説明

遮水シートの漏水検知方法

【課題】廃棄物の投入前、投入後、及び投入完了後に容易に精度良く遮水シートの破損の有無及び破損箇所の推定を行うことができる遮水シートの漏水検知方法を提供する。
【解決手段】下層遮水シート1と上層遮水シート2との間を隔壁6によって複数に区画し、各区画室7内に少なくとも一つの測定電極10を配置し、上層遮水シート2の上部及び下層遮水シート1の下部にそれぞれ電流電極11を配置し、各区画室7にそれぞれ管部材14を接続し、測定電極10と電流電極11とを電気漏水検知装置に接続し、管部材14を真空漏水検知装置に接続する。廃棄物の投入前においては、真空漏水検知装置により両遮水シート1、2の破損の有無の検知を行い、廃棄物の投入開始後及び投入完了後においては、電気漏水検知装置又は真空漏水検知装置の少なくとも何れか一方により、両遮水シート1、2の破損の有無の検知又は破損箇所の推定の少なくとも何れか一方を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水シートの漏水検知方法に関し、特に、産業廃棄物や一般廃棄物を埋立て処分する廃棄物処分場の内面に敷設された遮水シートの破損箇所の有無の検知及び破損箇所の推定を行うのに有効な遮水シートの漏水検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物や一般廃棄物を埋立て処分する廃棄物処分場においては、廃棄物から浸出する有害物質等を含む汚水が地盤内に浸透し、地下水脈等に混入して周囲の環境を汚染する虞があるため、処分場の内面に遮水シートを敷設し、廃棄物から浸出する汚水が地盤内に浸透するのを防止している。
この場合、遮水シートの上部に不織布等からなる保護マットを敷設し、その上部に保護土層を所定の厚さで設けた上で、保護土層の上部に廃棄物を収容することが義務付けられている。
【0003】
上記のような廃棄物処分場に敷設される遮水シートの破損の有無及び破損箇所の推定を行う方法として、例えば、特許文献1には、遮水シートの上部に測定電極を所定の間隔で配置し、遮水シートの下部(地盤)に電流電極を配置し、処分場の外部に配置した電気漏水検知装置から各測定電極と電流電極との間に電圧を印加し、各測定電極における漏洩電流を検知し、この検知したデータに基づいて各測定電極における電位分布等を求めることにより、遮水シートの破損の有無及び破損箇所の推定を電気的に検知する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2000−202392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような検知方法によって遮水シートの破損の有無及び破損箇所の推定を遮水シートの施工の完了後に行う場合、遮水シートの上部に敷設される不織布からなる保護マットが乾燥状態では電気を通さないため、処分場内に水を溜めて保護マットを電気が流れる状態にし、遮水シートの破損の有無及び破損箇所の推定を行う必要がある。
【0005】
しかし、保護マットの湿潤の程度やばらつきによって電気の流れ方が大きく影響を受けるため、遮水シートの破損の有無及び破損箇所の推定を精度良く行うことができない。また、処分場内に水を溜める場合には大量の水が必要になるため、水を溜めるために長時間を要することになり、さらに、浸出水の集水排水管等の電気を通す経路が敷設されている場合には、その経路によっても電気の流れ方が大きく影響を受けてしまう。
【0006】
さらに、処分場の法面部には保護マットしか設けられていないため、法面部の遮水シートの破損の有無、破損箇所の推定を行う場合には、保護マットを降雨や散水によって湿潤した後に、破損の有無及び破損箇所の推定を行うことになるが、保護マットの湿潤の程度やばらつきによって電気の流れ方が大きく影響を受けてしまい、精度良く破損の有無及び破損箇所の推定を行うことができない。
【0007】
さらに、遮水シートの接合部に不具合があった場合には、接合部では遮水シートが重なった状態となっているために水が通りにくく、電気が流れにくいため、接合部の不具合を精度良く検知することが困難である。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、遮水シートの施工完了後に、遮水シート全体の破損の有無及び破損箇所の推定を容易に精度良く行うことができるとともに、遮水シートの接合部の不具合も精度良く検知することができる遮水シートの漏水検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、廃棄物処分場の底面に二重に敷設される遮水シートの漏水検知方法であって、下層遮水シートと上層遮水シートとの間を隔壁によって複数に区画し、各区画室内に少なくとも一つの測定電極を配置し、前記上層遮水シートの上部及び前記下層遮水シートの下部にそれぞれ電流電極を配置し、前記各区画室にそれぞれ管部材を接続し、前記測定電極と前記電流電極