説明

適合可能な絆創膏および被覆材料

本発明の液状のポリマー含有被覆材料は、使用者にとってヒリヒリ痛まない揮発性で疎水性(非極性)の液体の溶媒系で、熱応答特性を提供することができ、また疎水性で重合性のシロキシ含有モノマーと共重合される、重合性窒素含有親水性モノマーのポリマーを含む。材料は、表面または使用者の皮膚に塗布された場合にフィルム状の被覆または絆創膏を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚および粘膜を含む生体表面などの表面の保護および治療に有用な液状の接着性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
液体ポリジメチルシロキサンに混合されたアルキルシロキシシロキサン含有疎水性ポリマー(米国特許第5,103,812号明細書、および米国特許第4,987,893号明細書)は、更なる殺菌混入および乾燥から体表面を保護すると同時に体液を蒸発させることのできる非刺激性の被覆剤を提供する。別の変形例においては、同様の被覆特性を提供するため、アルキルシロキシシロキサン含有ポリマーが2,2,4−トリメチルペンタンに混合されている(米国特許第6,383,502号明細書)。これらの被覆は、水和した表面への接着性の損失、および指関節または膝などの高柔軟性部分における接着性の損失といった共通の欠点を有している。
【0003】
液状の接着性絆創膏として有用なポリマーの別の種類であるシクロアルキルメタクリレート共重合体は、ポリジメチルシロキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、およびイソドデカンの混合液に可溶であることは見出されている(米国特許第6,358,503号明細書)。
【0004】
シアノアクリレート、特にブチルおよびオクチルシアノアクリレートも、液状の接着性絆創膏としての使用が見出されている(米国特許第6,183,593号明細書、米国特許第6,143,805号明細書)。これらの材料は、迅速なフィルム形成をもたらし、紙またはカミソリによる細い外傷の閉塞に対して特に有用である。高柔軟性部分での外傷は、十分に接着された場合に瘢痕化しやすいため、または固有のもろさによって十分に接着されない場合はすぐに薄い層が裂けてしまうため、シアノアクリレートによる治療に適していない。
【0005】
塗布すると皮膚のヒリヒリした痛みおよび更なる炎症をもたらす組成に基づく市販された他の液状接着性絆創膏を入手することができる(例えば、ニュー・スキン(登録商標)−メドテックラボラトリーズオブコーディー社、ワイオミング アンド キュアード(登録商標)スプレー絆創膏−バイヤスドルフAG社、コネチカット州、ウィルトン)。
【特許文献1】米国特許第5,103,812号明細書
【特許文献2】米国特許第4,987,893号明細書
【特許文献3】米国特許第6,383,502号明細書
【特許文献4】米国特許第6,358,503号明細書
【特許文献5】米国特許第6,183,593号明細書
【特許文献6】米国特許第6,143,805号明細書
【特許文献7】米国特許第6,846,846号明細書
【非特許文献1】ベルグブレイター・デビットら、Angew.Chem.Int.Ed.39、No.6、1040〜1042ページ(2000年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
湿った表面および乾燥表面に対する接着性、屈曲ストレス下での接着性、水蒸気および酸素透過性、および生体表面上の保護被覆層としての使用に必要な他の性質を有する、水に不溶で適合可能な被覆を技術的に提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、生体表面に液体の状態で塗布され、風乾されて接着性の水に不溶で水蒸気透過性、酸素透過性で、使用者の皮膚または粘膜に対する著しいヒリヒリする痛みのない固形保護フィルムを形成し、外傷を保護または治療するため、もしくは損傷したまたは危険に曝された皮膚または粘膜組織の治療のための絆創膏または包帯剤として作用することができる、液状の両親媒性ポリマー含有被覆剤を提供する。液体接着材料は、皮膚および粘膜を含む生体表面などの表面の保護および治療に有用である。本発明のポリマー含有被覆剤は、ヒト細胞の接着と細胞増殖を支援する。本発明のポリマー含有被覆材料は、ヒト細胞の接着と増殖を支援し、外傷の保護を提供し、水損失の制御を提供し、高度な酸素透過性を有することで外傷の治癒を促進することが想定されている。
【0008】
液状接着材料のポリマー成分は、不飽和の付加重合可能な親水性アミド、イミド、ラクタムまたはアミンモノマー、および疎水性の不飽和の付加重合可能なシロキシ含有モノマーを含む。親水性モノマーは、全て窒素を含む一方で、疎水性シロキシモノマーは全てケイ素・酸素基を含む。親水性窒素含有モノマーは、水に可溶である一方、疎水性シロキシモノマーは水に不溶である。モノマー基に二面性、つまり親水性および疎水性があるため、ポリマーは両親媒性である。またポリマーは他のモノマーも含む。ポリマーは揮発性の疎水溶媒、好ましくは単鎖または環状のシロキサンに溶解されるか融和性である。二つのモノマーの比率は、水に不溶な被覆剤を溶かすために調節される。
【0009】
液状接着材料の水に不溶なポリマー組成は、ホモポリマーを水溶液系に溶解された場合に、または付加重合可能なシロキシシロキサンモノマーと共重合されて使用者にヒリヒリする痛みを与えない揮発性で疎水性(非極性)の液体の溶媒系に添加され、当該共重合体が水性の環境中に置かれた場合に、熱応答性を提供することができる、付加重合可能な親水性モノマーを更に含む場合もある。
【0010】
本発明の両親媒性ポリマー被覆剤は水に不溶であるが、被覆剤は水蒸気の透過および酸素の透過を可能にするという効果がある。シロキシ含有ポリマーは、水蒸気の透過性と気体の透過性で知られている。当該ポリマーは、高度の酸素透過性からコンタクトレンズ材料に使用されてきた。好ましくは、ポリマーは、約0.5重量%〜70重量%存在し、より好ましくは、ポリマーは約1重量%〜50重量%存在し、揮発性の疎水性液は約30重量%〜99.5重量%であり、より好ましくは、約50重量%〜99重量%である。材料は、表面または使用者の皮膚に塗布された場合、フィルム状の形で、水に不溶な被覆剤または絆創膏を形成する。
【0011】
特許文献1及び特許文献2に述べられたように、液体ポリジメチルシロキサンと混合されたアルキルシロキシシロキサン含有疎水性ポリマーでは疎水性で揮発性の直鎖状シロキサン中のポリマーの濃度が不溶性及び高い粘性のため40重量%を越えられないのとは対照的に、同じ溶媒系中の両親媒性ポリマーを使用する本発明は、比較的低い粘性で、70重量%までのポリマーの濃度を可能にする。この溶解性及び低い粘性は、通常、不溶の親水性モノマー成分はシロキシ溶媒に可溶性の疎水性シロキシモノマーで覆われるところが、疎水性の揮発性溶媒中の両親媒性ポリマーによってミセルタイプの構造が形成されることによるものと考えられる。しかしながら、特許文献1及び特許文献2のポリマーについて、親水性モノマーは除外されており、従って、その結果として生じるポリマーの両親媒性を考慮しておらず、その結果、揮発性の疎水性溶媒中のミセルタイプの性質を促していない。
【0012】
ポリマー被覆剤の両親媒性特性は、乾燥した表面および湿った表面との相互作用を促進する。やや濡れている表面、つまり湿った表面に対して、親水性の窒素含有成分は、湿った表面との水素結合により相互作用する一方、乾燥した表面に対しては、被覆剤は、その接着特性ならびに窒素含有成分の任意の親水性水素結合受容基に対する水素結合により表面と相互作用する。ポリマー被覆剤の両親媒性は、静止接触角によって証明され、乾燥フィルムは約100°の静止接触角である一方、一滴の脱イオン水をフィルム上に置いた場合、水和した濡れたフィルムは約70°の静止接触角であった。このぬれ挙動は、被覆剤が接触する環境の種類に応じてポリマーの表面の相反転が生じたことを示す。
【0013】
好ましい実施形態において、本発明の液状のポリマー含有被覆材料は、アルキルシロキシシロキサンモノマーと重合した親水性アミド、イミド、ラクタムまたはアミンモノマーからのポリマー、ポリマーを可塑化することができる、またはポリマーを可塑化し接着性を増大させる、もしくは接着性を増すためにポリマーの親水性モノマーと水素結合または電気的結合する、もしくはポリマーに薬剤特性または抗菌特性を与えることができる補足剤、および利用者にヒリヒリする痛みを与えない揮発性の疎水性(非極性)液の溶媒系を含む。好ましくは、可塑剤は接着性促進剤として作用する。好ましい実施形態において、ポリマーは約0.5重量%〜70重量%、より好ましくは約1重量%〜50重量%存在し、補足剤は約0.1重量%〜30重量%であり、より好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、揮発性の疎水性液は約30重量%〜99.4重量%であり、より好ましくは約40.0重量%〜98.9重量%である。材料は、表面または使用者の皮膚に塗布された場合にフィルムのかたちで被覆または絆創膏を形成する。
【0014】
別の好ましい実施形態では、ポリマーは、少なくとも一つの付加重合可能なアミド、イミド、ラクタム、またはアミンモノマーおよび一つの付加重合可能なアルキルシロキシシランモノマーを含む。揮発性の疎水性液は、好ましくは、低分子量の直鎖状または環状のシロキサンである。好ましくは、接着性促進可塑剤は、可塑化およびフィルム形成能に対して疎水性サッカリド誘導体、可塑性および抗菌特性に対して疎水性グリコール誘導体、または可塑性および粘着性の減少に対して疎水性フェニル含有ポリシロキサンなどを含む。
【0015】
好ましい実施形態において、ポリマーは、少なくとも一つのモノマーアミドおよび少なくとも一つのモノマーシロキシシランを含む。弾性、柔軟性、接着性、親水性または疎水性等の係数を増加又は減少させることが望まれる場合、第三のモノマー成分も含まれることがある。揮発性の疎水性液は、好ましくは、低分子量の揮発性の直鎖状または環状のシロキサンである。
【0016】
表面温度が平均30−37℃である使用者の皮膚、爪、または粘膜に塗布された場合、液体材料は、適用温度(−20〜70℃)の範囲で作用可能で、数秒でフィルムを形成し、フィルムが優れた絆創膏であることが、本発明の特徴である。調整された水に不溶な被覆剤は、適合可能であり、快適で、かつ弾性があり柔軟である。
【0017】
本発明の水に不溶な被覆剤は熱応答性であることもできる。本明細書において用いられるように、ポリマー被覆剤は、被覆剤の任意の性質が被覆剤の温度に依存する場合に「熱応答性」である。例えば、熱応答性被覆剤の液体吸収性との関係は、被覆剤の温度に対して逆比例する。同様に、例えば長さと幅といった被覆剤の面積との関係も、被覆剤の温度に対して逆比例する。被覆剤は一般的に水和度が上昇すると広がるため、被覆剤および被覆剤の面積の液体吸収性、または水和レベルは互いに比例する場合もある。
【0018】
本発明の被覆剤の表面への最初の接着は、おそらく表面エネルギーが低いことから、ポリマーの疎水性シロキシ含有成分の流れから生じ、ポリマーの親水性成分からの水素結合と同時に生じる。被覆材料の接着および粘着は、湿った表面への曝露と溶媒系の溶媒の蒸発とが相まって、ポリマーの親水性成分の相分離によって更に強化されるものと考えられる。このことは、親水性モノマー成分が体温で、あるいは体温近くで熱応答性であるポリマーに由来する場合に特に関連する。その後の水分への曝露は、おそらくは相分離した親水基の集合によって引き起こされる表面とのフィルムの相互作用の引き締めによって、一般的に水に不溶なフィルムの表面への接着性を増大させる。
【0019】
液状のポリマー含有被覆材料もその後に形成されるフィルムも、塗布中、および乾燥後の使用中に皮膚および粘膜を刺激しない。絆創膏は実質的に痛みが無く、もし望まれるなら、実質的に痛み無しに容易に取り除くことができる。形成された乾燥した絆創膏は、終始、水蒸気および酸素の高い透過性を有する。水で湿った、または血液または体液で湿った表面上に塗布される場合、絆創膏は固い接着性フィルムを形成する。存在する湿り気がポリマー被覆剤を通じて拡散し、表面に対する被覆剤の接着を増大すると考えられる。
【0020】
液体成分および乾燥したポリマーフィルム、もしくは、液体成分または乾燥したポリマーフィルムは、滅菌性を維持するために、下にある表面へ薬剤を放出するために、および/またはフィルムの電気的特性を調節するために組み込まれる、様々な薬剤またはその他の薬剤を有する場合もある。例えば、抗生剤、抗感染症薬、外傷治療薬、消毒剤、抗そう痒剤、外皮用剤、ステロイド、禁煙薬、避妊薬、電子伝達剤、または同様の材料が被覆剤に組み込まれる場合もある。
【0021】
別の好ましい実施形態では、揮発性で非極性の液体に組み込まれた場合に、ポリマーは、迅速に乾燥、接着する柔軟で呼吸可能な、水に不溶で水蒸気透過性な酸素透過性のヒリヒリする痛みのない液状接着性被覆剤または絆創膏を提供する。
【0022】
別の好ましい実施形態では、揮発性で非極性の液体に組み込まれる場合、両親媒性ポリマーは粘性の減少とポリマー濃度の増大を提供する。表面や外傷、または損傷した皮膚、組織、粘膜表面上を容易に流れる厚いポリマー被覆剤が必要とされる場合、これは有利である。
【0023】
別の好ましい実施形態では、被覆剤が損傷または炎症を起こした皮膚または組織に塗布された場合に痛みおよび炎症を軽減することを条件にする。
別の好ましい実施形態では、被覆剤は細胞接着および細胞遊走のための適切な基質であることを条件にする。
【0024】
別の好ましい実施形態では、液状接着性被覆剤は標的となる部分に次第に放出される治療分子またはその他の活性物質を含む。
別の好ましい実施形態では、被覆剤は乾燥した表面、湿った表面、および乾燥した部分と湿った部分の両方を有する表面に接着する。
【0025】
別の好ましい実施形態では、被覆剤は外部水、石鹸、界面活性剤、および大部分のスキンケア製品に曝された際に表面に接着したまま残ることを条件にする。
別の好ましい実施形態では、被覆剤は様々な外部の湿度と温度に曝された際に表面に接着したまま残ることを条件にする。
【0026】
別の好ましい実施形態では、被覆剤は屈曲ストレス下で接着することを条件にする。
別の好ましい実施形態では、被覆剤は皮膚または粘膜の外傷または切開への更なる微生物または粒子状物質汚染を防ぐことを条件にする。
