説明

選別装置

【課題】高い次元で処理速度の向上と選別信頼性の向上との両立を実現することのできる選別装置を提供すること。
【解決手段】この選別装置Sは、廃棄物Pを投入する投入口1と、廃棄物Pを搬送するローラーコンベア2と、ローターディスク12を回転駆動するモータ4と、ローラーコンベア2を傾斜保持するシリンダ6とを有し、廃棄物Pを、軽量物P1と、重量物P2と、細粒物P3とに選別する選別装置Sであって、ローラーコンベア2は、ローターディスク12が複数配置されたローター軸10を、傾斜下部側Dから傾斜上部側Uにかけて複数平行配置して構成され、かつ、モータ4が、傾斜上部側Uのローターディスク12と傾斜下部側Dのローターディスク12とを異なる回転速度で回転駆動している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選別装置に係り、特に複数のローターディスクを有するローラーコンベアを利用して、重量物、軽量物、細粒物等が混在する混合物を選別することのできる選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な物体が混合した混合物を、その物体の態様(物性)に応じて選別する選別装置が知られている。例えば、選別装置は、土砂、石、ビニール袋、ペットボトル、空き缶、木材等が混在する混合廃棄物を、比重、重量、形状に基づく空気抵抗などに応じて、選別することができるようになっている。
【0003】
この選別装置の一態様として、ローラーコンベアを用いたものがある(例えば、特許文献1を参照。)。ローラーコンベアは、同軸に複数のローターディスクが取り付けられてローター軸が構成され、そのローター軸が平行に複数並んで配置されたものである。
【0004】
この種の選別装置においては、例えば、このローラーコンベアを傾斜配置して傾斜上部側に向けて混合物を搬送するようにローターディスクを回転駆動させる。それにより、混合物中の軽量物はローターディスクにより傾斜上部側へと搬送され、重量物はその重量により傾斜下部側へと滑落し、細粒物はローターディスク間の隙間から下方に落下するように選別される。このように、このローラーコンベアではローターディスクを複数有して混合物の選別を行うので、ロータースクリーンとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−260414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このローラーコンベアタイプの選別装置においては、より一層の処理速度の向上と選別の信頼性向上が望まれている。その処理速度や信頼性は、ローターディスクの回転速度や外形形状、ローラーコンベアの傾斜角度等に依存する部分が大きい。ここで、選別の信頼性が高いとは、重量物側に軽量物が混ざったり軽量物側に重量物が混ざったりすることが殆どなく、重量物と軽量物との選別を確実に行える能力を言う。
【0007】
例えば、処理速度向上のために、ローターディスクの回転速度を一律に増速させると、石や木材等の重量物でさえ傾斜上部へと搬送されてしまう傾向となり、軽量物側に重量物が混ざってしまう。そのため、選別の信頼性低下を招いてしまう。一方、重量物の滑落を確実とするためにローラーコンベアの傾斜角度を増大させると、今度は紙くずやビニール袋などの軽量物が傾斜面を上りきれず、重量物側に軽量物が混ざってしまうこととなる。
【0008】
また、より確実な選別信頼性のために回転速度や傾斜角度を減少させると、処理速度が低下し、単位時間当たりの処理量が減少してしまう。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、すなわち、高い次元で処理速度の向上と選別信頼性の向上との両立を実現することのできる選別装置を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の例示的側面としての選別装置は、廃棄物を投入する投入口と、複数のローターディスクの回転により廃棄物を搬送するローラーコンベアと、ローターディスクを回転駆動する駆動手段と、ローラーコンベアを搬送方向に向けて上り傾斜に傾斜保持する保持手段とを有し、廃棄物を、ローラーコンベアによって傾斜上部へと搬送される第1物体と、ローラーコンベアの搬送に拘らず傾斜下部へと滑落する第2物体と、複数のローターディスクの隙間から下方に落下する第3物体とに選別する選別装置であって、ローラーコンベアは、ローターディスクが同軸に複数配置されて構成されたローター軸を、傾斜下部側から傾斜上部側にかけて軸方向を平行に複数配置して構成され、かつ、駆動手段が、傾斜上部側のローターディスクと傾斜下部側のローターディスクとを異なる回転速度で回転駆動することを特徴とする。