とを電気漏水検知装置に接続し、前記管部材を真空漏水検知装置に接続し、廃棄物の投入前においては、前記真空漏水検知装置により前記下層遮水シート及び前記上層遮水シートの破損の有無の検知を行い、廃棄物の投入開始後及び投入完了後においては、前記電気漏水検知装置又は前記真空漏水検知装置の少なくとも何れか一方により、前記下層遮水シート及び前記上層遮水シートの破損の有無の検知又は破損箇所の推定の少なくとも何れか一方を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明による遮水シートの漏水検知方法によれば、廃棄物の投入前においては、真空漏水検知装置により管部材を介して各区画室内を真空吸引し、各区画室内の圧力の変化を検知することにより、各区画室に対応する下層遮水シート及び上層遮水シートの部分の破損の有無を検知することができる。
また、廃棄物の投入開始後及び投入完了後においては、真空漏水検知装置により管部材を介して各区画室内を真空吸引し、各区画室内の圧力の変化を検知することにより、各区画室に対応する下層遮水シート及び上層遮水シートの部分の破損の有無を検知することができる。
さらに、廃棄物の投入開始後及び投入完了後においては、真空漏水検知装置により管部材を介して各区画室内を真空吸引し、各区画室内の圧力の変化を検知することにより、各区画室に対応する下層遮水シート及び上層遮水シートの部分の破損の有無を検知することができる。廃棄物の投入開始後及び投入完了後においては、電気漏水検知装置により各測定電極と各電流電極との間に電圧を印加し、各測定電極における漏洩電流を検知することにより、各区画室に対応する下層遮水シート及び上層遮水シートの破損の有無の検知及び破損箇所の推定を行うこともできる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の遮水シートの漏水検知方法であって、前記管部材を、止水剤の注入装置に接続可能に構成したことを特徴とする。
【0012】
本発明による遮水シートの漏水検知方法によれば、真空漏水検知装置又は電気漏水検知装置により各区画室に対応する下層遮水シート及び上層遮水シートの破損の有無を検知した場合に、管部材を注入装置に接続し、注入装置から管部材を介して対象となる区画室内へ止水剤を注入することにより、その区画室に対応する下層遮水シート及び上層遮水シートの破損箇所を補修することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の遮水シートの漏水検知方法であって、前記隔壁は、前記上層遮水シートと一体又は別体に形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明による遮水シートの漏水検知方法によれば、下層遮水シートの上部に敷設される上層遮水シートと一体又は別体に形成される隔壁により、下層遮水シートと上層遮水シートとの間が複数の区画室に区画されることになる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1から3の何れかに記載の遮水シートの漏水検知方法であって、前記各区画室内には導電性を有する保護部材がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明による遮水シートの漏水検知方法によれば、各区画室内に設けられている保護部材により、各区画室を構成する下層遮水シートと上層遮水シートとの間が所定の間隔に保持される。また、保護部材が導電性を有していることにより、電気抵抗による検知感度を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように、本発明による遮水シートの漏水検知方法によれば、廃棄物の投入前及び投入開始後においては、真空漏水検知装置により各区画室に対応する下層遮水シート及び上層遮水シートの破損の有無を検知することができることになる。
従って、上層遮水シートの上面の全体(処分場の内面の全体)の上部に電気を通さない不織布等からなる保護部材が敷設されていても、保護部材の存在によって各区画室に対応する下層遮水シート及び上層遮水シートの破損の有無の検知が影響を受けるようなことはなく、下層遮水シート及び上層遮水シートの破損の有無を精度良く検知することができる。
また、廃棄物の投入開始後においては、電気漏水検知装置により各区画室に対応する下層遮水シート及び上層遮水シートの破損の有無の検知及び破損箇所の推定を行うことができることになる。従って、破損を検知し、破損箇所を推定した区画室の上方の部分の廃棄物を掘り返すことにより、遮水シートの破損箇所を補修することができる。
さらに、廃棄物の投入完了後においては、電気漏水検知装置により各区画室に対応する下層遮水シート及び上層遮水シートの破損の有無の検知及び破損箇所の推定を行うことができることになる。従って、廃棄物の投入完了後においては、破損を検知した区画室に対してのみ注入装置から管部材を介して止水剤を注入することにより、その区画室に対応する下層遮水シート及び上層遮水シートの破損箇所の補修を行うことができる。