【0027】
別の好ましい実施形態では、透明または半透明の被覆剤が、外傷の観察のために、並びに美容上の魅力のために、汚れを引き付けずに、または保持せずに無色透明のままでいられることを条件にする。
【0028】
別の好ましい実施形態では、被覆剤は塗布された際に擦過部分からの体液損失を制御することを条件にする。
標的とされる部分に放出するために薬剤またはその他の活性薬剤が組み込むことのできるポリマーフィルムを提供することが、本発明の更なる目的である。
【0029】
水蒸気透過性である被覆剤を提供することが、本発明の更なる目的である。
酸素透過性である被覆剤を提供することが、本発明の更なる目的である。
表面への塗布後に外的な溶媒またはその他の除去方法を適用する必要なしに、時間とともに次第にその表面から剥離する被覆剤を提供することが、本発明の更なる目的である。
【0030】
細胞増殖の効果がある被覆剤を提供することが、本発明の更なる目的である。
本発明のその他の様態は、以下で述べられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の両親媒性ポリマーは、好ましくは、揮発性の疎水性溶媒から流し込まれた場合に水に不溶で水蒸気透過性である両親媒性ポリマーを調整するために、付加重合可能なアミド、イミド、ラクタム、およびアミン、もしくは付加重合可能なアミド、イミド、ラクタム、またはアミンなどの親水性の窒素含有モノマーを疎水性アルキルシロキシシランモノマーと共重合されたポリマーの共成分、三成分、または複数成分として含む。
【0032】
両親媒性ポリマーに含まれる可能性がある典型的な重合可能な親水性アミド、イミド、ラクタム、またはアミンは、
アクリルアミド、
N−メチルアクリルアミド、
N−エチルアクリルアミド、
N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、
N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、
N,N−ジエチルアクリルアミド、
N,N−ジメチルアクリルアミド、
N,N−ジメチルメタクリルアミド、
ジアセトンアクリルアミド、
N−ビニルピロリドン、
N−ビニルカプロラクタム、
N−ビニルホルムアミド、
N−ビニル−N−メチルホルムアミド、
N−ビニルアセトアミド、
2−アセトアミドアクリル酸、
2−アクリルアミドグリコール酸、
2−アクリルアミド−2−メチル−l−プロパンスルホン酸、およびその塩
(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、
4−アクリロイルモルホリン、
[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]ジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、
[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド、
マレイミド、
N−メチルマレイミド、
N−(2、3−ジヒドロキシプロピル)マレイミド、
N−ビニルスクシンイミド、
N−ビニルジアセトアミド、
ε−アクリロイルリジン、
N−アクリロイルウラシル、
N−アクリロイルチミン、
N−アクリロイルアデニン、
N−アクリロイルグアニン、
N−アクリロイルウレア、
N−アクリロイルグアニジン、
N−アクリルグルコサミン、
N−アリルピロリドン、
N−アリルアセトアミド、
N,N−ジアリルウレア、
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、
N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、
N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、
N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、
N,N−ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、
ビニルベンジル−N,N−ジメチルアミン、
メタアクリロイルオキシエチルアミン、
N−ビニルイミダゾール、
4(5)−ビニルイミダゾール、
4−ビニルピリジン、
2−ビニルピリジン、
2−メチル−5−ビニルピリジン、
ビニルトリアジン、
4−アミノスチレン
などを含むが、これらに限定されない。
【0033】
本発明において有用で重合可能な親水性アミドモノマー成分は、重合可能な親水性アクリルアミドモノマーを含む。両親媒性ポリマーに含まれる可能性がある典型的な重合可能な親水性アクリルアミドモノマーは、以下の化学式を有する場合があるビニル含有アミドを含む:

CH=C(R)CONR

式中、R=H、CH、またはCHCOOR’であり、
式中、R’=H、金属塩、ヒドロキシアルキル、エトキシアルキル、C−C12アルキル、アリール、またはフルオルアルキルであり、
式中、Rおよび/またはR3=H、アルキル(C−C)、シクロアルキル、アミノ糖、アミノ酸、核酸塩基、尿素誘導体、アルキルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸、アルキルカルボン酸、アリール、アルキルアリール、またはフルオロアルキル基である。好ましいアミドは、N−イソプロピルアクリルアミドおよびN,N−ジメチルアクリルアミドを含む。
【0034】
好ましい重合可能なイミドは、マレイミド、ならびにN−メチルマレイミドおよびN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)マレイミドといったマレイミドの水溶性誘導体を含む。また、生体求核基によるヒドロキシスクシンイミド基の置換を通じて被覆ポリマーが生体表面に物理的に結合することができる、3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシサクシイミドエステルなどの反応性マレイミド誘導体が用いられる場合もある。
【0035】
好ましい重合可能なラクタムは、N−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタムを含む。
好ましい重合可能なアミンは、NN−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよび3−または4−ビニルベンジル−N,N−ジメチルアミンを含む。
【0036】
両親媒性ポリマーは、水性環境中で熱応答性である場合がある。当該の両親媒性ポリマーは、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルカプロラクタムなどを含む親水性モノマーに由来する場合がある。当該のモノマーは、これらのモノマーは皮膚または粘膜組織などの湿った暖かい(>30℃)表面への被覆材料の接着性の増大をもたらすため、本発明において特に好ましい。接着性の増大は、皮膜が室温からより高い被覆剤が接着する表面の温度に加熱されるために生じる熱応答作用によるものである場合がある。例えば、ポリマー鎖が収縮し、ポリマーの水素結合の特性が増大する場合がある。被覆材料のこの熱応答性挙動に好ましい親水性モノマーは、N−イソプロピルアクリルアミドである。
【0037】
本発明に有用な重合可能な疎水性シロキシ含有モノマー成分は、水蒸気および酸素透過性である可能性がある重合可能な疎水性シロキシシランを含む。親水性窒素含有モノマーと共重合体、ターポリマー、またはマルチポリマーを形成するよう反応することができる重合可能な疎水性シロキシシロキサンは、
3−メタアクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)、
3−メタアクリロイルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、
3−メタアクリロイルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、
3−メタアクリロイルオキシプロピルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、
3−メタアクリロイルオキシメチルビス(トリメチルシロキシ)(ペンタメチルジシロキサニル)シラン、
3−メタアクリロイルオキシエチルトリス(ペンタメチルジシロキサニル)シラン、
メタアクリロイルオキシメチルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、
メタアクリロイルオキシメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−メタアクリロイルオキシプロピルヘプタシクロペンチル−T8−シルセスキオキサン、
3−メタアクリロイルオキシプロピルヘプタイソブチル−T8−シルセスキオキサン、
3−アクリロイルオキシプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−アクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−メタアクリロイルオキシプロピル−1,1,1−トリフェニル−3,3−ジメチルジシロキサン、
メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリルメタクリレート、
トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリルメタクリレート、
3−メタクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−アクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
p−ビニルフェニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
p−ビニルベンジルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニロキシエチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルノニルジメチル(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルノニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルペンタメチルジシロキサン、
O−(ビニロキシエチル)−N−(トリス[トリメチルシロキシ]シリルプロピル)ウレタン、
ビニルフェニルビス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、
ビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、
ポリジメチルシロキサンモノアクリレート、
ポリジメチルシロキサンモノメタクリレート、
ポリメチルフェニルシロキサンモノアクリレート、
ポリメチルフェニルシロキサンモノメタクリレート、および
3−アクリロイルオキシプロピルトリス(ポリジメチルシロキサニル)シランなどを含むが、それに限定されない。
【0038】
これらのシロキシシランモノマーは、好ましい非極性のヒリヒリする痛みのない溶媒系に可溶性をもたらす可能性がある。好ましいシロキシシランモノマーは、重合可能なアルキルシロキシシラン、アリールシロキシシランおよびアルキルアリールシロキシシランを含む。好ましい重合可能なシロキシシランモノマーは、3−メタアクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)である。
【0039】
多くのシロキシシランモノマーも低濃度のシロキシシラン架橋剤を含む場合があることに留意する必要がある。これらの架橋剤は、重合可能な基が二量体またはそれ以上である可能性がある。例えば、TRISモノマーは、しばしば被覆ポリマーの強度を増す可能性があるl,3−ビス(3−メタアクリロイルオキシプロピル)−l,1,3,3−テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサンの二量体を含む。シロキシシランモノマー架橋剤を含むシロキシシランモノマーの組み合わせは、結果として生じるポリマーの溶解性が揮発性の疎水性溶媒中で損なわれないことを条件に、本発明で用いられる場合もある。疎水性シロキシ含有モノマーがTRISである場合、二量体含量は、好ましくは、TRISの1.0重量%未満であり、より好ましくは、0.5−0.8重量%の間であり、最も好ましくは、0−0.15重量%の間である。
【0040】
その他の付加重合可能なモノマーも、接着性、粘着性、弾性、柔軟性、靱性、透明性、不透明性、色、蛍光性、紫外線吸収性、増加または減少された屈折率、酸素透過性、酸素溶解性、およびそれらの組み合わせを変化させるため、本発明のポリマーに組み込まれる場合がある。これらのその他のモノマーの例は、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−ラウリルメタクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソボミルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ジメチルイタコネート、ジ−n−ブチルイタコネート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、2−ペンチルアクリレート、2−ペンチルメタクリレート、3−ペンチルアクリレート、3−ペンチルメタクリレート、2−メチル−l−ブチルアクリレート、2−メチル−l−ブチルメタクリレート、1−メチル−1−ブチルアクリレート、1−メチル−1−ブチルメタクリレート、1−メチル−1−ペンチルアクリレート、1−メチル−1−ペンチルメタクリレート、2−メチル−l−ペンチルアクリレート、2−メチル−l−ペンチルメタクリレート、3−メチル−l−ペンチルアクリレート、3−メチル−l−ペンチルメタクリレート、2−エチル−1−ブチルアクリレート、2−エチル−1−ブチルメタクリレート、2−エチル−l−ヘキシルアクリレート、2−エチル−l−ヘキシルメタクリレート、3,5,5−トリメチル−l−ヘキシルアクリレート、3,5,5−トリメチル−l−ヘキシルメタクリレート、3−ヘプチルアクリレート、3−ヘプチルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、アルファ−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、4−メトキシスチレン、n−オクタデシルアクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、n−トリデシルメタクリレート、ビニル安息香酸、ビニルナフタレンなどを含む。更に、フッ素化シロキサン、フッ素化イタコネート、フッ素化メタクリレート、またはヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートなどのフッ素化アクリレートを用いることもできる。更に、ブタジエンまたはイソプレンなどのジエン、およびそれらのオリゴマー、誘導体または非誘導体を用いることもできる。また、両親媒性ポリマー中に存在する親水性アミド、イミド、ラクタム、またはアミンモノマーの10モル%未満の量のアクリル酸またはメタクリル酸などの粘膜付着性の親水性モノマーを加えることもできる。
