説明

遮根および透水性能を有する農業資材用袋織物

【課題】従来のストレス栽培方法である点滴潅水法や微細孔ゴム管を使用した方法、更に底面から吸上げ性能を有する繊維構造体による給水方法では、点滴チューブの目詰まりや水圧変化による給水ムラや過剰給水による糖度低下があるために絶えず1本1本の苗を注意しておく必要があった。またコスト面でも設備投資が必要であった。
【解決手段】毛細管現象を有する繊維構造体8より運ばれてきた水量を直接に根が吸水しないように細根までも侵入させない遮根性能機能と透水性能を有するホース状袋織物5で包むことで、細根からの吸水を自由にさせないと共に、袋の幅を規制することで、繊維構造体8からの吸上げ量がコントロール出来るようにするための遮根透水性能を有する袋構造物である。これでストレス栽培のポイントである水管理が低コスト、高品質、簡易にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の生育に関し、特に高糖度な野菜類、果菜類、果物類を得るためのストレス栽培用資材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、植物、特に野菜や果物類栽培では、ハウス栽培による周年栽培が可能になり、それで付加価値をつけることが日常化のこととなってきている。更に高い付加価値をつけるために温度はもちろん、水分も給水方法を最低限に絞込むストレス栽培法のいくつかが知られている。例を挙げると、土耕での根域制御栽培では、土壌内に紙などの遮根材を敷き詰め、その上に栽培土壌を満たして野菜の苗を定植し、栽培に必要な水量を点滴潅水で野菜の根元に給水するハウス栽培方法がある。しかし、この方法は、異物等の混入で点滴管閉塞したり、点滴量を絞りすぎると原水圧変化に起因する給水停止の恐れがあり、植物が萎れて回復できないと言う問題点をはらんでおり、また土中への水拡散が点滴潅水部のある付近にのみ集中しやすいため植物の根域が拡大しにくくなり、周囲に存在する肥料を十分利用できないこともあって植物の徒長不揃いや実数や糖度にバラツキが発生しやすい。また点滴潅水方法システムがコスト高になる。
【0003】
また、微細孔を有するゴムホースを土中若しくは土壌表面に配置し、水圧をかけてホース表面から水を噴出させることで土壌に水分補給する資材がある。しかしかなりの水圧を掛けないと水は噴出しないだけでなく、噴出した水量はストレス栽培には過剰すぎる。水圧を絞ると原水圧変動のために噴水停止の恐れがあり、枯死してしまう。また過剰給水防止のために、給水と停水を組み合わせることは、装置面でコスト高になるだけでなく、生育環境(気温や日照時間などによる植物が要求する水分量)などの変化に見事に追随させることは至難の業である。
【0004】
また、鉢植した植物の鉢底穴に、水の吸い上げ性能に優れた不織布などのリボンを挿入し、他端を容器内の水に漬け込んで毛細管で吸上げさせて給水させる方法がある(例えば特許文献1参照)。この方法は、根が潤沢な水を保有する不織布内に侵入し、必要以上の水分を吸収してしまい、糖度の不揃い等を発生し易やすく、花卉栽培などには適しても果菜類などには適さない。このように、より的確にしかも低コスト下でシンプルなストレス栽培を可能にする農業資材は知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−127177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は従来の課題を背景になされたもので、手間を掛けず、低コストで安定的且つ確実にストレス栽培に必要な水分量を供給する資材である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、ついに本発明を完成するに到った。即ち本発明は以下の構成よりなる。
【0008】
1.貫通した袋部と接結部を有する袋織物であって、織物を構成する繊維が合成繊維であり、袋部を構成する織物のカバーファクター値が1150〜2200で、透水係数が10−6〜10−3cm/秒であり、接結部を構成する織物のカバーファクター値が1800〜3000であり、袋部内に断面積が30〜310000平方ミリメートルの繊維構造体が充填されてなる農業資材用袋織物。
2.接結部を構成する織物が緯糸に対する経糸の浮きが2本以上である組織で構成される上記1に記載の農業資材用袋織物。
3.経糸が撚り数が10回/m以下、且つ交絡度が30個/m以下の実質的に仮撚倦縮のないポリエステルフィラメントからなる上記1または2に記載の農業資材用袋織物。
