説明

遠隔操作装置

【課題】被駆動部までケーブル付きの遠隔操作装置を引き込む作業の作業性を良好にする。
【解決手段】共に回転自在な操作部と被操作部とを連絡する一対のインナーケーブル112をアウターケーブル113で覆うケーブル111を設け、アウターケーブル113を固定するホルダ131から引き出したインナーケーブル112を、プーリ形成体151をなす窄まった状態と開いた状態とに変位自在な一対のアーム部152の先端に保持させ、被操作部の回転軸と一体的に回転する回転体231にプーリ形成体151を支持させた後、プーリ形成体151からホルダ131を離反させることによって開いた一対のアーム部152を回転体231上で位置規制してプーリとすることで、操作部の回転運動を被操作部にも回転運動として伝達できるようにした。また、回転体231を所定の組付位置に回り止めするストッパをホルダ131で押し、その回り止めを解除するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調コントロールパネルに設けられた操作ノブ等の操作部と空調用ダクトに設けられたダンパ等の被操作部とを一対のケーブルで連結し、一対のケーブルの間の相対移動を利用して操作部の回転運動を被操作部にも回転運動として伝達するための遠隔操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の遠隔操作装置は、自動車に搭載されてその空調コントロール用に広く用いられている。例えば特許文献1には、空調用ダクトに設けられたダンパを被操作部として、このダンパを回転させるための遠隔操作装置が開示されている。特許文献1が開示する遠隔操作装置は、ダンパの軸に回り止め状態で連結されるプーリを設け、このプーリに一対のケーブルの端部を連結固定している。一対のケーブルは、プーリに至るまでは複線式のアウターケーブルで一体的に保持され、プーリを取り囲むようにしてプーリの外周面に巻き付けられ、端部であるケーブルエンドが共にプーリに固定されている。したがって、一対のケーブルを相対移動させることでプーリを回転させ、プーリと一体で回転するダンパを角度調節することができる。そこで、空調コントロールパネルに設けられた操作ノブの側にも同種の遠隔操作装置を設ければ、操作ノブの回転運動をダンパにも回転運動として伝達することができ、これによって操作ノブによるダンパの角度調節が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−226131公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、空調ダクトに設けられたダンパに遠隔操作装置を連結するためには、狭い場所に遠隔操作装置を通していく必要がある。例えば、特許文献1に記載されているようなプーリを備える遠隔操作装置では、空調コントロールパネル取り付け用の開口部からプーリを備える遠隔操作装置を差し込み、この遠隔操作装置を各種の構造物の間の隙間を這わせながら、最終的に空調用ダクトに設けられたダンパの設置位置まで案内しなければならない。このため、プーリの大きさがそのような作業の妨げになり易く、作業性が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、被駆動部までケーブル付きの遠隔操作装置を引き込む作業の作業性を良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の遠隔操作装置は、共に回転自在な操作部と被操作部とを連絡し、前記操作部の回転運動を前記被操作部にも回転運動として伝達するための一対のインナーケーブルと、前記インナーケーブルを摺動自在に覆って保持するアウターケーブルと、前記アウターケーブルの前記被操作部側の一端を後部側で位置規制して前記インナーケーブルを先端側から引き出すホルダと、前記ホルダの先端側と着脱自在に連結して前記インナーケーブルの引き出し方向に延出する窄まった状態と開いた状態とに変位自在な一対のアーム部を有し、これらのアーム部のそれぞれの先端側で前記一対のインナーケーブルを保持するプーリ形成体と、前記被操作部の回転軸と一体的に回転する回転体に前記プーリ形成体を支持させ、前記一対のアーム部が窄まった状態で前記ホルダの先端側と連結している前記プーリ形成体から前記ホルダを所定距離だけ離反させることによって所定位置まで開いた前記一対のアーム部を前記回転体上で位置規制することによって形成されるプーリと、前記被操作部を回転自在に保持する固定構造物の側に固定されて前記回転体を回転自在に支持し、前記所定距離だけ前記プーリ形成体から離反した前記ホルダを位置固定するホルダ位置固定部を設けたベースと、前記ベースに対して前記回転体を解除自在に所定の組付位置に回り止めし、前記ベースに対して装着される前記ホルダに押されて前記回転体の回り止めを解除するストッパと、を備えることによって上記課題を解決するようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アーム部を窄まった状態(収納状態と呼ぶ)と開いた状態(使用状態と呼ぶ)とに変化させることができ、したがって、被駆動部の設置位置までケーブル付きの遠隔操作装置を搬送する作業に際してはプーリ形成体を収納状態にして狭い場所でも通し易くし、その作業の作業性を向上させることができる。