【0011】
傾斜上部側のローターディスクの回転速度と傾斜下部側のローターディスクの回転速度とを各々異なる回転速度で回転駆動しているので、選別装置の処理速度の向上と選別信頼性の向上とを高い次元で両立させることができる。例えば、傾斜上部側のローターディスクを傾斜下部側よりも高速回転させると、ローラーコンベアの中ほどで上部側へ搬送されつつある第1物体を、より高速かつより強力に上部側へと搬送することができる。そして、ローラーコンベアの中ほどで下部側へと滑落しつつある第2物体を、より円滑に下部側へと滑落させることができる。
【0012】
第1物体と第2物体の境界近傍の特性を有する物体が、ローラーコンベアの中ほどで滞留する時間を短縮し、より高速な選別を実現することができる。また、滑落しかけた物体の滑落を推進し、上部側へ搬送されかけた物体の搬送を促進する機能を発揮するので、第1物体と第2物体とを明確に切り分けることができ、選別信頼性を向上させることができる。
【0013】
もちろん、設計上の都合によっては、傾斜上部側のローターディスクの回転速度を低速にし、傾斜下部側のローターディスクの回転速度を高速にすることもできる。それにより、積極的にローラーコンベア上での混合物の滞留時間を長時間とすることができる。第3物体の搬送や滑落を防止して、確実に第3物体をローターディスクの隙間から下方へ落下させることができる。
【0014】
なお、ここで第1物体とは典型的には軽量物であり、紙くず、ビニール袋、綿埃、小片(金属、プラスチック、木材等を材料とするもの)などを例示することができる。また、第2物体とは典型的には重量物であり、岩石、空き缶、ペットボトル、廃材(ここでは、金属、プラスチック、木材を材料とする比較的大きく重量のある物体を意味する。)などを例示することができる。第3物体とは典型的には細粒物であり、土砂、小石などを例示することができる。
【0015】
傾斜上部側又は傾斜下部側の少なくともいずれか一方において、より上部側のローターディスクの回転速度がより下部側のローターディスクの回転速度よりも高速回転してもよい。
【0016】
より下部側のローターディスクの回転速度が比較的低速で、より上部となるに従い高速回転しているので、混合物のローラーコンベア上での滞留時間を短縮することができる。したがって、効率的に処理速度の向上と選別信頼性の向上とを実現することができる。
【0017】
その選別装置において、駆動手段が、傾斜上部側のローターディスクを、傾斜下部側のローターディスク回転速度の1.4倍以上の回転速度で回転駆動することが望ましい。
【0018】
傾斜上部側のローターディスクの回転速度が傾斜下部側のローターディスクの回転速度の1.4倍以上となっているので、混合物のローラーコンベア上での滞留時間を充分に短縮することができる。したがって、効率的に処理速度の向上と選別信頼性の向上とを実現することができる。
【0019】
その選別装置において、駆動手段が、複数本のうちの傾斜上部側における実質的に半分の本数のローター軸に係るローターディスク回転速度と、傾斜下部側における残りの本数のローター軸に係るローターディスク回転速度と、を異なる回転速度で回転駆動することが望ましい。
【0020】
回転速度が異なる傾斜上部側と傾斜下部側との境界部をローラーコンベアの略中央部に設定することができる。したがって、ローラーコンベアの上端又は下端に到達するまでに、第1物体にも第2物体にも選別のための充分な距離を確保することができる。なお、実質的に半分の本数とは、例えば、ローター軸が総数で偶数の場合はその半数、総数で奇数の場合はその半数に近い整数を意味する。例えば、ローター軸が総数で7本の場合は、傾斜上部側のローター軸を4本、傾斜下部側のローター軸を3本としてもよいし、傾斜上部側を3本、傾斜下部側を4本としてもよい。