4.袋部の幅が10〜1000mmであり、接結部の幅が5mm以上である上記1〜3のいずれかに記載の農業資材用袋織物。
5.該袋織物が、接結部を溶断方法にて長さ方向にカットすることでホース形状袋織物を得ることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の農業資材用袋織物。
6.植物が必要とする土壌水分補給を、上記1〜5のいずれかに記載の農業資材用袋織物を、その土壌中に挿入する一端が他端が浸っている溜水水面位置より1〜100cm高い状態で使用することにより補給することを特徴とする植物栽培方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明による袋織物を使用した栽培方法であれば、手間を掛けずに精度良く制御した水分補給をすることができるため、工業的に糖度の高い野菜や果物を生産することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の織物は、点滴潅水の問題点を解決し、微細孔ホースの問題点を解決し、水の吸上げ性にすぐれた不織布を鉢の底穴より差し込んで他端を溜水中に漬け込んで栽培する栽培方法の欠点(花卉栽培に適しても果菜類栽培に不適であるという欠点)を解決するものである。
すなわち本発明は、貫通した袋部を有し、袋内部に毛細管現象で水を移動させることができる繊維構造体を充填できる袋織物であることが望ましい。
【0011】
ここで言う袋織物とは、二重織物からなる袋織りであるが、平面の織物を2枚以上重ね、縫製や接着剤、あるいは超音波溶着器で袋状にしたものは除外される。
縫製されたものは、布に空いた針の貫通孔から植物の細根が侵入して袋内の毛細管で供給される水分を必要以上に吸収してしまい、所謂ストレス栽培がコントロールしにくく好ましくない。また、接着剤や超音波で袋状にすることは、接着剤部分が硬くなるため、輸送のためにロール巻にすると折れ曲がり易く、その部分のひび割れから隙間を作ってしまい、細根の侵入を許してしまうため好ましくない。また数10mの長いホース要求に対して接着部が硬いために巻物状にまとめることが難しくなるという問題があるため、梱包や運賃等の対応策で製造コストが高くなってしまう。超音波溶着も一度に数10本の単位で袋化するには大型機械が必要になるだけでなく、溶着部分強力があまり強くないので剥がれてしまう危険性が大きく好ましくない。
【0012】
貫通した袋部は、毛細管現象で水分を移動させる繊維構造体を充填するために必要であり、その幅は袋部1本当たり10〜1000mm(周囲長は×2)である。袋部の幅が10mm未満ではホース1本では植物への給水量が不足するため好ましくない。また、袋部の幅が1000mm以上は、水分供給にそれだけの幅が必要となる植物が希少であるため除外したものであるが、基本的には不適ではない。好ましい幅は、20mm〜200mm、より好ましくは30〜50mmである。袋部に充填される繊維構造体は特に制限するものでなく合成繊維、天然繊維、フィラメント集束体、不織布構造体などいかなるものであっても良いが、毛細管現象で水を高く吸上げるほうが望ましく、その高さとしては、絶えずレベルが保たれている状態の水面に一端を漬け込んで、垂直に吊り上げられている状態で30分経過後水面から5cm以上の高さまで吸上げる繊維構造体が好ましい。これは水の移動量を容易にしないためである。実際には土壌が水を引き上げる特性があるため、5cmの高さまで吸上げる繊維構造体でも実際では2倍くらいの高さまで吸上げる。また繊維構造体断面積が30〜310000平方ミリメートル、好ましくは280〜700平方ミリメートルである。
【0013】
土壌中に挿入される一端の位置と、溜水水面の位置関係において、溜水水面位置は土壌挿入位置より少なくとも1cm〜100cm低いほうが良い。高低差のない1cm未満、あるいは水溜容器の水面の高さの方が土壌中に挿入される一端よりも高い場合は、水分供給量を制御しにくくなりやすいため好ましくない。また、100cm超低い状態で使用すると水分供給が不十分となりやすいため好ましくない。好ましくは位置差が10cm以上で、が良い。
【0014】
袋部の織物は、繊維構造体によって吸上げられてくる水を根が要求するがままの量を直接吸収してしまい非ストレス化状態となり、野菜や果物が糖度低下(水っぽくなる)するのを防ぐ目的の遮根性能を付与するため、高密度織物である必要がある。