さらに、保護部材が導電性を有していることにより、電気抵抗による検知感度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1に、本発明による遮水シートの漏水検知方法の一実施の形態を示す。この遮水シートの漏水検知方法は、産業廃棄物や一般廃棄物(以下、「廃棄物」という。)を埋め立て処分する廃棄物処分場に適用可能なものであって、廃棄物の投入前、投入開始後、投入完了後に遮水シートの破損の有無の検知及び破損箇所の推定を行うのに有効なものである。
【0019】
すなわち、本実施の形態の遮水シートの漏水検知方法は、廃棄物処分場(以下、「処分場20」という。)の内面21の全体を覆うように遮水シート1、2を二重に敷設し、下側の遮水シート(以下、「下層遮水シート1」という。)及び上側の遮水シート(以下、「上層遮水シート2」という。)の破損の有無の検知及び破損箇所の推定を真空漏水検知装置(図示せず)及び電気漏水検知装置(図示せず)により行うように構成したものである。
【0020】
下層遮水シート1は、遮水性を有する素材(合成ゴム系、合成樹脂系等)からなる所定の厚さ、幅、長さのシート状をなすものであって、処分場20の内面21の全体(底面及び法面の全体)を覆うように、複数枚の下層遮水シート1が敷設されている。この場合、隣接する下層遮水シート1の縁部間は、互いに重合された状態でシーム溶接機等を用いて熱融着、熱圧着等により水密に一体に接合されている。
【0021】
下層遮水シート1の下部には、不織布、反毛フェルト、織布等からなるシート状の下層保護部材12が敷設されている。この下層保護部材12によって下層遮水シート1が処分場20の内面21に直接接触することが防止され、下層遮水シート1が処分場20の内面21の凹凸によって傷付けられたり、破損したりすることが防止される。なお、下層保護部材12は、必要に応じて設ければよい。
【0022】
上層遮水シート2は、下層遮水シート1と同様に、遮水性を有する素材(合成ゴム系、合成樹脂系等)からなる所定の厚さ、幅、長さのシート状をなすものであって、下層遮水シート1の上面の全体を覆うように、複数枚の上層遮水シート2が下層遮水シート1の上面側に敷設されている。
【0023】
複数枚の上層遮水シート2は、例えば、隣接する上層遮水シート2、2の縁部2a、2a同士が所定の幅で互いに重合されるとともに、各重合部3における下側の上層遮水シート2の縁部2aが下層遮水シート1の上面の接合部4においてにシーム溶接機等を用いて熱融着、熱圧着等により水密に一体に接合され、各重合部3における上側の上層遮水シート2の縁部2aが下側の上層遮水シート2の上面の接合部5においてシーム溶接機等を用いて熱融着、熱圧着等により水密に一体に接合されている。
【0024】
これにより、各重合部3に対応する両接合部(下側の上層遮水シート2の接合部4及び上側の上層遮水シート2の接合部5)間に位置する下側の上層遮水シート2の部分が下層遮水シート1と上層水シート2との間を区画する隔壁6として機能し、この隔壁6により下層遮水シート1と上層遮水シート2との間が複数の袋状の区画室7に区画される。
【0025】
なお、隔壁6を上層遮水シート2と別体のシート状に形成し、この隔壁6を下層遮水シート1と上層遮水シート2との間に介在させ、この状態で隔壁6の両端を下層遮水シート1及び上層遮水シート2にシーム溶接機等を用いて熱融着、熱圧着等によって一体に接合するように構成してもよい。なお、この場合には、隔壁6を上層遮水シート2と同一素材(合成ゴム系、合成樹脂系等)とするのが好ましい。
【0026】
上層遮水シート2の上部には、下層遮水シート1の下部と同様に、不織布、反毛フェルト、織布等からなるシート状の上層保護部材13が敷設され、この上層保護部材13によって上層遮水シート2の上面の全体が被覆される。
【0027】
上層保護部材13の上部には保護土層15が所定の厚さで設けられ、この保護土層15の上部に廃棄物25が収容される。保護土層15は、処分場20の底部のみに設けられ、処分場20の法面の部分は上層保護部材13が露出した状態となっている。保護土層15と上層保護部材13とにより、廃棄物25が上層遮水シート2に直接接触するのが防止される。
【0028】
各区画室7内には導電性を有する中層保護部材8がそれぞれ介装されている。中層保護部材8は、導電性を有する部材を混入又は織り込んだ不織布、反毛フェルト、織布等からなるシート状をなすものであって、各区画室7の略全体に行き渡るように介装され、この中層保護部材8によって各区画室7の下層遮水シート1と上層遮水シート2との間が所定の間隔に保持されている。また、この中層保護部材8が導電性を有していることにより、電気抵抗による検知感度を高めることができる。
【0029】