【0021】
その選別装置において、投入口が、傾斜上部側のローターディスクと傾斜下部側のローターディスクとの境界近傍に配置されることが望ましい。
【0022】
投入口が傾斜上部側と傾斜下部側との境界近傍、すなわち異なる回転速度のローターディスク間の境界近傍に配置されているので、傾斜下部側へ投入されてしまった第1物体がスムーズかつ迅速に傾斜上部側へと搬送される。また、傾斜上部側へ投入されてしまった第2物体もスムーズかつ迅速に傾斜下部側へと滑落する。したがって、この選別装置における一層の処理速度向上と選別信頼性向上とに寄与することができる。
【0023】
選別装置が、ローラーコンベアの傾斜角度又はそれ以上の傾斜角度で、傾斜下部側から傾斜上部側へ向けて送風する送風手段を、ローラーコンベアの上方に更に有することが望ましい。
【0024】
投入口から投入された混合物を、送風手段からの送風により適度に分散させてローラーコンベア上に落下させることができる。その際、混合物内の物体のうち、低比重の物体や軽量の物体や空気抵抗の大きい物体等を、選択的に風下側へと分散させることができる。
【0025】
例えば、岩石や廃材等の重量物については送風の影響を殆ど与えずに、紙くずやビニール袋などの軽量物を風下側(すなわち、傾斜上部側。)へと分散させることができる。したがって、ローラーコンベア上に到達する前に、混合物の粗選別を実施することができ、この選別装置における一層の処理速度向上と選別信頼性向上とに寄与することができる。
【0026】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、傾斜上部側のローターディスクの回転速度と傾斜下部側のローターディスクの回転速度とを異なる回転速度で回転駆動することにより、処理速度の向上と選別信頼性の向上との両立を高い次元で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る選別装置の内部構造の概略を示す構造図である。
【図2】図1に示すローラーコンベアの内部構造を正面から見た正面図である。
【図3】図2に示すローター軸の二面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態に係る選別装置Sについて、図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る選別装置Sの内部構造の概略を示す構造図である。図1は、選別装置Sの内部を側方から見た図である。この選別装置Sは、投入口1、ローラーコンベア2、モータ(駆動手段)4、シリンダ(保持手段)6を有して大略構成され、そのローラーコンベア2には送風機(送風手段)8が取り付けられている。
【0030】
投入口1は、廃棄物(混合物)Pを投入するための開口であり、ローラーコンベア2の上方に配置されている。廃棄物Pは、例えば、家庭内や事業所、作業現場等から排出され、紙くず・小片・ビニール袋等の軽量物(第1物体)P1、岩石・廃材・空き缶等の重量物(第2物体)、土砂・小石等の細粒物(第3物体)を混合的に含んでいる。投入口1から投入された廃棄物Pは、ローラーコンベア2上に落下し、ローラーコンベア2によって搬送方向Xへと搬送される軽量物P1、搬送方向Xの逆方向−Xへと滑落する重量物P2、ローターディスク12の隙間G(図2参照)から下方へと落下する細粒物P3とに選別されるようになっている。
【0031】
ローラーコンベア2は、後述するシリンダ6によって例えば、傾斜角θで傾斜配置されており、その傾斜上部側Uの下方には、ローラーコンベア2の上端2aから排出される軽量物P1を回収するためのストッカーT1が配置されている。傾斜下部側Dの下方には、ローラーコンベア2の下端2bから排出される重量物P2を回収するためのストッカーT2が配置されている。ローラーコンベア2の略中央下方には、隙間Gから落下する細粒物P3を回収するためのストッカーT3が配置されている。
【0032】
ローラーコンベア2は、複数のローターディスクの回転により混合物を搬送するためのものである。図2は、このローラーコンベア2の内部構造を正面(図1における矢印A方向)から見た正面図である。ローラーコンベア2は、複数のローター軸10を有しており、本実施の形態においては、ローター軸10を7本有している。そのローター軸10は、ローラーコンベア2の搬送方向Xと直交する方向を軸方向Yとして、搬送方向Xに沿って互いに平行に配置されている。