袋部を構成する織物のカバーファクター(CF)値は1150〜2200が好ましい。1150未満では、織物組織がルーズになって微細孔が発生し、そこから根が侵入してくるからである。また、2200を超えることは遮根性能面では問題ないが製織が困難である。好ましくは1400〜2100、より好ましくは1650〜2000である。なお、ここでいうカバーファクター値とは、下記(数式1)により得られる値である。
【0015】
CF値=[経糸繊度(dtex)1/2×経糸の織密度(本/2.54cm)]
+[緯糸繊度(dtex)1/2×緯糸の織密度(本/2.54cm)]・・・(数式1)
【0016】
また、袋部を構成する織物の透水係数は「JIS A1218:土の透水係数」準用(透水面積:78.5cm,測定時間:60〜120秒、水頭10cm)で10−6〜10−3cm/秒であることが好ましい。透水係数が10−3cm/秒以上になると果菜類では袋部内部に根が侵入して繊維構造体の持つ水分を直接吸収しはじめて好ましくない。また、透水係数が10−6以下では繊維構造体からの水を土壌へ移しにくくなり植物が枯死してしまうため好ましくない。好ましい透水係数は10−6〜10−4cm/秒である。この袋部の織組織としては平織で良いが特に制限はない。
【0017】
また非袋部である接結部のCF値は、1900〜2700で構成されることが好ましい。CF値が1900未満では組織的に緩くなるために、手荒く扱うと袋部の高密度部との境界部で袋部織物の経糸が接結部側へ動き易くなり、袋部の経糸と緯糸との交点部に隙間が発生し、根が侵入する。また、CF値が2700を超えると製織が困難になってくる。好ましいCF値は2100〜2500である。
【0018】
織物を構成する経糸の合成繊維は、撚り数が10回/m以下、且つ交絡度が30個/m以下の実質的に仮撚捲縮のないポリエステルフィラメントが良い。撚り数が10回/mを超え、且つ交絡度が30個/mを超えると、整然と並んでいるマルチフィラメント間が乱れるとともにマルチフィラメントの拘束性が顕著になり断面も丸みを帯びてくる。その結果、織物になったときの経糸と緯糸の交差部に微細孔が発生してくる。これは遮根性能低下原因になる。好ましくは撚り数が7回/m以下で、且つ交絡度が15個/m以下、より好ましくは撚り数が5回/m以下、且つ交絡度が11個/m以下である。
【0019】
また、接結部の緯糸に対する経糸の浮きは、CFの大きい袋部の緯糸全てがこの経糸に絡むため、経糸がつらないためにも2本以上の浮きであることが好ましい。接結部の緯糸に対する経糸の浮きが2本以上である組織とすることで経糸が1ビームで製織しても操業性に問題なく、耳タブリが無い織物を形成しやすいため好ましい。経糸の浮きを1本の組織である袋織りも製造することは可能であるが、その場合、袋部用の経糸ビームと接結部用の経糸ビームを用いて製織しないと耳タブリが発生して非常に品位の劣ったものとなりやすい。
【0020】
この袋織物は、より低い透水性機能を持たすための方法として少なくとも袋部面に透湿防水フィルムや、透湿防水コート剤などのラミネート加工やコーティング加工がされても良く、そのフィルムやコート素材は限定する物でない。また、原糸の熱収縮特性を利用して製織後に無緊張に近い状態で加熱して低透水性機能を得てもよい。また、この袋織物に増親水性剤や増撥水性剤のほか、抗菌性、着色、紫外線吸収剤をはじめとする機能増進処理を行うことに制限はしない。また、何がしかの目的で袋織物の一部にマーキングされることも制限しない。更にまた、織機機種についても何等制限するものでない。
【0021】
またこの袋織物に使用されるマルチフィラメントのフィラメント本数、単糸繊度、強度、伸度、熱収縮率、断面形状、着色、機能剤付与等については何等制限するものでない。
【実施例】
【0022】
次に本発明を実施例にて詳細に説明するが、本発明は実施例のみに限定される物でない。また、本発明に関する撚り数、交絡度、袋部の幅、接結部の幅の測定方法は次の通りである。
【0023】
(1)撚り数
JIS L1013 7.11の撚り数測定法により測定する。
(2)交絡度
JIS L1013 7.13の交絡度法により測定する。
(3)袋部の幅および接結部の幅
袋部の幅と接結部の幅の測定はメジャーを使用する。
【0024】
(実施例1)
ポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントの無撚糸で交絡度が11個/mのものを経糸に1ビーム整経で用意し、袋部は210本/2.54cmに、接結部は55本/2.54cmになるように糸配置した。この時、袋部の210本/2.54cmは105本/2.54cmずつに分けて袋部分を構成する上布面と下布面の経糸とした。
つぎにポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントの無撚糸で交絡度11個/mのものを200本/2.54cmの密度となるように打込むに際し、そのうちの100本/2.54cmは袋部の上布面用に配置した105本/2.54cmの経糸と、他の100本/2.54cmは袋部の下布面用に配置した105本/2.54cmの経糸とでそれぞれで平織組織となるようにした。
一方、接結部の55本/2.54cmの経糸は、200本/2.54cmの緯糸に対して2本浮き(緯糸2本分ずつを乗り越え、潜る、を繰り返す)となるような組織にし、袋部の経糸との糸長バランスを取った。織機はWJLを使用した。
袋部幅50mmと接結部幅12mm(経糸本数は26本で、密度換算で55本/2.54cmになる)とが交互に経方向に並んだ織物を約100m作った。この袋織物の接結部中央を狙って溶断方法で長さ方向にカットし、100mのホース形状袋織物を数10本得た。
上記のホース形状物を100cmの長さにカットした後、繊維構造体として垂直毛細管現象12cmを有するユニチカ株式会社製底面給水材(商品名:ラブマットU)の幅30mm、厚み20mm、長さ100cm品を貫通した袋部に挿入した。
【0025】
遮根性、送水性の評価法は以下の通りで実施した。直径15.15cmプラスチック鉢の底に近い側面部分に、上記の繊維構造体内蔵ホース形状物が丁度挿入できる隙間を開け、同ホース形状物を複数本挿入して鉢内壁を約一周するよう配置した。これに固形緩効性肥料を一定量混合した熱殺菌畑土を一定量詰め込みトマト苗を定植し、300ccの水を潅水すると同時に、鉢から露出しているホース形状物と内部の繊維構造体にも水を十分にかけて完全に湿潤させ水道(みずみち)を作った後でホース形状物他端を目盛り付10リットル容器に入れて鉢挿入口位置から20cmの位置に水を10リットル入れた時の水面が来るよう準備した。すなわち、これは、作物が要求する水分量を土壌経由で容器から引き上げる仕組みであり、要求水分量に対して引き上げ量が間に合わない時は作物の枯死に繋がってしまうこととなる。容器からの水の蒸散を抑えるためにアルミ箔で軽く蓋をして、容器の水を日没後に常に10リットルに戻し、その補充した水の量を測定した。
遮根性は、1本の袋状織物内に繊維構造体を挿入したものの1mを200倍の顕微鏡で袋部の経糸と緯糸の交差部に全く孔が認められないものを○、袋部幅内で5個/m本以内なら○〜△、6〜10個/mは△,11〜19個/mは△〜×、20個/mを超えるものは×とした。
送水性の判断基準としては、従来のトマト栽培では実を収穫する頃は1本当たり1.5〜2リットルの給水が必要とされているが、ストレス栽培においては1本当たり0.6〜0.8リットルが適正といわれていることから日没後に補給した水の量が0.3リットルに満たないもの若しくは0.8を超えるものは×を、0.3〜0.6リットルのものを△に、0.6〜0.8リットルのものを○とし、第5花房が実をつけた時点まで観察した。この試験は採光があって、降雨の無いハウス内で行った。
【0026】
(実施例2)
ポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントの無撚糸で交絡度が11個/mのものを経糸に1ビーム整経で用意し、袋部は210本/2.54cmに、接結部は55本/2.54cmになるように糸配置した。この時、袋部の210本/2.54cmは105本/2.54cmずつに分けて袋部分を構成する上布面と下布面の経糸とした。つぎにポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントの無撚糸で交絡度が11個/mのものを200本/2.54cmの密度となるように打込み、そのうちの100本/2.54cmは袋部に上面用に配置した105本/2.54cmの経糸と、他の100本/2.54cmは袋部の下面用に配置した105本/2.54cmの経糸とでそれぞれで平織組織となるようにした。一方、接結部の55本/2.54cmの経糸は、200本/2.54cmの緯糸に対して1本浮き(緯糸1本ずつを乗り越え、潜る、を繰り返す)となるような組織にした。織機はWJLを使用した。
袋部幅20mmと接結部幅12mm(経糸本数は26本で、密度換算で55本/2.54cmになる)とが交互に経方向に並んだ織物を約100m作った。次にこの袋織物の接結部中央を狙って溶断方法で長さ方向にカットし、100mのホース形状袋織物を数10本得た。