また、ベースにホルダを装着するまでは回転体を所定の組付位置に位置付けることができるので、被操作部とプーリ(回転体およびプーリ形成体)との回転方向位置を容易かつ正確に正しい位置にセットすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の一形態として、ケーブルユニット(ケーブル、ホルダおよびプーリ形成体)とベースユニット(ベースおよび回転体)とが分離している状態を示す全体の斜視図。
【図2】ケーブルユニットをベースユニットに取り付けた状態を示す全体の斜視図。
【図3】ケーブルユニットを上方から見た分解斜視図。
【図4】ケーブルユニットを下方から見た分解斜視図。
【図5】ホルダとプーリ形成体とが結合している状態のケーブルユニットを示す縦断側面図。
【図6】ホルダとプーリ形成体とが結合している状態のケーブルユニットを示す平面図。
【図7】ホルダがプーリ形成体から離反している状態のケーブルユニットを示す平面図。
【図8】ベースユニットを上方から見た分解斜視図。
【図9】ベースユニットを下方から見た分解斜視図。
【図10】ベースユニットの平面図。
【図11】図10中のA−A断面図。
【図12】ベースユニットにケーブルユニットを取り付けた状態を示す平面図。
【図13】図12中のB−B断面図。
【図14】本発明の別の実施の一形態として、(a)はベースユニット(ベースおよび回転体)を示す縦断側面図、(b)はベースユニットにケーブルユニットを取り付けた状態を示す縦断側面図、(c)はベースユニットに取り付けたケーブルユニットにおいてホルダをプーリ形成体から離反させた状態を示す縦断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の一形態を図1ないし図13に基づいて説明する。
【0010】
本実施の形態の遠隔操作装置11は、自動車の空調コントロールパネルに設けられた操作ノブを操作部とし、空調用ダクトに設けられたダンパを被操作部として、操作ノブの回転をダンパに伝えてダンパを回転調節する用途に用いられる(全て図示せず)。
【0011】
図1および図2は、遠隔操作装置11の全体を示す斜視図である。図1は、ケーブルユニット101とベースユニット201とが分離している状態、図2は、ケーブルユニット101をベースユニット201に取り付けた状態をそれぞれ示している。
【0012】
図1および図2に示すように、本実施の形態の遠隔操作装置11は、ケーブルユニット101とベースユニット201とから構成されている。ケーブルユニット101は、空調コントロールパネルに設けられた操作ノブ(図示せず)に一端が取り付けられたケーブル111の他端側に、ホルダ131およびプーリ形成体151を取り付けた構造のもので、操作ノブから狭い空間を通して空調用ダクトのダンパ(図示せず)の配置位置まで引き回される。この際、ケーブルユニット101は、図1に示すように、プーリ形成体151をなす一対のアーム部152が窄まった状態にされ、狭い空間内での引き回しを楽に行なえるようにしている。ベースユニット201は、固定構造物である車両(図示せず)に固定されるベース211に回転体231を回転自在に取り付けている。回転体231は、空調用ダクトのダンパ(図示せず)の回転軸51(図11、図13参照)に固定され、この回転軸51と一体的に回転する。回転体231は、ケーブルユニット101のプーリ形成体151を装着するための装着軸部232を備えている。ケーブルユニット101は、空調用ダクトのダンパ(図示せず)の配置位置まで引き込まれると、回転体231の装着軸部232にプーリ形成体151を装着する。この状態で、図2に示すように、プーリ形成体151からホルダ131を離反させる。すると、プーリ形成体151が有している一対のアーム部152がケーブル111に引っ張られて、図1に示す窄まった状態から図2に示す開いた状態に変位する。この際、ホルダ131は、ベース211に形成されたホルダ位置固定部212に位置固定され、一対のアーム部152を開いた状態に維持する。開かれた一対のアーム部152は、回転体231に設けられたアーム当接体233の当接面233aに位置規制され、回転体231と一体的に回転するプーリ171をなす。
【0013】
以上が、本実施の形態の遠隔操作装置11の概要である。ここで疑問に思われることであろう点は、プーリ形成体151からホルダ131を離反させると、どうして一対のアーム部152が窄まった状態から開いた状態に変位するのか、ということであろう。この点について説明を加える。
【0014】