各区画室7を構成する上層遮水シート2の中央部下面及び縁部下面には、それぞれ測定電極10が複数箇所に設けられ、この測定電極10と上層保護部材13の上面に配置される電流電極11及び下層保護部材12の下面に配置される電流電極11とは、それぞれ配線を介して処分場20の外部に設置されている電気漏水検知装置に接続されている。
【0030】
電気漏水検知装置を作動させることにより、各測定電極10と各電流電極11との間に所定の電圧が印加され、このときの各測定電極10における漏洩電流を検知し、この検知したデータに基づいて各測定電極10における電位分布等を求めることにより、各測定電極10に対応する下層遮水シート1及び上層遮水シート2の部分の破損の有無の検知、及び破損箇所の推定を行うことができる。
【0031】
測定電極10は、例えば、各区画室7の上層遮水シート2の中央部下面側に格子状をなすように複数箇所に配置される(図中に10Aで示す)とともに、この格子状に配置された複数の測定電極10を囲むように上層遮水シート2の縁部2a下面側に縁部2aに沿って所定の間隔ごとに複数箇所(図中に10Bで示す)に配置される。
【0032】
このように複数の測定電極10を配置することにより、下層遮水シート1及び上層遮水シート1の中央部だけでなく、下層遮水シート1と上層遮水シート2との重合部3においても、破損の有無の検知及び破損箇所の推定を精度良く行うことができる。
【0033】
なお、測定電極10及び電流電極11は、耐腐食性に優れたステンレス材等を素材として形成するのが好ましい。また、電流電極11は、処分場20の保護土層15の上部に収容される廃棄物25の内部、及び下層保護部材12の下部の地盤30に配置するように構成してもよい。
【0034】
各区画室7には、管部材14の一端が上層遮水シート2を貫通した状態で接続され、この管部材14の他端は処分場20の外部に引き出されて、処分場20の外部に設けられている真空漏水検知装置に接続されている。真空漏水検知装置を作動させて、管部材14を介して各区画室7内を真空吸引し、各区画室7内の圧力の変化を検知することにより、各区画室7に対応する下層遮水シート1及び上層遮水シート2の破損の有無が検知される。
【0035】
また、処分場20の外部には注入装置が設けられ、この注入装置に管部材14の他端を接続することで、注入装置から管部材14を介して各区画室7内に止水剤を注入することができ、各区画室7に対応する下層遮水シート1及び上層遮水シート2の破損箇所を補修することができる。
【0036】
なお、各区画室7に2本の管部材14を接続し、一方の管部材14を止水剤の注入用として使用し、他方の管部材14を止水剤の溢出用として使用することにより、各区画室7内に止水剤が充填されたか否かを確認することができる。
【0037】
そして、上記のように構成した本実施の形態による遮水シートの漏水検知方法により下層遮水シート1及び上層遮水シート2の破損の有無を検知するには、廃棄物の投入前においては、真空漏水検知装置を作動させて、管部材14を介して各区画室7内を真空吸引し、各区画室7内の圧力の変化を検知することにより、各区画室7に対応する下層遮水シート1及び上層遮水シート2の破損の有無を検知する。
【0038】
ここで、遮水シート1、2に破損を検知した場合には、対象となる区画室7の上層遮水シート2及び下層遮水シート1の破損箇所を目視等により特定し、特定した破損箇所に補修シートをバーナーで炙って接着させる等の補修方法によって補修する。そして、破損箇所が完全になくなった後に、上層保護部材13の上部に所定の厚さで保護土層15を設け、この保護土層15の上部に廃棄物25の投入を開始する。
【0039】
また、廃棄物25の投入開始後においては、真空漏水検知装置を作動させて、管部材14を介して各区画室7内を真空吸引し、各区画室7内の圧力の変化を検知することにより、各区画室7に対応する下層遮水シート1及び上層遮水シート2の破損の有無を検知する。
【0040】
ここで、遮水シート1、2に破損を検知した場合には、電気漏水検知装置を作動させ、電気漏水検知装置により各測定電極10と各電流電極11との間に所定の電圧を印加し、各測定電極10における漏洩電流を検知し、その検知したデータに基づいて各測定電極10における電位分布等を求めることにより破損箇所を推定する。そして、その推定した破損箇所に対応する部分を掘り起こし、上層遮水シート2及び下層遮水シート1を露出させ、バーナーで炙る等の補修方法により破損箇所を補修する。
【0041】
さらに、廃棄物25の投入完了後においては、電気漏水検知装置を作動させ、電気漏水検知装置により各測定電極10と各電流電極11との間に所定の電圧を印加し、各測定電極10における漏洩電流を検知し、その検知したデータに基づいて各測定電極10における電位分布等を求めることにより遮水シート1、2の破損の有無を検知する。
【0042】
ここで、破損を検知した場合には、対象となる区画室7に接続されている管部材24の他端を注入装置に接続し、注入装置から管部材14を介してその区画室7内に止水剤を注入し、その区画室7内に止水剤を充填して固化させることにより、上層遮水シート2及び下層遮水シート1の破損箇所を補修する。
