溝を形成してもよい。また、ストッパ突起27は、主動側ケーシング23の摺動路の被操作部4側だけでなく、被操作部4側端部と対向する側の端部(図1中左側の端部)にも設けてもよい。なお、図2に示すように、主動側ケーシング23の上部は、主動側ケーシング23に収容される部材の脱落を防止するために、閉止用の蓋23cにより閉止され、ネジSや接着剤等、公知の固着手段により蓋23cが主動側ケーシング23に固定され、その後テーブルに固定される。
【0020】
また、図1及び図2に示すように、主動側ピニオンギヤ21が取り付けられる主動側ケーシング23の筒軸23aの周囲に、ねじりバネ28を設け、その一端を主動側ケーシング23の適所に固定し、他端を主動側ピニオンギヤ21に固定することにより、主動側ピニオンギヤ21を、図1における矢印Aで示す、操作レバー25の初期位置方向(消火位置方向)に付勢するように構成することができる。主動側ピニオンギヤ21が、ねじりバネ28により初期位置方向に付勢されることにより、後述するように、ガス等の点火途中で操作レバー25を止めたとしても、ねじりバネ28の付勢力により操作レバー25が自動で初期位置に戻り、ガス漏れ等の心配がない安全装置として機能する。
【0021】
主動側ケーシング23には、後述する主動側ラックギヤ22の操作用溝Gと係わり合う突出部P(図2参照)を有する、主動側ラックギヤ22の直線運動を規制する規制部材29がさらに収容される。主動側ケーシング23には、主動側ラックギヤ22の往復動方向に略垂直な方向に形成された規制部材収容部23bが形成されている。規制部材29は、規制部材29の突出部Pが操作用溝Gに沿った相対移動することで、規制部材収容部23b内で往復直線運動が可能となっている。図1及び図2においては、規制部材29は、規制部材収容部23b内にガイドされて移動するブロック体29aと、ブロック体29aから主動側ラックギヤ22の上面に対して平行に伸び、かつ主動側ラックギヤ22の軸方向に沿って垂直に伸びる、その自由端側に突出部Pが形成された突片としての板バネ29bとから構成されている。
【0022】
図1及び図2においては、規制部材29は、突出部Pが設けられた突片として、板バネ29bを用いているが、操作用溝Gと突出部Pとが係脱可能に、主動側ラックギヤ22の操作用溝Gが形成された面に対して上下動でき、操作用溝Gの経路に沿って突出部Pが移動できるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、図3に示す概念図の如く、ブロック体29aから伸びる突片と主動側ラックギヤ22の上面又は下面に対して垂直方向に伸びる軸部材29dとの間に、コイルバネ29e等の弾性部材を介在させ、軸部材29dを主動側ラックギヤ22の上面又は下面に向かって付勢することによっても板バネ29bと同様の効果を得ることができる。なお、板バネ29bとブロック体29aとは、図2に示すように、ネジSや接着剤等の公知の固着手段により2つの部材を固定してもよいし、ブロック体29a及びブロック体29aから伸びる突片(板バネ29b)を一体に成形しても構わない。
【0023】
突出部Pの形状は、操作用溝Gに対して係脱可能な形状であれば、特に限定されないが、図2に示すように、板バネ29bの自由端近傍から、下方に突出して操作用溝Gから抜け出し易いように半球状に構成され、操作用溝Gの深さよりも、突出部Pの突出高さが小さいことが好ましい。
【0024】
また、後述するように、ブロック体29aから主動側ラックギヤ22に向かって伸び、その先端に、主動側ラックギヤ22の下面に形成されたガイド溝G3にガイドされるガイド突起P2を有するガイドアーム29cを形成することにより、主動側ラックギヤ22を下方からガイドすることもできる。なお、図1及び図2においては、ブロック体29aの上方に板バネ29bが形成されている態様が図示されているが、板バネ29bをブロック体29aの下方に形成し、主動側ラックギヤ22の操作用溝Gを下方に形成する態様(図2に示す主動側ラックギヤ22及び規制部材29を天地逆転させた態様)が本発明に含まれることはいうまでもない。
【0025】
つぎに、本発明に用いられる主動側ラックギヤ22の構成を説明する。図4に示すように、主動側ラックギヤ22の上面には、主動側ラックギヤの往復直線運動に伴った主動側ラックギヤ22と規制部材29との係わりにより、着火操作、火力調整、消火操作等の操作を行なうための操作用溝Gが形成されている。操作用溝Gには、図1及び図2に示す、主動側ラックギヤ22の直線運動を規制する規制部材29から突出する突出部Pが嵌まり込むように構成されている。操作用溝Gは、図4に示すように、規制部材29の突出部Pが遊嵌して移動する往路G1と、突出部Pと係合する非連続な係合凹部C1、C2、C3が形成された二点鎖線で示す復路G2とから構成されている。往路G1と復路G2とは、主動側ラックギヤ22上で、別々の経路として形成され、全体として一つのループ状に形成されている。本実施の形態においては、往路G1は着火操作用の通路であり、復路G2は、火力調整、消火操作用の通路である。