ケーブル111は、一対のインナーケーブル112が一つのアウターケーブル113に摺動自在に覆われて保持された構造を有している(図3、図4参照)。一例として、インナーケーブル112は複数本の金属線を結い束ねて形成され、アウターケーブル113は柔軟性を有する樹脂によって形成されている。
【0015】
空調コントロールパネルに設けられた操作ノブ(図示せず)の側では、操作ノブの回転に応じて一体的に回転する軸にプーリ(図示せず)が設けられ、このプーリを取り囲むようにしてプーリにインナーケーブル112が固定されている。これにより、プーリが回転すると一方のインナーケーブル112が引き込まれると共に、もう一方のインナーケーブル112が押し出される。したがって、操作ノブを回転させると、アウターケーブル113の内部で一対のインナーケーブル112が互いに反対方向に移動することになる。
【0016】
遠隔操作装置11の側では、ホルダ131の後部側にアウターケーブル113の端部が固定されている。インナーケーブル112は、ホルダ131の先端側から飛び出しており、アウターケーブル113の内部を摺動して自由に移動できるようになっている。このようなインナーケーブル112の先端には、円柱形状のケーブルエンド114が固定されており、プーリ形成体151が有する一対のアーム部152の先端部にそれぞれ保持されている。
【0017】
図2に示すように、プーリ形成体151からホルダ131を離反させると、ホルダ131に固定されたアウターケーブル113もプーリ形成体151から離反する。この際、アウターケーブル113の端部から飛び出している一対のインナーケーブル112の長さが変わらないため、アウターケーブル113がプーリ形成体151から離反すれば、インナーケーブル112が一対のアーム部152を引っ張る。これにより、一対のアーム部152が窄まった状態から開いた状態に変位するわけである。以上、プーリ形成体151からホルダ131を離反させると、どうして一対のアーム部152が窄まった状態から開いた状態に変位するのか、という点について説明を加えた。
【0018】
ここからは、より詳細な構造および作用効果について説明していく。最初にケーブルユニット101、次にベースユニット201について説明し、その後に全体の作用効果について説明する。
【0019】
図3〜図7を主に参照して、ケーブルユニット101について説明する。図3および図4は、ケーブルユニット101の分解斜視図である。図3は、上方から見た状態、図4は、下方から見た状態をそれぞれ示している。図5は、ホルダ131とプーリ形成体151とが結合している状態のケーブルユニット101を示す縦断側面図である。図6および図7は、ケーブルユニット101を示す平面図である。図6は、ホルダ131とプーリ形成体151とが結合している状態、図7は、ホルダ131がプーリ形成体151から離反している状態をそれぞれ示している。ここで、ケーブルユニット101をなすホルダ131およびプーリ形成体151は、共に、樹脂成型によって形成することが好適である。
【0020】
図3および図4に示すように、プーリ形成体151をなす一対のアーム部152は、それぞれ、円弧形状に湾曲した二つの部材に分離している。一方のアーム部152は支持軸153を備え、もう一方のアーム部152は支持軸153が嵌り込む支持孔154を備えている。説明の便宜上、支持軸153を備える方のアーム部152をアーム部152A、支持孔154を備える方のアーム部152をアーム部152Bと呼ぶ。支持軸153には、その先端部分に、外周方向に突出する一対の抜止凸部155が設けられている。支持孔154には、抜止凸部155を貫通させる切欠部156が形成されている。これらの抜止凸部155と切欠部156とが形成されている位置は、一対のアーム部152を大きく開いた状態で、抜止凸部155が切欠部156に適合する位置である。そこで、抜止凸部155を切欠部156に位置合わせして支持孔154に支持軸153を嵌め込み、一対のアーム部152を閉じる方向に回転させると、一対のアーム部152が抜止凸部155によって抜け止めされ、互いに回転自在に連結される。
【0021】
一対のアーム部152は、閉じる方向に回転させた後は、ある位置よりも開かないようになる。これを実現させているのは、一方のアーム部152Aに形成された規制凸部157と、もう一方のアーム部152Bに形成された規制爪158とである(図7参照)。これらの規制凸部157と規制爪158とは、支持孔154に支持軸153を嵌め込んだ後に一対のアーム部152を閉じる方向に回転させる過程で、互いに干渉する位置に配置されている。規制爪158は、大きく開いた一対のアーム部152が閉じる方向に変位するに際して移動する規制凸部157に押されて弾性変形し、規制凸部157の乗り越えを許容するのに対して、反対方向に移動する規制凸部157に押されても弾性変形しないように形成されている。このため、規制凸部157が規制爪158を乗り越えたならば、規制爪158が規制凸部157を位置規制し、抜止凸部155が切欠部156の位置に達することを防止する。こうして、一対のアーム部152が回転自在に連結されてプーリ形成体151をなし、窄まった状態と開いた状態とに変位自在となる。