【0041】
モノマー混合物の両親媒性の性質から、結果として生じる共重合体が表面に塗布された時に好ましい酸素透過性および水蒸気透過性、好ましい接着性および好ましい粘着性を示し、結果として生じる被覆剤が水への不溶性を維持するかぎり、任意の疎水性または親水性の重合可能なモノマーを用いることができる。TRISおよびアクリルアミドの両親媒性共重合体が報告されているが(Polymer、2004年、第45巻、No.2、337〜344ページを参照)、結果として生じるポリマーは上記で説明した好ましい性質を示さなかった。
【0042】
本発明のポリマーは、成分が被覆剤に水和された表面および水和されていない表面に対する接着性を与える、約15−58モル%の間の親水性窒素含有アミド、イミド、ラクタムモノマー、またはアミンモノマーを含む。約30−70モル%の範囲のポリマー中の親水性モノマーが本発明のポリマーにおいては好ましい。疎水性シロキシシロキサン付加重合可能なモノマーは、約15−85モル%の間のポリマー組成を調整することができる。これらの親水性モノマーおよび疎水性モノマーの組成比率は、望ましい透湿性および酸素透過性、ならびに揮発性液体疎水性液体中のポリマーの望ましい親和性を維持する。親和性モノマーおよび疎水性モノマー成分のパーセンテージの範囲は、接着性、靱性、弾性、温度応答性、水への不溶性、および衝撃抵抗性を含むが、これらに限定されない、フィルムの特性の調節を可能にする。好ましい窒素含有モノマーは、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)であり、好ましいシロキシ含有モノマーは、3−メタアクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)である。
【0043】
他の疎水性モノマーがポリマー中に約30モル%までの任意の量で存在する場合もある。他の親和性モノマーが約10モル%未満の量で存在する場合もある。
これらが揮発性の疎水性溶媒に可溶である限り、両親媒性ポリマーは直鎖、分岐、または若干架橋されていても良く、共重合体、ターポリマー、マルチポリマーであってもよい。両親媒性ポリマーは、事実上、ランダムな共重合体、またはブロック共重合体のような事実上、断片であっても良い。ポリマーの構造も、星形ポリマー、分岐ポリマー、高分岐ポリマー、グラフトまたはデンドリマーであってもよい。両親媒性ポリマーは、フリーラジカル開始剤または光開始剤を用いるフリーラジカル重合化によって調製することもできる。ブロック共重合体は、現在用いられているフリーラジカル技術、または場合によっては、現在用いられているイオン技術によって調製することもできる。
【0044】
ビニル含有アミド成分は熱応答性であってもよく、従って、アミド成分の下方臨界溶解温度(LCST)以上の水和された表面にさらされてポリマーのビニル含有アミド成分の相分離が可能になる。この相分離は、塗布された表面に対する強化された接着性をもたらし、乾燥したポリマーフィルムの強化された粘着性をもたらす。例えば、N−イソプロピルアクリルアミドのポリマーは、水中で32℃〜35℃の間のLCSTを有し、この性質によってこのモノマーは、ヒトの皮膚または粘膜組織に塗布された際にポリマーの形で水を放出し、凝集し、ドメインを形成する優れた候補になっている。この凝集は、ポリマーフィルムの空隙容量に寄与し、従って、酸素および水蒸気の透過性が上昇すると同時に、ポリマーフィルムの粘着性強化をもたらす。
【0045】
好ましくは、本発明のポリマーは、親水性窒素含有誘導体であるモノマー成分および疎水性シロキシシロキサン誘導体であるモノマー成分を有する付加重合可能な共重合体である。好ましい親水性窒素含有モノマーは、N−イソプロピルアクリルアミドであり、N−イソプロピルアクリルアミド(NTPAM)を伴うN−ビニルピロリドンが最も好ましい。好ましい疎水性シロキシシロキサンモノマーは、3−メタアクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)である。
【0046】
任意で、第三のモノマーが親水性窒素含有モノマーおよび疎水性シロキシシランモノマーに含まれる場合もある。第三のモノマーは、表面に流し込んだ際により耐久性のあるフィルムを生じる疎水性モノマー成分、粘膜接着性特性を有する親水性モノマー、またはその両方である場合がある。耐久性がある親水性モノマーは、ベンジルメタクリレートおよび2−フェニルアクリレートを含み、粘膜接着性の親水性モノマーは、メタクリル酸およびアクリル酸を含む。
【0047】
更に、選択的に接着性促進剤が揮発性溶媒と混合された被覆剤ポリマーに添加される場合もある。接着性促進剤は、一般的にポリマー系のクリープ(流動)および粘着性(粘性)を増加させることによって機能する。好ましくは、本発明の被覆剤は、低粘着性を示す。
【0048】
驚くべきことに、食品添加物のスクロースアセテートイソブチレート(SAIB)およびフェニル含有ポリシロキサンの低分子量液状ポリマー(ダウ・コーニング(登録商標)556 コズメティック・グレード・フルード、フェニルトリメチコーン)といった疎水性のエステル化サッカリド誘導体が、粘着性を上昇させずに靱性および接着性を増大させることが見出されている。更に、オクトキシグリセリンとも呼ばれる2−エチルヘキシルグリセリン(センシバ(登録商標)SC50、シュルケ&マイル社、ロッカウェー、ニュージャージ)は、可塑化および接着性に更に寄与するが、抗菌剤としても機能する(特許文献7参照)。好ましくは、組成は、0.6重量%のSAIBまたは2重量%のダウ・コーニング 556(登録商標)を含み、残りが揮発性溶媒であって、好ましくは、ヘキサメチルジシロキサンまたはHMDSである、3/1の重量比率でTRIS/NIPAMを含む10重量%のポリマーである。接着性向上のために最も好ましい処方は、ダウ・コーニング 556(登録商標)を含む。
【0049】
ポリマー被覆剤に抗菌特性が望ましい場合には、銀および銀塩といった薬剤、ならびにクロルヘキシジン、アレキシジン、またはポリ(ヘキサメチレンビグアニド)といったビグアニド、ならびにネオマイシン、ポリミキシンB、およびバシトラシンといった局所の抗生物質が揮発性溶媒中の被覆ポリマーに添加される場合もある。揮発性の疎水性溶媒の蒸発後、ポリマー被覆剤は、封入された抗菌剤、または生体表面に放出される抗生剤を含む。
【0050】
重合されると、ビニルアルキルシロキシシロキサンモノマーは、揮発性の疎水性液体中で望ましいポリマー融和性をもたらし、水蒸気および酸素に対する高い透過性をもたらす。本発明において有用である可能性があるビニルアルキルシロキシシランモノマーは、以下の化学式を有する場合がある:

CH=C(R)COORSiRまたはCH=C(R)CON(H)RSiR

式中、R=H、CH、またはCHCOOR’であり、
式中、R=H、アルキレン(Ci−C)または−CHCH(OH)CH−、−(CHCHOCHCH−)であって、式中、x=1−10、またはアリーレン、またはこれらの組み合わせであり、
式中、R=OSi(Y)、またはアルキル(C−C)であり、
式中、Y=アルキル(Ci−C)、またはOSi(Z)であり、
式中、Z=アルキル(Ci−C)、アリールであり、および
式中、R’=RSiRである。
【0051】
他の重合可能な第三のモノマー成分は、イソオクチルアクリレートなどの任意の疎水性アクリレート;n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、および2−フェニルエチルメタクリレートなどのメタクリレート;N−オクチルアクリルアミドなどのアクリルアミド;ジエチルイタコネートおよびジエチルフマレートなどの不飽和ジカルボン酸のジエステル;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどのビニルニトリル;ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、およびビニルラウレートなどのビニルエステル;ブトキシエチレン、プロポキシエチレン、およびオクチルオキシエチレンなどのビニルエステル;ビニルハロゲン化物;ブタジエンおよびイソプレンなどのジエン;ならびにスチレン、アルファ−メチルスチレン、およびビニルトルエンなどの芳香環含有モノマーを含む場合もある。好ましい第三のモノマーは、ベンジルメタクリレートである。この第三の疎水性モノマーの重要な寄与は、向上した耐久性、特に、長期間にわたる被覆剤の表面への接着を可能にする望ましい特性を与えること、および長期間の表面保護をもたらすことである。その他の付加重合可能な成分は、アクリル酸またはメタクリル酸などの親水性粘膜接着性モノマーを含む場合もある。
【0052】
第三のモノマーを含む発明の両親媒性ポリマーは、ポリマーのモル分数比がフィルムの水への不溶性、乾燥表面および湿った表面への接着、柔軟性、透湿性、酸素透過性を至適化するために調節可能であることから、特に有利である場合があることが見出されている。非極性溶媒に可溶であるモノマーを高いモル比率で含む両親媒性ポリマーは、組成が溶媒中のポリマーの濃度をより高くすることが可能であるため、より厚い被覆剤用に好ましい。
【0053】
好ましい選択肢として、本発明のポリマーは、約30−70モル%の親水性アミド、イミド、ラクタム、またはアミンモノマー、約30−70モル%のアルキルシロキシシロキサンモノマー、約0−20モル%の第三の疎水性モノマー、または約0−10モル%の親水性粘膜接着性モノマーを含む。好ましい実施形態において、両親媒性ポリマーは、約35−55モル%のN−イソプロピルアクリルアミド、約45−65モル%の3−メタアクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、および約0−20モル%のベンジルメタクリレートを含む。本発明のポリマーのためのモノマーの選択における一つの変形は、モノマーの各カテゴリー内で一つ以上のモノマーを用いることである。例えば、ポリマーは、30%のN−イソプロピルアクリルアミド、25%のジメチルアクリルアミド、および45%の3−メタアクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランを含むことができる。始めの二つのモノマーは、それぞれ窒素含有親水性モノマー成分の定義を満たし、この成分の望ましい量を共に提供する。
【0054】
ポリマーの形成において、アゾビスイソブチロニトリル;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル);2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル);過硫酸カリウム;過硫酸アンモニウム;過酸化ベンゾイル;2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサンなどを含む任意のフリーラジカル開始剤をポリマーの形成に用いることもできる。Darocure1173などの光開始剤も重合化を達成するために用いることができる。重合は、溶液、乳液、バルク、懸濁液、または現在用いられているフリーラジカル技術によって行うことができる。特に現在用いられているフリーラジカル重合は、ブロック共重合体を特殊な要件に合わせて作成するために用いることができる。
【0055】
本発明のポリマーは、好ましくは約6.0−8.0(cal/cm)1/2の溶解性パラメーターを有する揮発性で疎水性の液体を含む溶媒系に組み込まれる。溶媒系は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなど;2,2,4−トリメチルペンタン(イソオクタン)、オクタン、ネオペンタンなどの揮発性アルカン;ペンタフルオロプロパン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロメチルシクロヘキサンなどの揮発性フッ化炭素;もしくは、液体二酸化炭素または超臨界二酸化炭素を含むがそれに限定されない揮発性の液体シリコーンを含む場合がある。シロキシベースのポリマーは、液体二酸化炭素または超臨界二酸化炭素に高い溶解性を示した。被覆ポリマーのための好ましい溶媒系は、ヘキサメチルジシロキサンである。
【0056】
驚くべきことに、約30−70モル%の親水性モノマーを含む発明の両親媒性ポリマーは、本発明の疎水性溶媒系に可溶である。単独または組み合わせでの、液状被覆剤の主要液相としてのこれらの疎水性溶媒系の使用は、迅速な乾燥と粘性または粘着性の少なさを乾燥中にもたらす。更に、例えば薬剤、抗生物質、ステロイド、抗菌剤、抗感染症薬、抗炎症剤、抗掻痒剤、細胞増殖因子、またはその他の活性医薬品などの活性物質が、多様な親水性/疎水性組成によってより迅速に溶媒/ポリマー系に組み込まれる可能性がある。
【0057】
約8〜10(cal/cm)1/2の間の溶解性パラメーターを有する優れた溶媒を含む液体から流し込まれる本発明のポリマーフィルムは機能するが、一般的に乾燥が遅く、長期間にわたって粘着性のままである。更に、エタノール、95%エタノール、イソプロパノール、N−メチルピロリドン、プロピレングリコール、またはグリセリンなどの極性溶媒が、ポリマーの鎖伸長のため、またはその他の物質の組み込みをもたらすために溶媒系に添加される場合もある。