【0026】
図4における円形の破線は、消火時から着火、強火、中火、弱火を経て、再び消火されるまでの突出部Pの軌跡を示したものである。往路G1は、初期位置(消火位置)A1から往路第一位置(点火途中位置)A2、往路第二位置(乗り上げ位置)A3を経由して、往路復路折り返し位置(点火位置)A4までの経路をいい、復路G2は、往路復路折り返し位置(点火位置)A4から、復路初期位置(強火位置)A5、復路第一位置(中火位置)A6、復路第二位置(弱火位置)A7を経由して、初期位置A1までの経路をいうものである。
【0027】
往路G1は、往路G1と復路G2との折り返し位置である往路復路折り返し位置(点火位置)A4の直前まで、規制部材29の突出部Pが遊嵌した状態で移動できる、連続して形成された溝の形状を呈している。往路G1は、主動側ラックギヤ22の軸方向における一方端から他方端に伸びる連続した溝であれば、直線状であっても、曲線状であっても、折れ線状であってもよいが、図4に示すように、主動側ラックギヤ22に対する突出部Pの移動する軌跡が円弧状となるように形成することにより、突出部Pが往路G1の溝に沿ってガイドされながら、円滑に往路G1内を移動することができる。また、往路G1を円弧状に形成することにより、復路G2を直線状に形成することができるので、後述するように突出部Pが係合凹部C1〜C3に係脱するときに、突出部Pが復路G2の経路からそれ難くすることができ、突出部Pを確実に係合凹部C1〜C3に係合させることができる。また、突出部Pが円滑に往路G1内を移動することができるため、主動側ピニオンギヤ21の軸部や主動側ラックギヤ22に無理な力が加わらないため、主動側ピニオンギヤ21の軸部に磨耗が生じ難く、長期の使用により主動側ピニオンギヤ21及び主動側ラックギヤ22の噛合が解除されることを抑制することができる。なお、操作用溝G及びガイド溝G3とは、図4及び図5に示す態様においては、主動側ラックギヤ22の表裏各面の対向位置に設けられているが、各溝を角度や主動側ラックギヤ22の軸方向における位置をずらして形成することも可能である。
【0028】
復路G2は、図4に示すように、突出部Pが、主動側ラックギヤ22の軸方向に沿って非連続に形成された複数の係合凹部C1、C2、C3と係合することにより、主動側ラックギヤ22の軸方向における位置を多段階で調整できるだけでなく、操作レバー25の操作時に、突出部Pが係合凹部C1、C2、C3に係合するときに、クリック感を得ることができるので、実際に火の強さが目視により確認できない場合であっても、クリック感だけに頼って火力等の調整をすることができる。復路G2は、往路G1と別経路に形成され、復路G2の経路の途中において、非連続の複数の係合凹部が設けられていれば、直線状であっても、曲線状であっても、折れ線状に係合凹部が配置された折れ線状の経路であってもよいが、図4に示すように、復路G2、すなわち係合凹部C1、C2、C3を結んだ線が直線状とすることにより、主動側ラックギヤ22の移動方向と、係合凹部C1、C2、C3を結んだ線が同方向となるため、復路G2を突出部Pが移動する際の、主動側ラックギヤ22の動きを円滑にすることができる。なお、「非連続な係合凹部」とは、復路G2における溝自体が連続しているか、非連続かにかかわらず、突出部Pが係合凹部C1、C2、C3に係合する箇所が、復路G2の経路において間隔をおいて配置されていればよいという意味であり、係合凹部同士が、突出部Pが嵌まり込まない程度に細い幅の溝でつながっているものや、係合凹部C1、C2、C3の深さよりも深さの浅い溝が図4中A5の位置からA1の位置にかけて形成され、係合凹部C1、C2、C3において、突出部Pが係合するもの等が含まれることはいうまでもない。
【0029】
また、往路G1及び復路G2における突出部Pの移動をさらに円滑にするために、図5に示すように、往路G1及び復路G2を主動側ラックギヤ22の下面側に投影した経路に沿って連続してループ状に形成されたガイド溝G3を、主動側ラックギヤ22の下面に設けることができる。このように、往路G1及び復路G2に沿って移動する突出部Pの移動の軌跡に対応する経路に連続してガイド溝G3を設け、当該ガイド溝G3に遊嵌されるガイド突起P2が、ガイド溝G3に沿って図5中のB1からB2、B3、B4、B5、B6、B7を経由してループ状に移動することにより、ガイド突起P2に連動する突出部Pが間接的にガイド溝G3に案内され、主動側ラックギヤ22の上面側を移動する突出部Pが操作用溝Gに沿って確実に案内される。したがって、係合凹部C1、C2、C3が、復路G2において非連続に形成されていても、突出部Pを確実に係合凹部C1、C2、C3に係合させることができる。なお、図5におけるB1〜B7はそれぞれ、図4におけるA1〜A7の位置に対応するものである。