【0022】
図3および図4に示すように、プーリ形成体151をなす一方のアーム部152Aは、支持軸153と同軸上の上部部分が円筒形状に形成されている。この部分を、保持筒159と呼ぶ。ホルダ131は、その先端側に、保持筒159を保持する半円弧形状の保持部132を有している。保持部132は、半円弧形状の内壁に軌条133を突出形成し、保持筒159は、軌条133が嵌り込む軌溝160を外周面に形成している。そこで、ホルダ131の保持部132にアーム部152Aの保持筒159を嵌め込むと、軌溝160に軌条133が嵌り込み、ホルダ131にプーリ形成体151が着脱自在に連結する。
【0023】
図4に示すように、ホルダ131は、その後下部にケーブル111を装着する。そのための構造として、ホルダ131は、インナーケーブル112を通すインナーケーブル挿通溝134を形成し、これに連絡するアウターケーブル固定部135(図5参照)を形成している。ホルダ131の下方からインナーケーブル112をインナーケーブル挿通溝134に差し込み、アウターケーブル113をケーブル111の軸方向からアウターケーブル固定部135に圧入すると、ホルダ131にケーブル111が固定される。この際、ホルダ131は、一対のインナーケーブル112を上下に位置付けるよう、ケーブル111を縦に保持する。こうして、ホルダ131は、アウターケーブル113の被操作部側の一端を後部側で位置規制して、インナーケーブル112を先端側から引き出す。
【0024】
図1、図5、および図6に示すように、プーリ形成体151は、ホルダ131の先端側と連結したならば、インナーケーブル112の引き出し方向に向けて、一対のアーム部152を延出させる格好となる。これらのアーム部152の配置位置は、ホルダ131に保持されたケーブル111が有している一対のインナーケーブル112の延出位置に適合している。一方のアーム部152Aは、上方に位置するインナーケーブル112を案内するケーブル案内溝161を湾曲した外側面に形成し、もう一方のアーム部152Bは、下方に位置するインナーケーブル112を案内するケーブル案内溝161を湾曲した外側面に形成している(図3、図4も参照のこと)。上方に位置するインナーケーブル112は、ケーブル案内溝161に嵌り込んで一方のアーム部152Aの先端部に導かれ、この部分でケーブルエンド114が保持されている。下方に位置するインナーケーブル112は、ケーブル案内溝161に嵌り込んでもう一方のアーム部152Bの先端部に導かれ、この部分でケーブルエンド114が保持されている。一対のアーム部152において、ケーブルエンド114を保持するのはケーブル固定部162である。ケーブル固定部162は、ケーブルエンド114が嵌り合う孔をケーブル案内溝161に連絡させた構造のものである。
【0025】
一対のアーム部152は、開いた状態にするための外力が加わらない限り、一対のアーム部152を窄まった状態に保持する仮止部163を有している。仮止部163は、一方のアーム部152Aに形成されたフック164と、もう一方のアーム部152Bに形成された受部165とによって形成されている。一対のアーム部152を窄まった位置まで回転させると、フック164が弾性変形して受部165に引っ掛かり、その位置に一対のアーム部152を仮止めする。但し、あくまでも仮止めであり、一対のアーム部152にある程度以上の開く方向への外力を加えると、フック164は弾性変形して受部165から脱落し、仮止めを解除する。
【0026】
図6に示すように、ホルダ131とプーリ形成体151とが連結されている場合、一対のアーム部152が閉じられて窄まった状態になっている。この際、一対のアーム部152は、仮止部163によって仮止めされ、閉じられて窄まった状態を維持している。
【0027】
図7に示すように、プーリ形成体151からホルダ131を離反させると、一対のアーム部152はケーブル111に引っ張られ、開かれる。この際、仮止部163による仮止めが解除される。
【0028】
以上、ケーブルユニット101の詳細構造について説明した。ケーブルユニット101は、ベースユニット201の装着軸部232に装着するための連結孔102を形成している。連結孔102は、一方のアーム部152Aに形成した支持軸153および保持筒159を貫通している。
【0029】
次に、図8〜図13を主に参照して、ベースユニット201について説明する。図8および図9は、ベースユニット201の分解斜視図である。図8は、ベースユニット201を上方から見た状態、図9は、ベースユニット201を下方から見た状態をそれぞれ示している。図10は、ベースユニット201の平面図である。図11は、図10中のA−A断面図である。図12は、ベースユニット201にケーブルユニット101を取り付けた状態の平面図である。図13は、図12中のB−B断面図である。ここで、ベースユニット201をなすベース211および回転体231は、共に、樹脂成型によって形成することが好適である。
【0030】