【0058】
可塑化、接着性の向上、またはレオロジーの制御などのためにその他の物質が液体材料に添加される場合もある。典型的な可塑剤/接着性促進剤は、ジブチルフタレート、クエン酸アセチルトリブチル、スクロースアセテートイソブチレート、スクロース安息香酸、クエン酸アセチルトリエチル、ミネラルオイル、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン;フェニルトリメチコーン、グリコール酸ブチルなどのフェニル含有ポリシロキサンなどを含むがこれらに限定されない。液体材料または製剤に添加される場合がある典型的なレオロジー添加剤は、ヒュームド・シリカ、ベントナイト、その他の粘土誘導体、および水酸化リシノール酸などの飽和脂肪酸である。
【0059】
薬剤
薬剤が、本発明は様々な極性および非極性薬剤の組み込みを可能にする親水性および疎水性液状接着性材料成分を提供するため、また、本発明は長持ちし、高い透過性を有するため、迅速な、または継続的に放出するために液体または固体フィルム包帯剤に組み込まれる場合がある。当該薬剤は、溶媒系に可溶または不溶である場合がある。有用な薬剤の例は、抗真菌剤、抗原虫薬、抗細菌剤、抗感染症剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、避妊薬、禁煙薬、血圧および心臓調節剤、ステロイド、組織増殖促進剤など更に多数である。
【0060】
本明細書に述べられた被覆材料に含まれる可能性がある抗生物質の代表的な例は、ペニシリン;セファドロキシル、セファゾリン、セファクロールなどのセファロスポリン系抗生物質;ゲンタマイシン、およびトブラマイシンなどのアミノグリコシド系抗生物質;スルファメトキサゾールなどのサルファ剤;およびメトロニダゾールを含むが、それらに限定されない。抗炎症剤の代表的な例は、プレドニゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、副腎皮質刺激ホルモン、およびスルファサラジンなどのステロイド;およびアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、インドメタシン、およびフェニルブタゾンなどの非ステロイド性抗炎症薬(「NSAEDS」)を含む。抗ウイルス剤の代表的な例は、アシクロビル、ガンシクロビル、ジドブジンを含む。抗真菌剤の代表的な例は、ナイスタチン、ケトコナゾール、グリセオフルビン、フルシトシン、ミコナゾール、クロトリマゾールを含む。抗原虫剤の代表的な例は、ペンタミジンイセチオネート、キニーネ、クロロキン、およびメフロキンを含む。抗感染症剤の代表的な例は、銀および銀塩、クロルヘキシジン、アレキシジン、およびポリ(ヘキサメチレンビグアニド)を含む。
【0061】
新組織の生成、新組織の接着、細胞遊走、血管新生などを促進するために、組織増殖促進剤が本発明の液体または両親媒性ポリマーに組み込まれる可能性がある。例えば、本発明の液体または固体フィルム絆創膏に組み込まれた上皮細胞増殖因子、アンジオポイエチン1、線維芽細胞増殖因子(bFGF)、形質転換成長因子(TGF)−α、TGF−βなどのサイトカインが、外傷部位の再増殖を促進することができる。
【0062】
例えば、抗浸潤因子、レチノイン酸およびその誘導体、アナログおよび誘導体を含むパクリタキセル、スラミン、メタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤、メタロプロテイナーゼ2の組織阻害剤、1型プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、2型プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、およびより軽い「dグループ」遷移金属などの幅広い種類の分子を本発明の範囲内で用いることもできる。同様に、幅広い種類のポリマーキャリアが使用される可能性があり、代表的な例は、ポリ(エチレンビニル酢酸)(40%架橋)、ポリ(D,L−乳酸)オリゴマーおよびポリマー、ポリ(L−乳酸)オリゴマーおよびポリマー、ポリ(グリコール酸)、乳酸およびグリコール酸の共重合体、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(バレロラクトン)、ポリ無水物、ポリ(カプロラクトン)またはポリ(乳酸)のポリ(エチレングリコール)との共重合体およびそれらの混合物を含む。レチノイン酸ならびにその誘導体も、本発明の文脈内において使用することができる。
【0063】
パクリタキセル(本明細書において、例えば、TAXOL(商標)、TAXOTERE(商標)、10−デスアセチル、および3’N−デスベンゾイル−3’N−t−ブトキシカルボニルアナログなどのパクリタキセルアナログおよび誘導体を含むことを理解いただく必要がある)は、高度に誘導体化されたジテルペノイドであり、収穫され乾燥された西洋イチイ(太平洋イチイ)およびTaxomyces Andreanaeおよび太平洋イチイの内部寄生菌類から得られている。一般的に、パクリタキセルは、異常な紡錘体を形成するチューブリンに結合することによって微小管構造を安定化するよう作用する。
【0064】
スラミンは、典型的には抗トリパノソーマ剤として利用されるポリスルホン酸化ナフチル尿酸化合物である。つまり、スラミンは、血小板由来増殖因子(「PDGF」)、上皮細胞増殖因子(「EGF」)、形質転換増殖因子(「TGF−β」)、インスリン様増殖因子(「IGF−I」)、線維芽細胞増殖因子(「βFGF」)、などの様々な増殖因子の特定の細胞表面への結合を阻害する。
【0065】
幅広い種類の他の抗血管新生因子も、本発明の文脈内で用いることができる。代表的な例は、血小板因子4;硫酸プロタミン(クルペイン);硫酸化キチン誘導体(ズワイガニの甲羅から調製される);硫酸化多糖ペプチドグリカン複合体(SP−PG)(この複合体の機能は、エストロゲンおよびクエン酸タモキシフェンなどのステロイドの存在で強化される場合がある);スタウロスポリン;例えば、プロリンアナログ、L−アゼチジン−2−カルボン酸(LACA)、cis−ヒドロキシプロリン、D,L−3,4−デヒドロプロリン、チアプロリン、α,α−ジピリジル、β−アミノプロピオニトリルフマレートなどを含むマトリクス代謝のモジュレータ;MDL27032(4−プロピル−5−(4−ピリジニル)−2(3H)−オキサゾロン);メトトレキサート;ミトキサントロン;ヘパリン;インターフェロン;2マクログロブリン血清;ChIMP−3;キモスタチン;β−シクロデキストリンテトラデカサルフェート;エポネマイシン;カンプトセシン;フマギリン;金チオリンゴ酸ナトリウム(「GST」);D−ペニシラミン(「CDPT」);β−1−抗コラゲナーゼ血清;α2−抗プラスミン;ビサントレン;ロベンザリット二ナトリウム(N−(2)−カルボキシフェニル−4−クロロアントロニル酸二ナトリウムまたは「CCA」;サリドマイド;アンゴスタティックステロイド;AGM−1470;カルボキシアミノイミダゾール;BB94などのメタロプロテイナーゼ阻害剤を含む。
【0066】
本発明の組成は、例えば、α−アドレナリン遮断薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、および、ヒスタミン、セロトニンのエンドセリン受容体拮抗薬;ナトリウム/水素アンチポーター(例えば、アミロリドおよびその誘導体)の阻害剤;Lタイプチャンネル遮断薬(例えば、ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミル)またはTタイプチャンネル遮断薬(例えば、アミロリド)、カルモジュリン拮抗薬(例えば、H)、およびナトリウム/カルシウムアンチポーター阻害剤(例えば、アミロリド)といった細胞内Ca2+輸送を調節する薬剤;ap−1阻害剤(チロシンキナーゼ、プロテインキナーゼC、ミオシン軽鎖キナーゼ、Ca2+/カルモジュリンキナーゼII、カゼインキナーゼII);抗うつ剤(例えば、アミトリプチリン、フルオキセチン、ルボックス(商標)、およびパキシル(商標));サイトカインおよび/または増殖因子、並びにそのそれぞれの受容体(例えば、インターロイキン類、α−、β−、またはγ−IFN、GM−CSF、G−CSF、上皮細胞増殖因子、形質転換増殖因子α、およびβ、TNF、ならびに血管上皮増殖因子、内皮細胞増殖因子、酸性または塩基性線維芽細胞増殖因子、および血小板由来増殖因子の拮抗剤;IP3受容体の阻害剤(例えば、ヘパリン);プロテアーゼおよびコラゲナーゼ阻害剤(例えば、上述のTIMP);ニトロ系血管拡張薬(例えば、硝酸イソソルビド);抗分裂剤(例えば、コルヒチン、アントラサイクリンおよびその他の抗生物質、葉酸拮抗薬およびその他の抗代謝剤、ビンカ・アルカロイド、ニトロソウレア、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、プリン拮抗剤およびアナログ、ピリミジン拮抗剤およびアナログ、アルキルスルホン酸塩);免疫抑制薬(例えば、副腎皮質ステロイド、シクロスポリン);センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、核酸アナログ(例えば、ペプチド核酸)またはこれらの任意の組み合わせ);および転写因子活性の抑制剤(例えば、より軽いdグループ遷移金属)などの幅広い種類のその他の化合物も含む場合がある。
【0067】
組み込むのが望ましい可能性があるその他のタイプの活性物質は、香料、着臭剤、植物成長調整剤、植物殺虫剤、UVおよびIR吸収剤等を含む。
その他の使用と利点
本発明の液状被覆材料は、例えば、発疹、皮膚の傷口、擦り傷、褥瘡、切開および水膨れ、ツタウルシの炎症、蚊に刺されたあと、アトピー性皮膚炎、じんましん、乾燥してひび割れた皮膚、すり減った歯肉およびその他の口腔面、痔核および擦りむいた体の部分、炎症を起こした消化管、ならびにその他の粘膜の切開および外傷といった、皮膚、爪、および粘膜の保護または治療に有用である可能性がある。被覆材料は、乾燥した表面および湿った表面に特に有用であり、例えば、指関節、膝、肘などの高度な動きに曝される表面部位で特に有用である。
【0068】
液状絆創膏はヒリヒリする痛みがなく、露出された神経終末を即座に覆うため、痛みは直ちに軽減される。絆創膏は皮膚/粘膜表面に約10日間まで接着したまま残り、痛みを緩和し、損傷や更なる刺激なしに次第に持ち上がって剥がれる。損傷した皮膚および粘膜表面に対しては、液状絆創膏が無い場合と比較して治癒がより早く起こるようである。これは、フィルムの強化された酸素透過性および水蒸気を透過する能力、ならびに微生物汚染を防止する能力によるものである。
【0069】
本発明の被覆材料は弾性を有するため、指関節、膝、指、足指など、より柔軟な部分への接着性の向上をもたらす。本発明の一部の実施形態では、被覆材料は、破けずに50%以上伸長することができる。好ましい実施形態では、被覆材料は、破けずに100%以上伸長することができる。更に好ましい実施形態では、被覆材料は、破けずに200%以上伸長することができる。
【0070】
正常であり、擦りむけていない皮膚は、湿った部分で平均して200g/m/日の割合で水蒸気を失い、手のひらおよび足の裏は、平均で500g/m/日を呼吸する。本発明の液状接着材料は、保護フィルムの厚さ(0.0127−0.254mm(0.0005−0.010インチ))によって100−300g/m/日の水蒸気透過率を有し、従って、傷ついた部分の乾燥と体液の閉塞の両方を防ぐ。
【0071】
水蒸気透過率(MVTR)は、液状接着材料溶媒の蒸発の上に連続的なポリマーフィルムを形成するため、例えばメーソンジャーまたは10mLエレンマイヤーフラスコなどのガラス容器に入った脱イオン水上に液状接着材料のフィルムを流し込むことによって測定された。フィルムを通した水の損失は、4−7日の期間測定され、MVTRは、ポリマーフィルムの表面積と24時間あたりの水の損失に基づいて計算した。ポリマーフィルムの厚さもミル(0.0254mm単位(0.001インチ単位))で測定し記録された。
【0072】
本発明の液状被覆材料は、少なくとも二種類の細胞、ヒトの表皮角化細胞およびヒトの皮膚線維芽細胞の接着を支援する。5日間の細胞培養の増殖研究に基づき、I型コラーゲンと比較して、2倍〜20倍以上の角化細胞および線維芽細胞が本発明のポリマーに接着した。本発明の液状接着組成は、塗布された成分が外傷治癒において外傷上面を接着および遊走する表皮細胞の代用として機能することを前提としている。その他の身体の内部の損傷および手術部位は、治癒のために細胞接着および細胞遊走を支援するために本発明の液状接着被覆剤の応用から利益を得る可能性がある。
【0073】
別の応用においては、人体による機器受入のためにより良い細胞環境を提供するため、医療機器は、本発明の被覆材料を用いてコーティングされる可能性がある。この結果は、本発明の被覆材料が無害であり、細胞接着を支援し、比較的高いレベルの酸素を含むという事実から導かれる(特許文献1;Macromolecules 第32巻、7370〜7379ページ(1999年))。
【0074】
発明の被覆材料でコーティングされる可能性がある医療機器は、体に接着する医療機器、埋め込み型医療機器、ならびに埋め込み可能で、かつ体に接着する医療機器を含む。発明の被覆材料が応用される可能性がある埋め込み型医療機器の例は、ステント、カテーテル、人工関節および人工骨、埋め込み式ポンプ、心臓ペースメーカーを含むがそれらに限定されない。発明の被覆材料が応用される可能性がある体に接着する医療機器の例は、絆創膏、パッチ、ならびにヒドロゲル、ハイドロコロイド、泡、およびアルギン酸といった外傷の包帯剤を含むがそれらに限定されない。発明の被覆材料が応用される可能性がある埋め込み可能で、かつ体に接着する医療機器の例は、結腸瘻造設術、回腸造瘻術、コック式回腸瘻術、腸瘻造設術、および空腸造瘻術などの処置に使われる医療機器を含むが、それらに限定されない。
【0075】