【0030】
このようにガイド溝G3を形成し、ガイド突起P2をガイド溝G3に沿って移動させることにより、操作用溝Gの形状を様々な形状とすることが可能であり、例えば図6に示すように、往路G1を直線状とし、復路G2を円弧状(二点鎖線で示す)とすることも可能である。
【0031】
また、図4に示す往路G1の連続した溝の終端位置である往路第二位置A3では、往路復路折り返し位置A4にある係合凹部C1に向かって往路G1の溝の底面が高くなるように傾斜した傾斜部22a(図7参照)が形成されている。また、図7に示すように、傾斜部22aと係合凹部C1との間には、板バネ29bが上方に向かって撓み、突出部Pが往路G1に形成された溝から乗り上げる乗り上げ部R1が形成されている。板バネ29bの突出部Pが往路G1の溝に遊嵌された状態から、主動側ラックギヤ22の直線運動に伴って、乗り上げ部R1において乗り上がり、さらに主動側ラックギヤ22が移動すると、係合凹部C1に嵌まり込むことにより、着火操作時にクリック感を得ることができ、着火操作が行なわれたことを操作時に確認することができる。同様に、図8に示すように、係合凹部C1と係合凹部C2との間、係合凹部C2と係合凹部C3との間、係合凹部C3と往路G1の溝との間に乗り上げ部R2、R3、R4をそれぞれ設けることにより、強火から中火への操作、中火から弱火への操作、これらの逆の操作、及び弱火から消火への操作時等、操作レバー25の操作時にクリック感を得ることができる。また、図8に示すように、それぞれの係合凹部C1、C2、C3と乗り上げ部R2、R3、R4との境界部において、傾斜部22bを形成することにより、突出部Pを容易に乗り上げ部R2、R3、R4に乗り上げさせることができ、操作レバー25の操作を軽くすることができる。なお、傾斜部22bは、突出部Pの復路G2からの脱落を防止するために、主動側ラックギヤ22の往復動の方向に沿ってのみ、設けることが好ましい。
【0032】
次に、本発明の遠隔操作装置1の作用について、図9(a)〜(f)を用いて説明する。
【0033】
まず、図9(a)は、操作レバー25が消火位置に位置しており、主動側ラックギヤ22は、操作レバー25及び主動側ピニオンギヤ21により、図9中右側に移動する。したがって、主動側ラックギヤ22に固定されたインナーケーブル31は、被操作部4側に押し操作されきった状態であり、被操作部4側の従動側ラックギヤ42を介して従動側ピニオンギヤ41が回転するため、ガスコックが閉じられた状態である。このとき、図9(a)に示されるように、主動側ラックギヤ22の往路G1に遊嵌される規制部材29の突出部Pは、往路G1の初期位置A1に位置している(図4参照)。
【0034】
次に、図9(b)に示すように、点火操作をするために、操作レバー25を点火方向となる反時計回りに旋回させると、操作レバー25に連結された主動側ピニオンギヤ21も反時計回りに回転する。主動側ピニオンギヤ21の回転により、主動側ピニオンギヤ21と噛合う主動側ラックギヤ22が図9(b)中左方向に移動し、インナーケーブル31が引き操作される。インナーケーブル31が引き操作されることにより、被操作部4において、従動側ラックギヤ42、従動側ピニオンギヤ41が駆動され、従動側ピニオンギヤ41に連結されたガスコックがわずかに開放された状態である。このとき、図9(b)に示されるように、主動側ラックギヤ22の往路G1を規制部材29の突出部Pは遊嵌してガイドされ、規制部材29は、規制部材収容部23b内を図9(b)中上方に直線移動することにより、主動側ラックギヤ22の移動に抵抗を与えず、ガスコック等の操作対象を滑らかに駆動することができる。このとき、突出部Pは、図4に示す往路中間位置(点火途中位置)A2に位置している。
【0035】