上記のホース形状物を100cmの長さにカットした後、繊維構造体として垂直毛細管現象12cmを有するユニチカ株式会社製底面給水材(商品名:ラブマットU)の幅10mm、厚み10mm、長さ100cm品を貫通した袋部に挿入した。
以下、評価法は実施例1に準じて処した。
【0027】
(実施例3)
ポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントの撚り数が30T/mで、交絡度が0個/mのものを経糸に1ビーム整経で用意し、袋部は210本/2.54cmに、接結部は55本/2.54cmになるように糸配置した。この時、袋部の210本/2.54cmは105本/2.54cmずつに分けて袋部分を構成する上布面と下布面の経糸とした。つぎにポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントの撚り数が30T/mで、交絡度が0個/mのものを200本/2.54cmの密度となるように打込み、そのうちの100本/2.54cmは袋部に上面用に配置した105本/2.54cmの経糸と、他の100本/2.54cmは袋部の下面用に配置した105本/2.54cmの経糸とでそれぞれで平織組織となるようにした。一方、接結部の55本/2.54cmの経糸は、200本/2.54cmの緯糸に対して2本浮き(緯糸2本分ずつを乗り越え、潜る、を繰り返す)となるような組織にした。織機はWJLを使用した。
袋部幅50mmと接結部幅12mm(経糸本数は26本で、密度換算で55本/2.54cmになる)とが交互に経方向に並んだ織物を約100m作った。次にこの袋織物の接結部中央を狙って溶断方法で長さ方向にカットし、100mのホース形状袋織物を数10本得た。
上記のホース形状物を100cmの長さにカットした後、繊維構造体として垂直毛細管現象12cmを有するユニチカ株式会社製底面給水材(商品名:ラブマットU)の幅30mm、厚み20mm、長さ100cm品を貫通した袋部に挿入した。
以下、評価法は実施例1に準じて処した。
【0028】
(実施例4)
ポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントの無撚糸で、交絡度が40個/mのものを経糸に1ビーム整経で用意し、袋部は210本/2.54cmに、接結部は55本/2.54cmになるように糸配置した。この時、袋部の210本/2.54cmは105本/2.54cmずつに分けて袋部分を構成する上布面と下布面の経糸とした。つぎにポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントの無撚糸で、交絡度が40個/mのものを緯糸として200本/2.54cmの密度となるように打込み、そのうちの100本/2.54cmは袋部に上面用に配置した105本/2.54cmの経糸と、他の100本/2.54cmは袋部の下面用に配置した105本/2.54cmの経糸とでそれぞれで平織組織となるようにした。一方、接結部の55本/2.54cmの経糸は、200本/2.54cmの緯糸に対して2本浮き(緯糸2本分ずつを乗り越え、潜る、を繰り返す)となるような組織にした。織機はWJLを使用した。
袋部幅50mmと接結部幅12mm(経糸本数は26本で、密度換算で55本/2.54cmになる)とが交互に経方向に並んだ織物を約100m作った。次にこの袋織物の接結部中央を狙って溶断方法で長さ方向にカットし、100mのホース形状袋織物を数10本得た。
上記のホース形状物を100cmの長さにカットした後、繊維構造体として垂直毛細管現象12cmを有するユニチカ株式会社製底面給水材(商品名:ラブマットU)の幅30mm、厚み20mm、長さ100cm品を貫通した袋部に挿入した。
以下、評価法は実施例1に準じて処した。
【0029】
(実施例5)
ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸で83dtex−36フィラメントの無撚糸で、交絡度が20個/mのものを経糸に1ビーム整経で用意し、袋部は210本/2.54cmに、接結部は55本/2.54cmになるように糸配置した。この時、袋部の210本/2.54cmは105本/2.54cmずつに分けて袋部分を構成する上布面と下布面の経糸とした。つぎにポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸で83dtex−36フィラメントの無撚糸で、交絡度が20個/mのものを緯糸として200本/2.54cmの密度となるように打込み、そのうちの100本/2.54cmは袋部に上面用に配置した105本/2.54cmの経糸と、他の100本/2.54cmは中空部の下面用に配置した105本/2.54cmの経糸とでそれぞれで平織組織となるようにした。一方、接結部の55本/2.54cmの経糸は、200本/2.54cmの緯糸に対して2本浮き(緯糸2本分ずつを乗り越え、潜る、を繰り返す)となるような組織にした。織機はWJLを使用した。