ベースユニット201は、ベース211に設けられた一対の取付片213に形成された取付孔214を利用したねじSによるねじ止めによって、固定構造物である車両(図示せず)の固定部Fに固定される。ベース211は、車両に固定した際、被操作部であるダンパの回転軸51を通す挿通孔215を備えており、この挿通孔215の周囲にリング状軸部216を形成している。リング状軸部216は、回転体231を回転自在に保持するもので、隙間Gを開けて設けられた二重の筒状構造をなしている。回転体231は、その下部に、リング状軸部216が形成する二重の筒状構造の隙間Gに嵌り込む径の筒状部234を形成している。また、図9、図11に示すように、リング状軸部216は、その上端に、挿通孔215の内部に迫り出すようにして段部217を形成している。回転体231は、筒状部234の内側に位置させて、段部217に引っ掛かる三つの爪部236を形成している。これらの爪部236は、ベース211に回転体231を取り付けるに際して、挿通孔215の縁に当接して弾性変形し、回転体231が完全に装着されると段部217の位置を乗り越えて復元する。この状態で、段部217に引っ掛かる。こうして、三つの爪部236が段部217に引っ掛かることで回転体231が抜け止めされ、ベース211に回転体231が回転自在に取り付けられる。
【0031】
ベースユニット201は、ベース211に対して回転体231を解除自在に所定の組付位置に回り止めし、ベース211に対して装着されるホルダ131に押されて回転体231の回り止めを解除するストッパ202を有している。ストッパ202は、ケーブルユニット101のホルダ131を位置固定するためのホルダ位置固定部212の側を基部として、回転体231の側の端部に形成したストッパ片203が上下に変位する。この場合の変位は、ストッパ202の弾性力によって実現される。ストッパ片203は、通常はベース211の上面よりも上方に出ており、ストッパ202が下方への押圧力を受けるに従い下方に向けて変位し、その下方への押圧力が解除されると元の位置に復帰する。回転体231は、下方からのストッパ片203の進入を許すストッパ溝204を後部に形成している。ストッパ片203がストッパ溝204に進入すると回転体231が周り止めされ、ストッパ202が弾性変形してストッパ溝204からストッパ片203が脱落すると回転体231の周り止めが解除される。したがって、ストッパ202は、ストッパ片203がベース211の上面から出てストッパ溝204に進入している位置を初期位置とし、下方に変位してストッパ溝204から脱落した位置を解除位置としている。
【0032】
ストッパ202の重要な属性は、ベース211に対して回転体231を所定の組付位置に回り止めすることである。本実施の形態では、回転体231に設けた一対のアーム当接体233が、遠隔操作装置11の中心軸Cを中心に対称形をなす位置を組付位置として設定している。図10に示すように、ストッパ202は中心軸C上に配置され、ストッパ溝204は、回転体231が初期位置に位置する状態で中心軸C上に位置付けられる。これにより、ベース211に対して回転体231を組付位置に回り止めすることが可能となる。
【0033】
ストッパ202のもう一つの重要な属性は、ベース211に対して装着されるホルダ131に押されて回転体231の位置固定を解除することである。これを実現しているのが、ストッパ202に設けられた被押圧部205である(図10、図11参照)。被押圧部205は、ストッパ202の基部側に寄せて設けられた山形形状のもので、ベースユニット201にケーブルユニット101を装着するに際して、プーリ形成体151からホルダ131を離反させる動作に伴いホルダ131に押される(図13参照)。ホルダ131において、被押圧部205を押すのは、押圧部138である。押圧部138は、ホルダ131の下部から下方に突出している。被押圧部205は、ホルダ131の水平方向の移動に伴って押圧部138に水平方向から押されるが、山形形状をなす傾斜面でその押圧力を受けるので、ストッパ202を下方に向けて変位させる。これにより、ストッパ202は、ベース211に対して装着されるホルダ131に押されて回転体231の回り止めを解除することができる。
【0034】
図11に示すように、回転体231は、ベース211のリング状軸部216に装着される筒状部234と同軸上に、被操作部であるダンパの回転軸51を挿入させ、回転軸51に回転体231を連結させるための連結固定孔237を備えている。連結固定孔237は、Dカットされて平坦になった回転軸51のDカット部52に形成された引掛け孔53に引っ掛かる連結爪238を有している。連結爪238は、弾性変形可能であり、連結固定孔237に回転軸51が挿入されるに際して撓み、回転体231が所期位置に位置付けられるとDカット部52の引掛け孔53にパチンと嵌り込む。この状態で、回転軸51に対して回転体231が周り止めされた状態で抜け止めされる。
【0035】