【0033】
図3は、このローター軸10の二面図である。ローター軸10は軸部材11と複数のローターディスク12とを有している。ローターディスク12は、軸部材11に同軸状に一定間隔で複数取り付けられており、軸部材11と共に回転するようになっている。そのローターディスク12は、図3に示すように、頂部12aと凹部12bとを有して丸みを帯びた略四角形断面形状を呈している。このローターディスク12が回転方向αに回転することにより、頂部12aによって軽量物P1を弾くようにして搬送方向Xへと搬送することができるようになっている。
【0034】
ローターディスク12は、軸方向Yに沿って一定の厚さtを有している。そして、軸方向Yで隣接するローターディスク12同士はその厚さtより大きい寸法間隔で配置されている。図2に示すように、ローター軸10同士は、搬送方向Xに沿って平行に配置されている。そして、搬送方向Xに隣接するローターディスク12同士が、互い違いに入れ子状となるように、ローター軸10が隣接配置されている。この入れ子状となったローターディスク12とローターディスク12との間には隙間Gが形成されている。そして、その隙間Gから、細粒物P3が落下するようになっている。
【0035】
なお、ローター軸10にはその軸端近傍にスプロケット9が取り付けられている。このスプロケット9がチェーン13と係合することにより、モータ4からの駆動力が伝達されるようになっている。
【0036】
モータ4は、ローターディスク12を回転駆動するためのものである。より具体的には、モータ4は、チェーン(伝達手段)13を介してローター軸10を回転駆動することにより、ローターディスク12を回転させるようになっている。モータ4は、ローターディスク12を回転方向αに回転駆動することにより、軽量物P1を搬送方向Xへと搬送する。
【0037】
本実施の形態においては、選別装置Sは、傾斜上部側Uの4本のローター軸10を回転駆動する上部側モータ4aと、傾斜下部側Dの3本のローター軸10を回転駆動する下部側モータ4bとを有している。そして、上部側モータ4aは下部側モータ4bよりも高速で駆動され、その結果、傾斜上部側Uのローター軸10及びローターディスク12は、傾斜下部側Dのローター軸10及びローターディスク12の回転速度の約1.4倍の回転速度で駆動されるようになっている。
【0038】
なお、上部側モータ4aと下部側モータ4bの2つのモータ4を用いるのでなく、1つのモータ4によって傾斜上部側Uのローター軸10と傾斜下部側Dのローター軸10とを異なる回転速度で駆動することも可能である。その場合、チェーン13と係合する傾斜上部側Uのローター軸10に係るスプロケット9の歯数を傾斜下部側Dのローター軸10に係るスプロケット9の歯数よりも少なくすればよい。
【0039】
シリンダ6は、ローラーコンベア2を搬送方向Xに向けて上り傾斜となるように傾斜保持するためのものである。シリンダ6は、ローラーコンベア2を下方で支持しており、その傾斜上部側Uが上、傾斜下部側Dが下となるように保持している。その傾斜角θは、図示しない高さ調整手段によって、この選別装置Sが処理する廃棄物Pの種類等に応じて調整可能となっている。
【0040】
送風機8は、投入口1から投入された廃棄物Pに向けて送風するためのもので、投入口1の下方であってローラーコンベア2の上方に配置されている。送風機8は、ローラーコンベア2の傾斜角θと平行な方向で、かつ搬送方向Xに向けて(すなわち、傾斜下部側Dから傾斜上部側Uへ向けて)廃棄物Pに送風するようになっている。送風機8は、ローラーコンベア2の傾斜角θ以上で廃棄物Pに向けて送風してもよい。
【0041】
投入口1は、傾斜上部側Uと傾斜下部側Dとの境界近傍の上方に配置されている。本実施の形態においては、傾斜上部側Uの4本のローター軸10と傾斜下部側Dの3本のローター軸10との境界近傍の上方位置に配置されている。したがって、投入口1から投入された廃棄物Pは、送風機8によって分散されてローラーコンベア2上に落下する。その際、軽量物P1は送風の影響を強く受けて、傾斜上部側Uへと流されて落下する。一方、重量物P2は送風の影響を殆ど受けることなく投入口1から略真下に落下する。