本発明の液状接着被覆剤は、医療ボディケア以外の応用に用いることもできる。例えば、被覆剤は、膜として、または部分的な膜として、およびそのようなものとして用いられる可能性があり、伝導性の添加物または膜の有効性を強化するための他の添加物を含む場合がある。被覆剤は、非特許文献1で考察されたように、熱応答性であってもなくても触媒キャリアとして用いられる場合もある。防かび剤を組み込んだ被覆剤は、タイル表面のグラウトを保護するために用いられる可能性がある。被覆剤は、植物および花を乾燥から守るために、または病気から保護するために水蒸気透過性フィルムとして用いられる可能性もある。フィルムとして流し込んだ場合に、液状接着材料は、支持細胞の足場として用いられる可能性もある。更に、乾燥したフィルムは、フロントガラスまたはシュノーケルマスクなどといった表面上に形成される霧の防止に用いられる可能性がある。乾燥したフィルムは、水の吸収、膨潤、または透明度/不透明度をモニターすることによって、湿度および露のセンサーとして利用される可能性もある。また、液状接着被覆剤は、UV吸収剤の組み込みによって日焼け止めとしてより一層有用である。さらに他の使用は、ひび割れた唇の解消、皮膚および体内の表面の治療、および適用前に薬で治療される可能性がある皮膚およびその他の表面の保護を提供するための使用でのフィルム形成を含む。
【0076】
以下の例は、説明の手段として提供される物で、限定の手段として提供されるものではない。具体的な例が提供されてきたが、上記の説明は説明に役立つもので、限定を目的とするものではない。前述の実施形態の一又は一以上の任意の特徴は、本発明の他の任意の実施形態の一又は一以上の特徴と任意の方法で組み合わせることができる。更に、本明細書を見て、本発明の多くの変形が当業者らによって明らかになるだろう。従って、本発明の範囲は、上述の説明を参照して決定されるのではなく、添付の請求項の範囲の均等物の全体の範囲に沿って参照して決定されるべきである。
【0077】
本出願書において引用される全ての発行物および特許文書は、各別の発行物または特許文書がそれぞれ示されたかのようにあらゆる目的に適う同じ範囲で適切な部分を参照することによって組み込まれる。本文書中の様々な参考文献の引用によって、出願人は、特定の参考文献が発明を「先行技術」であるといずれも認めるものではない。
【0078】
以下の実施例は、実施例に関して制限せずに本発明を説明する役割を果たす。変形および変更が本発明の精神と範囲から逸脱することなく行うことができることは理解されるであろう。
【0079】
実施例1〜5は、温度応答性挙動の説明を含めて、シロキシシランモノマーおよびアミドモノマーの共重合を示す。
実施例1:ポリ[(3−メタアクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン−co−N−イソプロピルアクリルアミド]ポリ(TRIS/NIPAM)3/1重量比の調製
25mLの反応容器を、18gの酢酸エチル、1.5g(0.004mol)の3−メタアクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)、0.5g(0.004mol)のN−イソプロピルアクリルアミド、および0.039gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、63−66℃で6.5時間行った。反応液中のポリマーを水中に沈殿させ、アセトンに溶解し、再び水中に沈殿させ、濾過し、繰り返し洗浄し、室温(20℃)で乾燥した。ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)から流し込まれた精製されたポリマーのフィルム(0.0508〜0.06604mm(0.002〜0.0026インチ)厚)は、60g/m/24時間の水蒸気透過率(MVTR)を実現した。HMDSから流し込んだポリマーの風乾したフィルムは、20℃で重量の394%、30℃で127%の生理食塩水を吸収し、高温での温度応答性挙動を示した。ポリマーは、HMDS中に50重量%の濃度で溶解させることができた。HMDS中にポリマー10重量%で流し込まれたフィルム(10μL)は、3日間ヒト前腕皮膚上に無傷のまま残った。
【0080】
実施例2:ポリ(TRIS/NIPAM)2.5/1重量比の調製
25mLの反応容器を、18gの酢酸エチル、1.42g(0.003mol)のTRIS、0.57g(0.005mol)のNIPAM、および0.039gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、64〜71℃で10時間行った。反応液中のポリマーを水中に沈殿させ、アセトンに溶解し、再び水中に沈殿させ、濾過し、繰り返し洗浄し、室温(20℃)で乾燥した。HMDS中にポリマー10重量%で流し込まれたフィルム(10μL)は、10日間ヒト前腕皮膚上に無傷のまま残った。
【0081】
実施例3:ポリ(TRIS/NIPAM)1/1重量比の調製
25mLの反応容器を、18gの酢酸エチル、1.0g(0.002mol)のTRIS、1.0g(0.009mol)のNIPAM、および0.039gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、70〜73℃で6時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、アセトンに溶解し、再び水中に沈殿させ、濾過し、繰り返し洗浄し、室温(20℃)で乾燥した。酢酸エチルから流し込んだポリマーの風乾したフィルムは、20℃で重量の1,071%、30℃で367%の生理食塩水を吸収し、TRIS/NIPAM共重合体の高温での温度応答性挙動を示した。
【0082】
実施例4:ポリ(TRIS/NIPAM)1/3重量比の調製
25mLの反応容器を、18gの酢酸エチル、0.5g(0.001mol)のTRIS、1.5g(0.013mol)のNIPAM、および0.039gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、70〜73℃で6時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、アセトンに溶解し、再び水中に沈殿させ、濾過し、繰り返し洗浄し、室温(20℃)で乾燥した。酢酸エチルから流し込んだポリマーの風乾したフィルムは、20℃で重量の664%、30℃で501%の生理食塩水を吸収し、TRIS/NIPAM共重合体の高温での温度応答性挙動を更に明らかにした。
【0083】
実施例5:ポリ(TRIS/NIPAM)1/1重量比の調製
25mLの反応容器を、18gのHMDS、1.0g(0.002mol)のTRIS、1.0g(0.009mol)のNIPAM、および0.039gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、71〜72℃で17時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、室温(20℃)で乾燥した。HMDSから流し込まれたフィルムは、322g/m/24時間の水蒸気透過率を実現した。
【0084】
実施例6および実施例7は、シロキシシラン、アミド、および添加された疎水性モノマーの共重合を示す。
実施例6:ポリ(TRIS/NIPAM/トリデシルメタクリレート)3/1/0.2重量比の調製
25mLの反応容器を、12gの酢酸エチル、2.85g(0.007mol)のTRIS、0.95g(0.008mol)のNIPAM、0.21g(0.0008mol)のトリデシルメタクリレート、および0.078gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、76℃で17.5時間行った。ポリマーを脱イオン水中に沈殿させ、室温(20℃)で乾燥させ、アセトンに溶解して脱イオン水中に沈殿させた。精製したポリマーを50℃で加熱し、結合水を除去した。ポリマーをHMDSと混合し、フィルムを流し込んだところ、フィルムは10%伸長した。2重量%のスクロースアセテートイソブチレートをHMDS中のポリマー(10重量%)に添加したところ、流し込まれたフィルムは粘着性の上昇なしに250%以上伸長をした。
【0085】
実施例7:ポリ(TRIS/NIPAM/メチルメタクリレート)1.4/1/0.2重量比の調製
25mLの反応容器を、36gの酢酸エチル、2.15g(0.005mol)のTRIS、1.58g(0.016mol)のメチルメタクリレート、0.32g(0.003mol)のNIPAM、および0.078gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、61〜65℃で18時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、室温(20℃)で乾燥した。ポリマーはHMDSに可溶であった。
【0086】
実施例8〜10は、接着性促進可塑剤の添加を含む、疎水性溶媒中のシロキシシラン、アミドの共重合を示す。
実施例8:2,2,4−トリメチルペンタン中のポリ(TRIS/NIPAM)3/1重量比の調製
25mLの反応容器を、12gの2,2,4−トリメチルペンタン、3g(0.007mol)のTRIS、1g(0.009mol)のNIPAM、および0.082gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、69〜74℃で5時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、濾過し、アセトンに溶解して水中に沈殿させ、50℃で乾燥した。ポリマーには、10重量%でHMDSに部分的に可溶であり、肉眼で見えるゲル状の粒子が含まれていた。
【0087】
実施例9:ポリN−ビニルピロリドン(PVP)を含む実施例8のポリマー
精製された実施例8のポリマーを0.6gのポリN−ビイルピロリドン(PVP)を予め溶解した50℃の水で洗浄し、次いで濾過し、50℃で数時間乾燥した。その後、PVPを含むポリマー(10重量%)を肉眼で見える粒子を多く生じたヘキサメチルジシロキサンに添加した。
【0088】
実施例10:スクロースアセテートイソブチレートを含む実施例9のポリマー系
実施例9のPVPを含むポリマー(10重量%)を、2重量%のスクロースアセテートイソブチレート(SAIB)を含むヘキサメチルジシロキサンに添加した。混合液は青みがかっており、肉眼で見えるゲル状粒子をほとんど含まなかった。
【0089】
実施例11〜24は、添加接着性促進可塑剤を含むまたは含まない、シロキシシラン、アミド、および疎水性モノマーの共重合を示す。
実施例11:ポリ(TRIS/NIPAM/フェニルエチルアクリレート)3/1/0.1重量比の調製
25mLの反応容器を、11.86gのエチル酢酸、3g(0.007mol)のTRIS、1g(0.009mol)のNIPAM、0.14g(0.0008mol)の2−フェニルエチルアクリレートおよび0.082gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、69〜74℃で5時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、濾過し、アセトンに溶解して水中に沈殿させ、50℃で乾燥した。ポリマーは、10重量%でHMDSに適合性であった。
【0090】
実施例12:ポリ(TRIS/NIPAM/ベンジルメタクリレート)3/1/0.1重量比の調製
25mLの反応容器を、11.86gのエチル酢酸、3g(0.007mol)のTRIS、1g(0.009mol)のNIPAM、0.14g(0.0008mol)のベンジルメタクリレートおよび0.082gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、70〜78℃で6時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、濾過し、アセトンに溶解して水中に沈殿させ、50℃で乾燥した。ポリマーは、肉眼で見えるゲル状粒子が存在した状態で、10重量%でHMDSに適合性であった。
【0091】
実施例13−14:スクロースアセテートイソブチレート(SAIB)を含むおよび含まない、実施例12からのポリマーの比較
実施例の12のポリマーをHMDS中に10重量%として、2重量%のスクロースアセテートイソブチレート(SAIB)を含み(実施例14)、また、含まずに(実施例13)調製した。各標品を50μLずつ、5サンプルずつ重複させてスライドガラス上にピペットで置き乾燥させた。
【0092】
乾燥中、顕微鏡観察を行った。HMDS中のポリマーは約乾燥2分後から目立たない顕微的ドメインを生じ、乾燥20分まで数が増え続けた。それ以上のドメインの数量またはサイズの変化は3日間にわたって観察されなかった。SAIBを含むHMDS中のポリマーは、ガラス上に流し込んだ場合に小さな顕微的ドメインを乾燥35分後に直ちに生じ、乾燥したフィルムは肉眼で観て混濁していた。それ以上のドメインの数量またはサイズの変化は3日間にわたって観察されなかった。SAIBを含むポリマーフィルムの乾燥に際して形成されたドメインは、SAIBを含まないポリマーフィルムに形成された物よりサイズがより均一であった。
【0093】
ポリマーフィルムの風乾3日後、被覆されたスライドガラスを室温(約20℃)の生理食塩水浴中に置き、SAIBを含む、および含まないフィルムの生理食塩水吸収性を測定した。重複させた5サンプルの平均である結果を以下に示す。生理食塩水は吸収されなかったが、フィルムは生理食塩水に不溶なままであった点が注目された。
【0094】
【表1】

実施例15〜24:ポリ(TRIS/NIPAM/ベンジルメタクリレート)の調製と比較
実施例15〜24のポリマーはフリーラジカル重合によって、酢酸エチル中に25%の固形モノマーで2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)を開始剤として、反応液を67.5〜72℃に18.5時間保って行われた。用いたモノマーは、3−メタアクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、およびベンジルメタクリレート(BMA)であった。ポリマー産物は、室温の脱イオン水中に沈殿させて未反応のモノマーおよびオリゴマーを除去し、濾過し、アセトンに溶解し、室温の水に再沈殿させ、濾過し、50度の水で洗浄し、50℃で約6時間乾燥することによって精製した。
【0095】
試験溶液を調製するために、乾燥した固体ポリマーを固体の10%溶液を調整するようHMDSに溶解した。全体の溶液の2重量%でSAIBを添加した。ドメインの顕微的観察を乾燥約20分後に行った。