前述したように、ベースユニット201にケーブルユニット101を取り付けた後、プーリ形成体151からホルダ131を離反させる。ベースユニット201のベース211は、その際にホルダ131を案内するための構造として、一対のレール218およびレール溝219を備えている。レール218は、ケーブルユニット101がベースユニット201に装着された際、ホルダ131の両側壁に突出形成された一対のレール片136を支える(図1、図2参照)。レール溝219は、プーリ形成体151からホルダ131を離反させることに伴いレール218上を移動するレール片136の進入を許し、レール218からのレール片136の脱落、換言すると、ベースユニット201からのホルダ131の脱落を防止する(図1、図2参照)。
【0036】
ベース211は、プーリ形成体151から離反したホルダ131をその位置に位置固定するためのホルダ位置固定部212として、一対の固定爪220を有している。これらの固定爪220は、ホルダ131の両側壁に突出形成された一対の固定片137を引っ掛けて保持する。つまり、固定爪220は、プーリ形成体151から離反する方向に移動するホルダ131の固定片137に押されて弾性変形し、ホルダ131が所期位置に位置付けられると固定片137を乗り越え、元の位置に復元して固定片137を引っ掛けた状態で保持する。
【0037】
図1、図8、図10、および図11に示すように、回転体231の装着軸部232には、この装着軸部232に装着されたケーブルユニット101を抜け止めするための抜止爪239が形成されている。抜止爪239は、装着軸部232の中心に向けて弾性的に変位自在のもので、装着軸部232に装着されるケーブルユニット101の連結孔102を引っ掛けて保持する。抜止爪239が引っ掛かるのは、連結孔102に形成された装着段部103である(図13参照)。
【0038】
図1、図8、および図11に示すように、回転体231は、一対のアーム当接体233の近傍に位置させて、一対の付勢爪240を備えている。この付勢爪240は、ベースユニット201にケーブルユニット101が装着された際、一対のアーム当接体233の当接面233aに位置規制される一対のアーム部152と対面する位置に配置されている。そして、付勢爪240は、回転体231の上面よりも上方に突出して一対のアーム部152の移動軌跡と干渉する位置を初期位置としており、弾性変形することによって上下方向に変位自在である。したがって、一対のアーム部152が一対のアーム当接体233の当接面233aに位置規制される位置に位置付けられると、付勢爪240は、アーム部152に押されて下方に引っ込み、その復元力によって各アーム部152を押圧する。これにより、アーム部152のがたつきを抑制する。
【0039】
次に、全体の作用効果について説明する。
【0040】
まず、本実施の形態において、空調コントロールパネルに設けられた操作ノブを操作部とし、空調用ダクトに設けられたダンパを被操作部としている(全て図示せず)。ケーブルユニット101をなすケーブル111の一端側は、操作ノブの回転に応じて一体的に回転する軸に固定されたプーリ(図示せず)を覆うようにしてプーリに固定されている。そして、ベースユニット201は、空調用ダクトが設置されている車両の固定部Fに固定されている。固定部Fに直接固定されるのはベース211であり(図11、図13参照)、回転体231は、空調用ダクトのダンパの回転軸51に装着され、回転軸51と一体的に回転する。本実施の形態の遠隔操作装置11は、空調コントロールパネルの操作ノブの回転運動を、空調用ダクトのダンパに伝えてダンパを回転調節する。そのために、空調コントロールパネルの裏面側からケーブルユニット101を這い回し、空調用ダクトまで引き込む。
【0041】
この際、ケーブルユニット101は、図1および図6に示すように、一対のアーム部152が閉じられて仮止部163によって仮止めされ、窄まった状態である収納状態に維持されている。このため、空調コントロールパネルの裏面側から空調用ダクトまでケーブルユニット101を這い回して搬送する作業に際して、狭い場所でもケーブルユニット101を通し易くすることができ、その作業の作業性を向上させることができる。
【0042】
ケーブルユニット101を空調用ダクトのダンパの位置まで引き込んだならば、予め装着されているベースユニット201にケーブルユニット101を取り付ける。この作業は、まず、回転体231の装着軸部232にケーブルユニット101の連結孔102をあてがい、連結孔102に装着軸部232を挿入させるようにしてケーブルユニット101をベースユニット201に装着する。すると、装着軸部232の抜止爪239が連結孔102の装着段部103に引っ掛かり、ケーブルユニット101が抜け止めされる。
【0043】
次いで、プーリ形成体151からホルダ131を離反させる。この際、ホルダ131のレール片136がベース211のレール218に載置されているので、レール片136はレール218に沿って案内されてレール溝219に入り込み、望まぬ位置への脱落が防止される。そして、ホルダ131の固定片137がベース211の固定爪220を乗り越えると、固定爪220が固定片137に引っ掛かり、ホルダ131がその位置に位置固定される。