【0042】
傾斜上部側Uへと落下した軽量物P1は、回転速度の速い傾斜上部側Uのローターディスク12の回転によって迅速に搬送方向Xへと搬送され、上端2aへと至る。そして、上端2aから排出されて、ストッカーT1内へと回収される。一方、送風の影響を殆ど受けることなく落下した重量物P2は、そのまま回転速度の遅い傾斜下部側Dのローターディスク12上を搬送方向の逆方向(−X方向)へと円滑に滑落して行き、下端2bへと至る。そして、下端2bから排出されて、ストッカーT2内へと回収される。
【0043】
次に、この選別装置Sに投入された廃棄物Pが選別されるまでの手順について説明する予め、選別装置Sのモータ4はローター軸10の回転駆動を開始しており、送風機8は送風を開始している。まず、廃棄物Pを投入口1から投入する。投入された廃棄物Pは、送風機8からの送風により、軽量物P1と重量物P2とに分散されてローラーコンベア2上に落下する。その場合、軽量物P1の大半が傾斜上部側Uのローターディスク12上に落下し、重量物P2の大半が、そのまま略真っ直ぐ下方に(すなわち、傾斜上部側Uと傾斜下部側Dとの境界付近に)落下する。したがって、この時点で送風機8の風によって、廃棄物Pの粗選別が行われる。
【0044】
傾斜上部側Uのローターディスク12上に落下した軽量物P1は、傾斜上部側Uの高速回転によりローターディスク12の頂部12aに弾かれるようにして迅速に搬送方向Xへと搬送されて行き、上端2aへと至る。そして、上端2aから排出されてストッカーT1内へと回収される。
【0045】
なお、一部の重量物P2が傾斜上部側Uのローターディスク12上に落下する場合もあり得る。しかし、重量物P2は、搬送に拘らずその重量により滑落を開始する。投入口1が傾斜上部側Uと傾斜下部側Dとの境界近傍に配置されているので、重量物P2が滑落を開始すると、すぐに傾斜下部側Dのローターディスク12上へと移動する。傾斜下部側Dのローターディスク12は、傾斜上部側Uよりも低速(2/3以下の回転速度)で回転している。したがって、重量物P2は円滑に下端2bへ向けて滑落して行く。下端2bから排出された重量物P2はストッカーT2内へと回収される。
【0046】
そのまま略真っ直ぐ下方に落下した重量物P2は、傾斜上部側Uと傾斜下部側Dとの境界近傍に落下することとなる。そして、傾斜下部側Dのローターディスク12上に落下した重量物P2は、ローターディスク12の回転速度が低いので、その回転方向αへの回転に拘らず円滑に滑落して行く、そして、迅速に下端2bへと至り、ストッカーT2内へと回収される。傾斜上部側Uのローターディスク12上に落下した重量物P2についても、上述したものと同様に、搬送方向Xへ搬送されることなく滑落し、下端2bへと至る。
【0047】
なお、一部の軽量物P1が傾斜下部側Dのローターディスク12上に落下する場合があり得る。しかし、軽量物P1は、ローターディスク12の回転速度が低速であっても、ローターディスク12上を滑落して行くことはなく、弾かれながら徐々に搬送方向Xへと搬送される。そうすると、すぐに傾斜上部側Uのローターディスク12上へと移動することができるので、そのまま迅速に上端2aへと搬送される。
【0048】
なお、細粒物P3については、一部が投入口1からそのまま真っ直ぐに落下し、一部が送風機8の送風によって傾斜上部側Uへと分散される。いずれも細粒物P3についても、搬送されたり滑落したりすることなく、隙間Gから下方に落下し、ストッカーT3によって回収されることとなる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。
【0050】
例えば、本実施の形態においては、傾斜上部側Uのローターディスク12の回転速度を傾斜下部側Dのローターディスク12の回転速度の1.4倍としているが、もちろん傾斜上部側Uのローターディスク12の回転数はそれ以上の回転速度であってもよい。傾斜上部側Uと傾斜下部側Dとでどの程度の回転速度比とするかは、投入される廃棄物Pの種類、ローラーコンベア2の傾斜角θ、ローターディスク12の形状、必要とされる処理速度等に応じて適宜設定可能な事項である。また、場合によっては、傾斜上部側Uのローターディスク12の回転速度を傾斜下部側Dのローターディスク12の回転速度よりも低速とすることも考えられる。廃棄物Pのローラーコンベア2上での滞留時間を長くすることができるので、処理の高速化よりも選別の信頼性向上、特に細粒物P3の確実な選別が要求される場合に適切な方法である。