なお、図9(b)に示す操作レバー25の位置で操作を中断すると、操作レバー25を初期位置に戻す機構がない場合、ガスコックが開いた状態が維持されるため、ガスが漏れたままの状態が維持されてしまう。操作途中で操作をやめたり、誤って操作レバー25にぶつかったりして操作レバー25が図9(b)のような状態になってしまった場合に、このガスが漏れた状態を防止するために、前述したように、主動側ピニオンギヤ21の軸回りにねじりバネ28を設けることにより、ガス漏れを防ぐことができる。すなわち、主動側ピニオンギヤ21の軸回りに、ねじりバネ28を設け、主動側ピニオンギヤ21を、操作レバー25が初期位置A1方向に旋回されるように付勢することにより、操作レバー25が初期位置A1方向に移動しようとする。突出部Pは往路G1で遊嵌されているので、主動側ラックギヤ22は図9(b)中、右方向、左方向のどちらの方向にも自由に移動できるようになっている。したがって、ねじりバネ28の付勢力により、主動側ピニオンギヤ21が時計回りに回転し、操作レバー25は初期位置に戻る。主動側ピニオンギヤ21が時計回りに回転することにより、主動側ラックギヤ22は、図9(b)の状態から図9(a)の状態まで戻り、従動側ラックギヤ42、従動側ピニオンギヤ41が、ガスコックが閉じる方向に駆動され、ガスコックが自動的に閉じられる安全装置として機能する。
【0036】
次に、図9(b)の状態からさらに、操作レバー25を旋回させると、図9(c)に示されるように、操作レバー25が点火位置まで移動し、操作レバー25の旋回に伴い、主動側ピニオンギヤ21及び主動側ラックギヤ22が連動し、インナーケーブル31をさらに引き操作する。当該インナーケーブル31の引き操作により、被操作部4側のガスコックがさらに開き、図示しない着火スイッチによりバーナーが着火される。このとき、図4においては、A2〜A4まで突出部Pは移動し、図4におけるA2〜A3までは滑らかに操作対象を駆動することができるとともに、図4におけるA3〜A4に移動するときに、突出部Pが係合凹部C1に嵌まり込み、クリック感を得ることができる。
【0037】
図9(c)において、バーナーが点火されると、図9(d)に示すように、手動又はねじりバネ28の付勢力により、操作レバー25はわずかに時計回りに旋回し、強火位置で保持される。すなわち、図4で示される係合凹部C1内において、A4〜A5に移動し、ねじりバネ28で付勢される場合であっても、係合凹部C1の端縁において、突出部Pが係合され、A5の状態で保持され、強火の状態を維持する。また、操作対象のガスコックが、安定な強火状態とするために点火後に、点火の際のコック開閉軸の回動方向と逆方向の若干の戻りが必要な場合には、係合凹部C1が突出部Pと遊嵌可能なサイズであり、被操作部にラック&ピニオン機構を用いていることによるギヤのガタにより、ガスコックが若干の戻りをすることができるので、ガスを安定した強火の状態に維持することができる。
【0038】
図9(d)の強火の状態から、火力を弱める場合は、操作レバー25を時計回りに旋回させ、主動側ピニオンギヤ21を時計回りに回転させる。すると、主動側ラックギヤ22が図9(d)中、右方向に移動して、被操作部4のガスコックの開放度を小さくし、火力を弱め、中火状態とすることができる(図9(e)参照)。このとき、主動側ラックギヤ22が右側に直線運動しようとするとき、図4に示すA5の位置において、突出部Pには主動側ラックギヤ22の係合凹部C1の端縁から、突出部Pを図9(d)中、紙面手前方向に移動させる力が加わり、突出部Pが図9(d)中、紙面手前方向に持ち上がり、乗り上げ部R2に乗り上がるとともに、主動側ラックギヤ22が図9(d)中、右方向に移動し、突出部Pは図4におけるA6まで移動し、次の係合凹部C2に係合して、操作時のクリック感を得ることができる(図9(e)参照)。
【0039】
同様に、中火から弱火にする場合は、図9(e)の状態から、さらに操作レバー25を時計回りに旋回させることにより、突出部Pが図4におけるA6から乗り上げ部R3を経由してA7まで移動し、弱火状態とすることができ、同様に操作時のクリック感を得ることができる(図9(f)参照)。
【0040】
また、弱火から消火したいときには、同様に図9(f)の状態から、さらに操作レバー25を時計回りに旋回させることにより、突出部Pが図4におけるA7から乗り上げ部R4を経由してA1まで移動し、消火することができる(図9(a)参照)。
【0041】
上記のように、本発明によると、点火直前まで、すなわち、突出部Pが往路G1を移動する間は、クリック感を得ることなく円滑に突出部Pが往路G1を移動することができ、操作対象であるガスコック等を滑らかに操作することができ、長期の使用により主動側ピニオンギヤ21と主動側ラックギヤ22との噛合が解除されることを抑制することができる。一方、復路G2においては、非連続の係合凹部C1、C2、C3に突出部Pが係合することによるクリック感を得ることができ、直接火の状態を目視することなく、火力の調整等を容易にすることが可能である。
【0042】