【0096】
粘着性は、スライドガラス上の乾燥したポリマーフィルムの上を人差し指で擦り、0〜5のスケール(0=滑りやすい、1=滑らか、2=やや抵抗があるが滑らか、3=抵抗がある、4=べたついて抵抗がある、5=べたつく)で評価することによって測定した。
【0097】
皮膚への接着は、10μLのポリマー溶液を予め青い食品用色素で覆ったヒトの前腕にピペットで置くことによって測定した。青い色素の様子でポリマーの接着の日数を決定した。試験を行った全てのフィルムは、少なくとも4日間は接着した。伸長テストは、3μLの各ポリマー溶液を1cm長の18cm×0.5cmのゴムバンドにピペットで置くことによって行った。15分間の乾燥後、ゴムバンドを手で引き延ばした。ポリマーが破損した点を最大伸展長として記録した。
【0098】
【表2】

実施例25は、シロキシシランモノマーのアミノモノマーとの共重合を示す。
【0099】
実施例25:ポリ(TRIS/N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)3/1重量比の調製
25mLの反応容器を、6.0gのエチル酢酸、1.5g(0.004mol)のTRIS、0.5g(0.006mol)のN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、および0.078gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、66〜76℃で16時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、濾過し、アセトンに溶解して水中に沈殿させ、50℃で乾燥した。ポリマーは、液中に10重量%でHMDSに適合性であった。ガラス上に流し込んだ場合、乾燥した透明なフィルムは二つのサイズ、0.05mm未満および約0.1mm、の中程度の数のドメインを有した。ヒトの前腕に流し込んだ場合、フィルムは粘着性がなく、3日間完全に接着し、6日間以上にわたって部分的に被覆し続けた。
【0100】
実施例26は、シロキシシランモノマーのラクタムモノマーとの共重合を示す。
実施例26:ポリ(TRIS/N−ビニルピロリドン)3/1重量比の調製
25mLの反応容器を、12.0gのエチル酢酸、3g(0.007mol)のTRIS、1g(0.009mol)のN−ビニルピロリドン(NVP)、および0.041gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、68〜72℃で17時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、濾過し、アセトンに溶解して水中に沈殿させ、50℃で乾燥した。ポリマーは、液中に10重量%でHMDSに溶解し、安定な懸濁液を生じた。ガラス上に流し込んだ場合、乾燥した不透明なフィルムは、0.01mm未満のサイズの多数のドメインを有した。ヒトの前腕に流し込んだ場合、フィルムは粘着性がなく、3日間完全に接着し、6日間以上接着した。
【0101】
実施例27〜31は可塑剤を含むおよび含まないシロキシシランモノマーのアミン、ラクタムおよびアミドとの更なる共重合を示す。
実施例27:ポリ(TRIS/N,N−ジメチルアクリルアミド)3/1重量比の調製
25mLの反応容器を、36.0gのエチル酢酸、3g(0.007mol)のTRIS、1g(0.010mol)のN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、および0.08gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、62〜66℃で20時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、濾過し、アセトンに溶解して水中に沈殿させ、20℃で乾燥した。ポリマーは、液中に10重量%でHMDSに溶解した。ガラス上に流し込んだ場合、乾燥した透明なフィルムは、中程度の数の丸い不均一な約0.05mmのサイズのドメインを有した。ヒトの前腕に流し込んだ場合、フィルムは粘着性がなく、6日間以上接着した。
【0102】
実施例28〜30:スクロースアセテートイソブチレートを含むおよび含まない実施例25〜27のポリマーの比較
実施例25−27のポリマーを固体10重量%でHMDSに溶解した。これらの溶液に、2重量%のスクロースアセテートイソブチレート(SAIB)を添加した。以下の結果は、実施例15〜24で定義された試験方法に基づいて得られたものである。
【0103】
更に、乾燥したフィルム中のドメインのサイズと数を判定するために、25μLの各ポリマー溶液をピペットで清潔なスライドガラス上に置いた。30分の乾燥後、ドメインのサイズを30倍の顕微鏡を用いてマイクロメーターで測定した。ドメインの数は、非常に少ない(VF)=乾燥したフィルム全体に5ドメイン未満、少ない(F)=6〜15ドメイン、中程度(M)=16〜50ドメイン、および多数(Mm)=乾燥したフィルム全体に50ドメイン以上、として記録した。顕微的ドメインが観察可能である時に、まだ接着が生じていたことに注目された。
【0104】
【表3】

実施例31:ポリ(TRIS/NIPAM)3/1重量比の重複調製
25mLの反応容器を、16.0gのエチル酢酸、3g(0.007mol)のTRIS、1g(0.009mol)のNIPAM、および0.08gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、68〜72℃で17時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、濾過し、アセトンに溶解して水中に沈殿させ、20℃で乾燥した。ポリマーは、液中に10重量%でHMDSに適合性であった。
【0105】
実施例32はNIPAMと共重合したシロキシシランモノマー由来の被覆剤の温度応答性挙動を更に示す。
実施例32:ポリ(TRIS/NIPAM)の温度応答特性
実施例31からのポリ(TRIS/NIPAM)(10重量%)およびSAIV(2重量%)をHMDSに溶解した。この処方をヒト前腕皮膚に塗布し、実施例15〜24で定義されたように接着についてテストを行った。次に、アセトンによる乾燥したポリマーフィルムの除去を、ポリマーフィルムをアセトンに浸したペーパータオルで擦ることによってテストした。室温条件(〜20℃)では、フィルムは3〜4回擦ると容易に剥がれた。しかし、暖かいシャワー/風呂後のポリマーフィルムの除去には、20回以上アセトンで擦る必要があり、従って、ポリ(TRIS−co−NIPAM)の収縮、より密接な皮膚への接着、およびより暖かい温度にさらすことによる水の排出を示している。
【0106】
実施例33〜37はNIPAMとのシロキシシランの共重合に添加された様々な補足剤の効果を説明する。
実施例33〜37:添加補足剤を含む実施例31のポリマーの比較
疎水性水素結合補足剤を、固体10重量%でHMDSに溶解した実施例31のポリマーに添加した。補足剤は、1重量%の濃度で添加した。これらの補足剤のうち少なくとも三つ、即ち、2−エチルヘキシルグリセリン、ビタミンE、およびリファンピシンに医療価値があることが知られている。ポリオキシエチレン-20-ソルビタンモノラウレートは、乳化剤および分配剤としてしばしば使われる。高分子量エステルの接着促進剤であるブチルオクチル牛脂脂肪酸は、ジャーケム・インダストリーズ・インコーポレイテッド社、Jarester I−1202から入手した。以下の結果が見いだされた。試験手法は、実施例15−24および実施例28−30で定義されている。
【0107】
【表4】

実施例38は揮発性の疎水性溶媒と混合された被覆剤を示す。
【0108】
実施例38:ペンタフルオロプロパンに溶解した実施例31のポリマー
実施例31のポリマーを固体10重量%でヘキサメチルジシロキサンおよびペンタフルオロプロパンの50/50混合溶媒と混合した。結果得られた溶液は、ガラス上に流し込んだ場合に透明であり、わずかな小さい(0.05〜0.10mm)ドメインを含む乾燥したポリマーフィルムが生成された(テストは実施例28〜30に定義されている)。この乾燥したフィルムの粘性は、2のレベルであった(試験は実施例15〜24に定義されている)。
【0109】
実施例39は混合されたアミドおよびラクタムモノマーとのシロキシシランモノマーの共重合を示す。
実施例39:ポリ(TRIS/N−イソプロピルアクリルアミド/N−ビニルピロリドン)(TRIS/NIPAM/NVP)6/1/1重量比の調製
25mLの反応容器を、12.41gのエチル酢酸、3.04g(0.007mol)のTRIS、0.51g(0.005mol)のNVP、0.51g(0.005mol)のNIPAM、および0.078gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、71℃で15時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、室温(20℃)で乾燥し、アセトンに溶解して脱イオン水中に沈殿させ、結合水を除くために50℃で乾燥した。ポリマー(10重量%)は、HMDSと混合した際に透明な液体を生じた。ヒトの前腕皮膚に塗布した場合、この被覆剤は8日間接着するフィルムを生じた。本実施例のポリマーの0.25mm(10ミル)厚のフィルムは、約180g/m/24時間の水蒸気透過率であった。
【0110】
実施例40はラクタムモノマーおよび親水性粘膜接着性モノマーとのシロキシシランの共重合を示す。
実施例40:ポリ(TRIS/N−ビニルピロリドン/メタクリル酸)(TRIS/NVP/MAA)14/1/1重量比の調製
25mLの反応容器を、12gのエチル酢酸、3.54g(0.008mol)のTRIS、0.26g(0.002mol)のNVP、0.21g(0.002mol)のメタクリル酸(MA)、および0.08gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、63〜82℃で16時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、濾過し、アセトンに溶解して水中に沈殿させ、50℃で乾燥し、結果として収量は58%であった。ポリマーは、液体中にポリマー10重量%で部分的にHMDSに溶解した。ガラス上に流し込んだ場合、乾燥したフィルムは中程度の数の0.01mmと0.05mmの間のドメインを有した(テストは実施例28〜30に定義されている)。0.25mm(10ミル)厚の乾燥したフィルムは、199g/m/24時間の水蒸気透過率であった。乾燥したフィルムは87%の伸長であった(テストは実施例15〜24に定義されている)。ヒトの前腕皮膚に塗布した場合、乾燥したポリマーフィルムは3日間接着した。
【0111】
実施例41はイミドモノマーとのシロキシシランの共重合を示す。
実施例41:ポリ(TRIS/マレイミド)6/1重量比
50mLの反応容器を、12gのエチル酢酸、1.5gのエタノール(アルコール度数190)、3.44g(0.008mol)のTRIS、0.57g(0.006mol)のマレイミド、0.04gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、加熱マントルの電源を入れた。重合は、70〜74℃で5時間行った。ポリマーをメタノール中に沈殿させ、濾過し、約37℃で乾燥し、結果として収量は80%であった。ポリマーは、HMDSに可溶で、粘着性のない透明な接着フィルムをヒトの皮膚上に形成した。
【0112】
実施例42および実施例43は疎水性フルオロモノマーを含むアミドモノマーとのシロキシシランモノマーの共重合を示す。
実施例42:ポリ(トリス/N−イソプロピルアクリルアミド/トリフルオロエチルメタクリレート)(TRIS/NIPAM/TFEMA)3/1/0.3重量比の調製
100mLの反応容器を、12.4gのエチル酢酸、2.84g(0.007mol)のTRIS、1.00g(0.009mol)のNIPAM、0.30gのトリフルオロエチルメタクリレート(TFEM)、および0.08gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、63〜74℃で22時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、濾過し、アセトンに溶解し、水中に沈殿させ、50℃で乾燥し、結果として収量は83%であった。ポリマーは、HMDSに可溶で、テフロン(登録商標)のシート上に流し込んだ場合に柔軟なフィルムを形成した。
【0113】
実施例43:ポリ(トリス/N−イソプロピルアクリルアミド/ドデカフルオロヘプチルメタクリレート)(TRIS/NIPAM/DFHMA)3/1/0.7重量比の調製
25mLの反応容器を、15gのエチル酢酸、3.23g(0.008mol)のTRIS、1.09g(0.010mol)のNIPAM、0.69g(0.002mol)の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート(DFHMA)、および0.101gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、63〜79℃で15.5時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、濾過し、アセトンに溶解し、水中に沈殿させ、50℃で乾燥し、結果として収量は83%であった。液中に10重量%でHMDSに適合性であった。ガラス上に流し込んだ場合、乾燥した透明なフィルムは、中程度の数の0.02mmと0.05mmの間のサイズのドメインを有した(テストは実施例28〜30に定義されている)。
【0114】
実施例44はシロキシシランモノマーとラクタムモノマーの更なる共重合を示す。
実施例44:ポリ(TRIS/NVP)4.5/1重量比の調製