【0051】
上記実施の形態においては、傾斜上部側Uのローターディスク12の回転速度を傾斜下部側Dのローターディスク12の回転速度の1.4倍としているが、傾斜上部側Uにおける複数のローターディスク12同士の回転速度は同速度であり、傾斜下部側Dにおける複数のローターディスク12同士の回転速度は同速度である。
【0052】
しかし、傾斜上部側U内での複数のローターディスク12の各々の回転速度を、より下部側のものよりもより上部側のものが高速回転となるようにすることもできる。同様に、傾斜下部側D内での複数のローターディスク12の各々の回転速度を、より下部側のものよりもより上部側のものが高速回転となるようにすることもできる。必要に応じて、ローラーコンベア2内の全ローターディスク12を、下方から上方にかけて順次徐々に高速回転となるように構成することもできる。
【0053】
このように、下方から順に上方へ向けて高速回転とすることで、廃棄物Pの態様によっては、一層選別の高速化と信頼性を高い次元で両立させることができる。なお、各ローターディスク12ごとの回転速度調整は、各々別々の駆動モータによることも可能であるが、例えば、ローターディスク12ごとに異なる歯数のスプロケット9を使用し、これらをチェーン13によって連結すれば、1つの駆動モータによって実現することも可能である。
【0054】
また、送風機8による送風方向をローラーコンベア2の傾斜方向と略平行としているが、もちろん送風方向がより一層大きい傾斜であってもよい。より投入口1側へ向けて上向きに送風することで、分散の程度をより強めることができる。
【0055】
なお、ローター軸10の本数、ローラーコンベア2の傾斜角θ、ローターディスク12の形状や回転速度等は適宜設定可能な設計事項である。また、傾斜上部側Uと傾斜下部側Dとの境界は、搬送方向Xにおけるローラーコンベア2の中央近傍であることが望ましく、その上方に投入口1が配置されることが望ましいが、もちろんこれについても事情に応じて適宜変更可能である。
【実施例】
【0056】
上記実施の形態1において説明したローラーコンベア2を用いて、廃棄物Pの選別試験を行った。廃棄物Pとして、体積2mの軽量プラスチック(軽量物)P1と体積0.12mの重量プラスチック(重量物)P2とを含み、全体として体積2.12mの廃棄物Pの選別試験を行った。
【0057】
実施例においては、傾斜下部側Dの3本のローター軸10に係るローターディスク12の回転速度をN(rpm)、傾斜上部側Uの4本のローター軸10に係るローターディスク12の回転速度を1.4倍の1.4N(rpm)とした。また、比較例として、傾斜上部側Uのローターディスク12の回転速度を、傾斜下部側Dのローターディスク12の回転速度と同速度のN(rpm)とした場合についても試験を行った。実施例及び比較例において、上端2a側から排出された軽量プラスチックP1の量と下端2b側から排出された軽量プラスチックP1の量とを以下表1にまとめた。
【0058】
なお、廃棄物Pの投入を、傾斜上部側Uに近い傾斜下部側Dの位置付近に落下するように行ったところ、表1に示すように、送風機8からの送風に起因して、体積2mの軽量プラスチックP1のうち体積0.65m分が、また、体積0.12mの重量プラスチックP2のうち体積0.025m分が傾斜上部側Uへと落下した。
【0059】
表1からわかるように、実施例においては投入した軽量プラスチックP1のすべてが上端2a側から排出されているのに対し、比較例においては2mのうち1.35mの軽量プラスチックP1が上端2a側へと搬送されているが、残りの0.65mについては、下端2b側から排出されてしまっている。
【0060】
つまり、実施例においては、傾斜下部側Dに落下した軽量プラスチックP1も傾斜上部側Uへと搬送されて上端2a側から排出されており、比較例においては、傾斜下部側Dに落下した軽量プラスチックP1は、傾斜上部側Uへと送られずにそのまま傾斜下部側Dを滑落して下端2bから排出されている。
【0061】