【0044】
ケーブル111は、そのアウターケーブル113がホルダ131のアウターケーブル固定部135に固定されている。このため、プーリ形成体151からホルダ131を離反させるに従い、一対のインナーケーブル112を先端に保持している一対のアーム部152が開く。ホルダ131がベース211に位置固定される位置まで来ると、一対のアーム部152はそれぞれアーム当接体233の当接面233aに当接し、それ以上の開拡が規制される。これにより、ベースユニット201の回転体231とケーブルユニット101のプーリ形成体151とが一体化し、プーリ171が形成される。
【0045】
ここで、ベースユニット201においては、回転体231の側のストッパ溝204にベース211の側のストッパ202に形成されたストッパ片203が進入しているので、回転体231は回り止めされて所定の組付位置に正しく位置付けられる。このため、ケーブルユニット101を装着するに際して、ベースユニット201の回転体231とケーブルユニット101との位置関係を正しい所期状態にすることができ、ケーブルユニット101の適切な装着が可能となる。
【0046】
そして、プーリ形成体151からホルダ131を離反させると、ホルダ131の押圧部138がストッパ202の被押圧部205を押してストッパ202を下方に変位させる。これにより、ストッパ溝204からストッパ片203が脱落し、回転体231が自由に回転できるようになる。こうして、ベースユニット201の回転体231とケーブルユニット101のプーリ形成体151とが一体化して形成されたプーリ171は、ダンパの回転軸51を中心として回転自在となる。
【0047】
前述したとおり、空調コントロールパネルに設けられた駆動部である操作ノブを回転させると、アウターケーブル113の内部で一対のインナーケーブル112が互いに反対方向に移動する。すると、被駆動部であるダンパの側では、一方のインナーケーブル112が駆動部側に引っ張られ、もう一方のインナーケーブル112が押し出される。その結果、駆動部側に引っ張られる一方のインナーケーブル112のケーブルエンド114を保持するアーム部152が引っ張られてアーム当接体233を押すため、プーリ171がその引っ張られた方向に向けて回転する。この時の回転中心は、プーリ171が装着されているダンパの回転軸51である。こうして、駆動部である操作ノブを回転操作することで、回転軸51と一体のダンパを回転させ、空調用ダクト内の流体通路の面積を制御することができる。
【0048】
本実施の形態によれば、一対のアーム部152を仮止部163で仮止めしているので、遠隔操作装置11の取り付け作業に際して一対のアーム部152が不意に開いてしまうことを防止することができ、作業性を良好にすることができる。
【0049】
本実施の形態によれば、一対のアーム部152を互いに回転自在に取り付けたので、窄まった状態と開いた状態とに容易かつ円滑に変位させることができる。しかも、一方のアーム部152Aに設けた支持軸153をもう一方のアーム部152Bに設けた支持孔154に嵌め込んで一対のアーム部152を回転自在に連結したので、構造の簡略化と部品点数の削減とを実現することができる。これに加えて、一方のアーム部152Aに設けた支持軸153をベースユニット201の回転体231に連結するようにしたので、より一層の構造の簡略化と部品点数の削減とを実現することができる。
【0050】
本実施の形態によれば、固定構造物(固定部F)の側に固定されて回転体231を回転自在に支持するベース211に、プーリ形成体151から離反させたホルダ131を位置固定するためのホルダ位置固定部212を設けたので、更なる構造の簡略化と部品点数の削減とを実現することができる。
【0051】
次に、本発明の別の実施の一形態を図14に基づいて説明する。図14(a)は、ベースユニット201を示す縦断側面図、図14(b)は、ベースユニット201にケーブルユニット101を取り付けた状態を示す縦断側面図、図14(c)は、ベースユニット201に取り付けたケーブルユニット101においてホルダ131をプーリ形成体151から離反させた状態を示す縦断側面図である。
【0052】
本実施の形態は、ストッパ202に関するものであり、その他の点は、図1ないし図13に基づいて説明した前記実施の形態と同一である。そこで、前記実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0053】
前記実施の形態のストッパ202は、プーリ形成体151からホルダ131を離反させる動作に応じて回転体231のストッパ溝204からストッパ片203を脱落させるようにした。これに対して、本実施の形態のストッパ202は、プーリ形成体151からホルダ131を離反させてベース211上の所期位置に装着するまでもなく、ベースユニット201にケーブルユニット101を装着させる動作に伴い、回転体231のストッパ溝204からストッパ片203を脱落させるようにしている。