25mLの反応容器を、16gのエチル酢酸、4.91g(0.012mol)のTRIS、1.11g(0.010mol)のN−ビニルピロリドン(NVP)、および0.12gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、69℃で15.5時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、濾過し、アセトンに溶解し、水中に沈殿させ、50℃で乾燥し、結果として収量は83%であった。液中に10重量%でHMDSに部分的に可溶であった。ガラス上に流し込んだ場合、乾燥した透明なフィルムは多くの0.01mmと0.02mmの間のサイズのドメインと、小数の0.03mmと0.4mmの間のサイズのドメインを有した(テストは実施例28〜30に定義されている)。乾燥したフィルムは、250%以上の伸長を有した(テストは実施例15〜24に定義されている)。ヒトの前腕皮膚に塗布した場合、乾燥したポリマーフィルムは5日間接着した。
【0115】
実施例45および実施例46はアミドまたはラクタムモノマーとのシロキシシラン共重合体への細胞接着を示す。
実施例45:細胞接着試験
実施例31のポリマー[ポリ(TRIS/NIPAM)]を2重量%のスクロースアセテートイソブチレートを含むHMDSに固体10重量%で溶解した。次に、ポリマー溶液は、塗布後のヒト皮膚線維芽細胞(HSF)およびヒト表皮角化細胞(HEK)へのポリマーフィルムへの接着能が評価された。細胞培地は、細胞と共にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションおよびセル・アプリケーションズ・インコーポレイテッド社からそれぞれ購入した。細胞を5%CO中に37℃でインキュベートした。96穴プレートを各ウェルあたり10μLのI型コラーゲン(シグマアルドリッチから購入)(1%酢酸中に0.01mg/ml)で満たし、次に密閉した層流フード中で一晩乾燥した(約24〜28時間)。10μLの実施例31のポリマー溶液を乾燥したコラーゲン上にピペットで置き、2分間風乾し、ヘキサメチルジシロキサンを蒸発させた。次に150μLの細胞培地をピペットでポリマー上に置いた。各ウェル内に、各細胞タイプ毎に8サンプルずつ重複させて用い、一連の試験を3週間にわたって2回行った。テストは毎日、5日間行った。SRBアッセイ法(スルホローダミンB毒性および細胞増殖アッセイ)を用いて、ウェルプレートの各サンプルを10%ホルムアルデヒドで固定し(Formal Fixx concentrateを、サーモ・シャンドン社より購入)、520nmの吸収で、GENios マイクロプレート・フロオロメーターを用いて調製された細胞の濃度をテストした。ポリマー溶液を含まないコラーゲンが細胞接着のコントロールとして用いられた。吸収の数値がより高い場合に細胞濃度がより高い。
【0116】
全ての試験で傾向が再現され、ポリ(TRIS/NIPAM)(実施例45で調製された実施例31のポリマー)でI型コラーゲン単独よりもより良好な細胞接着が見いだされた。HEK(ケラチン生成細胞)細胞では、ポリ(TRIS/NIPAM)フィルムは、吸収値に基づいて約2〜10倍の細胞接着の向上を示した。HSF(線維芽細胞)細胞では、ポリ(TRIS/NIPAM)フィルムは、吸収値に基づいて約2〜20倍の細胞接着の向上を示した。
【0117】
【表5】

実施例46:ペルフルオロブチルアミンによる細胞接着試験
実施例31のポリマー[ポリ(TRIS/NIPAM)]および実施例43のポリマー[ポリ(TRIS/NIPAM/DFHMA)]を2重量%のスクロースアセテートイソブチレートを含むHMDSに固体10重量%で溶解した。実施例44のポリマー[ポリ(TRIS/NVP)]をHMDSに固体10重量%で溶解した。三つの処方のそれぞれに、ペルフルオロ−t−ブチルアミンを飽和するまで(<1重量%)添加した。ペルフルオロ−t−ブチルアミンは、酸素を組み込むことが知られており、従って、この化学物質は増殖中の細胞に更に酸素を提供する可能性があるために処方に加えられる。ポリマー溶液は、実施例45の方法に従って、塗布後のヒト皮膚線維芽細胞(HSF)およびヒト表皮角化細胞(HEK)のポリマーフィルムへの接着能力が評価された。
【0118】
全ての処方が、下記の試験II中にコラーゲンよりもより良好な細胞接着を示したが、本実施例のチャートIIと同様に実施例45に示されるように、結果はポリ(TRIS/NIPAM)を除いてその後の試験では再現されなかった。更に、ケラチン生成細胞は乾燥したポリマーフィルム上で線維芽細胞よりも一貫してより良い増殖を示した。また、本発明の一実施態様において、被覆材料は、細胞増殖を促進することによって治癒剤として役割を果たす。
【0119】
以下のチャート(チャートIおよびチャートII)において、ポリマー1=実施例45のポリ(TRIS/NIPAM)処方、ポリマー2=実施例46のポリ(TRIS/NIPAM)処方、ポリマー3=実施例46のポリ(TRIS/NIPAM/DFHMA)処方、ポリマー4=実施例46のパーフルオロ−t−ブチルアミンを含まないポリ(TRIS/NVP)処方、ポリマー5=実施例46のポリ(TRIS/NVP)処方、およびポリマー6=3M ネクスケア(商標)紐無し液状絆創膏である。3M ネクスケア(商標)紐無し液状絆創膏は、ヘキサメチルジシロキサン、アクリレートターポリマー、およびポリフェニルメチルシロキサンを含む。結果は、細胞増殖を促進することによってパーフルオロ−t−ブチルアミンが治癒剤として作用することを示している。
【0120】
【表6】

実施例47は補足的接着促進可塑剤として添加シロキシ含有ポリマーを含む、アミドモノマーとのシロキシシランモノマーの共重合を示す。
【0121】
実施例47:ダウ・コーニング(登録商標)556 コズメティック・グレード・フルードを含むポリ(TRIS/NIPAM)
ダウ・コーニング(登録商標)556 コズメティック・グレード・フルード、フェニルトリメチコーン可塑剤を、10重量%でHMDSに溶解される実施例31のポリマー[ポリ(TRIS/NIPAM)]に2重量%で添加した。ヒト前腕の皮膚に塗布した場合、乾燥したポリマーフィルムは5日以上接着し、粘着レベルは1であった。乾燥したポリマーフィルム(0.127mm(5ミル)厚)は、37℃で1130g/m/24時間、20℃で342g/m/24時間の水蒸気透過率を示した。乾燥したフィルムは、233%の伸長を示した(試験は実施例15〜24に定義されている)。
【0122】
実施例48は補足的抗菌可塑剤を含む、ラクタムモノマーとのシロキシシランの共重合体を示す。
実施例48:抗菌剤を含むポリ(TRIS/NVP)
25mLの反応容器を、12gのエチル酢酸、3.33g(0.008mol)のTRIS、0.667g(0.006mol)のN−ビニルピロリドン(NVP)、および0.08gの2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)で満たした。窒素で3分間通気した後、容器を密閉し、オイルバス中に置いた。重合は、61〜71℃で19時間行った。ポリマーを水中に沈殿させ、濾過し、アセトンに溶解し、水中に沈殿させ、50℃で乾燥し、結果として収量は64%であった。ポリマー(10重量%)および2−エチルヘキシルグリセリン(シュルケ・アンド・マイルのセンシバ 50)(1.5重量%)をHMDSに混合した。結果生じた処方は、黄色ブドウ球菌,表皮ブドウ球菌、およびセラチア・マルセッセンス(霊菌)に対して殺菌性であった。2−エチルヘキシルグリセリンを含まない処方は殺菌性ではなかった。
【0123】
実施例49〜51は痛みの緩和および強化された皮膚治癒を示す。
実施例49:皮膚の損傷
56歳の白人女性は誤って右手の指関節の皮膚を削り落とした。約3日間にわたる抗生物質軟膏を用いた治療によって、損傷は次第に炎症を起こし、痛み(掻痒)を伴い続けた。10重量%の実施例31のポリマー、2重量%のフェニルトリメチコーン(ダウ・コーニング 556)および88%のヘキサメチルジシロキサンからなる処方を皮膚の裂け目に塗布した。結果得られた乾燥したポリマーフィルムは粘着性が無く、透明で柔軟であった。損傷部位は直ちに痛まなくなり、2日で完全に治癒した。
【0124】
実施例50:ナイフによる切り傷
55歳の白人女性は、誤って調理用のナイフで指の関節を切った。切り傷は3M ネクスケア(商標)液状絆創膏(n−ブチルシアノアクリレート)で封じ、次に、実施例32の処方で覆われた。結果得られた乾燥したポリマーフィルムは粘着性が無く、透明で柔軟であった。切断部位は3日で完全に治癒した。過去の同様の切傷では、抗生物質軟膏などの治療を用いて治癒は10日以上で生じた。
【0125】
実施例51:口唇ヘルペス
66歳の白人男性は、実施例32の処方または実施例49の処方を、6ヶ月間にわたって生じていた口唇ヘルペス上に塗布した。どちらの処方を塗布した場合にも、掻痒は止まった。処方は毎日再塗布され、口唇ヘルペスのサイズは減少し、7日以内に完全に治癒した。これは、未処置の口唇ヘルペスが完全にそのサイクルを完了する(完全に治癒した様子)通常の10日間と比較した。
【0126】
上記の例は、本発明の特定の実施形態を代表する。しかし、多くの変形が可能である。全ての形において、本発明の被覆材料は、重合可能な窒素含有親水性アミド、イミド、ラクタム、またはアミン、ならびに重合可能な疎水性アルキルシロキシシロキサンまたはアルキルアリールシロキシシロキサンなどのポリマー、ならびに揮発性の疎水性の液体を含む溶媒系を有している。全ての例において、本発明は液状ポリマーを含有する処方または材料を表面に塗布することによって、湿っているか、または乾燥しているか、および柔軟である、もしくはその一方である可能性がある表面に接着する被覆剤を形成するためにヒリヒリする痛みがない溶媒系を揮発させる、表面上に被覆剤を形成し、外部的な損傷から表面を保護することができる方法を提供する。
【0127】
その他の実施形態
上記の明細書は、多くの細目を含むものの、これらは本発明の範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、それらの好ましい実施形態の例として解釈されるべきである。多くのその他の変形が可能である。従って、本発明の範囲は説明された実施形態によって決定されるべきではなく、添付の請求項の範囲およびその正当な相当物によって決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1〜50重量%の両親媒性ポリマーと約50〜99重量%の揮発性の疎水性液体とを含む液状のポリマー含有被覆材料であって、
前記両親媒性ポリマーは、親水性である少なくとも一つの重合可能な窒素含有モノマー成分と、疎水性である少なくとも一つの重合可能なシロキシ含有モノマー成分とを含み、
前記液状被覆材料は、表面に塗布されると、接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆を形成する液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項2】
請求項1記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記親水性の重合可能な窒素含有モノマー成分は、重合可能なアミド、イミド、ラクタム、およびアミンからなる群より選択される液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項3】
請求項2記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記親水性の重合可能な窒素含有モノマー成分は、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、マレイミドおよびN−ビニルピロリドンから選択される液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項4】
請求項1記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記疎水性の重合可能なシロキシ含有モノマー成分は、重合可能なアルキルシロキシシラン、アルキルアリールシロキシシラン、またはアリールシロキシシランからなる群より選択される液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項5】
請求項4記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記疎水性の重合可能なシロキシ含有モノマー成分は、3−メタアクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランである液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項6】
請求項1記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記両親媒性ポリマーは、約15〜85モル%の重合可能な窒素含有モノマー成分と、約15〜85モル%の重合可能なシロキシ含有モノマー成分とを含む液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項7】
請求項6記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記親水性の重合可能な窒素含有モノマー成分はN−イソプロピルアクリルアミドであり、
前記疎水性の重合可能なシロキシ含有モノマー成分は3−メタアクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランである液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項8】
請求項1記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記揮発性の疎水性液体は、揮発性の直鎖状および環状シロキサン、揮発性アルカン、揮発性フッ化炭素、および液体および超臨界二酸化炭素からなる群より選択される液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項9】
請求項8記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記揮発性の疎水性液体はヘキサメチルジシロキサンである液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項10】
請求項1記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記両親媒性ポリマーは、更に、第三の重合可能なモノマー成分を含む液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項11】