袋部幅50mmと接結部幅12mm(経糸本数は26本で、密度換算で55本/2.54cmになる)とが交互に経方向に並んだ織物を約100m作った。次にこの袋織物の接結部中央を狙って溶断方法で長さ方向にカットし、100mのホース形状袋織物を数10本得た。
上記のホース形状物を100cmの長さにカットした後、繊維構造体として垂直毛細管現象12cmを有するユニチカ株式会社製底面給水材(商品名:ラブマットU)の幅30mm、厚み20mm、長さ100cm品を貫通した袋部に挿入した。
以下、評価法は実施例1と同様に処した。
【0030】
(実施例6)
ポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントの無撚糸で、交絡度が11個/mのものを経糸に1ビーム整経で用意し、袋部は150本/2.54cmに、接結部は100本/2.54cmになるように糸配置した。この時、袋部の150本/2.54cmは75本/2.54cmずつに分けて袋部分を構成する上布面と下布面の経糸とした。つぎにポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントの無撚糸で、交絡度が11個/mのものを緯糸として120本/2.54cmの密度となるように打込み、そのうちの60本/2.54cmは袋部に上面用に配置し75本/2.54cmの経糸と、他の60本/2.54cmは袋部の下面用に配置した75本/2.54cmの経糸とでそれぞれで平織組織となるようにした。一方、接結部の100本/2.54cmの経糸は、120本/2.54cmの緯糸に対して2本浮き(緯糸2本分ずつを乗り越え、潜る、を繰り返す)となるような組織にした。織機はWJLを使用した。
袋部幅50mmと接結部幅12mm(経糸本数は47本で、密度換算で100本/2.54cmになる)とが交互に経方向に並んだ織物を約100m作った。次にこの袋織物の接結部中央を狙って溶断方法で長さ方向にカットし、100mのホース形状袋織物を数10本得た。
上記のホース形状物を100cmの長さにカットした後、繊維構造体として垂直毛細管現象12cmを有するユニチカ株式会社製底面給水材(商品名:ラブマットU)の幅30mm、厚み20mm、長さ100cm品を貫通した袋部に挿入した。
以下、評価法は実施例1に準じて処した。
【0031】
(比較例1)
ポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントの無撚糸で、交絡度が11個/mのものを経糸に1ビーム整経で用意し、袋部は210本/2.54cmに、接結部は55本/2.54cmになるように糸配置した。この時、袋部の210本/2.54cmは105本/2.54cmずつに分けて袋部分を構成する上布面と下布面の経糸とした。つぎに経糸と全く同一のポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントの無撚糸で、交絡度が11個/mのものを緯糸として200本/2.54cmの密度となるように打込み、そのうちの100本/2.54cmは袋部に上面用に配置した105本/2.54cmの経糸と、他の100本/2.54cmは袋部の下面用に配置した105本/2.54cmの経糸とでそれぞれで平織組織となるようにした。一方、接結部の55本/2.54cmの経糸は、200本/2.54cmの緯糸に対して2本浮き(緯糸2本分ずつを乗り越え、潜る、を繰り返す)となるような組織にした。織機はWJLを使用した。
袋部幅50mmと接結部幅12mm(経糸本数は26本で、密度換算で55本/2.54cmになる)とが交互に経方向に並んだ織物を約100m作った。次にこの袋織物の接結部中央を狙って溶断方法で長さ方向にカットし、100mのホース形状袋織物を数10本得た。
このホース形状袋織物には繊維構造体を挿入しない以外は実施例1と同様に処した。
【0032】
(比較例2)
ポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントの無撚糸で、交絡度が11個/mのものを経糸に1ビーム整経で用意し、袋部は換算値で210本/2.54cm相当に、接結部は55本/2.54cmになるように糸配置した。この時、袋部の210本/2.54cm相当は105本/2.54cm相当ずつに分けて袋部分を構成する上布面と下布面の経糸とした。つぎに経糸と全く同一のポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントの無撚糸で、交絡度が11個/mのものを緯糸として200本/2.54cmの密度となるように打込み、そのうちの100本/2.54cmは袋部に上面用に配置した105本/2.54cmの経糸と、他の100本/2.54cmは袋部の下面用に配置した105本/2.54cmの経糸とでそれぞれで平織組織となるようにした。一方、接結部の55本/2.54cmの経糸は、200本/2.54cmの緯糸に対して2本浮き(緯糸2本分ずつを乗り越え、潜る、を繰り返す)となるような組織にした。織機はWJLを使用した。
袋部幅5mm(実質42本で、2.54cm換算で210本/2.54cm)と接結部幅12mm(経糸本数は26本で、密度換算で55本/2.54cmになる)とが交互に経方向に並んだ織物を約100m作った。次にこの袋織物の接結部中央を狙って溶断方法で長さ方向にカットし、100mのホース形状袋織物を数10本得た。
上記のホース形状物を100cmの長さにカットした後、繊維構造体として垂直毛細管現象12cmを有するユニチカ株式会社製底面給水材(商品名:ラブマットU)の幅3mm、厚み2mm、長さ100cm品を貫通した袋部に挿入した。
以下、評価法は実施例1に準じて処した。
【0033】
(比較例3)
ポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントで撚り数が0T/m0で、交絡度が11個/mのものを経糸に1ビーム整経で用意し、袋部は110本/2.54cmに、接結部は55本/2.54cmになるように糸配置した。この時、中空部は55本/2.54cmずつに分けて袋部分を構成する上面布と下面布の経糸とした。つぎに経糸と全く同じポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントで撚り数が0T/mで、交絡度が11個/mのものを緯糸として140本/2.54cmの密度となるように打込み、そのうちの70本/2.54cmは袋部に上面布用に配置した55本/2.54cmの経糸と、他の70本/2.54cmは袋部の下面布用に配置した55本/2.54cmの経糸とでそれぞれで平織組織となるようにした。一方、接結部の経糸は、150本/2.54cmの緯糸に対して2本浮き(緯糸2本分ずつを乗り越え、潜る、を繰り返す)となるような組織にした。織機はWJLを使用した。
中空部幅50mmと接結部幅12mm(経糸本数は26本で、密度換算で55本/2.54cmになる)とが交互に経方向に並んだ織物を約100m作った。次にこの袋織物の接結部中央を狙って溶断方法で長さ方向にカットし、100mのホース形状袋織物を数10本得た。
上記のホース形状物を100cmの長さにカットした後、繊維構造体として垂直毛細管現象12cmを有するユニチカ株式会社製底面給水材(商品名:ラブマットU)の幅30mm、厚み20mm、長さ100cm品を貫通した袋部に挿入した。
以下、評価法は実施例1に準じて処した。
【0034】
(比較例4)
ポリエステルマルチフィラメント83dtex−36フィラメントで撚り数が0T/mで、交絡度が11個/mのものを経糸に1ビーム整経で用意し、袋部は240本/2.54cmに、接結部は55本/2.54cmになるように糸配置した。この時、袋部は120本/2.54cmずつに分けて袋部分を構成する上面布と下面布の経糸とした。つぎに経糸と全く同じポリエステルマルチフィラメントで撚り数が0T/mで、交絡度11個/mである83dtex−36フィラメントを緯糸として260本/2.54cmの密度となるように打込み、そのうちの130本/2.54cmは袋部に上面布用に配置した120本/2.54cmの経糸と、他の130本/2.54cmは袋部の下面布用に配置した120本/2.54cmの経糸とでそれぞれで平織組織となるようにした。一方、接結部の経糸は、260本/2.54cmの緯糸に対して3本浮き(緯糸3本分ずつを乗り越え、潜る、を繰り返す)となるような組織にした。織機はWJLを使用した。