【0054】
上記ストッパ202の動作を実現させるために、本実施の形態では、被押圧部205の位置を回転体231の回転中心に近い位置に位置付けた。これにより、ホルダ131とプーリ形成体151とが一体的に結合したケーブルユニット101をベースユニット201に装着する動作に応じて、ホルダ131の押圧部138がストッパ202の被押圧部205に接触し、被押圧部205を押し下げる。ストッパ202が下方に向けて変位し、ベースユニット201にケーブルユニット101が装着されたならば、回転体231のストッパ溝204からストッパ片203が脱落する。
【0055】
ストッパ202の被押圧部205の上面は、ベースユニット201にケーブルユニット101が装着された際にホルダ131の押圧部138に押圧された状態で、ホルダ131の移動に伴う押圧部138の移動軌跡に沿うよう、平坦な平坦面205aとして形成されている。これにより、被押圧部205は、プーリ形成体151からホルダ131を離反させる間中、ストッパ202を同じ位置に維持し続ける。
【0056】
以上説明したように、ベース211に対して回転体231を解除自在に所定の組付位置に回り止めするストッパ202は、ベース211に対して装着されるホルダ131に押されて回転体231の回り止めを解除する構成であればよい。この場合の「ベース211に対して装着される」という概念は多義的であり、プーリ形成体151から離反させてホルダ131をベース211に装着することも(前記実施の形態)、プーリ形成体151と一体的に結合しているホルダ131をベース211に装着することも(本実施の形態)、いずれをも包含している。
【符号の説明】
【0057】
112 インナーケーブル
113 アウターケーブル
131 ホルダ
151 プーリ形成体
152 アーム部
152A アーム部
152B アーム部
153 支持軸
154 支持孔
171 プーリ
211 ベース
212 ホルダ位置固定部
202 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共に回転自在な操作部と被操作部とを連絡し、前記操作部の回転運動を前記被操作部にも回転運動として伝達するための一対のインナーケーブルと、
前記インナーケーブルを摺動自在に覆って保持するアウターケーブルと、
前記アウターケーブルの前記被操作部側の一端を後部側で位置規制して前記インナーケーブルを先端側から引き出すホルダと、
前記ホルダの先端側と着脱自在に連結して前記インナーケーブルの引き出し方向に延出する窄まった状態と開いた状態とに変位自在な一対のアーム部を有し、これらのアーム部のそれぞれの先端側で前記一対のインナーケーブルを保持するプーリ形成体と、
前記被操作部の回転軸と一体的に回転する回転体に前記プーリ形成体を支持させ、前記一対のアーム部が窄まった状態で前記ホルダの先端側と連結している前記プーリ形成体から前記ホルダを所定距離だけ離反させることによって所定位置まで開いた前記一対のアーム部を前記回転体上で位置規制することによって形成されるプーリと、
前記被操作部を回転自在に保持する固定構造物の側に固定されて前記回転体を回転自在に支持し、前記所定距離だけ前記プーリ形成体から離反した前記ホルダを位置固定するホルダ位置固定部を設けたベースと、
前記ベースに対して前記回転体を解除自在に所定の組付位置に回り止めし、前記ベースに対して装着される前記ホルダに押されて前記回転体の回り止めを解除するストッパと、
を備えることを特徴とする遠隔操作装置。
【請求項2】
前記ストッパは、前記プーリ形成体から前記ホルダを離反させる動作に伴う前記ホルダに押されて前記回転体の回り止めを解除する、
ことを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項3】
前記ストッパは、前記回転体と前記ベースとに対して前記プーリ形成体と前記ホルダとを一体的に装着させる動作に伴う前記ホルダに押されて前記回転体の回り止めを解除する、
ことを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項4】
前記ストッパは、前記ベースに対して前記回転体を回り止めする初期位置から復元力をもった弾性変形によって前記回転体の回り止めを解除する解除位置に変位する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載の遠隔操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−69018(P2012−69018A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214607(P2010−214607)
【出願日】平成22年9月25日(2010.9.25)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】