なお、廃棄物の投入完了後においては、真空漏水検知装置を作動させて、各区画室7を真空吸引することにより、遮水シート1、2の破損の有無を検知するように構成してもよい。
【0043】
上記のように構成した本実施の形態による遮水シートの検知方法にあっては、廃棄物25の投入前においては、真空漏水検知装置により各区画室7に対応する下層遮水シート1及び上層遮水シート2の破損の有無を検知するように構成したので、下層遮水シート1及び上層遮水シート2の施工完了後に両遮水シート1、2の破損の有無を検知することができる。
【0044】
従って、下層遮水シート1及び上層遮水シート2の施工完了後に、上層遮水シート2の上部に上層保護部材13及び保護土層15を設け、処分場20内に水を溜めて上層保護部材13を湿潤させた後に、上層遮水シート2及び下層遮水シート1の破損の有無を検知する必要はないので、下層遮水シート1及び上層遮水シート2の施工完了後の破損の有無の検査を容易に精度良く行うことができる。
【0045】
また、廃棄物25の投入開始後においては、真空漏水検知装置で遮水シート1、2の破損の有無を検知した区画室7に対して、電気漏水検知装置により遮水シート1、2の破損箇所を推定することができるので、推定した破損箇所に対応する部分のみを掘り返して補修することができ、下層遮水シート1及び上層遮水シート2の破損箇所の補修を容易に行うことができる。
【0046】
さらに、廃棄物25の投入完了後においては、真空漏水検知装置又は電気漏水検知装置により各区画室7に対応する下層遮水シート1及び上層遮水シート2の破損の有無を検知し、破損を検知した場合には、対象となる区画室7に接続されている管部材14を介して注入装置からその区画室7に止水剤を注入し、充填することにより、対象となる区画室7の下層遮水シート1及び上層遮水シート2の破損箇所を補修するこができる。
従って、廃棄物25を撤去して補修する必要がないので、補修に要する時間及び手間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による遮水シートの漏水検知方法の一実施の形態の概略断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 下層遮水シート
2 上層遮水シート
2a 縁部
3 重合部
4 接合部
5 接合部
6 隔壁
7 区画室
8 中層保護部材
10 測定電極
11 電流電極
12 下層保護部材
13 上層保護部材
14 管部材
15 保護土層
20 処分場
21 内面
25 廃棄物
30 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物処分場の底面に二重に敷設される遮水シートの漏水検知方法であって、
下層遮水シートと上層遮水シートとの間を隔壁によって複数に区画し、各区画室内に少なくとも一つの測定電極を配置し、前記上層遮水シートの上部及び前記下層遮水シートの下部にそれぞれ電流電極を配置し、前記各区画室にそれぞれ管部材を接続し、
前記測定電極と前記電流電極とを電気漏水検知装置に接続し、前記管部材を真空漏水検知装置に接続し、
廃棄物の投入前においては、前記真空漏水検知装置により前記下層遮水シート及び前記上層遮水シートの破損の有無の検知を行い、
廃棄物の投入開始後及び投入完了後においては、前記電気漏水検知装置又は前記真空漏水検知装置の少なくとも何れか一方により、前記下層遮水シート及び前記上層遮水シートの破損の有無の検知又は破損箇所の推定の少なくとも何れか一方を行うことを特徴とする遮水シートの漏水検知方法。
【請求項2】
前記管部材を、止水剤の注入装置に接続可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の遮水シートの漏水検知方法。
【請求項3】
前記隔壁は、前記上層遮水シートと一体又は別体に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮水シートの漏水検知方法。
【請求項4】
前記各区画室内には導電性を有する保護部材がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の遮水シートの漏水検知方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−284454(P2008−284454A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131664(P2007−131664)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000121844)応用地質株式会社 (36)
【出願人】(000204099)太洋興業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】