請求項10記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記両親媒性ポリマーは、約15〜85モル%の重合可能な窒素含有モノマー成分、約15〜85モル%の重合可能なシロキシ含有モノマー成分、および約0.1〜20モル%の重合可能な第三のモノマー成分を含む液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項12】
請求項11記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記重合可能な第三のモノマー成分は、ベンジルメタクリレート、2−フェニルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項13】
請求項11記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記重合可能な窒素含有モノマーはN−イソプロピルアクリルアミドであり、
前記重合可能なシロキシ含有モノマーは3−メタアクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランであり、
前記重合可能な第三のモノマー成分はベンジルメタクリレートである液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項14】
請求項1記載の液状のポリマー含有被覆材料は、更に、0.1〜10重量%の補足剤を含み、
前記補足剤は、可塑剤、接着促進剤、抗菌剤、治癒剤、薬剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項15】
請求項14記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記補足剤は、疎水性単糖類誘導体、疎水性グリコール誘導体、疎水性フェニル含有ポリシロキサン、2−エチルヘキシルグリセリン、ジブチルフタレート、クエン酸アセチルトリブチル、スクロースアセテートイソブチレート、スクロース安息香酸、クエン酸アセチルトリエチル、ミネラルオイル、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、フェニル含有ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択された可塑剤を含む液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項16】
請求項14記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記補足剤は、ブチルオクチル牛脂脂肪酸、2−エチルヘキシルグリセリン、疎水性単糖類誘導体、ジブチルフタレート、クエン酸アセチルトリブチル、スクロースアセテートイソブチレート、スクロース安息香酸、クエン酸アセチルトリエチル、ミネラルオイル、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、フェニル含有ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択された接着促進剤を含む液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項17】
請求項14記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記補足剤は、疎水性グリコール誘導体、2−エチルヘキシルグリセリン、銀および銀塩、ビグアニド、ネオマイシン、ポリミキシンB、バシトラシン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択された抗菌剤を含む液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項18】
請求項14記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記補足剤は、抗生物質、抗感染症薬、抗ウイルス剤、外傷治癒剤、殺菌剤、抗掻痒剤、外皮用剤、ステロイド、禁煙薬、避妊薬、電子伝達剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択された薬剤を含む液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項19】
請求項14記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記補足剤は、抗菌剤、薬剤、またはその両方を含み、
前記接着性の適合可能な水蒸気透過性被覆剤に含まれる前記抗菌剤、薬剤、またはその両方は、前記表面に放出される液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項20】
請求項19記載の液状のポリマー含有被覆材料において、前記抗菌剤、薬剤、またはその両方は、制御された速度で、前記表面に放出される液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項21】
請求項14記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記補足剤は、疎水性単糖類誘導体、疎水性フェニル含有ポリシロキサン、およびその組み合わせからなる群より選択される液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項22】
請求項21記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記補足剤は、スクロースアセテートイソブチレート、フェニルトリメチコーン、およびその組み合わせからなる群より選択される液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項23】
請求項1記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記接着性の適合可能な水蒸気透過性被覆剤は熱応答性である液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項24】
請求項1記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記接着性の適合可能な水蒸気透過性被覆剤は細胞接着を促進する液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項25】
請求項24記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記液状のポリマー含有被覆材料は、更に、ペルフルオロ−t−ブチルアミンを含む液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項26】
請求項24記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記表面は損傷した皮膚であり、
前記接着性の適合可能な水蒸気透過性被覆剤は治癒を促進する液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項27】
請求項1記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記表面は医療機器の表面である液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項28】
請求項27記載の液状のポリマー含有被覆材料において、
前記医療機器は、埋め込み型医療機器、体に接着する医療機器、または埋め込み可能で、かつ体に接着する医療機器である液状のポリマー含有被覆材料。
【請求項29】
接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤を表面上に形成する方法であって、
液状のポリマー含有被覆材料を表面に塗布するステップであって、前記液状のポリマー含有被覆材料は、約1〜50重量%の両親媒性ポリマーと約50〜99重量%の揮発性の疎水性液体とを含み、前記両親媒性ポリマーは、親水性である少なくとも一つの重合可能な窒素含有モノマー成分と、疎水性である少なくとも一つの重合可能なシロキシ含有モノマー成分とを含むステップと、
接着性の適合可能な水蒸気透過性被覆剤を形成するために前記揮発性の疎水性液体を蒸発させるステップと、
を含む方法。
【請求項30】
請求項29記載の接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤を表面上に形成する方法において、
前記親水性の重合可能な窒素含有モノマー成分は、アミド、イミド、ラクタム、アミン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される方法。
【請求項31】
請求項29記載の接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤を表面上に形成する方法において、
前記親水性の重合可能な窒素含有モノマー成分はN−イソプロピルアクリルアミドであり、
前記疎水性の重合可能なシロキシ含有モノマー成分は3−メタアクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランであり、
前記揮発性の親水性液体はヘキサメチルジシロキサンである方法。
【請求項32】
請求項29記載の接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤を表面上に形成する方法において、
前記液状のポリマー含有被覆材料は、更に、フェニル含有ポリシロキサン、スクロースアセテートイソブチレート、または両方を含む方法。
【請求項33】
請求項29記載の接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤を表面上に形成する方法において、
前記接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤は熱応答性である方法。
【請求項34】
請求項29記載の接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤を表面上に形成する方法において、
前記接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤は細胞接着を促進する方法。
【請求項35】
請求項34記載の接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤を表面上に形成する方法において、
前記液状のポリマー含有被覆材料は、更に、ペルフルオロ−t−ブチルアミンを含む方法。
【請求項36】
請求項34記載の接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤を表面上に形成する方法において、
前記表面は損傷した皮膚であり、
前記接着性の適合可能な水蒸気透過性被覆剤は治癒を促進する方法。
【請求項37】
請求項29記載の接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤を表面上に形成する方法において、
前記表面は医療機器の表面である方法。
【請求項38】
請求項37記載の接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤を表面上に形成する方法において、
前記医療機器は、埋め込み型医療機器、体に接着する医療機器、または埋め込み可能で、かつ体に接着する医療機器である方法。
【請求項39】
請求項29記載の接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤を表面上に形成する方法、更に、
0.1〜10重量%の補足剤を含み、
前記補足剤は、可塑剤、接着促進剤、抗菌剤、治癒剤、薬剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される方法。
【請求項40】
請求項39記載の接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤を表面上に形成する方法において、
前記補足剤は、抗菌剤、薬剤、またはその両方を含み、
前記接着性の適合可能な水蒸気透過性被覆剤に含まれた前記抗菌剤、薬剤、またはその両方は前記表面に放出される方法。
【請求項41】
請求項40記載の接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆剤を表面上に形成する方法において、
前記抗菌剤、薬剤、またはその両方は、制御された速度で、前記表面に放出される方法。
【請求項42】
約0.1〜50重量%の親水性ポリマーと約50〜99重量%の揮発性の疎水性液体とを含む液状のポリマー含有被覆材料を備えたキットであって、
前記両親媒性ポリマーは、親水性である少なくとも一つの重合可能な窒素含有モノマー成分と、疎水性である少なくとも一つの重合可能なシロキシ含有モノマー成分とを含み、
前記液状被覆材料は、表面に塗布されると、接着性の適合可能な水蒸気透過性の被覆を形成するキット。
【請求項43】
請求項42記載のキットにおいて、
前記液状のポリマー含有被覆材料は、更に、0.1〜10重量%の補足剤を含み、
前記補足剤は、可塑剤、接着促進剤、抗菌剤、治癒剤、および薬剤からなる群より選択されるキット。

【公表番号】特表2009−518145(P2009−518145A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544613(P2008−544613)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/061426
【国際公開番号】WO2007/067866
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508170368)ロチャル インダストリーズ エルエルピー (2)
【氏名又は名称原語表記】ROCHAL INDUSTRIES,LLP
【Fターム(参考)】