なお、図9により示した例は、消火時から点火し、強火から中火、中火から弱火、弱火から消火という例をあげて説明したが、中火から強火、弱火から中火等の図9とは逆の操作時においても同様に、クリック感を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 遠隔操作装置
2 操作部
21 主動側ピニオンギヤ
22 主動側ラックギヤ
22a、22b 傾斜部
23 主動側ケーシング
23a 筒軸
23b 規制部材収容部
23c 蓋
24 主動側ケーブルエンド固定部
25 操作レバー
26 ガイド突条
27 ストッパ突起
28 ねじりバネ
29 規制部材
29a ブロック体
29b 板バネ
29c ガイドアーム
29d 軸部材
29e コイルバネ
3 コントロールケーブル
31 インナーケーブル
32 アウターケーシング
4 被操作部
41 従動側ピニオンギヤ
42 従動側ラックギヤ
43 従動側ケーシング
44 従動側ケーブルエンド固定部
A1 初期位置(消火位置)
A2 往路第一位置(点火途中位置)
A3 往路第二位置(乗り上げ位置)
A4 往路復路折り返し位置(点火位置)
A5 復路初期位置(強火位置)
A6 復路第一位置(中火位置)
A7 復路第二位置(弱火位置)
C1、C2、C3 係合凹部
G 操作用溝
G1 往路
G2 復路
G3 ガイド溝
P 突出部
P2 ガイド突起
R1、R2、R3、R4 乗り上げ部
S ネジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作対象と連結した従動側ピニオンギヤと、前記従動側ピニオンギヤと噛合した従動側ラックギヤと、前記従動側ラックギヤに一端が接続されたインナーケーブルと、前記操作対象を操作するために操作される操作レバーと、前記操作レバーと連結した主動側ピニオンギヤと、前記主動側ピニオンギヤと噛合する主動側ラックギヤとを備え、
前記主動側ラックギヤには前記インナーケーブルの他端が接続され、前記操作レバーの旋回操作による前記主動側ラックギヤの直線運動が前記インナーケーブルを介して、前記従動側ラックギヤに伝達される
遠隔操作装置であって、
突出部を有し、前記直線運動を規制する規制部材を有し、
前記主動側ラックギヤには、前記主動側ラックギヤの往復直線運動に伴って、前記突出部と遊嵌して移動する往路と前記突出部と係合する非連続な係合凹部が形成された復路とを有する操作用溝を有する
遠隔操作装置。
【請求項2】
前記往路又は前記復路は、操作により、前記主動側ラックギヤに対する前記突出部の移動した軌跡が円弧状となるように構成され、
前記突出部の移動により前記規制部材が直線的な移動が可能となる規制部材収容部を備えた請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項1】
操作対象と連結した従動側ピニオンギヤと、前記従動側ピニオンギヤと噛合した従動側ラックギヤと、前記従動側ラックギヤに一端が接続されたインナーケーブルと、前記操作対象を操作するために操作される操作レバーと、前記操作レバーと連結した主動側ピニオンギヤと、前記主動側ピニオンギヤと噛合する主動側ラックギヤとを備え、
前記主動側ラックギヤには前記インナーケーブルの他端が接続され、前記操作レバーの旋回操作による前記主動側ラックギヤの直線運動が前記インナーケーブルを介して、前記従動側ラックギヤに伝達される
遠隔操作装置であって、
突出部を有し、前記直線運動を規制する規制部材を有し、
前記主動側ラックギヤには、前記主動側ラックギヤの往復直線運動に伴って、前記突出部と遊嵌して移動する往路と前記突出部と係合する非連続な係合凹部が形成された復路とを有する操作用溝を有する
遠隔操作装置。
【請求項2】
前記往路又は前記復路は、操作により、前記主動側ラックギヤに対する前記突出部の移動した軌跡が円弧状となるように構成され、
前記突出部の移動により前記規制部材が直線的な移動が可能となる規制部材収容部を備えた請求項1に記載の遠隔操作装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図9e】
【図9f】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図9e】
【図9f】
【図10】
【公開番号】特開2012−252390(P2012−252390A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122450(P2011−122450)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】
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