実施例で上端2aから排出された軽量プラスチックP1の量(2m)は、比較例で上端2aから排出された軽量プラスチックP1の量(0.65m)の約1.48倍の体積である。これは、傾斜上部側Uのローターディスク12の回転速度を傾斜下部側Dのローターディスク12の回転速度の1.4倍とすることにより、選別装置の選別処理能力が約1.48倍に向上することを意味している。傾斜上部側Uのローターディスク12の回転速度を上昇させることで、選別装置Sの処理能力を向上させることができ、ひいては、処理能力を低下させることなく選別装置Sのサイズの小型化を図ることができる。
【0062】
【表1】

【符号の説明】
【0063】
α:回転方向
θ:傾斜角
A:矢印
D:傾斜下部側
G:隙間
P:廃棄物(混合物)
P1:軽量物(第1物体)
P2:重量物(第2物体)
P3:細粒物(第3物体)
S:選別装置
T1〜T3:ストッカー
t:厚さ
U:傾斜上部側
X:搬送方向
Y:軸方向
1:投入口
2:ローラーコンベア
2a:上端
2b:下端
4:モータ(駆動手段)
4a:上部側モータ(駆動手段)
4b:下部側モータ(駆動手段)
6:シリンダ(保持手段)
8:送風機(送風手段)
9:スプロケット
10:ローター軸
11:軸部材
12:ローターディスク
12a:頂部
12b:凹部
13:チェーン(伝達手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合物を投入する投入口と、
複数のローターディスクの回転により前記混合物を搬送するローラーコンベアと、
該ローターディスクを回転駆動する駆動手段と、
該ローラーコンベアを搬送方向に向けて上り傾斜に傾斜保持する保持手段とを有し、
前記混合物を、
前記ローラーコンベアによって傾斜上部へと搬送される第1物体と、
前記ローラーコンベアの搬送に拘らず傾斜下部へと滑落する第2物体と、
前記複数のローターディスクの隙間から下方に落下する第3物体とに選別する選別装置であって、
前記ローラーコンベアは、
前記ローターディスクが同軸に複数配置されて構成されたローター軸を、前記傾斜下部側から前記傾斜上部側にかけて軸方向を平行に複数配置して構成され、かつ、
前記駆動手段が、
前記傾斜上部側のローターディスクと前記傾斜下部側のローターディスクとを異なる回転速度で回転駆動する選別装置。
【請求項2】
前記傾斜上部側又は前記傾斜下部側の少なくともいずれか一方において、より上部側のローターディスクの回転速度がより下部側のローターディスクの回転速度よりも高速回転する請求項1に記載の選別装置。
【請求項3】
前記駆動手段が、
前記傾斜上部側のローターディスクを、前記傾斜下部側のローターディスク回転速度の1.4倍以上の回転速度で回転駆動する請求項1に記載の選別装置。
【請求項4】
前記駆動手段が、
該複数本のうちの前記傾斜上部側における実質的に半分の本数のローター軸に係るローターディスク回転速度と、
前記傾斜下部側における残りの本数のローター軸に係るローターディスク回転速度と、を異なる回転速度で回転駆動する請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の選別装置。
【請求項5】
前記投入口が、
前記傾斜上部側のローターディスクと前記傾斜下部側のローターディスクとの境界近傍に配置される請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の選別装置。
【請求項6】
前記ローラーコンベアの傾斜角度又はそれ以上の傾斜角度で、前記傾斜下部側から前記傾斜上部側へ向けて送風する送風手段を、前記ローラーコンベアの上方に更に有する請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−207689(P2010−207689A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55437(P2009−55437)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【出願人】(502165300)富士電機サーモシステムズ株式会社 (33)
【出願人】(392036119)株式会社松本鉄工所 (11)
【Fターム(参考)】