中空部幅50mmと接結部幅12mm(経糸本数は26本で、密度換算で55本/2.54cmになる)とが交互に経方向に並んだ織物を約100m作った。この織物の両面にウレタン製の透湿防水フィルム(通気度0.1cc/cm・sec以下)をラミネートした後、袋織物の接結部中央を狙って溶断方法で長さ方向にカットし、100mのホース形状袋織物を数10本得た。
上記のホース形状物を100cmの長さにカットした後、繊維構造体として垂直毛細管現象12cmを有するユニチカ株式会社製底面給水材(商品名:ラブマットU)の幅30mm、厚み20mm、長さ100cm品を貫通した袋部に挿入した。
以下、評価法は実施例1に準じて処した。
【0035】
(評価結果)
トマトの苗が成長しはじめると送水量も増え始めるが、途中から送水量が増えなくなってきた。この時点まで栽培観察を続け、先述の判断基準で実施例と比較例の評価をした結果を表1にまとめた。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1〜6、比較例1〜4の評価結果より、撚糸をすると甘撚りでも経糸と緯糸の交差部分に微細孔が発現してくる。これは撚糸による断面が丸みを帯びてくるためである。但し、無撚糸と言えども整経時の解じょ撚りは10T/m未満で発生するが、この程度では糸断面に丸みを帯びさすまでに至らないのでフィラメント群が整然と扁平状に隙間無く並び、微細孔が発生しない。また、交絡度も30個/mを超えるとフィラメントの整列が悪くなり始め、経緯糸交差部分の微細孔発現に繋がる。また、袋部分の幅は10mmを下回ると送水性が少なくなりはじめるため、ストレス栽培に必要な最低量を満たさなくなる。望ましい条件として、無撚糸で交絡度が10個/m近辺で、袋部を構成する織物のカバーファクター値が1100〜2000、接結部を構成する織物のカバーファクター値が1800〜3000の範囲が、更にまた、透水係数で10−6〜10−4cm/秒付近が好ましいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は農業用途、特にハウス園芸で簡単、低コスト、高品質、高収益果菜類や、果物類の糖度向上栽培であるストレス栽培用資材を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のホース状袋織物の接結部中央で溶断する前の図である。
【図2】本発明のホース状袋織物に繊維構造体を挿入した図である。
【符号の説明】
【0040】
1:袋織物
2:袋部
3:接結部
4:溶断部
5:ホース状袋織物
6:袋部
7:接結部
8:繊維構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通した袋部と接結部を有する袋織物であって、織物を構成する繊維が合成繊維であり、袋部を構成する織物のカバーファクター値が1150〜2200で、透水係数が10−6〜10−3cm/秒であり、接結部を構成する織物のカバーファクター値が1800〜3000であり、袋部内に断面積が30〜310000平方ミリメートルの繊維構造体が充填されてなる農業資材用袋織物。
【請求項2】
接結部を構成する織物が緯糸に対する経糸の浮きが2本以上である組織で構成される請求項1に記載の農業資材用袋織物。
【請求項3】
経糸が撚り数が10回/m以下、且つ交絡度が30個/m以下の実質的に仮撚倦縮のないポリエステルフィラメントからなる請求項1または2に記載の農業資材用袋織物。
【請求項4】
袋部の幅が10〜1000mmであり、接結部の幅が5mm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の農業資材用袋織物。
【請求項5】
該袋織物が、接結部を溶断方法にて長さ方向にカットすることでホース形状袋織物を得ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の農業資材用袋織物。
【請求項6】
植物が必要とする土壌水分補給を、請求項1〜5のいずれかに記載の農業資材用袋織物を、その土壌中に挿入する一端が他端が浸っている溜水水面位置より1〜100cm高い状態で使用することにより補給することを特徴とする植物栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−86256(P2008−86256A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270478(P2006−270478)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】